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特許7330491パンチ金型及びこのパンチ金型を備えたプレス成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】パンチ金型及びこのパンチ金型を備えたプレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/34 20060101AFI20230815BHJP
   B21D 37/14 20060101ALI20230815BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B21D28/34 H
B21D28/34 C
B21D37/14 G
B26F1/14 E
B26F1/14 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019112891
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020203305
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302014712
【氏名又は名称】株式会社フレックラム
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】西村 永吉
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-241633(JP,A)
【文献】特開昭62-040946(JP,A)
【文献】特開2001-047179(JP,A)
【文献】特開昭61-290224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/34
B21D 37/14
B26F 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のパンチホルダ側挿通穴が形成され昇降動作するパンチホルダと、
このパンチホルダの下方に配置され該パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のバッキングプレート側挿通穴が形成されたバッキングプレートと、
このバッキングプレートの下方に配置され上記パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のパンチプレート側挿通穴と左右のパンチ挿通穴とが形成されたパンチプレートと、
このパンチプレートの下方に配置されワークが載置されるダイプレートと、
上記パンチプレートと上記ダイプレートとの間に配置され左右のネジ穴と左右のパンチ挿通穴とが形成された可動ストリッパと、
それぞれ軸部とこれらの軸部の上端に形成され下面が上記バッキングプレートの上面に支持される頭部とを有し、該軸部の下端側は上記左右のネジ穴の何れかに螺着されて上記可動ストリッパに固定され、上記軸部は該パンチホルダ側挿通穴と上記バッキングプレート側挿通穴との双方に挿通されてなる左右のストリッパボルトと、
上記左右のストリッパボルトにそれぞれ外嵌挿され上端は上記バッキングプレートの下面当接し下端は上記可動ストリッパの上面に当接してなる左右のコイルスプリングと、を備えたプレス成形装置に固定され
上記パンチプレートに形成されたパンチ挿通穴に該パンチプレートの上方から嵌合されて該パンチプレートに支持されてなるとともに、上記パンチホルダが下降動作する前においてはそれぞれの下端が上記パンチ挿通穴内に位置する左右のパンチ本体と、
下端にはワークを切断するパンチ刃部とが形成されてなるともに、該左右のパンチ本体に対して着脱自在とされた備えた交換用パンチと、を備え、
上記左右のパンチ本体と上記交換用パンチとは、該交換用パンチの下側から螺進されるボルトにより互いに固定されてなるか、又は、
外周面に一方のネジが螺刻されたボルト部と、このボルト部に螺刻された一方のネジが螺着される他方のネジが内周面に螺刻されたナット部とが、上記左右のパンチ本体と交換用パンチとの何れかに相対的に形成され、該ボルト部とナット部とが互いに螺着されてなり、
上記交換用パンチは、該交換用パンチの下面中央においてレンチなどの工具の先端により回動操作されるものであることを特徴とするパンチ金型。
【請求項2】
前記左右のパンチ本体の下方には小径軸部が形成され、この小径軸部の下面の中央には、該中央から垂下してなる円柱状垂下部が形成され、この円柱状垂下部の下面中央からは外周に一方のネジが螺刻されたボルト部が垂下してなり、
前記交換用パンチは、全体の外形形状が円柱状に成形されてなるとともに、上面の中央から下方には内周に上記一方のネジが螺着される他方のネジが螺刻されたナット部が形成されてなるとともに、該交換用パンチの底面には、レンチの先端が挿入される六角状の回動操作用凹部が形成され、また、該交換用パンチの底面から上面には、上記六角状の回動操作用凹部の周囲において複数のネジ穴が該交換用パンチを貫通した状態で形成され、
上記複数のネジ穴のそれぞれには、上端が上記小径軸部の下面に上端が圧接される小径ネジが螺着されてなることを特徴とする請求項1記載のパンチ金型。
【請求項3】
前記複数のネジ穴は、前記回動操作用凹部の周囲に等間隔に配置されてなることを特徴とする請求項2記載の何れかのパンチ金型。
【請求項4】
前記プレス成形装置を構成するパンチプレートには、フランジ嵌合凹部が形成され、前記パンチ本体の上端には、上記パンチプレートに形成されたフランジ嵌合凹部内に嵌合されるフランジ部が形成され、このフランジ部の平面形状は、楕円状又は方形状若しくは該フランジ部の中心を交差する長さと幅が互いに異なる形状とされてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の何れかのパンチ金型。
【請求項5】
前記請求項1,2,3又は4記載の何れかのパンチ金型を備えてなることを特徴とするプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は樹脂等からなるワークを特定の形状に穴開け加工を行うために使用されるパンチ金型及びこのパンチ金型を備えたプレス成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記穴開け加工を行うプレス成形装置は、下降するパンチの先端によりワークに穴開け加工するものであり、こうしたパンチは、上記プレス成形装置を構成するパンチプレートに形成された取付用の嵌合穴に該パンチプレートの上方から挿通・嵌合されてなるものであり、このパンチプレートの上方には、バッキングプレートが配置され、さらにこのバッキングプレートの上方には、昇降駆動装置により昇降駆動するパンチホルダが位置している。そして、このパンチホルダの下降により、ダイプレート上に載置されたワークは、上記パンチの先端により穴開け加工される。
【0003】
しかしながら、上述したパンチは、ワークの素材が変更されたり、ワークに成形すべき形状や内径寸法が変更されたり、既に取り付けられパンチ金型のパンチ刃部の摩耗により新品のパンチ金型に変更する場合、又は摩耗したパンチ金型を研磨して再度取り付ける場合等には、その都度、上記パンチホルダ、バッキングプレート等を取り除く必要があり、そして、こうした際には、ピンやボルト等を取り外す等の作業も含めて極めて面倒な作業が強いられる。特に、大型のプレス成形装置にあっては、こうした作業が数時間に及ぶ場合も少なくない。
【0004】
そして、従来、こうしたパンチの交換作業を迅速に行うことを目的として、例えば、特開平5-285560号公報(特許文献1)に係るパンチング金型や、特開2016-215246号公報(特許文献2)に係るパンチ金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-285560号公報
【文献】特開2016-215246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示されたものでは、何れもパンチが内部に収容されるパンチガイドを構成要素とするとともに、該パンチガイドにストリッパプレートを配置(特許文献1)したり、或いは、パンチガイドとリテーナとの着脱を可能とすることにより該パンチガイド内に収容されたパンチを交換したりするものあることから、極め部品点数が多く、何れも採用することができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであって、プレス成形装置に対して、容易に交換することができるとともに、部品点数も極めて少ないパンチ金型及びこのパンチ金型を備えたプレス成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、パンチ金型に係るものであって、左右のパンチホルダ側挿通穴が形成され昇降動作するパンチホルダと、このパンチホルダの下方に配置され該パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のバッキングプレート側挿通穴が形成されたバッキングプレートと、このバッキングプレートの下方に配置され上記パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のパンチプレート側挿通穴と左右のパンチ挿通穴とが形成されたパンチプレートと、このパンチプレートの下方に配置されワークが載置されるダイプレートと、上記パンチプレートと上記ダイプレートとの間に配置され左右のネジ穴と左右のパンチ挿通穴とが形成された可動ストリッパと、それぞれ軸部とこれらの軸部の上端に形成され下面が上記バッキングプレートの上面に支持される頭部とを有し、該軸部の下端側は上記左右のネジ穴の何れかに螺着されて上記可動ストリッパに固定され、上記軸部は該パンチホルダ側挿通穴と上記バッキングプレート側挿通穴との双方に挿通されてなる左右のストリッパボルトと、上記左右のストリッパボルトにそれぞれ外嵌挿され上端は上記バッキングプレートの下面当接し下端は上記可動ストリッパの上面に当接してなる左右のコイルスプリングと、を備えたプレス成形装置に固定され、上記パンチプレートに形成されたパンチ挿通穴に該パンチプレートの上方から嵌合されて該パンチプレートに支持されてなるとともに、上記パンチホルダが下降動作する前においてはそれぞれの下端が上記パンチ挿通穴内に位置する左右のパンチ本体と、下端にはワークを切断するパンチ刃部とが形成されてなるともに、該左右のパンチ本体に対して着脱自在とされた備えた交換用パンチと、を備え、上記左右のパンチ本体と上記交換用パンチとは、該交換用パンチの下側から螺進されるボルトにより互いに固定されてなるか、又は、外周面に一方のネジが螺刻されたボルト部と、このボルト部に螺刻された一方のネジが螺着される他方のネジが内周面に螺刻されたナット部とが、上記左右のパンチ本体と交換用パンチとの何れかに相対的に形成され、該ボルト部とナット部とが互いに螺着されてなり、上記交換用パンチは、該交換用パンチの下面中央においてレンチなどの工具の先端により回動操作されるものであることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係るパンチ金型は、プレス成形装置に固定されるものであって、このプレス成形装置は、上記左右のパンチホルダ側挿通穴が形成され昇降動作するパンチホルダと、このパンチホルダの下方に配置され該パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のバッキングプレート側挿通穴が形成されたバッキングプレートと、このバッキングプレートの下方に配置され上記パンチホルダの昇降動作と同時に昇降動作するとともに左右のパンチプレート側挿通穴と左右のパンチ挿通穴とが形成されたパンチプレートと、このパンチプレートの下方に配置されワークが載置されるダイプレートと、上記パンチプレートと上記ダイプレートとの間に配置され左右のネジ穴と左右のパンチ挿通穴とが形成された可動ストリッパと、それぞれ軸部とこれらの軸部の上端に形成され下面が上記バッキングプレートの上面に支持される頭部とを有し、該軸部の下端側は上記左右のネジ穴の何れかに螺着されて上記可動ストリッパに固定され、上記軸部は該パンチホルダ側挿通穴と上記バッキングプレート側挿通穴との双方に挿通されてなる左右のストリッパボルトと、上記左右のストリッパボルトにそれぞれ外嵌挿され上端は上記バッキングプレートの下面当接し下端は上記可動ストリッパの上面に当接してなる左右のコイルスプリングと、を備えたものである。
【0010】
この第1の発明に係るパンチ金型では、上記左右のパンチ本体と、交換用パンチとを備えてなるものであり、この交換用パンチの下端にはワークを切断するパンチ刃部とが形成されてなるともに、該左右のパンチ本体に対して着脱可能とされてなるものである。そして、上記左右のパンチ本体と上記交換用パンチとは、該交換用パンチの下側から螺進されるボルトにより、上記左右のパンチ本体に固定されてなるか、又は、外周面に一方のネジが螺刻されたボルト部と、このボルト部に螺刻された一方のネジが螺着される他方のネジが内周面に螺刻されたナット部とが、上記左右のパンチ本体と交換用パンチとの何れかに相対的に形成され、該ボルト部とナット部とが互いに螺着されてなるものである。すなわち、この第1の発明に係るパンチ金型は、上記左右のパンチ本体と上記交換用パンチとは、該交換用パンチの下側から螺進されるボルトにより互いに固定されてなる場合(以下、前者の構成と言う。)と、外周面に一方のネジが螺刻されたボルト部と、このボルト部に螺刻された一方のネジが螺着される他方のネジが内周面に螺刻されたナット部とが、上記左右のパンチ本体と交換用パンチとの何れかに相対的に形成され、該ボルト部とナット部とが互いに螺着されてなる場合(以下、後者の構成と言う。)との二通りの場合を含むものである。説明するまでもなく、後者の構成は、上記ボルト部が交換用パンチに形成され、上記ナット部が左右のパンチ本体に形成されている場合と、これとは逆に、上記ボルト部が左右のパンチ本体に形成され、上記ナット部が交換用パンチに形成されている場合とを含む。
【0011】
そして、前者の構成に係るパンチ金型によれば、上記ボルトを上記交換用パンチの下方から螺退操作又は螺進操作することにより、上記左右のパンチ本体から交換用パンチを取り外し又は取り付けることが可能であり、外径や長さ又はパンチ刃部の形状が異なる新たな交換用パンチを極めて容易に交換することができる。また、後者の構成によれば、上記交換用パンチ又は左右のパンチ本体に形成されたボルト部と、上記左右のパンチ本体に形成されたボルト部又は交換用パンチに形成されたナット部とを互いに螺進させることにより、交換用パンチを左右のパンチ本体に固定させることができ、また、上記ナット部からボルト部を螺退させることにより、交換用パンチを左右のパンチ本体から取り除くことが可能となる。
【0012】
したがって、上記第1の発明に係るパンチ金型によれば、前者の構成であっても後者の構成であっても、上記交換用パンチの下側から、上記ボルトを螺退又は螺進させることにより、或いは、上記交換用パンチを正回転させ又は逆回転させることにより、交換用パンチを上記左右のパンチ本体に取り付け又は取り外すことができ、このため、前述した上記パンチホルダ、バッキングプレート等を取り除くことなく、左右のパンチ本体に対する交換用パンチを極めて容易且つ迅速に交換することができる。特に、この発明に係るパンチ金型は、従来のパンチング金型又はパンチ金型に比べて部品点数は極めて少ないことから、製造コストも大幅に低減することが可能となる。
【0013】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記左右のパンチ本体の下方には小径軸部が形成され、この小径軸部の下面の中央には、該中央から垂下してなる円柱状垂下部が形成され、この円柱状垂下部の下面中央からは外周に一方のネジが螺刻されたボルト部が垂下してなり、前記交換用パンチは、全体の外形形状が円柱状に成形されてなるとともに、上面の中央から下方には内周に上記一方のネジが螺着される他方のネジが螺刻されたナット部が形成されてなるとともに、該交換用パンチの底面には、レンチの先端が挿入される六角状の回動操作用凹部が形成され、また、該交換用パンチの底面から上面には、上記六角状の回動操作用凹部の周囲において複数のネジ穴が該交換用パンチを貫通した状態で形成され、上記複数のネジ穴のそれぞれには、上端が上記小径軸部の下面に上端が圧接される小径ネジが螺着されてなることを特徴とするものである。
【0014】
上記第の発明に係るパンチ金型によれば、上記交換用パンチをパンチ本体から容易に交換することができるばかりではなく、上記複数の小径ボルトの上端は、上記小径軸部の下面に圧接されてなるものであることから、交換用パンチの緩み止めを効果的に防止できる。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記複数のネジ穴は、前記回動操作用凹部の周囲に等間隔に配置されてなることを特徴とするものである。
【0016】
この第3の発明に係るパンチ金型では、前記複数のネジ穴は、前記回動操作用凹部の周囲に等間隔に配置されてなることから、ワークの加工の際における荷重は、これらの小径ボルトにそれぞれ均等に作用し、一部の小径ボルトに偏って作用することはない。したがって、こうした第3の発明に係るパンチ金型によれば、より交換用パンチの緩み止めを防止できるばかりではなく、ワークの加工が繰り返されることにより、パンチ本体に対する交換用パンチの取付状態が微妙に変化され、こうした変化によりワークの加工精度が低下することを防止することができる。
【0017】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1、第2又は第3の発明の何れかにおいて、前記プレス成形装置を構成するパンチプレートには、フランジ嵌合凹部が形成され、前記パンチ本体の上端には、上記パンチプレートに形成されたフランジ嵌合凹部内に嵌合されるフランジ部が形成され、このフランジ部の平面形状は、楕円状又は方形状若しくは該フランジ部の中心を交差する長さと幅が互いに異なる形状とされてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第4の発明に係るパンチ金型では、上記パンチ本体の上端に形成されたフランジ部の平面形状は、楕円状又は方形状若しくは該フランジ部の中心を交差する長さと幅が互いに異なる形状とされてなることから、上記交換用パンチとパンチ本体とが、ワークを加工する際に受ける衝撃力により回転したり、また、該交換用パンチを回動操作し、或いは、該交換用パンチとパンチ本体を締結するボルトを回動操作する場合に、パンチ金型全体が共回りすることを防止することができ、この結果、よりワークの加工精度を向上することができる。
【0019】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、プレス成形装置に係るものであって、前記第1、第2、第3又は第4発明の何れかのパンチ金型を備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第5の発明に係るプレス成形装置による場合であっても、上記第1、第2、第3又は第4の発明と同じ作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るプレス金型やプレス成形装置によれば、上記ボルトを螺退又は螺進させることにより、或いは、上記交換用パンチを正回転させ又は逆回転させることにより、該交換用パンチを上記パンチ本体に取り付け又は取り外すことができ、このため、パンチ本体に対する交換用パンチを極めて容易且つ迅速に交換することができる。特に、この発明に係るパンチ金型は、従来のパンチング金型又はパンチ金型に比べて部品点数は極めて少ないことから、製造コストも大幅に低減することが可能となる。
【0022】
特に、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係るパンチ金型によれば、上記交換用パンチをパンチ本体から容易に交換することができるばかりではなく、上記複数の小径ボルトの上端は、上記小径軸部の下面に圧接されてなるものであることから、交換用パンチの緩み止めを効果的に防止できる。
【0023】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係るパンチ金型では、前記複数のネジ穴は、前記回動操作用凹部の周囲に等間隔に配置されてなることから、ワークの加工の際における荷重は、これらの小径ボルトにそれぞれ均等に作用し、一部の小径ボルトに偏って作用することはない。したがって、こうした第3の発明に係るパンチ金型によれば、より交換用パンチの緩み止めを防止できるばかりではなく、ワークの加工が繰り返されることにより、パンチ本体に対する交換用パンチの取付状態が微妙に変化され、こうした変化によりワークの加工精度が低下することを防止することができる。
【0024】
また、上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係るパンチ金型によれば、上記交換用パンチとパンチ本体とが、ワークを加工する際に受ける衝撃力により回転したり、また、該交換用パンチを回動操作し、或いは、該交換用パンチとパンチ本体を締結するボルトを回動操作する場合に、パンチ金型全体が共回りすることを防止することができ、この結果、よりワークの加工精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】プレス成形装置を一部破断して示す正面図である。
図2】パンチ本体に交換用パンチを取り付けた状態を示す断面図である。
図3】パンチ本体と交換用パンチを分離した状態を示す断面図である。
図4】第2の実施の形態に係るパンチ金型を示す断面図である。
図5図2に示す交換用パンチに小径ボルトが配置された例を示す断面図と、その底面図である。
図6】パンチ本体と交換用パンチとが、固定ボルトにより固定された例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るプレス成形装置及びこのプレス成形装置を構成するパンチ金型を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と言う。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
この実施の形態に係るプレス成形装置1は、図1に示すように、最も下方に固定されたダイホルダ2と、このダイホルダ2の上方に配置され図示しない昇降駆動装置により昇降動作するパンチホルダ3と、上記ダイホルダ2の左右の上面から鉛直方向に起立した左右のガイドポスト4,4と、上記パンチホルダ3の下面から垂下し内側には上記ガイドポスト4,4の上端側が挿通されたガイドブシュ5,5を備えている。なお、上記パンチホルダ3には、上記左右のガイドポスト4,4の上端側が挿通される挿通穴(符号は省略する。)が形成され、また、これらの挿通穴の内側には、後述する左右のストリッパボルト9,9の軸部9a,9aが昇降自在に挿通されたパンチホルダ側挿通穴3a,3aが形成されている。そして、上記パンチホルダ3の下方には、バッキングプレート6が配置され、更にこのバッキングプレート6の下方には、パンチプレート7が図示しないボルトにより固定されている。そして、このパンチプレート7には、左右のフランジ嵌合凹部7a,7aと、これら左右のフランジ嵌合凹部7a,7aからさらに下方に形成されたパンチ挿通穴7b,7bが互いに連通した状態で形成されている。また、このパンチプレート7の左右には、それぞれ後述するストリッパボルト9,9及びコイルスプリング15,15が挿通されるパンチプレート側挿通穴7c,7cが形成されている。
【0028】
また、上記パンチプレート7の下方には、可動ストリッパ8が固定され、該可動ストリッパ8には、後述する左右のストリッパボルト9,9の軸部9a,9aの下端側が螺着されるネジ穴8a,8aと、後述する左右のパンチ本体11,11に形成された小径軸部11c,11cが挿通されるパンチ挿通穴8b,8bがそれぞれ形成されている。そして、上記パンチプレート7には、左右のパンチ本体11,11が支持されている。これらのパンチ本体11,11は、上記パンチプレート7の上方から上記フランジ嵌合凹部7a,7a及びパンチ挿通穴7b,7bに嵌合されてなるものであり、該フランジ嵌合凹部7a,7aに嵌合されるフランジ部11a,11aと、このフランジ部11a,11aの下面中央から垂下してなる大径軸部11b,11bと、この大径部11b,11bの下端から更に垂下してなる小径軸部11c,11cとから構成されている。なお、図1では、左側のパンチ本体11を構成する上記大径軸部11b及び小径軸部11cは、右側のパンチ本体11を構成する上記大径軸部11b及び小径軸部11cよりも大径とされている。そして、上記左右のパンチ本体11、11の下端には、交換用パンチ12,12が着脱自在に取り付けられている。なお、上記パンチ本体11と交換用パンチ12は、本発明を構成するパンチ金型である。
【0029】
そして、上記可動ストリッパ8に形成された上記ネジ穴8a,8aには、左右のストリッパボルト9,9の軸部9a,9aが螺着されている。これら左右のストリッパボルト9,9は、上記軸部9a,9aと、この軸部9a,9aの上端に形成された頭部(符号は省略する。)とから構成され、これらの頭部を含めた上端側は、上記パンチホルダ3に形成された上記挿通穴に挿通されている。また、上記左右のストリッパボルト9,9には、それぞれコイルスプリング15,15が外嵌挿され、該コイルスプリング15,15の上端は、上記バッキングプレート6の下面にそれぞれ当接し、下端はそれぞれ上記可動ストリッパ8の上面に当接している。また、上記ダイホルダ2の上面には、ワークWが載置されるダイプレート16が固定され、また、該ダイホルダ2には、上記交換用パンチ12,12の下端に形成されたパンチ刃部12e,12e(図3参照)により切断されたワークWの破片が落下する落下用穴2a,2aと、左右の固定ボルト17,17が挿通されるボルト挿通穴2b,2bが形成されている。また、上記ダイホルダ2の上面に固定された上記ダイプレート16は、上記左右の固定ボルト17,17により固定され、このダイプレート16には、下降した上記左右の交換用パンチ12,12が挿通される下方側パンチ挿通穴16a,16aが形成されている。なお、上記ダイプレート16の左右両側には、昇降する上記可動ストリッパ8を内側面でガイドするガイド部材18,18が、上記ダイホルダ2の上面から起立した状態で固定されている。
【0030】
したがって、図示しない駆動手段の駆動により、上記パンチホルダ3が、上記コイルスプリング15,15の弾性力に抗して、上記ガイドポスト4,4にガイドされながら下降すると、上記バッキングプレート6,パンチプレート7,可動ストリッパ8とともに、それぞれ下端に上記交換用パンチ12,12が取り付けられた上記左右のパンチ本体11,11も下降すると、上記ダイプレート16上に載置されたワークWは、上記交換用パンチ12,12の先端に形成された上記パンチ刃部12e,12eにより打ち抜かれ、この打ち抜かれたワークWの破片は、上記下方側パンチ挿通穴16a,16a及び落下用穴2a,2aから落下する。また、上記パンチホルダ3が所定位置まで下降すると、次いで駆動手段の駆動及び上記コイルスプリング15,15の弾性力により、再び元の位置に復帰する。
【0031】
そして、上述したパンチ本体11と交換用パンチ12は、それぞれ以下に説明する構成を有している。上記パンチ本体11は、図2に示すように、上述したように、フランジ部11aと、このフランジ部11aの下面中央から垂下してなる大径軸部11bと、この大径部11bの下端から更に垂下してなる小径軸部11cを備えている。なお、上記フランジ部11aの平面形状は、楕円状に成形されている。そして、上記小径軸部11cには、図3に示すように、該小径軸部11cの下面(底面)11dから上方に向かって円柱状凹部11eが形成され、この円柱状凹部11eの上方には、内周面に他方のネジ11fが形成されたナット部11gが形成されている。上記円柱状凹部11eと上記ナット部11gとは互いに軸芯が同一とされてなるとともに互いに連通し、該ナット部11gの内径は、上記円柱状凹部11eの内径よりも小径とされている。また、上記ナット部11gの上方には、後述する交換用パンチ12を構成するボルト部12dの外径よりやや小径とされた上方凹部11hが該ナット部11g内と連通した状態で形成され、さらにこの上方凹部11hの上方には、下端から上端に亘って徐々に縮径された円錐状凹部11iが形成されている。
【0032】
また、上記交換用パンチ12は、図3に示すように、上記パンチ本体11を構成する小径軸部11の外径と同一の外径に成形された円柱部12aと、この円柱部12aの上面から起立し該円柱部12aよりも外径が小径とされた小径円柱部12bと、この小径円柱部12bの上端から起立し外周には一方のネジ12cが形成されたるボルト部12dから構成されている。そして、上記円柱部12aの下面の外周は、ワークWを切断するパンチ刃部12eとされている。また、上記円柱状部12aの下面中央には、図示しないレンチなどの工具の先端が挿入される回動操作用凹部12fが形成されている。なお、上記円柱部12a,小径円柱部12b及びボルト部12dは、それぞれ同一の軸芯とされている。また、上記円柱部12aの上面であって上記小径円柱部12bの基端の周囲は、円環状の当接面12gとされている。
【0033】
そして、上記交換用パンチ12は、図3に示すように、上記パンチ本体11の下方から、上記ボルト部12dを、上記円柱状凹部11d内に挿入するとともに、図示しない工具を使用して、該ボルト部12dに形成された一方のネジ12cと上記他方のネジ11fとを螺着・螺進させ、該パンチ本体11の下面11dが該交換用パンチ12に形成された当接面12gに当接するまで螺進させることにより、パンチ本体11に固定される。
【0034】
したがって、本発明に係るパンチ金型を構成する上記パンチ本体11と交換用パンチ12(さらには、こうしたパンチ本体11と交換用パンチ12を備えたプレス成形装置1)によれば、加工すべきワークWの素材が変更されたり、ワークWに成形すべき形状や内径寸法が変更されたりする場合において、その都度、上記パンチホルダ3、バッキングプレート6等を取り除く必要はなく、単に上記交換用パンチ12を取り外し、図示しない所定の交換用パンチを取り付ければ良い。特に、上記実施の形態に係るパンチ金型では、パンチ本体11と交換用パンチ12の僅か二つの部材から構成されており、特許文献1又は特許文献2に開示された多数の構成要素によりパンチの交換作業の迅速化を図るものと比較すれば、製造コストを大きく低減することが可能となる。
【0035】
なお、上記交換用パンチ12には、上記パンチ本体11に取り付けた後に該交換用パンチ12が逆転する(パンチ本体11との締結状態が緩む)ことを防止するために、上記ボルト部12dの外周に緩み止め手段として、図3中破線で示すリング状の緩み止め部材(フリクションプレート)21を配置したり、上記パンチ本体11を構成するナット部11gの内周に、図3中破線で示すリング状の緩み止め部材22が配置され、或いは、上記ボルト部12dの外周やナット部11gの内周に図示しない樹脂が被着されているものであっても良い。さらには、こうした緩み止め手段としては、上記ボルト部12dの外周の全部又は一部に図示しない接着剤が塗布されているものであっても良い。
【0036】
また、上述した実施の形態に係るパンチ金型では、上記パンチ本体11にナット部11gが形成され、上記交換用パンチ12にボルト部12dが形成され、このナット部11gにボルト部12dが螺着される構成を採用したが、本発明は、図4に第2の実施の形態として示すように、パンチ本体31にボルト部31eを形成し、交換用パンチ32にナット部32cが形成されてなるものであっても良い。
【0037】
この第2の実施の形態に係る上記パンチ本体31は、図4に示すように、該パンチ本体31に形成された小径軸部31aの下面31bの中央から垂下してなる円柱状垂下部31cが形成され、この円柱状垂下部31cの下面中央には、外周に一方のネジ31dが螺刻されたボルト部31eが形成されている。一方、上記交換用パンチ32は、全体の外形形状が円柱状に成形されてなるとともに、上面の中央から下方には、上記円柱状垂下部31cが嵌合する嵌合凹部32aが形成され、また、この嵌合凹部32aの下方には、内周に他方のネジ32bが螺刻されたナット部32cが形成されている。なお、この交換用パンチ32の下面には、図示しないレンチ(工具)の先端が挿入される六角状の回動操作用凹部32dが形成されている。
【0038】
そして、さらにこの第2の実施の形態に係る交換用パンチ32には、該交換用パンチ32の底面から上面には、4つのネジ穴32fが該交換用パンチ32を貫通した状態で形成されている。これらのネジ穴32fは、上記六角状の回動操作用凹部32dの周囲(上記ボルト部31eの周回り方向)に均等(等間隔)に形成されてなるものであって、それぞれの内周には小径ネジ(符号は省略する。)が螺刻されている。そして、これらのネジ穴32fには、該ネジ穴32fの長さよりも短い小径ボルト(イモネジ)33が螺着され、それぞれの小径ボルト33の上端は、上記パンチ本体31を構成する円柱状垂下部31cの周囲に形成された円環状の平面(符号は省略する。)に圧接されている。なお、上記各小径ボルト33は、本発明を構成する緩み止め部材であり、上端から下端までが軸部(符号は省略する)とされ、該軸部の下面には、該小径ボルト33の回動操作を行うレンチ等の工具の先端が挿入される凹部が形成されている。なお、上記小径ボルト33は、図示しないビスであっても良い。
【0039】
したがって、上記第2の実施の形態に係るパンチ金型による場合であっても、上記交換用パンチ32をパンチ本体31から容易に交換することができる。特に、このパンチ金型では、上記4つの小径ボルト33の上端は、上記円環状の平面に圧接されてなるものであるとともに、該小径ボルト33は、上記回動操作用凹部32dの周囲(上記ボルト部31eの周回り方向)に均等(等間隔)に配置されていることから、上記ワークWの加工の際における荷重は、これらの小径ボルト33にそれぞれ均等に作用し、一部の小径ボルト33に偏って作用することはない。したがって、こうした構成に係るパンチ金型によれば、より交換用パンチ32の緩み止めを防止できるばかりではなく、ワークWの加工が繰り返されることにより、パンチ本体31に対する交換用パンチ32の取付状態が微妙に変化され、こうした変化によりワークWの加工精度が低下することを防止することができる。
【0040】
図5は、上記交換用パンチ12に、5つの小径ボルト33が配置された状態を示すものである。なお、この図5では、図1及び図2に付した各部材の符号と共通する符号は同一のものを付した。これら5つのネジ穴12jは、何れも貫通してなるものであり、それぞれのネジ穴12jには、上記小径ボルト33が螺着され、上記4つのネジ穴12jに螺着された小径ボルト33の上端は、上記パンチ本体11の下面(底面)11dに圧接されてなり、他方、上記回動操作用凹部12fの中央に形成されたネジ穴11jに螺着された小径ボルト33の上端は、上記上方凹部11hが形成されたパンチ本体11内部に圧接されている。なお、この図5に示されたパンチ本体11には、上記円錐状凹部11iは形成されていない。
【0041】
したがって、上述したように、全部で5つの小径ボルト33が交換用パンチ12に配置されたものであっても、該交換用パンチ12が緩むことを有効に防止することができる。
【0042】
また、本発明は、上記パンチ本体と上記交換用パンチとが、該交換用パンチの下側から螺進されるボルトにより互いに固定されてなるものであっても良い。例えば、図6に第3の実施の形態として示すパンチ金型のように、パンチ本体41の下端側には、ナット部41aが形成されている。このナット部41aは、該パンチ本体41の下面中央から上方に形成された大径凹部41bの上方に該大径凹部41bに連通してやや小径に形成されてなるものであって、内周には一方のネジ41cが螺刻されたものである。他方、上記交換用パンチ42は、外形形状が円柱状に成形されてなるものであり、中央には、固定ボルト43を構成する頭部43aが回動操作可能に収容される大径挿通穴42aと、上記固定ボルト43の軸部43bが挿通される小径挿通穴42bがそれぞれ連通した状態で成形されている。また、この交換用パンチ42の下面から上面には、複数のネジ穴42cが貫通した状態で形成され、これらのネジ穴42cには、それぞれ先に説明した小径ボルト44が螺着され、これらの小径ボルト44の上端は、上記パンチ本体41の下面に圧接されている。また、上記固定ボルト43は、上記頭部43a及び軸部43bを備え、該頭部43aの下面中央には、図示しないレンチ(工具)の先端が挿入される回動操作用凹部43cが形成されている。
【0043】
上述した第3の実施の形態に係るパンチ金型やこのパンチ金型を備えたプレス成形装置1による場合であっても、上記固定ボルト43の螺進操作又は螺退操作により、上記交換用パンチ42をパンチ本体41から極めて容易に取り付け又は取り外すことができるとともに、上記複数の小径ボルト44により、該交換用パンチ42が緩んでしまうことを有効に防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 プレス成形装置
パンチホルダ
3a パンチホルダ側挿通穴
バッキングプレート
パンチプレート
7a フランジ嵌合凹部
7b パンチ挿通穴
7c パンチプレート側挿通穴
ストリッパ
ストリッパボルト
11 パンチ本体
11a フランジ部
11f 他方のネジ
11g ナット部
12 交換用パンチ
12c 一方のネジ
12d ボルト部
12e パンチ刃部
12f 回動操作用凹部
12j ネジ穴
16 ダイプレート
21 緩み止め部材
22 緩み止め部材
31 パンチ本体
31e ボルト部
31d 一方のネジ
32 交換用パンチ
32b 他方のネジ
32c ナット部
32d 回動操作用凹部
33 小径ボルト
41 パンチ本体
42 交換用パンチ
42c ネジ穴
43 固定ボルト
43c 回動操作用凹部
44 小径ボルト
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6