IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパスメディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コントローラ 図1
  • 特許-コントローラ 図2A
  • 特許-コントローラ 図2B
  • 特許-コントローラ 図2C
  • 特許-コントローラ 図3
  • 特許-コントローラ 図4
  • 特許-コントローラ 図5
  • 特許-コントローラ 図6A
  • 特許-コントローラ 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】コントローラ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022008868
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2022135935
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】63/155,808
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/536,240
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲谷 晃則
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223585(JP,A)
【文献】特表2022-507298(JP,A)
【文献】国際公開第2020/101954(WO,A1)
【文献】特開2001-157685(JP,A)
【文献】特開2011-031048(JP,A)
【文献】特開2001-178739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電気エネルギーを使用して組織を治療する医療機器のためのコントローラであって、前記コントローラは、前記医療機器の電源に動作可能に結合され、
(a)前記組織を乾燥させるために前記組織に印加される第1の高周波電気エネルギーを調節するために前記電源を制御することと、
(b)前記(a)の間に、前記組織に印加された前記第1の高周波電気エネルギーにおける電圧またはインピーダンスの時間変化に関する測定に基づいて、前記組織と前記医療機器のエンド・エフェクタとの間の接触面積の大きさに比例した関係となる、第1のパラメータを推定することと、
(c)前記第1のパラメータに基づいて、前記組織と前記医療機器のエンド・エフェクタとの間の接触面積が大きい場合に、供給エネルギーを増加するエネルギー調整パラメータを設定し、前記組織を切断するために前記組織に印加される切断エネルギーを調節するために前記電源を制御することと、
を行うように構成されるコントローラ。
【請求項2】
前記コントローラは、
(d)前記(c)で切断された前記組織を凝固させるために、前記組織に印加される第2の高周波エネルギーを調節するために前記電源を制御するようにさらに構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記コントローラは、前記組織を治療するために、前記(a)~(d)を第1のサイクルにわたって順次実行し、前記(a)~(d)を第2のサイクルにわたって順次繰り返すようにさらに構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記第1のパラメータは、前記(a)の間において、前記組織への放電により生じる電圧の大きさが第1の閾値に達する時間、または、前記(a)の間において、前記組織への放電により生じる電圧が所定の電圧閾値に達するまでの電圧の増加率を含む、請求項に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1のパラメータに基づいて前記組織と前記医療機器のエンド・エフェクタとの間の接触面積を推定し、前記接触面積に基づいて前記切断エネルギーの印加に関連する切断エネルギー・パラメータを変更することによって、前記切断エネルギーを調節するように構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記切断エネルギー・パラメータは、切断電圧が前記組織に印加される時間量を含み、前記コントローラは、前記接触面積が面積閾値を超える場合に、前記切断電圧が印加される時間量を増加させることによって前記切断エネルギーを調節するように構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記切断エネルギー・パラメータは、前記組織への放電により生じる電圧の大きさを含み、前記コントローラは、前記接触面積が面積閾値を超える場合に、切断電圧を増加させることによって前記切断エネルギーを調節するように構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記コントローラは、前記(d)の間に、前記組織を凝固させるために印加される高周波電力の大きさまたは継続時間に係る第2のパラメータを推定するようにさらに構成され、前記第1のサイクルの間に推定された前記第2のパラメータと、前記第2のサイクルの間に推定された前記第1のパラメータとに基づいて、前記第2のサイクルの前記切断エネルギーを調節するように構成される、請求項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第2のサイクルを繰り返すようにさらに構成され、完了したサイクル中に推定された前記第2のパラメータと、前記繰り返される第2のサイクル中に推定された前記第1のパラメータとに基づいて、前記繰り返される第2のサイクル中に前記切断エネルギーを調節するように構成される、請求項に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気外科に関し、詳細には、高周波電気エネルギーを使用して組織を治療する医療機器の作動方法、及びコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置には、例えば粘膜または粘膜下組織を切開または切除するときなどに、生体組織を切断することが含まれる。生体組織を切断するために使用される技術の1つには、最初に高周波電流で組織を加熱することで組織を乾かすかまたは乾燥させ、次いで、組織と医療機器のエンド・エフェクタとの間にアーク放電を発生させることによって乾いた/乾燥した組織を切断するために、高周波電気エネルギーを使用することが含まれる。次いで、切断後の出血を止めるために追加の高周波電気エネルギーを供給することによって、切断された組織は、凝固または封止される。
【0003】
高周波電力が印加されると、組織が乾く/乾燥するにつれて、組織のインピーダンスが増加する。インピーダンスが増加すると、組織に印加される電圧が上昇し、当該電圧が放電開始電圧に達すると、放電が発生して組織が切断される。アーク放電が発生しているとき、エンド・エフェクタと組織との間の接触面積に応じて、電流は狭い経路を流れる。小さな面積を通る大電流によって引き起こされる大電流密度が、組織を切開する熱を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5680013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体組織を切断するための医療機器には、処置が行われる組織の種類及び位置に応じて、異なる形状のエンド・エフェクタが使用されている。エンド・エフェクタの形状や生体組織との接触状態の違いによっては、切開性能に影響を及ぼす場合がある。
【0006】
本開示の目的は、エンド・エフェクタの形状や生体組織との接触状態に応じて、十分な性能を得ることができる医療機器の作動方法、及びコントローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示に係るコントローラは、高周波電気エネルギーを使用して組織を治療する医療機器のためのコントローラであって、前記コントローラは、前記医療機器の電源に動作可能に結合され、(a)前記組織を乾燥させるために前記組織に印加される第1の高周波電気エネルギーを調節するために前記電源を制御することと、(b)前記(a)の間に、前記組織に印加された前記第1の高周波電気エネルギーにおける電圧またはインピーダンスの時間変化に関する測定に基づいて、前記組織と前記医療機器のエンド・エフェクタとの間の接触面積の大きさに比例した関係となる、第1のパラメータを推定することと、(c)前記第1のパラメータに基づいて、前記組織と前記医療機器のエンド・エフェクタとの間の接触面積が大きい場合に、供給エネルギーを増加するエネルギー調整パラメータを設定し、前記組織を切断するために前記組織に印加される切断エネルギーを調節するために前記電源を制御することと、を行うように構成される。
【0009】
追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載され、その説明から部分的に明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。開示された医療機器の目的及び他の利点は、本明細書及びその特許請求の範囲ならびに添付の図面において、特に指摘された構造によって実現及び達成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る医療機器の作動方法、及びコントローラによれば、エンド・エフェクタの形状や生体組織との接触状態に応じて、十分な性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る医療機器の概略図である。
図2A】高周波電気エネルギーを印加することによって生体組織を治療するために使用される様々なエンド・エフェクタの例である。
図2B】高周波電気エネルギーを印加することによって生体組織を治療するために使用される様々なエンド・エフェクタの例である。
図2C】高周波電気エネルギーを印加することによって生体組織を治療するために使用される様々なエンド・エフェクタの例である。
図3】実施形態に係るコントローラの概略図である。
図4】組織を治療するための処置中の組織への電力出力の挙動を示すグラフである。
図5】生体組織を治療する例示的な方法のフローチャートである。
図6A】HPCS電流(グラフ(I))及び対応するDC電圧の挙動(小接触面積の実例であるグラフ(II)、及び大接触面積の実例であるグラフ(III))を示すグラフである。
図6B】HPCS電流(グラフ(I))及び対応するDC電圧の挙動(小接触面積の実例であるグラフ(II)、及び大接触面積の実例であるグラフ(III))を示すグラフである。
【0012】
すべての図面を通して、各構成要素の寸法は、明瞭化、例示、及び利便性のために、適宜調整されている。見やすさのために、いくつかの実例では、図中の名称付き特徴の一部のみに参照番号が付与されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気外科手術中に、高周波電気エネルギーが生体組織に印加されて組織を切断する。この工程中に組織に流れる電流は、組織を局所的に加熱し、組織を乾燥させて変性させる。一般に、組織のインピーダンスが増加すると、組織に印加される電圧が増加し、当該電圧が、放電開始電圧(本明細書では閾値電圧とも呼ばれる)に達すると、アーク放電が発生する。以下、エンド・エフェクタから生体組織への放電により生じた直流成分(放電に起因するDC成分)をDC電圧と記載する。アーク放電が発生すると、電気エネルギーを印加するために使用されるエンド・エフェクタと組織との間の接触で作られる経路を通って組織に流れる電流が増加する。通常、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積は小さいため、電流が増加すると、小さい面積で大量の熱が発生し、その結果、エンド・エフェクタと組織との間の接触領域の周囲の細胞が破裂する。これにより、アーク放電を利用して組織を切断する。
【0014】
アーク放電が発生して組織が切断されると、組織に印加される高周波電気エネルギーが減少し、切断された組織を凝固させ、それによって切断された組織からの出血を止める。
【0015】
組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積は、エンド・エフェクタの形状及び大きさに依存する。そして、エンド・エフェクタの形状及び大きさは、通常は処置中に変化しない。したがって、放電強度を調整することで、DC電圧を調整でき、そしてまた、エンド・エフェクタに供給される電力(すなわち、高周波電流及び電圧)を調整することで、放電強度を調整できる。しかしながら、処置中、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積は一定ではなく、エンド・エフェクタの正確な形状、及びエンド・エフェクタが組織と接触する角度などの要因に依存する。したがって、アーク放電を生じさせるためにエンド・エフェクタに供給すべき電力を決定するためには、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積の正確な推定が重要因子であると考えられた。さらに、例えば、DC電圧の上昇率などのパラメータは、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積を推定するための代替として機能できる。
【0016】
したがって、高周波電気エネルギーを使用して生体組織を治療する方法は、組織に印加される第1の高周波電気エネルギーに基づいて、または、組織に印加される第1の高周波電気エネルギー中の、第1のパラメータを推定するステップを含むことができる。第1のパラメータを使用して、その特定の処置中に組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積を推定することができ、その後、第1のパラメータを使用して、アーク放電を生じさせるためにエンド・エフェクタに供給される電力を推定できる。
【0017】
本明細書で使用される高周波は、約200kHz~約5MHzの範囲の周波数を指す。したがって、特定の用途に応じて、機器(電気熱切断用の機器など)は、例えば、200kHz、250kHz、300kHz、350kHz、400kHz、450kHz、500kHz、600kHz、700kHz、800kHz、900kHz、1000kHz、1500kHz、2000kHz、2500kHz、3000kHz、3500kHz、4000kHz、4500kHz、5000kHz、またはこれらの周波数のいずれか2つの間の任意周波数で、電圧を印加することによって、組織に高周波電気エネルギーを供給できる。
【0018】
本開示の一態様では、組織に提供される高周波電気エネルギーを使用して組織を切断するためのシステムが開示される。システムは、高周波電力を生成するように構成された電源と、電源に動作可能に接続され、組織に高周波電気エネルギーを供給するように構成されたエンド・エフェクタとを含むことができる。システムは、電源に動作可能に接続され、高周波電気エネルギーが組織に印加されている間に、電源を制御し、1つまたは複数のパラメータを推定するように構成されたコントローラをさらに含む。コントローラは、組織を乾燥させ第1の高周波エネルギーの調節中に第1のパラメータを推定するために、組織に印加される第1の高周波電気エネルギーを調節するために電源を制御するように構成される。次に、コントローラは電源を制御して、第1のパラメータに基づいて、組織を切断するために組織に加えられる切断エネルギーを調節する。第1のパラメータは、例えば、組織乾燥中のDC電圧の増加率であってもよい。第1のパラメータは、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積を推定するために使用されてもよく、次いで、これを使用して、組織切断用としてアーク放電を生じさせるためのエンド・エフェクタに供給される電力を推定してもよい。
【0019】
本明細書で使用される「患者」という用語は、ありとあらゆる生物を含み、「対象」という用語を含む。患者は、ヒトまたは動物であり得る。
【0020】
〔組織を加熱するための医療機器〕
図1は、本開示の一実施形態による、組織を加熱するための医療機器1の概略図である。図1に示すように、組織を切断するための医療機器1は、治療器具2と、プロセッサを有するコントローラ3と、操作スイッチ4とを備える。治療器具2は、例えば、電気外科手術中に生体組織をつかむために用いられるクランプを含んでもよい。
【0021】
治療器具2は、ハンドル部2A1と、シャフト2A2と、生体組織(LT)をつかんで処置を行うための、例えば、開閉可能なまたは回動可能な一対の把持部(第1把持部11A及び第2把持部11Bを含む)等のエンド・エフェクタ10からなる処置部と、を有する。本明細書では、把持部全体を医療器具の「処置部分」または「処置部」とも称する。なお、以下、同一機能を有する構成要素であって、参照番号末尾にA及びBを付した構成要素については、符号AまたはBを省略する場合がある。例えば、第1把持部11A及び第2把持部11Bのそれぞれを、把持部と称することがある。
【0022】
ハンドル部2A1は、ケーブル2Lを介してコントローラ3に接続されている。ハンドル部2A1は、外科医が組織を留めやすい形状で処置部の開閉を操作するためのトリガー等の開閉操作部2A3を有する。開閉操作部2A3は、ハンドル部2A1の一端に配置され、処置部と一体となって、開閉操作部2A3の動作を処置部に伝達する。ハンドル部2A1の他方の側には、器具2を操作するときに臨床医がつかむための固定ハンドル2A4が設けられている。
【0023】
図1は、組織を把持するエンド・エフェクタ10を示しているが、処置の種類に応じて、他の形状及び大きさのエンド・エフェクタを使用してもよい。図2A図2B及び図2Cは、異なる形状及び大きさを有するエンド・エフェクタ200,210,220のいくつかの例を示す。これらの形状及び大きさの各々は、その利点を有し、したがって、特定種類の処置を実行するのにより適している。例えば、図2Aに示されるエンド・エフェクタ200は、組織とのより大きな接触面積を有し、したがって、より高い凝固性、及びより高い止血性能を提供する。同様に、図2Bのエンド・エフェクタ210は、フック形状を有し、粘膜をフックに捕捉して粘膜下層から分離することができるので、粘膜切除により適している。図2Cのエンド・エフェクタ220は、鋭い先端を有し、組織のマーキング、粘膜切開、剥離、及び止血などの機能に対し、より適切に使用することができる。
【0024】
エンド・エフェクタの正確な形状にかかわらず、当業者は、図1及び図2A図2Cに示されるように、組織とエンド・エフェクタとの間の接触面積が異なることを容易に理解するであろう。
【0025】
図3は、本開示の一実施形態によるコントローラ3の概略図を示す。コントローラ3は、プロセッサ32と、表示部36と、入力部42と、センサ部48と、電源44とを含むことができる。
【0026】
プロセッサ32は、メモリ34、演算部46、及び制御部40を含むことができる。演算部46及び制御部40は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を含む集積回路により構成される。演算部46及び制御部40は、単一の集積回路で構成されてもよいし、複数の集積回路で構成されてもよい。
【0027】
制御部40は、演算部46によって計算されたパラメータを使用して、プロセッサ32によって提供されたコマンドに基づいて、電源44及び表示部36を制御するように構成される。
【0028】
コントローラ3の正面パネルには、治療条件等を表示する表示部36と、臨床医または操作者が治療条件等を設定するための設定操作部35とが設けられている(図1参照)。また、コントローラ3は、図1に示すように、ケーブル4Lを介して操作スイッチ4に接続されてもよい。操作スイッチ4は、例えば組織の異なる部分を切断する間に、治療器具2に印加される電力を制御するための処置を行う臨床医によって使用され得る。
【0029】
また、組織切断用の供給電力を決定するために用いられる様々なパラメータは、種々の情報に関連付けられてメモリ34内、例えば、メモリ34に格納されたルックアップ・テーブル内に格納できる。当該種々の情報としては、組織の大きさ、組織の種類、組織のインピーダンス、組織のインピーダンスを決定する因子、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積、組織の形状及び大きさ、エンド・エフェクタ10の形状及び大きさ、DC電圧などが挙げられ得るが、これらに限定されない。ルックアップ・テーブルは、異なる治療部分の対応するパラメータの値を含むことができる。例えば、ルックアップ・テーブルは、筋肉組織、脂肪組織、血管、腸壁、または他の組織種類のパラメータを含むことができる。また、例えば、ルックアップ・テーブルは、インピーダンス(Z)、インピーダンスの増加率(Z´)、及びDC電圧の増加率(V´)など、大きさに基づくパラメータ変動を含むことができる。そのような大きさに基づくパラメータ変動は、所定の小、中、または大の接触面積に基づいて量子化されてもよく、エンド・エフェクタ10の所定の大きさ範囲に基づいて量子化されてもよく、または、エンド・エフェクタ10の大きさに基づいて連続的であってもよい。
【0030】
演算部46は、組織加熱前または組織加熱中のDC電圧の増加率(V´)、及び組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積を計算するために必要な他のパラメータ、を推定するように構成される。
【0031】
センサ部48は、組織の乾燥に関連する第1のパラメータを決定するように構成されている。例えば、センサ部48は、乾燥工程中のDC電圧の増加率(V´)を決定するように構成されてもよい。また、これに代えてまたは追加して、センサ部48は、乾燥工程中または乾燥工程後の組織インピーダンス(Z)またはインピーダンス増加率(Z´)を決定するように構成できる。また、第1のパラメータは、乾燥工程中のDC電圧が、第1の閾値に達する時間であり得る。
【0032】
また、センサ部48は、組織の凝固に関連する第2のパラメータを決定するように、さらに構成できる。例えば、センサ部48は、凝固工程中の時間または総電力出力の関数として、電源44によって出力される高周波電力を決定するように構成できる。
【0033】
また、演算部46は、制御部40及びセンサ部48の少なくとも一方から受信した入力に基づいて、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積を決定するように構成される。例えば、演算部46は、センサ部48によって測定された第1のパラメータに基づいて、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積を決定してもよい。組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積は、数式を使用するか、または、メモリ34に格納されたルックアップ・テーブルを使用して、第1のパラメータに基づいて推定されてもよく、ルックアップ・テーブルは、特定種類のエンド・エフェクタ10の接触面積のための予め計算された値、及び、第1のパラメータの値を含むことができ、量子化に基づくか、または、連続値に基づいている。
【0034】
図4は、電源44からのエンド・エフェクタ10への電力出力の挙動を示すグラフである。そのようなグラフは、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積、及び、組織の治療に関連する他のパラメータの推定に関連する第1及び第2のパラメータを決定するためのルックアップ・テーブルを作成するために使用することができる。
【0035】
図4に示すように、組織の治療は、3段階のサイクル400を含む。HPCS(High Power Cut Support)段階とも称される第1段階410において、エンド・エフェクタ10は、組織を乾燥させるために短時間(t)に高電力を出力する。この第1段階410の間、組織インピーダンスは上昇する。さらに、DC電圧は、放電に比例して上昇する。この上昇は、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に依存する。
【0036】
したがって、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積は、DC電圧が特定の閾値まで増加するのにかかる時間に基づいて推定できる。例えば、DC電圧が第1の閾値まで増加するのにかかる時間が、第1の時間閾値(tt1)以下である場合、接触面積は「小」または面積閾値未満であると決定できる。一方、DC電圧が第1の閾値まで増加するのにかかる時間が、第1の時間閾値(tt1)よりも大きい場合、接触面積は「大」または面積閾値よりも大きいと決定できる。
【0037】
切断段階とも称される第2段階420の間、エンド・エフェクタ10への電力出力はわずかに減少し、組織に流れる電流を増加させることによってアーク放電415を生じさせる。第2段階420は、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に基づいて決定された時間tの間、継続される。同様に、エンド・エフェクタ10への電圧出力などの他のパラメータも、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に基づいて決定される。
【0038】
凝固段階(または、COAG段階)とも称される第3段階430の間、エンド・エフェクタ10への電力出力は、第2段階420中に切断された組織を凝固(または、封止)できるように、さらに減少する。第3段階430は、通常は、最も長い段階であり、時間tにわたって継続される。
【0039】
生体組織を治療するための処置中、サイクル400は、切断の大きさに応じて、数回繰り返されてもよい。一例として、図4は、第1のサイクル400に続く第2のサイクル400’を示す。しかしながら、臨床医/操作者が、例えば、操作スイッチ4を作動することで意図している限り、最大3サイクル、最大5サイクル、最大10サイクル、最大20サイクル、またはそれより多いサイクル数など、様々なサイクル数の処置で使用できる。したがって、第2サイクル及び後続サイクルにおけるエンド・エフェクタ10への高周波電力出力を調節するための様々なパラメータは、前のサイクルで決定された、特に直前のサイクルで決定された、パラメータに基づいて決定され得る。例えば、切断がどのように行われるか、及び、行われる切断の目的に応じて、後続のサイクルにおける組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積が変化し得る。したがって、前のサイクルからの接触面積に関する推定は正確ではない可能性がある。それゆえ、第1段階410の時間t、第2段階420の時間t、及び第3段階430の時間tのいずれか1つまたは複数は、サイクルごとに異なり得る。
【0040】
例えば、後続のサイクルにおける第1段階410の時間tは、直前のサイクルの第3段階430に基づいて決定されてもよく、これは組織とエンド・エフェクタ10との間の初期接触面積を決定し、したがって組織を乾燥させるのに必要な電力を決定する。したがって、3回目以降のサイクルの第1段階410でのエンド・エフェクタ10への電力出力は、直前のサイクルの第3段階430中のエンド・エフェクタ10への電力出力に基づいて決定できる。
【0041】
また、例えば、第2のサイクルの後、そのサイクルの第1段階410中のDC電圧閾値到達時間、及び直前のサイクルの第3段階430中の出力に従って、第2段階420期間中の出力が決定される。このように決定することにより、サイクルごとに処置具と生体組織との間の接触面積が変化しても、サイクルごとの第2段階420期間の出力を微調整できる。
【0042】
図3に戻って参照すると、コントローラ3は、電源44を介してエンド・エフェクタ10への電力印加を制御するための様々なパラメータを決定するプロセッサ32を含む。コントローラ3は、第1段階410、第2段階420、及び第3段階430などの治療サイクルの異なる段階中に、エンド・エフェクタ10により組織に出力される高周波電気エネルギーを適切に調節するように電源44を制御する。
【0043】
エンド・エフェクタ10への電力入力を制御するために、プロセッサ32は、エンド・エフェクタ10への電力出力調節に関して、電源44を制御するための様々なパラメータを決定してもよい。例えば、プロセッサ32は、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積、治療サイクルの3段階のそれぞれの間にエンド・エフェクタ10に出力される電力、治療サイクルの各段階を継続すべき時間(例えば、切断電圧が組織に印加される時間量)などを決定できる。また、これらのパラメータは、センサ部48によって測定された第1及び第2のパラメータに基づいて決定できる。第1のパラメータは、例えば、DC電圧が特定の閾値に達するのにかかる時間、または、所与のサイクルの第1段階410中のDC電圧の増加率(V´)、であり得る。第2のパラメータは、例えば、治療サイクルの3つすべての段階中、特に、治療サイクルの第3段階430中のエンド・エフェクタ10への電力出力であり得る。
【0044】
また、プロセッサ32は、電源44の電力出力を制御することにより、エンド・エフェクタ10に供給される高周波電気エネルギーを制御する。したがって、プロセッサ32は、電源44に、エンド・エフェクタ10への電力出力を増減させるとともに、供給される電力の増減率、及び、電力が異なるレベルで供給されている時間、を変更させてもよい。加えて、プロセッサ32は、電源44に、エンド・エフェクタ10への電力出力を停止させてもよい。
【0045】
例えば、処置手順の開始前に、または処置手順の開始に関連して、すなわち第1段階410中に、プロセッサ32は、時間tの間、組織に一定の電力を印加するように電源44を制御できる。いくつかの実施形態では、tは、例えば、約10ms、約20ms、約30ms、約40ms、約50ms、約60ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約120ms、約140ms、約160ms、約180ms、約200ms、約250ms、約300ms、約400ms、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の任意の他の時間であってもよい。センサ部48は、第1段階410中にDC電圧を測定できる。次いで、プロセッサ32は、DC電圧の増加率(V´)、及びDC電圧が電圧閾値に達するのにかかる時間、を決定できる。
【0046】
次いで、プロセッサは、DC電圧の増加率(V´)、及びDC電圧が電圧閾値に達するのにかかる時間に基づいて、第2段階420中に組織に供給される高周波電気エネルギーを調節するために電源44を制御できる。組織に供給される高周波電気エネルギーは、切断エネルギーの印加に関連する切断エネルギー・パラメータを変更することで調節できる。切断エネルギー・パラメータは、例えば、エンド・エフェクタ10への電力出力、切断電圧が組織に印加される時間量、または、DC電圧であってもよい。したがって、組織に供給される高周波電気エネルギーは、エンド・エフェクタ10に(すなわち、組織に印加される)電力が出力される時間量を制御することによって、または、DC電圧を切断電圧値まで上昇させることによって、調節され得る。
【0047】
例えば、DC電圧が電圧閾値に達するのにかかる時間量が第1の時間閾値以上である場合、接触面積は面積閾値よりも大きいと決定される。接触面積が面積閾値を超えると決定された場合、プロセッサ32は、第2段階420が継続される時間量を増加させるように、電源44を制御できる。これに代えてまたは追加して、プロセッサ32は、エンド・エフェクタ10の電力出力を増加させるように、電源44を制御できる。同様に、プロセッサ32は、DC電圧が切断電圧閾値を超えて増加するまで、エンド・エフェクタ10に電力を出力し続けるように、電源44を制御できる。
【0048】
また、第2段階420中にエンド・エフェクタ10に電力が出力される時間量は、約1ms、約2ms、約3ms、約4ms、約5ms、約6ms、約7ms、約8ms、約9ms、約10ms、約11ms、約12ms、約13ms、約14ms、約15ms、約16ms、約17ms、約18ms、約19ms、約20ms、約22ms、約24ms、約26ms、約28ms、約30ms、約35ms、約40ms、約50ms、約55ms、約60ms、約65ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約120ms、約140ms、約160ms、約180ms、約200ms、またはこれらの値のうちの任意の2つの間の任意の時間量であってもよい。
【0049】
組織が切断されると、プロセッサ32は、サイクルを第3段階430に移行させるように、電源44をさらに制御できる。例えば、切断された組織を凝固させ、それによって切断された組織からの出血を止めることができるように、プロセッサ32は、電源44に、エンド・エフェクタ10への電力出力を所定の値に低下させることができる。プロセッサ32は、例えば、切断組織の大きさなどの様々なパラメータに応じて、第3段階430を継続する時間量を、さらに決定できる。切断された組織の大きさは、通常は、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に基づいて決定できる。したがって、プロセッサ32は、DC電圧の増加率(V´)、及びDC電圧が電圧閾値に達するのにかかる時間に基づいて、第3段階430を継続する時間量を決定できる。これに代えてまたは追加して、プロセッサ32は、第2段階420の時間量及び第2段階420中のエンド・エフェクタ10への電力出力に基づいて、第3段階430を継続する時間量を決定できる。
【0050】
また、第3段階430中に電力がエンド・エフェクタ10に出力される時間量は、10ms、約20ms、約30ms、約40ms、約50ms、約60ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約120ms、約140ms、約160ms、約180ms、約200ms、約250ms、約300ms、約400ms、約500ms、約600ms、約700ms、約800ms、約900ms、約1000ms、約1100ms、約1200ms、約1300ms、約1400ms、約1500ms、約1600ms、約1700ms、約1800ms、約1900ms、約2000ms、約2200ms、約2400ms、約2600ms、約2800ms、約3000ms、約3500ms、約4000ms、約5000ms、またはこれらの値のうちの任意の2つの間の任意の他の時間量であってもよい。
【0051】
別の態様では、本開示は、高周波電気エネルギーを用いて組織を治療するように構成された医療機器を使用して生体組織を治療する方法に関する。図5は、いくつかの実施形態による、生体組織を治療する方法のフローチャートを示す。
【0052】
方法500は、S501において、初期切断電力出力を設定するステップを含むことができる。S502では、サイクル数Nを1に設定する。S504において、第1段階410の電力出力が設定される。S504において組織に印加される高周波電気エネルギーは、本発明に係る第1の高周波電気エネルギーに相当する。本明細書で論じるように、組織に印加される高周波電気エネルギーの設定は、例えば、エンド・エフェクタ10への電力出力を制御すること、エンド・エフェクタ10に電力が出力される時間量を制御すること、及び、DC電圧が特定の電圧閾値に達することを可能にすること、によって実行され得る。
【0053】
理論に束縛されることを望むものではないが、組織に印加される電位の急激な上昇は、組織が完全に乾燥していない場合、第1段階410中に急速なアーク放電(図4の符号「415」を参照)を生じさせる場合がある。急速なアークは、組織が完全に乾燥していないため、望ましくない切断を引き起こす可能性があり、または過剰出血をもたらす可能性がある。したがって、組織に印加される高周波電気エネルギーの設定は、DC電圧の増加率(V´)を制御することによって、例えば、第1段階410中の組織に流れる電流の増加率を制御することによって、実行され得る。組織に流れる電流は、約2ms、約4ms、約6ms、約8ms、約10ms、12ms、約14ms、約16ms、約18ms、約20ms、約25ms、約30ms、約35ms、約40ms、約45ms、約50msを超える期間、またはこれらの値のうちのいずれか2つの間の任意の他の期間にわたって、増加され得る。
【0054】
S506では、第Nサイクルの第1のパラメータを推定する。また、第1のパラメータは、第1段階410中にDC電圧が第1の電圧閾値(Vth1)に達する時間(t,t)であり得る。例えば、第1段階410中にDC電圧が第1の電圧閾値(Vth1)に達するまでの時間(t)が、閾値時間(tth1)を下回れば、処置具と生体組織との間が小接触面積であることを示す。一方、第1段階410中にDC電圧が第1の電圧閾値(Vth1)に達するまでの時間(t)が、閾値時間(tth1)を上回れば、処置具と生体組織との間が大接触面積であることを示す。立ち上がり時間を短くしたHPCS電流(IHF)における、処置具と生体組織が小接触面積の場合及び大接触面積の場合に対応するDC電圧(VDC)の挙動の例を、図6Aの(I)、(II)、(III)に示す。
【0055】
また、第1のパラメータは、第1段階410中の組織に印加される電圧の上昇率であり得る。例えば、第1段階410中に所定の電圧閾値(Vth)に達するまでのDC電圧の増加率(V´)が、所定の増加率ΔVよりも大きい場合は、処置具と生体組織との間が小接触面積であることを示す。一方、第1段階410中に上記所定の電圧閾値(Vth)に達するまでのDC電圧の増加率(V´)が、上記所定の増加率ΔVよりも小さい場合は、処置具と生体組織との間が、大接触面積であることを示す。さらに、立ち上がり時間の長いHPCS電流、例えば、HPCS電流(IHF)の立ち上がり時間を10ms以上にすることで、処置具と生体組織との間が小接触面積となる場合にも変化を検出することができる。小接触面積及び大接触面積に対する、立ち上がり時間を長くしたHPCS電流における、処置具と生体組織が小接触面積である場合及び大接触面積である場合に対応するDC電圧の挙動の例を、図6Bの(I)、(II)、(III)に示す。
【0056】
続いて、組織に印加される高周波電気エネルギーを調節して組織を切断する。この段階は、サイクルの第2段階420に対応し、したがって、このサイクル中に組織に印加される高周波電気エネルギーは、切断エネルギーとも呼ばれる。切断エネルギーの調節は、第Nサイクルの第1のパラメータに基づいて行われ、N=1後のサイクルの場合、第Nサイクルの第1のパラメータ、及び、切断後に組織を凝固させるために印加される電力に基づく第(N-1)のサイクルの第2のパラメータに基づいて行われる。
【0057】
第1のサイクルについては、前のサイクルの第2のパラメータが存在しないので、S508において、N=1であるかどうかが判断されることに留意されたい。N=1である場合、S510において、組織を切断するために、第Nサイクル(すなわち、第1のサイクル)の第1のパラメータに基づいて、切断エネルギーが調節される。一方、Nが1に等しくない(すなわち、1より大きい)場合、S512において、第Nサイクルの第1のパラメータ、及び、組織を凝固させるために印加される電力に基づく第(N-1)サイクルの第2のパラメータ、に基づいて切断エネルギーが調節される。
【0058】
切断エネルギーの調節は、第2段階420中に組織に印加される電圧、第2段階420中のエンド・エフェクタ10への電力出力、第2段階420中にエンド・エフェクタ10に電力が出力される時間量、組織を横断するDC電圧、組織を横断するDC電圧の増加率(V´)などのうちの1つまたは複数を、変更することを含み得るが、これらに限定されない。したがって、電力がエンド・エフェクタ10に出力される時間量は、第Nサイクルの第1のパラメータ、及び第(N-1)のサイクルの第2のパラメータに基づいて、変更できる。例えば、第1のパラメータが所定の閾値以下である場合、切断エネルギーは、第1の時間閾値の間、エンド・エフェクタ10に電力を出力することによって調節される。第1のパラメータが上記所定の閾値よりも大きい場合、切断エネルギーは、エンド・エフェクタ10に電力が出力される時間を第2の時間閾値まで増加させることによって調節される。
【0059】
本明細書で論じられるように、切断エネルギーを調節するステップはまた、第1のパラメータに基づいて組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積を決定するステップと、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に基づいて切断エネルギー・パラメータを変更するステップと、を含み得る。組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積は、通常、一般的に事前に知られているエンド・エフェクタ10の形状及び大きさに依存するため、様々なエンド・エフェクタ10の形状及び大きさに対応する切断エネルギー・パラメータは、メモリ、例えばルックアップ・テーブルに格納され得る。したがって、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積が第1のパラメータに基づいて決定された後、切断エネルギー・パラメータをメモリから決定できる。
【0060】
S514は第3段階430に対応し、その間に、第2段階420で切断された組織に印加される第2の高周波電気エネルギーが、組織を凝固させるように調節される。第3段階430は、切断された組織を凝固させることにより、組織の切断により露出した血管を封止するように行われる。第3段階430の間、第2の高周波電気エネルギーを調節するステップは、エンド・エフェクタ10への電力出力を変更するステップ、エンド・エフェクタ10に電力を出力する時間量を変更するステップ、などを含み得るが、これらに限定されない。
【0061】
理論に拘束されることを望むものではないが、より大きな組織は、凝固するのにより長い時間を必要とすることがある。したがって、第2の高周波電気エネルギーを調節するステップは、例えばS508中に決定されるように、組織とエンド・エフェクタ10との間の接触面積に基づいてエンド・エフェクタ10に電力が出力される時間量を変更するステップを含み得る。
【0062】
さらに、切断された組織の大きさが大きい場合、組織を凝固させるためのエンド・エフェクタ10への電力出力は大きくなる。したがって、第3段階430中のエンド・エフェクタ10への電力出力は、切断された組織の大きさの指標であり、したがって、後続のサイクルで組織を乾燥させるために印加される高周波電気エネルギーのパラメータを決定するために使用できる。したがって、S516において、第2のパラメータ、例えば第Nサイクルの第3段階430中のエンド・エフェクタ10への電力出力が決定される。本明細書で論じるように、第2のパラメータは、3回目以降のサイクル中に乾燥される組織の大きさを示し、したがって、第1段階410中にエンド・エフェクタ10に出力される電力、及び、第1の高周波電気エネルギーの調節に関連する他のパラメータを決定するために使用される。
【0063】
S518では、サイクル数を、1増加させる。次いで、方法はS504に戻り、サイクルを継続して繰り返す。
【0064】
図6A及び図6Bは、HPCS電流(グラフ(I))及び対応するDC電圧の挙動(小接触面積の実例であるグラフ(II)、及び大接触面積の実例であるグラフ(III))を示すグラフである。図6Aのグラフは、HPCS電流(IHF)の印加中にDC電圧(VDC)が第1の電圧閾値(Vth1)に達するのにかかる時間(t,t)によって、処置具と組織との間の接触面積が決定され得ることを実証している。図示の例では、小接触面積は、閾値時間(tth1)よりも小さい時間(t)を有する(グラフ(II)を参照)一方で、大接触面積は、閾値時間(tth1)よりも大きい時間(t)を有している(グラフ(III)を参照)。CUTの出力特性は、接触面積に応じて決定される。また、小接触面積の例(グラフ(II)参照)では、CUT出力時間が短く、出力電圧が小さく、DC電圧(VDC)が小さい一方で、大接触面積の例(グラフ(III)参照)では、CUT出力時間が長く、出力電圧が大きく、DC電圧(VDC)が大きい。
【0065】
図6Bのグラフは、HPCS電流(IHF)が増加する期間を増加させることにより、例えば、期間を10ms以上に増加させることにより、HPCS電流(IHF)の印加中にDC電圧(VDC)がいつどの時点(t,t)で第1の電圧閾値(Vth1)に達するかが、より容易に検出されること実証している。図6A及び図6Bに示す例では、小接触面積は、閾値時間(tth1)よりも小さい時間(t)を有する(グラフ(II)を参照)一方で、大接触面積は、閾値時間(tth1)よりも大きい時間(t)を有している(グラフ(III)を参照)。サイクルの第2段階420中の出力特性は、接触面積に応じて決定される。
【0066】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、高周波電気エネルギーを使用して生体組織を治療するために使用される電気外科手術の効率及び信頼性を改善する。本明細書に開示されるシステム及び方法は、組織が完全に乾燥していないとき、組織の切断中の自然発生的なアーク放電の発生率をさらに低減し、したがって、部分的に乾燥した組織の切断によって引き起こされる過剰な出血を防止する。さらに、本明細書に開示されるシステム及び方法は、組織切断工程中の組織の大きさに基づいて組織への高周波電気エネルギー入力を制御することによって、組織を切断する工程の速度及び効率を改善する。
【0067】
本発明を上記の例示的な実施形態に関連して説明したが、具体的に説明されていない追加、削除、修正、及び置換は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることが当業者には理解されよう。
【0068】
上記の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な構成を実施できるように提供されたものである。本技術は、様々な図及び構成を参照して特に説明されているが、これらは例示のみを目的としており、本技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0069】
本技術を実施するための他の多くの方法が存在し得る。本明細書に記載された様々な機能及び要素は、本技術の範囲から逸脱することなく、示されたものとは異なるように分割され得る。これらの構成に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の構成に適用されてもよい。したがって、本技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって本技術に対して多くの変更及び修正を行うことができる。
【0070】
開示された工程におけるステップの特定の順序または階層は、例示的な手法の実例であることが理解される。設計上の選好に基づいて、工程におけるステップの特定の順序または階層が再配置され得ることが理解される。ステップのいくつかは、同時に実行されてもよい。添付の方法に関する請求項は、サンプルの順序で様々なステップの要素を提示し、提示された特定の順序または階層に限定されることを意味しない。
【0071】
本明細書の請求項のいずれかは、独立項のいずれか1つまたは従属項のいずれか1つに依存できる。一態様では、請求項(例えば、従属項または独立項)のいずれかは、任意の他の1つまたは複数の請求項(例えば、従属項または独立項)と組み合わせることができる。一態様では、請求項は、節、文、句または段落に列挙された単語(例えば、ステップ、動作、手段または構成要素)の一部または全部を含むことができる。一様態では、請求項は、1つまたは複数の節、文、句または段落に列挙された単語の一部またはすべてを含むことができる。一態様では、節、文、句、または段落のそれぞれにおける、単語の一部が削除されてもよい。一態様では、追加の単語または要素が、節、文、句、または段落に追加されてもよい。一様態では、主題技術は、本明細書に記載された構成要素、要素、機能または動作のいくつかを利用することなく実装され得る。一態様では、主題技術は、追加の構成要素、要素、機能または動作を利用して実装され得る。
【0072】
単数形「1つの」及び「その」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0073】
1つまたは複数の態様では、「約」、「実質的に」、及び「およそ」という用語は、1%未満~5%など、それらの対応する用語及び項目の少なくともいずれかの間の関連性について業界で受け入れられている許容誤差を提供することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、作用、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全またはほぼ完全な、限度または程度を指す。
【0075】
範囲形式は単に便宜上及び簡潔さのために使用され、したがって、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「約0.5~10cm」の数値範囲は、約0.5cm~約10.0cmの明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、5、及び7などの個々の値、ならびに、2~8、4~6などの部分範囲が含まれる。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。さらに、そのような解釈は、記載されている範囲の広さまたは特性にかかわらず適用されるべきである。
【0076】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法、装置及び材料は、本開示の実施または試験に使用することができるが、代表的な方法、装置及び材料は、以下に記載されている。
【0077】
単数形の要素への言及は、「1つ及び1つのみ」を意味するものではなく、特に明記しない限り、むしろ「1つまたは複数」を意味するものである。「一部」という用語は、1つまたは複数を指す。当業者に知られている、または後に当業者に知られるようになる、本開示を通して説明される様々な構成の要素に対するすべての構造的及び機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、主題技術に包含されることが意図される。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が上記の説明に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に提供されることを意図していない。
【0078】
本明細書に記載された技術は、具体的な方法で実施されるものとして具体的に記載されていない限り、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組み合わせで実装され得る。モジュールまたは構成要素として説明された任意の特徴はまた、集積論理デバイス内で一緒に、または個別であるが連携可能な論理デバイスとして別々に、実装されてもよい。ソフトウェアに実装される場合、本技法は、実行されると、上述した方法のうちの1つまたは複数を実行する命令を含む非一時的なプロセッサ可読記憶媒体によって、少なくとも部分的に実現することができる。
【0079】
非一時的なプロセッサ可読記憶媒体は、同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(SDRAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、FLASHメモリ、他の既知の記憶媒体などのランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含むことができる。本技法は、これに代えてまたは追加して、命令またはデータ構造の形態のコードを搬送または通信し、コンピュータまたは他のプロセッサによってアクセス、読み取り、及び実行の少なくともいずれかを行うことができるプロセッサ可読通信媒体によって、少なくとも部分的に実現できる。例えば、電子メールを送受信したり、インターネットやローカル・エリア・ネットワーク(LAN)などのネットワークにアクセスしたりする際に使用されるような、コンピュータ可読電子データを搬送するために、搬送波が使用され得る。特許請求される主題の範囲または趣旨から逸脱することなく、この構成に多くの修正を加えることができる。
発明を実施するための形態は多くの詳細を含むが、これらは主題技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に主題技術の異なる例及び態様を例示するものとして解釈されるべきである。主題技術の範囲は、上記で詳細に論じられていないいくつかの実施形態を含むことを理解されたい。本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される主題技術の方法及び装置の構成、動作、及び詳細において、様々な他の修正、変更、及び変形を行うことができる。特に明記しない限り、単数形の要素への言及は、明示的に述べられていない限り、「1つ及び1つのみ」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つまたは複数」を意味することを意図している。さらに、本開示の範囲内に包含されるために、本開示の異なる実施形態によって解決可能な(または達成可能なすべての利点を有する)すべての問題に、機器または方法が対処する必要はない。本明細書における「できる」及びその派生語の使用は、肯定的な能力とは対照的に、「場合により」または「任意選択で」の意味で理解されるものとする。
【符号の説明】
【0080】
1 医療機器
2 器具
3 コントローラ
4 操作スイッチ
2A1 把持部
2A2 シャフト
2A3 開閉操作部
2A4 把持部分
2L ケーブル
4L ケーブル
10 エンド・エフェクタ
11A 第1把持部
11B 第2把持部
32 プロセッサ
34 メモリ
35 設定操作部
36 表示部
40 制御部
42 入力部
44 電源
46 演算部
48 センサ部
200 エンド・エフェクタ
210 エンド・エフェクタ
220 エンド・エフェクタ
400 サイクル
410 第1段階
415 アーク放電
420 第2段階
430 第3段階
500 方法
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B