(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】温水供給システムの再構築方法
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20230815BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20230815BHJP
F24D 17/02 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F24H15/375
F24D17/00 B
F24D17/02
(21)【出願番号】P 2019084187
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513304769
【氏名又は名称】株式会社スマート・リソース
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】迫 博司
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169125(JP,A)
【文献】特開2005-273958(JP,A)
【文献】特開2012-13336(JP,A)
【文献】特開2016-118338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/375
F24D 17/00
F24D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプと、ボイラーとを
有する既存設備を備え、前記第1ポンプにより負荷から供給された温水を前記ボイラーで加熱して前記負荷に戻し供給する温水供給システムを、再構築する方法において、
下部に第1連結口及び第2連結口を有し、上部に第3連結口及び第4連結口を有する密閉タンクと、前記第1ポンプよりも流量が少ない第2ポンプと、ヒートポンプと、を用意し、
前記密閉タンクの前記第1連結口に前記負荷から前記温水が
、切替弁及び/または流量調整弁を経由することなく第1流量で供給され、前記密閉タンクの前記第4連結口から取り出される前記第1流量の前記温水が前記ボイラーの熱交換器を経由して前記負荷に供給されるように、前記密閉タンク、前記第1ポンプ及び前記ボイラーを接続し、
前記密閉タンクの前記第1連結口に前記負荷から前記第1流量で補充される前記温水のうち、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記温水を、前記密閉タンクの前記第2連結口から取出し、前記ヒートポンプで
前置設定温度に加熱された後の前記第2流量の前記温水が前記密閉タンクの前記第3連結口に流入するように、前記密閉タンク、前記第2ポンプ及び前記ヒートポンプを接続し、
前記ヒートポンプを主熱源として用い、
前記密閉タンクの前記第4連結口及び前記ボイラーを経由して前記負荷に戻し供給される前記温水が設定温度未満であるとき
のみに、前記ヒートポンプで加熱された前記温水を前記ボイラーの前記熱交換器で
前記前置設定温度よりも低い前記設定温度に再加熱して前記負荷に供給するように、前記ボイラーを補助熱源として用いることを特徴とする温水供給システムの再構築方法。
【請求項2】
前記ボイラーは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記負荷との間に配置され、
前記第1ポンプは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記ボイラーとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の温水供給システムの再構築方法。
【請求項3】
前記ボイラーは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記負荷との間に配置され、
前記第1ポンプは、前記密閉タンクの前記第1連結口と前記負荷との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の温水供給システムの再構築方法。
【請求項4】
前記ボイラーは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記負荷との間に配置され、
前記第1ポンプは、前記ボイラーと前記負荷との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の温水供給システムの再構築方法。
【請求項5】
前記ヒートポンプは、前記密閉タンクの前記第2連結口と前記第3連結口との間に配置され、
前記第2ポンプは、前記ヒートポンプと前記密閉タンクの前記第3連結口との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の温水供給システムの再構築方法。
【請求項6】
前記ヒートポンプは、前記密閉タンクの前記第2連結口と前記第3連結口との間に配置され、
前記第2ポンプは、前記密閉タンクの前記第2連結口と前記ヒートポンプとの間に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の温水供給システムの再構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水供給システムの再構築方法及び温水供給方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の給湯システムは、風呂等の給湯負荷とボイラーとの間で給湯水をポンプにより循環させ、ボイラーで加熱された給湯水を給湯負荷に戻し供給するものがある。この既存システムに代えて、あるいは既存システムに追加して、低消費電力であるヒートポンプを設け、ボイラーの稼働率を低減させることで、ランニングコストを低下させるニーズがある。
【0003】
一方、ヒートポンプにより加熱される給湯水を貯湯する貯湯タンクと、ヒートポンプ以外の他の熱源例えばボイラーで加熱される給湯水とのいずれか一方を、またはそれらの混合を給湯することが知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-67441号公報
【文献】特開2015-90231号公報
【文献】特開2005-214452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯システムメーカーは、既存システムから最新の給湯システムへの変更を提案する一方で、既存システムを有効利用して給湯システムを再構築する提案には消極的である。既存システムを利用するにあたっても、最新システムを構築する上で足りない全ての設備の導入が必要となり、再構築コストが高くなる。そのため、システム再構築後のランニングコストの低下によって、再構築コストを回収するにも長い期間を要してしまう。結果として、システム再構築へのインセンティブが下がり、再構築が実現し難くなる。
【0006】
ここで、特許文献1及び3に開示された従来技術によれば、主熱源で加熱される給湯水を貯湯する貯湯タンクの出口に接続された主給湯管と、補助熱源で加熱(または非加熱)される給湯水を給湯する補助給湯管とを、流量比を可変して混合するミキシング装置に連結させている。特許文献2は、主熱源で加熱される給湯水を貯湯する貯湯タンクの出口に接続された主給湯管と、補助熱源で加熱(または非加熱)される給湯水を給湯する補助給湯管とを、切替弁に連結して、いずれか一方を給湯負荷に給湯している。
【0007】
このように、特許文献1~3によれば、ミキシング装置での流量可変または切替弁での切替を、温度センサーの出力に基づいてフィードバック制御する必要があり、その分再構築コストが増大し、メインテナンス費用も増大する。
【0008】
本発明の目的は、既存システムよりもランニングコストを低減することができる温水供給システムの再構築方法を提供することにある。本発明の他の目的は、ミキシング装置での流量可変または切替弁での切替を温度センサーの出力に基づいてフィードバック制御することなく、ランニングコストを低減することができる温水供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
第1ポンプと、ボイラーとを備え、前記第1ポンプにより負荷から供給された温水を前記ボイラーで加熱して前記負荷に戻し供給する既存の温水供給システムを、再構築する方法において、
下部に第1連結口及び第2連結口を有し、上部に第3連結口及び第4連結口を有する密閉タンクと、前記第1ポンプよりも流量が少ない第2ポンプと、ヒートポンプと、を用意し、
前記密閉タンクの前記第1連結口に前記負荷から前記温水が第1流量で供給され、前記密閉タンクの前記第4連結口から取り出される前記第1流量の前記温水が前記ボイラーの熱交換器を経由して前記負荷に供給されるように、前記密閉タンク、前記第1ポンプ及び前記ボイラーを接続し、
前記密閉タンクの前記第1連結口に前記負荷から前記第1流量で補充される前記温水のうち、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記温水を、前記密閉タンクの前記第2連結口から取出し、前記ヒートポンプで加熱された後の前記第2流量の前記温水が前記密閉タンクの前記第3連結口に流入するように、前記密閉タンク、前記第2ポンプ及び前記ヒートポンプを接続し、
前記ヒートポンプを主熱源として用い、
前記密閉タンクの前記第4連結口及び前記ボイラーを経由して前記負荷に戻し供給される前記温水が設定温度未満であるときに、前記ヒートポンプで加熱された前記温水を前記ボイラーの前記熱交換器で再加熱して前記負荷に供給するように、前記ボイラーを補助熱源として用いる温水供給システムの再構築方法に関する。
【0010】
本発明の一態様では、負荷に温水を供給する温水供給システムとしての既存設備である第1ポンプ及びボイラーに、密閉タンク、第2ポンプ及びヒートポンプを接続して、温水供給システムを再構築する。再構築される温水供給システムには、ボイラー及びヒートポンプの2系統の熱源を経由する温水を合流させるミキシング装置や、2系統の加熱源を経由する温水の一方を選択する切替弁がなく、ミキシング装置での流量可変または切替弁での切替を温度センサーの出力に基づいてフィードバック制御することもない。それにより、その分再構築コストが低減され、メインテナンス費用が節減されるのでランニングコストも低減される。再構築される温水供給システムで加熱される前の温水の温度と加熱後の設定温度との温度差が小さい定常時には、主熱源であるヒートポンプが用いられる。定常時とは異なる非定常時に、補助熱源であるボイラーで温水が再加熱される。このため、ランニングコストが低減される。それにより、温水供給システムの再構築コストを、低減されたランニングコストにより比較的短期間で回収することができ、温水供給システムを再構築するインセンティブが高まる。
【0011】
本発明の一態様では、前記ボイラーは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記負荷との間に配置され、前記第1ポンプは、前記密閉タンクの前記第4連結口と前記ボイラーとの間に配置することができる。こうすると、ボイラーの熱交換器での圧力損失の影響を最小限にすることができる。これに代えて、前記第1ポンプは、前記密閉タンクの前記第1連結口と前記負荷との間に配置されてもよい。あるいは、前記第1ポンプは、前記ボイラーと前記負荷との間に配置されてもよい。いずれにおいても、負荷から密閉タンクの第1連結口に第1流量で温水を供給し、密閉タンクの第4連結口から取り出される第1流量の温水を、ボイラーの熱交換器を経由して負荷に戻し供給することができる。
【0012】
本発明の一態様では、前記ヒートポンプは、前記密閉タンクの前記第2連結口と前記第3連結口との間に配置され、前記第2ポンプは、前記ヒートポンプと前記密閉タンクの前記第3連結口との間に配置することができる。こうすると、ヒートポンプの熱交換器での圧力損失の影響を最小限にすることができる。これに代えて、前記第2ポンプは、前記密閉タンクの前記第2連結口と前記ヒートポンプとの間に配置されてもよい。いずれにおいても、負荷から密閉タンクの下部の第1連結口に例えば第1流量で補充される温水のうち、第1流量よりも少ない第2流量の温水を、密閉タンクの下部の第2連結口から取出し、ヒートポンプで加熱された温水を、密閉タンクの上部の第3連結口に第2流量で流入させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、
負荷から密閉タンクの下部の第1連結口に第1流量で補充される温水のうち、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記温水を、前記密閉タンクの前記下部の第2連結口から取出し、ヒートポンプで加熱する工程と、
前記ヒートポンプで加熱された温水を、前記密閉タンクの上部の第3連結口に前記第2流量で流入させる工程と、
前記密閉タンクの前記上部の第4連結口から取り出される前記第1流量の前記温水を、ボイラーの熱交換器を経由して前記負荷に戻し供給する工程と、
を有し、
前記ヒートポンプを主熱源として用い、
前記負荷に戻し供給される前記温水が設定温度未満であるときに、前記ヒートポンプで加熱された温水を前記ボイラーの前記熱交換器で再加熱して前記負荷に供給するように、前記ボイラーを補助熱源として用いる温水供給方法に関する。
【0014】
本発明の他の態様に係る温水供給方法は、本発明の一態様により再構築された温水供給システムにおいても、新構築された温水供給システムにおいても実施することができる。その際、本発明の他の態様においても、ボイラー及びヒートポンプの2系統の熱源を経由する温水を合流させるミキシング装置や、2系統の加熱源を経由する温水の一方を選択する切替弁がなく、ミキシング装置での流量可変または切替弁での切替を温度センサーの出力に基づいてフィードバック制御することもない。それにより、本発明の一態様と同様にして、温水供給システムの新構築コスト又は再構築コストが低減され、メインテナンス費用が節減されるのでランニングコストも低減される。また、本発明の他の態様においても、本発明の一態様と同様に、定常時には主熱源であるヒートポンプが用いられ、非定常時に補助熱源であるボイラーで温水が再加熱される。そのため、ランニングコストが低減される。それにより、温水供給システムの新構築コスト又は再構築コストを、低減されたランニングコストにより比較的短期間で回収することができ、温水供給システムを新構築又は再構築するインセンティブが高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】既存の温水供給システムを示す概略図である。
【
図2】
図1中のボイラーを説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る再構築された温水供給システムを示す概略図である。
【
図4】
図3中のヒートポンプを説明するための図である。
【
図5】
図3中の第1ポンプの配置を変更した本発明の他の実施形態に係る再構築された温水供給システムの一部を示す概略図である。
【
図6】
図3中の第1ポンプの配置を変更した本発明のさらに他の実施形態に係る再構築された温水供給システムの一部を示す概略図である。
【
図7】
図3中の第2ポンプの配置を変更した本発明のさらに他の実施形態に係る再構築された温水供給システムの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0017】
1.既存の温水供給システム
図1は、負荷1に温水を供給する既存の温水供給システム10を示す。負荷1は、例えば加温負荷である風呂2と、熱交換器3と、を含むことができる。熱交換器3は、温水供給システム10により一次側配管11に供給された温水と、風呂2から加温負荷ポンプPにより二次側配管4に供給されるお湯との間で熱交換して、風呂2のお湯を加温または保温するものである。負荷1は、熱交換器3を有するものに限らず、温水供給システム10により給湯されたお湯が消費される給湯負荷、例えば厨房や浴室内の給湯栓、シャワー、食器洗浄機等であっても良い。この場合、温水供給システム(給湯システム)10により給湯されたお湯のうち風呂等で消費されなかったお湯は、温水供給システム10に供給されて繰り返し加熱される。
【0018】
図1において、既存の温水供給システム10は、熱交換器3の第1ポート3A及び第2ポート3Bにループ状に接続される一次側配管11と、一次側配管11途中に設けられる第1ポンプ12及びボイラー13とを有する。ここで、第1ポンプ12は、第1流量Q1例えば100L(リットル)/minで
図1に示す矢印方向の循環流を生成する。ボイラー13は、温水の入り口温度をT1とし出口温度T2としたとき、出口温度T2が設定温度になるように温水を加熱する。
【0019】
ボイラー13は、
図2に示すように、一次側配管11に接続される熱交換器14と、熱交換器14を流れる温水を加熱するバーナー15と、熱交換器14の出口の湯温T2を検出する第1温度センサー16と、第1温度センサー16からの検出温度に基づいてバーナー15の燃焼を制御する制御部17と、を有する。制御部17は、熱交換器14の出口の湯温T2が設定温度になるように、バーナー15の燃焼を制御(オン・オフ制御を含む)する。
【0020】
2.温水供給システムの再構築方法
図3に、本発明の一実施形態に係る再構築された温水供給システム100を示している。
図3において、再構築された温水供給システム100は、既存の温水供給システム10を含む。ただし、既存の温水供給システム10のうち、
図3中にて破線で示される一部の配管11Cであって、第1ポンプ12とボイラー13とを接続する配管11Cは、取り外しまたは切断されることで除去されている。残存する一次側配管11のうち、第1ポート3Aに接続される側を配管11Aと称し、第2ポート3Bに接続される側を配管11Bと称する。
【0021】
温水供給システムの再構築方法では、密閉タンク110と、第2ポンプ120と、ヒートポンプ130とが用意される。密閉タンク110は、下部111に第1連結口112及び第2連結口113を有し、上部114に第3連結口115及び第4連結口116を有する。
【0022】
第2ポンプ120は、既存の第1ポンプ12に増設されるポンプであり、増設ポンプとも称する。この場合、第1ポンプ12は既存ポンプと称される。第2ポンプ120の第2流量Q2は、第1ポンプ12の第1流量Q1よりもよりも少ない(Q2<Q1)。第1ポンプ12の第1流量Q1を上述の通り100L/minとしたとき、第2ポンプ120の第2流量Q2は例えば50L/minである。
【0023】
ヒートポンプ130は、
図4に示すように、蒸発器131、圧縮器132、熱交換器(凝縮器)133及び膨張弁134を、冷媒用の一次配管137で連結して構成される。
図3に示す密閉タンク110の第2連結口113と第3連結口115とを接続する二次配管117を流れる温水が、
図4に示す熱交換器(凝縮器)133にて熱交換されて加熱される。ヒートポンプ130では、低温で液状の冷媒が蒸発器131で気化される。気化された冷媒は圧縮器132で加圧され、昇温される。高温・高圧の冷媒ガスは、熱交換器(凝縮器)133で二次配管117中の温水に熱を与える。冷媒は熱を失い凝縮され、高圧冷媒液に変化する。高圧冷媒液は、膨張弁134で冷却され、再び蒸発器131に戻る。
【0024】
ヒートポンプ130では、一次配管137中の冷媒の温度は冷媒の圧力に依存する。冷媒の温度に依存して、二次配管117中の温水は入り口温度T3から出口温度T4に加熱される。この際、ヒートポンプ130で加熱された二次配管117中の温水の出口温度T4を第2温度センサー135で検出して、その検出温度T4に基づいて圧縮器132及び膨張弁134が制御部136により制御される。圧縮器132の制御には、オン・オフ制御、回転数のインバータ制御等を含むことができる。それにより、ヒートポンプ130では二次配管117中の温水の検出温度T4が設定温度になるように加熱制御される。ここで、本実施形態では、ボイラー13は第1温度センサー16により、ヒートポンプ130は第2温度センサー135により、それぞれ独立して温度制御が行われる。そこで、ボイラー13の設定温度を最終設定温度とし、ヒートポンプ130の設定温度を前置設定温度とする。本実施形態では、例えば、最終設定温度は65℃であり、前置設定温度は70℃である。
【0025】
温水供給システムの再構築方法では、
図3に示すように、密閉タンク110の第1連結口112に負荷1から温水が供給され、密閉タンク110の第4連結口116から取り出される温水がボイラー13の熱交換器14を経由して負荷1に供給されるように、密閉タンク110、第1ポンプ12及びボイラー13を接続する。
図3では、第1ポンプ12は負荷1の第1ポート3Aと密閉タンク110の第1連結口112との間に配置されている。必要により、第1ポンプ12を密閉タンク110の第1連結口112に接続する配管11Dと、ボイラー13を密閉タンク110の第4連結口116に接続する配管11Eと、を追加することができる。第1ポンプ12は、
図3に示す接続形態に代えて、
図5または
図6の接続形態を採用しても良い。
図5では、第1ポンプ12は密閉タンク110の第4連結口116とボイラー13との間に配置される。
図6では、第1ポンプ12はボイラー13と負荷1の第2ポート13Bとの間に配置される。
図3、
図5または
図6に示す接続形態は、既存の温水供給システム10での第1ポンプ12の配置に依存させて選択しても良いし、既存の温水供給システム10での第1ポンプ12の配置に依存することなく選択しても良い。
【0026】
温水供給システムの再構築方法では、
図3に示すように、密閉タンク110の第1連結口112に負荷1から補充される温水を、密閉タンク110の第2連結口113から二次配管117により取出し、ヒートポンプ130で加熱された後の温水が二次配管117により密閉タンク110の第3連結口115に流入するように、密閉タンク110、第2ポンプ120及びヒートポンプ130を接続する。
図3では、第2ポンプ120は密閉タンク110の第2連結口113とヒートポンプ130との間に配置される。
図3に示す接続形態に代えて、
図7に示す接続形態を採用しても良い。
図7では、第2ポンプ120は、ヒートポンプ130と密閉タンク110の第3連結口115との間に配置される。
【0027】
再構築される温水供給システム100では、第1ポンプ12及びボイラー13の接続形態として
図3、
図5及び
図6に示す3種類が、第2ポンプ120及びヒートポンプ130の接続形態として
図3及び
図7に示す2種類があり、3×2=計6種類の接続形態の中から選択できる。熱交換器14,133での圧力損失を考慮すると、第1ポンプ12及びボイラー13は
図5の接続形態とし、第2ポンプ120及びヒートポンプ130は
図3の接続形態とすることが好ましい。
【0028】
密閉タンク110、第2ポンプ120及びヒートポンプ130を増設した理由は次の通りである。特に温水供給システム100での加熱前後の温水の温度差が小さい定常時では、主熱源であるヒートポンプ130を熱源として用いることが第1の理由である。ボイラー13は、ボイラー13を経由して負荷1に戻し供給される温水の温度T2、つまり
図2の第1温度センサー16での検出温度T2が、最終設定温度未満となる非定常時であるときに作動する補助熱源として用いる。ただし、ヒートポンプ130の加熱能力を抑えてランニングコストを低減するために、負荷1から供給される第1流量Q1の温水のうちの一部である第2流量Q2の温水をヒートポンプ130に導くことにする。
【0029】
この点、ヒートポンプ130とボイラー13とが同一流量とされる直列接続方式とは異なる。直列接続方式ではヒートポンプ130の加熱能力をボイラー13と同程度に高める必要があり、ランニングコストを低減する観点から直列接続方式は採用できない。ヒートポンプ130とボイラー13とを並列接続すると、ヒートポンプ130を主熱源として利用できないので、ランニングコストを低減する観点から並列接続方式もまた採用できない。
【0030】
再構築される温水供給システム100では、負荷1に戻される第1流量Q1のうちの第2流量Q2(Q2<Q1)をヒートポンプ130で加熱する。負荷1に戻される第1流量Q1のうちヒートポンプ130を経由しない差分の流量(Q1-Q2)は、密閉タンク110の下部111から上部114に向けて流れる比較的温度の高い温水が割り当てられる。つまり、密閉タンク110の上部114では、第2流量Q2の加熱された温水と、密閉タンク110内の流量(Q1-Q2)の上昇流の温水とが合流される。そして、第1ポンプ12によりその合流された温水が第1流量Q1で、ボイラー13を経由して負荷1に戻される。そのために、ヒートポンプ130に加えて、密閉タンク110及び第2ポンプ120が増設されている。ただし、本実施形態では、負荷1からの温水を温水供給システム100で加熱して負荷1に戻すにあたり、2系統の熱源からの温水の混合比率を可変するミキシング装置も、2系統の熱源からの温水の一方を選択する切替弁も不要である。
【0031】
3.温水供給方法
次に、再構築された温水供給システム100での温水供給方法について説明する。以下の温水供給方法は、温水供給システム100にて最終設定温度65℃に加熱された温水を負荷1に戻し供給する例である。ここで、ヒートポンプ130は、例えば第2流量Q2=50L/minの温水を60℃から前置設定温度である70℃に加熱する際に出力100%に設定される定格を有する。つまり、ヒートポンプ130は、前置設定温度70℃を達成するのに入口温度T3/出口温度T4の温度差が10℃以内であれば、
図4に示す制御部136の制御により出力100%以下の制御範囲で、第2流量Q2の温水を前置設定温度70℃まで加熱できる能力を有する。この状況では、ボイラー13のバーナー15を燃焼させずに済む。このような状況を定常時または定常運転と称する。
【0032】
定常運転では、
図3の負荷1から例えば60℃の温水が、第1ポンプ12の駆動により第1流量Q1=100L/minで温水供給システム100に供給される。本温水供給方法は、負荷1から密閉タンク110の下部111の第1連結口112に第1流量Q1で補充される温水のうち、第1流量Q1よりも少ない第2流量Q2(例えばQ2=50L/min)の温水を、密閉タンク110の下部111の第2連結口113から取出し、ヒートポンプ130で熱交換して加熱する第1工程を有する。第2流量Q2は第2ポンプ120により設定される。ヒートポンプ130は、定常運転では、入口温度T3が60℃以上の温水を出口温度T4=前置設定温度70℃になるように加熱する。
【0033】
本温水供給方法は、ヒートポンプ130で加熱された温水を、密閉タンク110の上部114の第3連結口115に第2流量Q2で流入させる第2工程を有する。本温水供給方法は、密閉タンク110の上部114の第4連結口116から取り出される第1流量Q1の温水を、ボイラー13の熱交換器14を経由して負荷1に戻し供給する第3工程をさらに有する。第1~第3工程は同時に行われるので、密閉タンク110は、第1連結口112から第1流量Q1が流入され、第2連結口113から第2流量Q2が流出され、第3連結口1115から第2流量Q2が流入され、第4連結口116から第1流量Q1が流出入され、密閉タンク110内の温水は一定の水位を維持する。
【0034】
密閉タンク110の上部114では、第2流量Q2の加熱された温水と、密閉タンク110内の流量(Q1-Q2)の上昇流の温水とが合流される。そして、その合流された温水が第1流量Q1で、第1ポンプ12によりボイラー13を経由して負荷1に戻される。
【0035】
ここで、ヒートポンプ130で前置設定温度=70℃まで加熱された、第2流量Q2の加熱された温水と、密閉タンク110内の流量(Q1-Q2)の温水とが合流されると、最終設定温度65℃でかつ第1流量Q1の温水が、密閉タンク110の第4連結口116から得られる。つまり、ボイラー13の入口温度T1=最終設定温度となり、ボイラー13は稼働せずに(バーナー15が非稼働)、出口温度T2=最終設定温度65℃の温水が得られる。こうして、定常時にはボイラー13を稼働させずに、ヒートポンプ130を主熱源として用いることができる。
【0036】
本温水供給方法では、ボイラー13を経由して負荷1に戻し供給される温水が設定温度(最終設定温度)未満であるとき(非定常時または非定常運転)に、ボイラー13のバーナー15により加熱された熱交換器14で温水を再加熱する。こうして、ボイラー13は、非定常時にのみ稼働する補助熱源として用いることができる。結果として、ランニングコストを大幅に低減した温水供給方法を実施することができる。それにより、温水供給システムの再構築コストを、低減されたランニングコストにより回収することができ、温水供給システムを再構築するインセンティブが高まる。
【0037】
加えて、再構築される温水供給システム100は、ボイラー13及びヒートポンプ130に内在する温度制御以外には、2系統の加熱源を経由する温水の混合比率を可変するミキシング装置の制御や、2系統の加熱源を経由する温水の一方を選択する切替弁の制御は不要である。よって、特許文献1~3に示す従来技術のように、ミキシング装置での流量可変または切替弁での切替を、温度センサーの出力に基づいてフィードバック制御する必要がない。そのため、その分再構築コストが低減され、メインテナンス費用も節減されるので、ランニングコストが低減される。
【0038】
なお、本発明の温水供給方法は、必ずしも再構築された温水供給システムにて実施されるものに限らない。つまり、
図3、
図5~
図7と同様な構造を有する新設された温水供給システムで実施されるものも含む。本発明の温水供給方法によれば、温水供給システムの新構築コスト又は再構築コストを、低減されたランニングコストにより回収することができ、温水供給システムを新規に構築し、あるいは再構築するインセンティブが高まる。
【符号の説明】
【0039】
1…負荷、2…風呂、3…熱交換器、3A,3B…第1、第2ポート、4…二次配管、10…既存の温水供給システム、11…一次配管、12…第1ポンプ(既存ポンプ)、13…ボイラー、14…熱交換器、15…バーナー、16…第1温度センサー、17…制御部、100…再構築された温水供給システム、110…密閉タンク、111…下部、112…第1連結口、113…第2連結口、114…上部、115…第3連結口、116…第4連結口、117…二次配管、120…第2ポンプ(増設ポンプ)、130…ヒートポンプ、131…蒸発器、132…圧縮器、133…熱交換器(凝縮器)、134…膨張弁、135…第2温度センサー、136…制御部、137…一次配管、Q1…第1流量、Q2…第2流量、T1,T3…入口温度、T2,T4…出口温度