(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】着用物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20230814BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
A61F13/15 355B
A61F13/15 333
A61F13/15 391
A61F13/15 353
A61F13/496 100
(21)【出願番号】P 2022519636
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017570
(87)【国際公開番号】W WO2021225169
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020082674
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】梅林 豊志
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈津紀
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098535(WO,A1)
【文献】特開2016-112237(JP,A)
【文献】特開2013-199090(JP,A)
【文献】国際公開第2014/097636(WO,A1)
【文献】特開2016-112340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用物品の製造方法であって、
連続体における着用物品を構成する第1部分と第2部分とを重ね合わせる重合工程と、
前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせた状態の前記連続体を、回転ドラムの外周面に巻き掛けて当該回転ドラムの回転により搬送する搬送工程と、
前記連続体を前記回転ドラムの回転により搬送し、かつ、シールユニットが回転ドラムと同速で回転している状態で、シールユニットの可動部分を前記連続体の搬送方向に交差する交差方向に往復で移動して線状のシール部分を往路と復路でそれぞれ形成することにより、前記着用物品の両側に相当する部分においてそれぞれ前記第1部分と前記第2部分との接合を行う接合工程とを含み、
さらに、前記重合工程の後でかつ前記接合工程の前において、第1部分と前記第2部分との前記接合を行う箇所における前記第1部分と前記第2部分との相対的な移動を抑止するズレ抑止処理工程を含
み、
前記接合工程では、前記連続体における隣接する2つの着用物品の間に当該2つの着用物品のそれぞれのために2か所の線状のシール部分を形成し、
前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分の形成予定箇所の間において熱融着によって前記第1部分および前記第2部分を互いに仮止めする、
着用物品の製造方法。
【請求項2】
前記ズレ抑止処理工程では、前記
2か所の線状のシール部分に隣接する部分において、前記第1部分および前記第2部分を互いに仮止めする、
請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項3】
前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分の延びる方向において前記第1部分および前記第2部分の一方の端部、他方の端部、及び中間部を仮止めする、請求項1または請求項2に記載の着用物品の製造方法。
【請求項4】
前記熱融着は、前記連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所に沿って施される、
請求項
1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項5】
前記熱融着は、前記連続体における隣り合う前記着用物品の間の切断予定箇所の両側の箇所に施される、
請求項
1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項6】
前記熱融着は、前記連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所を跨いで施される、
請求項
1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程では、前記第1部分と前記第2部分との間に吸収性本体を介在した状態で、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせ、
前記搬送工程では、前記回転ドラムの外周面に設けられた凹部に前記吸収性本体の少なくとも一部が挿入された状態で、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせた状態の前記連続体を、前記回転ドラムの外周面に巻き掛けて当該回転ドラムの回転により搬送し、
前記接合工程では、前記第1部分および前記第2部分が互いに仮止めされるととともに前記吸収性本体の少なくとも一部が前記凹部に挿入された状態で、前記第1部分と前記第2部分との接合を行う、
請求項
1~
6のいずれか1項に記載の着用物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつなどの着用物品を連続的に製造するために種々の製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の着用物品の製造方法では、着用物品となる連続体の前身頃の部分と後身頃の部分とを重ね合わせた状態で当該連続体を回転ドラムに巻き掛けて搬送する。そして、前身頃の部分と後身頃の部分とが重ね合わされた連続体が回転ドラムによって搬送されている間に、シールユニットを回転ドラムと同速で回転させながら、連続体の搬送方向と交差する方向にシールユニットのアンビルローラを直線の移動経路に沿って往復移動させることにより、連続体における各着用物品の端部となる部分で前身頃の部分と後身頃の部分とを往復の各移動経路に沿った線状のシール部分によって接合している。
【0004】
しかし、特許文献1に示される着用物品の製造方法では、着用物品となる連続体を前身頃の部分と後身頃の部分とを重ね合わせた状態で回転ドラムに巻きかけると、ドラム内周側に配置されている前身頃および後見頃のうちの一方の部分と外周側に配置されている他方の部分とで周速差が生じる(たとえば、
図11の連続体Wの第1部分W1および第2部分W2参照)。
【0005】
したがって、連続体の搬送方向と交差する方向へのシールユニットの往復により連続体を接合した場合に、シールユニットと前身頃または後見頃との間に周速差が生じ、往路と復路とでシール部分にズレが生じるという問題がある(たとえば、
図12のシール部分S1、S2参照)。
【0006】
このようなシール部分のズレは、通常使用される直径が2m程度の大径の回転ドラムの周面では1mm以上の視認可能な大きさになり、とくに、パンツ型おむつのように厚みのある吸収体を有している着用物品の場合には、ズレがさらに顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、連続体の重合せ部分を往復で接合する際のシール部分のずれを抑止することが可能な着用物品の製造方法を提供することである。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の着用物品の製造方法は、連続体における着用物品を構成する第1部分と第2部分とを重ね合わせる重合工程と、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせた状態の前記連続体を、回転ドラムの外周面に巻き掛けて当該回転ドラムの回転により搬送する搬送工程と、前記連続体を前記回転ドラムの回転により搬送し、かつ、シールユニットが回転ドラムと同速で回転している状態で、シールユニットの可動部分を前記連続体の搬送方向に交差する交差方向に往復で移動して線状のシール部分を往路と復路でそれぞれ形成することにより、前記着用物品の両側に相当する部分においてそれぞれ前記第1部分と前記第2部分との接合を行う接合工程とを含み、さらに、前記重合工程の後でかつ前記接合工程の前において、第1部分と前記第2部分との前記接合を行う箇所における前記第1部分と前記第2部分との相対的な移動を抑止するズレ抑止処理工程を含み、前記接合工程では、前記連続体における隣接する2つの着用物品の間に当該2つの着用物品のそれぞれのために2か所の線状のシール部分を形成し、前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分の形成予定箇所の間において熱融着によって前記第1部分および前記第2部分を互いに仮止めする、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る着用物品の製造方法の一例として使い捨ておむつの製造方法を説明するための工程図である。
【
図2】
図1に示す接合工程を行なうための超音波 溶着装置の概略構成を示す正面図である。
【
図5】ズレ抑止処理工程の一例として、
図2の回転ドラムの上流側において連続体における互いに重なり合った第1部分および第2部分を熱融着する動作を示す説明図である。
【
図6】
図2の超音波 溶着装置によって往復のシール部分を形成する接合工程を示す説明図である。
【
図7A】
図5の熱融着ユニットによって連続体に形成される熱融着のパターン、すなわちヒートシール部分の配置を示す説明図である。
【
図7B】
図5の熱融着ユニットによって連続体に形成される熱融着の他のパターン、すなわちヒートシール部分の他の配置を示す説明図である。
【
図7C】
図5の熱融着ユニットによって連続体に形成される熱融着のさらに他のパターン、すなわちヒートシール部分のさらに他の配置を示す説明図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例であって、ズレ抑止処理工程の他の例として、ヒートシールによる仮止めとともに、回転ドラムの周面に設けられた凹部に連続体に等間隔に配置された吸収体を挿入することによって、仮止め効果を補強する動作を示す説明図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る着用物品の製造方法であって、ズレ抑止処理工程において、回転ドラムの周面に設けられた複数の針を連続体における互いに重なり合った第1部分および第2部分に貫通させることによって、これら第1部分および第2部分のずれを抑止する動作を示す説明図である。
【
図10A】
図9の針が貫通した状態の連続体の拡大正面図である。
【
図10B】回転ドラムの周面において
図10Aの針が連続体の第1部分および第2部分を貫通している状態を示す断面説明図である。
【
図11】本発明の比較例であるズレ抑止処理を行わない着用物品の製造方法において、回転ドラム上において連続体における重なり合う第1部分および第2部分が周速差によって、これら第1部分および第2部分の間にずれが生じる状態を示す図である。
【
図12】
図11の回転ドラム上で往復のシール部分を形成した場合の往路と復路のシール分のずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0012】
本発明の製造方法で製造される着用物品20は、例えば、
図1に示されるような使い捨ておむつやショーツなどの下半身を覆うことが可能な着用物品であり、着用時に、着用者の腹部に配置される前身頃20aと、着用者の臀部に配置される後身頃20bと、前身頃20aから着用者の両脚部の間を通って後身頃20bまで延びる股下部20cとを備えている。
【0013】
前身頃20aの両側縁部および後身頃20bの両側縁部は、前身頃20aと後身頃20bとが環状に連結されるように接合、具体的には、2箇所の超音波溶着によるシール部分Sによって互いに溶着されている。
【0014】
着用物品20の基本的な製造手順は、以下の通りである。
【0015】
<搬送工程P1>
搬送工程P1では、特定方向に延びる長尺のシート状の連続体Wをその長手方向(搬送方向F)に沿って搬送する。以下、連続体Wの流れ方向を横方向とし、
図1において横方向と直交する方向を縦方向として説明する。
【0016】
連続体Wは、着用時に着用者の体表側に向く内側シートと、着用時に着用者の外側を向く外側シートと、これら内側シートと外側シートとの間に挟まれ、少なくとも搬送方向Fに伸縮する弾性部材とを有している。外側シートは、液体透過性を有する不織布シートおよび/またはメッシュシート、または、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、または防水性および通気性を有する熱融着樹脂製の不織布により構成されている。
【0017】
<レッグホール形成工程P2>
レッグホール形成工程P2では、連続体Wの縦方向の中央位置にレッグホールLを形成する。
【0018】
連続体Wにおける2つのレッグホールLの間の領域は、股下部20cに相当する部分である。また、連続体Wにおける股下部20cに相当する部分の縦方向の両側位置は、それぞれ前身頃20aおよび後身頃20bに相当する部分である。
【0019】
つまり、搬送工程P1およびレッグホール形成工程P2は、前身頃20aと後身頃20bとが股下部20cを介して縦方向に連結された構成要素が横方向に連続する連続体を準備する準備工程に相当する。
【0020】
<吸収体接合工程P3>
吸収体接合工程P3では、連続体Wにおける2つのレッグホールLの間の位置に吸収性本体Aを接合する。
【0021】
吸収性本体Aは、液体透過性を有する透過性シートと、防水性および通気性を有する防水シートと、透過性シートと防水シートとの間に挟まれた吸収性コアとを備えている。透過性シートは、液体透過性を有する不織布シートおよび/またはメッシュシートにより構成されている。防水シートは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、または防水性および通気性を有する不織布により構成されている。吸収性コアは、粉砕されたパルプまたはこれに高吸水性ポリマーを混合したものを積層して成型される。
【0022】
<重合工程P4>
重合工程P4では、吸収性本体Aが載置された連続体Wを縦方向に(すなわち、連続体Wの幅方向(縦方向)中間の位置で)二つ折りにする。これにより、連続体Wにおける前身頃20aに相当する部分と後身頃20bに相当する部分とが重ね合わされる。
【0023】
<接合工程P5>
接合工程P5では、二つ折りにされた連続体Wにおける前身頃20aの側縁部に相当する部分と後身頃20bの側縁部に相当する部分とを超音波溶着する。
【0024】
具体的に、接合工程P5では、後述する切断工程P6で切断する範囲として予め設定された切断範囲を空けて、連続体Wの2箇所を同時に超音波溶着して搬送方向Fと交差する(本実施形態では直交する)交差方向Rに延びる線状のシール部分Sを形成する。
【0025】
なお、2つのシール部分Sは、前身頃20aの側縁部に相当する部分および後身頃20bの側縁部に相当する部分にそれぞれ形成されている。
【0026】
<切断工程P6>
切断工程P6では、接合工程P5で形成された2つのシール部分Sの間で縦方向に延びる切断線に沿って連続体Wを切断する。これにより、連続体Wが着用物品ごとに切り分けられる。
【0027】
<超音波溶着装置1の説明>
接合工程P5を行なう接合装置は、連続体Wを回転ドラム5の回転により搬送している状態で、シールユニットの可動部分を連続体Wの搬送方向Fに交差する交差方向Rに往復で移動して
図6に示される線状のシール部分S1、S2を往路R1と復路R2でそれぞれ形成することにより、着用物品20の両側に相当する部分においてそれぞれ第1部分W1と第2部分W2との接合を行う構成を有していればよい。例えば、
図2に示される超音波溶着装置1が、接合工程P5を行なうために用いられる。
【0028】
図2に示される超音波溶着装置1は、重合工程P4で二つ折りにされた連続体Wを導入する導入用アンビルローラ2と、導入用アンビルローラ2により導入された連続体Wを溶着する溶着ドラム部3と、溶着ドラム部3により溶着された連続体Wを導出する導出用アンビルローラ4とを備えている。
【0029】
溶着ドラム部3は、導入用アンビルローラ2により導入された連続体Wを保持する回転ドラム5と、連続体Wを接合するシールユニットとして連続体Wを超音波溶着する6つの超音波シールユニット7とを備える。
【0030】
超音波シールユニット7は、
図2~3に示されるように、回転ドラム5に設けられた6つの超音波ホーン6と、超音波ホーン6との間で連続体Wを溶着するためのアンビルローラ10(可動部分)と、回転中心C1に沿って回転ドラム5に対して移動可能(すなわち、
図3において上下方向に移動可能)となるようにアンビルローラ10を保持する保持部材11とを備えている。
【0031】
また、溶着ドラム部3は、保持部材11を保持する筒状のアンビル保持ドラム8(
図3参照)と、アンビル保持ドラム8の内側に設けられたカムドラム9(
図3参照)と、各超音波ホーン6に隣接して回転ドラム5に固定された6枚の被押付部材18(
図3参照)とを備えている。
【0032】
回転ドラム5は、
図2~3に示されるように、連続体Wをその外周面に保持した状態で回転中心C1回りに回転可能である。また、回転ドラム5には、回転中心C1回りで等間隔に6つの凹溝5aが形成されている。各凹溝5aは、回転ドラム5の外向きに開くとともに回転中心C1に沿って延びている。
【0033】
各超音波ホーン6は、回転ドラム5に保持された連続体Wに超音波振動を与える。各超音波ホーン6は、超音波振動を出力する出力側端部6bを備えている。
【0034】
超音波ホーン6は、
図2~3に示されるように、回転ドラム5に保持された連続体Wに内側から接触するように、凹溝5a内に設けられている。
【0035】
図3~4に示されるように、保持部材11は、アンビル保持ドラム8に対して回転中心C1に沿って移動可能に取り付けられた保持部材本体12と、保持部材本体12に対して回動軸19b回りに回動可能に取り付けられているとともに回転軸19a回りに回転可能となるようにアンビルローラ10を保持する保持レバー19と、アンビルローラ10が超音波ホーン6に対して近づく方向に前記保持レバー19を付勢する付勢部材25とを備えている。
【0036】
ここで、回転軸19aおよび回動軸19bは、それぞれ回転中心C1および超音波シールユニット7を含む平面と直交する方向(
図3の紙面と直交する方向)に延びる軸である。また、回転軸19aは、保持レバー19の先端部に設けられているとともに、回動軸19bは、保持レバー19の中間部に設けられている。
【0037】
そのため、アンビルローラ10は、保持部材11の回転中心C1に沿った移動に応じて連続体Wに対して転がり接触可能であり、かつ、保持レバー19の回動に応じて連続体W(超音波ホーン6)に対して回転ドラム5の径方向に近づくことまたは遠ざかることが可能である。
【0038】
付勢部材25は、保持レバー19の基端部を保持部材本体12に対して回転中心C1から離れる方向に付勢することによってアンビルローラ10が超音波ホーン6に近づく方向にアンビルローラ10を付勢している。
【0039】
付勢部材25、保持レバー19、および回動軸19bは、超音波ホーン6とアンビルローラ10とが近づくようにアンビルローラ10を超音波ホーン6に向けて付勢する付勢機構に相当する。
【0040】
保持部材本体12には、回転中心C1に向けて延びるカム突起14と、カム突起14および回転中心C1と直交する方向(
図4の左右方向)で反対向きにそれぞれ突出するとともに回転中心C1に沿って延びる一対の係合突起15とが設けられている。
【0041】
また、保持部材本体12は、アンビル保持ドラム8の外周面に立設された一対のレール17間に設けられている。各レール17には、相手のレール17側に開くとともに回転中心C1に沿って延びる係合溝17aが形成されている。保持部材本体12の各係合突起15は、アンビル保持ドラム8に対して回転中心C1に沿って移動可能となるように、それぞれ係合溝17aに係合している。
【0042】
ここで、筒状のアンビル保持ドラム8には、その周壁を貫通するとともに回転中心C1に沿って延びるスリット16aが設けられている。保持部材本体12のカム突起14は、スリット16aを通じてアンビル保持ドラム8の内側に挿入されている。
【0043】
アンビル保持ドラム8内には、カムドラム9が設けられ、このカムドラム9の外周面には、カム溝9aが形成されている。カム突起14の先端部は、カム溝9a内に挿入されている。カム溝9aは、カムドラム9に対してアンビル保持ドラム8が回転することに応じて超音波シールユニット7が回転中心C1に沿って移動するようにカム突起14を案内する。
【0044】
ここで、回転ドラム5とアンビル保持ドラム8とは互いに固定され、両者は、一体的に回転中心C1回りに回転する。一方、カムドラム9の回転位置は、回転ドラム5およびアンビル保持ドラム8の回転にかかわらず固定されている。したがって、保持部材本体12は、回転ドラム5およびアンビル保持ドラム8の回転中心C1回りの回転に応じて回転中心C1に沿って移動する。
【0045】
具体的に、
図2および
図3の最も下に位置するアンビルローラ10および保持部材11は、平面視で回転ドラム5に保持された連続体Wから外れた位置に配置される。この状態で、回転ドラム5が
図2の反時計回りに回転することに応じて、アンビルローラ10および保持部材11は、回転中心C1に沿って連続体Wに近づく方向に移動する。
【0046】
アンビルローラ10および保持部材11が
図2および
図3の最も上の位置まで変位する過程において、アンビルローラ10は、連続体Wを横断し、
図2および
図3の最も上の位置では、平面視においてアンビルローラ10が回転ドラム5に保持された連続体Wから外れた位置に配置される。この状態からさらに回転ドラム5が反時計回りに回転すると、アンビルローラ10は、再び連続体Wを横断し、
図2および
図3の最も下の位置のアンビルローラ10の位置に復帰する。
【0047】
つまり、超音波溶着装置1では、
図2の範囲E1においてアンビルローラ10が連続体W上を往復移動し、この往復移動の間に連続体Wがシール部分Sの部位で溶着される。より詳細には、
図2の範囲E1以外の範囲内に位置するアンビルローラ10は、平面視で連続体Wから外れた位置にあり、範囲E1内にアンビルローラ10が入ると、アンビルローラ10は、平面視で連続体Wに重なる位置なるように順次移動する。
【0048】
<第1実施形態>
第1実施形態の着用物品20の製造方法は、上記の超音波溶着装置1を用いて以下の手順で行われる。
【0049】
すなわち、第1実施形態の着用物品20の製造方法は、
【0050】
(i) 連続体Wにおける着用物品20を構成する前身頃となる第1部分W1と後身頃となる第2部分W2とを重ね合わせる重合工程(
図1の重合工程P4参照)と、
【0051】
(ii) 第1部分W1と第2部分W2とを重ね合わせた状態の連続体Wを、
図5に示されるように、回転ドラム5の外周面5bに巻き掛けて当該回転ドラム5の回転により搬送する搬送工程(すなわち、
図1の重合工程P4から接合工程P5までの搬送工程)と、
【0052】
(iii) 連続体Wを回転ドラム5の回転により搬送し、かつ、超音波シールユニット7が回転ドラム5と同速で回転している状態で(例えば、
図5の回転ドラム5が所定の角度範囲RS1を回転している間において)、
図2~3の超音波シールユニット7の可動部分であるアンビルローラ10を連続体Wの搬送方向Fに交差する交差方向Rに往復で移動して
図6に示される線状のシール部分S1、S2を往路R1と復路R2でそれぞれ形成することにより、着用物品20の両側に相当する部分においてそれぞれ第1部分W1と第2部分W2との接合(本実施形態では超音波溶着)を行う接合工程(
図1の接合工程P5)とを含む。
【0053】
第1実施形態の製造方法は、上記の重合工程の後でかつ接合工程の前において、(iv)第1部分W1と第2部分W2との接合を行う箇所における第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動を抑止するズレ抑止処理工程を含む。
【0054】
第1実施形態では、ズレ抑止処理工程では、第1部分W1および第2部分W2における接合が行われる予定の接合予定箇所S0(
図7A、
図7B、
図7C参照)またはそれに隣接する部分において、第1部分W1および第2部分W2を互いに仮止めする。
【0055】
仮止めは、例えば、熱融着(すなわち、ヒートシール)によって行われる。具体的には、
図2および
図5に示される回転ドラム5の上流側の導入用アンビルローラ2の周面において、ヒートシールユニット21を用いて連続体Wの重ね合わされた第1部分W1および第2部分W2のヒートシールが行われる。
【0056】
ヒートシールは、例えば、
図7A、
図7B、
図7Cのヒートシール部分Hに示されるように、着用物品20(
図1参照)のウエスト部(第1部分W1の上端)、タミー部(同第1部分W1の中間)、レグ部(同第1部分W1の下端)に対応する個所にそれぞれ、縦長もしくは横長のパターンを形成する。
図7A、
図7B、
図7Cに示されるように、接合工程によって施される接合予定箇所S0に施される超音波溶着シールに剥離などの影響がないように、接合予定箇所S0よりも各着用物品20を分離する切断予定箇所Cにヒートシールするのが好ましい。
【0057】
すなわち、ヒートシールは、
図7A、
図7B、
図7Cに示されるように、2本の接合予定箇所S0の間の領域において、第1部分W1および第2部分W2の全幅において等間隔に離間する複数のヒートシール部分Hが同時に形成されるように複数個所で行われる。
【0058】
例えば、
図7Aに示されるヒートシール部分Hは、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cに沿って互いに離間する複数の箇所が形成される。
【0059】
また、
図7Bに示されるヒートシール部分Hのように、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cの両側の箇所にヒートシールを施してもよい。
【0060】
さらに、
図7Cに示されるヒートシール部分Hのように、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cを跨いでヒートシールを施してもよい。
【0061】
なお、熱融着のパターン、すなわちヒートシール部分Hの配置は上記の
図7A、
図7B、
図7Cに限定されるものではなく、接合工程の前に連続体Wの重なり合う第1部分W1および第2部分W2が回転ドラム5の外周面5bに沿って搬送される際にずれが生じないように仮止めすることが可能であればいかなるパターンであってもよい。
【0062】
なお、
図2~3に示される超音波シールユニット7の可動部分は、アンビルローラ10、超音波ホーン6いずれか一方であればよい。
【0063】
なお、連続体Wの前身頃となる第1部分W1および後身頃となる第2部分W2は、
図5にでは、第1部分W1が第2部分W2よりも外周側になるように、回転ドラム5に巻き掛けられているが、反対の配置、すなわち、第2部分W2が第1部分W1よりも外周側になるように、回転ドラム5に巻き掛けられてもよい。
【0064】
なお、
図5に示される吸収性本体Aは、重合工程(
図1のP4)において連続体Wの第1部分W1および第2部分W2が重ね合わされることに伴って、2つに折り返された状態(すなわち、第1部分A1および第2部分A2が重なった状態)になっている。
【0065】
(第1実施形態の特徴)
【0066】
(1)
上記のように第1実施形態の着用物品20の製造方法は、連続体Wにおける着用物品20を構成する前身頃となる第1部分W1と後身頃となる第2部分W2とを重ね合わせる重合工程と、第1部分W1と第2部分W2とを重ね合わせた状態の連続体Wを、
図5に示されるように、回転ドラム5の外周面5bに巻き掛けて当該回転ドラム5の回転により搬送する搬送工程と、連続体Wを回転ドラム5の回転により搬送し、かつ、超音波シールユニット7が回転ドラム5と同速で回転している状態で、
図2~3の超音波シールユニット7の可動部分(例えば、アンビルローラ10)を連続体Wの搬送方向Fに交差する交差方向Rに往復で移動して
図6に示される線状のシール部分S1、S2を往路R1と復路R2でそれぞれ形成することにより、着用物品20の両側に相当する部分においてそれぞれ第1部分W1と第2部分W2との接合を行う接合工程とを含み、さらに、重合工程の後でかつ接合工程の前において、第1部分W1と第2部分W2との接合を行う箇所における第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動を抑止するためのヒートシールなどの仮止めによるズレ抑止処理工程を含む。
【0067】
かかる製法では、連続体Wにおける着用物品20の前身頃となる第1部分W1と後身頃となる第2部分W2とを往復で接合する接合工程の前に、ズレ抑止処理工程において、第1部分W1と第2部分W2との接合を行う箇所における第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動をヒートシールなどの仮止めによって抑止する。そのため、
図6に示されるように、第1部分W1と第2部分W2との接合の際における往路R1と復路R2のシール部分S1、S2は同じ位置に沿って形成することが可能になり、シール部分S1、S2のずれを抑止することが可能となり、これにより、超音波シールユニット7と第1部分W1または第2部分W2との周速差を低減することが可能である。したがって、連続体Wの重合せ部分を往復で接合する際のシール部分S1、S2のずれを抑止することが可能になる。
【0068】
ここで、比較例として、接合工程の前にヒートシールなどの仮止めによるズレ抑止処理工程が行われない場合には、
図11に示されるように、連続体Wを第1部分W1と第2部分W2とを重ね合わせた状態で回転ドラム5に巻きかけると、回転ドラム5の内周側に配置されている第2部分W2と外周側に配置されている第1部分W1とで周速差が生じる。したがって、
図12に示されるように、連続体Wの搬送方向Fと交差する交差方向Rに超音波シールユニット7により往復で接合した場合に、往路R1と復路R2とでシール部分S1、S2にズレが生じるという問題が生じる。したがって、上記のヒートシールなどの仮止めによるズレ抑止処理工程が、連続体Wの重合せ部分を往復で接合する際のシール部分S1、S2のずれを抑止する効果に寄与していることは明らかである。
【0069】
(2)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、ズレ抑止処理工程では、第1部分W1および第2部分W2における接合が行われる予定の接合予定箇所S0(
図7A、
図7B、
図7C参照)またはそれに隣接する部分において、第1部分W1および第2部分W2を互いにヒートシールなどによって仮止めする。
【0070】
かかる製法では、ズレ抑止処理工程では、第1部分W1および第2部分W2の接合予定箇所S0またはそれに隣接する部分において第1部分W1および第2部分W2を互いに仮止めするので、接合工程の前における第1部分W1と第2部分W2の接合予定箇所S0の相対的な移動を確実に抑止することが可能になる。その結果、第1部分W1と第2部分W2との接合の際における往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを確実に抑止することが可能である。
【0071】
なお、ヒートシールなどによる仮止めは、その後の接合工程における往復のシール部分S1、S2のずれを抑止するために、接合予定箇所S0のできるだけ近くがよい。
【0072】
また、仮止めは、回転ドラム5に対して搬送方向Fの上流側に位置する導入用アンビルローラ2の周面上だけでなく、回転ドラム5の外周面5b上で行ってもよい。
【0073】
(3)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、接合工程では、連続体Wにおける隣接する2つの着用物品の間に当該2つの着用物品のそれぞれのために2か所の線状のシール部分Sを形成し、ズレ抑止処理工程では、2か所の線状のシール部分の形成予定箇所(すなわち、接合予定箇所)S0の間において第1部分W1および第2部分W2を互いに仮止めする。
【0074】
かかる構成では、ズレ抑止処理工程では、
図7A、
図7B、
図7Cに示されるように、2か所の線状のシール部分の形成予定箇所(すなわち、接合予定箇所)S0の間において第1部分W1および第2部分W2を互いに仮止めするので、少ない箇所の仮止めで2か所の線状のシール部分Sにおける往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを抑止することが可能である。
【0075】
(4)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、仮止めは、熱融着(ヒートシール)によって行われるので、熱融着によって、第1部分W1および第2部分W2の仮止めを容易かつ迅速に行うことが可能である。
【0076】
(5)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、熱融着は、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cに沿って施される。この製法では、熱融着は、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cに沿って施されるので、熱融着の部分(
図7A(a)のヒートシール部分H)は、接合工程の後に隣り合う着用物品20の間を切断するときに分断されて目立たなくなる。
【0077】
(6)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、熱融着は、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cの両側の箇所に施されてもよい。この場合、
図7B(b)のヒートシール部分Hに示されるように、熱融着が連続体Wにおける着用物品20間の切断予定箇所Cの両側の箇所に施されるので、ヒートシール部分Hを多く配置することが可能になり、連続体Wにおける各着用物品20の両側に相当する部分において第1部分W1と第2部分W2との接合の際における往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを確実に抑止することが可能である。また、接合工程の後に隣り合う着用物品20の間を切断するときにカッターがヒートシール部分Hに当たらないので、切断時の抵抗にならない。また、切断後の着用物品20の端部にヒートシール部分Hが無いので、着用物品20の手触りの低下が生じない。
【0078】
(7)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、熱融着は、連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cを跨いで施されてもよい。この場合、
図7C(c)のヒートシール部分Hに示されるように、熱融着が連続体Wにおける隣り合う着用物品20の間の切断予定箇所Cを跨いで施されるので、熱融着の部分の両端部を接合予定箇所に近づけてシール部分のずれを抑止する効果を向上させることが可能である。それとともに、熱融着の部分は、接合工程の後に隣り合う着用物品20の間を切断するときに分断されて目立たなくなる。
【0079】
(第1実施形態の変形例)
【0080】
(A)
上記の第1実施形態では、ズレ抑止処理工程において、連続体Wの第1部分W1および第2部分W2を互いに仮止めする方法として、熱融着(ヒートシール)を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方法による仮止めであってもよい。例えば、クリップなどの治具を用いた仮止めやエンボス加工による仮止めなどであってもよい。
【0081】
(B)
第1実施形態の着用物品20の製造方法では、ズレ抑止処理工程において、ヒートシールなどの仮止めによって連続体Wの第1部分W1と第2部分W2を仮止めしているが、仮止め効果を補強するために、
図8に示されるように、回転ドラム5の外周面5bに設けられた凹部24に着用物品20の吸収性本体Aを挿入してもよい。
図8に示される吸収性本体Aは、重合工程(
図1のP4)において連続体Wの第1部分W1および第2部分W2が重ね合わされることに伴って、2つに折り返された状態(すなわち、第1部分A1および第2部分A2が重なった状態)になっている。
【0082】
すなわち、第1実施形態の変形例の着用物品20の製造方法では、
【0083】
(a)重合工程では、連続体Wの第1部分W1と第2部分W2との間に吸収性本体Aを介在した状態で、第1部分W1と第2部分W2とを重ね合わせ、
【0084】
(b)搬送工程では、
図8に示されるように、回転ドラム5の外周面5bに設けられた凹部24に吸収性本体Aの少なくとも一部(
図8では全部)が挿入された状態で、第1部分W1と第2部分W2とを重ね合わせた状態の連続体Wを、回転ドラム5の外周面5bに巻き掛けて当該回転ドラム5の回転により搬送し、
【0085】
(c)接合工程では、例えば、
図8の回転ドラム5が所定の角度範囲RS1を回転している間において、第1部分W1および第2部分W2がヒートシール部分Hなどによって互いに仮止めされるとともに吸収性本体Aの少なくとも一部が凹部24に挿入された状態で、第1部分W1と第2部分W2との接合を回転ドラム5の外周面5bに設けられた超音波ホーン6を含む超音波シールユニット7(
図2~3参照)によって行う。
【0086】
この
図8に示される変形例の製造方法では、接合工程では、第1部分W1と第2部分W2との接合を行う際に、連続体Wの第1部分W1および第2部分W2がヒートシール部分Hなどによって互いに仮止めされるだけでなく、さらに、吸収性本体Aの少なくとも一部が凹部24に挿入されることによって仮止め効果が補強される。その結果、連続体Wにおける各着用物品20において第1部分W1と第2部分W2との接合の際における往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを確実に抑止することが可能である。
【0087】
また、吸収性本体Aの少なくとも一部が凹部24に挿入されることによって、回転ドラム5の周面における連続体Wの第1部分W1および第2部分W2の経路長の差を小さくすることによっても、往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを抑止する効果を向上させる。
【0088】
<第2実施形態>
上記の第1実施形態の着用物品20の製造方法は、接合工程の前にヒートシールなどの仮止めによるズレ抑止処理工程を行っているが、ヒートシールなどの仮止めを行わないズレ抑止処理工程として、回転ドラム5の外周面5bに設けられた針状の部材を用いてズレ抑止処理工程を行ってもよい。
【0089】
すなわち、第2実施形態の着用物品20の製造方法では、ズレ抑止処理工程では、
図9~10に示されるように、連続体Wにおける第1部分W1と第2部分W2との接合を行う箇所(接合予定箇所S0)に隣接する部分において、回転ドラム5に設けられた針状の部材、すなわち多数の針22を、第1部分W1および第2部分W2に貫通させることによって、第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動を抑止する。なお、製造方法における重合工程、搬送工程、および接合工程については、上記の第1実施形態と共通するので、説明を省略する。
【0090】
図10A、
図10B、
図10Cに示される多数の針22は、プレート23に支持された状態で、回転ドラム5の外周面5bに設けられている。多数の針22は、接合予定箇所S0に対して切断予定箇所Cの反対側の位置において接合予定箇所S0に沿って配置されている。
【0091】
なお、第1部分W1および第2部分W2を貫通可能な針状の部材であれば、多数の針22以外のものでもよい。
【0092】
それぞれの針22の長さは、連続体Wの第1部分W1および第2部分W2を貫通可能な長さでかつ連続体Wが回転ドラム5から離脱するときに針22に引っかからない程度の長さであればよい。また、針22は、細くて短い方が連続体Wを貫通する際に連続体Wを損傷しない点で好ましい。
【0093】
図10A、
図10B、
図10C、
図11に示される第2実施形態の着用物品20の製造方法では、ズレ抑止処理工程において、回転ドラム5に設けられた針状の部材(
図10A、
図10B、
図10C、
図11では多数の針22)を、第1部分W1および第2部分W2に貫通させることによって、第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動を抑止するので、接合工程(例えば、
図9の回転ドラム5の所定の角度範囲RS1における超音波溶着)の前における第1部分W1と第2部分W2の接合予定箇所の相対的な移動を確実に抑止することが可能になる。その結果、第1部分W1と第2部分W2との接合の際における往路R1と復路R2のシール部分S1、S2のずれを確実に抑止することが可能である。しかも、熱融着しにくい材料の連続体Wを用いた場合においても、針状の部材を用いて第1部分W1と第2部分W2との相対的な移動を抑止することが可能になり、本製造方法の汎用性が拡大する。
【0094】
<その他の実施形態>
上記の第1および第2実施形態では、紙おむつなどのように前身頃および後身頃を有する着用物品の製造方法を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の製造方法は、連続体の第1部分と第2部分との間に吸収性本体を挟んだ状態でこれら第1部分と第2部分とを重ね合わせて接合して製造される生理用ナプキンなどの袋状の着用物品の製造にも適用することが可能である。
【0095】
<実施形態のまとめ>
前記実施形態をまとめると以下のとおりである。
【0096】
前記実施形態にかかる着用物品の製造方法は、連続体における着用物品を構成する第1部分と第2部分とを重ね合わせる重合工程と、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせた状態の前記連続体を、回転ドラムの外周面に巻き掛けて当該回転ドラムの回転により搬送する搬送工程と、前記連続体を前記回転ドラムの回転により搬送し、かつ、シールユニットが回転ドラムと同速で回転している状態で、シールユニットの可動部分を前記連続体の搬送方向に交差する交差方向に往復で移動して線状のシール部分を往路と復路でそれぞれ形成することにより、前記着用物品の両側に相当する部分においてそれぞれ前記第1部分と前記第2部分との接合を行う接合工程とを含み、さらに、前記重合工程の後でかつ前記接合工程の前において、第1部分と前記第2部分との前記接合を行う箇所における前記第1部分と前記第2部分との相対的な移動を抑止するズレ抑止処理工程を含み、前記接合工程では、前記連続体における隣接する2つの着用物品の間に当該2つの着用物品のそれぞれのために2か所の線状のシール部分を形成し、前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分の形成予定箇所の間において熱融着によって前記第1部分および前記第2部分を互いに仮止めする、ことを特徴とする。
【0097】
かかる製造方法では、連続体における着用物品の前身頃となる第1部分と後身頃となる第2部分とを往復で接合する接合工程の前に、ズレ抑止処理工程において、第1部分と前記第2部分との接合を行う箇所における前記第1部分と前記第2部分との相対的な移動を抑止する。そのため、第1部分と第2部分との接合の際における往路と復路のシール部分のずれを抑止することが可能となり、これにより、シールユニットと第1部分または第2部分との周速差を低減することが可能である。したがって、連続体の重合せ部分を往復で接合する際のシール部分のずれを抑止することが可能になる。
また、上記の製造方法では、ズレ抑止処理工程では、2か所の線状のシール部分の形成予定箇所の間において第1部分および前記第2部分を互いに仮止めするので、少ない箇所の仮止めで2か所の線状のシール部分における往路と復路のシール部分のずれを抑止することが可能である。
さらに上記の製造方法では、熱融着によって、第1部分および第2部分の仮止めを容易かつ迅速に行うことが可能である。
【0098】
上記の着用物品の製造方法において、前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分に隣接する部分において、前記第1部分および前記第2部分を互いに仮止めするのが好ましい。
【0099】
かかる製造方法では、ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分に隣接する部分において第1部分および前記第2部分を互いに仮止めするので、接合工程の前における第1部分と第2部分の接合予定箇所の相対的な移動を確実に抑止することが可能になる。その結果、第1部分と第2部分との接合の際における往路と復路のシール部分のずれを確実に抑止することが可能である。
また、前記ズレ抑止処理工程では、前記2か所の線状のシール部分の延びる方向において前記第1部分および前記第2部分の一方の端部、他方の端部、及び中間部を仮止めするのが好ましい。
【0104】
上記の着用物品の製造方法において、前記熱融着は、前記連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所に沿って施されるのが好ましい。
【0105】
かかる製造方法では、熱融着は、連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所に沿って施されるので、熱融着の部分は、接合工程の後に隣り合う着用物品の間を切断するときに分断されて目立たなくなる。
【0106】
上記の着用物品の製造方法において、前記熱融着は、前記連続体における隣り合う前記着用物品の間の切断予定箇所の両側の箇所に施されてもよい。
【0107】
かかる製造方法では、熱融着が連続体における着用物品間の切断予定箇所の両側の箇所に施されるので、熱融着の個所を多く配置することが可能になり、連続体における各着用物品の両側に相当する部分において第1部分と第2部分との接合の際における往路と復路のシール部分のずれを確実に抑止することが可能である。また、接合工程の後に隣り合う着用物品の間を切断するときにカッターが熱融着の部分に当たらないので、切断時の抵抗にならない。
【0108】
上記の着用物品の製造方法において、前記熱融着は、前記連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所を跨いで施されてもよい。
【0109】
かかる製造方法では、熱融着が連続体における隣り合う着用物品の間の切断予定箇所を跨いで施されるので、熱融着の部分の両端部を接合予定箇所に近づけてシール部分のずれを抑止する効果を向上させることが可能である。それとともに、熱融着の部分は、接合工程の後に隣り合う着用物品の間を切断するときに分断されて目立たなくなる。
【0110】
上記の着用物品の製造方法において、前記重合工程では、前記第1部分と前記第2部分との間に吸収性本体を介在した状態で、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせ、前記搬送工程では、前記回転ドラムの外周面に設けられた凹部に前記吸収性本体の少なくとも一部が挿入された状態で、前記第1部分と前記第2部分とを重ね合わせた状態の前記連続体を、前記回転ドラムの外周面に巻き掛けて当該回転ドラムの回転により搬送し、前記接合工程では、前記第1部分および前記第2部分が互いに仮止めされるととともに前記吸収性本体の少なくとも一部が前記凹部に挿入された状態で、前記第1部分と前記第2部分との接合を行うのが好ましい。
【0111】
かかる製造方法では、接合工程では、第1部分と第2部分との接合を行う際に、連続体の第1部分および第2部分が互いに仮止めされるだけでなく、さらに、吸収性本体の少なくとも一部が凹部に挿入されることによって仮止め効果が補強される。その結果、連続体における各着用物品において第1部分と第2部分との接合の際における往路と復路のシール部分のずれを確実に抑止することが可能である。
【0114】
以上の前記実施形態の着用物品の製造方法によれば、連続体の重合せ部分を往復で接合する際のシール部分のずれを抑止することができる。