(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】LEDマトリクスアレイを形成するための二段階蛍光体堆積をサポートするフォトレジストパターニングプロセス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230814BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20230814BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20230814BHJP
F21S 41/176 20180101ALI20230814BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20230814BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20230814BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20230814BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20230814BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230814BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20230814BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20230814BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230814BHJP
【FI】
G02B5/20
F21S41/143
F21S41/153
F21S41/176
F21S41/25
F21V9/32
F21V9/38
G03F7/42
H01L33/50
H01L33/60
F21Y105:10
F21Y115:10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093401
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2021536214の分割
【原出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-06-09
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロイトマン,ダニエル,ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】ドーナー,エマ
(72)【発明者】
【氏名】シミズ,ケンタロウ
(72)【発明者】
【氏名】ボーマー,マルセル レネ
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122520(WO,A1)
【文献】特開2007-047787(JP,A)
【文献】特表2016-518713(JP,A)
【文献】国際公開第2017/139387(WO,A1)
【文献】特表2016-517463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
F21S 41/143-41/25
F21V 9/32-9/38
G03F 7/42
H01L 33/50-33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体ピクセルのアレイを製造する方法であって、
フォトレジスト層を堆積させ、該フォトレジスト層をパターニングして、ギャップによって互いに離隔されたフォトレジストブロックのマトリクスアレイを形成し、
前記ギャップ内に蛍光体組成物を堆積させ、該蛍光体組成物は、凝縮硬化シリコーン系内に分散された蛍光体粒子を有し、
前記蛍光体組成物を堆積させた後に、1つ以上の気相触媒を用いて前記凝縮硬化シリコーン系を硬化させて、前記マトリクスアレイ内に複数の蛍光体ピクセルを形成し、
前記凝縮硬化シリコーン系を硬化させた後に、前記フォトレジストブロックを除去する、
ことを有する方法。
【請求項2】
前記凝縮硬化シリコーン系は、有機シロキサンブロック共重合体を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の気相触媒は超強塩基触媒物質を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の気相触媒は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトレジストブロックを除去した後に、前記複数の蛍光体ピクセルの側壁に反射構造を堆積させ、
前記反射構造を堆積させた後に、かつてフォトレジストブロックによって占有されていた前記マトリクスアレイ内の位置に第2の蛍光体組成物を堆積させ、
前記第2の蛍光体組成物を硬化させて、前記マトリクスアレイ内に第2の複数の蛍光体ピクセルを形成する、
ことを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の蛍光体組成物は前記蛍光体組成物と同じである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の蛍光体組成物は前記蛍光体組成物と異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記反射構造は、マトリクス内に分散された散乱粒子を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記反射構造は反射金属層を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記反射構造は分布ブラッグ反射器構造を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の蛍光体組成物は、凝縮硬化シリコーン系内に分散された蛍光体粒子を有し、
前記第2の蛍光体組成物の前記硬化は、1つ以上の気相触媒を用いることを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項12】
隣接し合う蛍光体ピクセルが、前記反射構造によって約10ミクロン以下だけ離隔される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記フォトレジスト層を堆積させて前記フォトレジスト層をパターニングすることは、前記マトリクスアレイ内で交互の位置にあって市松模様を形成するように、前記フォトレジストブロック及び前記ギャップを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトレジストブロックを除去した後に、前記複数の蛍光体ピクセルの側壁に反射構造を堆積させる、
ことを更に有する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年12月16日に出願された米国特許出願第16/715,930号、2019年2月11日に出願された欧州特許出願第19156331.1号、及び2018年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/783,970号に対する優先権の利益を主張するものであり、それらの各々をその全体にてここに援用する。
【0002】
本開示は、概して、パターニングされたフォトレジストの剥離特性を実質的に害することなくシリコーン又はシロキサンの硬化を可能にするパターニングプロセスに関する。LEDマトリクスアレイ向けの反射壁付き蛍光体ピクセルアレイの製造が、開示されるパターニングプロセスを使用して可能とされる一実施形態である。
【背景技術】
【0003】
従来のポジ型フォトレジストを用いたシリコーンの低温パターニングは困難であることがある。シリコーンを硬化させるのに必要な温度は、典型的に、フォトレジストの綺麗な除去を確保するのに必要な温度よりも高く、フォトレジストパターニングによるシリコーンの全般的な使用を妨げる。フォトレジストパターニング構造と共にシリコーンを低温硬化させることを可能にするプロセスが必要である。
【0004】
この制限は、半導体発光デバイス(LED)に対するフォトレジストパターニングの使用を妨げ得る。LEDアレイは、シリコーンに埋め込まれた蛍光体のオーバーレイアレイとのLEDアレイの組み合わせから形成されるピクセルを含むように製造され得る。しかしながら、蛍光体含有シリコーンを硬化させるのに必要な温度が典型的に、フォトレジストの綺麗な除去を確保するのに必要な温度よりも高いので、フォトレジスト構造を用いてシリコーンをパターニングするのに機能する改良されたプロセスが必要である。
【0005】
他の一例として、LEDの効率及び動作を向上させるために、LEDアレイからの光が、LEDアレイの各要素の頂部から、それぞれ整合された蛍光体/シリコーンアレイを、必要な光スペクトル出力を提供するようにあるパーセンテージだけ波長変換されながら通り抜けるように構成され得る。典型的に、光のうちある割合が、反射又は蛍光体層の側面からの直接透過によって失われる。この損失及び隣接ピクセルとのクロストークを最小化するために、反射材料を用いて蛍光体/シリコーンアレイの各ピクセルの側壁をコーティングすることができる。しかしながら、LEDがアレイ内で互いの近くに密に配置される場合、側壁を均一にコーティングすることは困難である。このような反射コーティングされた蛍光体/シリコーン構造を形成することを可能にする改良されたプロセス及び構造が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態によれば、基板上にパターニングされたフォトレジスト構造を設けるステップを含んだ、シリコーン構造の低温硬化のための方法が記述される。フォトレジスト構造は、凝縮硬化シリコーン系で少なくとも部分的に充填されることが可能な少なくとも1つの開口領域を画成する。凝縮硬化シリコーン系を硬化させるために気相触媒が使用され、フォトレジスト構造が除去されて、自立した又は層状のシリコーン構造が残される。
【0007】
一部の実施形態において、凝縮硬化シリコーン系は更に有機シロキサンブロック共重合体を含む。
【0008】
一部の実施形態において、気相触媒は更に、超強塩基触媒物質の使用を含み、これは、以下に限られないが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7 -ene;DBU)の使用を含み得る。
【0009】
他の一実施形態において、LED素子からの光を受けるのに好適なシリコーン構造を含む蛍光体を画成する方法が開示される。当該方法は、基板上にパターニング用のフォトレジスト構造を設けるステップを含み、該フォトレジスト構造は、少なくとも1つの開口領域を画成する。該少なくとも1つの開口領域は、蛍光体粒子を含有した凝縮硬化シリコーン系で少なくとも部分的に充填される。そして、該凝縮硬化シリコーン系が、気相触媒堆積の後に又は気相触媒堆積と同時に硬化され得る。フォトレジスト構造が除去され、シリコーンで結合された蛍光体粒子が反射材料でコーティングされる。この結合蛍光体粒子の構造によって画成されたキャビティが、反射材料の垂直壁を残して、更なる結合蛍光体粒子で充たされ得る。
【0010】
一部の実施形態において、反射材料でコーティングされた結合蛍光体粒子によって市松模様構造を画成することができる。市松模様構造の頂部又は底部から反射材料を除去して、市松模様構造の間のみに位置する反射材料の垂直配置された壁を残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の非限定的で非網羅的な実施形態が、以下の図を参照して説明され、特に断りのない限り、様々な図を通して、同様の部分は似通った参照符号で参照する。
【
図1】pcLEDの一例の概略断面図を示している。
【
図2A】pcLEDのアレイの概略断面図を示している。
【
図2B】pcLEDのアレイの概略上面図を示している。
【
図3A】pcLEDのアレイがマウントされ得るエレクトロニクス基板の概略上面図を示している。
【
図3B】
図3Aと同様に、
図3Aのエレクトロニクス基板上にマウントされたpcLEDのアレイを示している。
【
図4A】導波路及び投射レンズに対して配置されたpcLEDのアレイの概略断面図を示している。
【
図4B】導波路を有しない、
図4Aの構成と同様の構成を示している。
【
図5】フォトレジスト構造を用いてシリコーンをパターニングするプロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図6A】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6B】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6C】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6D】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6E】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6F】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図6G】
図6A、6B、6C、6D、6E、6F、及び6Gは、LEDパッケージ用にシリコーン及び蛍光体構造を製造する方法の一例における工程を示している。
【
図7】シリコーン及び蛍光体材料で充填する前の中間的な市松模様構造を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面中、様々な図を通して、同じ参照符号は同様の要素を指している。図面は、必ずしも縮尺通りではないものであり、選択的な実施形態を描いており、発明の範囲を限定する意図はない。詳細な説明は、限定としてではなく例として、本発明の原理を示す。
【0013】
図1は、基板104上に配置された半導体ダイオード構造102(ここでは、まとめて“LED”とみなす)と、LED上に配置された蛍光体層106と、を有する個体のpcLED100の一例を示している。半導体ダイオード構造102は典型的に、n型層とp型層との間に配置された活性領域を有する。ダイオード構造への適切な順方向バイアスの印加が、活性領域からの光の放出をもたらす。発せられる光の波長は、活性領域の組成及び構造によって決定される。
【0014】
LEDは、例えば、青色光、紫色光、又は紫外光を発するIII族窒化物LEDとし得る。何らかの他の好適な材料系から形成されて、何らかの他の好適な波長の光を発するLEDも使用されることができる。他の好適な材料系は、例えば、III族リン化物材料、III族ヒ化物材料、及びII-VI族材料を含み得る。
【0015】
pcLEDからの所望の光出力に応じて、何らかの好適な蛍光体材料が使用され得る。
【0016】
図2A-2Bは、それぞれ、基板202上に配置された蛍光体ピクセル106を含むpcLED100のアレイ200の断面図及び上面図を示している。このようなアレイは、任意の好適なやり方で配列された任意の好適数のpcLEDを含み得る。図示した例では、共有の基板上にアレイがモノリシックに形成されるように示されているが、代わりに、分離した個々のpcLEDからpcLEDのアレイが形成されてもよい。基板202は、オプションで、LEDを駆動するためのCMOS回路を有していてもよく、また、任意の好適材料から形成され得る。
【0017】
図3A-3Bに示すように、pcLEDアレイ200は、電力・制御モジュール302、センサモジュール304、及びLED取り付け領域306を有するエレクトロニクス基板300上にマウントされ得る。電力・制御モジュール302は、外部ソースから電力及び制御信号を受け取り、センサモジュール304からの信号を受け取り、これらに基づいて電力・制御モジュール302はLEDの動作を制御する。センサモジュール304は、例えば温度センサ又は光センサからなど、任意の好適なセンサから信号を受信し得る。代わりに、pcLEDアレイ200は、電力・制御モジュール及びセンサモジュールとは別個のボード(図示せず)上にマウントされてもよい。
【0018】
個々のpcLEDは、オプションで、蛍光体層に隣接して位置する又は蛍光体層上に配置されるレンズ又は他の光学素子を組み込んだり、それと組み合わせて配置されたりし得る。そのような光学素子は、図示していないが、“一次光学素子”として参照され得る。さらに、
図4A-4Bに示すように、pcLEDアレイ200(例えば、エレクトロニクス基板300上にマウントされる)は、意図する用途での使用に合わせて、例えば導波路、レンズ、又はこれらの両方などの二次光学素子と組み合わせて配置され得る。
図4Aでは、pcLED100によって放射された光が、導波路402によって集められて投射レンズ404に向けられる。投射レンズ404は、例えば、フレネルレンズとし得る。この構成は、例えば、自動車ヘッドライトでの使用に適し得る。
図4Bでは、pcLED100によって放射された光が、介在する導波路の使用なしで、直接的に投射レンズ404によって集められる。この構成は、pcLEDが互いに十分に密集して置かれる場合に特に適しており、やはり自動車ヘッドライトで使用され得るとともに、カメラフラッシュ用途でも使用され得る。マイクロLEDディスプレイ用途は、例えば
図4A-4Bに示したものと同様の光学構成を使用し得る。一般に、所望の用途に応じて、何らかの好適構成の光学素子が、ここに記載されるpcLEDと組み合わせて使用され得る。
【0019】
pcLEDアレイの多くの使用では、アレイ内の個々のpcLEDから放射される光を区画分け(コンパートメント化)することが望ましい。すなわち、アレイ内の隣接するpcLEDが暗いままである間に、アレイ内の個々のpcLEDを光源として動作させることができることが有利である。これは、ディスプレイ又は照明のより良い制御を可能にする。
【0020】
多くの用途では、アレイ内のpcLEDを共に近くに配置することも有利である。例えば、マイクロLEDにおける好適な一構成は、個々のLED間に最小の間隔を持つことである。カメラフラッシュ光源として使用される又は自動車ヘッドライト内で使用されるアレイ内でpcLEDを密集させることは、何らかの二次光学素子についての要件を単純化し、アレイによって提供される照明を改善し得る。
【0021】
しかしながら、アレイ内のpcLEDが共に近くに配置される場合、隣接するpcLED間で光クロストークが発生し得る。すなわち、あるpcLEDによって放射された光が、隣接するpcLED内に散乱したりそれ以外で結合したりして、その他方のpcLEDに由来するように見えて、光の所望の区画分けを妨げてしまい得る。
【0022】
アレイ内のピクセル間の光クロストークの可能性は、LEDのアレイの上に単一の共有の蛍光体層を使用することを禁止する。その代わりに、各発光素子上に離散した蛍光体ピクセルを設けるパターニングされた蛍光体堆積が、それら蛍光体ピクセル上の反射側壁と組み合わせて必要とされる。
【0023】
アレイ内のLED間の間隔が小さい場合、例えば、10ミクロンより又は20ミクロンより小さい場合、高アスペクト比のチャネルが充填又はコーティングされることになるため、湿式の化学的又は物理的堆積方法で蛍光体ピクセル上に反射側壁を形成することは困難である。LEDの側面被覆として使用される最も一般的な散乱層は、シリコーンに埋め込まれたTiO2散乱粒子を有する。他の一選択肢は、例えばアルミニウム又は銀などの反射金属層である。更なる他の一選択肢は、高屈折率材料と低屈折率材料との交互層のスタックから形成される多層分布ブラッグ反射器(DBR)構造であり、これは、設計に応じて非常に高い反射率を提供することができる。蛍光体ピクセルの側壁上でのそのような反射層又は反射構造の均一なコーティングを確実にするために、それら側壁はアクセス可能であるべきである。隣接する蛍光体ピクセル間のギャップのアスペクト比が高い場合、反射コーティング厚さの不均一性が不均一で非最適な反射特性につながることが予期され得る。
【0024】
この明細書は、薄い側壁リフレクタを有する密集した蛍光体ピクセルのアレイを生成するために使用され得る方法を開示する。上で概説したように、これらの方法は、パターニングされたフォトレジスト構造を、蛍光体を含む凝縮硬化シリコーン系の気相触媒作用と組み合わせて使用する。
【0025】
シリコーン又はシロキサンを硬化させるのに必要な温度は、典型的に、フォトレジストの綺麗な除去を確保するのに必要な温度よりも高く、フォトレジストパターニングによるシリコーンの全般的な使用を妨げる。例えば、120℃という典型的なシリコーン硬化温度にフォトレジストがさらされると、洗浄除去を妨げてしまうのに十分な架橋がフォトレジスト内に発生する。あるいは、後のフォトレジストの洗浄除去を確実にするために90℃という最高温度が用いられる場合には、シリコーンが適切に硬化されず、洗浄工程中にシリコーン構造の部分的な除去又はエッジ浸食が起こり得る。
【0026】
図5に見られるように、従来のフォトレジストを用いたシリコーンのパターニングのための新規な低温プロセス500を説明する。プロセス500は、フォトレジストパターニングによる構造と併せてシリコーンの低温硬化を可能にし、基板にフォトレジストを塗布して該フォトレジストをパターニング/除去することで所望の構造を形成する第1の工程510を含む。第2の工程520にて、フォトレジスト除去後に画成されたキャビティ又は領域が、凝縮硬化シリコーン系で少なくとも部分的に充填される。第3の工程530にて、気相から触媒が付与される。これにシリコーン凝縮硬化工程540が続く。そして、シリコーン凝縮硬化540と同時に、又は硬化後に、のいずれかで、第5の工程550にて、フォトレジストが除去される。
【0027】
説明するこの低温プロセスに有用なポジ型フォトレジスト化合物は、光に曝された堆積領域を現像剤が溶解することになるように、光によって劣化される感光性材料を含むことができる。事実上、これは、マスクが置かれていたところの被膜を残す(すなわち、照らされたレジストのうちそれまで暗かった部分に膜が残る)。ポジ型レジストは典型的に、低温で使用される必要がある。何故なら、ポジ型レジストは、高温では永久的な架橋(“ハードベーク”とも呼ばれる)を受けやすく、それが、当該レジストを、その後に剥離浴(典型的にマイルドな溶媒系)によって除去することができないものにするからである。
【0028】
凝縮硬化シリコーン系は、重大な処理上及び保管上の難しさなしに受け入れ可能な硬化速度を提供することができる硬化性ポリシロキサン組成物を含み得る。
【0029】
特定の実施形態において、凝縮硬化シリコーン系は、オプションの、有機、無機、又は有機/無機のバインダと、フィラー材料とを含むことができる。一実施形態において、光活性蛍光体、染料、又はナノ粒子が、シリコーンによって共に結合され得る。他の実施形態において、シリコーンは、レンズ、ライトガイド、又は屈折素子を含む光学構造を形成することができる。
【0030】
凝縮硬化シリコーン系用の触媒は、除去を必要とする種の生成を最小化するように選択されることができ、且つ/或いは、比較的低温での硬化、及び/又は熱に敏感な基板の使用を可能にするように、高温での活性化を必要とすべきでない。組成物は、比較的毒性がなく、溶液中で比較的安定であるが乾燥時に比較的速く硬化する触媒を使用することができる。触媒は、比較的低い濃度で効果的であることができ、且つ/或いは、比較的低い湿度条件(又は水分のない条件)下で効果的であることができる。気相として使用されることが可能な触媒が用いられ得る。一実施形態において、凝縮硬化シリコーン系の気相硬化は、塩基性又はアルカリ性の触媒物質を用いて行われることができる。一実施形態においては、例えば、Swierらによる米国特許第9,688,035号に記載されているものなどの、超強塩基触媒物質を用いることができる。一部の実施形態において、超強塩基触媒を用いて製造されたシリコーン固体組成物は、超強塩基触媒なしでの同様の組成物よりも、高められた硬化速度、向上された機械的強度、及び向上された熱安定性を示す。
【0031】
ここで使用される用語“超強塩基”(“superbase”)は、例えばリチウムジイソプロピルアミドなど、非常に高い塩基性を持つ化合物を指す。用語“超強塩基”はまた、固有の新たな特性を持つ新たな塩基種をもたらすような、2つ(以上)の塩基の混ぜ合わせから得られる塩基を包含する。用語“超強塩基”は、必ずしも、別の塩基よりも熱力学的に且つ/或いは動力学的に強い塩基を意味するわけではない。その代わりに、一部の実施形態において、それは、幾つかの異なる塩基の特性を組み合わせることによって塩基性試薬が作り出されることを意味する。用語“超強塩基”はまた、1,8-ビス-(ジメチルアミノ)-ナフタレンよりも高い、絶対プロトン親和性(APA=245.3kcal/mol)及び固有の気相塩基性(GB=239kcal/mole)を有する任意の化学種を包含する。
【0032】
超強塩基の非限定的な例は、有機超強塩基、有機金属超強塩基、及び無機超強塩基を含む。有機超強塩基は、以下に限られないが、窒素含有化合物を含む。一部の実施形態において、窒素含有化合物はまた、低い求核性及び比較的穏和な使用条件を持つ。窒素含有化合物の非限定的な例は、ホスファゼン、アミジン、グアニジン、及び多環ポリアミンを含む。有機超強塩基はまた、例えば酸素(安定化されていないアルコキシド)又は窒素(例えばリチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド)など、反応性金属がヘテロ原子上の水素と交換された化合物を含む。一部の実施形態において、超強塩基触媒はアミジン化合物である。一部の実施形態において、用語“超強塩基”は、少なくとも2つの窒素原子を持ち且つ水の中で測定して約0.5から約11までのpKbを持つ有機超強塩基を指す。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、超強塩基触媒は、例えば上述の有機超強塩基又は技術的に知られた有機超強塩基のうちのいずれかなどの有機超強塩基である。
【0034】
更なる一実施形態において、超強塩基触媒は:
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、(CAS#6674-22-2)
を有する。
【0035】
超強塩基触媒の量は、様々とすることができ、限定するものではない。典型的に、気相を通して付与される量は触媒的に有効な量であり、それは、選択される超強塩基、及びシロキサンポリマー樹脂の蒸気透過特性に応じて様々であり得る。超強塩基触媒の量は、典型的に、固体組成物中でppm(百万分の1)単位で測定される。特に、触媒濃度は、共重合体固体に関して計算される。硬化性組成物に付与される超強塩基触媒の量は、固体組成物中に存在するポリマー樹脂含有量(重量による)に基づいて、0.1-1,000ppm、あるいは1-500ppm、あるいは10-100ppmの範囲とし得る。
【0036】
シリコーン材料又はシロキサンは、機械的安定性、低温硬化特性(例えば、150-120℃未満)、及び気相触媒を用いて触媒される能力に関して選択され得る。一実施形態において、有機シロキサンブロック共重合体を使用することができる。D単位及びT単位を含む有機ポリシロキサンを使用することができ、D単位は主として共に結合して10から400のD単位を持つ直鎖状ブロックを形成し、T単位は主として互いに結合して、“非直鎖状ブロック”と称する分枝ポリマー鎖を形成する。
【0037】
例えば先述したものなどの、パターニングされた気相触媒シリコーン又はシロキサン材料が、LED及びマイクロLEDパッケージングで使用され得る。LEDパッケージは、気相触媒シリコーンを用いて共に結合された蛍光体を含むことができる。一部の実施形態において、シリコーンで結合された蛍光体材料は、金属、光反射材料、又はミラー(例えば、分布ブラッグ反射器-“DBRミラー”)でコーティングされ得る側壁を形成することができる。
【0038】
気相触媒シリコーンを用いて共に結合された蛍光体は、エピタキシャル成長又は堆積させた半導体n層を支持することができるサファイア又は炭化ケイ素で形成された基板上に位置付けられることができる。n層上に連続的に半導体p層を成長又は堆積させ、層間のジャンクションに活性領域を形成することができる。高輝度発光デバイスを形成することが可能な半導体材料は、以下に限られないが、III-V族半導体、特に、III族窒化物材料としても参照されるガリウム、アルミニウム、インジウム、及び窒素の二元、三元、及び四元合金を含み得る。
【0039】
蛍光体は、白色光又は他の色の単色光を作り出すことができる1つ以上の波長変換材料を含むことができる。LEDによって放たれた光の全て又は一部のみが、蛍光体の波長変換材料によって変換され得る。変換されていない光が、光の最終的なスペクトルの一部となり得るが、そうである必要はない。一般的なデバイスの例は、黄色発光蛍光体と組み合わされた青色発光LEDセグメント、緑色及び赤色発光蛍光体と組み合わされた青色発光LEDセグメント、青色及び黄色発光蛍光体と組み合わされたUV発光LEDセグメント、青色、緑色及び赤色発光蛍光体と組み合わされたUV発光LEDセグメントを含む。シリコーンで共に結合された蛍光体は、成形され、ディスペンスされ、スクリーン印刷され、スプレー塗布され、又はラミネートされ得る。
【0040】
一実施形態において、光反射材料はメタライゼーションされた層とすることができる。他の実施形態では、誘電体ミラー又はDBRを使用することができる。一部の実施形態において、光反射材料は、例えばシリコーンなどのバインダと光反射粒子との薄い層を含むことができる。光反射材料はまた、有機、無機、又は有機/無機のバインダと、フィラー材料とを含むことができる。例えば、有機/無機バインダ及びフィラーは、例えば反射性の酸化チタン(TiO2)、SiO2、又は他の反射/散乱粒子を埋め込んだシリコーンとし得る。無機バインダは、ゾル-ゲル(例えば、TEOS又はMTMSのゾル-ゲル)又は水ガラスとしても知られる液体ガラス(例えば、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウム)を含み得る。一部の実施形態において、バインダは、物理特性を調節するフィラーを含むことができる。フィラーは、無機ナノ粒子、シリカ、ガラス粒子若しくは繊維、又は、光学性能若しくは熱性能を向上させることができる他の材料を含み得る。光反射材料は、側壁に、蒸着(金属の場合)、原子層成長(DBRミラーの場合)、又は成形、ディスペンス、スクリーン印刷、スプレー塗布、若しくはラミネーション(バインダ内の反射粒子の場合)を含む様々なプロセスによって適用されることができる。
【0041】
更なる他の実施形態において、LEDパッケージ内のシリコーン結合された蛍光体の近くに一次光学系又は二次光学系を取り付ける又は位置付けることができる。光学系は、凹レンズ若しくは凸レンズ、小型レンズアレイ、屈折率分布型レンズ、リフレクタ、散乱素子、ビームホモジナイザ、ディフューザ、又は他の集光若しくはぼかし光学系を含むことができる。特定の用途で必要に応じて、保護層、透明層、熱的な層、又は他のパッケージング構造が使用されてもよい。
【0042】
図6A-6Gに見られるように、ポジ型フォトレジストと、粒子状蛍光体を含有する気相触媒シリコーンとを用いて、パターニングされた蛍光体構造を形成する方法を説明する。
図6Aに見られるように、構造600Aは、除去可能なポジ型フォトレジスト620と、オプションの蛍光体、染料、光活性化ナノ粒子、フィラー、又は他の材料を含有するシリコーン構造630と、を支持した基板610を含んでいる。
【0043】
図6Bは、ポジ型フォトレジストの除去後に画成される構造600Bを示しており、自立したシリコーン630のピラー又は型枠が残され、シリコーン構造630に隣接してキャビティ622が画成されている。該キャビティは、以下に限られないが、穴、チャネル、例えば矩形レイアウト、市松模様レイアウト、湾曲若しくは蛇行レイアウト、又は六角形レイアウトなどの規則的なパターンを含み得る。
【0044】
図6Cは、シリコーン構造の頂部、側壁、及び基板610を覆う反射層640の適用後の構造600Cを示している。反射層は、金属、誘電体ミラー、又はバインダに含有された反射粒子とし得る。
【0045】
図6Dは、シリコーン及びオプションの蛍光体、染料、光活性化ナノ粒子、フィラー、若しくは他の材料でのキャビティ622に充填後の構造620Dを示している。該シリコーンは、
図6A-6Cで使用されたものと同じとすることができ、あるいは、他のタイプのシリコーン系及び蛍光体が使用されてもよい。例えば、気相触媒を必要としない高温シリコーン系を、相異なる発光特性を持つ一組の蛍光体と共に用いることができる。
【0046】
図6Eは、研削、研磨、又はエッチングによる頂部反射層の除去後の構造600Eを示している。
【0047】
図6Fは、ひっくり返して、活性な光エミッタを含むLED基板に取り付けた後の構造600Fを示している。LED基板は、ミクロンスケールのフィーチャ及び/又はミリメートルスケールのピクセルを有するマイクロLEDとし得る。
【0048】
図6Gは、従来からの剥離技術及び/又は研削、研磨、又はエッチングによる基板610及び頂部反射層の除去後の構造600Gを示している。これは、シリコーン構造630間の側壁上に垂直反射コーティング640を残して、蛍光体ピクセル構造間の光分離を提供する。
【0049】
図7は、
図6Cに示した処理工程に対応する中間構造700を示している。これは、蛍光体アレイの半分が形成及び硬化されている市松模様と、粒子状蛍光体を含む気相触媒シリコーンの“アイランド”730を覆うように形成された反射層とを含んでいる。アイランド730同士の間のキャビティチャネル又は溝722が、次工程で更なる蛍光体で充填され、硬化されることになり、蛍光体構造をLEDアレイ及び何らかの追加の光学系に取り付ける前に、頂面及び底面上に適用された反射材料が除去される。
【0050】
例えばここに開示されるものなどの発光アレイ又はマイクロLEDアレイは、細かい粒度での光分布の強度、空間、及び時間制御による恩恵を受ける広範な用途をサポートすることができる。これは、以下に限られないが、ブロック又は個々のLEDからの放射光の精密な空間パターニングを含み得る。用途に応じて、放射光は、スペクトル的に異なってもよく、経時的に適応的であってもよく、及び/又は環境応答性であってもよい。一部の実施形態において、発光アレイは、様々な強度、空間、又は時間パターンで、予めプログラムされた光分布を提供し得る。放射光は、受信されるセンサデータに少なくとも部分的に基づくことができ、また、光無線通信に使用されることができる。上述したように、付随する光学系は、単一又は複数のLEDレベルで異なり得る。発光アレイの一例は、共通の光学系が付随した共通に制御される高強度LEDの中央ブロックを有するデバイスを含むことができ、その一方で、エッジに位置するLEDは個々の光学系を有し得る。発光LEDアレイによってサポートされる一般的な用途は、映像照明、自動車ヘッドライト、建築若しくは領域照明、街路照明、及び情報表示を含む。
【0051】
プログラマブル発光アレイは、改良された視覚表示のために又は照明コストを低減させるために、建物又は領域を選択的且つ適応的に照明するために使用され得る。また、発光アレイは、装飾的なモーション又は映像効果のためにメディアファサードを投影するために使用され得る。追跡センサ及び/又はカメラと共に、歩行者の周りの領域の選択的な照明が可能であり得る。スペクトル的に異なるLEDを用いて、照明の色温度を調節することができ、また、波長特異的な園芸照明をサポートすることができる。
【0052】
街路照明は、プログラマブル発光アレイの使用から大いに恩恵を受け得る重要な用途である。単一タイプの発光アレイを用いて、様々な街路光タイプを模倣し、例えば、選択されたLEDの適切な作動又は非作動によって、タイプIの直線状の街路光とタイプIVの半円の街路光との間での切り換えを可能にし得る。さらに、環境条件又は使用時間に従って光ビーム強度又は分布を調節することにより、街路照明コストが低下され得る。例えば、歩行者が存在しないときに、光強度及び分布面積を低減させ得る。発光アレイのLEDがスペクトル的に異なる場合、光の色温度が、それぞれの日光、夕暮れ、又は夜間の条件に従って調節され得る。
【0053】
プログラマブル発光LEDはまた、直接的な又は投影される表示を必要とする用途をサポートするのによく適している。例えば、較正、警告、緊急、又は情報サインを必要とする自動車ヘッドライトは全て、発光アレイを用いて表示又は投影されることができる。これは、例えば、自動車ヘッドライトからの光出力の指向性を変更することを可能にする。発光アレイが多数のLEDから構成される又は好適な動的光マスクを含む場合、テキスト又は数値情報が、ユーザガイドによる配置で提示され得る。方向付きの矢印又は類似のインジケータも提供され得る。
【0054】
以上の説明及び関連する図面にて提示された教示の恩恵を受けた当業者には、本発明の数多くの変更及び他の実施形態が思い浮かぶことになる。従って、理解されることには、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきでなく、変更及び実施形態が添付の請求項の範囲に含まれることが意図される。これまた理解されることには、この発明の他の実施形態は、ここに具体的には開示されていない要素/工程の存在なしで実施されてもよい。