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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-10
(45)【発行日】2023-08-21
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20230814BHJP
   B05B 7/22 20060101ALI20230814BHJP
   B05B 12/20 20180101ALN20230814BHJP
【FI】
C23C24/04
B05B7/22
B05B12/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023509783
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2022036150
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2021162947
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-007262(JP,U)
【文献】特開2006-068736(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/04
B05B 7/22
B05B 12/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶射法において用いる成膜装置であって、
ノズルと、
前記ノズルに成膜原料となる粉末を供給する粉末供給部と、
前記ノズルに動作ガスを供給するガス供給部とを備え、
前記ノズルは、ノズルパイプと、前記ノズルパイプの前記動作ガスが流れる上流側に接続されるセラミックパイプと、前記セラミックパイプが嵌挿されるノズルホルダーとを有し、
前記ノズルホルダーは、前記動作ガスが前記ノズルホルダー内を流れる第1方向に延びる第1部分を含み、
前記粉末供給部と前記第1部分とを結ぶ配管をさらに備え、
前記配管が前記第1部分に接続される前記配管の部分は、前記第1方向に交差する第2方向に延び、
前記ノズルパイプと前記セラミックパイプとの周囲を囲み前記ノズルパイプおよび前記セラミックパイプと接触するガイド部品をさらに備え、
前記ガイド部品は銅により形成される、成膜装置。
【請求項2】
前記セラミックパイプは、前記ノズルホルダー内における前記動作ガスの流路と前記粉末の流路との交差部に隣接する領域および前記隣接する領域の前記動作ガスが流れる下流側に配置される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記セラミックパイプの前記第1方向に沿う長さは10mm以上20mm以下である、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記セラミックパイプは、ジルコニア、窒化珪素およびアルミナからなる群から選択されるいずれかにより形成される、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
溶射法において用いる成膜装置であって、
ノズルと、
前記ノズルに成膜原料となる粉末を供給する粉末供給部と、
前記ノズルに動作ガスを供給するガス供給部とを備え、
前記ノズルは、ノズルパイプと、前記ノズルパイプの前記動作ガスが流れる上流側に接続されるセラミックパイプと、前記セラミックパイプが嵌挿されるノズルホルダーとを有し、
前記ノズルホルダーは、前記動作ガスが前記ノズルホルダー内を流れる第1方向に延びる第1部分を含み、
前記粉末供給部と前記第1部分とを結ぶ配管をさらに備え、
前記配管が前記第1部分に接続される前記配管の部分は、前記第1方向に交差する第2方向に延び、
前記ノズルホルダーの内部には空洞部の内径が最も小さいスロート部が形成され、
前記セラミックパイプは、前記スロート部よりも前記動作ガスが流れる下流側のみに配置される、成膜装置。
【請求項6】
前記セラミックパイプは、前記ノズルホルダー内における前記動作ガスの流路と前記粉末の流路との交差部に隣接する領域および前記隣接する領域の前記動作ガスが流れる下流側に配置される、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記セラミックパイプの前記第1方向に沿う長さは10mm以上20mm以下である、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記セラミックパイプは、ジルコニア、窒化珪素およびアルミナからなる群から選択されるいずれかにより形成される、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記ノズルパイプと前記セラミックパイプとの周囲を囲み前記ノズルパイプおよび前記セラミックパイプと接触するガイド部品をさらに備え、
前記ガイド部品は銅により形成される、請求項5に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶射法の1つであるコールドスプレー法が知られている。コールドスプレー法では、スプレーガンのノズル先端から、キャリアガスと共に成膜原料を基材に噴射することで、当該基材上に成膜する。コールドスプレー法を用いれば、大気中での成膜原料の酸化および熱変質を抑制でき、基材上に緻密で密着性の高い皮膜を形成できる。
【0003】
コールドスプレー法に用いられるノズルは、キャリアガスおよび成膜原料が流れる通路の内壁面の「閉塞」が生じることがある。閉塞は、成膜工程において、通路の内壁面に粉末が付着し通路が狭くなることにより生じる。
【0004】
通路の内壁面の閉塞が大きくなれば、通路を成膜原料および動作ガスが流れなくなり、基材への成膜ができなくなる。そこで、特許第6404532号(特許文献1)および特許5877590号(特許文献2)には、ノズルの内壁面への成膜原料の粉末の付着を防止可能なノズルを有するコールドスプレー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6404532号
【文献】特許第5877590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノズルの通路の内壁面は、閉塞の他に、「削れ」が生じることがある。削れは、成膜工程において、通路の内壁面に成膜原料の粉末が衝突することにより生じる。通路の内壁面の削れが大きくなれば、通路を通過する動作ガスの流れが通常の流れに対して変化する。これにより基材への成膜状態にも意図せぬ変化が生じる。しかし特許第6404532号および特許第5877590号のいずれも、削れを抑制する観点からの対策については何ら開示されていない。
【0007】
削れを抑制し、耐久性を改善する観点から、ノズルに硬度の高い材質を用いることが考えられる。しかし特許第6404532号において閉塞を抑制するために採用される金属材料は、ノズルの全体に用いられている。ノズルの全体を硬度の高いたとえばセラミック材料で形成した場合、ノズルの製造コストが高騰する。硬度の高い材料を用いる場合には高精度な加工および研磨が必要となるためである。
【0008】
本開示の目的は、安価に、通路の内壁面の削れを抑制可能で耐久性が改善されたノズルを含む成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る成膜装置は、溶射法において用いる成膜装置である。成膜装置は、ノズルと、上記ノズルに成膜原料となる粉末を供給する粉末供給部と、ノズルに動作ガスを供給するガス供給部とを備える。ノズルは、ノズルパイプと、ノズルパイプの動作ガスが流れる上流側に接続されるセラミックパイプと、セラミックパイプが嵌挿されるノズルホルダーとを有する。ノズルホルダーは、動作ガスがノズルホルダー内を流れる第1方向に延びる第1部分を含む。粉末供給部と第1部分とを結ぶ配管をさらに備える。当該配管が第1部分に接続される配管の部分は、第1方向に交差する第2方向に延びる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、安価に、通路の内壁面の削れを抑制可能で耐久性が改善されたノズルを含む成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
図2図1のノズルを構成する各部材が分解された状態を示す斜視図である。
図3図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第1例を示す概略図である。
図4図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第2例を示す概略図である。
図5図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第3例を示す概略図である。
図6】セラミックパイプおよびこれに隣接するステンレスパイプとの断面態様の第1例を示す概略図である。
図7】セラミックパイプおよびこれに隣接するステンレスパイプとの断面態様の第2例を示す概略図である。
図8】本実施の形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図9】成膜装置から動作ガスおよび成膜原料を噴射し続けた経過時間と、各経過時間後に当該成膜装置により形成された膜の厚みとの関係を示すグラフである。
図10図3のセラミックパイプにおける削れが起こりやすい箇所を示す概略図である。
図11】成膜装置から動作ガスおよび成膜原料を12時間噴射し続けた後の、ステンレスパイプの入口端面からステンレスパイプ内を観察した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
<成膜装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。図1に示す成膜装置100は、ノズル2bを含むスプレーガン2と、粉末供給部3と、ガス供給部4と、マスク治具1とを主に備える。
【0014】
スプレーガン2は、スプレーガン本体部2aと、ノズル2bと、ヒータ2cと、温度センサ9とを主に含む。スプレーガン本体部2aの先端側である第1端にはノズル2bが接続されている。スプレーガン本体部2aの後端側である第2端には配管6が接続されている。当該配管6はバルブ7を介してガス供給部4に接続されている。ガス供給部4は、配管6を介してスプレーガン2に動作ガスを供給する。バルブ7を開閉することで、ガス供給部4からスプレーガン2に対する動作ガスの供給状態を制御できる。配管6には圧力センサ8が設置されている。圧力センサ8はガス供給部4から配管6に供給される動作ガスの圧力を測定する。
【0015】
スプレーガン本体部2aの第2端からスプレーガン本体部2aの内部に供給される動作ガスは、ヒータ2cにより加熱される。ヒータ2cはスプレーガン本体部2aの第2端側に配置されている。スプレーガン本体部2aの内部を矢印31に沿って動作ガスが流れる。ノズル2bとスプレーガン本体部2aとの接続部に温度センサ9が接続されている。温度センサ9はスプレーガン本体部2aの内部を流れる動作ガスの温度を測定する。
【0016】
ノズル2bには配管5が接続されている。配管5は粉末供給部3に接続されている。粉末供給部3は、配管5を介してスプレーガン2のノズル2bに成膜原料となる粉末を供給する。
【0017】
マスク治具1は、基材20とスプレーガン2との間に配置される。マスク治具1には貫通穴13が形成されている。当該貫通穴13は基材20の表面における成膜領域を規定する。
【0018】
<成膜装置の動作>
図1に示した成膜装置100では、矢印30に示すようにガス供給部4から配管6を介して動作ガスがスプレーガン2に供給される。これにより動作ガスはノズル2bに供給される。動作ガスとしては、たとえば窒素、ヘリウム、ドライエアまたはそれらの混合物を用いることができる。動作ガスの圧力はたとえば1MPa程度である。動作ガスの流量はたとえば300L/分以上500L/分以下である。スプレーガン本体部2aの第2端に供給された動作ガスは、ヒータ2cによって加熱される。動作ガスの加熱温度は、成膜原料の組成に応じて適宜設定されるが、たとえば100℃以上500℃以下とすることができる。スプレーガン本体部2aからノズル2bに動作ガスは流れる。ノズル2bには、配管5を介して粉末供給部3から矢印32に示すように成膜原料となる粉末10が供給される。粉末10としては、たとえばニッケル粉末、錫粉末、または錫粉末と亜鉛粉末との混合材料を用いることができる。粉末10の粒径は、たとえば1μm以上50μm以下である。
【0019】
ノズル2bに供給された粉末10は、動作ガスとともにノズル2bの先端から基材20に向けて噴射される。基材20の表面にはマスク治具1が配置されている。噴射された粉末10はマスク治具1の貫通穴13を介して基材20の表面に到達する。基材20の表面では、噴射された粉末10を原料とする膜が形成される。
【0020】
<ノズル2bの構成>
図2は、図1のノズルを構成する各部材が分解された状態を示す斜視図である。図3は、図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第1例を示す概略図である。図4は、図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第2例を示す概略図である。なお図3および図4において、部材の内部に隠れて外側から見えない部分は点線で示される。図2図3および図4を参照して、ノズル2bは、ノズルホルダー21と、セラミックパイプ22と、ステンレスパイプ23とを有している。図3および図4のノズル2bの右側には、図1のスプレーガン本体部2aが繋がっている。ノズル2bには図3および図4の矢印31に示すように、右側から左側へ(図1と同様)動作ガスが流れる。
【0021】
ノズルホルダー21は、スプレーガン2内にて動作ガスが流れる左右方向に沿って延びる第1部分21Aと、第1部分21Aに交差(たとえば直交)する上下方向に延びる第2部分21Bとを有している。ここで第2部分21Bは第1部分21Aに垂直に延びる場合に限らず、垂直方向に対して多少の誤差を有する方向に延びる場合を含む。ノズルホルダー21は、第1部分21Aと第2部分21Bとが一体となっている。第1部分21Aは、スプレーガン本体部2aからの動作ガスが流入し、セラミックパイプ22側へ流れる領域である。第2部分21Bは、粉末供給部3および配管5からの粉末10が流入し、第1部分21A側へ流れる領域である。
【0022】
配管5はノズルホルダー21の第2部分21Bに接続され、さらに第2部分21B内を上下方向に延びている。配管5のうち第1部分21A内の空洞部(後述)との交差部21Cに隣接し、特に図3および図4ではノズルホルダー21内に存在する部分を以下では配管5Aと呼称する。配管5Aは、第2部分21B内を上下方向に沿って延びる空洞部である。配管5Aは、スプレーガン2内にて動作ガスが流れる左右方向(第1方向)に交差する上下方向に延びている。配管5Aは、第1部分21A内の後述の空洞部に繋がる。
【0023】
第1部分21Aの内部には、図3の左右方向に沿って延びる空洞部が延びている。空洞部は動作ガスおよび粉末10の通路として形成されている。空洞部は第1部分21Aの左右方向に延びる外縁に対して傾斜するように延びてもよい。つまり空洞部の内径は漸次増加および減少する態様であってもよい。具体的には、空洞部は、スロート部21Dと、拡張部21Eと、拡張部21Fとを有している。第1部分21A内の空洞部のうち最も内径が小さくなる部分をスロート部21Dと呼ぶ。スロート部21Dは、第1部分21Aのうち、特に次に述べる第2部分21Bとの交差部21Cよりも動作ガスの上流側(図3および図4での右側)に形成されている。またスロート部21D以外の部分すなわちスロート部21Dから離れるにつれて空洞部の内径が漸次大きくなるよう傾斜して延びる部分を拡張部と呼ぶ。スロート部21Dの下流側(図3および図4での左側)の通路が拡張部21Eであり、スロート部21Dの上流側の通路が拡張部21Fである。
【0024】
第1部分21A内の空洞部(スロート部21Dおよび拡張部21E,21F)と、第2部分21B内の空洞部(配管5A)とが、ノズルホルダー21内の交差部21Cで交差する。第1部分21Aの空洞部を流れる動作ガスと、第2部分21Bの空洞部を流れる粉末10とが、交差部21Cで合流する。第1部分21A内における交差部21Cの下流側では、成膜原料を含む動作ガスが流通する。
【0025】
ノズルホルダー21のうち、第1部分21A内における交差部21Cの下流側には、セラミックパイプ22が嵌挿される。またセラミックパイプ22の下流側には、ステンレスパイプ23が接続される。セラミックパイプ22とステンレスパイプ23とは、図示されないジョイントにより接続されてもよい。図3の第1例においては、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23との接続部23CTがノズルホルダー21内に収納されている。つまり図3においてはセラミックパイプ22の全体とステンレスパイプ23の一部とがノズルホルダー21内に収納されている。一方、図4の第2例においては、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23との接続部23CTがノズルホルダー21の外に設けられる。つまり図4においてはセラミックパイプ22の一部のみがノズルホルダー21内に収納されており、ステンレスパイプ23は全体がノズルホルダー21の外に設けられる。この点において図3図4とは構成上異なっている。本実施の形態においては図3および図4のいずれの態様が採用されてもよい。
【0026】
図5は、図1の成膜装置を構成するノズルの構成の第3例を示す概略図である。図5を参照して、第3例においては、ノズルホルダー21が第2部分21Bを有さず、左右方向に延びる第1部分21Aのみからなっている。このため図5の配管5Aは交差部21Cに隣接するが、ノズルホルダー21の外側に配置される。図5の配管5Aは図3および図4と同様に、スプレーガン2内にて動作ガスが流れる左右方向(第1方向)に交差する上下方向に延びている。配管5Aは第1部分21A内の後述の空洞部に繋がる。
【0027】
セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23の径方向の外側には、ガイド部品24が設けられてもよい。ガイド部品24は、筒形状を有しており、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23との接続部23CTを径方向の外側から囲むように配置される。ガイド部品24は、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23とを跨ぐように配置される。ガイド部品24は、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23との外縁を延在する曲面(側面)の周囲を径方向外側から囲み、セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23の双方と接触する。ガイド部品24は、特にセラミックパイプ22とステンレスパイプ23との接続部23CT、および延在方向について接続部23CTに隣接するセラミックパイプ22の領域、ステンレスパイプ23の領域のすべてに接触する。ガイド部品24は、セラミックパイプ22の中心軸とステンレスパイプ23の中心軸との位置が一致し、それら2つの中心軸が一直線上に延びるように調整可能である。
【0028】
交差部21Cにて合流した動作ガスおよび成膜原料は、その後、セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23内を図3および図4の右側から左側へ流通する。
【0029】
ガイド部品24は、セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23に固定可能である。この状態で、たとえばガイド部品24の径方向の外側にネジ部25が配置されることが好ましい。ネジ部25は、雄ネジと雌ネジとを有し、これらが締結可能となっている。ネジ部25の雄ネジは、たとえばガイド部品24の外縁を延在する曲面上に円環状の部材として固定されてもよいし、ガイド部品24の外縁に直接形成されてもよい。あるいはガイド部品24が配置されない場合には、セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23の外縁の曲面上に雄ネジが固定されてもよいし、曲面上に雄ネジが直接形成されてもよい。また雌ネジは、ノズルホルダー21の第1部分21Aの、セラミックパイプ22が嵌挿される孔部の内壁に形成されてもよいし、ノズルホルダー21に固定されるナットであってもよい。ネジ部25により、セラミックパイプ22およびステンレスパイプ23は、ノズル2b(ノズルホルダー21)に固定される。
【0030】
拡張部21Eはセラミックパイプ22に繋がっており、図3図5では拡張部21Eの下流側端部の内径(内壁面の直径)がセラミックパイプ22の外径(外壁面の直径)より小さくなっている。より具体的には、拡張部21Eの下流側端部の内径がセラミックパイプ22の上流側の端部である入口端面22EGの内径とほぼ等しくなっている。図6は、セラミックパイプおよびこれに隣接するステンレスパイプとの断面態様の第1例を示す概略図である。図6を参照して、セラミックパイプ22は、その延びる方向(図6の左右方向)にほぼ平行となるように内壁面が延びた円筒形であってもよい。セラミックパイプ22は、その延びる方向についての長さがL1である。セラミックパイプ22の延びる方向に交差する断面は、外壁面が直径φAの円形であり、内壁面が直径φBの円形である。一例として、L1は15mm、φAは6mm、φBは4mmである。ただし各部の寸法は上記に限られない。
【0031】
これに対し、セラミックパイプ22に隣接するステンレスパイプ23は、その延びる方向(図6の左右方向)に対してやや傾斜するように内壁面が延びていてもよい。具体的には、ステンレスパイプ23は、その延びる方向についての長さがL2である。ステンレスパイプ23の延びる方向に交差する断面は、外壁面がセラミックパイプ22と同じく直径φAの円形であり、内壁面がセラミックパイプ22と同じ直径φBからφCまで漸次変化する円形である。ステンレスパイプ23の上流側の端面である入口端面23Eは内壁面の直径がφBである。一例として、L2は120mm、φCは5mmである。
【0032】
図7は、セラミックパイプおよびこれに隣接するステンレスパイプとの断面態様の第2例を示す概略図である。図7を参照して、セラミックパイプ22は、その延びる方向(図6の左右方向)に対してやや傾斜するように内壁面が延びていてもよい。具体的には、セラミックパイプ22の延びる方向に交差する断面は、内壁面が直径φDからφEまで漸次変化する円形である。一例として、φDは3mm、φEは3.5mmであるがこれに限られない。セラミックパイプ22の内壁面が外縁の側面に対して傾斜する角度は、たとえば5°以下であり、3°以下であることがより好ましい。ステンレスパイプ23は、外壁面が図1と同じく直径φAの円形であり、内壁面が直径φEからφCまで漸次変化する円形である。図7に示すように、セラミックパイプ22の下流側端部と、ステンレスパイプ23の上流側端部(入口端面23E)との内壁面は直径がφEで等しく、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23との内壁面の傾斜角度は等しくてもよい。この場合、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23とが繋がることにより、内壁面は、セラミックパイプ22の上流側の入口端面22EGからステンレスパイプ23の下流側の出口端面23EGまで、同一の傾斜角度で延在してもよい。
【0033】
なお図6および図7のセラミックパイプ22の外壁面および/または内壁面の断面形状は、上記のように円形であってもよいが、楕円形であってもよい。
【0034】
<ノズル2bの各部材の材質>
ノズルホルダー21は、真鍮により形成される。ノズルホルダー21は、成膜原料となる粉末10が粉末供給部3および配管5より供給される部材である。ただし上記(図3および図4)のように、ノズルホルダー21内の交差部21Cの下流側にはセラミックパイプ22が嵌挿されている。動作ガスおよび粉末10は、交差部21Cにて流通方向が上下方向から左右方向に変更する。粉末10の流通方向の変更部に隣接する領域においては、粉末10はノズルホルダー21の空洞部の内壁面よりもむしろ、セラミックパイプ22の内壁面に衝突する。ノズルホルダー21の空洞部の内壁面にダメージが生じることは少ないため、ノズルホルダー21の材質は硬度を特に高くする必要はない。また交差部21Cよりも粉末10および動作ガスの上流側においては、そもそも粉末10の衝突の可能性が少なく、ノズルホルダー21の硬度を特に高くする必要はない。この観点から、ノズルホルダー21には真鍮が用いられる。
【0035】
セラミックパイプ22は、セラミックス材料により形成される。セラミックパイプ22は特に、ジルコニア、窒化珪素およびアルミナからなる群から選択されるいずれかを主成分とする材料により形成される。セラミックパイプ22の硬度は、たとえば成形前のセラミック粉体よりも高いことが好ましい。具体的には、セラミックパイプ22の硬度は1000HV以上であり、より好ましくは1200HV以上である。ステンレスパイプ23は、SUS304、SUS410、SUS430などのステンレス材料により形成される。ガイド部品24は銅により形成される。
【0036】
<作用効果>
本開示に係る成膜装置100は、溶射法において用いられる。成膜装置100は、ノズル2bと、ノズル2bに成膜原料となる粉末10を供給する粉末供給部3と、ノズル2bに動作ガスを供給するガス供給部4とを備える。ノズル2bは、ノズルパイプとしてのステンレスパイプ23と、ステンレスパイプ23の上記動作ガスが流れる上流側に接続されるセラミックパイプ22と、セラミックパイプ22が嵌挿されるノズルホルダー21とを有する。ノズルホルダー21は、動作ガスがノズルホルダー21内を流れる第1方向に延びる第1部分21Aを含む。粉末供給部3と第1部分21Aとを結ぶ配管5をさらに備える。配管5が第1部分21Aに接続される配管5の部分である配管5Aは、第1方向に交差する第2方向に延びる。
【0037】
上記の成膜装置100は、粉末10の供給される配管5がノズル2b(空洞部である拡張部21E)と接続される部分である配管5Aが、動作ガスの流れる第1方向に交差する第2方向に延びる。このため当該装置は、低圧用(動作ガスの圧力が1MPa以下)のいわゆるラジアルインジェクション用の成膜装置100である。つまり本件の成膜装置100は、動作ガスと粉末とが同一方向から供給される、高圧用(動作ガスの圧力が1MPaを超える)のいわゆるアキシャルインジェクション用の成膜装置とは異なる。
【0038】
上記の成膜装置100は、ノズル2bの通路の内壁面のうち「削れ」が最も起こりやすい領域に限定して、ステンレスパイプ23よりも硬度の高いセラミックパイプ22が設けられる。これにより、たとえばノズル2bの全体がセラミックパイプにより形成される場合に比べて安価に、硬い材料を用いて、ノズル2bの通路の内壁面の削れを抑制できる。硬度の高い材料は、硬度の低い材料よりも削れが起こりにくいためである。また上記構成によれば、基材20上に形成される膜の厚みのばらつき(偏差)を小さくできるため、耐久性を改善できる。言い換えれば、膜厚の偏差が許容範囲内となるように成膜することが可能な時間を延長できる。
【0039】
セラミック材料はステンレスに比べて硬度が高いが、高価でかつ放熱性が低い。このため上記構成では、ノズル2bにおいてセラミック材料の使用範囲が最小限に留められ、セラミックパイプ22以外の部分はステンレスパイプ23が用いられる。これにより、ステンレスパイプ23が配置されている領域にセラミックパイプ22が配置される場合よりも、製造コストを低減できるとともに、パイプでの蓄熱の影響を小さくできる。ここで削れの影響が大きい場所は、配管5がノズル2bに接続される部分のすぐ動作ガスの下流側の領域である。このため当該領域すなわちステンレスパイプ23よりも動作ガスの上流側にセラミックパイプ22が設けられることにより、当該領域での削れを抑制する効果が得られる。
【0040】
仮にノズル2bのパイプが蓄熱すれば、熱により成膜原料である粉末10が反応し、粉末10同士が密着し肥大化しやすくなる。このような状況になれば肥大化した粉末10が通路を閉塞するため、基材20へ安定に成膜することが困難となる。このためセラミックパイプ22の配置領域を狭くすることにより、ステンレスパイプ23によるセラミックパイプ22よりも高い放熱性を利用して、蓄熱を抑制し、粉末10の肥大化を抑制できる。これにより通路の閉塞を抑制できる。
【0041】
上記セラミックパイプ22は、ノズルホルダー21内における動作ガスの流路と粉末10の流路との交差部21Cに隣接する領域および上記隣接する領域の動作ガスが流れる下流側に配置されることが好ましい。上記領域がノズル2bの通路の内壁面のうち特に「削れ」の影響が大きい領域である。このため上記領域にセラミックパイプ22を設けることにより、削れの抑制効果が高められる。
【0042】
上記成膜装置100において、セラミックパイプ22の第1方向に沿う長さL1は10mm以上20mm以下であってもよい。なお長さL1は10mm以上18mm以下であってもよく、10mm以上15mm以下であることがより好ましい。セラミックパイプ22の長さL1が上記より短ければ、削れの影響が大きい領域を全てカバーできなくなり、セラミックパイプ22が削れを抑制する効果が小さくなる。セラミックパイプ22の長さL1が上記より長ければ熱および動作ガスの流れがセラミックパイプ22の部分にて低下し、パイプに蓄熱が起こる可能性がある。セラミックはステンレスよりも放熱性が低く、パイプでの十分な放熱ができないためである。その結果、粉末10が熱の影響を受けて肥大化する(パイプの通路が閉塞する)可能性がある。セラミックパイプ22の長さL1を上記範囲とすれば、削れを抑制する効果と放熱効果との双方を高められる。
【0043】
上記成膜装置100において、セラミックパイプ22は、ジルコニア、窒化珪素およびアルミナからなる群から選択されるいずれかにより形成されてもよい。このようにすれば、セラミックパイプ22の高い硬度によりセラミックパイプ22の削れを抑制できる。
【0044】
上記成膜装置100において、ステンレスパイプ23とセラミックパイプ22との(径方向の)周囲を囲みステンレスパイプ23およびセラミックパイプ22と接触するガイド部品24をさらに備える。ガイド部品24は銅により形成される。ガイド部品24が熱伝導性の高い銅で形成され、パイプと接触されることにより、パイプの蓄熱を抑制できる。このためパイプの通路の閉塞を抑制できる。
【0045】
<成膜方法>
図8は、本実施の形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。図8を参照して、ここに示す成膜方法は、図1図7に示した成膜装置100を用いて実施される成膜方法であって、準備工程(S10)と、成膜工程(S20)と、後処理工程(S30)とを主に備える。
【0046】
準備工程(S10)では、図1に示すように基材20の表面に対向するように、上記マスク治具1を配置する工程を含む。当該配置する工程では、マスク治具1の第1面が基材20の表面に対向するように、マスク治具1が配置される。
【0047】
成膜工程(S20)では、マスク治具1の貫通穴13を介して、成膜装置100を用いてコールドスプレー法により成膜原料となる粉末を基材20の表面に吹き付ける。この結果、基材20の表面に成膜原料からなる膜が形成される。
【0048】
後処理工程(S30)では、基材20の表面上からマスク治具1が除去される。その後、基材20に対する加工など必要な処理を実施する。このようにして、基材20の表面に膜を形成することができる。
【実施例
【0049】
以下、本開示に係る成膜装置100のノズル2bの効果を確認するための実施例を説明する。具体的には、本開示に係るノズル2bを有する成膜装置100の成膜時間と成膜厚みとの関係を調査した。
【0050】
<試料>
図3に示す本実施の形態の構成の、ジルコニア製のセラミックパイプ22およびステンレスパイプ23を有するノズル2bを準備した。以下ではこれを「改良品」と呼称する。また図3に示す本実施の形態とは異なる構成の、ステンレスパイプ23のみを有しセラミックパイプを有さないノズル2bを準備した。以下ではこれを「従来品」と呼称する。改良品および従来品のそれぞれを用いて、図1と同様にマスク治具1の後方に設置された基材20の表面に成膜された。マスク治具1は、平面形状が四角形状であり、材質がステンレス鋼SUS304であった。そのサイズは、横42mm×縦30mm×厚さ3mmとした。貫通穴13の直径は3mmとした。
【0051】
<成膜プロセス>
上述したノズル2bの改良品および従来品を用いて、コールドスプレー法により基材表面に膜を形成した。成膜原料としては添加物を含むアルミニウムからなる粉末を用いた。当該アルミニウム粉末の形状は球状であり、直径は10μmとした。基材の材料はアルミナ(Al)とした。基材の形状は平面形状が四角形状の板状とした。基材のサイズは、横42mm×縦30mm×厚さ1mmとした。
【0052】
成膜条件としては、動作ガスとして乾燥空気を用い、動作ガスの温度を270℃、動作ガスの流量を400リットル/分、動作ガスの圧力を約0.8MPaとした。成膜装置からマスク治具の表面に対して成膜原料が噴射される領域の幅は5mmとした。また、マスク治具の表面において、貫通穴が形成された領域を含むように成膜原料が噴射される領域を移動させる速度(掃引速度)を10mm/秒とした。マスク治具の表面における成膜範囲(成膜原料が噴射される領域)のサイズは幅5mm×長さ30mmとした。
【0053】
上述の条件により、成膜装置100はノズル2bから動作ガスおよび成膜原料を12時間に亘り噴射させ続けた。そのうち噴射の始まる時間(経過時間=0min)から、1時間ごとに、12時間後(経過時間=720min)まで、合計13回、設置された基材20の表面上に成膜され、その膜厚が測定された。
【0054】
1時間ごとに成膜された合計13枚の基材20のそれぞれについて、3D形状測定機を用い、形成された膜上の1000か所が抽出され、その膜厚が測定された。それら1000か所の膜厚の最大値、最小値および平均値が求められ、それらから基材20での膜厚の偏差が求められた。その結果を図9のグラフに示す。
【0055】
図9は、成膜装置から動作ガスおよび成膜原料を噴射し続けた経過時間と、各経過時間後に当該成膜装置により形成された膜の厚みとの関係を示すグラフである。図9を参照して、グラフの横軸は成膜装置100から動作ガスおよび成膜原料を噴射し続けた経過時間を示し、縦軸は各経過時間後に形成された膜の厚みを示している。各経過時間におけるプロットは、当該時間噴射後に成膜された基材20における上記1000か所にて測定された膜厚の平均値を示している。各経過時間におけるバーは1000か所で測定された厚みのうちの最大値および最小値を示している。
【0056】
図9により、従来品を用いた場合には、噴射の経過時間が8時間(480min)以内において、そこまでの各時間に測定された1000か所ずつの膜厚の偏差が10%以下であった。しかし噴射の経過時間が8時間を超えると、そこまでの各時間に測定された1000か所ずつの膜厚の偏差が10%を超えた。そして12時間(720min)経過時にそれまでの各経過時間(0minから720minまで60分毎)に1000か所ずつ測定された膜厚の平均値が116.4μm、膜厚の偏差が13.5%となった。ここでの116.4μmは、図9での従来品の各経過時間におけるプロットされた値の平均値である。一方、改良品を用いた場合には、12時間(720min)を経過しても、それまでの各時間に1000か所ずつ測定された膜厚の平均値が92.7μm、膜厚の偏差が7.4%となった。ここでの92.7μmは、図9での改良品の各経過時間におけるプロットされた値の平均値である。膜厚の偏差の目標値すなわち許容範囲は10%以下である。このため従来品での耐久時間は8時間、改良品での耐久時間は12時間となり、改良品を用いたほうが耐久性を改善できることが確認できた。
【0057】
図10は、図3のセラミックパイプにおける削れが起こりやすい箇所を示す概略図である。図10を参照して、ここに示すのは改良品の構成である。図10の改良品において、セラミックパイプ22は、ノズルの削れが最も起こりやすい削れ部26を含む位置に配置されていることが本実施の形態の特徴である。削れ部26は、交差部21Cまたはこれに隣接する領域にて矢印33のように第2方向から第1方向へ転換した粉末の流れと、矢印34で示す動作ガスの流れとが衝突する、セラミックパイプ22の内壁面上の部分である。
【0058】
図10では、セラミックパイプ22とステンレスパイプ23とは、接続部23CTにて接続される。接続部23CTにおけるステンレスパイプ23の端面は、ステンレスパイプ23の上流側の端面としての入口端面23Eに相当する。
【0059】
図11は、成膜装置から動作ガスおよび成膜原料を12時間噴射し続けた後の、ステンレスパイプの入口端面からステンレスパイプ内を観察した結果を示す写真である。図11を参照して、従来品は上記のようにセラミックパイプを有さずステンレスパイプ23のみを有する。このため従来品は、図10における入口端面22EGが配置される位置にステンレスパイプ23の入口端面23Eが配置される。
【0060】
従来品におけるステンレスパイプ23の入口端面23Eは、図10の削れ部26に近い領域である。より具体的には、入口端面23Eは図6に示すステンレスパイプ23の直径φBで示す右側の端面であり、φBは4mmである。改良品における入口端面22EGは、図10の削れ部26に近く、図6に示すセラミックパイプ22の直径φBで示す右側の端面であり、φBは4mmである。なお従来品、改良品ともに、ステンレスパイプ23の外径φAは6mm、長さL2は120mm(図6参照)である。これらのステンレスパイプ23の入口端面23Eからその内部が、X線CTにより観察された。
【0061】
図11の写真は、従来品、改良品ともに、ステンレスパイプ23の内部を入口端面23Eから出口端面23EGまで観察したものである。なお改良品の入口端面23Eは接続部23CTに等しい。図11に示すように、従来品においてはステンレスパイプ23の内壁面に削れが発生している。この削れは深さが0.5mmであった。一方、改良品においてはステンレスパイプ23の内壁面に削れが発生しなかった。従来品においては図10の削れ部26の位置に削れが生じ易いステンレスパイプ23が配置されるのに対し、改良品では図10の削れ部26の位置にステンレスよりも削れが生じにくいセラミックパイプ22が配置されるためである。
【0062】
なお写真が掲載されないが、改良品におけるセラミックパイプ22の削れは発生しなかった。このことは、成膜原料の噴射工程の前後においてセラミックパイプ22の重量が変化しなかったことにより確認できた。
【0063】
このことから、本開示に従ったセラミックパイプ22を有するノズル2bを用いることにより、動作ガスの流れを不安定にし、削れを発生させ成膜を不安定にさせる不具合が抑制されることがわかった。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 マスク治具、2 スプレーガン、2a スプレーガン本体部、2b ノズル、2c ヒータ、 3 粉末供給部、4 ガス供給部、5,5A,6 配管、7 バルブ、8 圧力センサ、9 温度センサ、10 粉末、13 貫通穴、20 基材、21 ノズルホルダー、21A 第1部分、21B 第2部分、21C 交差部、21D スロート部、21E,21F 拡張部、22 セラミックパイプ、22EG,23E 入口端面、23 ステンレスパイプ、23CT 接続部、23EG 出口端面、24 ガイド部品、25 ネジ部、26 削れ部、30,31,32,33,34 矢印。
【要約】
溶射法において用いる成膜装置は、ノズル(2b)を含むスプレーガンと、上記スプレーガンに成膜原料となる粉末を供給する粉末供給部と、スプレーガンに動作ガスを供給するガス供給部とを備える。ノズル(2b)は、ノズルパイプとしてのステンレスパイプ(23)と、ステンレスパイプ(23)の動作ガスが流れる上流側に接続されるセラミックパイプ(22)と、セラミックパイプ(22)が嵌挿されるノズルホルダー(21)とを有する。ノズルホルダー(21)は、動作ガスがノズルホルダー(21)内を流れる第1方向に延びる第1部分(21A)を含む。粉末供給部と第1部分(21A)とを結ぶ配管(5)をさらに備える。配管(5)が第1部分(21A)に接続される配管(5)の部分である配管(5A)は、第1方向に交差する第2方向に延びる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11