(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】乳酸発酵竹粉堆肥化物の製造方法及び農園芸用育苗培土・用土の製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 17/10 20200101AFI20230815BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20230815BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20230815BHJP
C09K 101/00 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C05F17/10
C05F11/00
C09K17/32 H
C09K101:00
(21)【出願番号】P 2021554872
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039523
(87)【国際公開番号】W WO2021090684
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019200842
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517081769
【氏名又は名称】東京農大発株式会社全国土の会
(73)【特許権者】
【識別番号】523057356
【氏名又は名称】株式会社サンチョ
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】後藤 逸男
(72)【発明者】
【氏名】玉井 乃
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116996(JP,A)
【文献】特開2009-24141(JP,A)
【文献】特開2008-81604(JP,A)
【文献】特開2007-9011(JP,A)
【文献】特開2001-40352(JP,A)
【文献】特開2010-029110(JP,A)
【文献】特開2014-064564(JP,A)
【文献】特開2017-006032(JP,A)
【文献】特開2017-176027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/00-17/52
C05B1/00-21/00
C05C1/00-13/00
C05D1/00-11/00
C05F1/00-17/993
C05G1/00-5/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸発酵竹粉堆肥化物が、生竹を
微粉砕した竹粉を気密性及び遮光性を有する発酵袋に投入し、所定期間静置して乳酸発酵させる乳酸発酵工程と、該乳酸発酵工程によって得られた乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合する配合工程と、該配合工程によって配合された前記乳酸発酵竹粉と前記竹炭粉とを
遮光性を有する発酵袋に投入し、数週間静置して堆肥化する堆肥化工程と
によって製造されることを特徴とする
乳酸発酵竹粉堆肥化物の製造方法。
【請求項2】
前記配合工程において更に竹葉粉を配合することを特徴とする請求項
1に記載の
乳酸発酵竹粉堆肥化物の製造方法。
【請求項3】
生竹を微粉砕した竹粉を気密性及び遮光性を有する発酵袋に投入し、所定期間静置して乳酸発酵させる乳酸発酵工程と、該乳酸発酵工程によって得られた乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合する配合工程と、該配合工程によって配合された前記乳酸発酵竹粉と前記竹炭粉とを遮光性を有する発酵袋に投入し、数週間静置して堆肥化して乳酸発酵竹粉堆肥化物を得る堆肥化工程と、該乳酸発酵竹粉堆肥化物に、ゼオライト、バーミキュライト及びパーライトの少なくとも1種の土壌改良資材と肥料とを混合する混合化工程とを備えていることを特徴とする農園芸用育苗培土・用土の製造方法。
【請求項4】
前記配合工程において更に竹葉粉を配合することを特徴とする請求項3に記載の農園芸用育苗培土・用土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸発酵竹粉堆肥化物の製造方法及び農園芸用育苗培土又は用土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から「苗半作」と言われるように、苗の出来で作柄の半分が決まる。このため、野菜や花卉等の農園芸植物の栽培には育苗が重要な作業の1つである。
【0003】
今から50年位前までは、育苗のための培土(床土)は農家自らが手間暇掛けて作ることが一般的であったが、その後は「農園芸用育苗培土」と称される資材が普及するようになった。この農園芸用育苗培土は、当初は山土等を原料とし、それに肥料を添加して造粒して得られる「造粒培土」が主流であったが、これは重いことが最大の欠点であった。
【0004】
そこで、昭和50年代以降は、ピートモス、ゼオライト、バーミキュライト、パーライトなどの土壌改良資材に肥料を混合した軽量な「混合培土」が普及するようになった。この混合培土に含まれる土壌改良資材の中で最も多くの容量を占めるものがピートモスである。ここで、「ピートモス」とは、ミズゴケ等の蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ等の植物が湿地に堆積して腐植化した資材であって、「泥炭」とも呼ばれている。そして、この泥炭を採掘し、脱水、粉砕、選別した資材が育苗培土や農園芸用土の原料として使用されている。
【0005】
ところで、現在、育苗培土原料等として使用されているピートモスの殆んどが日本国外から輸入されている。当初はカナダからの輸入が中心であったが、資源の枯渇や環境破壊などが懸念されるようになり、最近では北ヨーロッパからの輸入が増加している。
【0006】
石油や石炭などと同様の有限天然資源であるピートモスの代替資源として、再生可能な未利用資源であるココピートが一部で使われるようになった。ここで、「ココピート」とは、ココナッツ果実の殻(ヤシガラ)の繊維と粉末を堆積・発酵させて得られる資材である。このココピートは、再生可能な資源ではあるが、日本では入手できないために全量をスリランカ等からの輸入に依存している。
【0007】
一方、日本国内の里山や山林には竹林が拡がり、この竹林が周囲の植生や動物の生息に悪影響を及ぼしたり、森林の景観を損ねたりするために大きな社会問題になっている。
【0008】
そこで、竹を伐採して燃料化したり、炭化、竹粉等に加工して資材を農用地の土壌改良資材として利用するなどの有効活用が進められている。ここで、農園芸用育苗培土の原料としてピートモスが使用されている主な理由は、このピートモスが保水性に優れているためである。
【0009】
モウソウタケやマダケを伐採して粉砕した竹粉を畑に施用すると、ピートモスと同様に保水性が高まり、農作物の生育環境の改善が期待できる。但し、竹粉の炭素率が160程度と高いため、土壌に竹粉を施用すると、窒素飢餓を来たす可能性がある。また、粉砕した竹粉を放置すると、乳酸発酵によってpHが4程度にまで低下するため、土壌との混和によって土壌が酸性化し、植物の生育に支障を来たしてしまう。したがって、竹粉をそのまま農園芸用育苗培土の原料として使用することができない。
【0010】
そこで、特許文献1には、乳酸発酵竹粉にパパイン等の植物酵素と竹炭粉とを配合して混合することによって、pHの中性化を図ることができる乳酸発酵竹粉を製造するための方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1には、農園芸分野での具体的な用途に関する開示はなされていない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、竹粉を農園芸用育苗培土の主原料であるピートモスの代替資材として利用すること、及びその製造方法を提供することにある。この培土は、施設栽培や鉢栽培などで用いる用土や植物に適する原料土に肥料などを調合したものを含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明に係る農園芸用育苗培土・用土は、竹粉を乳酸発酵させた乳酸発酵竹粉を堆肥化して成る乳酸発酵竹粉堆肥化物を含有している。
【0015】
本発明に係る乳酸発酵竹粉堆肥化物の製造方法は、乳酸発酵竹粉堆肥化物が、生竹を微粉砕した竹粉を気密性及び遮光性を有する発酵袋に投入し、所定期間静置して乳酸発酵させる乳酸発酵工程と、乳酸発酵工程によって得られた乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合する配合工程と、配合工程によって配合された乳酸発酵竹粉と竹炭粉とを遮光性を有する発酵袋に投入し、数週間静置して堆肥化する堆肥化工程とによって製造される。また、農園芸用育苗培土・用土の製造方法は、生竹を微粉砕した竹粉を気密性及び遮光性を有する発酵袋に投入し、所定期間静置して乳酸発酵させる乳酸発酵工程と、乳酸発酵工程によって得られた乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合する配合工程と、配合工程によって配合された乳酸発酵竹粉と竹炭粉とを遮光性を有する発酵袋に投入し、数週間静置して堆肥化して乳酸発酵竹粉堆肥化物を得る堆肥化工程と、該乳酸発酵竹粉堆肥化物に、ゼオライト、バーミキュライト及びパーライトの少なくとも1種の土壌改良資材と肥料とを混合する混合化工程とを備えている。堆肥化工程によって得られた乳酸発酵竹粉堆肥化物をピートモスの代替原料として、農園芸利用する。混合化工程によって、植物生育に必要な肥料を混合して得られた農園芸用育苗培土・用土は、野菜や花卉の育苗培土として、あるいは、いちごの高設栽培用土や野菜・花卉の隔離ベッド用土として利用する。
【0016】
本発明に係る製造方法によって製造される農園芸用育苗培土によれば、これに含まれる乳酸発酵竹粉堆肥化物をピートモスの代替資材として利用することができ、竹炭粉によって農園芸用培土の中性化が図られる。従って、このような農園芸用育苗培土を農園芸植物の育苗資材として利用すれば、厄介ものの竹を有効利用してピートモスの代替資源とすることができる。その結果、有限天然資源であるピートモスの採掘や遠距離輸送に伴う二酸化炭素発生量の削減など環境負荷を小さく抑えることもできる。
【0017】
ここで、配合工程において更に竹葉粉を配合しても良い。
【0018】
この構成によれば、竹葉粉が有する強い殺菌性と抗菌性によって農園芸用育苗培土・用土の殺菌性と抗菌性が高められる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ピートモスの代替資材として利用して農園芸植物の発根性の向上を図るとともに、竹を有効利用して環境負荷を小さく抑えることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る農園芸用育苗培土・用土の製造方法をその工程順に示すブロック図である。
【
図2】市販培土と本発明に係る農園芸用育苗培土・用土とによって育苗したハクサイ根部を比較した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る農園芸用育苗培土・用土の製造方法をその工程順に示すブロック図である。本発明に係る農園芸用育苗培土・用土の製造方法は、次の1)から5)に示す工程P1~P5を備えている。
1)生竹を微粉化して竹粉とする微粉化工程P1と、
2)微粉化工程P1によって微粉化された竹粉を乳酸発酵させる乳酸発酵工程P2と、
3)乳酸発酵工程P2によって得られた乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合する配合工程P3と、
4)配合工程P3によって配合された乳酸発酵竹粉と竹炭粉とを堆肥化する堆肥化工程P4と、
5)堆肥化工程P4によって得られた乳酸発酵竹粉堆肥化物にピートモス・ゼオライト・鹿沼土・バーミキュライト・パーライトなどの土壌改良資材と肥料を混合して農園芸用培土・用土を製造する混合化工程P5と、
を備えている。
【0023】
以下、上述した各工程P1~P5について詳細に説明する。
【0024】
1)微粉化工程P1:
微粉化工程P1においては、2~3年物のモウソウタケを使用し、この生竹を切削することによって所定の大きさに微粉化して竹粉を得る。この生竹の微粉化には、生竹の端面に当接して回転する回転刃を備える竹粉化装置などが使用されるが、この竹粉化装置においては、生竹が約50μm程度の厚さで切削されてハニカム状の竹粉が生成される。なお、竹粉の粒径は、約50~600μm程度であっても良く、竹粉としては、生竹を粉砕して得られるものであってもよい。
【0025】
2)乳酸発酵工程P2:
乳酸発酵工程P2においては、微粉化工程P1によって得られた竹粉を発酵容器、例えば、透明ゴム袋等の発酵袋に所定量ずつ詰め、発酵袋の内部の空気を抜いた後に該発酵袋の口を封じる。ここで、発酵袋に密封された竹粉は、適度な水分を含んでおり、この竹粉が密封された発酵袋は、発酵室に搬入される。
【0026】
発酵室においては、室温が25℃程度に保たれ、発酵袋が遮光性シートで覆われた状態で7~10日程度静置される。すると、その間に発酵袋内の竹粉が乳酸発酵して乳酸発酵竹粉が得られる。
【0027】
3)配合工程P3:
配合工程P3においては、乳酸発酵工程P2によって得られた乳酸発酵竹粉を攪拌機に投入し、この乳酸発酵竹粉に竹炭粉を配合して両者を攪拌する。乳酸発酵竹粉は、強い酸性を示すとともに、特有の強い臭気を発する。したがって、この配合工程P3において、アルカリ性の竹炭粉を乳酸発酵竹粉に配合することによって、その中和作用によって乳酸発酵竹粉のpHを4.0~7.0程度と中性に近づけることができる。また、竹炭粉の脱臭作用によって、乳酸発酵竹粉特有の臭気を取り除くことができる。なお、乳酸発酵竹粉に配合する竹炭粉の量は、乳酸発酵竹粉10kgに対して200g程度が適当である。
【0028】
なお、この配合工程P3において、更に竹葉粉を配合して乳酸発酵竹粉と竹炭粉と共に攪拌するようにしてもよい。ここで、竹葉粉とは、竹枝を含む竹葉を粉砕して得られるものであって、この竹葉粉を例えば乳酸発酵竹粉と同量だけ配合することによって、竹葉粉が有する強い殺菌作用と抗菌作用によって最終製品としての農園芸用育苗培土の殺菌性と抗菌性を高めることができる。
【0029】
4)堆肥化工程:
堆肥化工程P4においては、配合工程P3において、竹炭粉或いは竹炭粉と竹葉粉が配合された乳酸発酵竹粉を高い気密性と遮光性を有する発酵袋に再度投入し、発酵室内で乳酸発酵時と同様の条件で数週間程度静置してこれらを堆肥化させる。このようにして得られた乳酸発酵竹粉堆肥化物は、乳酸発酵竹粉特有の臭気も少なくなり、弱酸性から中性を示す。
【0030】
5)混合化工程:
培土原料の混合化工程P5においては、堆肥化工程P4によって得られる乳酸発酵竹粉堆肥化物にピートモス・ゼオライト・鹿沼土・バーミキュライト・パーライトなどの土壌改良資材と肥料を混合して農園芸用培土・用土を製造することによって、最終製品である農園芸用育苗培土を得る。なお、乳酸発酵竹粉堆肥化物に混合する土壌改良資材の種類は、必ずしも全ての種類を混合する必要はなく、育苗あるいは栽培する植物の種類や使用する季節・地域などに応じて、単独あるいは複数とすることができる。また、複数の土壌改良資材を混合する場合の混合割合も適宜変えることができる。
【0031】
ここで、以上説明した一連の工程P1~P5によって製造される農園芸用育苗培土の実施例について説明する。
【実施例1】
【0032】
本実施例1では、本発明に係る農園芸用育苗培土に含まれる乳酸発酵竹粉堆肥化物(竹ピート)と農園芸用育苗培土原料として大量に使用されているラトビア産ピートモスに対して化学分析を行った。その結果であるpHと電気伝導率及び容積重を表1に示す。
【表1】
【0033】
同表より分かるように、ピートモスについては、pHが4.3、電気伝導率が0.02mS/cm、容積重が16.7g/100ccであった。これに対して、乳酸発酵竹粉堆肥化物については、pHが6.6、電気伝導率が0.79mS/cm、容積重が20.2g/100ccであった。
【0034】
ピートモスは、pHは4.3と酸性を示すため、酸性土壌を好むブルーベリーなどの栽培において土壌を酸性化させる資材としてよく使われている。しかし、農園芸用育苗培土や用土においてはpH6.5前後が好ましいため、苦土石灰などの石灰資材を混和してpHを調整することが一般的である。したがって、乳酸発酵竹粉堆肥化物は、pH6.6を示すため、農園芸用育苗培土の原料として好ましい。
【0035】
容積重に関しては、乳酸発酵竹粉堆肥化物(竹ピート)もピートモスも共に20g/100cc前後の値を示し、軽量性に関しては両者ほぼ同じであった。なお、電気伝導率に関しては、乳酸発酵竹粉堆肥化物とピートモスの間に著しい相違が認められたが、この相違は、乳酸発酵竹粉を堆肥化する際に分解促進材として添加した米ぬかの分解に伴って生成された無機態窒素(硝酸態窒素)によるものである。この電気伝導率の相違は、後述の実施例2において説明するように、植物生育には支障を来たさない。このため、乳酸発酵竹粉堆肥化物をピートモスの代替資材として利用することができる。
【実施例2】
【0036】
本実施例2においては、本発明に係る農園芸用育苗培土の発芽試験を行った。すなわち、実施例1で説明したように、乳酸発酵竹粉堆肥化物の電気伝導率が、ピートモスのそれよりも著しく高い値を示した。このため、高電気伝導率が植物の発芽に及ぼす影響はコマツナを用いた発芽実験によって調べることにした。
【0037】
発芽実験においては、シャーレに約1cmの厚さとなるように乳酸発酵竹粉堆肥化物を入れ、これに純水を加えて乳酸発酵竹粉堆肥化物が純水に浸るようにした。対照として、シャーレに紙を敷き、そこに紙が浸る程度まで純水を加えた。そして、両シャーレにコマツナの種子を10粒播種した。
【0038】
その結果、播種3日目の発芽率は、両区共に100%であった。この場合の胚軸長と子葉は、乳酸発酵竹粉堆肥化物区の方が優っていた。
【0039】
ピートモスは、pH4.3の酸性資材であるため、これについてのコマツナの発芽試験は行わなかったが、乳酸発酵竹粉堆肥化物は、発芽が懸念される程度の高電気伝導率であっても、発芽には支障がないことが確認された。したがって、乳酸発酵竹粉堆肥化物は、ピートモスの代替資材として利用することができる。
【実施例3】
【0040】
本実施例3においては、農園芸用育苗培土の原料であるピートモスの半量と全量を乳酸発酵竹粉堆肥化物に代替した育苗培土を試作し、ゴーヤの育苗試験を行った。
【0041】
ピートモス:鹿沼土:ゼオライトを容量比で、65:30:5の割合で混合し、育苗に必要な肥料とpH調整のための石灰資材を添加した。この培土を対照区として、ピートモスの半量と全量を乳酸発酵竹粉堆肥化物に代替した半量区と全量区を設けた。そして、この3種類の育苗培土を直径9cmのビニールポットに充填し、これにゴーヤの種子を播種した。
【0042】
2週間後のゴーヤ苗の平均草丈と最大葉長は、何れも半量区と全量区が対照区を上回り、乳酸発酵竹粉堆肥化物は、ピートモスの代替資材になり得ることが分かった。
【実施例4】
【0043】
[ハクサイの育苗試験]
本実施例4においては、ピートモス:鹿沼土:ゼオライトを容量比で、65:30:5 の割合で混合し、育苗に必要な肥料とpH調整のための石灰資材を添加した市販園芸用育苗培土(市販培土)と乳酸発酵竹粉堆肥化物:ピートモス: 鹿沼土:ゼオライトを容量比で、52:13:30:5 の割合で混合し、育苗に必要な肥料を添加した発明培土(以下、本件培土)の2種類を用意した。本件培土へのピートモス添加は培土のpHを市販培土と同等とするためである。これら両培土を128穴のプラグトレーに充填し、ハクサイ種子を播種した。20日後の育苗試験結果を表2に示す。なお、各測定値は10株平均の値である。
【表2】
【0044】
同表より分かるように、草丈は本件培土がやや優り、葉長・葉幅・葉色は同等であったが、地上部及び根部重は本件培土が優った。特に、本件培土の根部生育が良好で、根部重・根長共に本件培土区で優り、地上部重と根部重の割合(T/R)も小さく、根部の生育が良好であった。
図2には、市販培土と本件培土とによりハクサイ根部の育苗結果を写真で示す。
【0045】
以上の説明で明らかなように、本発明方法によって得られる農園芸用育苗培土によれば、これに含まれる乳酸発酵竹粉堆肥化物をピートモスの代替資材として利用して農園芸植物の発根性の向上を図るとともに、竹を有効利用して環境負荷を小さく抑えることができるという効果が得られる。
【0046】
本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
P1 微粉化工程
P2 乳酸発酵工程
P3 配合工程
P4 堆肥化工程
P5 混合化工程