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特許7330324表面保護層形成用塗料組成物、表面保護形成方法および塗装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】表面保護層形成用塗料組成物、表面保護形成方法および塗装体
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230814BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20230814BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022056664
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-03-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】末次 晃
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐
(72)【発明者】
【氏名】畠山 忠
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270034(JP,A)
【文献】特開2008-231173(JP,A)
【文献】特開2004-090507(JP,A)
【文献】特開2001-122709(JP,A)
【文献】特開平09-188847(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/108880(JP,A1)
【文献】国際公開第2022/019199(WO,A1)
【文献】特開2012-201778(JP,A)
【文献】特開2020-050808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化層を含む意匠層と、該活性エネルギー線硬化層に接する層とを含む塗装体であって、前記活性エネルギー線硬化層に接する層が、意匠層を保護するための表面保護層形成用塗料組成物によって形成される表面保護層であり、
前記表面保護層形成用塗料組成物が、水分散性樹脂と、塗料組成物中に分散または溶解している(A)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤とを含有し、
前記水分散性樹脂が、(B)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂を含み、成分(A)および成分(B)の一方は少なくとも紫外線吸収剤であり、成分(A)および成分(B)の他方は少なくともラジカル捕捉剤であり、
前記水分散性樹脂が、架橋形成成分を構成要素として含む樹脂を含むか、および/または前記表面保護層形成用塗料組成物が、さらに架橋形成成分を含み、ここで、前記架橋形成成分を構成要素として含む樹脂は、前記紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂であってもよいことを特徴とする、塗装体
【請求項2】
意匠層と、該意匠層上に形成された表面保護層と、該表面保護層上に形成された光触媒層とを含む塗装体であって、前記表面保護層が、意匠層を保護するための表面保護層形成用塗料組成物によって形成される表面保護層であり、
前記表面保護層形成用塗料組成物が、水分散性樹脂と、塗料組成物中に分散または溶解している(A)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤とを含有し、
前記水分散性樹脂が、(B)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂を含み、成分(A)および成分(B)の一方は少なくとも紫外線吸収剤であり、成分(A)および成分(B)の他方は少なくともラジカル捕捉剤であり、
前記水分散性樹脂が、架橋形成成分を構成要素として含む樹脂を含むか、および/または前記表面保護層形成用塗料組成物が、さらに架橋形成成分を含み、ここで、前記架橋形成成分を構成要素として含む樹脂は、前記紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂であってもよいことを特徴とする、塗装体。
【請求項3】
前記水分散性樹脂が、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装体
【請求項4】
前記水分散性樹脂が、マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂を含むか、および/または、前記表面保護層形成用塗料組成物が、マルテンス硬度が5~90N/mmの別の樹脂をさらに含み、ここで、前記マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂は、前記紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂であってもよいし、前記架橋形成成分を構成要素として含む樹脂であってもよいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗装体
【請求項5】
前記表面保護層形成用塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を樹脂成分中に10質量%以上含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の塗装体
【請求項6】
前記表面保護層形成用塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を樹脂成分中に40重量%以上含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の塗装体
【請求項7】
前記塗装体のマルテンス硬度が10~200N/mmであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗装体。
【請求項8】
前記表面保護層が、付着向上剤を含む第1の保護層と、付着向上剤を含まない第2の保護層の少なくとも2層よりなることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の塗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護層形成用塗料組成物、表面保護形成方法および塗装体に関し、特には、優れた耐候性を実現し得る表面保護層を形成可能な塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の外装用建材として、表面に意匠層を備えた窯業系サイディングボードや金属サイディングボード、ALCパネル等の建築板が使用されている。これら建築板は、建設後、太陽光や紫外線、雨雪や風等の環境因子に耐え、表面の意匠が長く保持されることが求められることから、意匠層を保護する表面保護層が形成されることが多い。特に近年、インクジェットインク等の印刷技術の発展や、サンゴ、貝殻、ビーズやメタリック顔料等の意匠形成材料の多様化によって、意匠層が多岐に亘るとともに、表面に凹凸を有することも多くなり、表面保護層に求められる機能は益々高くなってきている。
【0003】
特開2011-93306号公報(特許文献1)は、基材の表面に受理層と、印刷層と、トップクリヤー層とを有する建築用化粧板に関する発明を記載する。特許文献1は、トップクリヤー層を形成するための水系クリヤー塗料にシランカップリング剤、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等の硬化剤を添加することによって、印刷層におけるインク滲みや層間剥離が可及的に改善され、化粧用塗膜全体の耐久性(耐水性、耐光性、及び耐候性)が顕著に改善された建築用化粧板を提供できることを記載する。
【0004】
また、特許文献1には、背景として、従来の水系クリヤー塗料でトップクリヤー層を形成した場合には、印刷層において模様を形成するインクがその上に塗装された水系クリヤー塗料の水性溶剤中に再溶解(インク再溶解)して、印刷層にインクの滲みが発生し、場合によってはインクの受理層とトップクリヤー層との間に剥離(層間剥離)が発生し、印刷層における耐水性やインクの滲みにおいて必ずしも十分な保護性能が得られず、製品の品質安定の観点から、トップクリヤー層を形成するクリヤー塗料については溶剤系クリヤー塗料を用いざるを得ないのが実情であったことが記載されている。このインク再溶解の問題は、インクが水系インクである場合に、より顕著に見られるものと認められる。特許文献1では、水系インクを用いた場合についての検証が行われていることから、特許文献1に記載された発明において、トップクリヤー層は、水系インクから形成された印刷層に対しても問題なく適用可能な表面保護層であると認められる。
【0005】
国際公開第2012/133667号(特許文献2)は、基材上に、下塗り塗膜層を形成し、次いでインクジェット方式により活性エネルギー線硬化型インクを塗装し、硬化させ、その後に上塗り塗料を塗装して上塗り塗膜層を形成させる工程を含む複層塗膜の製造方法に関する発明を記載する。特許文献2では、インクが活性エネルギー線硬化型インクであることから、インク再溶解の問題はないものの、層間での密着性が低いことから、下塗り塗膜層の表面自由エネルギー、活性エネルギー線硬化型インクの表面張力および上塗り塗料の表面張力を調整することによって、密着性に関する課題を解決したことが記載されている。
【0006】
特開2016-55249号公報(特許文献3)は、下塗塗装を施した基材上に、活性エネルギー線硬化型インクから硬化塗膜を形成し、次いで、上塗り塗料を塗装する建築板の製造方法に関する発明を記載する。ここでも、活性エネルギー線硬化型インクを用いたことによる層間の付着性の低下を課題として挙げており、特許文献3に記載の発明によれば、活性エネルギー線硬化型インクから形成される硬化塗膜についての硬化反応時の反応率および上塗り塗料の塗装時の表面温度を制御することで、付着性に関する課題を解決したことが記載されている。
【0007】
特開2019-217680号公報(特許文献4)は、基材上に活性エネルギー線硬化型インクによるインク層および表面保護層を有する印刷物に関する発明を記載する。特許文献4では、活性エネルギー線硬化型インクによるインク層の臭気の問題について、インク層中に残存する未反応モノマーの放散がその原因であることに着目し、未反応モノマーの放散量を抑えるため、インク層の上に表面保護層を積層させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-93306号公報
【文献】国際公開第2012/133667号
【文献】特開2016-55249号公報
【文献】特開2019-217680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4に記載の発明によれば、いずれも意匠性に優れる意匠層の形成を可能にするとともに、意匠層を保護可能な表面保護層を形成することで、屋外での使用にも耐えられる印刷物を提供することができる。他方で、建築物の塗り替えは、足場の組立、塗装、養生、足場の解体等の多大な労力を要することから、塗り替え時期を遅らせるために、長期に亘って耐候性を確保することが求められている。特に、活性エネルギー線硬化型インクによって形成された意匠層は、従来のエナメル塗料に比べて分子量が低いとともに膜厚が薄く、紫外線の影響を受けやすくなることから、表面保護層でいかに紫外線を遮蔽し、風雨等の環境因子から意匠層を保護するかが重要となる。また、最表層に光触媒層が存在する場合、紫外線により生じたラジカルにより塗膜が劣化しやすくなるため、ラジカルに対して劣化しにくい保護機能が表面保護層に対して要求される。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高いレベルの耐候性を実現し得る表面保護層であって、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクである場合や最表層に光触媒層が存在する場合にも長期に亘ってその意匠を保護できる表面保護層を形成することが可能な塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる塗料組成物を用いた表面保護形成方法および塗装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、高いレベルの耐候性を実現するために、まず、紫外線吸収剤とラジカル捕捉剤の配合量を増やす検討を行った。しかしながら、紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤を水系塗料に適用させるためには界面活性剤の添加が必要となる。このため、耐候性を得る目的で塗膜中の紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤の量を増やすと、界面活性剤もある程度配合されることになり、耐水性、特に耐温水性が悪化し、塗膜が白化したり、剥がれたりする不具合を生じた。
【0012】
次に、本発明者らは、耐水性の劣化を防止して耐候性を向上させるために、水分散性樹脂の原料単量体と一緒に紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤も重合させることを着想した。これは、耐候性の向上に一定の効果を有してはいたものの、樹脂の構成単位として安定して共重合できる紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤の量には限りがあり、より高いレベルの耐候性を実現するには至らなかった。
【0013】
本発明者らは、さらに検討を進めたところ、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部を樹脂の構成単位として用いるとともに、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分を水中に分散または溶解させる手法であれば、耐水性を低下させずに耐候性を向上できることが分かった。また、架橋形成成分を用いて塗膜中に架橋を形成することで、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の塗膜からの流出を防ぎ、この耐候性を長期に亘って維持することも可能である。本発明者らは、これらの手法を組み合わせることによって、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクによって形成された意匠層である場合であっても、長期に亘って保護できる表面保護層を提供できることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
従って、本発明の塗料組成物は、意匠層を保護するための表面保護層形成用塗料組成物であって、
前記表面保護層形成用塗料組成物が、水分散性樹脂と、塗料組成物中に分散または溶解している(A)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤とを含有し、
前記水分散性樹脂が、(B)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂を含み、成分(A)および成分(B)の一方は少なくとも紫外線吸収剤であり、成分(A)および成分(B)の他方は少なくともラジカル捕捉剤であり、
前記水分散性樹脂が、架橋形成成分を構成要素として含む樹脂を含むか、および/または前記表面保護層形成用塗料組成物が、さらに架橋形成成分を含み、ここで、前記架橋形成成分を構成要素として含む樹脂は、前記紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂であってもよいことを特徴とする、表面保護層形成用塗料組成物である。
【0015】
本発明の塗料組成物の好適例においては、前記水分散性樹脂が、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む。
【0016】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記水分散性樹脂が、マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂を含むか、および/または、前記表面保護層形成用塗料組成物が、マルテンス硬度が5~90N/mmの別の樹脂をさらに含み、ここで、前記マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂は、前記紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂であってもよいし、前記架橋形成成分を構成要素として含む樹脂であってもよい。
【0017】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記表面保護層形成用塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を樹脂成分中に10質量%以上含む。
【0018】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記表面保護層形成用塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を樹脂成分中に40重量%以上含む。
【0019】
また、本発明の表面保護層形成方法は、上述した本発明の表面保護層形成用塗料組成物を意匠層に塗装して表面保護層を形成することを特徴とする、表面保護層形成方法である。
【0020】
本発明の表面保護層形成方法の好適例においては、前記表面保護層形成用塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を樹脂成分中に40重量%以上含むとともに、前記表面保護層形成用塗料組成物を塗装した後、80~150℃で加熱乾燥する。
【0021】
また、本発明の塗装体の一の態様は、活性エネルギー線硬化層を含む意匠層と、該活性エネルギー線硬化層に接する層とを含む塗装体であって、前記活性エネルギー線硬化層に接する層が上述した本発明の表面保護層形成用塗料組成物によって形成される表面保護層であることを特徴とする、塗装体である。
【0022】
本発明の塗装体の別の態様は、意匠層と、該意匠層上に形成された表面保護層と、該表面保護層上に形成された光触媒層とを含む塗装体であって、前記表面保護層が上述した本発明の表面保護層形成用塗料組成物によって形成される表面保護層であることを特徴とする、塗装体である。
【0023】
本発明の塗装体の好適例においては、前記塗装体のマルテンス硬度が10~200N/mmである。
【0024】
本発明の塗装体の他の好適例においては、前記表面保護層が、付着向上剤を含む第1の保護層と、付着向上剤を含まない第2の保護層の少なくとも2層よりなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の塗料組成物によれば、高いレベルの耐候性を実現し得る表面保護層であって、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクである場合や最表層に光触媒層が存在する場合にも長期に亘ってその意匠を保護できる表面保護層を形成することが可能な塗料組成物を提供することができる。また、本発明の表面保護層形成方法および塗装体によれば、かかる塗料組成物を用いた表面保護形成方法および塗装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、塗料組成物、表面保護層形成方法および塗装体に関する。
【0027】
本発明の1つの態様は、水分散性樹脂と、紫外線吸収剤(場合によりその一部または全部が水分散性樹脂中に構成要素として含まれる)と、ラジカル捕捉剤(場合によりその一部または全部が水分散性樹脂中に構成要素として含まれる)と、架橋形成成分(場合によりその一部または全部が水分散性樹脂中に構成要素として含まれる)を含有する塗料組成物である。本明細書では、この塗料組成物を「本発明の塗料組成物」とも称する。
【0028】
本発明の塗料組成物において、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部は、水分散性樹脂に共重合されている。
【0029】
ここで、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」とは、本発明の塗料組成物に使用された紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の全体の一部を意味する。「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の全体の一部であることから、紫外線吸収剤のみの場合、ラジカル捕捉剤のみの場合、そして、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の両方の場合があり得る。また、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の全体の一部であることから、本発明の塗料組成物に使用された紫外線吸収剤の全部である場合、そして、本発明の塗料組成物に使用されたラジカル捕捉剤の全部である場合もあり得る。
【0030】
また、「水分散性樹脂に共重合されている」とは、水分散性樹脂の構成単位として「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」と他の単量体とが共重合されていることを意味する。言い換えれば、水分散性樹脂は、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」を構成要素(繰り返し単位等)として含むことを意味する。
【0031】
本発明の塗料組成物において、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分は水分散性樹脂に共重合されていない。
【0032】
ここで、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」とは、本発明の塗料組成物に使用された紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の全体から、水分散性樹脂に共重合されている「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」を除いた部分を意味する。「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」は、紫外線吸収剤のみの場合、ラジカル捕捉剤のみの場合、そして、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の両方の場合があり得る。また、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」は、本発明の塗料組成物に使用された紫外線吸収剤の全部である場合、そして、本発明の塗料組成物に使用されたラジカル捕捉剤の全部である場合もあり得る。
【0033】
また、「水分散性樹脂に共重合されていない」とは、水分散性樹脂の構成単位として存在していないことを意味する。このため、本発明の塗料組成物において、「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」は、塗料組成物中に分散または溶解して存在している。
【0034】
本発明の塗料組成物において、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部は水分散性樹脂に共重合されているとともに、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分は水分散性樹脂に共重合されていない。これによって、耐水性を低下させずに耐候性を向上させることができ、表面保護層の劣化を防ぐことができる。
【0035】
また、本発明の塗料組成物は、水分散性樹脂と、塗料組成物中に分散または溶解している(A)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を含有し、ここで、水分散性樹脂が、(B)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂を含み、成分(A)および成分(B)の一方は少なくとも紫外線吸収剤であり、成分(A)および成分(B)の他方は少なくともラジカル捕捉剤であると表現することもできる。
【0036】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の量は、2.0~15.0質量%であることが好ましく、4.0~13.0質量%であることがより好ましく、6.0~11.0質量%であることがさらに好ましい。ここでの「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の量」は、本発明の塗料組成物に使用された紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の全量であり、水分散性樹脂に共重合されている「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」と水分散性樹脂に共重合されていない「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」の合計である。
【0037】
本明細書において、塗膜形成成分とは、水、有機溶剤、成膜助剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分である。本明細書においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を塗膜形成成分として取り扱う。本発明の塗料組成物中の塗膜形成成分の量は、例えば20~80質量%であり、好ましくは30~70質量%であり、特に好ましくは35~60質量%である。
【0038】
本発明の塗料組成物において、水分散性樹脂に共重合されている「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の一部」の量(A)と水分散性樹脂に共重合されていない「紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の残りの部分」の量(B)の質量比(A:B)は、5:95~95:5であることが好ましく、15:85~85:15であることがより好ましい。
【0039】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収し、紫外線による劣化を防止する作用を有する。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤(特にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)、ベンジリデンカンファー系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、紫外線吸収剤は、吸収ピークの異なる2種以上の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことが特に好ましい。
【0040】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン-2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-(ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレン-ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,6-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ヒドロキシフェニルトリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤のうち、重合性の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体等の紫外線吸収性単量体が挙げられる。
【0042】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルアミノメチル-5’-tert-オクチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(β-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3’-tert-ブチルフェニル]-4-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-5'-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-[3-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル]フェニルプロピオネート等が挙げられる。
【0043】
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-[3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0044】
本明細書において、(メタ)アクリロイルの語は、メタクリロイルまたはアクリロイルを意味する。例えば、2-ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノンは、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノンまたは2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノンである。
【0045】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の紫外線吸収剤の量は、1.5~9.0質量%であることが好ましく、2.5~7.5質量%であることがより好ましく、3.0~6.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「紫外線吸収剤の量」は、紫外線吸収剤が、水分散性樹脂に共重合されている紫外線吸収剤と水分散性樹脂に共重合されていない紫外線吸収剤からなる場合は、その合計量を意味する。
【0046】
ラジカル捕捉剤は、フリーラジカル等を捕捉し、光安定性を向上させることができる。また、本発明においては、フリーラジカルと反応し、重合反応が起こることを防止する機能を有する物質(いわゆる重合禁止剤)も、ラジカル捕捉剤に含まれる。ラジカル捕捉剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、フェノール系化合物、フェノチアジン系化合物、ニトロソ系化合物、N-オキシル系化合物等が挙げられ、特にヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)が好ましい。
【0048】
ラジカル捕捉剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-{2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ{4.5}デカン-2,4-ジオン等のヒンダードアミン系化合物、フェノール、o-、m-又はp-クレゾール、2-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-メチル-4-t-ブチルフェノール、4-t-ブチル-2,6-ジメチルフェノール等のフェノール系化合物、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン4-メチルベンズカテキン、t-ブチルハイドロキノン、3-メチルベンズカテキン、2-メチル-p-ハイドロキノン、2,3-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、t-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン等のハイドロキノン系化合物、フェノチアジン等のフェノチアジン系化合物、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等のニトロソ系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル等のN-オキシル系化合物等が挙げられる。
【0049】
ラジカル捕捉剤のうち、重合性のラジカル捕捉剤としては、例えば、重合性光安定性単量体等が挙げられる。重合性光安定性単量体は、重合性基と、光安定化作用を有する官能基とを有する化合物である。重合性基としては、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルケニルカルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基等)等の重合性不飽和基等が挙げられる。
【0050】
重合性光安定性単量体としては、例えば、後述するヒンダードアミン系重合性光安定性単量体の他、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物等が挙げられる。
【0051】
ヒンダードアミン系重合性光安定性単量体としては、例えば、ピペラジン骨格(特に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格)を有する重合性化合物(ピペラジン骨格及び重合性基を有する化合物)等が挙げられる。
【0052】
代表的なヒンダードアミン系重合性光安定性単量体としては、下記構造式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【化1】
構造式(1)において、RおよびRは、水素原子またはアルキル基であり、R、R、RおよびRは、アルキル基であり、Xは、酸素原子(-O-)またはイミノ基(-NH-)であり、YおよびZは、水素原子または置換基である。
【0053】
構造式(1)のR~Rにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等のC1-20アルキル基、好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基等が挙げられる。代表的なRおよびRは、水素原子またはメチル基であり、特にRが水素原子、Rが水素原子またはメチル基であることが好ましい。代表的なR~Rは、メチル基である。
【0054】
構造式(1)のYおよびZにおける置換基としては、炭化水素基[例えば、アルキル基{例えば、メチル基等の前述のアルキル基(例えば、C1-20アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基)}]、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のC1-20アルコキシ基、好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-4アルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基等のC1-10アシル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ヒドロキシル基、重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基)等が挙げられる。
【0055】
構造式(1)において、代表的なYとしては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基等のC1-4アルキル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等のC1-4アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基等のC1-4アシル基)、(メタ)アクリルロイル基、クロトノイル基等が挙げられ、特に、水素原子またはメチル基が好ましい。代表的なZとしては、水素原子またはシアノ基が挙げられ、特に水素原子が好ましい。
【0056】
ヒンダードアミン系重合性光安定性単量体としては、例えば、4-(メタ)アクリルロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、置換基を有する4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン{例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルキルピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-1-C1-4アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン]、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルコキシピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイル-1-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-1-C1-4アルコキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン]等のN-置換(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-置換-4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等}等の4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、置換基を有する4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン{例えば、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-アルキルピペリジン[例えば、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン等の4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-C1-4アルキルピペリジン]等のN-置換(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-置換-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等}等の4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類;1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類等が挙げられる。
【0057】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中のラジカル捕捉剤の量は、0.5~6.0質量%であることが好ましく、1.5~5.5質量%であることがより好ましく、2.5~5.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「ラジカル捕捉剤の量」は、ラジカル捕捉剤が、水分散性樹脂に共重合されているラジカル捕捉剤と水分散性樹脂に共重合されていないラジカル捕捉剤からなる場合は、その合計量を意味する。
【0058】
本発明の塗料組成物は、水分散性樹脂を含む。本明細書において「水分散性樹脂」とは、水中に分布して不均質な系(例えば乳濁液又は懸濁液)を形成することが可能な樹脂である。水分散性樹脂は、エマルション樹脂を含むことが好ましい。エマルション樹脂は、分子量を大きくすることが可能であり、また、分散安定性にも優れる水分散性樹脂である。本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の水分散性樹脂の量は、30~95質量%であることが好ましく、35~90質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。水分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。本明細書において「アクリル成分」とは、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、アミド等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物やアクリル酸ニトリル、メタクリル酸ニトリル等)を指す。上述した重合性紫外線吸収剤および重合性ラジカル捕捉剤も(メタ)アクリロイル基を有するものは「アクリル成分」に含まれる。アクリル成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂には、アクリル樹脂の他、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ふっ素変性アクリル樹脂、脂肪酸変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等の各種変性樹脂も含まれる。
【0061】
水分散性樹脂中のアクリル成分の量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
本明細書において、「水分散性樹脂中の成分Xの量」と表現する場合は、塗料組成物中に含まれる水分散性樹脂の全質量に対する成分Xの量を意味する。例えば、塗料組成物中の水分散性樹脂が、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂(A)と、アクリル成分を含まない水分散性樹脂(B)からなる場合、「水分散性樹脂中のアクリル成分の量」は、水分散性樹脂(A)と水分散性樹脂(B)の合計質量に対するアクリル成分の量を意味する。
【0063】
水分散性樹脂は、非アクリル成分を構成要素(繰り返し単位等)として含むことができる。非アクリル成分とは、アクリル成分以外の成分であり、例えば、スチレンの他、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、ビニルバーサチック酸等のカルボキシル基含有単量体;メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル系モノマー;マレイン酸アミド等のアミド系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;ジアルキルフマレート、アリルアルコール、ビニルピリジン、ブタジエン等が挙げられる。
【0064】
水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。ここで、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。
【0065】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0066】
水分散性樹脂中の紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の量は、0.5~15.0質量%であることが好ましく、1.0~13.0質量%であることがより好ましく、1.5~11.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の量」とは、水分散性樹脂が紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のいずれか一方のみを含む場合は紫外線吸収剤またはラジカル捕捉剤の量を意味し、水分散性樹脂が紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の両方を含む場合は紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の合計量を意味する。
紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤の量は、0.5質量%より少ない場合、長期間屋外で雨、太陽光などに曝されることで塗膜が劣化しやすく、15.0質量%よりも多い場合、塗膜が黄変などの不具合を生じやすくなる。
【0067】
水分散性樹脂は、SP値9.4以下の単量体を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0068】
SP値9.4以下の単量体を用いることで、樹脂の耐水性を向上させることができ、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤のブリードを抑制することができる。単量体のSP値は8.50~9.40であることが好ましい。SP値9.4以下の単量体は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。SP値9.4以下の単量体としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。SP値9.4以下の単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本明細書において、(メタ)アクリレートの語は、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートは、2-エチルヘキシルアクリレートまたは2-エチルヘキシルメタクリレートである。また、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等のように、複数であることを示す接頭語が(メタ)アクリレートに付されている場合もあるが、この場合の各(メタ)アクリレートは、同一でも異なっていてもよい。
【0070】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0071】
水分散性樹脂中のSP値9.4以下の単量体の量は、1.0~60.0質量%であることが好ましく、3.0~45.0質量%であることがより好ましく、5.0~30.0質量%であることがさらに好ましい。
【0072】
SP値(溶解パラメーター)とは、相溶性を判断する際の目安となるもので、種々の計算方法や実測方法があるが、本明細書において、単量体のSP値は、構造に基づいてHoy法によって算出された溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。
【0073】
水分散性樹脂は、環状脂肪族系単量体を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0074】
環状脂肪族系単量体は、脂環構造(芳香族性を有しない飽和または不飽和の炭素環、例えばシクロアルキル基、好ましくはC4-20シクロアルキル基、より好ましくはC4-10シクロアルキル基)を有する単量体であり、環状脂肪族系単量体を用いることで、樹脂の耐水性を向上させることができる。環状脂肪族系単量体は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。環状脂肪族系単量体としては、例えば、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のC4-20シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4-10シクロアルキル(メタ)アクリレート)、アルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、4-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のC1-4アルキルC4-10シクロアルキル(メタ)アクリレート)、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のC4-10シクロアルキルC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、架橋環式(メタ)アクリレート(例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等)]等が挙げられる。環状脂肪族系単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0076】
水分散性樹脂中の環状脂肪族系単量体の量は、1.0~90.0質量%であることが好ましく、10.0~80.0質量%であることがより好ましく、30.0~70.0質量%であることがさらに好ましい。
【0077】
水分散性樹脂は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が50℃未満となる単量体を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0078】
ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を用いることで、樹脂の柔軟性を向上させることができる。ここでのホモポリマーのTgは、-90℃以上15℃未満であることが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0080】
水分散性樹脂中のホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体の量は、10.0~70.0質量%であることが好ましく、10.0~50.0質量%であることがより好ましく、10.0~30.0質量%であることがさらに好ましい。
【0081】
水分散性樹脂は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が50℃以上となる単量体を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0082】
ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を用いることで、樹脂の剛性を向上させることができる。ここでのホモポリマーのTgは、50~130℃であることが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、N―メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0084】
水分散性樹脂中のホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体の量は、40.0~95.0質量%であることが好ましく、50.0~90.0質量%であることがより好ましく、60.0~90.0質量%であることがさらに好ましい。
【0085】
水分散性樹脂は、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂およびホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂を含むか、または、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体およびホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。これによって、柔軟性と剛性をバランスよく備える樹脂を得ることができ、塗膜の耐久性を向上させることができる。
【0086】
ホモポリマーのガラス転移温度は技術常識であるが、ガラス転移温度が不明の単量体を用いる場合、その単量体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)等によって求めることができる。
【0087】
水分散性樹脂は、架橋形成成分を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。架橋形成成分を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0088】
架橋形成成分を用いることで、樹脂に架橋構造を形成させることができる。これによって、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の塗膜からの流出を抑えることができる。架橋は、例えば、重合による架橋であってもよいし、化学反応(例えば、イソシアネートとの反応、エポキシとの反応、加水分解シリル化反応、ヒドラジンとの反応、アジリジンとの反応等)による架橋であってもよい。架橋の態様としては、特に限定されず、架橋形成成分の種類等に応じて適宜選択でき、分子内架橋、分子間架橋のいずれであってもよく、これらの両方の態様で架橋していてもよい。
【0089】
架橋形成成分は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。架橋形成成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
重合による架橋形成成分としては、例えば、2個以上の重合性基を有する化合物が挙げられる。重合性基としては、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルケニルカルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基等)等の重合性不飽和基等が挙げられる。
【0091】
2個以上の重合性基を有する化合物としては、例えば、ジオールのジ(メタ)アクリレート{例えば、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のC2-10アルカンジオールジ(メタ)アクリレート]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート]、アルキレンオキシド変性アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]、芳香族ジオール又はそのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート[例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート]}、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールのポリ(メタ)アクリレート{例えば、ペンタエリスリトールジ乃至テトラ(メタ)アクリレート[例えば、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート]、ジペンタエリスリトールジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート[例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート]、トリメチロールプロパンジ乃至トリ(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート]、ジトリメチロールプロパンジ乃至テトラ(メタ)アクリレート[例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート]、グリセリンジ乃至トリ(メタ)アクリレート[例えば、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート]等のC3-10ポリオールのポリ(メタ)アクリレート}等のポリメタクリレート;不飽和炭化水素[例えば、アルカジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のC4-10アルカジエン)];芳香族炭化水素(例えば、ジビニルベンゼン);ジカルボン酸ジアリル(例えば、フタル酸ジアリル)、トリアリルイソシアヌレート等の複数のアリル基を有する化合物等が挙げられる。
【0092】
化学反応による架橋形成成分は、重合性基と、化学反応による架橋性を有する基とを有する化合物であり、例えば、エポキシ基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、イソシアナト基含有単量体、シラン基含有単量体等が挙げられる。重合性基としては、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルケニルカルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基等)等の重合性不飽和基等が挙げられる。
【0093】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート等のグリシジルオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート)]、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0094】
カルボニル基含有単量体としては、例えば、重合性二重結合を有するアルデヒド(例えば、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール)、重合性二重結合を有するケトン(例えば、ビニルエチルケトン)、カルボニル基含(メタ)アクリレート[例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテート、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
【0095】
アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニル基含有(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸2-アジリジニルエチル)等が挙げられる。
【0096】
イソシアナト基含有単量体としては、例えば、イソシアナト基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。イソシアナト基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、5-メタクロイルオキシ-3-オキシペンチルイソシアネート等が挙げられる。
【0097】
シラン基含有単量体としては、例えば、加水分解(縮合)性基(例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子)が結合したシリル基を有する単量体であり、下記構造式(2)で表される化合物等が挙げられる。
(R1)-Si-(R2)4-n (2)
構造式(2)において、R1は、重合性不飽和結合基を有する基を示す。R2は、水素原子、加水分解縮合性基、炭化水素基、エポキシ基(エポキシ基含有基)を示し、少なくとも1つのR2は加水分解縮合性基を示す。nは、1~3の整数を示す。
【0098】
構造式(2)において、R1において、重合性不飽和結合基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクロイル基等が挙げられる。R2において、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等)等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等が挙げられる。R2において、加水分解縮合性基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルコキシ基、アシロキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、メルカプト基等が挙げられる。R2において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基等が挙げられる。R2において、アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のC2-4アシルオキシ基などが挙げられる。
【0099】
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニル基含有シラン{例えば、ビニル基を有するハロシラン(例えば、ビニルトリクロロシラン等のビニルモノ乃至トリハロシラン)、ビニル基を有するアルコキシシラン[例えば、ビニルアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくはビニルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)、ビニルアルコキシアルコキシシラン(例えば、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等のビニルモノ乃至トリ(C1-4アルコキシC1-4アルコキシ)シラン)、スチリル基含有シラン(例えば、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくはスチリルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)]}、(メタ)アクリロイル基含有シラン{例えば、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン[例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロキシC2-4アルキルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン]、(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシシラン[例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルヒドロキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルヒドロキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルヒドロキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロキシC2-4アルキルヒドロキシシラン]}等が挙げられる。
【0100】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体、および/または架橋形成成分をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0101】
水分散性樹脂中の架橋性単量体の量は、1.0~30.0質量%であることが好ましく、1.5~25.0質量%であることがより好ましく、2.0~20.0質量%であることがさらに好ましい。
【0102】
水分散性樹脂は、反応性乳化剤を構成要素(繰り返し単位等)として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。反応性乳化剤を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、架橋形成成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0103】
反応性乳化剤は、重合性基を有する乳化剤である。重合性基としては、例えば、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルケニルカルボニル基(例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトノイル基等)等の重合性不飽和基等が挙げられる。反応性乳化剤は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれでもよいが、アクリル成分であることが好ましい。反応性乳化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン等が挙げられる。
【0105】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体、および/または架橋形成成分、および/または反応性乳化剤をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含む水分散性樹脂を含むことができる。
【0106】
水分散性樹脂中の反応性乳化剤の量は、0.1~15.0質量%であることが好ましく、0.3~12.0質量%であることがより好ましく、0.5~10.0質量%であることがさらに好ましい。
【0107】
水分散性樹脂は、マルテンス硬度が5~90N/mmの水分散性樹脂を含むことが好ましい。マルテンス硬度が5~90N/mmの水分散性樹脂を用いることで、塗膜に微細なクラックが生じることを防ぐことができる。マルテンス硬度が5~90N/mmの水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、架橋形成成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、反応性乳化剤を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよい。
【0108】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体、および/または架橋形成成分、および/または反応性乳化剤をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含むとともに、マルテンス硬度が5~90N/mmである樹脂を含むことができる。
【0109】
水分散性樹脂は、構成要素となる単量体成分の重合により得ることができ、構成要素となる単量体成分の乳化重合により得ることが好ましい。単量体成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
単量体成分としては、上述した重合性の紫外線吸収剤、重合性のラジカル捕捉剤、SP値9.4以下の単量体、環状脂肪族系単量体、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体、重合性の架橋形成成分(これを架橋性単量体ともいう)および反応性乳化剤の他、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体、芳香族系単量体、酸基含有単量体、窒素原子含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体等が挙げられる。単量体成分は、アクリル成分および非アクリル成分のいずれであってもよい。
【0111】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のC1-20アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0112】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート等のC1-12アルコキシC1-12アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
水酸基含有単量体としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2-10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヒドロキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート]、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のトリ乃至ヘキサヒドロキシC3-10ポリオールの(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
【0114】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン系モノマー[例えば、スチレン、α-アルキルスチレン(例えば、α-メチルスチレン等のα-C1-4アルキルスチレン)、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエン等のC1-4アルキルスチレン)、ハロスチレン(例えば、クロロスチレン)等]、芳香族(メタ)アクリレート[例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニル(メタ)アクリレート等のC6-10アリール(メタ)アクリレート)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等のC6-10アリールC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキルメタクリレート(例えば、フェノキシエチルメタクリレート等のC6-10アリールオキシC1-4アルキルメタクリレート)]等が挙げられる。
【0115】
酸基含有単量体としては、例えば、カルボン酸基含有単量体、スルホン酸基含有単量体等が挙げられる。カルボン酸基含有単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸)等が挙げられる。スルホン酸基含有単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸等が挙げられる。酸基含有単量体は、アニオン化されていてもよい(または塩を形成していてもよい)。
【0116】
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系化合物、窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のN-置換(メタ)アクリルアミド[例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N-ジC1-4アルキル(メタ)アクリルアミド)]等が挙げられる。窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN-置換アミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N,N-ジC1-4アルキルアミノC2-4アルキル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0117】
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0118】
フッ素原子含有単量体としては、例えば、フッ素原子含有アクリル系単量体[例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフルオロC1-10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはフルオロC2-6アルキル(メタ)アクリレート)]等が挙げられる。
【0119】
水分散性樹脂は、単相構造を有する樹脂であってもよいし、異相構造を有する樹脂であってもよい。本明細書において、異相構造を有する樹脂とは、異なる単量体組成が、複数の部位を構成し、ドメイン状あるいは層状に存在する樹脂を指し、このうち、1種もしくは2種以上の単量体組成から構成される、複数の部位が層状に存在する樹脂を「複層構造を有する樹脂」とも称される。また、この複層構造を有する水分散性樹脂粒子の内側の層を「コア」、外側の層を「シェル」とし、これを、コアシェル構造を有する樹脂と称する場合もある。一方、単相構造を有する樹脂は、単量体組成がドメイン状あるいは層状に分かれていない樹脂、好ましくは単量体組成が一様に分布している樹脂である。単層構造は、1段の乳化重合によって調製することができ、異相構造は、多段の乳化重合によって調製することができる。異相構造は、例えば2~5の層またはドメイン、好ましくは2~3の層またはドメインを有する。
【0120】
異相構造は、例えば、2つ以上のガラス転移温度を有する水分散性樹脂を調製するために利用することができる。これによって、異相構造を硬質層またはドメイン(ハード層またはドメイン)と軟質層またはドメイン(ソフト層またはドメイン)とで構成することができる。例えば、複層構造を有する水分散性樹脂粒子の場合、外層(3層以上の場合は最外層)をハード層とし、内層(3層以上の場合は最外層以外の層)をソフト層としてもよいし、外層(3層以上の場合は最外層)をソフト層とし、内層(3層以上の場合は最外層以外の層)をハード層としてもよい。また、複数の内層を有する場合は、内層間でハード層およびソフト層を有してもよい。
【0121】
単量体成分を乳化重合させる方法としては、乳化剤の存在下で乳化重合すればよく、例えば、乳化剤を含む溶媒(溶液)に、単量体成分を混合(滴下等)して重合する方法、予め乳化させておいた単量体成分を溶媒に混合(滴下等)して重合する方法等が挙げられる。溶媒としては、通常、水、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒等の水性溶媒が使用できる。水溶性有機溶媒としては、アルコール、例えばメタノール、エタノール等のC1-4アルコール等が挙げられる。水溶性有機溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。異相構造を作る方法としては、例えば、上述の乳化重合を繰り返し行う多段乳化重合法が挙げられる。
【0122】
乳化剤としては、上述した反応性乳化剤の他、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等が挙げられる。乳化剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート等のアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネート等のアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩等が挙げられる。
【0124】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体等が挙げられる。
【0125】
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0126】
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤等が挙げられる。
【0127】
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体等が挙げられる。
【0128】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、従来からラジカル重合に一般的に使用されているものが使用可能であり、中でも水溶性のものが好適である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-アミノジプロパン)ハイドロクロライド、4,4’-アゾビス-シアノバレリックアシッド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウム等の過酸化物等が挙げられる。重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、例えば0.01~3質量部である。
【0129】
重合開始剤の分解を促進するために、例えば、L-アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤、硫酸第一鉄等の遷移金属塩等の重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。また、反応系内には、必要により、例えば、連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤等の添加剤を適量で添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン類、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、これらの中でも、ラウリルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸-2-エチルヘキシル、2-メチル-t-ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α-メチルスチレンダイマー等が好適である。
【0130】
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~100℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~9時間程度である。
【0131】
水分散性樹脂は、重量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。水分散性樹脂の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
【0132】
本明細書において、水分散性樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
【0133】
水分散性樹脂は、少なくとも2つ以上のガラス転移温度を有することが好ましい。この水分散性樹脂は、少なくとも2つ以上のガラス転移温度を有する樹脂(特に異相構造を有する樹脂)であってもよいし、異なるガラス転移温度を有する2種類以上の樹脂であってもよい。好ましくは、水分散性樹脂は、15℃~35℃のガラス転移温度(Tg1)および55~150℃のガラス転移温度(Tg2)を少なくとも有する。これによって、硬さと弾性力を備えた、割れにくく傷つきにくい、耐ブロッキング性と耐久性に優れる塗膜を形成することができる。
【0134】
本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JISK7121:2012に準じDSCによって測定したものをいう。具体的には、樹脂片約10mgを測定用アルミパンに採取し、下記の測定条件でDSC測定を行い、ガラス転移温度を求めることができる。
(測定温度条件)
1st昇温:-80℃~220℃(20℃/min)
降温条件:220℃~-80℃(50℃/min)
2nd昇温:-80℃~220℃(10℃/min)
【0135】
本発明の塗料組成物は、さらに架橋形成成分を含むことが好ましい。架橋形成成分を用いることで、塗膜形成時に樹脂に架橋構造を付与することができる。架橋形成成分による架橋は、分子内架橋(特に粒子内架橋)であっても分子間架橋(特に粒子間架橋)であってもよいが、分子間架橋の方が、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤の塗膜からの流出を抑える効果が大きいため、好ましい。また、架橋形成成分を用いることで、本発明の塗料組成物が塗装される層(特に意匠層)との付着性も向上させることができる。
本発明の塗料組成物の好ましい実施形態においては、水分散性樹脂が、架橋形成成分を構成要素として含む樹脂を含むか、および/または塗料組成物が、(水分散性樹脂とは別に)さらに架橋形成成分を含む。
【0136】
架橋形成成分としては、上述した水分散性樹脂の構成要素となる架橋形成成分に加えて、例えば、シランカップリング剤や架橋剤等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、チタネート系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキルアルコール化尿素系架橋剤、ヒドラジド系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物等の多価金属化合物等が挙げられる。これらの中でも、シランカップリング剤、オキサゾリン系架橋剤およびカルボジイミド系架橋剤が好ましい。架橋形成成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
シランカップリング剤としては、例えば、上述のシラン基含有単量体を用いることができ、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0138】
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,2-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)エタン、1,4-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ブタン、1,8-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ブタン、1,4-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)シクロヘキサン、1,2-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ベンゼン、1,3-ビス(2-オキサゾリン-2-イル)ベンゼン、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる
【0139】
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミドメチオジド、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N’-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメソ-p-トルエンスルホネート、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トリルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;カルボジイミド化触媒の存在下でポリイソシアネートの公知の縮合反応により得られるカルボジイミド化合物;ポリイソシアネート及びポリアルキレンオキサイドを原料とするカルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0140】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の架橋形成成分の量は、0.5~20.0質量%であることが好ましく、2.0~17.0質量%であることがより好ましく、3.0~15.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「架橋形成成分の量」は、架橋形成成分が、樹脂中に構成要素として含まれる架橋形成成分と、それとは別に塗料組成物中に含まれる架橋形成成分からなる場合はその合計量を意味する。
【0141】
本発明の塗料組成物は、マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂を含むことが好ましい。長期間屋外で風雨や太陽に曝される塗膜は、微細なクラックを生じ、耐候性を低下させる問題があるが、マルテンス硬度が5~90N/mmの柔軟性のある樹脂を用いることで、長期にわたり塗膜のクラックの発生を防止することができる。ここで、マルテンス硬度は、5~70N/mmであることが好ましい。
【0142】
マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂は、上述したように、水分散性樹脂であってもよいし、水分散性樹脂以外の樹脂であってもよい。本発明の塗料組成物の一実施形態においては、水分散性樹脂が、マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂を含むか、および/または、本発明の塗料組成物が、マルテンス硬度が5~90N/mmの別の樹脂をさらに含む。マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
本明細書において、マルテンス硬度とは、微小硬度計(例えばSHIMADZU製微小硬度計DUH-211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度、試験力5mN、および負荷速度1mN/sec、負荷および除荷保持時間5secの条件により測定される値である。
マルテンス硬度(HMs)は試験力・押し込み深さ曲線の傾きより求めることができる。
【0144】
マルテンス硬度測定用サンプルは、樹脂に最低成膜温度が40℃になるように成膜助剤を配合して、適宜消泡剤と増粘剤を添加することで固形分が38質量%の樹脂溶液を調製する。その樹脂溶液について、10ミルアプリケータを用いてブリキ板に塗布し、乾燥炉で100℃×5分間乾燥後、常温で1週間養生することで測定用のサンプルを作製する。測定用のサンプルは40μmの膜厚となるようにアプリケータのすき間は変更可能である。
【0145】
樹脂のマルテンス硬度は、樹脂を構成する単量体の構成と、水分散性樹脂の粒子構造の両方の影響を受けることから、マルテンス硬度を5~90N/mmの範囲内とするためには、単量体組成の検討と、重合方法の検討を要する。発明者らが検討を行った結果、マルテンス硬度は単量体のTgの影響を一定程度受け、Tgが55℃よりも高い均層構造の樹脂はマルテンス硬度が90N/mmよりも大きくなりやすい傾向にあるものの、一概にTgのみでは判断できず、例えば、スチレン等の芳香環骨格を有する単量体の配合量が多くなるとマルテンス硬度が90N/mmよりも大きくなりやすく、反対に、シクロヘキシルメタクリレート等の脂環骨格を有する単量体では、Tgに比してマルテンス硬度が低くなりやすいことが分かった。また、異相構造を有し、軟質部分を含む樹脂はマルテンス硬度が低くなりやすく、架橋密度を高くすると、マルテンス硬度が高くなりやすい傾向も確認できた。これらのことから、樹脂のマルテンス硬度が5N/mm未満である場合には、単独で成膜させた際のTgが高い単量体の配合割合を高くしたり、脂環骨格や芳香環骨格を有する単量体の配合割合を多くしたり、塗膜の架橋密度を高くすることでマルテンス硬度を高くすることができる。また、樹脂のマルテンス硬度が90N/mmを超える場合には、単独で成膜させた際のTgが低い単量体の配合割合を高くしたり、アルキル鎖が4以上の単量体を配合したり、塗膜の架橋密度を低くすることでマルテンス硬度を低くすることができる。
【0146】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中のマルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂の量は、5.0~99.0質量%であることが好ましく、10.0~75.0質量%であることがより好ましく、20.0~60.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂の量」は、マルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂が水分散性樹脂と他の樹脂からなる場合はその合計量を意味する。
【0147】
本発明の塗料組成物は、付着向上剤を含むことが好ましい。上述したように、架橋形成成分は、本発明の塗料組成物が塗装される層(特に意匠層)との付着性を向上できることから、付着向上剤と表現することもできる。また、付着向上剤には、架橋形成成分の他、上述した水分散性樹脂に使用される単量体成分のうち、シラン基含有単量体、水酸基含有単量体、窒素原子含有単量体(好ましくはアミノ基含有単量体およびアミド基含有単量体)等が好適に挙げられ、これらの中でも架橋形成成分が特に好ましい。また、シランカップリング剤も付着向上剤として好適である。付着向上剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0148】
シランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0149】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。
【0150】
エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0151】
イソシアネート基含有シランカップリング剤の具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0152】
本発明の塗料組成物において、塗膜形成成分中の付着向上剤の量は、1.0~40.0質量%であることが好ましく、3.0~34.0質量%であることがより好ましく、4.5~30.0質量%であることがさらに好ましい。ここで、「付着向上剤の量」は、付着向上剤が、塗料組成物中に分散または溶解している付着向上剤と樹脂中に構成要素として含まれる付着向上剤からなる場合は、その合計量を意味する。
【0153】
本発明の塗料組成物において、水分散性樹脂は、付着向上剤を構成要素として含む水分散性樹脂を含むことが好ましい。付着向上剤を構成要素として含む水分散性樹脂は、アクリル成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、SP値9.4以下の単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、環状脂肪族系単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、架橋形成成分を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、反応性乳化剤を構成要素として含む水分散性樹脂であってもよいし、マルテンス硬度が5~90N/mmの水分散性樹脂であってもよい。
【0154】
本発明の塗料組成物の一実施形態において、水分散性樹脂は、紫外線吸収剤およびラジカル捕捉剤よりなる群から選択される少なくとも1種、および/またはSP値9.4以下の単量体、および/または環状脂肪族系単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体、および/またはホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体、および/または架橋形成成分、および/または反応性乳化剤、および/または架橋形成成分以外の付着向上剤をアクリル成分および/または非アクリル成分由来の構成要素として含むとともに、マルテンス硬度が5~90N/mmである樹脂を含むことができる。
【0155】
水分散性樹脂中の付着向上剤の量は、1.5~60.0質量%であることが好ましく、4.5~50.0質量%であることがより好ましく、7.0~40.0質量%であることがさらに好ましい。
【0156】
本発明の塗料組成物は、該塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を樹脂成分中に10重量%以上含むことが好ましく、10.0~70.0質量%含むことが、特には、10.0~35.0質量%含むことがさらに好ましい。ホモポリマーのTgが50℃未満となる単量体を用いることで、樹脂の柔軟性を向上させることができる。ここでのホモポリマーのTgは、-90℃以上15℃未満であることが好ましい。
【0157】
ここで、「塗料組成物中に含まれる樹脂成分」とは、樹脂の他、塗膜形成後に樹脂の一部となる成分であり、樹脂および架橋形成成分等が含まれる。また、樹脂中に構成要素として含まれる成分(紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等)も樹脂の一部であることから、樹脂成分に含まれる。
【0158】
本発明の塗料組成物は、該塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を樹脂成分中に40重量%以上含むことが好ましく、40.0~95.0質量%含むことがさらに好ましい。ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を用いることで、樹脂の剛性を向上させることができる。ここでのホモポリマーのTgは、50~130℃であることが好ましい。
【0159】
本発明の塗料組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等に分類される。本発明の塗料組成物中の界面活性剤の量は、15.0質量%以下であることが好ましく、1.0~12.0質量%であることがさらに好ましい。
【0160】
本発明の塗料組成物は、水系の塗料組成物であることが好ましい。本明細書において「水系の塗料組成物」とは、主溶媒として水を含有する塗料組成物である。水は、特に制限されるものではないが、イオン交換水や蒸留水等の純水等が好適に挙げられる。また、塗料組成物を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、水の量は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましい。
【0161】
本発明の塗料組成物は、意匠層を保護するための表面保護層の形成に適している。本発明の塗料組成物は、高いレベルの耐候性を実現できることから、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクである場合や最表層に光触媒層が存在する場合にも長期に亘ってその意匠を保護できるため、表面保護層用の塗料組成物として好適である。特に、本発明の塗料組成物がマルテンス硬度が5~90N/mmの樹脂を含む場合は、表面保護層の下側の層および基材の膨潤収縮や屋外の環境温度の変化に対する耐性を向上し、表面保護層でのクラックの発生を防止することができるため、高いレベルでの耐候性を長期に亘って確保することができる。
【0162】
本発明の塗料組成物は、クリヤー塗料であることが好ましい。本明細書において、クリヤー塗料は、厚さ10μmの膜を形成した際の可視光透過率が60%以上となるクリヤー塗料を指し、該光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。本発明の塗料組成物がクリヤー塗料として意匠層上に塗装される場合、意匠層の意匠を損なわずに意匠層を保護することができる。
【0163】
可視光透過率は、可視領域(360nm~750nm)における全光線透過率を意味し、JIS K 7375:2008に準拠して測定することができる。
【0164】
本発明の塗料組成物は、厚さ10μmの膜を形成した際の紫外線透過率が30%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましく、10%未満であることがさらに好ましい。
【0165】
本明細書において、紫外線透過率は、280nmから400nmまでの波長範囲の光の透過率を意味し、分光光度計を用いて測定することができる。
具体的に、石英ガラスに本発明の塗料組成物を乾燥膜厚が10μmになるように塗装して、乾燥炉で80℃×10分乾燥させることで測定用のサンプルを作製して、そのサンプルについて紫外可視分光光度計(例えば、島津社製UV-2450)を用いて紫外線透過率を測定することができる。
【0166】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、他の樹脂、溶媒、顔料、艶消しビーズ、カラービーズ、マイカ、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、粘度調整剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、消泡剤、乾燥剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、抗ウイルス剤、帯電防止剤、および導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0167】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。本発明の塗料組成物は、1液型でも2液型でもよいが、2液型の塗料組成物である場合、主剤と硬化剤とを予め用意しておき、これらを塗装時に混合することで調製できる。通常、主剤は樹脂を含み、硬化剤は架橋剤を含む。主剤と硬化剤との混合の際に、粘度の調整等の目的で水や希釈剤等の添加剤をさらに加えてもよい。
【0168】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1(1/s)における粘度が1~1000(Pa・s、23℃)であり、せん断速度1000(1/s)における粘度が0.05~10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。本明細書において、粘度は、レオメーター(例えば、TAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を23℃に調整した後に測定される。
【0169】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、フローコーター塗装、スプレー塗装(例えばエアースプレー塗装、エアレススプレー塗装)等が利用できる。
【0170】
本発明の塗料組成物の乾燥手段は、特に限定されず、周囲温度での自然乾燥や乾燥機等を用いた強制乾燥のいずれであってもよいが、本発明の塗料組成物がガラス転移温度の高い樹脂を含む場合は強制乾燥を行うことが好ましい。本発明の塗料組成物がホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を構成要素として含む樹脂を含む場合は、塗料組成物を塗装した後、80~150℃で加熱乾燥することが好ましい。
【0171】
本発明の別の態様は、塗料組成物を意匠層に塗装して表面保護層を形成することを含む表面保護層形成方法である。本明細書において、この表面保護層形成方法を「本発明の表面保護層形成方法」とも称する。本発明の表面保護層形成方法において、塗料組成物は、上述した本発明の塗料組成物である。意匠層とは、意匠が施された層である。ここで、意匠とは、形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合である。意匠層は、単色の着色層も含むことができ、単色の着色層のみからなる場合もある。意匠層の詳細については、後述の本発明の塗装体の説明において記載する。
【0172】
本発明の表面保護層形成方法においては、塗料組成物を塗装することで、表面保護層を形成することができる。ここで、塗料組成物の塗装手段および乾燥手段は、本発明の塗料組成物において説明したとおりである。
【0173】
本発明の表面保護層形成方法においては、塗料組成物中に含まれる樹脂成分が、ホモポリマーのTgが50℃以上となる単量体を樹脂成分中に40重量%以上含む場合、塗料組成物を塗装した後、80~150℃で加熱乾燥することが好ましい。このような加熱処理を行うことで、ホモポリマーのTgが高い単量体を多く含む場合であっても、むらのない均質な表面保護層を形成することができる。
【0174】
本発明の表面保護層形成方法において、表面保護層は、可視光透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。可視光透過率の高い表面保護層であれば、意匠層の意匠を損なわずに意匠層を保護することができる。
【0175】
本発明の表面保護層形成方法において、表面保護層は、紫外線透過率が30%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましく、10%未満であることがさらに好ましい。
【0176】
本発明の表面保護層形成方法においては、表面保護層の膜厚が、例えば3.0~100.0μmであり、5.0~70.0μmであることが好ましい。
【0177】
本発明の表面保護層形成方法の一実施形態において、意匠層は、活性エネルギー線硬化層である。活性エネルギー線硬化層とは、活性エネルギー線硬化型インクを活性エネルギー線により硬化させることで得られる層である。
【0178】
本発明の表面保護層形成方法の一実施形態において、意匠層は、活性エネルギー線硬化層を含む。複数の材料を用いて意匠を表現する場合もあることから、意匠層は、活性エネルギー線硬化層のみから形成されていない場合もあり、他の材料を含んでいてもよい。この場合、表面保護層は、活性エネルギー線硬化層に接する層であることが好ましい。
【0179】
本発明の表面保護層形成方法の一実施形態において、意匠層は、単色の着色層であっても良い。この場合においても、表面保護層は着色層に接する層であることが好ましい。
【0180】
本発明の表面保護層形成方法は、表面保護層上に光触媒層を形成させることを含んでもよい。本発明において、表面保護層は、意匠層を保護するため層であって、塗装体の表面に位置する層であるが、塗装体の最表面に配置される態様に制限されるものではなく、表面保護層上にさらなる層を形成することもできる。
【0181】
光触媒層は、太陽光などの光が照射されることにより、光触媒作用が働く材料を組成物中に含有した層である。他方で、最表層に光触媒層が存在する場合、紫外線によりラジカルを生じ、意匠層や表面保護層等の塗膜を劣化させる恐れがあるが、本発明において、表面保護層は、ラジカルに対して劣化しにくい層であることから、このようなラジカルに対する保護機能を表面保護層自体および意匠層のために発揮することができる。
【0182】
本発明の別の態様は、意匠層および表面保護層、または意匠層、表面保護層および光触媒層を含む塗装体である。本明細書においては、この塗装体を「本発明の塗装体」とも称する。本発明の塗装体において、表面保護層は、上述した本発明の塗料組成物によって形成される表面保護層である。
【0183】
本発明の塗装体においては、塗装体または表面保護層のマルテンス硬度が10~200N/mmであることが好ましい。塗装体または表面保護層のマルテンス硬度が10N/mm未満である場合、塗膜が軟らかくなりすぎるため塗面に傷がつきやすく外観を損ねることがあり、200N/mmより大きい場合は塗膜が硬くなるために、長期にわたり、雨、風、太陽光に曝されることで塗膜にクラックが生じやすくなるため好ましくない。ここで、塗装体または表面保護層のマルテンス硬度は、本明細書中に記載した樹脂のマルテンス硬度と同様の手法により測定できる。なお、塗装体のマルテンス硬度とは、塗装体の表面に形成される層全体に対して測定されるマルテンス硬度である。
【0184】
本発明の塗装体において、表面保護層のガラス転移温度は、15℃~35℃のガラス転移温度(Tg1)および55~150℃のガラス転移温度(Tg2)を少なくとも有することが好ましい。
【0185】
本明細書において、表面保護層のガラス転移温度は、DSC(示差走査型熱量計)を用いて、JIS K 7121:2012(プラッスチックの転移温度測定方法)に準拠し、測定することができる。具体的には、表面保護層の膜片約10mgを測定用アルミパンに採取し、下記の測定条件でDSC測定を行い、ガラス転移温度を求めることができる。
(測定温度条件)
1st昇温:-80℃~220℃(20℃/min)
降温条件:220℃~-80℃(50℃/min)
2nd昇温:-80℃~220℃(10℃/min)
【0186】
本発明の塗装体において、表面保護層は、可視光透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。また、本発明の塗装体において、表面保護層は、紫外線透過率が30%未満であることが好ましく、20%未満であることがより好ましく、10%未満であることがさらに好ましい。
【0187】
本発明の塗装体においては、表面保護層の膜厚が、例えば3.0~100.0μmであり、5.0~70.0μmであることが好ましい。
【0188】
本発明の塗装体において、表面保護層は、1層でも2層以上の層であってもよい。本発明の塗装体の一実施形態において、表面保護層は、付着向上剤を含む第1の保護層と、付着向上剤を含まない第2の保護層の少なくとも2層よりなる。本発明の塗料組成物に含まれる架橋形成成分が付着向上剤に該当することから、第1の保護層が、本発明の塗料組成物によって形成される表面保護層であり、第1の保護層が意匠層に接していることが好ましい。
【0189】
本発明の塗装体において表面保護層が2層以上の層からなる場合、上述した表面保護層のマルテンス硬度、ガラス転移温度、可視光透過率、紫外線透過率および膜厚の値は、表面保護層全体としての値である。
【0190】
本発明の塗装体において、意匠層は、活性エネルギー線硬化層を含むことが好ましい。複数の材料を用いて意匠を表現する場合もあることから、意匠層は、活性エネルギー線硬化層のみから形成されていない場合もあり、他の材料を含んでいてもよい。この場合、表面保護層、特に本発明の塗料組成物によって形成される表面保護層は、活性エネルギー線硬化層に接する層であることが好ましい。
【0191】
活性エネルギー線硬化層は、活性エネルギー線硬化型インクを活性エネルギー線により硬化させることで得られる層である。例えば、活性エネルギー線硬化型インクを、インクジェットプリンタによる印刷(即ち、インクジェット方式)等の印刷手段によって、基材上に印刷した後、硬化させることで形成することができる。活性エネルギー線硬化層の厚みは、例えば0.1~30.0μmである。
【0192】
活性エネルギー線硬化型インクは、光重合性化合物および光重合開始剤を含む。
【0193】
光重合性化合物は、ラジカル重合性を示す官能基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基またはアリル基を構成する炭素-炭素二重結合等の光重合性不飽和基)を介して重合反応を起こす化合物である。ラジカル重合性を示す炭素-炭素二重結合は「エチレン性不飽和二重結合」とも称される。
【0194】
光重合性化合物は、単官能重合性化合物または多官能重合性化合物に分類される。ここで、単官能重合性化合物としては、ラジカル重合性を示す官能基を1つ有する単官能重合性モノマー(例えば1つの重合性不飽和基を有する単官能重合性モノマー)やラジカル重合性を示す官能基を1つ有する単官能重合性オリゴマー(例えば、1つの重合性不飽和基を有する単官能重合性オリゴマー)等が挙げられる。多官能重合性化合物としては、ラジカル重合性を示す官能基を2つ以上有する多官能重合性モノマー(例えば2つ以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性モノマー)やラジカル重合性を示す官能基を2つ以上有する多官能重合性オリゴマー(例えば、2つ以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性オリゴマー)等が挙げられる。
【0195】
単官能重合性モノマーの具体例としては、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-(2’-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、1-(メタ)アクリロイルピロリジン-2-オン、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルイミダゾール、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシランβ-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレンモノ(メタ)アクリレート等や、これらをアルキレングリコールで変性したものが挙げられる。
【0196】
多官能重合性モノマーのうち、ラジカル重合性を示す官能基を2つ有する多官能重合性モノマー(2官能重合性モノマー)の具体例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキシド)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0197】
ラジカル重合性を示す官能基を3つ以上有する多官能重合性モノマー(3官能以上の多官能重合性モノマー)の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0198】
重合性オリゴマーは、好ましくはアクリルオリゴマーである。アクリルオリゴマーとは、ラジカル重合性を示す官能基としてアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するオリゴマーである。アクリルオリゴマーの具体例としては、ポリウレタンアクリルオリゴマー[ウレタン結合(-NHCOO-)を複数持つアクリルオリゴマー]、ポリエステルアクリルオリゴマー[エステル結合(-COO-)を複数持つアクリルオリゴマー]、ポリアミノアクリルオリゴマー[アミノ基(-NH)を複数持つアクリルオリゴマー]、ポリエポキシアクリルオリゴマー[エポキシ基を複数持つアクリルオリゴマー]、シリコーンアクリルオリゴマー[シロキサン結合(-SiO-)を複数持つアクリルオリゴマー]、ポリブタジエンアクリルオリゴマー[ブタジエン単位を複数持つアクリルオリゴマー]等が挙げられる。
【0199】
活性エネルギー線硬化型インク中の光重合性化合物の量は、例えば20.0~90.0質量%である。光重合性化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0200】
活性エネルギー線硬化型インクは、光重合性化合物の平均官能基数が1.5未満であることが好ましく、1.05~1.2であることがさらに好ましい。インク中に含まれる光重合性化合物の平均官能基数が1.5未満、特には1.05~1.2であると、膜の硬化収縮を抑える効果が高く、膜自体の付着性を大幅に向上でき、かつ膜強度を保持することができる。これにより、各種基材や膜への付着性と活性エネルギー線硬化層自体の膜強度を確保することができる。
【0201】
本明細書において、インク中に含まれる光重合性化合物の平均官能基数は、以下のように算出することができる。
平均官能基数=〔光重合性化合物に含まれる全エチレン性不飽和二重結合数〕/〔光重合性化合物の全分子数〕 ・・・計算式(1)
ここで、計算式(1)における「光重合性化合物に含まれる全エチレン性不飽和二重結合数」については、光重合性化合物の1分子当たりのエチレン性不飽和二重結合の数に、当該光重合性化合物の全分子数を乗じて計算される。インク中に光重合性化合物が複数種類配合される場合においては、その種類毎にエチレン性不飽和二重結合数を計算し、それらを合計した全てのエチレン性不飽和二重結合の数のことを言う。
(光重合性化合物の平均官能基数の求め方の例)
光重合性化合物の全量を100質量部とする。
光重合性化合物A:エチレン性不飽和二重結合数=1、分子量X、30質量部
光重合性化合物B:エチレン性不飽和二重結合数=2、分子量X、70質量部
平均官能基数={(1×30/X)+(2×70/X)}/{(30/X)+(70/X)}
【0202】
光重合開始剤は、活性エネルギー線が照射されることによって、上述した光重合性化合物の重合を開始させる作用を有する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物等が挙げられる。更に、光重合開始剤の開始反応を促進させるため、光増感剤等の助剤を併用することも可能である。
【0203】
活性エネルギー線硬化型インク中の光重合開始剤の量は、例えば1~15質量%である。光重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0204】
活性エネルギー線硬化型インクは、染料や顔料等の色材を含むことができる。色材としては、公知の材料が使用でき、例えば、カーボンブラック、黄色酸化鉄、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系、コバルト・アルミニウム系、コバルト・アルミニウム・クロム系、ウルトラマリンブルー)、酸化チタン等の無機顔料・染料や、キナクリドン系、ジケトプロロピール系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アンスラピリミジン系、フタロシアニン系、スレン系、ジオキサジン系、アゾ系等の有機顔料・染料が挙げられる。耐候性の観点から、無機顔料を用いることが好ましい。
【0205】
活性エネルギー線硬化型インク中の色材の量は、1~20質量%であることが好ましい。色材は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0206】
活性エネルギー線硬化型インクは、付着向上剤を含むことが好ましい。付着向上剤を用いることで、意匠層の付着性を向上させることができる。活性エネルギー線硬化型インク用の付着向上剤としては、水酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー(好ましくはアミノ基含有モノマーおよびアミド基含有モノマー)、シラン基含有モノマー、およびシランカップリング剤等が好適に挙げられる。
【0207】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2-10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヒドロキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート]、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のトリ乃至ヘキサヒドロキシC3-10ポリオールの(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
【0208】
窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド系化合物、窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のN-置換(メタ)アクリルアミド[例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N-ジC1-4アルキル(メタ)アクリルアミド)]等が挙げられる。窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN-置換アミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N,N-ジC1-4アルキルアミノC2-4アルキル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0209】
シラン基含有モノマーとしては、例えば、加水分解(縮合)性基(例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子)が結合したシリル基を有するモノマーであり、下記構造式(3)で表される化合物等が挙げられる。
(R1)-Si-(R2)4-n (3)
構造式(3)において、R1は、重合性不飽和結合基を有する基を示す。R2は、水素原子、加水分解縮合性基、炭化水素基、エポキシ基(エポキシ基含有基)を示し、少なくとも1つのR2は加水分解縮合性基を示す。nは、1~3の整数を示す。
【0210】
構造式(3)において、R1において、重合性不飽和結合基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクロイル基等が挙げられる。R2において、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等)等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等が挙げられる。R2において、加水分解縮合性基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルコキシ基、アシロキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、メルカプト基等が挙げられる。R2において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のC1-4アルコキシ基等が挙げられる。R2において、アシロキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のC2-4アシルオキシ基などが挙げられる。
【0211】
シラン基含有モノマーとしては、例えば、ビニル基含有シラン{例えば、ビニル基を有するハロシラン(例えば、ビニルトリクロロシラン等のビニルモノ乃至トリハロシラン)、ビニル基を有するアルコキシシラン[例えば、ビニルアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくはビニルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)、ビニルアルコキシアルコキシシラン(例えば、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等のビニルモノ乃至トリ(C1-4アルコキシC1-4アルコキシ)シラン)、スチリル基含有シラン(例えば、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくはスチリルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)]}、(メタ)アクリロイル基含有シラン{例えば、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン[例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロキシC2-4アルキルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン]、(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシシラン[例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルヒドロキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルヒドロキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルヒドロキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロキシC2-4アルキルヒドロキシシラン]}等が挙げられる。
【0212】
シランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0213】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、γ-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。
【0214】
エポキシ基含有シランカップリング剤の具体例としては、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、β-3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0215】
イソシアネート基含有シランカップリング剤の具体例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0216】
活性エネルギー線硬化型インク中の付着向上剤の量は、例えば0.1~30.0質量%である。付着向上剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0217】
活性エネルギー線硬化型インクは、その他の成分として、溶媒、分散剤、表面調整剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、粘性調整剤、充填剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を必要に応じて含んでもよい。
【0218】
活性エネルギー線硬化型インクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することで調製できる。また、不純物等によるヘッドのノズル詰まりを防止する目的で、フィルターを用いたろ過をインクに対して行うことが好ましい。
【0219】
活性エネルギー線硬化型インクは、その25℃における表面張力が20~30mN/mの範囲内であることが好ましい。25℃におけるインク表面張力が上記特定した範囲内にあれば、良好な吐出安定性が得られる。インクの表面張力は、プレート法により測定できる。
【0220】
活性エネルギー線硬化型インクの印刷は、インクジェット印刷方式にて行われることが好ましい。インクジェット印刷では、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式又はピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタが挙げられる。また、大型インクジェットプリンタ、具体例としては工業ラインで生産される物品への印刷を目的としたインクジェットプリンタも好適に使用できる。
【0221】
活性エネルギー線硬化型インクから形成される層は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化されることになる。活性エネルギー線の光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ等を使用できる。また、この層を硬化させるために照射する活性エネルギー線の波長は、光重合開始剤の吸収波長と重複していることが好ましく、活性エネルギー線の主波長が350~400nmであることが好ましい。活性エネルギー線の積算光量は100~2000mJ/cmの範囲にあることが好ましい。
【0222】
活性エネルギー線硬化型インクを用いた印刷は、吐出条件やその後の硬化条件を適宜選択することで、グロス調、マット調等の表面仕上げ加工を行うことができる。例えば、インクが拡がった後、時間を置いて硬化すればグロス調になり、インク滴がレンズ状のまま硬化すればマット調になる。
【0223】
本発明の塗装体において、意匠層が活性エネルギー線硬化層以外の層を含む場合、活性エネルギー線硬化層以外の層としては、例えば、主溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料およびインク、主溶媒として水を用いる水系塗料およびインク、光重合性化合物を用いる光硬化型塗料、粉体塗料等の各種塗料およびインク等から形成される層が挙げられる。
【0224】
本発明の塗装体において、意匠層のガラス転移温度は、-10℃~90℃のガラス転移温度を有することが好ましい。意匠層が活性エネルギー線硬化層を含む場合、活性エネルギー線硬化層は、-30℃~60℃のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0225】
意匠層および活性エネルギー線硬化層のガラス転移温度は、表面保護層のガラス転移温度と同様の方法によって測定することができる。
【0226】
本発明の塗装体において、意匠層、特に活性エネルギー線硬化層は、基材や他の層(特には、水系塗料およびインクから形成された層)との付着性を確保し、層間剥離を生じさせないため、積層構造に発生する内部応力を緩和できる層であることが好ましく、軟質であることが好ましい。一方、表面保護層は、外的要因から意匠層を保護する観点から硬質であることが好ましい。
【0227】
本発明の塗装体において、意匠層、特に活性エネルギー線硬化層のガラス転移温度は、表面保護層のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。ここで、各層が複数のガラス転移温度を有する場合、「意匠層、特に活性エネルギー線硬化層のガラス転移温度」とは、意匠層、特に活性エネルギー線硬化層のガラス転移温度のうち最も高いガラス転移温度を指し、「表面保護層のガラス転移温度」とは、表面保護層のガラス転移温度のうち最も低いガラス転移温度を指す。
【0228】
本発明の塗装体において、意匠層の厚みは、例えば0.1~150.0μmであり、0.1~100.0μmであることが好ましい。
【0229】
本発明の塗装体は、表面保護層上に光触媒層をさらに含んでもよい。光触媒層は、太陽光などの光が照射されることにより、光触媒作用が働く材料を組成物中に含有した層である。他方で、最表層に光触媒層が存在する場合、紫外線によりラジカルを生じ、意匠層や表面保護層等の塗膜を劣化させる恐れがあるが、本発明において、表面保護層は、ラジカルに対して劣化しにくい層であることから、このようなラジカルに対する保護機能を表面保護層自体および意匠層のために発揮することができる。
【0230】
光触媒作用が働く材料としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化セリウムのような金属酸化物があげられるが、特にこれらの材料に限定されない。
【0231】
光触媒層は、その他の成分として、樹脂、分散剤、表面調整剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、粘性調整剤、充填剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を必要に応じて含んでもよい。
【0232】
光触媒層は、主溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料およびインク、主溶媒として水を用いる水系塗料およびインク、光重合性化合物を用いる光硬化型塗料およびインク、粉体塗料等の各種塗料およびインク等から形成することができる。
【0233】
本発明の塗装体において、基材としては、例えば、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、特にはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)等のプラスチック基材、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタンやそれらの合金等の金属基材、セメント、コンクリート、石膏、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、大理石、人工大理石、ガラス、セラミック等の金属以外の無機質基材、紙系基材、木質基材、これら基材の2種以上の材料を組み合わせた複合基材等が挙げられる。
【0234】
基材の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、板状等がある。基材の表面は、平滑であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0235】
基材の具体例としては、例えば、単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質建材;窯業系サイディングボード、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板またはALCパネル、石膏ボード等の窯業建材;金属サイディングボード、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属建材等の各種建材(特に建築板)が好適に挙げられる。また、基材の具体例として、塩ビシート、ターポリン、プラダン(プラスチック製ダンボール)、アクリル板等のプラスチック基材、コート紙(具体的には樹脂コート紙)、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙類;タイル、ガラス板等も挙げられる。
【0236】
基材は、その表面に、脱脂処理、化成処理、研磨等の前処理や、シーラー、プライマー塗装等が施されていてもよい。例えば、基材が、窯業建材等の塗料やインクを過度に吸い込む可能性のある基材(特に多孔性基材)である場合、基材の表面がシーラーで塗装され、基材上にシーラー層が形成されている場合がある。また、基材が、金属建材等である場合には、基材の表面がプライマーで塗装され、基材上にプライマー層が形成されている場合がある。
【0237】
本発明の塗装体の一実施形態において、塗装体は、基材と、意匠層と、表面保護層とを備えることができ、ここで、意匠層は基材上に位置し、表面保護層は意匠層上に位置し、意匠層を被覆している。また、塗装体の最表層に光触媒層や、撥水剤、親水剤等を含むオーバーコート層が存在していてもよい。
【0238】
本発明の塗装体は、受容層を含むことが好ましい。受容層とは、インクを吸収し、色材を定着させるための層である。基材上に受容層を形成させることで、意匠層の発色性を向上させるとともに、受容層を介して意匠層と基材の付着性を向上させることができる。
【0239】
受容層は、樹脂を含むことが好ましく、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂、およびこれらの樹脂を変性した樹脂(変性樹脂)等が挙げられる。受容層中の樹脂の量は、例えば20.0~85.0質量%である。樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0240】
受容層は、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、例えば、防錆顔料、体質顔料、着色顔料、光輝顔料等の、塗料業界において通常使用されている顔料が使用できる。受容層中の顔料の量は、例えば0.1~80.0質量%である。顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0241】
受容層は、その他の成分として、分散剤、表面調整剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、粘性調整剤、充填剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を必要に応じて含んでもよい。
【0242】
受容層は、主溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料およびインク、主溶媒として水を用いる水系塗料およびインク、光重合性化合物を用いる光硬化型塗料およびインク、粉体塗料等の各種塗料およびインク等から形成することができる。
【0243】
受容層は、基材を保護するとともに、例えば基材が硬質基材である場合には付着性を確保する観点から、硬質であることが好ましい。
【0244】
本発明の塗装体において、受容層のガラス転移温度は、10℃~80℃のガラス転移温度を有することが好ましい。受容層のガラス転移温度は、表面保護層のガラス転移温度と同様の方法によって測定することができる。
【0245】
本発明の塗装体において、受容層、意匠層および表面保護層のガラス転移温度(Tg)は、以下の関係を満たすことが好ましい。
意匠層のTg ≦ 受容層のTg ≦ 表面保護層のTg
ここで、各層が複数のガラス転移温度を有する場合、「意匠層のTg」とは、意匠層、特に活性エネルギー線硬化層のガラス転移温度のうち最も高いガラス転移温度を指し、「表面保護層のTg」とは、表面保護層のガラス転移温度のうち最も低いガラス転移温度を指し、「受容層のTg」とは、受容層の各Tgを指す(すなわち、それぞれのTgが上記関係を満たす)。
【0246】
本発明の塗装体において、受容層の厚みは、例えば1.0~100.0μmであり、5.0~70.0μmであることが好ましい。
【0247】
本発明の塗装体の一実施形態において、塗装体は、基材と、受容層と、意匠層と、表面保護層とを備えることができ、ここで、受容層は基材上に位置し、意匠層は受容層上に位置し、表面保護層は意匠層上に位置し、意匠層を被覆している。また、塗装体の最表層に光触媒層や、撥水剤、親水剤等を含むオーバーコート層が存在していてもよい。
【実施例
【0248】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0249】
<水分散性樹脂>
水分散性樹脂1~13として、以下のものをエマルションとして用意した。水分散性樹脂10~12は、架橋形成成分であるγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503)を構成要素として含む樹脂である。各樹脂のマルテンス硬度は、以下の方法によって測定した。
【0250】
<水分散性樹脂のマルテンス硬度>
水分散性樹脂1~13に最低成膜温度が40℃になるように成膜助剤を配合して、固形分が38質量%の樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液について、6ミルアプリケータを用いて乾燥膜厚が40μmとなるようにブリキ板に塗布し、乾燥炉で100℃×5分間乾燥後、常温で1週間養生することで測定用のサンプルを作製した。作製した各試験板のマルテンス硬度を、微小硬度計(SHIMADZU製微小硬度計DUH-211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度、試験力5mN、および負荷速度3secの条件により測定し、試験力・押し込み深さ曲線の傾きからマルテンス硬度(HMs)を求めた。
【0251】
<水分散性樹脂1~13の詳細>
・水分散性樹脂1:[MMA/CHMA/EHA/HEMA/AA/LA82(質量比33.5/25/34/3/1.5/3)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度28.0N/mm
・水分散性樹脂2:[MMA/CHMA/EHA/BA/HEMA/AA/LA82(質量比23.5/20/20/29/3/1.5/3)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度11.0N/mm
・水分散性樹脂3:[MMA/CHMA/EHA/HEMA/AA/TN400/LA82(質量比48.5/30/14/2/1.5/1/3)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度52.0N/mm
・水分散性樹脂4:[MMA/CHMA/EHA/BA/HEMA/AA/TN400/LA82(質量比16.5/16/25/35/2/1.5/1/3)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度3.5N/mm
・水分散性樹脂5:[MMA/CHMA/BMA/EHA/BA/HEMA/AA/TN400/LA82(質量比53.5/2/20/10/7/2/1.5/1/3)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度72.0N/mm
・水分散性樹脂6:[1段目:MMA/CHMA/HEMA/AA/LA82/TN400(質量比26/20/2/1/0.5/1)、2段目:CHMA/EHA/HEMA/LA82/TN400(質量比21/26/1/0.5/1)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度55.0N/mm
・水分散性樹脂7:[1段目:MMA/CHMA/EHA/HEMA/AA(質量比10/15/20/3/1)、2段目:MMA/CHMA/EHA/HEMA/LA82(質量比12/30/4/1/4)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度33.0N/mm
・水分散性樹脂8:[1段目:MMA/CHMA/AA(質量比26/23/1)、2段目:CHMA/EHA/AA(質量比23/26/1)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度56.0N/mm
・水分散性樹脂9:[1段目:MMA/EHA/BA/AA(質量比24/15/10/1)、2段目:MMA/BA/AA(質量比42/7/1)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度43.0N/mm
・水分散性樹脂10:[1段目:MMA/CHMA/AA/TN400(質量比18/14/1/1)、2段目:CHMA/EHA/KBM503/TN400(質量比8/23/1/1、3段目:MMA/CHMA/EHA/KBM503/LA82/TN400(質量比5/15/10/1/1/1)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度28.0N/mm
・水分散性樹脂11:[1段目:MMA/CHMA/HEMA/AA/LA82/TN400(質量比18/12/3/1/0.5/0.5)、2段目:CHMA/EHA/KBM503/LA82/TN400(質量比13/18/1/1/1)、3段目:CHMA/BMA/EHA/KBM503/LA82/TN400(質量比13/13/3/1/0.5/0.5)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度39.0N/mm
・水分散性樹脂12:[1段目:MMA/CHMA/HEMA/AA/RUVA-93(質量比25/21/2/1/1)、2段目:CHMA/EHA/HEMA/KBM503(質量比22/26/1/1)]の乳化重合体、固形分量45質量%、マルテンス硬度21.0N/mm
・水分散性樹脂13:[MMA/EHA/HEMA/AA/LA82(質量比78.5/14/3/1.5/1.5/3)固形分量45質量%、マルテンス硬度102.0N/mm
【0252】
乳化重合体を構成する単量体の略号は、以下のことを意味する。
・MMA:メチルメタクリレート、ホモポリマーのTg105℃、SP値9.53
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート、ホモポリマーのTg66℃、SP値9.48
・BMA:n-ブチルメタクリレート、ホモポリマーのTg20℃、SP値9.27
・EHA:2-エチルヘキシルアクリレート、ホモポリマーのTg-50℃、SP値9.2
・BA:n-ブチルアクリレート、ホモポリマーのTg-55℃、SP値9.67
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ホモポリマーのTg55℃、SP値11.87
・KBM503:γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン,ホモポリマーのTg30℃
・AA:アクリル酸、ホモポリマーのTg106℃、SP値10.01
ラジカル捕捉剤
・LA82:1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタアクリレート(株式会社ADEKA社製)
・RUVA-93:2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社)
・TN400:TINUVIN400、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF株式会社)
【0253】
建築板の作製に使用した材料などの詳細を以下に示す。
<基材>
スレート板〔150mm×70mm×5mm、TP技研(株)製〕
<シーラー>
水性マイティーシーラーマルチ〔カチオン型水性塗料、大日本塗料(株)製商品名〕
<下塗り塗料>
DNTビューアクリル〔水性アクリルエマルション塗料、大日本塗料(株)製商品名〕
<インク受理層用塗料1>
表1に示す配合に従い、原料とチタニアビーズを混合した後、ビーズミルで分散した。分散後、チタニアビーズを取り除き、インク受理層用塗料1を調製した。
なお、表1に示す樹脂粒子水分散体1は、特開2019-217680号公報の段落[0074]~[0076]に記載された<樹脂粒子水分散体1の調製(合成例1)>に従い調製した樹脂粒子水分散体1である。
【0254】
【表1】
【0255】
表1の注釈については、以下のとおりである。
1)酸化チタン、密度3.8g/cm(TITONE R-62N,堺化学社製)
2)重質炭酸カルシウム、密度2.7g/cm、平均粒子径2μm(丸尾カルシウム製)
3)SNデフォーマー1316(サンノプコ社製)
4)ASE-60(ロームアンドハース社製)
5)Proxel AM(アーチケミカルズ社製)
6)TINUVIN 1130(BASF社製)
7)サノール LS-292(三共化成社製)
【0256】
<活性エネルギー線硬化型インク>
以下の表2の通りの配合により、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを調製した(表中に示される配合の各成分の量は質量部で示される)。具体的には、表2中の各原料を全て混合し、ビーズミルにて5時間練合・溶解を行なった後、孔径1μmのグラスフィバーフィルターにより濾過して不純物を除去した。
【0257】
【表2】
【0258】
インクの調製に使用した材料の詳細を以下に示す。
・DAIPYROXIDE ブルー #9410 〔ブルー顔料、C.I.ピグメントブルー 28、大日精化工業(株)製商品名〕
・BAYFERROX 130M 〔マゼンタ顔料、C.I.ピグメントレッド 101、ランクセス社製商品名〕
・TAROX 合成酸化鉄 HY-100 〔イエロー顔料、C.I.ピグメントイエロー 42、チタン工業(株)製商品名〕
・TEGO-Dispers 685〔顔料分散剤、Evonic社製商品名〕
【0259】
<表面保護層形成用塗料>
以下の表3~10の通りの配合により、表面保護層形成用塗料として上塗り塗料を調製した。表中に示される配合の各成分の量は質量部で示される
具体的には、表3~10中の各原料を全て混合し、高速分散機〔ホモディスパー2.5、プライミクス(株)社製〕にて撹拌を行なった後、100メッシュの金属網で濾過して不純物を除去した。なお、配合した各原料については以下の通りである。
・TINUVIN 1130〔紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN 384〔紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN 400DW〔紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN 477DW〔紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN 479DW〔紫外線吸収剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN LS-292〔ラジカル捕捉剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・TINUVIN 123DW〔ラジカル捕捉剤、BASFジャパン(株)製商品名〕
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成膜助剤)
・ビスカレックスVG2〔増粘剤、ヘキスト合成(株)製商品名〕
・BYK-028〔消泡剤、BYK社製商品名〕
・BYK-349〔レベリング剤、BYK社製商品名〕
・ACEMATT TS100〔艶消し剤、エボニック社製商品名)
・ルミフロンFE4300〔フッ素樹脂、旭硝子(株)製商品名〕
・KBM403〔3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製商品名〕
・KBE9007〔3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製商品名〕
・エポクロスWS500〔オキサゾリン基含有樹脂、日本触媒(株)製商品名〕
・カルボジライトE-02〔水分散性ポリカルボジイミド化合物、日清紡(株)製商品名〕
【0260】
<光触媒コーティング剤>
光触媒コーティング剤A:テイカ株式会社TKC-304
光触媒コーティング剤B:株式会社ピアレックス・テクノロジーズ ピュアコート
【0261】
<建築板の作製>
1.シーラー板の作製
基材上に水性マイティーシーラーマルチを塗布量100g/mとなるようにエアスプレーで塗装し、室温で2時間乾燥することでシーラー板を作製した。
2.下塗り基材の作製
上記1.で作製したシーラー板を60℃に加温して、上述のインク受理層用塗料1をエアスプレーにより塗布量が130g/m(乾燥膜厚約30μm)になるように塗装した後、100℃×3分乾燥させることで下塗り基材としてインク加飾用のインク受理層基材を作製した。
3.着色層付き基材の作製
インク受理層用塗料に代えてDNTビューアクリル各色を同条件で塗装したこと以外は「2.下塗り基材の作製」と同様に作業を行うことで、着色層付き基材を作製した。
表3~10の「意匠層」の欄に「水性塗料」と記載された例については、この着色層付き基材の作製を行った。
4.インク層付き基材の作製
上記2.で作製したインク受理層基材を基材温度が50~60℃に調整された状態で上述の活性エネルギー線硬化型インク(シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインク)によりインクジェットプリンター〔EB100(制御装置)、XY100(搬送ステージ)、共にコニカミノルタIJ(株)社製〕にて各色の階調パターン(記録濃度を10%から100%まで20%刻みで段階的に記録したベタ画像)を形成させた後に、メタルハライドランプによりピーク照度300mW/cmで積算光量200mJ/cmの紫外線を照射して、インクを硬化させ、インク層付き基材を作製した。
表3~10の「意匠層」の欄に「UVインク」と記載された例については、このインク層付き基材の作製を行った。
5.表面保護層
インク層および着色層が形成された基材の表面温度が50℃になるよう調整した状態で、上述の上塗り塗料(表面保護層形成用塗料)をエアスプレーにより塗布量が100g/m(乾燥膜厚30μm相当)になるようにインク層および着色層上に塗装した後、120℃で15分乾燥させることで表面保護層を形成させた。
6.光触媒層
上記5.で形成させた表面保護層に対して、基材の表面温度が60℃になるように調整した状態で、光触媒コーティング剤をエアスプレーにより塗布量が20g/m(乾燥膜厚400nm相当)になるように塗装した後、60℃3分乾燥させることで光触媒層を形成させた。
表3~10の「光触媒コーティング剤」の欄に「A」と記載された例については、光触媒コーティング剤Aを用いて光触媒層の形成を行い、「B」と記載された例については、光触媒コーティング剤Bを用いて光触媒層の形成を行った。これらの例では、最表層に光触媒層が存在している。
表3~10の「光触媒コーティング剤」の欄に「-」と記載された例については、光触媒層を作製しなかった。これらの例では、最表層は表面保護層である。
【0262】
上記<建築板の作製>の記載に従って建築板を作製した。
※ <建築板の作製>の1.~6.に記載の基材温度の測定は、赤外線放射型非接触温度計(ISK-8700II、アズワン(株)社製)を用いて行った。
【0263】
<塗装体のマルテンス硬度>
上記で作製した建築板について常温で1週間養生後に、建築板上に形成された塗膜のマルテンス硬度を微小硬度計(SHIMADZU製微小硬度計DUH-211)により115°三角錐圧子を使用して、温度20℃、50%相対湿度、試験力5mN、および負荷速度1mN/sec、負荷および除荷保持時間5secの条件により測定し、試験力・押し込み深さ曲線の傾きからマルテンス硬度(HMs)を求め、以下の基準に基づいて評価した。結果を表3~10に示す。
なお、塗膜中に艶消しビーズ、カラービーズ、マイカなどの骨材成分を含む場合は、それらを除いた部分で測定するものとする。
(評価基準)
○:マルテンス硬度が10~200N/mm
△:マルテンス硬度が10N/mm未満、または200N/mmよりも大きい。
【0264】
<耐水性(JIS K 5600-6-2:1999に準拠)>
作製した建築板を、40℃に保った恒温水槽中に浸漬し、240時間後に取り出して乾燥させた。その後、発生した膨れ、白化等の外観の観察をし、また、付着性を評価した。結果を表3~10に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:膨れ、白化等の外観異常が無く、付着性が分類0である。
○:膨れ、白化等の外観異常が無く、付着性が分類1~2である。
△:膨れ、白化等の外観異常が無く、付着性が分類3~5である。
×:膨れ、白化等の外観異常が見られる。
なお、JIS K 5600-5-6:1999の8.3に記載される分類0~5は以下の通りである。
・分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
・分類1:積層塗膜の残存率が95~99%。
・分類2:積層塗膜の残存率が85%以上95%未満。
・分類3:積層塗膜の残存率が65%以上85%未満。
・分類4:積層塗膜の残存率が0%以上65%未満。
・分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
【0265】
<促進耐候性1(サンシャイン)>
JISK5400-9-8に基づき、建築板をサンシャインカーボンアーク灯式の促進耐候性試験に7500時間供した後、初期板との比較によって色差、光沢保持率と塗膜外観について以下の方法で評価した。結果を表3~10に示す。
◎:塗膜にクラックなどの不具合はなく、光沢保持率が90%以上で色差がΔE<1.0である。
○:塗膜にクラックなどの不具合はなく、光沢保持率が80%以上で色差がΔE<2.0である。
△:塗膜にクラックなどの不具合はなく、光沢保持率が70%以上で色差がΔE<3.0である。
×:塗膜にクラックが生じており、光沢保持率が70%未満である、あるいは色差がΔE>3.0である。
【0266】
<促進耐候性2(スーパーUV試験)>
建築板を岩崎電気製アイスーパーUVテスター試験に1000時間供した後、初期板との比較によって色差、光沢保持率と塗膜外観について以下の方法で評価した。
◎:塗膜にクラックなどの不具合はなく、光沢保持率が90%以上で色差がΔE<1.0である。結果を表3~10に示す。
○:見ための大きな変化がなく、光沢保持率が80%以上で色差がΔE<2.0である。
△:見ための大きな変化がなく、光沢保持率が70%以上で色差がΔE<3.0である。
×:塗膜にクラックが生じており、光沢保持率が70%未満である、あるいは色差がΔE>3.0である。
【0267】
促進耐候性評価に使用される光沢保持率および色差は以下の式で算出できる。
光沢保持率(%)=(試験後の60°光沢値)/(初期板の60°光沢値)×100
色差(ΔE)=((ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
(ΔL=試験後のL値-初期板のL値)
(Δa=試験後のa値-初期板のa値)
(Δb=試験後のb値-初期板のb値)
光沢値はBYK製micro-TRI-gloss、測色値はコニカミノルタ製CR-400により測定した
【0268】
<耐候性試験後の二次付着性>
上記<促進耐候性2(スーパーUV試験)>に従い、建築板を岩崎電気製アイスーパーUVテスター試験に1000時間供した。次いで、建築板上の膜にカッターナイフを用いて縦横2mm間隔で切れ目を入れ、100マス目を作製して、セロテープ(登録商標)剥離試験を行った。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3~10に示す。
◎:付着性が分類0である。
〇:付着性が分類1である。
△:付着性が分類2~3である。
×:付着性が分類4~5である。
なお、JIS K 5600-5-6:1999の8.3に記載される分類0~5は以下の通りである。
・分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
・分類1:積層塗膜の残存率が95~99%。
・分類2:積層塗膜の残存率が85%以上95%未満。
・分類3:積層塗膜の残存率が65%以上85%未満。
・分類4:積層塗膜の残存率が0%以上65%未満。
・分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
【0269】
<耐ブロッキング性>
作製した建築板の塗面に40℃雰囲気下で24時間、1t/mの荷重をかけて、塗膜の圧着痕について、以下の方法で評価する。塗装体のマルテンス硬度が低すぎたり高すぎたりすると、耐ブロッキング性が低下する。結果を表3~10に示す。
〇:塗膜にワレがなく、目視で圧着痕なし
△:塗膜にワレはないが、目視で圧着痕が見られる
×:塗膜にワレを生じる
【0270】
耐候性に関して、促進耐候性1(サンシャイン)、促進耐候性2(スーパーUV試験)および耐候性試験後の二次付着性の3つの評価を行ったが、いずれの評価結果も◎、○または△である場合、その塗料組成物は、高いレベルの耐候性を実現し得る表面保護層を形成することが可能な塗料組成物である。このような塗料組成物であれば、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクである場合や最表層に光触媒層が存在する場合にも長期に亘ってその意匠を保護できる表面保護層を形成することができる。
【0271】
【表3】
【0272】
【表4】
【0273】
【表5】
【0274】
【表6】
【0275】
【表7】
【0276】
【表8】
【0277】
【表9】
【0278】
【表10】
【0279】
表中「樹脂中の紫外線吸収剤量」および「樹脂以外の紫外線吸収剤量」はいずれも塗料組成物中の紫外線吸収剤の量(質量%)を示し、「樹脂中の紫外線吸収剤量」の「紫外線吸収剤」は、水分散性樹脂の構成要素として含まれる紫外線吸収剤を指し、「樹脂以外の紫外線吸収剤量」は、水分散性樹脂の構成要素としてではなく、塗料組成物中に分散または溶解している紫外線吸収剤を指す。
同様に、「樹脂中のラジカル捕捉剤量」および「樹脂以外のラジカル捕捉剤量」はいずれも塗料組成物中のラジカル捕捉剤の量(質量%)を示し、「樹脂中のラジカル捕捉剤量」の「ラジカル捕捉剤」は、水分散性樹脂の構成要素として含まれるラジカル捕捉剤を指し、「樹脂以外のラジカル捕捉剤量」は、水分散性樹脂の構成要素としてではなく、塗料組成物中に分散または溶解しているラジカル捕捉剤を指す。
【要約】
【課題】高いレベルの耐候性を実現し得る表面保護層であって、意匠層が活性エネルギー線硬化型インクである場合や最表層に光触媒層が存在する場合にも長期に亘ってその意匠を保護できる表面保護層を形成することが可能な塗料組成物を提供する。
【解決手段】水分散性樹脂と、塗料組成物中に分散または溶解している(A)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤とを含有する、意匠層を保護するための表面保護層形成用塗料組成物であって、前記水分散性樹脂が、(B)紫外線吸収剤および/またはラジカル捕捉剤を構成要素として含む樹脂を含み、成分(A)および成分(B)の一方は少なくとも紫外線吸収剤であり、成分(A)および成分(B)の他方は少なくともラジカル捕捉剤であり、前記水分散性樹脂が、架橋形成成分を構成要素として含む樹脂を含むか、および/または前記塗料組成物が、さらに架橋形成成分を含むことを特徴とする、塗料組成物である。
【選択図】なし