(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】コネクタとの筐体嵌合構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/74 20060101AFI20230815BHJP
H01R 12/72 20110101ALI20230815BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H01R13/74 J
H01R12/72
H01R13/52 301H
(21)【出願番号】P 2021135283
(22)【出願日】2021-08-23
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】林 耕平
(72)【発明者】
【氏名】辻角 弥恵子
(72)【発明者】
【氏名】大石 勝司
(72)【発明者】
【氏名】牧村 隆信
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-037065(JP,A)
【文献】実開昭55-075192(JP,U)
【文献】実開昭58-116291(JP,U)
【文献】実開平3-17659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合ケースを介して筐体内に配設した基板にカードエッジ用のコネクタを直接的に電気接続できるコネクタとの筐体嵌合構造であって、
筐体内に配設した基板と、
筐体に設けた筐体穴と、
前記筐体穴に遊嵌した嵌合ケースとを備え、
前記嵌合ケースは前記筐体とは別部品であり、
略筒状の本体部と前記本体部の外周面に外側へ張り出したフランジを有し、
前記嵌合ケースは
前記基板の厚みに対応する隙間寸法からなるスリット孔を有するとともに前記基板の端部を前記スリット孔に挿入し、前記基板
の上下方向に合わせて位置決めされ、
前記基板は端部に前記基板の幅方向に沿って凹部又は凸部を有し、
前記嵌合ケースは前記基板の端部に設けた凹部又は凸部に係合する係合部を有し、該係合部が前記凹部又は凸部に係合することで前記嵌合ケースの幅方向が位置決めされた状態で前記フランジに設けた取付孔にて嵌合ケースが前記筐体側に固定されていることを特徴とするコネクタとの筐体嵌合構造。
【請求項2】
前記フランジと前記筐体側との間に止水部材を有していることを特徴とする請求項
1記載のコネクタとの筐体嵌合構造。
【請求項3】
前記嵌合ケースは前記コネクタを挿入嵌合するためのコネクタ嵌合部を有し、
前記コネクタと前記コネクタ嵌合部との間に防水部材を有していることを特徴とする請求項
2記載のコネクタとの筐体嵌合構造。
【請求項4】
前記嵌合ケースは前記コネクタとの接続状態をロックするためのロック手段を有していることを特徴とする請求項
3記載のコネクタとの筐体嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に配設した基板にカードエッジコネクタを直接的に電気接続するための、コネクタとの筐体嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カードエッジコネクタは、基板の端部側に配線パターニング等により設けた接続端子に直接的に電気接続するソケットタイプのコネクタである。
このようなコネクタは、電子部品を実装した基板を内部に配設した計器類、電機・電子機器等の広い分野で使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、筐体(メータケース)内に設けたソリッド配線基板にコネクタを嵌合接続するために、この筐体の背面に凹部を形成するとともに、コネクタを前記凹部に受け入れた状態で係止するロック構造を開示する。
しかし、筐体内に配設する基板の取付位置にバラツキがあると、上記のように筐体に設けた凹部にコネクタを挿入してそのままロックする構造では、コネクタが有する電気接続のための接触片と基板側にパターニングした電極等の端子との間に位置ズレが生じ、電気接続が安定しない恐れがある。
また、コネクタにて基板を強く押し付けた状態になると、電気接続の位置ズレだけでなく、基板に過度の曲げ応力が加わる恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、筐体内に配設した基板にカードエッジコネクタを安定して電気接続可能な、コネクタとの筐体嵌合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコネクタとの筐体嵌合構造は、嵌合ケースを介して筐体内に配設した基板にカードエッジ用のコネクタを直接的に電気接続できるコネクタとの筐体嵌合構造であって、筐体内に配設した基板と、筐体に設けた筐体穴と、前記筐体穴に遊嵌した嵌合ケースとを備え、前記嵌合ケースは前記基板により位置決めされた状態で前記筐体側に固定されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、筐体に設けた筐体穴に遊嵌した嵌合ケースと表現したのは、筐体穴の開口寸法の方が嵌合ケースの外形寸法よりも大きく、左右、上下に遊びを有した状態で嵌合されていることをいう。
また、カードエッジ用のコネクタとは、基板上に配線パターニング等にて形成した端子を内側に挿入するソケットタイプのコネクタをいい、基板側の端子とコネクタ内に備える接触片が接触することで電気的に接続される。
これにより、筐体内に配設した基板の取付位置にバラツキが生じても、この基板の端部に合せて嵌合ケースが位置決めされるのでコネクタの接続位置が安定する。
すなわち、嵌合ケースの筐体側への固定位置が基板の位置に調整されるので、コネクタの接触片と基板の端子との位置関係は一定になる。
また、筐体側に固定と表現したのは、嵌合ケースを筐体に直接固定する場合のみならず、取付部品等を介して間接的に固定する場合も含まれる趣旨である。
【0008】
本発明において、基板の位置に合せて嵌合ケースの固定位置を調整する手段としては、例えば前記嵌合ケースはスリット孔を有し、前記基板の端部を前記スリット孔に挿入することで前記嵌合ケースが位置決めされていてもよい。
また、前記基板は端部に凹部又は凸部を有し、前記嵌合ケースは前記基板の端部に設けた凹部又は凸部に係合する係合部を有し、該係合部が前記凹部又は凸部に係合することで前記嵌合ケースが位置決めされていてもよい。
これにより、嵌合ケースは基板の厚み方向や幅方向のズレに合せて位置決めされる。
【0009】
本発明において、前記嵌合ケースは前記筐体側に固定するためのフランジを有し、前記フランジと前記筐体側との間に止水部材を有していてもよい。
嵌合ケースのフランジは、嵌合ケースを筐体穴に遊嵌した状態で筐体に対向し、例えば筐体とともにネジ等で固定できるものであってもよい。
上記のように固定することで、例えばパッキン等の止水部材が対向するフランジと筐体の間で押圧されやすく、筐体と嵌合ケース間の止水性を確保できる。
また、前記嵌合ケースは前記コネクタを挿入嵌合するためのコネクタ嵌合部を有し、前記コネクタと前記コネクタ嵌合部との間に防水部材を有していてもよい。
本発明がパッキン等の防水部材の圧縮に必要な構造を備えることで、嵌合ケースとコネクタ間での防水性も確保できる。
【0010】
本発明において、前記嵌合ケースは前記コネクタとの接続状態をロックするためのロック手段を有していてもよい。
これにより、基板と電気接続したコネクタを嵌合ケースに係止できる。
また、嵌合ケースにコネクタが係止することで、嵌合ケースとコネクタ間で防水部材の圧縮状態を保ちやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコネクタとの筐体嵌合構造は、筐体内への基板の取付寸法に合せて嵌合ケースを位置決めするために、この嵌合ケースを筐体穴に遊びをもって嵌合し、その後に基板の位置に合せて筐体に固定できる。
これにより、筐体と嵌合ケースとの間で位置ズレを吸収でき、位置ズレに起因して基板に曲げ応力負荷を加えることなく、基板とコネクタを安定して電気接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るコネクタとの筐体嵌合構造例を示し、(a)は嵌合ケースを介して筐体内に配設した基板へのコネクタの嵌合前状態を、(b)はその嵌合状態を示す。
【
図2】コネクタとの筐体嵌合構造における構成部品例を示す。
【
図3】(a)、(b)は嵌合ケースの構造例を示す。
【
図5】基板、嵌合ケース及び筐体の組み付け手順を、(a)、(b)の順に示す。
【
図7】基板の厚み方向がわかる縦断面図を示し、(a)は嵌合ケースのスリット孔への基板の挿入前状態を、(b)はその挿入状態を示す。
【
図8】基板面に沿った方向がわかる横断面図を示し、(a)は嵌合ケースの係合部への基板の係合前状態を、(b)はその係合状態を示す。
【
図9】基板とコネクタの嵌合状態がわかる縦断面図を示す。
【
図10】(a)は嵌合ケースの別構造例を示し、(b)はそのコネクタとの筐体嵌合構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るコネクタとの筐体嵌合構造を以下、図に基づいて説明する。
図1(a)に、嵌合ケース20を介して筐体1内に配設した基板10にコネクタ50を嵌合する前の状態を示し、
図1(b)にその嵌合した状態を示す。
なお、本明細書では説明の便宜上、基板の厚み方向を上下方向、基板面に沿った方向を左右方向、コネクタの嵌合方向を前後方向と表現する。
【0014】
本明細書において筐体とは、電機・電子機器や装置等を内蔵可能なケース、箱等をいう。
筐体の大きさやこれに取り付ける嵌合ケース等の取付位置に制限はなく、図における筐体1は、その大きさや嵌合ケースの取付位置を制限しない意味で、一点鎖線を用いて表現した。
例えば
図2に示すように、筐体1の取付面1aには、嵌合ケース20を遊嵌するための筐体穴2を設けてある。
基板10は、
図2に示すようにコネクタ50との接続部付近のみを示してあるが、筐体1内にビス止め、カシメ等により取り付けられる。
基板10には、その所定位置に平面視凹状の凹部12、12が形成され、凹部12、12間に凸状の端子部11と、両端に側部13、13を有する。
本実施例は、端子部11の上下両面に複数の端子11aを有する例であるが、端子部の片面にのみ端子が設けられていてもよい。
また、端子11aは基板に実装した電子部品等の配線パターンの一部として形成されている。
【0015】
図3(a)、(b)に、嵌合ケース20の構造例を示す。
嵌合ケース20は、略筒状の本体部の一方端が背面部25で閉塞され、他方端が開口し、本体部の外周面に外側へ張り出したフランジ22を有する。
フランジ22は、その背面側にパッキン等の止水部材23を装着でき、止水部材23よりも外側に取付孔22a、22bが設けられている。
嵌合ケース20の内側には、後述するコネクタ50のハウジング51が嵌合するコネクタ嵌合部21が形成されている。
コネクタ嵌合部21は、嵌合相手であるハウジング51に対応する形状であれば特に制限はなく、例えばコネクタ嵌合部21が所定位置に凹溝21a、21bを有し、これに対応する凸状部51a、51bを備えたハウジング51を嵌入すれば、嵌合ケース20に対してコネクタ50を高い位置精度で保持できる。
また、コネクタ嵌合部21の一部に形成された係止凹部32は、その所定位置に係止孔33を有することで、後述するコネクタ50(ハウジング51)のロック爪52を挿入、係止できる。
嵌合ケース20の本体部のうち、フランジ22より後側の本体後部24が、筐体穴2に遊嵌して筐体1内に配設される。
図2で説明すると、筐体穴2の開口部の上下方向の寸法H
0及び幅方向の寸法W
0は、それぞれ嵌合ケース20の本体後部24の外形形状の上下寸法H
1、幅寸法W
1よりも大きい。
一方、フランジ22を筐体1の取付面1aに取り付けることで、本体前部31は筐体1外に配設される。
なお、本体前部31は必ずしも筒状に限定されるわけでなく、その内側にコネクタ50を嵌合及び/又は係止できれば、例えば半円状等であってもよい。
本体後部24から段差部26を介して後側に背面部25が延在し、この背面部25にスリット孔27が設けられている。
スリット孔27は、背面部25を前後及び左右方向に貫通する直線状であり、その隙間寸法が基板10の厚みに対応することで、基板10の端子部11が挿入可能である。
【0016】
コネクタ50の構造例を、
図4(a)~(c)に示す。
コネクタ50は、嵌合ケース20のコネクタ嵌合部21へ嵌入するハウジング51を備え、本実施例においては、略楕円柱状のハウジング51の外周面の所定位置に凸状部51a、51bが形成されている。
また、ハウジング51の外周面であって、コネクタ嵌合部21の係止凹部32に対応する位置に設けられたロック爪52が、係止凹部32の係止孔33に挿入可能である。
ロック爪52は、その前側に位置する押下部53と一体的な構造であり、押下部53を押し下げることで撓るようにロック爪52が係止孔33から抜去される。
ハウジング51は、背面に基板10の端子部11を挿入する挿入口54が形成され、その背面側の外周面にパッキン等の防水部材57が装着されている。
ハウジング51内には、ケーブル56の芯線と接続した接触片55が複数保持され、接触片55は端子部11上の端子11aに摺接するように先端部が山形に形成されている。
本実施例は
図4(b)に示すように、接触片55,55を上下両側に対向して配設し、接触片55、55の先端部間に基板10の端子部11を挿入すると、接触片55、55の先端部が端子部11の両面上の端子11a、11aにそれぞれ接触する。
なお、接触片55が上下片側にのみハウジング51内に配設されたコネクタ50であってもよい。
また、ケーブル56と接触片55の接続部側を防水用の接着剤等で保護することで、ハウジング51内の防水性を確保できる。
【0017】
図5、6に基づいて、筐体内に配設した基板に合せて嵌合ケースを組み付ける手順を説明する。
図5(a)に示すように、筐体1外から嵌合ケース20の本体後部24を筐体穴2に遊嵌し、
図5(b)に示すように、筐体1内で基板の端子部11を嵌合ケースのスリット孔27に挿入する。
図5(b)の状態において、基板10の厚み方向がわかる縦断面図を
図7(a)に、基板面に沿った方向がわかる横断面図を
図8(a)に示す。
この際に、本体後部24の外形寸法(H
1、W
1)よりも筐体穴2の開口部の寸法(H
0、W
0)の方が大きいので、嵌合ケース20は筐体穴2内にて上下、左右に動く状態にある。
次に、
図6(c)に示すように、ネジ等の取付部材40でフランジ22を取付面1aに取り付ける。
フランジ22に設けた取付孔22a、22bの内径寸法Dは、取付部材40のネジ外形寸法Mよりも大きく、後述するように基板の端子部11の位置に合せて嵌合ケース20の上下方向H及び幅方向Wを位置決めした状態で、取付部材40を筐体1の被取付孔3a、3bに向けて締め込むことで嵌合ケース20を固定できる。
なお、本実施例はフランジ22に設けた取付孔22a、22bを用いて筐体に嵌合ケースを固定する例であり、筐体の取付面に取付孔22a、22bと対応する被取付孔3a、3bを設けた例であるが、特にフランジ22の取付方法に制限はない。
例えば、嵌合ケースを位置決めした後に固定する係止爪を筐体側に設けてもよい。
これにより、
図6(d)に示すように嵌合ケース20を基板10に合せて位置決めし、基板10を保持したことで基板への負荷を軽減できる。
この際の縦断面図、横断面図をそれぞれ
図7(b)、
図8(b)に示す。
図7(a)、(b)に示すように、スリット孔27の隙間寸法が基板10の厚み方向に対応することで、コネクタ嵌合部21に対して突出する端子部11の上下方向Hの位置が決められる。
また、
図8(a)、(b)に示すように、基板10の凹部12に嵌合ケース20の段差部26が当接するとともに、側部13の内側に本体後部24の外周面が当接することで、段差部26と本体後部24が凹部12に係合する係合部となる。
これにより、コネクタ嵌合部21に対して突出する端子部11の幅方向Wの位置が決められる。
このように基板10の厚み、幅に合せて嵌合ケース20が位置決めされるとともに、基板10が嵌合ケース20に保持される。
なお、フランジ22の背面側に装着された止水部材23が、取付部材40の締め付けにより筐体1に押圧され、フランジ22と取付面1aの間を止水する。
【0018】
図9に、上記のように筐体1内に配設された基板10に対して、コネクタ50が嵌合した状態(
図1(b)に示す状態)の縦断面図を示す。
コネクタ嵌合部21に対して基板10の上下方向、左右方向が位置決めされているので、コネクタ嵌合部21と嵌合するコネクタのハウジング51の挿入口54から接触片55、55間に基板10の端子部11が寸法精度高く挿入されている。
また、ハウジング51に設けたロック爪52がコネクタ嵌合部21の係止孔33に挿入し、ロック爪52の前側が係止凹部32に当接することで、コネクタ50と嵌合ケース20との嵌合状態はロックされている。
なお、この際にハウジング51の背面側に装着した防水部材57がコネクタ嵌合部21に押圧され、コネクタ嵌合部21とコネクタ50のハウジング51の間を防水する。
【0019】
図10(a)に嵌合ケース20の別実施例を示す。
本実施例は、基板10に設けた凹部12を嵌合ケース20により係合しやすいように、基板10の側部13を導入する導入スリット28を段差部26,本体後部24に設けた例である。
これにより、
図10(b)に示すように、基板10の側部13を導入スリット28に沿わせて端子部をスリット孔に挿入でき、基板10に合せて嵌合ケース20をより位置決めしやすい。
【符号の説明】
【0020】
1 筐体
2 筐体穴
10 基板
11 端子部
12 凹部
20 嵌合ケース
21 コネクタ嵌合部
22 フランジ
23 止水部材
27 スリット孔
50 コネクタ
51 ハウジング
52 ロック爪
55 接触片
57 防水部材