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  • 特許-湾曲芳香族化合物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】湾曲芳香族化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20230815BHJP
   C07C 1/26 20060101ALI20230815BHJP
   C07C 25/22 20060101ALI20230815BHJP
   C07C 13/62 20060101ALI20230815BHJP
   C07C 17/35 20060101ALI20230815BHJP
   C07C 17/278 20060101ALI20230815BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
C07C1/26
C07C25/22
C07C13/62
C07C17/35
C07C17/278
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019103877
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020196682
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第29回基礎有機化学討論会 (第48回構造有機化学討論会・第68回有機反応化学討論会) 要旨集 第118頁 1P017(主催;基礎有機化学会)
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 泰知
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】川田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】畠山 泰斗
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154577(JP,A)
【文献】加藤健太ら,負曲率をもつ芳香族炭化水素の一次元自己集積化,日本化学会春季年会講演予稿集(CD-ROM),Vol.99th Page.ROMBUNNO.3H1-35 (2019.03.0,日本,日本化学会,2019年03月01日,S0493B
【文献】Kenta Kato et al.,Synthesis, Properties, and Packing Structures of Corannulene-Based π-Systems Containing Heptagons,Chemistry: An Asian Journal,10,ドイツ,Wiley-VCH,2015年,1635-1639
【文献】Jesus M. Fernandez-Garcia et al.,π-Extended Corannulene-Based Nanographenes: Selective Formation of Negative Curvature,Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society Article,2018年,140,17188-17196
【文献】Maria N. et al.,Pushing the Ir-Catalyzed C-H Polyborylation of Aromatic Compounds to Maximum Capacity by Exploiting Reversibility,Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society,2012年,134,15169-15172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)
【化1】
式中Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物。
【請求項2】
下記一般式(3)
【化2】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物。
【請求項3】
下記一般式(4)
【化3】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表されるハロゲン化WNG68化合物。
【請求項4】
請求項に記載の化合物のX基の除去反応により、
下記一般式(1)
【化4】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
で表されるWNG68化合物を製造する方法。
【請求項5】
下記化合物(A)
【化5】
とハロゲン化試薬との反応により、請求項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項6】
請求項に記載の化合物と下記一般式(5)
【化6】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる1種または2種以上の置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Yは、脱離基、
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、請求項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項7】
請求項に記載の化合物の縮環反応により、請求項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項8】
下記一般式(2)
【化7】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(2)で表される化合物と下記一般式(5)
【化8】
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、下記一般式(3)
【化9】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(3)で表される化合物の縮環反応により、下記一般式(4)
【化10】
で表される化合物を得る工程、
を有することを特徴とする、下記一般式(1)
【化11】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲芳香族化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノ材料は、ナノメートルサイズの構造をもつ炭素からなる物質群の総称であり、これまでにフラーレン(球状)、カーボンナノチューブ(筒状)、グラフェン(シート状)が発見、研究されている。これらの化合物は、シリコンや金属といった従来の材料を上回る電気特性や物理特性を発揮するため、次世代の電子デバイス用材料として期待されている。
しかしながら、例えばナノグラフェンは有機溶媒中で凝集しやすく、その溶解性の低さが問題となっていた。
【0003】
この問題を解決するため、伊丹らはC8030で表されるワープドナノグラフェン(WNG80)を開発した(非特許文献1)。WNG80は湾曲構造を有するため、平面状グラフェンと比べて有機溶媒への溶解性に優れ、さらに、電子を繰り返し出し入れできる、緑色の蛍光を放つ、等平面シート状のグラフェンとは異なる特徴を持つ。そのため、バイオイメージングや有機半導体材料等への応用が期待できる。
【0004】
このWNG80に新たな機能を付与する方法として、置換基の導入や類似構造の化合物を合成することが考えられる。これまでに、水溶性置換基を導入した水溶性誘導体が開発されており、この化合物はマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析用マトリックスや蛍光色素として用いることが出来る(特許文献1、および非特許文献2)。これらWNG80は、ナノグラフェンより優れた有機溶媒への溶解性を示すが、有機半導体材料等への応用のためには、有機溶媒へのさらなる溶解性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-154577
【非特許文献】
【0006】
【文献】Nat. Chem., 2013, 5, 739-744
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2018, 57, 2874-28787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、WNG80と類似の湾曲構造を有し、WNG80より優れた有機溶媒への溶解性を示す新たな化合物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々研究を重ねた結果、WNG80よりビフェニルユニットの少ない、下記一般式(1)
【化1】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
で表されるワープドナノグラフェンC6828(WNG68)化合物は、特定の波長に蛍光特性を有し、WNG80より優れた溶解性を示すことを見出した。
【0009】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)
【化2】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
で表されるWNG68化合物。
【0010】
[2]下記一般式(2)
【化3】
式中Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物。
【0011】
[3]下記一般式(3)
【化4】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物。
【0012】
[4]下記一般式(4)
【化5】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表されるハロゲン化WNG68化合物。
【0013】
[5][4]に記載の化合物のX基の除去反応により、[1]に記載の化合物を製造する方法。
【0014】
[6]下記化合物(A)
【化6】
とハロゲン化試薬との反応により、請求項2に記載の化合物を製造する方法。
【0015】
[7][2]に記載の化合物と下記一般式(5)
【化7】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる1種または2種以上の置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Yは、脱離基、
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、[3]に記載の化合物を製造する方法。
【0016】
[8][3]に記載の化合物の縮環反応により、[4]に記載の化合物を製造する方法。
【0017】
[9]下記一般式(2)
【化8】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(2)で表される化合物と下記一般式(5)
【化9】
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、下記一般式(3)
【化10】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(3)で表される化合物の縮環反応により、下記一般式(4)
【化11】
で表される化合物を得る工程、
を有することを特徴とする、下記一般式(1)
【化12】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物を製造する方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、WNG80より優れた溶解性を示す、同様のパッキング構造を有する化合物を提供することができる。
また本発明者らは、化合物(A)
【化13】
のボロン酸エステル基の一か所を選択的にハロゲンに変換する新しい手法を見出した。かかる手法により、置換位置が特定されたWNG68前駆体の合成が可能となった。そのため、精密な分離精製を必要とせず、効率的にWNG68の提供が可能となった。
また、WNG68化合物や、下記一般式(4)
【化14】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表されるハロゲン化WNG68化合物は、WNG80化合物と同様に蛍光を示し、バイオイメージングや有機半導体材料等への応用が期待できる。
さらに、WNG68化合物の合成の際における縮環反応は、ワープドナノグラフェン化合物の合成の際における縮環反応で生じる副反応が抑制され、収率が改善された。
さらにまた、塩素化WNG68の分子構造をX線結晶構造解析によって決定した。塩素化WNG68は新規化合物であり、分子中の塩素基をクロスカップリング反応等の手法により他の官能基へ変換できるため、新たな機能や特性を付与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、塩素化WNG68のX線構造回折を表す図である。
図2図2は、塩素化WNG68のX線構造回折を表す図である。
図3図3は、塩素化WNG68のX線構造回折を表す図である。
図4図4は、WNG68(上段)および塩素化WNG68(Cl-WNG68;下段)の吸収スペクトル(実線)および蛍光スペクトル(破線)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(1)
【化15】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
で表されるWNG68化合物に関する。
【0021】
一般式(1)中のRにおける直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
一般式(1)中のRにおける分枝状のアルキル基としては、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、1-エチルプロピル基、1-n-プロピルプロピル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、1-プロピルブチル基、1-n-ブチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-n-プロピルヘキシル基、1-n-ブチルヘキシル基、1-n-ペンチルヘキシル基、1-n-ヘキシルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-n-ブチルヘプチル基、1-n-ペンチルヘプチル基が挙げられる。
上記アルキル基は、収率および合成の容易さ等の観点から、炭素数1~20であることが好ましく、炭素数1~12であることがより好ましく、炭素数1~5であることがさらに好ましい。
一般式(1)中のRにおけるジフェニルアミノ基およびカルバゾール基は、それぞれ置換されていても非置換でもよい。置換されている場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基等が挙げられる。
一般式(1)中のRは、合成の容易さの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、tert-ブチル基、tert-アミル基が好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましく、メチル基、tert-ブチルがさらに好ましい。
一般式(1)中のnは、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0022】
本発明はまた、下記一般式(2)
【化16】
式中Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物に関する。
ハロゲン原子Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子がより好ましく、塩素原子がさらに好ましい。
【0023】
本発明はまた、下記一般式(3)
【化17】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物に関する。
【0024】
一般式(3)中のRにおける直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
一般式(3)中のRにおける分枝状のアルキル基としては、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、1-エチルプロピル基、1-n-プロピルプロピル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、1-プロピルブチル基、1-n-ブチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-n-プロピルヘキシル基、1-n-ブチルヘキシル基、1-n-ペンチルヘキシル基、1-n-ヘキシルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-n-ブチルヘプチル基、1-n-ペンチルヘプチル基が挙げられる。
上記アルキル基は、収率および合成の容易さ等の観点から、炭素数1~20であることが好ましく、炭素数1~12であることがより好ましく、炭素数1~5であることがさらに好ましい。
一般式(3)中のRにおけるジフェニルアミノ基およびカルバゾール基は、それぞれ置換されていても非置換でもよい。置換されている場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基等が挙げられる。
一般式(3)中のRは、合成の容易さの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、が好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましく、メチル基、tert-ブチル基がさらに好ましい。
一般式(3)中のnは、0または1が好ましく、0がより好ましい。
一般式(3)中のハロゲン原子Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子がより好ましく、塩素原子がさらに好ましい。
【0025】
本発明はまた、下記一般式(4)
【化18】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物に関する。
一般式(4)中のRにおける直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
一般式(4)中のRにおける分枝状のアルキル基としては、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、1-エチルプロピル基、1-n-プロピルプロピル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、1-プロピルブチル基、1-n-ブチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、1-n-プロピルヘキシル基、1-n-ブチルヘキシル基、1-n-ペンチルヘキシル基、1-n-ヘキシルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-n-ブチルヘプチル基、1-n-ペンチルヘプチル基が挙げられる。
上記アルキル基は、収率および合成の容易さ等の観点から、炭素数1~20であることが好ましく、炭素数1~12であることがより好ましく、炭素数1~5であることがさらに好ましい。
一般式(4)中のRにおけるジフェニルアミノ基およびカルバゾール基は、それぞれ置換されていても非置換でもよい。置換されている場合の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基等が挙げられる。
一般式(4)中のRは、合成の容易さの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基がより好ましく、メチル基、tert-ブチル基がさらに好ましい。
一般式(4)中のハロゲン原子Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が好ましく、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子がより好ましく、塩素原子がさらに好ましい。
【0026】
本発明はまた、下記一般式(4)
【化19】
で表される化合物の、X基の除去反応により、一般式(1)
【化20】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物を製造する方法に関する。
本方法における好ましいXは、一般式(4)で表される化合物のXについて述べた好ましい態様のとおりである。
本方法における好ましいRは、一般式(4)で表される化合物のRについて述べた好ましい態様のとおりである。
【0027】
X基の除去反応は、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム等の単体金属、トリエチルシラン、リチウムアルミニウムハイドライド、水素化トリエチルホウ素リチウム、等の還元剤、およびパラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応等により行われ、好ましくはパラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応または金属リチウム、金属ナトリウムにより行われ、さらに好ましくは金属リチウムにより行われる。前記還元剤は通常、一般式(4)で表される化合物1モルに対して、1~50モルが好ましく、5~30モルがより好ましい。
単体金属により除去する場合、任意に電子移動剤を添加してもよい。電子移動剤は例えば、非置換のナフタレン、N,N-ジメチル-1-ナフチルアミン等の置換ナフタレン、置換または非置換のビフェニル化合物等が挙げられ、好ましくは非置換のナフタレンである。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応を行なう場合、パラジウム触媒としては、特に限定されず、金属パラジウムをはじめ、有機化合物等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。パラジウム触媒としては、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(Pd(dba))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリtert-ブチルホスフィノ)パラジウム、酢酸パラジウム、ハロゲン化パラジウム(PdCl、PdBr、PdI)等の1種または2種以上が挙げられる。本発明においては、反応収率等の観点から、酢酸パラジウムが好ましい。パラジウム触媒の使用量は、通常、一般式(4)で表される化合物1モルに対して、0.01~1.00モルが好ましく、0.5~1.0モルがより好ましい。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応においては、ギ酸を用いることが必要である。ギ酸の使用量は、通常、一般式(4)で表される化合物1モルに対して、2~30モルが好ましく、10~20モルがより好ましい。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応においては、上記パラジウム触媒とともに、パラジウム原子に配位し得る配位子化合物を使用することができる。配位子化合物を使用しなくても反応を進行させることができるが、配位子化合物を使用することにより、反応収率をさらに向上させることも可能である。このような配位子化合物は、ホスフィン化合物が好ましく、例えば、トリフェニルホスフィン、トリストリメトキシホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリイソプロポキシホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリメシチルホスフィン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)等の1種または2種以上が挙げられる。これらの配位子化合物は、溶媒和物であってもよい。反応収率等の観点から、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)が好ましい。配位子化合物の使用量は、反応収率等の観点から、パラジウム触媒1モルに対して、0.5~10.0モルが好ましく、1.0~3.0モルがより好ましい。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応において、塩基を使用することが好ましい。塩基としては、アルキルアミンが好ましい。このような塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の1種または2種以上が挙げられる。なかでも、本工程では、合成の容易さ、収率等の観点からアルキルアミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。本発明において、塩基の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、用いるギ酸に対して過剰量が好ましく、通常、用いるギ酸1モルに対して、1.1~3.0モルが好ましく、1.5~2.0モルがより好ましい。
【0028】
単体金属を用いたX基の除去反応は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行われることが好ましく、通常は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等の1種または2種以上が挙げられる。本工程では、収率および合成の容易さの観点から、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテルが好ましく、テトラヒドロフラン(THF)がより好ましい。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応によるX基の除去反応は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行われることが好ましく、通常は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等アミドの1種または2種以上が挙げられる。本工程では、収率および合成の容易さの観点から、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドがより好ましい。
【0029】
単体金属を用いたX基の除去反応は、加熱下、常温下および冷却下のいずれも採用でき、通常、-78~100℃程度が好ましく、-78~50℃程度がより好ましく、0℃がなおより好ましい。反応時間は、反応が進行する時間とすることができ、通常、10分~3日間程度が好ましく、30分~1日間程度がより好ましい。
パラジウム触媒およびギ酸を用いた還元反応によるX基の除去反応は、加熱下、常温下および冷却下のいずれも採用でき、通常、-78~150℃程度が好ましく、室温~150℃程度がより好ましく、50~100℃がなおより好ましい。反応時間は、反応が進行する時間とすることができ、通常、1時間~1日間程度が好ましく、2時間~4時間程度がより好ましい。
反応終了後は、必要に応じて、セライトやシリカゲル等でのろ過、分液操作等の通常の後処理およびシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、沈殿精製等の精製工程を経てもよい。
【0030】
本発明はまた、化合物(A)
【化21】
とハロゲン化試薬との反応により、下記一般式(2)
【化22】
式中Xは、ハロゲン原子、で表される化合物、を製造する方法に関する。
本方法における好ましいXは、一般式(2)で表される化合物について述べた好ましい態様のとおりである。
ハロゲン化試薬は、特に限定されないが、フッ化銅(I)、塩素、N-クロロスクシンイミド、塩化銅(I)、N-クロロサッカリン、トリクロロイソシアヌル酸、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、臭素、N-ブロモスクシンイミド、臭化銅(I)、N-ブロモサッカリン、ジブロモイソシアヌル酸、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、ヨウ素、N-ヨードスクシンイミド、ヨウ化銅(I)、N-ヨードサッカリン 等が挙げられる。収率および合成の容易さ等の観点から、好ましくはN-クロロサッカリン、N-ブロモサッカリン、N-ヨードサッカリン、さらに好ましくはN-クロロサッカリンである。
【0031】
ハロゲン化試薬との反応は、通常は溶媒中で行うことができる。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等の1種または2種以上が挙げられる。収率および合成の容易さの観点から、好ましくはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素であり、さらに好ましくはジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素であり、最も好ましくはジクロロメタンである。
【0032】
ハロゲン化試薬との反応は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行われても、大気下で行われてもよい。
【0033】
ハロゲン化試薬との反応は、反応温度は、加熱下、常温下および冷却下のいずれも採用でき、通常、0~100℃程度が好ましく、0~50℃程度がより好ましく、室温(25℃)はなおより好ましい。反応時間は、反応が進行する時間とすることができ、通常、10分~3日間程度が好ましく、30分~1日間程度がより好ましい。
反応終了後は、必要に応じて、セライトやシリカゲル等でのろ過、分液操作等の通常の後処理およびシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、沈殿精製等の精製工程を経てもよい。
【0034】
本発明はまた、下記一般式(2)
【化23】
で表される化合物と下記一般式(5)
【化24】
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、下記一般式(3)
【化25】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
Yは、脱離基、
で表される化合物を製造する方法に関する。
本方法における好ましいR、n、およびXは、それぞれ、一般式(3)で表される化合物について述べた好ましい態様のとおりである。
【0035】
一般式(5)における脱離基Yは、収率および合成の容易さ等の観点から、-OTfおよびハロゲンが好ましく、-OTf、臭素、およびヨウ素がより好ましく、ヨウ素がさらに好ましい。
【0036】
鈴木宮浦カップリング反応において使用される一般式(5)で表される化合物の量は、一般式(3)で表される化合物に対して過剰量とすることが好ましく、通常、一般式(3)で表される化合物1モルに対して、2~20モルが好ましく、5~10モルがより好ましい。
【0037】
鈴木宮浦カップリング反応におけるパラジウム触媒としては、特に限定されず、金属パラジウムをはじめ、有機化合物等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。パラジウム触媒としては、具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(Pd(dba))、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリtert-ブチルホスフィノ)パラジウム、酢酸パラジウム、ハロゲン化パラジウム(PdCl、PdBr、PdI)等の1種または2種以上が挙げられる。本発明においては、反応収率等の観点から、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(Pd(dba))が好ましい。パラジウム触媒の使用量は、通常、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.01~1.00モルが好ましく、0.02~0.50モルがより好ましい。
【0038】
鈴木宮浦カップリング反応においては、上記パラジウム触媒とともに、パラジウム原子に配位し得る配位子化合物を使用することができる。配位子化合物を使用しなくても反応を進行させることができるが、配位子化合物を使用することにより、反応収率をさらに向上させることも可能である。このような配位子化合物は、ホスフィン化合物が好ましく、例えば、トリフェニルホスフィン、トリストリメトキシホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリイソプロポキシホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリメシチルホスフィン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)等の1種または2種以上が挙げられる。これらの配位子化合物は、溶媒和物であってもよい。反応収率等の観点から、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましい。配位子化合物の使用量は、反応収率等の観点から、パラジウム触媒1モルに対して、0.5~10.0モルが好ましく、1.0~5.0モルがより好ましい。
【0039】
鈴木宮浦カップリング反応において、塩基を使用することが好ましい。塩基としては、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物塩等が好ましい。このような塩基としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属フッ化物塩等の1種または2種以上が挙げられる。なかでも、本工程では、合成の容易さ、収率等の観点からアルカリ金属リン酸塩が好ましく、リン酸カリウムがより好ましい。本発明において、塩基の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、一般式(3)で表される化合物に対して過剰量が好ましく、通常、一般式(3)で表される化合物2~20モルが好ましく、5~10モルがより好ましい。
【0040】
上記反応は、通常は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、水の他、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等の1種または2種以上が挙げられる。本工程では、収率および合成の容易さの観点から、水および芳香族炭化水素が好ましく、水およびトルエンの組み合わせがより好ましい。
【0041】
上記反応は、不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行うことが好ましく、反応温度は、加熱下、常温下、冷却下のいずれも採用でき、通常、室温(25℃)~150℃程度が好ましく、50~100℃程度がより好ましい。反応時間は、反応が進行する時間とすることができ、通常、10分~48時間程度が好ましく、30分~36時間程度がより好ましい。反応終了後は、必要に応じて、セライトやシリカゲル等でのろ過、分液操作等の通常の後処理およびシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、沈殿精製等の精製工程を経てもよい。
【0042】
本発明はまた、下記一般式(3)
【化26】
で表される化合物の縮環反応により、下記一般式(4)
【化27】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物を製造する方法に関する。
本方法における好ましいR、n、およびXは、それぞれ、一般式(4)で表される化合物について述べた好ましい態様のとおりである。
【0043】
縮環反応は、通常は溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族ハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、トリフルオロトルエン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等の1種または2種以上が挙げられる。収率および合成の容易さの観点から、脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。
【0044】
縮環反応を行うために使用される酸化剤としては、例えば、o-クロラニル、p-クロラニル、塩化鉄(III)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)、二酸化マンガン、ジョーンズ試薬、クロロクロム酸ピリジニウム、二クロム酸ピリジニウム、ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム(CAN)、ヨウ素等の1種または2種以上が挙げられる。本工程では、収率および合成の容易さの観点から、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)が好ましい。酸化剤の使用量は、通常、一般式(3)で表される化合物に対して過剰量が好ましく、例えば、一般式(3)で表される化合物1モルに対して、5~20モルが好ましく、8~15モルがより好ましい。
【0045】
縮環反応においては、任意に添加剤を使用してもよい。かかる添加剤は、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられ、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
使用される添加剤の量は、特に限定されない。収率等の観点から、一般式(3)で表される化合物に対して過剰量が好ましい。10モル以上使用されることが好ましく、100モル以上使用されることがより好ましく、溶媒量使用されることがさらに好ましい。
【0046】
縮環反応は不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行われても、大気下で行われてもよいが、好ましくは不活性ガス雰囲気(窒素ガス、アルゴンガス等)下で行われる。縮環反応における反応温度は、加熱下、常温下および冷却下のいずれも採用でき、通常、-78~100℃程度が好ましく、-78~50℃程度がより好ましく、0℃はさらに好ましい。反応時間は、反応が進行する時間とすることができ、通常、10分~3日間程度が好ましく、30分~1日間程度がより好ましい。
反応終了後は、必要に応じて、セライトやシリカゲル等でのろ過、分液操作等の通常の後処理およびシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、沈殿精製等の精製工程を経てもよい。
【0047】
本発明は、下記一般式(2)
【化28】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(5)
【化29】
で表される化合物との鈴木宮浦カップリング反応により、下記一般式(3)
【化30】
で表される化合物を得る工程、
次いで、前記一般式(3)で表される化合物の縮環反応により、下記一般式(4)
【化31】
で表される化合物を得る工程、
を有することを特徴とする、下記一般式(1)
【化32】
式中
Rは、互いに独立して同一または異なり、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基、炭素数1~20の直鎖状または分枝状の、アルキル基、アルキルアミノ基およびアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、
nは、それぞれ互いに独立して0~3の整数であり、
Xは、ハロゲン原子、
で表される化合物を製造する方法を包含する。
本方法における好ましいR、n、Xは、それぞれ、一般式(1)で表される化合物について述べた好ましい態様のとおりである。
本方法における好ましいYは、一般式(5)で表される化合物について述べた好ましい態様のとおりである。
【実施例
【0048】
以下に、本発明の実施例を参照してより詳細に説明するが、これは本発明の特定の具体例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
合成例1:化合物(B)の合成
化合物(B)は既報(J. Am. Chem. Soc. 134, 15169-15172)に従い合成した。
【化33】
化合物(A)(1103mg,1.25mmol,1.0当量)のジクロロメタン(12.5mL)溶液に、N-クロロサッカリン(712mg,3.27mmol,2.6当量)を加え、室温大気下、1時間撹拌した。当該混合物に、n-ヘキサンを加え、析出した不溶物をセライトろ過した後、減圧下で溶媒を留去した。再度、n-ヘキサンを加えて、セライトろ過した。ろ液を濃縮し、黄色フォーム状の化合物(B)を得た(1018mg,quant.)。
【0049】
1H NMR (600 MHz, C2D2Cl4, 25℃) δ 8.99 (s, 2H), 8.95 (s, 1H), 8.59 (s, 1H), 1.49-1.47 (m, 48H);13C NMR (150 MHz C2D2Cl4, 25℃) δ 139.5 (CH), 138.5 (CH), 138.3 (CH), 137.0 (4°), 136.6 (4°), 135.7 (4°), 135.0 (4°), 134.1 (4°), 133.7 (CH), 133.5 (4°), 133.0 (4°), 132.5 (4°), 131.4 (4°), 129.7 (4°), 128.1 (CH), 127.6 (4°), 83.91 (4°), 24.90 (CH3); HRMS (MALDI-TOF MS) m/z calcd for C44H53B4ClO8 [M・]+: 788.3801, found: 788.3804; mp: >300℃.
【0050】
合成例2:化合物(C)の合成
【化34】
アルゴンガス雰囲気下、反応容器に化合物(B)(63mg,0.08mmol,1.0当量)、KPO(170mg,0.8mmol,10当量)、Pd(dba)(7.3mg,0.008mmol,10mol%)、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン(5.6mg,0.016mmol,20mol%)を仕込んだ。トルエン(1.33mL)、イオン交換水(0.67mL)、2-ヨードビフェニル(112mg,0.4mmol,5当量)を入れ、アルゴンガス雰囲気下、70℃で24時間撹拌し、鈴木宮浦カップリング反応を行った。イオン交換水(5.0mL)を加えて、反応を停止させた後、ジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をメタノールとn-ヘキサンで洗浄することにより、黄色固体の化合物(C)(44.9mg,化合物(A)からの収率44%)を得た。
【0051】
1H NMR (600 MHz, C2D2Cl4, 25℃) δ 7.87-6.85 (br m, 41H); δ 142.69 (4°), 142.04 (4°), 141.75 (4°), 141.38 (4°), 140.83 (4°), 140.39 (4°), 137.81 (4°), 137.44 (4°), 134.92 (4°), 134.44 (4°), 134.24 (4°), 133.56 (4°), 133.13 (4°), 131.24 (CH), 131.08 (CH), 130.73 (CH), 130.50 (4°), 130.33 (CH), 130.15 (CH), 130.04 (CH), 129.83 (CH), 129.67 (CH), 129.35 (4°), 129.10 (4°), 128.52 (CH), 128.16 (CH), 128.00 (CH), 127.73 (CH), 127.38 (CH), 127.18 (CH), 126.47 (CH), 126.31 (CH), 126.07 (CH), 125.12 (CH), 124.06 (CH), 123.43 (4°), 120.19 (4°); HRMS (MALDI-TOF MS) m/z calcd for C68H41Cl [M・]+: 892.2897, found: 892.2854; mp: 180-182℃.
【0052】
合成例3:化合物(D)(塩素化WNG68)の合成
【化35】
アルゴンガス雰囲気下、ジクロロメタン(1mL)中のトリフルオロメタンスルホン酸(0.5mL)に対して、0℃で化合物(C)(45mg,0.05mmol)とDDQ(81mg,0.36mmol)のジクロロメタン(8.5mL)溶液を滴下した。さらに、0℃で20時間撹拌した。20時間後、トリエチルアミン(1mL)で反応を停止し、メタノールを加えて析出した沈殿をろ取した。得られた沈殿物をカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム)により精製し、黄褐色結晶の塩素化WNG68(化合物(D)、22mg,49%)を得た。
【0053】
1H NMR (600 MHz, C2D2Cl4, 25℃) δ 9.07 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.76 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.63-8.61 (m, 4H), 8.55 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.49 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.46 (bs, 1H), 8.40-8.38 (m, 2H), 8.29 (s, 1H), 7.92 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.88-7.82 (m, 3H), 7.72-7.67 (m, 2H), 7.52 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.27 (bs, 1H), 7.18 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.04 (bs, 1H), 6.98 (d, J = 6.6 Hz, 1H); 13C NMR (150 MHz, C2D2Cl4, 25 ℃) δ 140.02 (4°), 139.53 (4°), 139.32 (4°), 138.99 (4°), 138.76 (4°), 137.99 (4°), 137.87 (4°), 136.19 (4°), 135.86 (4°), 134.149 (4°), 133.86 (4°), 133.10 (CH), 132.59 (4°), 132.55 (4°), 132.22 (4°), 132.12 (4°), 132.07 (4°), 131.75 (CH), 131.71 (CH), 131.68 (4°), 131.54 (CH), 131.39 (4°), 131.33 (4°), 131.23 (CH), 131.00 (4°), 130.86 (4°), 130.77 (4°), 130.65 (4°), 130.49 (4°), 130.40 (4°),130.19 (4°), 130.13 (CH), 129.96. (4°), 129.53 (CH), 129.51 (4°), 129.29 (4°), 129.13 (4°), 128.86. (CH), 128.67. (4°), 128.63 (4°), 128.60 (4°), 128.56 (4°), 128.40 (CH), 128.35 (CH), 128.16 (4°), 127.86 (CH), 127.73. (CH), 127.56 (4°), 127.17 (CH), 126.97 (4°), 126.80 (4°), 126.76 (CH), 126.43 (4°), 125.32 (CH), 123.59 (CH), 122.70 (CH), 122.37 (CH), 121.74 (CH), 121.53 (CH), 121.41 (CH), 120.54 (CH), 120.19 (4°), four carbon atoms (4°×2, CH×2) could not be observed; HRMS (MALDI-TOF MS) m/z calcd for C68H27Cl [M・]+: 878.1801, found: 878.1776; mp: >300℃.
【0054】
合成例4:WNG68の合成
【化36】
アルゴンガス雰囲気下、THF(0.6mL)中の金属リチウム(2.1mg,0.30mmol)に対して、0℃でナフタレン(47mg,0.37mmol)を加えた。さらに室温で3時間撹拌した。3時間後、0℃に冷却し、化合物(D)(11mg,0.013mmol)のTHF(2.5mL)溶液を滴下した。さらに、0℃で1時間撹拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(3mL)と水(3mL)を加えて反応を停止させた後、ジクロロメタンで3回抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を留去した。残渣にメタノールを加えて、生じた沈殿をろ取した。得られた粗生成物をトルエンにより再結晶精製し、黄色固体の化合物WNG68(2.7mg,25%)を得た。
【0055】
1H NMR (600 MHz, C2D2Cl4, 25℃) δ 9.30 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.71 (s, 1H), 8.67 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.60 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 8.57 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.81 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.79 (t, J = 6.6 Hz, 1H), 7.72 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.71 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.67 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 6.6 Hz, 1H); 13C NMR (150 MHz, C2D2Cl4, 25℃) δ 139.44 (4°), 139.41 (4°), 138.82 (4°), 134.08 (4°), 134.05 (4°), 133.08 (4°), 133.26 (4°), 132.61 (4°), 132.55 (4°), 132.08 (CH), 131.75 (4°), 131.02 (4°), 130.91 (4°), 130.83 (4°), 130.80 (4°), 130.75 (CH), 130.61 (CH), 130.43 (4°), 130.01 (4°), 129.43 (4°), 129.08 (4°), 129.00 (CH), 128.60 (CH), 128.01 (CH, 2C), 127.61 (CH), 127.50 (CH), 127.43 (4°), 127.27 (4°), 126.87 (4°), 126.70 (CH), 123.29 (CH), 121.44 (CH), 121.39 (CH, 2C), one carbon (4°) could not be observed; HRMS (MALDI-TOF MS) m/z calcd for C68H28 [M・]+: 844.2191, found: 844.2191; mp: >300℃.
【0056】
試験例1:化合物(D)(塩素化WNG68)のX線結晶回折
塩素化WNG68について、結晶データの詳細および強度データ収集パラメーターの概要を表1に示す。また、X線構造回折により決定された塩素化WNG68の構造を図1~3に示す。
いずれの場合も、適切な結晶をガラスファイバー上にミネラルオイルを用いてマウントし、Rigaku PILATUS diffractometerのゴニオメーターに移した。黒
鉛単色化MoKα線を使用した。構造は、(SIR-97)(J. Appl. Crystallogr. 32, 115-119.)を用いた直接法によって決定し、Yadokari-XGプログラム(Software for Crystal Structure Analyses, 2001)を用いてF(SHELXL-2014/3)(Acta Crystallogr., Sect. A 64, 112-122.)に対するフルマトリックス最小二乗法により精密化した。強度はローレンツ及び分極効果について補正した。非水素原子は異方性的に精密化した。AFIX instructionsを使用して水素原子を配置した。
【表1】
【0057】
試験例2:化合物(D)(塩素化WNG68)の吸収および蛍光スペクトル測定
全ての測定には、1cm四方の石英セル内の脱気スペクトルグレードのジクロロメタン中の希釈溶液を使用した。UV-vis吸収スペクトルを、0.5nmの分解能を有するShimadzu UV-3510 spectrometerで記録した。蛍光スペクトルは、F-4500 Hitachi spectrometerまたはShimadzu RF-6000を用いて0.4nmの分解能で測定した。絶対蛍光量子収量(Φ)は、較正積分球システム(207-21460-41)を備えたShimadzu RF-6000を用いて測定した。
【0058】
得られたWNG68は、蛍光を示し、WNG80より優れた有機溶媒への溶解性を示した。
図1
図2
図3
図4