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特許7330307処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置及びウェーハ表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置及びウェーハ表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230814BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230814BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
H01L21/30 569C
H01L21/30 564C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022003485
(22)【出願日】2022-01-13
(65)【公開番号】P2023102823
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 俊一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綾馬
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-010421(JP,A)
【文献】特開2015-046522(JP,A)
【文献】特開2007-180379(JP,A)
【文献】特開2010-040818(JP,A)
【文献】特開2018-014353(JP,A)
【文献】特開2021-106213(JP,A)
【文献】特開2018-018856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
B08B 5/00
B08B 3/02-3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバーに配置され、処理液による表面処理が行われるウェーハを、ガイドピンを介して回転保持するウェーハ回転保持装置と、
前記ウェーハ上に前記処理液を供給する処理液供給機構と、
前記チャンバーに配置され、前記ウェーハ回転保持装置の周囲に、上下動可能に設けられ、前記ウェーハ上に供給された前記処理液をその種類に応じて回収するため、少なくとも外側カップ、中間カップ、及び内側カップ、とから構成されてなる、複数の環状処理液回収カップと、
少なくとも、前記外側カップを通る第一排気ライン、前記複数の環状処理液回収カップのうち、薬液である処理液の回収が行われる薬液回収動作対象カップの雰囲気を排気する第二排気ライン、及び前記内側カップと前記ウェーハ回転保持装置との隙間を通る第三排気ライン、とから構成されてなる複数の排気ラインと、
を含み、
前記ウェーハ回転保持装置の上方は前記チャンバー内雰囲気に開放されてな
前記中間カップの側壁に中間カップ側壁開口部が設けられ、前記中間カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気が行われる、
処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項2】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気が行われる、請求項1記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項3】
前記内側カップの側壁に内側カップ側壁開口部が設けられ、前記内側カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気が行われる、請求項1又は2記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項4】
前記中間カップと前記内側カップとが、連動して上下動可能とされてなる、請求項1~いずれか1項記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項5】
前記外側カップに、外側カップ傾斜屋根部が設けられてなり、前記外側カップ傾斜屋根部の傾斜角度が、20°~30°である、請求項1~いずれか1項記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項6】
前記内側カップの上端部に、前記中間カップの上端部からの処理液の混入を防止する混入防止カバー部材が設けられてなる、請求項1~いずれか1項記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項7】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ライン、前記第二排気ライン、及び前記第三排気ラインのそれぞれの排気量が、
前記第一排気ライン > 前記第二排気ライン > 前記第三排気ライン、とされてなる、請求項1~いずれか1項記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置。
【請求項8】
請求項1~いずれか1項記載の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置を用い、処理液によるウェーハの表面処理が行われてなる、ウェーハ表面処理方法。
【請求項9】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気が行われる、
請求項8記載のウェーハ表面処理方法。
【請求項10】
前記処理液による表面処理に応じて、前記中間カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気、又は前記内側カップの側壁に内側カップ側壁開口部が設けられ前記内側カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気、を切り替えて第二排気ラインによる排気が行われる、請求項又は記載のウェーハ表面処理方法。
【請求項11】
前記処理液が薬液の場合、前記薬液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気、第二排気ラインによる排気及び第三排気ラインによる排気が行われる、請求項10いずれか1項記載のウェーハ表面処理方法。
【請求項12】
前記処理液がリンス液の場合、前記リンス液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気及び第三排気ラインによる排気が行われる、請求項11いずれか1項記載のウェーハ表面処理方法。
【請求項13】
請求項12いずれか1項のウェーハ表面処理方法を用い、処理液によるウェーハの表面処理を行い、処理済みウェーハを製造してなる、処理済みウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ表面を処理液によって処理する際に、処理液の種類に応じてそれぞれの処理液を分離回収することができるようにした処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置及びウェーハ表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの製造工程におけるウェーハ表面の処理としては、バックグラインディング後のダメージ層を除去するためのエッチング処理の他に、現像液のウェーハへの塗布、回路パターンを露光したウェーハ表面に現像液が塗布されたウェーハに半導体回路を焼き付けたものの現像処理、ウェーハ表面の洗浄等をあげることができる。
【0003】
上記のようなウェーハ表面の処理には処理液が用いられる。なお、本願明細書において、「処理液」には、ウェーハ表面の各種の処理を行うための、混酸やフッ酸等の各種の薬液のほか、ウェーハ表面の洗浄処理を行うための純水などのリンス液も含まれる。
【0004】
そして、従来の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置として、特許文献1に記載の装置がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、回転円板に、ウェーハをガイドするためのガイドピンが設けられているが、ウェーハへの酸性薬液による酸エッチング処理において、前記ウェーハのガイドピンに跳ね返った酸性薬液のミストがウェーハ周辺にミスト雰囲気として存在してしまい、チャンバー内に硝酸のミスト雰囲気などの酸性ミスト雰囲気が充満してしまう。そして、ミストが浮遊すると、硝酸のミスト雰囲気などの酸性ミスト雰囲気がリンス後のウェーハに再付着する可能性があるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の装置では、チャンバー内の排気が効率良く取れておらず、そして、構造的に環状処理液回収カップ(特許文献1に記載の環状廃液回収樋64,66,68)内の排気をするシステムが無いため、前記環状処理液回収カップ内の排気を行うことができなかった。そのため、前記環状処理液回収カップ内の酸性ミストを含む雰囲気が前記環状処理液回収カップの外に出るおそれがあった。図13に特許文献1に記載の装置における排気の様子を示す。
【0007】
図13に示されるように、特許文献1に記載の装置では、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置100の外側を通る排気ラインZ1と、ウェーハ表面処理機構102と環状処理液回収機構104の内側との隙間を通る排気ラインZ2、の2つしかなかった。符号106はチャンバーである。
【0008】
そのため、酸エッチング後にウェーハ表面が白濁したり、チャンバー内の透明PVC(ポリ塩化ビニル)部分が白く曇ってしまったり(風速の早い所に多く付きやすいため)という問題があった。さらに、DHF処理(希釈HF処理)の際に、処理完了後にもかかわらずウェーハ上にHF(フッ酸)が残ってしまうという問題があり、これはミストとなったHFが再付着してしまった可能性が考えられた。
【0009】
また、2種類の処理液が分離回収できる基板処理装置として、特許文献2に記載されたものがある。
【0010】
特許文献2では、廃液案内機構の回転数により薬液とリンスの回収を切替えているため、薬液/リンスの切替と回転数の切替に制約があるし、廃液案内機構が高回転すると、ウェーハから飛び散った処理液が廃液案内機構にぶつかって処理液のミストが発生しそのミストは内側の排気に吸われることになるが、その際に回転筒軸をかわしながら排気される為、回転筒軸の外周部にある内側傾斜案内板に水滴が付着してしまい、薬液回収のカップに混入することとなる。
シリコンエッチング液の場合、回収された薬液は温度調整しながら循環させて、ウェーハの処理に再度用いて薬液ライフまで使用するため、リンス等の混入により薬液のライフ低下が発生してしまう。
また、排気位置が薬液廃液用カップ薬液回収よりも内側に設置している一箇所のみであり、バランスの非常に偏った排気構造となっていて、全周排気を行うことができる構造ではないため、十分な排気が行えないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-267278
【文献】特開平10-41269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、ウェーハ表面を前記処理液によって処理する際に、ガイドピンに当たってミスト化した処理液のミスト雰囲気であっても、チャンバー及び環状処理液回収カップ内の前記処理液のミスト雰囲気をバランスよく速やかに全周排気することができるようにした、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置及びウェーハ表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置は、チャンバーと、前記チャンバーに配置され、処理液による表面処理が行われるウェーハを、ガイドピンを介して回転保持するウェーハ回転保持装置と、前記ウェーハ上に前記処理液を供給する処理液供給機構と、前記チャンバーに配置され、前記ウェーハ回転保持装置の周囲に、上下動可能に設けられ、前記ウェーハ上に供給された前記処理液をその種類に応じて回収するため、少なくとも外側カップ、中間カップ、及び内側カップ、とから構成されてなる、複数の環状処理液回収カップと、少なくとも、前記外側カップを通る第一排気ライン、前記複数の環状処理液回収カップのうち、薬液である処理液の回収が行われる薬液回収動作対象カップの雰囲気を排気する第二排気ライン、及び前記内側カップと前記ウェーハ回転保持装置との隙間を通る第三排気ライン、とから構成されてなる複数の排気ラインと、を含み、前記ウェーハ回転保持装置の上方は前記チャンバー内雰囲気に開放されてなる、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置である。
【0014】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0015】
前記中間カップの側壁に中間カップ側壁開口部が設けられ、前記中間カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0016】
前記内側カップの側壁に内側カップ側壁開口部が設けられ、前記内側カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0017】
前記中間カップと前記内側カップとが、連動して上下動可能とされてなるのが好適である。
【0018】
前記外側カップに、外側カップ傾斜屋根部が設けられてなり、前記外側カップ傾斜屋根部の傾斜角度が、20°~30°であるのが好適である。
【0019】
前記内側カップの上端部に、前記中間カップの上端部からの処理液の混入を防止する混入防止カバー部材が設けられてなるのが好適である。
【0020】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ライン、前記第二排気ライン、及び前記第三排気ラインのそれぞれの排気量が、前記第一排気ライン > 前記第二排気ライン > 前記第三排気ライン、とされてなるのが好適である。
【0021】
本発明のウェーハ表面処理方法は、前記処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置を用い、処理液によるウェーハの表面処理が行われてなる、ウェーハ表面処理方法である。
【0022】
前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0023】
前記処理液による表面処理に応じて、前記中間カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気、又は前記内側カップ側壁開口部を通って第二排気ラインによる排気、を切り替えて第二排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0024】
前記処理液が薬液の場合、前記薬液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気、第二排気ラインによる排気及び第三排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0025】
前記処理液がリンス液の場合、前記リンス液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインによる排気及び第三排気ラインによる排気が行われるのが好適である。
【0026】
本発明の処理済みウェーハの製造方法は、前記ウェーハ表面処理方法を用い、処理液によるウェーハの表面処理を行い、処理済みウェーハを製造してなる、処理済みウェーハの製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ウェーハ表面を前記処理液によって処理する際に、ガイドピンに当たってミスト化した処理液のミスト雰囲気であっても、チャンバー及び環状処理液回収カップ内の前記処理液のミスト雰囲気をバランスよく速やかに全周排気することができるようにした、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置及びウェーハ表面処理方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置の一つの実施の形態を示す側面図である。
図2図1の平面図である。
図3】処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置の要部拡大図である。
図4】外側カップ傾斜屋根部を除いた外側カップの一つの実施の形態を示し、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図5】中間カップ傾斜屋根部を除いた中間カップの一つの実施の形態を示し、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図6】内側カップ傾斜屋根部を除いた内側カップの一つの実施の形態を示し、(a)が平面図、(b)が側面図である。
図7】外側カップ、中間カップ、及び内側カップの上端部を示す概略図である。
図8】外側カップ、中間カップ、及び内側カップの上下動機構の模式的図である。
図9】本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置における排気による空気の流れを示す要部概略説明図である。
図10】本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置における排気による空気の流れを示す要部概略説明図である。
図11】本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置における処理液の流れを示す要部概略説明図である。
図12】本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置における処理液の流れを示す要部概略説明図である。
図13】従来の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0030】
図1において、符号10は、本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置である。処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10は、チャンバー12と、前記チャンバー12に配置され、処理液による表面処理が行われるウェーハWを、ガイドピン40を介して回転保持するウェーハ回転保持装置14と、前記ウェーハW上に前記処理液を供給する処理液供給機構16と、前記チャンバー12に配置され、前記ウェーハ回転保持装置14の周囲に、上下動可能に設けられ、前記ウェーハW上に供給された前記処理液をその種類に応じて回収するため、少なくとも外側カップ18、中間カップ20、及び内側カップ22、とから構成されてなる、複数の環状処理液回収カップ24と、を有している。
【0031】
そして、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10は、図9に示される如く、少なくとも、前記外側カップ18を通る第一排気ラインE1、前記複数の環状処理液回収カップ24のうち、薬液である処理液の回収が行われる薬液回収動作対象カップの雰囲気を排気する第二排気ラインE2、及び前記内側カップ22と前記ウェーハ回転保持装置14との隙間を通る第三排気ラインE3、とから構成されてなる複数の排気ラインと、を含み、前記ウェーハ回転保持装置14の上方は前記チャンバー12内雰囲気に開放されてなる、処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置である。
【0032】
本願明細書において、「排気ライン」とは排気の通り道のことを指しており、空気の流れを指している。
【0033】
図1において、前記チャンバー12の上部には、通気孔26が形成されており、また、前記チャンバー12の下方の両側部には、側部排気口28,30が形成されており、図示外のエアー吸引源によって、チャンバー内の空気が排気される。
【0034】
また、チャンバー12下部には、図1及び図2に示されるように下部排気口32,34が形成されており、チャンバー12の外側にある排気ポート36,38からチャンバー内の空気が排気される。
【0035】
図1において、ガイドピン40は、前記ウェーハ回転保持装置14の回転円板42に設けられている。これらガイドピン40の構成としては、図3によく示される如く、ウェーハWの下側を支持する下側ガイドピン44とウェーハWの外側を支持する外側ガイドピン46とで構成することができる。これらガイドピン40の構成は特許文献1に記載されたものと同様のものを適用できる。
【0036】
処理液供給機構16は、複数種の処理液、例えば複数の薬液と洗浄液とを切り替えてウェーハW上に供給可能とされている。この処理液供給機構16は特許文献1に記載されたものと同様のものを適用できる。
【0037】
図3によく示される如く、外側カップ18、中間カップ20、及び内側カップ22は、それぞれ外側カップ傾斜屋根部48、中間カップ傾斜屋根部50、内側カップ傾斜屋根部52、が設けられている。、外側カップ18、中間カップ20、及び内側カップ22は、それぞれで各処理液を分離回収するためのものであるが、外側カップ傾斜屋根部48、中間カップ傾斜屋根部50、内側カップ傾斜屋根部52が設けられていることで、回転するウェーハWの遠心力によって各処理液が飛び散ったり、或いは各処理液がガイドピン40に当たったりすることで発生した各処理液の飛沫等を効果的に捕集することができる。
【0038】
外側カップ傾斜屋根部48、中間カップ傾斜屋根部50、内側カップ傾斜屋根部52の傾斜角度は、それぞれ、20°~40°で設定するのが好適である。特に、外側カップ傾斜屋根部48の傾斜角度θは、20°~30°であるのが好適である。なお、図示例では、外側カップ傾斜屋根部48の傾斜角度θは、24°の例を示した。
【0039】
また、前記内側カップ22の上端部には、前記中間カップ20の上端部からの処理液の混入を防止する混入防止カバー部材54が設けられている。この混入防止カバー部材54があることで、前記内側カップ22で回収すべき処理液が誤って前記中間カップ20の上端部から混入してしまうことが防止される。
【0040】
また、内側カップ22の内側壁の上端は、ウェーハ回転保持装置14側に湾曲した湾曲上端部56とされている。この湾曲上端部56が形成されていることで、前記内側カップ22で処理液を捕集し易くなる効果がある。
【0041】
図5に、外側カップ傾斜屋根部48を除いた外側カップ18の一つの実施の形態を示す。(a)は平面図であり、(b)が側面図である。外側カップ18の底部58は図3によく示される如く、開放されている。外側カップ18では処理液として純水などのリンス液が捕集されるが、外側カップ18で捕集されて回収されたリンス液は、図1のチャンバー12の床面に落ちて排水孔65からシンクへと排水される。
【0042】
図6に、中間カップ傾斜屋根部50を除いた中間カップ20の一つの実施の形態を示す。(a)は平面図であり、(b)が側面図である。中間カップ20の底部60は開放されておらず、回収孔64に向かって若干傾斜しているので、中間カップ20で捕集されて回収された処理液は、回収孔64から分離回収されることとなる。中間カップ20では、薬液が回収される。内側カップ22でも薬液が回収されるので、中間カップ20と内側カップ22とで、別々の2種類の薬液をそれぞれ回収できる。外側カップ18ではリンス液が回収されるので、図示例では、合計3種類の処理液がそれぞれ分離回収されることとなる。
【0043】
前記中間カップ20の側壁には、中間カップ側壁開口部66が複数個設けられており、前記中間カップ側壁開口部66を通って第二排気ラインE2による排気が行われる。この中間カップ側壁開口部66があることで、第二排気ラインE2による排気が実現でき、前記中間カップ20内の処理液のミスト雰囲気が効果的に排気される。また、中間カップ側壁開口部66は、外側の側壁、即ち、外側カップ18側の側壁に形成されているのが好適である。
【0044】
図7に、内側カップ傾斜屋根部52を除いた内側カップ22の一つの実施の形態を示す。(a)は平面図であり、(b)が側面図である。内側カップ22の底部62は開放されておらず、回収孔68に向かって若干傾斜しているので、内側カップ22で捕集されて回収された処理液は、回収孔68から分離回収されることとなる。内側カップ22では、薬液が回収される。
【0045】
前記内側カップ22の側壁には、内側カップ側壁開口部70が複数個設けられており、前記内側カップ側壁開口部70を通って第二排気ラインE2による排気が行われる。この内側カップ側壁開口部70があることで、第二排気ラインE2による排気が実現でき、前記内側カップ22内の処理液のミスト雰囲気が効果的に排気される。また、内側カップ側壁開口部70は、内側の側壁、即ち、ウェーハ回転保持装置14側の側壁に形成されているのが好適である。
【0046】
外側カップ18、中間カップ20、及び内側カップ22の上下動機構については、図8によく示される。図8において、符号CY1,CY2,CY3は、外側カップ18、中間カップ20、及び内側カップ22のそれぞれを動かすシリンダーである。シリンダーCY1,CY2,CY3は、図示外の駆動源で駆動される。
【0047】
シリンダーCY3は、リンスと乾燥に使われる外側カップ18を動かす。単独で動作し、ストローク幅は60mmである。
シリンダーCY2は、第一の薬液処理に使われる中間カップ20を動かす。中間カップ20と内側カップ22とは連動で動作し、ストローク幅は40mmである。
シリンダーCY1は、第二の薬液処理に使われる内側カップ22を動かす。内側カップ22と中間カップ20とは、リンク部材72によって連動して同時に動作せしめられる。シリンダーCY1のストローク幅は40mmである。
なお、本実施の形態では、薬液の混入防止の観点から、内側カップ22と中間カップ20とは連動で動作する例を示したが、必要に応じて内側カップ22と中間カップ20それぞれを単独動作させる構成としてもよいことは勿論である。
【0048】
次に、図1図8に記載された処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10における排気による空気の流れを図9及び図10に示す。
【0049】
<LD/ULD状態>
図9(a)の状態は、ウェーハWの表面処理を行うためのウェーハ載置又はウェーハWの表面処理が終了した後のウェーハWの取り除き、を行うロード/アンロード(LD/ULD)状態である。
前記LD/ULD状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:上昇、CY2:下降、CY3:下降、の状態となる。
処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10は、前記ウェーハ回転保持装置14の上方は、閉塞されていないので、前記チャンバー12内雰囲気に開放されている。図9(a)の状態でも、前記ウェーハ回転保持装置14の上方は、閉塞されておらず、前記チャンバー12内雰囲気に開放されている。
【0050】
<内側カップ使用状態>
図9(b)の状態は、処理液として第一の薬液によるウェーハWの表面処理を行い、前記第一の薬液を内側カップ22で分離回収する状態である。前記内側カップ22の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:上昇、CY2:上昇、CY3:上昇、の状態となる。シリンダーCY1及びCY2は連動して同時に上昇せしめられる。
【0051】
図9(b)の状態での、排気による空気の流れとしては、図9(b)に矢印で示したように、第一排気ラインE1は外側カップ18を通る。また、図9(b)に矢印で示したように、第二排気ラインE2によって、第一の薬液の回収が行われる薬液回収動作対象カップである前記内側カップ22内の雰囲気が排気される。そして、図9(b)に矢印で示したように、前記内側カップ22と前記ウェーハ回転保持装置14との隙間を通る第三排気ラインE3によっても排気が行われる。
【0052】
<中間カップ使用状態>
図10(c)の状態は、処理液として第二の薬液によるウェーハWの表面処理を行い、前記第二の薬液を中間カップ20で分離回収する状態である。前記中間カップ20の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:下降、CY2:上昇、CY3:上昇、の状態となる。
【0053】
図10(c)の状態での、排気による空気の流れとしては、図10(c)に矢印で示したように、第一排気ラインE1は外側カップ18を通る。また、図10(c)に矢印で示したように、第二排気ラインE2によって、処理液である第二の薬液の薬液回収動作対象カップである前記中間カップ20内の雰囲気が排気される。そして、図10(c)に矢印で示したように、前記内側カップ22と前記ウェーハ回転保持装置14との隙間を通る第三排気ラインE3によっても排気が行われる。
【0054】
このように、前記処理液による表面処理に応じて、前記中間カップ側壁開口部66を通っての第二排気ラインE2による排気と、前記内側カップ側壁開口部70を通っての第二排気ラインE2による排気と、が切り替えられつつ、第二排気ラインE2による排気が行われる。
【0055】
上記のように、前記処理液が薬液の場合、前記薬液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインE1による排気、第二排気ラインE2による排気及び第三排気ラインE3による排気が行われる、
【0056】
<外側カップ使用状態>
図10(d)の状態は、処理液としてリンス液によるウェーハWの表面処理を行い、前記リンス液を外側カップ18で分離回収する状態である。前記外側カップ18の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:上昇、CY2:下降、CY3:上昇、の状態となる。
【0057】
図10(d)の状態での、排気による空気の流れとしては、図10(d)に矢印で示したように、第一排気ラインE1は外側カップ18を通る。また、図10(d)では、処理液としてリンス液によるウェーハWの表面処理を行っているので、薬液である処理液の回収が行われる薬液回収動作対象カップは存在せず、このため、第二排気ラインE2は存在しない。そして、図10(d)に矢印で示したように、前記内側カップ22と前記ウェーハ回転保持装置14との隙間を通る第三排気ラインE3によっても排気が行われる。
【0058】
上記のように、前記処理液がリンス液の場合、前記リンス液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインE1による排気及び第三排気ラインE3による排気が行われる、
【0059】
このように、前記第一排気ラインE1による排気は、前記処理液による表面処理が行われる間は、いずれのカップを使用であっても、常時排気されていることとなる。
【0060】
また、前記処理液による表面処理が行われる間、前記第一排気ラインE1、前記第二排気ラインE2、及び前記第三排気ラインE3のそれぞれの排気量が、
前記第一排気ライン > 前記第二排気ライン > 前記第三排気ライン、
となるように調節するのが好適である。全周排気のバランスが、より良くなるからである。
【0061】
次に、図1図8に記載された処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10における処理液の流れを図11及び図12に示す。
【0062】
<LD/ULD状態>
図11(a)の状態は、図9(a)の状態と同様であり、ウェーハWの表面処理を行うためのウェーハ載置又はウェーハWの表面処理が終了した後のウェーハWの取り除き、を行うロード/アンロード(LD/ULD)状態である。
【0063】
<内側カップ使用状態>
図11(b)の状態は、図9(b)の状態と同様であり、処理液として第一の薬液によるウェーハWの表面処理を行い、前記第一の薬液を内側カップ22で分離回収する状態である。前記内側カップ22の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:上昇、CY2:上昇、CY3:上昇、の状態となる。シリンダーCY1及びCY2は連動して同時に上昇せしめられる。
【0064】
図11(b)の状態での、処理液の流れとしては、図11(b)に白抜き矢印及び黒矢印で示したように、処理液がウェーハW上に供給されると、処理液として第一の薬液は、内側カップ22で捕集され、内側カップ22の回収孔68から分離回収される。
【0065】
<中間カップ使用状態>
図12(c)の状態は、図10(c)の状態と同様であり、処理液として第二の薬液によるウェーハWの表面処理を行い、前記第二の薬液を中間カップ20で分離回収する状態である。前記中間カップ20の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:下降、CY2:上昇、CY3:上昇、の状態となる。
【0066】
図12(c)の状態での、処理液の流れとしては、図12(c)に白抜き矢印及び黒矢印で示したように、処理液がウェーハW上に供給されると、処理液として第二の薬液は、中間カップ20で捕集され、中間カップ20の回収孔64から分離回収される。
【0067】
<外側カップ使用状態>
図12(d)の状態は、処理液としてリンス液によるウェーハWの表面処理を行い、前記リンス液を外側カップ18で分離回収する状態である。前記外側カップ18の使用状態では、シリンダーCY1,CY2,CY3は、それぞれCY1:上昇、CY2:下降、CY3:上昇、の状態となる。
【0068】
図10(d)の状態での、処理液の流れとしては、図12(d)に白抜き矢印及び黒矢印で示したように、処理液がウェーハW上に供給されると、処理液としてのリンス液は、外側カップ18で捕集されて、図1のチャンバー12の床面に落ちて排水孔65からシンクへと排水される。
【0069】
上述したようにして処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置10でウェーハ表面処理を行うことで、本発明のウェーハ表面処理方法となる。そして、本発明のウェーハ表面処理方法を用いて、処理液によるウェーハの表面処理を行い、処理済みウェーハを製造するようにすれば、本発明の処理済みウェーハの製造方法となる。
【符号の説明】
【0070】
10:本発明の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置、12:チャンバー、14:ウェーハ回転保持装置、16:処理液供給機構、18:外側カップ、20:中間カップ、22:内側カップ、24:環状処理液回収カップ、26:通気孔、28:側部排気口、30:側部排気口、32,34:下部排気口、36,38:排気ポート、40:ガイドピン、42:回転円板、44:下側ガイドピン、46:外側ガイドピン、48:外側カップ傾斜屋根部、50:中間カップ傾斜屋根部、52:内側カップ傾斜屋根部、54:混入防止カバー部材、56:湾曲上端部、58,60,62:底部、64:回収孔、65:排水孔、66:中間カップ側壁開口部、68:回収孔、70:内側カップ側壁開口部、72:リンク部材、100:従来の処理液回収機構付ウェーハ表面処理装置、102:ウェーハ表面処理機構、104:環状処理液回収機構、106:チャンバー、CY1,CY2,CY3:シリンダー、E1:第一排気ライン、E2:第二排気ライン、E3:第三排気ライン、W:ウェーハ、Z1,Z2:排気ライン、θ:傾斜角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13