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特許7330428廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20230101AFI20230815BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20230815BHJP
   B01F 25/20 20220101ALI20230815BHJP
【FI】
C02F1/56 C
B01F23/40
B01F25/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019206758
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021079312
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519408696
【氏名又は名称】有限会社バイオ
(73)【特許権者】
【識別番号】519408711
【氏名又は名称】近藤 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健一
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192383(JP,A)
【文献】米国特許第03933642(US,A)
【文献】特開平07-265871(JP,A)
【文献】特開昭60-145053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
B01F 21/00-25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水と反応液を、原乳送液装置からの配管と反応液送液装置からの配管が相互に30°~60°の角度をもって接続する扁平な矩形箱体による三方ジョイントにより混合合流させ、流速調整を行う複数ピッチ毎に曲成(R)の角度および直線の長さを変えた楕円部分を有する反応ユニットに注入し、反応ユニットの流速調整により小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長する凝固反応を起させ、その凝集物を簡易濾過器にて回収することを特徴とした廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法。
【請求項2】
廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の送液装置からの配管と反応液送液装置からの配管が相互に30°~60°の角度をもって接続する扁平な矩形箱体による三方ジョイントである合流部を介して曲成管からなる反応ユニットに接続し、該反応ユニットをメッシュ構造の濾過器接続したことを特徴とする廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置。
【請求項3】
曲成管は、下降する楕円螺旋である請求項2記載の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置。
【請求項4】
楕円は長円である請求項2または請求項3に記載の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置。
【請求項5】
楕円螺旋は旋回の複数ピッチ毎に曲成(R)の角度および直線の長さを変えた楕円部分を設けた請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置。
【請求項6】
下降する楕円螺旋の最下端から垂直上昇管で引上げて送り出し口とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄乳や牛乳・豆乳・アイスクリームなど乳製品の製造の際の洗浄水の処理方法および処置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成30年7月に農水相が公表した統計によると、全国の酪農家数は、15,700戸(前年比4.3%減)と前年に比べ700戸減少、乳用牛の飼養頭数については、132.8万頭(前年比0.4%増)で0.5万頭の微増。生乳の生産量は730万t/年で、この数年間は横ばいで推移している。戸数の減少は高齢化や後継者不足に伴う廃業、頭数微増は酪農家の規模拡大が進んだことによるものである。
【0003】
しかし、酪農家の飼養規模の拡大や地域における混住化の進行、環境問題への関心の高まり等を背景として、家畜排せつ物による悪臭や廃棄乳混入による(白濁排水=視覚公害)水質汚染といった畜産環境問題の発生がみられる。
【0004】
特に廃棄乳は環境負荷(高濃度)が高く未だに対策する処理方法も確立されていない。
【0005】
牧場で、搾っている牛乳には出荷できる牛乳と出荷できない牛乳があり、出荷できない牛乳とは、初乳(分娩直後から5日以内の牛乳)や、乳房炎、血乳、診療などで抗生物質を使用し、治療薬の残留のおそれがある牛などの牛乳が廃棄乳となる。
【0006】
また、前絞りは搾乳時に際し清潔な牛乳を搾乳するために不可欠な作業である。搾乳時の残乳は乳頭槽内に貯留すると、次回の搾乳までの間に細菌が増殖しており、この牛乳を乳房内に拡散させないためにも、前搾りを行い搾り捨てる必要がある。
【0007】
廃棄乳の発生量については酪農家の飼育環境により違いがあるが、搾乳量(搾乳量1頭約35L/日)の6%程度で、飼養頭数が100頭規模の酪農家であれば、廃棄乳の発生量は日量約210L程度と推測される。前搾で搾り捨てられる牛乳は、1頭/回に付き0.3L程で100頭を1日に2回搾乳した場合、搾り捨てられる牛乳は60L程度となる。
【0008】
そのため、酪農家から排出される洗浄排水のみではなく、廃棄乳処理は必要不可欠な必須処理項目となっている。
【0009】
従来の廃棄乳処分方法は、(1)浄化槽への投入(過剰な水質負荷)、(2)田畑への散布(悪臭・土壌酸素不足)、(3)酸凝固処理(管理が煩雑)、(4)産業廃棄物処理(コストが高い)、(5)オゾン処理(少量に限る)等であるが、何も廃棄乳を処理する施設ではなく、間接的に処理されている施設ため、確実に廃棄乳処理が行われているとは言えない状況である。
【0010】
下記特許文献1は、廃棄乳処理装置及び方法として提案されたものであり、図9に示すように、沈殿分離槽第一槽100、沈殿分離槽第二槽110、汚泥濃縮貯留槽第一槽120を経て、上向流嫌気汚泥ろ床法を用いる経て、接触ばっ気槽の接触材としてカキ殻を使用したカキ殻接触ばっ気槽220による処理をする、そして、ひも状接触材を使用し曝気する揺動床ばっ気槽第一槽230による処理をする、さらに、炭素繊維を用いた接触ばっ気方式の炭素繊維ばっ気槽300による処理をする。その後、搾乳施設における他の排水とともに、ばっ気型スクリーン、流量調整槽、汚泥濃縮貯留槽第三槽、カキ殻接触槽、揺動床ばっ気槽第二槽、沈殿槽、消毒槽、放流槽を経て放流する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-120959号公報
【0012】
図9中130は向流嫌気汚泥ろ床法・UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)を用いるものであり、その反応槽には生物学的に形成された汚泥床が形成されているUASB槽、200は嫌気ろ床槽、210は汚泥濃縮貯留槽第二槽、310は移流・沈殿槽である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記廃棄乳の処理方法において、メタン発酵層への投入は有効である。しかしこれは多額の投資資金が必要となる。
【0014】
また、前記特許文献1は活性汚泥処理の一つであり、処理槽を必要とするなど設備に多大な費用と処理に時間がかかる。
【0015】
なお、廃棄乳ではないが牛乳・豆乳・アイスクリームなど乳製品の製造の際の製造機械等の洗浄水についても同様な処理の問題がある。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、省エネ・省スペース・低コストの装置により、確実に個液分離の廃棄乳や乳製品の製造の際の洗浄水の処理ができる廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法および処置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため本発明は、廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法としては、廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水と反応液を混合合流させ、流速調整を行う反応ユニットに注入し、反応ユニットの流速調整により小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長する凝固反応を起させ、その凝集物を簡易濾過器にて回収することを要旨とするものである。
【0018】
廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置としては、第1に、廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の送液装置と反応液送液装置からの配管を相互に30°~60°の角度をもって接続する扁平な矩形箱体による三方ジョイントにより混合合流させる合流部を介して曲成管からなる反応ユニットに接続し、該反応ユニットをメッシュ構造の濾過器接続したこと、第2に、合流部は扁平な三方ジョイントとしたこと、第3に、曲成管は、下降する楕円螺旋であること、第4に、楕円は長円であること、第5に、楕円螺旋は旋回の複数ピッチ毎に曲成(R)の角度および直線の長さを変えた楕円部分を設けたこと、第6に、下降する楕円螺旋の最下端から垂直上昇管で引上げて送り出し口とすることを要旨とするものである。
【0019】
請求項1および請求項2記載の本発明によれば、廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水は送液装置を介して、また、反応液は反応液送液装置を介して合流部で合流して反応ユニットに送られる。
【0020】
複数ピッチ毎に曲成(R)の角度および直線の長さを変えた楕円部分を有する反応ユニットは、曲成管からなり、流速調整を行うことができるので、小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長する凝固反応を起させる。
【0021】
その凝集物を簡易濾過器であるメッシュ構造の濾過器に導き、固液分離を行って、凝集物の塊を回収することができる。
【0022】
廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の送液装置からの配管と反応液送液装置からの配管が相互に30°~60°の角度をもって接続する合流部は扁平な三方ジョイントで、単なる管結合の合流とは異なり、廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水と反応液が確実かつ十分に合流され、均一に混合された状態で曲成管からなる反応ユニットに送ることができる。
【0023】
請求項記載の本発明によれば、曲成管は下降する楕円螺旋とすることで、上から下へと流れをスムーズにし、かつ、凝集物同士の衝突を円滑に行うことができる。
【0024】
請求項記載の本発明によれば、楕円は長円であることで、直線部分と円弧部分の組合せとなり、より、凝集物同士の衝突を惹起することができる。
【0025】
請求項記載の本発明によれば、楕円螺旋は旋回の複数ピッチ毎に楕円部分を設けたことで、曲成(R)の角度および直線の長さを変えることにより、管内抵抗の増加と大小の凝集物を衝突させることが可能となる。
【0026】
請求項6記載の本発明によれば、旋回は下降させていて、最下端では上方に垂直に引き上げていることで、凝集の最終段階になると凝集物の大小がかなり分れてくるため、上昇時に大きい凝集物に小さな凝集物を衝突させることができる。また、最終的に凝集物の回収物と処理水を受けるボックスを据え付けることが容易となる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法および処置装置は、省エネ・省スペース・低コストの装置により、確実に個液分離の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理ができるものである。
【0028】
本発明は、確実に廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理を行うことにより環境負荷低減となる。また、既設の排水処理設備への負荷を低減させることにより施設等の延命が期待できる。さらに、労働力(田畑への散布)の省力化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法の概要を示す説明図である。
図2】本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置の反応ユニットの1実施形態と示す斜視図である。
図3】本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置の反応ユニットの1実施形態と示す側面図である。
図4】本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置の反応ユニットの1実施形態と示す平面図である。
図5方ジョイントの平面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】処理後の凝固物を示す写真である。
図8】処理後の排水の状態を示す写真である。
図9】従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理方法の概要を示す説明図で、図中1は混合流速機である反応ユニットを示す。
【0031】
さきに、本発明の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置について説明すると、反応ユニット(混合流速機)1は、流速が遅くなり、小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長するものとして曲成管7によるものとした。
【0032】
反応ユニット(混合流速機)1は、図示は省略するがポンプ装置である原乳送液装置2とポンプ装置である反応液送液装置3からの配管4、配管5を合流させる合流部6を流入口とし、その延長として反応ユニット(混合流速機)1を構成する曲成管7からなり、曲成管7の先は後述の垂直上昇管11を介して配送管8として引き出した。
【0033】
さらに配送管8はその先金属メッシュ構造の簡易濾過器9に導く。簡易濾過器9の図示は省略するが、メッシュ径は凝集物を回収することができる目の大きさのものでよい。
【0034】
前記反応ユニット(混合流速機)1はカバーとなるドーム状の筒状ハウジング10内に原乳送液装置2と反応液送液装置3からの配管4、配管5の合流部6をそれに続く曲成管7、および曲成管7の下端から立ち上がる垂直上昇管11を設けなる。筒状ハウジング10や曲成管7は透明なものでもよい。
【0035】
合流部6は原乳送液装置2と反応液送液装置3からの配管4、配管5が相互に約30°~60°程度の角度をもって接続する扁平な矩形箱体による三方ジョイントであり、配管4、配管5による原乳と反応液を例えば「設定(1)1:4」、「設定(2)1:2」、「設定(3)1:1」の割合で混合合流できる径のものである。
【0036】
曲成管7はスパイラル管、蛇行管などであり、その曲成形状も円形、楕円形の何れも問わないし、また、2重、3重の螺旋とすることも可能であるが、本実施形態では、曲成管7は直線部と円弧部の組合せからなる長円による楕円螺旋とし、かつ下降するように連続させて旋回させた。
【0037】
また、曲成管7の楕円螺旋は旋回の複数ピッチ(図示では2ピッチ)毎に大きく張り出して旋回する楕円部分7aを設けた。
【0038】
前記垂直上昇管11は、曲成管7の下降する楕円螺旋の最下端から垂直上昇管11で引上げて先端は配送管8に繋がる。
【0039】
次に以上の廃棄乳、原乳もしくは乳製品製造の際の洗浄水の処理装置を用いる本発明の廃棄乳の処理について説明すると、原乳送液装置2により廃棄乳とする原乳を送り、また、反応液送液装置3により反応液(凝固液)を送り、これを反応ユニット(混合流速機)1に合流させて反応ユニット(混合流速機)1の合流部6に導く。
【0040】
前記反応液には、動植物から得られる凝集剤(甲殻類の殻から製造したキトサン系のカチオン系凝集剤や納豆の粘り成分から製造する凝集剤)を用いた。反応液に対する薬剤(凝集剤)の使用濃度は100ppmとした。このように
【0041】
一般的な凝集処理は、無機系の凝集剤と混合後発生した微小な凝集物に、高分子凝集剤を添加しフロック化させて沈殿させるものであるが、本発明の廃棄牛乳処理では、牛乳中に含まれるカルシウムを用いて無機凝集剤として活用する。すなわち、凝集剤は、天然由来凝集剤として植物から得られた高分子凝集剤として利用できる成分を用いてフロック化させることが可能にするものである。
【0042】
反応ユニット(混合流速機)1内では小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長し、混合流速機から排出される時には粗いフィルターである簡易濾過器9で回収可能なレベルにまでに凝集物が得られる。
【0043】
本発明は、前記反応ユニット(混合流速機)1を内では反応液(凝固液)との接触効率が高い構造として、水中内で抗力を利用した凝集システムの開発によるものである。
【0044】
小さい凝集物が水中移動し移動スピードが遅い大きな凝集物と衝突して凝集物はさらに大きな凝集物に成長し、混合流速機から排出される時には粗いフィルターでも回収可能なレベルにまでに凝集物が得られる。
【0045】
〔抗力 流体中に移動中に物体にはたらく力〕
・ D は、発生する抗力
・ ρ は流体の密度(海面高度の大気中なら、気温15℃で1.2250kg/m3)
・ V は物体と流体の相対速度
・ S は物体の代表面積
【0046】
本発明は、反応ユニット(混合流速機)1の混合流速機(曲成管7)内で、原乳と反応液(凝固液)(凝集試薬)とを反応させタンパク質を直接凝集させる。
【0047】
通常の凝集槽と比べ反応性が早く、混合流速装置内に原乳および反応液(凝集試薬)を導入し、混合流速装置から排出させる時には、凝集が完了されている。
【0048】
これにより、原乳中のタンパク質を除去する事で、共存する脂質成分やCOD・BOD成分も共沈させる事が可能になる。
【0049】
また、前記のごとく反応液は、動植物から得られる凝集剤(甲殻類の殻から製造したキトサン系のカチオン系凝集剤や納豆の粘り成分から製造する凝集剤)を用いたことにより、従来の処理方法では凝集しない高負荷排水でも、本発明では希釈を行うことなく高濃度排水でも凝集する事ができ、これにより、高負荷排水では凝集阻害が起こり反応しない、もしくは、沈殿に時間が掛かるという問題を解決できる。
【0050】
本発明の効果を試す試験は下記の通りである。
個液分離の性能評価は、原乳と前記の反応液を「設定(1)1:4」、「設定(2)1:2」、「設定(3)1:1」の割合で混合合流させ、反応ユニット(混合流速機)1に注入し、流速調整により効率的な凝固反応を起こし、凝集物を簡易濾過器9にて回収した。
【0051】
原乳は、日本酪農(伊賀産)を使用した。
薬剤は凝集物の処分を考慮し、天然由来の成分にて調合する。具体的には動植物から得られる凝集剤(甲殻類の殻から製造したキトサン系のカチオン系凝集剤や納豆の粘り成分から製造する凝集剤)を用いた。また、反応液に対する薬剤の使用濃度は100ppmとした。
【0052】
本試験において得ようとする評価は、廃棄乳を確実に分離でき、凝集物は原乳の15%程度の質量(含水率86%)に縮減することが可能なことである。
【0053】
試験の評価は下記の通りである。
〔評価項目〕
・反応性 :凝集沈殿用の反応槽より早い
・凝集性 :凝集効率が高い
・透視度 :透明な液が得られる
・水質浄化能力(PH、COD、BOD、T-N)
【0054】
処理後の凝固物を図7に、処理後の排水の状態を図8に示す。また、廃棄原乳および処理水の性状を下記表1に示す。
【表1】
【0055】
〔評価結果〕
除去率はCOD67~90%、BOD90~97%、T-N91~98%の結果となり、本試験での廃棄乳処理は可能であると判断出来る。
【0056】
処理水の処分は、既存または新設の排水処理設備にて浄化処理が可能である。
【0057】
また、凝集物の処理は廃棄物処理または近隣へのバイオマス施設への投入が可能であり、有価物として売却の可能性もある。
【0058】
更に、凝集物を強制または自然乾燥させることにより粉末状態として廃棄・バイオマス・土壌散布も可能である。
【0059】
以上が廃棄乳の処理の場合について述べたが、本発明は廃棄乳以外でも、牛乳・豆乳・アイスクリームなど乳製品の製造の際の製造機械等の洗浄水に使用可能である。
【0060】
この乳製品の製造の際の洗浄水は、廃棄乳と同様な乳成分を含むので、同様な方法で廃棄処理ができる。
【符号の説明】
【0061】
1……反応ユニット(混合流速機)
2……原乳送液装置
3……反応液送液装置
4……配管
5……配管
6……合流部
7……曲成管
7a…楕円部分
8……配送管
9……簡易濾過器
10……筒状ハウジング
11……垂直上昇管
100……沈殿分離槽第一槽
110……沈殿分離槽第二槽
120……汚泥濃縮貯留槽第一槽
130……UASB槽
200……嫌気ろ床槽
210……汚泥濃縮貯留槽第二槽
220……カキ殻接触ばっ気槽
230……揺動床ばっ気槽第一槽
300……炭素繊維ばっ気槽
310……移流・沈殿槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9