(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】経口用組成物及び皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230815BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230815BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20230815BHJP
A61K 31/737 20060101ALI20230815BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230815BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230815BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230815BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230815BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230815BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20230815BHJP
A61K 35/742 20150101ALN20230815BHJP
A61K 35/744 20150101ALN20230815BHJP
A61K 36/062 20060101ALN20230815BHJP
A61K 36/064 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/99
A61K31/728
A61K31/737
A61P17/00
A61P17/16
A61P29/00
A61P43/00 107
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q19/00
A61Q19/10
A23L33/10
A61K35/742
A61K35/744
A61K36/062
A61K36/064
(21)【出願番号】P 2018147993
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018041005
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162021
【氏名又は名称】共栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂
(72)【発明者】
【氏名】澤木 茂豊
(72)【発明者】
【氏名】愛水 哲史
(72)【発明者】
【氏名】上松 礼奈
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221756(JP,A)
【文献】特開2009-297007(JP,A)
【文献】特開2006-271351(JP,A)
【文献】特開2013-129638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/99
A61K 31/728
A61K 31/737
A61P 17/00
A61P 17/16
A61P 29/00
A61P 43/00
A61Q 5/02
A61Q 5/12
A61Q 19/00
A61Q 19/10
A23L 33/10
A61K 35/742
A61K 35/744
A61K 36/062
A61K 36/064
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸の乳酸菌
(Lactococcus lactis)又は乳酸菌(Lactobacillus plantarum)による発酵
分解物を含む皮膚外用組成物。
【請求項2】
ヒアルロン酸の乳酸菌
(Lactococcus lactis)又は乳酸菌(Lactobacillus plantarum)による発酵
分解物を含む経口用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用組成物(飲食品等)又は皮膚外用組成物に配合可能な有効成分である多糖に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖は、タンパク質、脂質、核酸とともに生体を構成している重要な高分子物質であり、様々な動植物に含まれている。この多糖は、保湿、保水機能等を有することから、経口用又は外用の有効成分として、飲食品や皮膚外用剤に用いられてきた。
【0003】
しかし、多糖は、生体内で、又は皮膚において十分に有効性を発揮することができないという課題があり、多糖を酵素により分解したり、他の有効成分と化学結合させたりする等の処理をして利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、本発明者らは、多糖の中でもムコ多糖の微生物発酵物がすぐれた生理活性を有することを見出して、本発明を完成させるに至った。従来、ムコ多糖を微生物又は微生物由来の酵素で処理して低分子化することは、例えば、特許文献1~6に開示された技術であるが、特定の微生物(乳酸菌、酵母、麹菌又は枯草菌発酵物)の発酵物がすぐれた生理活性を有することについて知られていなかった。
【0005】
【文献】特開昭63-044883号公報
【文献】特開平01-272511号公報
【文献】特開平03-247296号公報
【文献】特表2002-533376号公報
【文献】特開2009-297007号公報
【文献】特開2015-040173号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、ムコ多糖の乳酸菌、酵母、麹菌又は枯草菌発酵物である。
また、本発明は、上記発酵物を含む皮膚外用組成物である。
また、本発明は、上記発酵物を含む経口用組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有効成分であるムコ多糖の発酵物が、格段にすぐれた炎症の予防、改善、色素沈着(シミ、ソバカス、肝斑等)予防、改善及び表皮細胞賦活効果、並びにバリア機能の改善及び保湿効果を有し、その効果により、経口用又は外用の組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明において、ムコ多糖とは、糖のヒドロキシ基がアミノ基で置換された構造をもつアミノ糖であって、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン及びそれらの塩若しくは誘導体が挙げられる。
【0009】
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖の塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの無機金属塩類、リジン塩、アルギニン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩等の有機塩類が好適な塩として挙げられ、特に汎用的であるアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。本発明において、特に、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖の限定はなく、市販品を使用することができる。例えば、ヒアルロン酸の場合は、分子量5万~220万のものが市販されており、本発明においてもそれらを使用することができる。
【0010】
ムコ多糖(塩又は誘導体も含む)は微生物による発酵を行う前、又は発酵処理と並行して、酸、アルカリ又は酵素により分解処理を行うことがより好ましい。酸分解処理においては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸及びその他有機酸等を用いることが可能であり、アルカリ分解処理においては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び炭酸ナトリウム等のアルカリを用いて行うことが可能である。また、酵素分解処理としては、例えば、ヒアルロニダーゼ、ヒアルロナンリアーゼ、コンドロイチナーゼ、へパラナーゼ等の酵素を使用することが可能である。
【0011】
また、ムコ多糖(塩又は誘導体も含む)の発酵に用いられる微生物としては、従来、例えば、アースロバクター属、ストレプトコッカス属、ストレプトマイセス属、又はプロピオニバクテリウム属の微生物が使用されていた一方、本発明においては、生体安全性、有効性及び安定性を考慮して、以下の乳酸菌、酵母、麹菌又は枯草菌を使用することが好ましい。
【0012】
乳酸菌としては、例えば、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)等のラクトバシルス(Lactobacillus)属の乳酸菌;ラクトコッカス プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス ラフィノラクティス(Lactococcus rafinolactis)、ラクトコッカス ラクテス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属の乳酸菌;ロイコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis)、ロイコノストック シトレウム(Leuconostoc citreum)等のロイコノストック(Leuconostoc)属の乳酸菌が挙げられる。
【0013】
酵母としては、例えば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス アワモリ(Saccharomyces awamori)、サッカロミセス チェバリエリ(Saccharomyces chevalieri)、サッカロミセス カールスバージェンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス バヨナス(Saccharomyces bayonus)等のサッカロミセス属の酵母、ガラクトミセス(Galactomyces)属の酵母;シゾサッカロミセス ポンべ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロミセスの酵母;トルラスポラ デルブルエキ(Torulaspora delbruekii)、トルラスポラ ファーメンタチ(Torulaspora fermentati)、トルラスポラ ロゼイ(Torulaspora rosei)等のトルラスポラ属の酵母、ジゴサッカロミセス ローキシ(Zygosaccharomyces rouxii)、ジゴサッカロミセス ソーヤ(Zygosacchar omyces soya)、ジゴサッカロミセス サケ(Zygosaccharomyces sake)、ジゴサッカロミセス ミソ(Zygosaccharomyces miso)、ジゴサッカロミセス ラクティス(Zygosaccharomyces lactis)等のジゴサッカロミセス属の酵母、カンディダ ベルサチリス(Candida versatilis)、カンディダ エチェリシイ(Candida etchellsii)、カンディダ ケフィール(Candida kefyr)、カンディダ サケ(Candida sake)、カンディダ スコッティ(Candida scottii)等のカンディダ属の酵母、オーレオバシディウムプルランス(Aureobasidium Pullulans)、オーレオバシディウム マンソニー(Aureobasidium mansonii)、オーレオバシディウム マイクロスティクタム(Aureobasideium microstictum)等のオーレオバシディウム属の酵母等が挙げられる。また、本発明に係る酵母としては、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、植物の花(バラ、ユリ、サクラ等)由来の酵母、海由来の酵母の何れであっても良い。
【0014】
また、麹菌としては、例えば、アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス ポリオキソジェネス(Aspergillus polyoxogenes)、アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)等の黄麹菌、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス カワウチ(Aspergillus kawauchii)、アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usami)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等の黒麹菌、モナスカス アンカ(Monascus anka)、モナスカス ピロサス(Monascus pilosus)等の紅麹菌等が挙げられる。
【0015】
また、枯草菌としては、例えば、バシルス ナットー[Bacillus subtilis(natto)]、バシルス サブチルス(Bacillus subtilis)、バシルス サーキュランス(Bacillus circulans)等が挙げられる。
【0016】
それら微生物の培養に用いられる培地は、微生物が資化することができる炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、微生物の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでも用いることができる。
【0017】
培地中の炭素源の具体例としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、マンニトール、イノシトール、スターチ等の炭水化物を挙げることができる。窒素源の具体例としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、乳酸アンモニウム等の各種無機アンモニウム塩や有機アンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、大豆粉、綿実かす等を挙げることができる。
【0018】
無機塩類の具体例としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム等を挙げることができる。また、必要に応じて、チアミン、ビオチン等のビタミン類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、アデニン、グアニン等の核酸関連物質を添加してもよい。
【0019】
微生物によるムコ多糖(塩又は誘導体も含む)の発酵処理としては、微生物の培養菌体そのままを用いて、ムコ多糖又はその塩類が含有している水溶液に接触させる方法が挙げられる。具体的には、例えば、培養菌体を滅菌水等で107~108個/mL程度に懸濁し、その懸濁液を、ムコ多糖(塩又は誘導体も含む)を含有した水溶液の重量に対して、一定量の割合で接種する方法等が挙げられる。
【0020】
微生物の培養方法としては、振盪培養、通気攪拌培養、平板静置培養等のいずれの方法を用いても良い。培養温度は使用する微生物の最適生育温度とすることが好ましく、一般的には、20~55℃の温度範囲で行うことが好ましい。培養時間は、20~55℃で培養する場合、一般的には18時間~7日間程度とすることが好ましい。また、培養中のpHとしては、pH4.0~9.0とすることができるが、中性付近に保持することが好ましい。pH調整は、無機酸あるいは有機酸、アルカリ溶液、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行うことができる。
【0021】
処理生成物の滅菌方法としては、加熱滅菌、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌、紫外線殺菌等が好ましく、加熱殺菌で行うことがより好ましい。
【0022】
本発明に係る発酵物は、皮膚外用組成物(化粧料、医薬部外品、外用医薬品)、美容用又は健康増進用の経口用組成物に配合することができる。皮膚外用組成物としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、口紅、ファンデーション、リクイドファンデーション、メイクアッププレスパウダー、ほほ紅、白粉、洗顔料、ボディシャンプー、頭皮,頭髪用シャンプー、頭髪用コンディショナー、育毛,養毛用のシャンプー又はトニック、石けん等の清浄用化粧料、さらには浴剤等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、経口用組成物としては、美容飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク、ニアウォーター、ビタミン飲料、ミネラル飲料、アルコール飲料等の飲料;各種スープ類(粉末スープも含む)、乳製品、ゼリー、キャンディ、錠菓、ガム等の食品;錠剤、液状、顆粒状又はゼリー状の健康食品・飲料等に配合することができるが、本発明はこれらに限るものではなく、経口摂取できる組成物(飲食品、医薬部外品等)に配合することができる
【0023】
本発明に係る発酵物の配合量は、例えば、皮膚外用組成物(化粧料又は医薬部外品等)であれば、固形分として、基礎化粧料の場合は、一般に0.001~10.0重量%(固形分重量%、以下同じ)、メイクアップ化粧料の場合は、一般に0.001~5.0重量%、清浄用化粧料の場合は、一般に0.01~5.0重量%、また、浴剤の場合は、一般に0.001~10.0重量%の範囲である。例えば、シャンプー等の洗髪用化粧料であれば、一般的には0.0001~10.0重量%である。また、リンスやコンディショナーであれば、一般的には0.00001~3.0重量%である。
【0024】
本発明に係る発酵物を皮膚外用組成物又は経口用組成物に利用する場合、それらに配合可能な成分、例えば、油性成分、界面活性剤(合成系、天然物系)、乳化剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、消泡剤、粉体成分、抗酸化剤、キレート剤、pH調整剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。また、本発明に係る発酵物の有効性、特長を損なわない限り、他の生理活性成分と組み合わせて配合することも何ら差し支えない。
【0025】
ここで、油性成分としては、例えば、ハス油、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米糠油、米胚芽油、ヤシ油、カミツレ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、ベルガモット油、ローズヒップ油、アラビアコーヒーノキ種子油、ランベンダー油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、バニラ油、植物由来スクワラン等の植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油等の動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン等の炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エイコセン酸等の脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、イソオクタン酸セチル、2-エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)等の合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0026】
また、界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等のカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等の両性界面活性剤等を使用することができる。
【0027】
また、乳化剤又は乳化助剤としては、酵素処理ステビア等のステビア誘導体、サポニン又はその誘導体、カゼイン又はその塩(ナトリウム等)、糖と蛋白質の複合体、ショ糖又はそのエステル、ラクトース、大豆由来の水溶性多糖、大豆由来蛋白質と多糖の複合体、ラノリン又はその誘導体、コレステロール、ステビア誘導体(ステビア酵素発酵物等)、ケイ酸塩(アルミニウム、マグネシウム等)、炭酸塩(カルシウム、ナトリウム等)、サポニン及びその誘導体、レシチン及びその誘導体(水素添加レシチン等)、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀等)等を配合することもできる。
【0028】
また、保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液等があり、さらにトレハロース等の糖類、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体等)、チューベロース多糖体、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、加水分解コンキオリン、加水分解シルク、スフィンゴモナス培養物、スフィンゴ糖脂質、セラミド、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、シラン根(白及)抽出物、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0029】
また、増粘剤としては、例えば、アルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻又は紅藻由来成分;シラン根(白及)抽出物;ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体、アルカリゲネス産生多糖体等の多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、ローストビーンガム、グアーガム等のガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、マスチック樹脂、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体;ポリグルタミン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0030】
また、防腐・殺菌剤としては、例えば、尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、ポリリン酸、プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、大根発酵液、サトウキビ等の植物由来のエタノール又は1,3-ブチレングリコール等がある。
【0031】
また、粉体成分としては、例えば、セリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビ等)のパウダー、豆類(大豆、小豆等)のパウダー等がある。
【0032】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-ターシャリーブチル-4-メトキシベンゾイルメタン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0033】
また、消泡剤とは、例えば、エタノール、イソプロパノール、ジシロキサン、ジメチルポリシクロサン、ジメチコンケイ酸シリカ、トリシロキサン、シリル化シリカ、ジメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、DPGイソボルニルエーテル等がある。
【0034】
また、抗酸化剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ムラサキシキブの抽出物、シラン根の抽出物、シャクヤク抽出物、ビタミンE及びその誘導体(例えば、ビタミンEニコチネート、ビタミンEリノレート等)等がある。
【0035】
また、キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、エデト酸又はその塩類、グルコン酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム等がある。
【0036】
また、pH調整剤としては、例えば、クエン酸又はその塩類、乳酸又はその塩類、グリコール酸、コハク酸、塩酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がある。
【0037】
また、美白剤としては、t-シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,5'-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール)、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)が挙げられ、これらを単独で配合しても、複数を組み合わせて配合しても良い。
【0038】
また、上記のコウジ酸誘導体としては、例えばコウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸ジブチレート等のコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシド等のコウジ酸糖誘導体等が、アスコルビン酸誘導体としては、例えばL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルナトリウム、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸エステル塩類、L-アスコルビン酸-2-グルコシド、L-アスコルビン酸-5-グルコシド、アスコルビルトコフェリルマレイン酸、アスコルビルトコフェリルリン酸K、ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸、カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸糖誘導体、それらアスコルビン酸糖誘導体の6位アシル化物(アシル基は、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基等)、L-アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸テトララウリン酸エステル等のL-アスコルビン酸テトラ脂肪酸エステル類、3-O-エチルアスコルビン酸、L-アスコルビン酸-2-リン酸-6-O-パルミテートナトリウム、グリセリルアスコルビン酸又はそのアシル化誘導体、ビスグリセリルアスコルビン酸等のアスコルビン酸グルセリン誘導体、L-アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、L-アスコルビン酸のヒアルロン酸誘導体、3-O-Dラクトース-L-アスコルビン酸、イソステアリルアスコルビルリン酸塩等が、ハイドロキノン誘導体としては、アルブチン(ハイドロキノン-β-D-グルコピラノシド)、α-アルブチン(ハイドロキノン-α-D-グルコピラノシド)等が、トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸エステル(例えば、トラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ヘキサデシルエステル、トラネキサム酸セチルエステル又はその塩)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トラネキサム酸メチルアミド)等が挙げられ、レゾルシノール誘導体としては、例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、4-イソアミルレゾルシノール等が、2,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体としては、例えば2,5-ジアセトキシ安息香酸、2-アセトキシ-5-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-5-プロピオニルオキシ安息香酸等が、ニコチン酸誘導体としては、例えばニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等が、α-ヒドロキシ酸としては、例えば乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、α-ヒドロキシオクタン酸等がある。
【0039】
また、毛髪化粧料において、育毛、養毛効果が期待できる成分としては、ミノキシジル、シプロテロンアセテート、ペンタデカン酸グリセリド、6-ベンジルアミノプリン(サイトプリン)、アデノシン、トランス-3,4'-ジメチル3-ヒドロキシフラバノン(t-フラバノン)、センブリエキス、ヒノキチオール、感光素、パントテン酸及びその誘導体、マイマイ花エキス、ゲンチアナエキス、カミツレエキス、ビタミンE及びその誘導体、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸アミド等)、塩化カルプロニウム、女性ホルモン類(エチニルエストラジオール、エストロン等)、イチョウエキス、チョウジエキス、アマモエキス、黒大豆エキス、サリチル酸、グリチルリチン酸カリウム(カンゾウエキス)、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、l-メントール、塩酸ピリドキシン(ビタミンE6)、チオキソロン、オランダカラシエキス、カンファー、サリチル酸、レゾルシン、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、ミツイシコンブ、エルカ酸(cis-13-ドコセン酸)、ゴンドイン酸(cis-11-エイコセン酸)等の高級モノエン酸、さらにはアミノ酸類、ビタミン類、フコイダンなどが挙げられる。
【0040】
また、生理活性成分としては、例えば、胎盤抽出液、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、シソ抽出物、米糠抽出物又はその加水分解物、白芥子抽出物又はその加水分解物、白芥子の発酵物、シャクヤク抽出物又はその加水分解物、乳酸菌醗酵米、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子抽出物又はその加水分解物、ハス種子発酵物、ハトムギ加水分解物、ハトムギ種子発酵物、ローヤルゼリー発酵物、酒粕抽出物又はそれに含まれるセラミド、酒粕発酵物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、カミツレ抽出物等が挙げられる。また、サンゴ草抽出物、イネの葉の抽出物又はその加水分解物、ナス(ハス、長ナス、賀茂ナス、米ナス等)抽出物又はその加水分解物、アンズ果実の抽出物、カタメンキリンサイ等の海藻の抽出物、アマモ等の海産顕花植物の抽出物、豆乳発酵物、クラゲ水、米抽出物又はその加水分解物、米醗酵エキス、発芽米抽出物又はその加水分解物、発芽米発酵物、黒豆抽出物又はその加水分解物、黒糖抽出物又はその発酵物、ダマスクバラの花の抽出物、イランイラン花抽出物、タケノコの皮の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸等)、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナ抽出物、甘草抽出物、ニンジン抽出物、オタネニンジン抽出物又はその発酵物、ツバキ抽出物、紅参抽出物、ミツイシコンブ抽出物、ヘチマ抽出物、アナアオサ抽出物、モモ抽出物、ウメ抽出物、桃仁抽出物、キウイ抽出物、ヒマワリ抽出物、ジュアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物、パウダルコ樹皮抽出物、萱草(デイリリー)抽出物または発酵物、ハイビスカスの花抽出物または発酵物、ハゴロモグサ抽出物、チェリモヤ抽出物、マンゴー抽出物、マンゴスチン抽出物、フノリ抽出物、烏龍茶抽出物、紅富貴抽出物、シラン抽出物、サツマイモ抽出物、山椒果皮又は種皮の抽出物または加水分解物、ベニバナ花抽出物、カサブランカ抽出物、甘藷抽出物又はその発酵物、グアバ葉抽出物、オリーブ葉抽出物、セイヨウトチノキ抽出物、ショウガ抽出物、バニラ抽出物、ドクダミ抽出物、晩白柚抽出物、アロエ抽出物、アロエベラ抽出物、イチジク花抽出物、リンゴ抽出物、ホワイトアスパラガス抽出物等がある。
【0041】
次に、製造例、処方例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下において、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0042】
製造例1.発酵物(1)
ヒアルロン酸2gに精製水200gを加え、撹拌してヒアルロン酸の膨潤液を調整した。これに1mol/Lの塩酸を加え、80℃で加温処理したあと、pH調製を行い、ヒアルロン酸分解物液を得た。
次に、ヒアルロン酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis)を加え、pH調整後、30℃でその乳酸菌を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(1)を145g得た(固形分濃度1.01%)。
【0043】
製造例2.発酵物(2)
まず、製造例1と同様の操作により、ヒアルロン酸分解物液を得た。次に、ヒアルロン酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、pH調整後、30℃でその酵母を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(2)を136g得た(固形分濃度0.98%)。
【0044】
製造例3.発酵物(3)
まず、製造例1と同様の操作により、ヒアルロン酸分解物液を得た。次に、ヒアルロン酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた麹菌(Aspergillus oryzae)を加え、pH調整後、25℃でその麹菌を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(3)を140g得た(固形分濃度0.91%)。
【0045】
製造例4.発酵物(4)
まず、製造例1と同様の操作により、ヒアルロン酸分解物液を得た。次に、ヒアルロン酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた枯草菌[Bacillus subtilis (natto)]を用いて30℃でその枯草菌を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(4)を143g得た(固形分濃度1.05%)。
【0046】
製造例5.発酵物(5)
ヒアルロン酸2gに精製水200g を加え、撹拌してヒアルロン酸の膨潤液を調整した。これに1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で加温処理したあと、pH調製を行い、ヒアルロン酸分解物液を得た。次に、ヒアルロン酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis)を加え、pH調整後、30℃でその乳酸菌を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(5)を144g得た(固形分濃度1.03%)。
【0047】
製造例6.発酵物(6)
製造例1の製造方法において、乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis)に代えて、乳酸菌(Lactobacillus plantarum)を用いる他は、製造例1と同様にして、発酵液(6)を139g得た(固形分濃度0.90%)。
【0048】
製造例7.発酵物(7)
コンドロイチン硫酸2gに精製水200gを加え、撹拌してコンドロイチン硫酸の膨潤液を調整した。これに1mol/Lの塩酸を加え、80℃で加温処理したあと、pH調製を行い、コンドロイチン硫酸分解物液を得た。次に、コンドロイチン硫酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis)を加え、pH調整後、30℃でその乳酸菌を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(7)を143g得た(固形分濃度1.02%)。
【0049】
製造例8.発酵物(8)
まず、製造例7と同様の操作により、コンドロイチン硫酸分解物液を得た。次に、コンドロイチン硫酸分解物液を殺菌し、予め前培養しておいた酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、pH調整後、30℃でその酵母を培養し、培養終了後、発酵液を殺菌及び濾過し、発酵液(8)を140g得た(固形分濃度0.96%)。
【0050】
比較例1.ムコ多糖酵素分解物(1)
ヒアルロン酸2gに精製水200g を加え、撹拌してヒアルロン酸の膨潤液を調整した。これにストレプトコッカス属の微生物由来のヒアルロニダーゼを加えて40℃にて処理後、さらに80℃にて加温処理し、pH調製後、濾過して、ヒアルロン酸分解物液138gを得た(固形分濃度0.91%)。
【0051】
試験例1.表皮細胞賦活効果試験
正常表皮角化細胞(NHEK(F))を6×103cell/wellで96ウェルプレートに播種後、HuMedia-KG2培地[倉敷紡績(株)]を用いて、37℃、で24時間培養した。培養後、当該培地に製造例1~8の発酵物(1)~(8)をそれぞれ試料溶液として添加し、さらに、48時間培養した。ここで、試料溶液は、試験培地中の溶液としての発酵液の最終濃度がそれぞれ2.0%となるように添加した。培養終了後、細胞の呼吸活性(MTT活性)をMTT還元法(H.Tada et.al.,J.Immunol.Methods 93, 157, 1986)によって評価した。すなわち、ウェルから培地を除去した後、0.03%のMTT試薬(3-(4,5-dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazoliumbromide)を添加して37℃、1時間反応させ、生成したホルマザンをイソプロパノールで溶解させた後、570nmに於ける吸光度を測定し、細胞残渣による濁度(吸光度:630nm)を差し引いた値を細胞活性とした。なお、コントロールとして、上記試料溶液に代えてPBS(-)を培地に添加した場合のMTT活性も測定した。さらに、陽性対象として、上記試料溶液に代えて、100mMのグルコースを培地に添加した場合のMTT活性も測定した。本発明の試料溶液のMTT活性は、コントロールのMTT活性値を100とした場合の相対値で表した。
【0052】
【0053】
表1に示すように、本発明に係る発酵物は、すぐれた表皮細胞賦活効果を示した一方、比較例1のムコ多糖酵素分解物は、表皮細胞賦活効果を示さなかった。
【0054】
試験例2.ケモカイン(CCL2)遺伝子発現抑制評価
<実験方法>
正常ヒト表皮細胞を、増殖添加剤含有HuMediaKG2[クラボウ社製]にて6×104個/mLに調製し、24穴プレートに1mLを播種して、5%CO2、飽和水蒸気下、37℃で培養した。培養1日後、製造例1,5,7の発酵物(1)(5)(7)のいずれかを含んだ培養液(培養液全量に対して溶液として終濃度が1%となるように製造例1,5,7の発酵液それぞれ添加したもの)を添加して培養した。また、比較対照として、試料溶液に代えて、PBS(-)溶液のみを含んだ培養液(培養液全量に対するPBS(-)の終濃度を1%に調整したもの)を添加した試験区(コントロール区)を設定した。さらに培養1日後、培養器底面からUV-Bランプ(Philips社製TL20W/12RS)を用いて約40mJ/cm2の紫外線照射を行った24時間後の試験区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)0.5mLで回収した。回収した細胞に対してクロロホルム(和光純薬工業社製)100μL添加して撹拌混合し遠心分離機(TOMY社製/MX-160)で12,500rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを200μL分取した。回収した水層にイソプロパノール(和光純薬工業社製)500μLを添加して撹拌混合し、12,500rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、12,500rpm、4℃条件下で15分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製))を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System Single(タカラバイオ社製)、及びSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(Tli RNaseH Plus)[タカラバイオ社製]を用いて、各種遺伝子の発現と、内部標準物質G3PDH遺伝子の発現の検出を行った。ここで、G3PDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)は、ハウスキーピング遺伝子(多くの組織や細胞中に共通して一定量発現する遺伝子であって、常に発現され,細胞の維持,増殖に不可欠な遺伝子である)の一つであり、発現量が常に一定とされていることから、PCRの実験では内部標準として用いられるものである。試験結果は、G3PDH遺伝子の発現量を一定とした場合の、それぞれの試験区での各遺伝子の発現量を比較した。本試験系においては、コントロール区のそれぞれの遺伝子の発現量を100としたときの他の試験区でのその遺伝子の発現量の相対値を求めた。
【0055】
【0056】
表2に示すように、本発明に係る発酵物は、炎症性・アレルギー性皮膚疾患の発症に炎症性細胞の遊走・活性化をコントロールするケモカインをコードするCCL2遺伝子の発現を抑制することから、肌荒れ症状や炎症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬又は脂漏性皮膚炎に対する予防及び改善効果を発揮することが示唆される。さらに、CCL2遺伝子の発現により好塩基球の脱顆粒が促進されることから、この遺伝子の発現を抑制することによりヒスタミンによるメラニン合成を抑え、色素沈着(シミ、ソバカス、肝斑等)の予防、改善効果を発揮することも示唆される。一方で、比較例1の酵素分解物は、CCL2遺伝子の発現抑制効果を示さなかった。
【0057】
試験例3.E-カドヘリン遺伝子発現促進評価
正常ヒト表皮細胞を、増殖添加剤含有HuMediaKG2[クラボウ社製]にて6×104個/mLに調製し、24穴プレートに1mLを播種して、5%CO2、飽和水蒸気下、37℃で培養した。培養1日後、製造例1,5,7の発酵物(1)及び(5)のいずれかを含んだ培養液(培養液全量に対して溶液として終濃度が1%となるように製造例1,5の発酵液それぞれ添加したもの)を添加して培養した。また、比較対照として、試料溶液に代えて、PBS(-)溶液のみを含んだ培養液(培養液全量に対するPBS(-)の終濃度を1%に調整したもの)を添加した試験区(コントロール区)を設定した。添加24時間後の試験区の細胞をTrizol試薬(Invitrogen社製)0.5mLで回収した。回収した細胞に対してクロロホルム(和光純薬工業社製)100μL添加して撹拌混合し遠心分離機(TOMY社製/MX-160)で12,500rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離した後、水層のみを200μL分取した。回収した水層にイソプロパノール(和光純薬工業社製)500μLを添加して撹拌混合し、12,500rpm、4℃の条件下で15分間遠心分離してtotalRNAの沈殿物を得た。totalRNAに75%エタノールを1mL添加して撹拌して洗浄し、12,500rpm、4℃条件下で15分間遠心分離して沈殿を回収した。回収したtotal RNAを所定のキット(PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製))を用いて逆転写反応し、cDNAを合成した。合成したcDNAをサンプルとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System Single(タカラバイオ社製)、及びSYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(Tli RNaseH Plus)[タカラバイオ社製]を用いて、各種遺伝子の発現と、内部標準物質G3PDH遺伝子の発現の検出を行った。ここで、G3PDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)は、ハウスキーピング遺伝子(多くの組織や細胞中に共通して一定量発現する遺伝子であって、常に発現され,細胞の維持,増殖に不可欠な遺伝子である)の一つであり、発現量が常に一定とされていることから、PCRの実験では内部標準として用いられるものである。試験結果は、G3PDH遺伝子の発現量を一定とした場合の、それぞれの試験区での各遺伝子の発現量を比較した。本試験系においては、コントロール区のそれぞれの遺伝子の発現量を100としたときの他の試験区でのその遺伝子の発現量の相対値を求めた。
【0058】
【0059】
表3に示すように、本発明に係る発酵物は、肌の水分維持機能に大きく関与しているE-cadherin(E-カドヘリン)の発現亢進効果を示したことから、皮膚のバリア機能の改善効果及び保湿効果を発揮することが示唆される。一方で、比較例1の酵素分解物は、本発明に係る発酵物とは異なり、顕著なE-cadherin遺伝子の発現亢進効果を示さなかった。
【0060】
処方例1.クリーム
[成分] 部
ホホバ油 6.0
ホホバワックス 4.0
ステアリン酸 1.5
スクワラン 8.0
ステアリルアルコール 0.8
ミスチリルアルコール 0.9
乳酸菌発酵米 2.0
大豆レシチン 0.5
製造例1の発酵物(1) 2.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
マルチトール 1.5
キサンタンガム 0.5
アルギン酸ナトリウム 0.5
アルギニン 0.04
1,3-ブチレングリコール 5.0
1,2-プロピレングリコール 3.0
精製水 全量が100部となる量
香料 適量
【0061】
処方例2.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例2の発酵物(2)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0062】
処方例3.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例3の発酵物(3)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0063】
処方例4.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例4の発酵物(4)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0064】
処方例5.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例5の発酵物(5)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0065】
処方例6.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例6の発酵物(6)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0066】
処方例7.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例7の発酵物(7)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0067】
処方例8.クリーム
処方例1のクリームに含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例8の発酵物(8)を用いる他は、処方例1と同様にしてクリームを得た。
【0068】
処方例9.乳液
[成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
アラントイン 1.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
グリセリン 3.0
製造例1の発酵物(1) 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
水溶性コラーゲン 0.1
エデト酸ナトリウム 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0069】
処方例10.乳液
処方例9に含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例2の発酵物(2)を用いる他は、処方例7と同様にして乳液を得た。
【0070】
処方例11.乳液
処方例9に含まれる製造例1の発酵物(1)に代えて、製造例7の発酵物(7)を用いる他は、処方例9と同様にして乳液を得た。
【0071】
処方例12.乳液
[成分] 部
流動パラフィン 6.0
ヘキサラン 4.0
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 2.0
大豆レシチン 1.5
メチルパラベン 0.15
エチルパラベン 0.03
製造例1の発酵物(1) 2.0
加水分解ヒアルロン酸 0.1
アセチル化ヒアルロン酸 0.1
L-アスコルビン酸-2-グルコシド 2.0
水酸化カリウム 0.5
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロース 0.3
エデト酸ナトリウム 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0072】
処方例13.乳液
処方例12の成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルマグネシウム2.0部を用いるほかは処方例12と同様にして乳液を得た。
【0073】
処方例14.乳液
処方例12のB成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてトラネキサム酸2.0部を用いるほかは処方例12と同様にして乳液を得た。
【0074】
処方例15.乳液
処方例12のB成分中、L-アスコルビン酸-2-グルコシド2.0部及び水酸化カリウム0.5部に代えてアルブチン2.0部を用いるほかは処方例12と同様にして乳液を得た。
【0075】
処方例16.乳液
[成分] 部
ホホバ油 2.0
ホホバワックス 1.0
スクワラン 2.0
パーム油 0.5
ステアリルアルコール 0.8
大豆レシチン 1.5
ヒアルロン酸ナトリウム 2.0
乳酸菌発酵米 2.0
マルチトール 0.1
キサンタンガム 1.0
製造例1の発酵物(1) 3.0
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 2.0
精製水 全量が100部となる量
【0076】
処方例17.化粧水
[成分] 部
ホホバ油 1.0
ポリオキシエチレン(5.5)セチルアルコール 5.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の発酵物(1) 1.0
加水分解ヒアルロン酸 0.1
アセチル化ヒアルロン酸 0.1
グリセリン 5.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
精製水 全量が100部となる量
【0077】
処方例18.ローション
[成分] 部
エタノール 10.0
グリセリン 3.0
1、3-ブチレングリコール 2.0
メチルパラベン 0.2
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
カルボキシビニルポリマー 0.1
エデト酸ナトリウム 0.1
製造例1の発酵物(1) 5.0
水酸化カリウム 適量
精製水 全量が100部となる量
【0078】
処方例19.ボディシャンプー
[成分] 部
メチルパラベン 0.1
N-ラウロイルメチルアラニンナトリウム 25.0
ヤシ油脂肪酸カリウム液(40%) 26.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 3.0
製造例1の発酵物(1) 5.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
エデト酸ナトリウム 0.1
精製水 全量が100部となる量
【0079】
処方例20.ヘアシャンプー
[成分] 部
N-ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0
ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
メチルパラベン 0.1
クエン酸 0.1
製造例1の発酵物(1) 2.0
1,3-ブチレングリコール 2.0
精製水 全量が100部となる量
【0080】
処方例21.ヘアリンス
[成分] 部
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油 1.0
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0
2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
セタノール 3.2
ステアリルアルコール 1.0
メチルパラベン 0.1
製造例1の発酵物(1) 2.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
精製水 全量が100部となる量
【0081】
処方例22.石けん
[成分] 部
ヤシ油 10.0
硬化ヒマシ油 26.0
オリーブ油 4.0
水酸化ナトリウム 6.0
黒糖粉末 10.0
グリセリン 5.0
製造例1の発酵物(1) 5.0
エデト酸ナトリウム 0.1
エタノール 20.0
精製水 全量が100部となる量