(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
B43L19/00 H
(21)【出願番号】P 2019148403
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 拡道
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-142095(JP,U)
【文献】特表2003-523857(JP,A)
【文献】特開2015-142981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜が塗布された転写テープを巻装した供給リールと、
前記転写テープに保持された前記塗膜を被転写面に転写する転写部と、
前記供給リールから繰り出され、前記転写部により前記塗膜が前記被転写面に転写された後の前記転写テープを巻き取る巻取リールと、
前記塗膜を切断する切断位置と、該切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能な切断部材と、を備え、
前記切断部材は、
前記被転写面に押圧されることで前記退避位置に移動し、
前記押圧から解除されると、前記切断位置に戻る、塗膜転写具。
【請求項2】
前記切断部材は、
前記切断位置において前記転写部の下側に位置し、
前記転写部を被転写面に近接させたときに、前記転写部よりも先に前記被転写面に当接
する、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
塗膜が塗布された転写テープを巻装した供給リールと、
前記転写テープに保持された前記塗膜を被転写面に転写する転写部と、
前記供給リールから繰り出され、前記転写部により前記塗膜が前記被転写面に転写された後の前記転写テープを巻き取る巻取リールと、
前記塗膜を切断する切断位置と、該切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能な切断部材と、を備え、
前記切断部材と連結されている駆動部材を備え、
前記駆動部材は、
前記被転写面に押圧されることで前記切断部材を前記退避位置に移動させ、
前記押圧から解除されると、前記切断部材を前記切断位置に戻す、塗膜転写具。
【請求項4】
前記
駆動部材は、
前記転写部を被転写面に近接させたときに、前記転写部よりも先に前記被転写面に当接
する、
請求項
3に記載の塗膜転写具。
【請求項5】
前記切断部材を前記退避位置から前記切断位置に復帰させる弾性部材を備える、
請求項1
から4のいずれか1項に記載の塗膜転写具。
【請求項6】
前記切断部材と連結されている駆動部材と、
前記切断部材を前記退避位置から前記切断位置に復帰させる弾性部材と、を備え
前記弾性部材は前記塗膜転写具の枠体と、前記駆動部材との間に配置され、
前記押圧により弾性変形し、
前記押圧の解除により、前記切断部材を前記切断位置に復帰させる、
請求項
1から5のいずれか1項に記載の塗膜転写具。
【請求項7】
前記駆動部材は、前記供給リールとともに回転するギア部材と噛み合うギア係合歯が設けられ、前記切断部材の前記退避位置への移動とともに移動して前記ギア部材及び前記供給リールを回転させ、前記供給リールの回転により前記転写テープを繰り出す、
請求項
6に記載の塗膜転写具。
【請求項8】
前記切断部材の前記切断位置への復帰の際に、
前記駆動部材の戻りによって前記ギア部材は回転するが、前記供給リールの逆回転を防止するラチェット機構を備える、
請求項
7に記載の塗膜転写具。
【請求項9】
前記枠体の側面にはカムが設けられ、
前記切断部材には、該切断部材を、前記退避位置に移動する際に、前記転写テープと接触しないように駆動するカムフォロアが設けられている、
請求項
6から
8のいずれか1項に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼着用又は修正用等の転写テープを備える塗膜転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗膜転写具として、前端が開口したケース内に供給リールと巻取リールとを配置し、開口より転写部を突出させたものがある。そして、一面に貼着用又は修正用等の塗膜が設けられた転写テープを供給リールから繰り出させ、転写ヘッドの先端で反転させた後に、供給リールの回転トルクを、供給ギア及び巻取ギアを介して伝えることにより駆動される巻取リールに巻き取らせている。
【0003】
使用時には、被転写面に転写部を押圧して移動させることにより、転写テープが供給リールから引出されるとともに、被転写面に転写テープの塗膜が転写される。
その転写時に塗膜の糸引き現象が発生する場合がある。糸引き現象とは、転写を終了し塗膜転写具の転写部を被転写面から離間するときに、被転写面に転写された塗膜と転写部の塗膜との間で塗膜が切断されずに糸のように伸びてしまう現象である。
【0004】
塗膜の糸引き現象が発生すると、例えば粘着用の転写テープの場合、未転写の塗膜が糊玉となって被転写面やケース等に付く場合がある。また、未転写の塗膜が引っ張られることにより、転写部に到達する前に塗膜が剥がれ、再び転写する際の転写位置において塗膜が存在しない状態が生じる場合もある。
このため、従来、転写部(転着ローラ)との間で塗膜を挟むように塗膜の切離部材を取り付けた塗膜転写具がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術の塗膜転写具は、切離部材に塗膜が貼着しないように切離部材にシリコーンをコーティングしたりフッ素樹脂素材で形成したりし、また、転写テープ(塗膜が貼着された帯状フィルム)の送り出しを妨げないように切離部材をローラ状としてもよいとされているものの、糸引き現象が発生していない場合であっても、塗膜と切離部材が接触しているので、転写前の塗膜がこすれて剥がれたり切れたりする可能性がある。
従って、本発明は、転写前の塗膜の状態を良好に保ちつつ、且つ糸引き現象を防止できる塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の塗膜転写具は、塗膜が塗布された転写テープを巻装した供給リールと、前記転写テープに保持された前記塗膜を被転写面に転写する転写部と、前記供給リールから繰り出され、前記転写部により前記塗膜が前記被転写面に転写された後の前記転写テープを巻き取る巻取リールと、前記塗膜を切断する切断位置と、該切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能な切断部材と、を備える。
【0008】
前記切断部材を前記退避位置から前記切断位置に復帰させる弾性部材を備えてもよい。
【0009】
前記切断部材は、前記切断位置において前記転写部の下側に位置し、前記転写部を被転写面に近接させたときに、前記転写部よりも先に前記被転写面に当接し、前記被転写面に押圧されることで前記退避位置に移動し、前記押圧から解除されると、前記切断位置に戻ってもよい。
【0010】
前記切断部材と連結されている駆動部材を備え、前記駆動部材は、前記転写部を被転写面に近接させたときに、前記転写部よりも先に前記被転写面に当接し、前記被転写面に押圧されることで前記切断部材を前記退避位置に移動させ、前記押圧から解除されると、前記切断部材を前記切断位置に戻してもよい。
【0011】
前記切断部材と連結されている駆動部材と、前記切断部材を前記退避位置から前記切断位置に復帰させる弾性部材と、を備え、前記弾性部材は前記塗膜転写具の枠体と、前記駆動部材との間に配置され、前記押圧により弾性変形し、前記押圧の解除により、前記切断部材を前記切断位置に復帰させてもよい。
【0012】
前記駆動部材は、前記供給リールとともに回転するギア部材と噛み合うギア係合歯が設けられ、前記切断部材の前記退避位置への移動とともに移動して前記ギア部材及び前記供給リールを回転させ、前記供給リールの回転により前記転写テープを繰り出してもよい。
【0013】
前記切断部材の前記切断位置への復帰の際に、前記駆動部材の戻りによって前記ギア部材は回転するが、前記供給リールの逆回転を防止するラチェット機構を備えてもよい。
【0014】
前記枠体の側面にはカムが設けられ、前記切断部材には、該切断部材を、前記退避位置に移動する際に、前記転写テープと接触しないように駆動するカムフォロアが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、転写前の塗膜の状態を良好に保ちつつ、且つ糸引き現象を防止できる塗膜転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の塗膜転写具1の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の塗膜転写具1の分解斜視図である。
【
図3】ラチェット爪保持環10及びギア部材11を、
図2と逆方向から見た斜視図である。
【
図4】第1実施形態の第1内枠体3L、切断部材40、駆動部材50、ギア部材11、バネ部材51、及び転写ローラ5の分解斜視図である。
【
図5】第1実施形態の第1内枠体3L、切断部材40、駆動部材50、ギア部材11、バネ部材51、及び転写ローラ5を組み合わせた状態の斜視図である。
【
図6】(a)から(e)は、塗膜転写時における、第1実施形態の切断部材40の動作を説明する図である。
【
図7】(a)から(c)は、第1実施形態の転写ローラ5を含む部分の拡大図であり、糸引き現象の防止動作を説明する図である。
【
図8】第2実施形態の塗膜転写具100の斜視図である。
【
図9】第2実施形態の塗膜転写具100の分解斜視図である。
【
図10】(a)、(b)、(c)、(d)は第2実施形態の塗膜転写具100の第1外枠体102Lから右側に各部材を取り付けていった状態を示す図である。
【
図11】(a)、(b)、(c)、(d)は
図10(d)からさらに第2実施形態の塗膜転写具100の第1外枠体102Lから右側に各部材を取り付けていった状態を示す図である。
【
図12】(a)、(b)は、第2実施形態の塗膜転写具100の第2外枠体102Rから左側に、支持部材145を取り付けていった状態を示す図である。
【
図13】(a)から(c)は、第2実施形態の塗膜転写具100の塗膜転写時の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の塗膜転写具1を図面に基づいて説明する。
図1は、塗膜転写具1の斜視図である。
図2は、塗膜転写具1の分解斜視図である。以下、
図1から
図5の説明において、塗膜転写時に右利きの使用者が塗膜転写具1を手に持った時の左右、前後、上下を明細書中においても左右、前後、上下として説明する。
【0018】
塗膜転写具1は、塗膜の被転写面への転写時に、外枠体2の前側に設けられた開口部2aから突出して保持された転写ローラ5の下面(塗膜転写前の転写テープ4Tが通過する側)を被転写面に押し付けるように外枠体2に斜め下向きの力を加えて後ろに引くと、転写テープ4Tの一面に保持されている塗膜が被転写面に転写されるものである。
【0019】
塗膜転写具1は、それぞれが略楕円形の左右一対の第1外枠体2L、第2外枠体2Rからなる外枠体2と、外枠体2の内部に配置された左右一対の第1内枠体3Lと第2内枠体3Rとからなる内枠体3とを備える。
実施形態の塗膜転写具1は、
図2中符号1Aで示す部分が本体部1Aで、図中符号1Bで示す部分がカートリッジ部1Bで、本体部1Aに対してカートリッジ部1Bが交換可能である。ただし、本発明はこれに限定されず、本体部1Aに対してカートリッジ部1Bが交換可能でなくてもよい。
【0020】
(外枠体2)
右側の第2外枠体2Rの内面には、端部に係止部8aが設けられた供給リール用支軸8と、巻取リール用支軸13とが左側に向って立設されている。
【0021】
(ロック部材9)
右側の第2外枠体2Rの下面には、前後に延びるスリット2cが設けられている。スリット2cには、ロック部材9が前後にスライド可能に取り付けられている。ロック部材9は略矩形状に形成され、このロック部材9には、前端が上側に延び、後述の切断部材40と係合して切断部材40を固定する切断部材固定部9aが設けられている。
【0022】
(供給リール用ギアアセンブリ7)
供給リール用支軸8には供給リール用ギアアセンブリ7が挿入されている。供給リール用ギアアセンブリ7は、供給リール用ギア7Aと、圧縮スプリング7Bと、回転力伝達環7Cと、を備える。
【0023】
(回転力伝達環7C)
回転力伝達環7Cは、端部に係止部7aを有する筒状の回転軸7bを備える。回転軸7bに、圧縮スプリング7Bと供給リール用ギア7Aとが順次外嵌され、供給リール用ギア7Aが係止部7aに係止されることで、回転力伝達環7Cと、圧縮スプリング7Bと、供給リール用ギア7Aとが一体となっている。
圧縮スプリング7Bは、回転力伝達環7Cと供給リール用ギア7Aとの間に圧縮された状態で挟持され、圧縮スプリング7Bの復元力により摩擦力が生じるとともに、回転力伝達環7Cと供給リール用ギア7Aとが、互いに相対回転可能な状態となっている。
回転軸7bは供給リール用支軸8に挿入され、供給リール用ギアアセンブリ7全体が供給リール用支軸8の係止部8aによって抜け止めされ、供給リール用ギアアセンブリ7は供給リール用支軸8に対して回転可能に保持される。
【0024】
回転力伝達環7Cの外周には、係止突起7cが設けられている。一方、供給リール4の内周面には、係止突起7cが係止するリブ状係止部4aが設けられている。係止突起7cがリブ状係止部4aに係止することにより、回転力伝達環7Cは供給リール4と一体的に回転する。
【0025】
供給リール4が回転すると、回転力伝達環7Cが回転し、回転力伝達環7Cと供給リール用ギア7Aとの間の圧縮スプリング7Bによる摩擦力により、回転力伝達環7Cと供給リール用ギア7Aとが、互いに相対回転を伴いつつ供給リール用ギアアセンブリ7全体が回転する。
【0026】
(第1内枠体3L)
第1内枠体3Lには支柱32a、32bが立設されている。一方、第2内枠体3Rには支柱32a、32bがそれぞれ係合する支柱31a、31bが立設されている。第1内枠体3Lと第2内枠体3Rとを対向させて、互いに近接する方向に押圧すると、支柱32a、32bが、それぞれ支柱31a、31bと係合して、第2内枠体3R,3Lが連結されて内枠体3が形成される。
【0027】
第1内枠体3Lと第2内枠体3Rの間には、転写テープ4Tが巻かれた供給リール4と、供給リール4から引き出される転写テープ4Tを被転写面に転写する転写ローラ5と、転写後の転写テープ4Tを巻き取る巻取リール6とが配置されている。
【0028】
(巻取リール6)
巻取リール6は、第2外枠体2Rに立設された巻取リール用支軸13に枢支されている。巻取リール6の右端には、巻取リール用ギア(
図2において右端が見えないため図示せず)が設けられている。供給リール用ギアアセンブリ7と巻取リール用支軸13との間には、伝達ギア15a、15bが設けられ、巻取リール6が巻取リール用支軸13に取り付けられると、供給リール用ギアアセンブリ7の供給リール用ギア7A、伝達ギア15a、15b及び巻取リール用ギアが噛み合う。
【0029】
(転写ローラ5)
転写ローラ5は、供給リール4から引き出される転写テープ4Tを被転写面に転写する部分である。転写ローラ5は後述するように第1内枠体3Lの前側に設けられた転写ローラ保持部17に保持されている。
【0030】
転写作業により、転写テープ4Tが繰り出されると、供給リール4が回転する。供給リール4が回転すると、回転力伝達環7Cが回転する。回転力伝達環7Cが回転すると、その回転力により供給リール用ギアアセンブリ7が回転する。供給リール用ギアアセンブリ7が回転すると、その回転力は、伝達ギア15a、15b、巻取リール用ギアと伝達され、巻取リール6が回転する。その回転により巻取リール6は、転写されて表面の塗膜がなくなった転写後の転写テープ4Tを巻き取る。
【0031】
左右一対の第1内枠体3Lと第2内枠体3Rとの間には、上述の供給リール4、転写ローラ5、巻取リール6に加えて、ラチェット爪保持環10と、ギア部材11とが配置されている。
【0032】
(ギア部材11)
図3は、ラチェット爪保持環10及びギア部材11を、
図2と逆方向から見た斜視図である。ギア部材11には、円板部材から外方に突出したギア歯11cが設けられている。ギア部材11の右面(内面)には、所定径の円環状突起11aが一体的に設けられ、円環状突起11aの内面には、内径側に突出したラチェット歯11bが設けられている。ラチェット歯11bは山形で、ラチェット爪保持環10の回転方向rの前側の面は、実施形態では径方向に延びる面で円周の接線に対して略90度の急な面である。後ろ側の面は、径方向に対して傾き、円周の法線に対する角度が緩やかな斜面である。
【0033】
(ラチェット爪保持環10)
ラチェット爪保持環10には、
図2に示すように右側に延びる2つの爪部10aが設けられている。爪部10aは供給リール4に設けられた爪係合孔4bに挿入されて、爪部10aと爪係合孔4bとの係合により、ラチェット爪保持環10は供給リール4に固定され、供給リール4とともに回転する。
【0034】
(アーム10c)
図3に戻り、ラチェット爪保持環10の外周には、2か所に切り欠き部10dが形成されている。切り欠き部10dの外側には、それぞれラチェット爪保持環10の外周に沿って延びるアーム10cが延びている。ラチェット爪保持環10のアーム10cは、回転方向rと逆方向に円弧状に延びている。
【0035】
(ラチェット爪10b)
アーム10cの先端には、径方向外側にわずかに突出するとともに、先端が尖ったラチェット爪10bが設けられている。ラチェット爪10bの先端面は略径方向に延びる面で、円周の接線に対して略90度の急な面である。先端面から続く外面は径方向に対して傾き、円周の法線に対する角度が緩やかな斜面である。
円環状突起11aの内側の凹部にラチェット爪保持環10が配置されると、アーム10cは弾性変形して撓んだ状態で、アーム10cによってラチェット爪10bは径方向外側(ラチェット爪10b側)に付勢された状態で、ラチェット爪10bとラチェット歯11bとが当接している。
【0036】
(第1内枠体3L)
図4は、第1内枠体3L、切断部材40、駆動部材50、ギア部材11、バネ部材(弾性部材)51、及び転写ローラ5の分解斜視図である。
図5は、第1内枠体3L、切断部材40、駆動部材50、ギア部材11、バネ部材51、及び転写ローラ5を組み合わせた状態の斜視図である。
【0037】
第1内枠体3Lは、前端から、転写ローラ5が保持される転写ローラ保持部17、バネ受け部18、軸部19と、軸部19を中心とした所定径の円形凹部19aと、前述の支柱32a、32bと、巻取リール保持部32cとを有する。また、第1内枠体3Lの側面にはギア係合部挿通孔16a、16bが設けられている。
【0038】
(転写ローラ保持部17)
転写ローラ保持部17は、第1内枠体3Lの前側の一部である左壁部17Lと、左壁部17Lに対して所定距離、離間して平行に設けられた右壁部17Rとを備え、左壁部17Lと右壁部17Rとの先端にはそれぞれ転写ローラ取付孔17aが設けられている。この転写ローラ取付孔17aの間に、転写ローラ5の両端がそれぞれ保持される。
【0039】
(バネ受け部18)
バネ受け部18は、転写ローラ保持部17の後側における第1内枠体3Lの右面から右側に向かって延びる断面L字の部分で、L字の一方は上下に延びる平板状のバネ受け面18aで、L字の他方は前後に延びる平板状のガイド面18bである。バネ受け面18aの前面の中央部に、バネ保持突起18cが設けられている。
【0040】
(円形凹部19a)
軸部19は、第1内枠体3Lの右面から右側に向かって延びている。円形凹部19aは、軸部19を中心とした所定径の凹部である。円形凹部19aの内部に、ギア部材11が軸部19を中心として配置される。
【0041】
(ギア係合部挿通孔16a,16b)
ギア係合部挿通孔16a,16bは第1内枠体3Lの側面に設けられ、後述の延在部55が挿通される貫通孔である。ギア係合部挿通孔16a,16bは略前後方向に一直線に並んでいる。
【0042】
(巻取リール保持部32c)
巻取リール保持部32cは、第1内枠体3Lの右面から右側に向かって延びる円輪状凸部で、中心に巻取リール保持軸32dが設けられている。巻取リール6は、巻取リール保持部32cに巻取リール保持軸32dを中心として配置される。
【0043】
この第1内枠体3Lに、転写ローラ5と、切断部材40と、駆動部材50と、バネ部材51と、ギア部材11とが取り付けられる。
【0044】
(転写ローラ5)
転写ローラ5は前述したように第1内枠体3Lの前側に設けられた転写ローラ保持部17に保持されている。
【0045】
(切断部材40)
切断部材40は、コの字形に形成され、左右に延びる切断歯41を前側に備える。そして、切断歯41の左右の端部からそれぞれ後方に2本の腕部42が延びている。
腕部42の上側の面には第1カムフォロア43と、第1カムフォロア43よりも後方に第2カムフォロア44とが設けられ、腕部42の後端には切断部材取付孔45が設けられている。
【0046】
(駆動部材50)
駆動部材50はL字形で、左右に延びる切断歯保持部52と、切断歯保持部52の左右側面にそれぞれに設けられ、切断部材40の切断部材取付孔45が挿入される切断部材取付軸53と、切断歯保持部52の後面に設けられたバネ保持突起54と、切断歯保持部52の左側の端部から後方に延びる延在部55とを備える。延在部55の側面には、ギア係合歯56が設けられている。
切断部材40の切断部材取付孔45が駆動部材50の切断部材取付軸53に挿入されることで、切断部材40は駆動部材50に対して切断部材取付軸53を中心として回転可能に保持される。
延在部55が第1内枠体3Lに設けられたギア係合部挿通孔16a、16bに第1内枠体3Lの左側から挿入されることで、駆動部材50は第1内枠体3Lに対してスライド可能に保持される。
【0047】
(バネ部材51)
バネ部材51はコイルバネで、一端が駆動部材50のバネ保持突起54に嵌め込まれ、他端が第1内枠体3Lのバネ保持突起18cに嵌め込まれ、駆動部材50をバネ受け部18に対して前後方向に移動可能に保持している。切断部材40が後ろ側に押されると、駆動部材50も後ろ側に押され、バネ部材51が縮む。切断部材40の押圧が解除されると、バネ部材51の弾性によって駆動部材50及び切断部材40が前側に押されて、押圧前の位置に戻る。
【0048】
図6は、塗膜転写具1の塗膜転写時の動作を説明する図である。
図6(a)は塗膜転写具1の塗膜非転写時の状態を示す。塗膜転写具1の塗膜非転写時の状態において、ロック部材9の切断部材固定部9aは、切断部材40の切断歯41を後方から保持している。したがって切断部材40は固定されている。
切断部材40は、この位置(後述する切断位置)において転写ローラ5の下方且つ前方まで延び、転写テープ4Tの塗膜が存在する側を保護する役割も有している。
【0049】
図6(b)に示すようにロック部材9を後方に移動させると、ロック部材9の切断部材固定部9aによる切断歯41の保持が解除され、切断部材40は移動可能となる。
【0050】
図6(c)に示すように、塗膜転写のために転写ローラ5を被転写面Sに近接させる。そうすると、切断部材40(切断歯41)は転写ローラ5の下方且つ前方まで延びているので、切断部材40(切断歯41)は、転写ローラ5よりも先に被転写面Sと当接する。
【0051】
図6(d)に示すように切断部材40(切断歯41)が被転写面Sと当接した後、さらに転写ローラ5が被転写面Sに当接するように塗膜転写具1を被転写面に押し付けると、切断部材40(切断歯41)は被転写面Sによって、図中矢印で示す後方に押される。
そうすると、切断部材40の第1カムフォロア43が、第1内枠体3Lの側面に設けられたカム20のカム面に沿って移動する。これにより、切断部材40は駆動部材50に設けられた切断部材取付軸53を中心として回転し、先端の切断歯41は、転写ローラ5から離れて、
図6(d)に示す退避位置へと移動し、転写ローラ5と被転写面Sとの当接が可能となる。
【0052】
このとき、切断部材40と連動している駆動部材50も図中斜め上方に移動する。そうすると、延在部55(ギア係合歯56)も斜め上方に移動するので、ギア係合歯56と噛み合っているギア部材11が回転する。ギア部材11が回転すると、ギア部材11のラチェット歯11bがラチェット爪保持環10のラチェット爪10bを回転方向に押圧する。
このとき、ラチェット爪10bの径方向に延びる前端面と、ラチェット歯11bの径方向に延びる面とが当接しているので、ラチェット爪10bはラチェット歯11bを乗り越えることができず、ラチェット爪保持環10もギア部材11とともに回転する。
そうすると、供給リール4も回転し、転写テープ4Tがギア部材11の回転分だけ繰り出される。この状態で塗膜転写具1を被転写面Sに当接させると、後述するように転写テープ4Tにおける確実に塗膜が存在している部分が被転写面Sに転写される。
なお、この状態でバネ部材51は縮んだ状態になる。
【0053】
塗膜転写後、
図6(e)に示すように塗膜転写具1を被転写面Sから離間させる。そうすると、被転写面Sによる切断部材40(切断歯41)の押圧が解除される。バネ部材51の復元力で切断部材40と駆動部材50は、図中斜め下方の元の状態へと駆動される。
【0054】
このとき、延在部55(ギア係合歯56)も斜め下方に移動するので、ギア係合歯56と噛み合っているギア部材11が、
図6(d)と逆方向に回転する。ギア部材11が回転すると、ギア部材11のラチェット歯11bがラチェット爪保持環10のラチェット爪10bを押す。
このとき、ラチェット爪10bの緩やかな外面と、ラチェット歯11bの緩やかな斜面とが当接しているので、ラチェット歯11bはラチェット爪10bを乗り越えることができ、ギア部材11が回転してもラチェット爪保持環10は回転しない。したがって供給リール4は回転せず、転写テープ4Tは移動しない。
【0055】
(転写後)
図7は、転写ローラ5を含む部分の拡大図であり、
図6(d)の後に発生する可能性のある糸引き現象の防止動作を説明する図である。
塗膜転写時に、
図7(a)に示すように塗膜tは転写ローラ5によって被転写面Sに押圧されることにより転写される。このとき塗膜tと切断部材40(切断歯41)は接触していない。この状態で塗膜転写具1を持ち上げると、被転写面Sに転写された塗膜tと、転写テープ4Tの未転写の塗膜tとが切断されずに、間に糸引き現象が発生する場合がある。
【0056】
実施形態の塗膜転写具1は、切断部材40(切断歯41)の被転写面Sによる押圧が解除されると、縮んだ状態であったバネ部材51の復元力で、駆動部材50及び切断部材40が、
図6(e)、
図7(b)に示すように退避位置から切断位置に戻る。
このとき、切断歯41は、退避位置から切断位置までの移動中において、糸引きによって塗膜tが連続している位置を通過し、塗膜tを切断する。したがって、転写ローラ5を被転写面Sから離間すると略同時に塗膜の糸引きを解消することができる。ゆえに、未転写の塗膜が糊玉となって被転写面Sに付くことがない。また、未転写の塗膜が引っ張られることにより、転写ローラ5に到達する前の塗膜が剥がれることを防ぐことができる。
【0057】
ここで、切断歯41が塗膜を切断する場合、塗膜tは
図7(b)に示すように、転写ローラ5の先端よりも手前側で切断される。このため、塗膜は転写ローラ5の先端部分Pに塗膜が存在していない状態となる。
【0058】
この状態で、塗膜転写具1の使用が再開されて転写ローラ5が被転写面Sに当接されると、塗膜が存在しない先端部分Pが被転写面Sに当接する可能性がある。この状態で、塗膜転写のために塗膜転写具1を被転写面Sに沿って後方に移動させても、転写の開始直後は被転写面Sに塗膜が付着しない。
【0059】
しかし、実施形態においては、
図6(d)で説明したように、切断部材40が被転写面Sと当接して押圧されると、供給リール4も回転し、転写テープ4Tがギア部材11の回転分だけ繰り出される。この状態を
図7(c)に示す。転写テープ4Tが繰り出されるので、転写ローラ5の先端部分Pにも塗膜が存在し、使用開始時に被転写面Sに塗膜が付着されない状態が回避される。
【0060】
以上、本実施形態の塗膜転写具1は、塗膜が塗布された転写テープ4Tを巻装した供給リール4と、転写テープ4Tに保持された塗膜を被転写面Sに転写する転写ローラ5と、供給リール4から繰り出され、転写ローラ5により塗膜が被転写面Sに転写された後の転写テープ4Tを巻き取る巻取リール6と、転写テープ4Tの塗膜tを切断する切断位置と、該切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能な切断部材40と、を備える。
【0061】
このように切断部材40が、転写テープ4Tの塗膜tを切断する切断位置と、切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能なので、退避位置において、塗膜と接触しないように塗膜から離れた位置に配置することができる。したがって、退避位置において塗膜に悪影響を与えない。
また、切断位置においては、糸引き現象が発生した場合に塗膜を切断することができる。ゆえに塗膜が厚く連続なフラットタイプの切れにくい塗膜であっても、転写後に塗膜が伸びず(糸引きをせず)、糊玉なくきれいに切断でき、塗膜設計自由度を高め、様々な機能を付加できるようになる。
【0062】
また、切断部材40は、切断位置において転写ローラ5の下側を覆い、転写ローラ5を被転写面に近接させたときに、転写ローラ5よりも先に切断部材40が被転写面に当接し、被転写面に押圧されることで退避位置に移動し、押圧から解除されると、切断位置に戻る。したがって、作業者が切断部材40を駆動するための余分な作業が不要である。
【0063】
さらに、切断部材40に連結され、供給リール4とともに回転するギア部材11と噛み合うギア係合歯56が設けられた駆動部材50を備え、駆動部材50は、切断部材40の退避位置への移動とともに移動してギア部材11及び供給リール4を回転させ、供給リール4の回転により転写テープ4Tを繰り出す。
【0064】
切断部材40の退避位置に移動に伴って自動的に転写テープ4Tが所定量進む。ゆえに、転写テープ4Tにおいて塗膜が存在する部分が常に転写位置にくるので、使用者が転写しようとしたときに、最初の一定量、塗膜が転写されない状態が発生せず、常に塗膜が転写される。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、これに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上述した左右は、逆であってもよい。
また、第1実施形態において、ラチェット爪保持環10におけるアーム10c及びラチェット爪10bの向きと、ギア部材11におけるラチェット歯11bの向きを、第1実施形態とは反対の回転方向に設けることにより、切断部材40の切断位置への移動とともに、自動的に転写テープ4Tが所定量進む構造としてもよい。換言すると、転写終了時に転写部が被転写面から離間する際に、転写テープ4Tを送る構造としてもよい。この場合も、使用者が転写しようとしたときに、塗膜が転写されない状態を低減する効果が得られる。
【0066】
実施形態は、カートリッジを詰替え可能なタイプであったが、これに限定されず、詰替えできない使い切りタイプであってもよい。使い切りタイプの場合、例えば、第1内枠体を第1外枠体と別体とせず、また、第2内枠体を第2外枠体と別体にせず、それぞれ単一の部材としてもよい。また、転写部はローラ状に限らず、ヘラ状であっても良い。さらに、切断部材40及び駆動部材50を本体側の外枠体2に取り付けてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態の塗膜転写具100を図面に基づいて説明する。
図8は、塗膜転写具100の斜視図である。
図9は、塗膜転写具100の分解斜視図である。
以下、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に塗膜転写時に右利きの使用者が塗膜転写具100を手に持った時の左右、前後、上下を明細書中においても左右、前後、上下として説明する。また、第1実施形態と同様の部分は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
塗膜転写具100は、それぞれが略楕円形の左右一対の第1外枠体102Lと第2外枠体102Rからなる外枠体102と、外枠体102の内部に配置された左右一対の第1内枠体103Lと第2内枠体103Rとからなる内枠体103とを備える。第1外枠体102L、第2外枠体102R、第1内枠体103L、第2内枠体103Rの形状は第1実施形態と若干異なる。
さらに、塗膜転写具100は、第1実施形態のロック部材9と、切断部材40と、駆動部材50ではなく切断部材140と、支持部材145と、駆動部材150とを備える。
【0069】
図10(a)、(b)、(c)、(d)、
図11(a)、(b)、(c)、(d)は、塗膜転写具100の第1外枠体102Lから右側に各部材を取り付けていった状態を示す図である。
図12(a)、(b)は、
図11と逆の塗膜転写具100の第2外枠体102Rから左側に、支持部材145を取り付けていった状態を示す図である。なお、
図10、11の(a)、(b)、(c)、(d)、
図12(a)、(b)は、それぞれ、説明のために示す図であり、必ずしも組み立て順序を示すものではない。
【0070】
(第1外枠体102L)
図10(a)に示すように、第1外枠体102Lの内面には、2つの壁部102a、102bが設けられ、その2つの壁部102a、102bによって、次に述べる駆動部材150の延在部155がスライド可能となるスライド案内部116が設けられている。また、スライド案内部116の前方には、開口部2aから続く切り欠き部102cが設けられ、スライド案内部116の前端且つ切り欠き部102cの後端には、前方を向いたバネ保持突起118cが設けられている。切り欠き部102cの内側面には、カム120が設けられている。
【0071】
(駆動部材150)
図10(b)に示すように、駆動部材150は、第1外枠体102Lの内面の前側に取り付けられる。駆動部材150は、前端に、前側から見たときに矩形となるフレーム部150aと、フレーム部150aの左側から後方に延びる延在部155とを備える。
フレーム部150aの下部にはガイドローラ150bが取り付けられ、フレーム部150aの右面には右方に向かう2つの係合突部150cが設けられている。ガイドローラ150bは非粘着シリコーンローラ、または接地面の少ない形状のローラである。
延在部155は、前側から、切断部材取付軸153と、切断部材取付軸153の後方に設けられたバネ保持長孔部155aと、バネ保持長孔部155aにおける後方を向く内面に設けられたバネ保持突起154と、バネ保持長孔部155aよりも後方に設けられたギア係合歯156とを備える。駆動部材150の延在部155は、第1外枠体102Lのスライド案内部116に配置されている。
【0072】
(バネ部材151)
バネ保持長孔部155a内には、バネ部材151が配置されている。バネ部材151はコイルバネで、一端が駆動部材150のバネ保持突起154に嵌め込まれ、他端がバネ保持突起118cに嵌め込まれ、駆動部材150を第1外枠体102Lに対して前後方向に移動可能に保持している。駆動部材150が後ろ側に押されると、バネ部材151が縮み、延在部155、すなわち後述する切断部材140が取り付けられる切断部材取付軸153及びギア係合歯156が後方にスライドする。
駆動部材150の押圧が解除されると、バネ部材151の弾性によって、延在部155が前方にスライドし、後述する切断部材140が取り付けられる切断部材取付軸153及びギア係合歯156、フレーム部150aが前側に押される。
【0073】
(切断部材140)
図9に示すように、切断部材140はL字形状で、左右に延びる切断歯141を前側に備える。切断歯141の左側端部から後方に腕部142が延びている。腕部142の上側の面には第1カムフォロア143と、第1カムフォロア143よりも後方に第2カムフォロア144とが設けられ、腕部142の後端には切断部材取付孔140aが設けられている。
図10(c)に示すように駆動部材150の切断部材取付軸153に切断部材取付孔140aがはめ込まれることで、切断部材140は駆動部材150に対して切断部材取付軸153を中心として回転可能に保持される。
【0074】
(第1内枠体103L)
図10(d)に示すように、第1内枠体103Lが、駆動部材150及び切断部材140が取り付けられた第1外枠体102Lの内部に配置される。
第1内枠体103Lは、前端から、転写ローラ5が保持される転写ローラ保持部117と、軸部19を中心とした所定径の円形凹部119aとを有する。また円形凹部119aの一部は切り欠かれた切り欠き部103cとなっている。
【0075】
図11(a)に示すように、軸部19を中心として軸部19の内部にギア部材111が配置されると、切り欠き部103cを介してギア係合歯156とギア部材111のギア歯とが噛み合う。
【0076】
図11(b)に示すように、駆動部材150,切断部材140、第1内枠体103L、ギア部材111が取り付けられた、第1外枠体102Lの内部のさらに右側に、供給リール4、巻取リール6、第2内枠体103R、供給リール用ギアアセンブリ7、伝達ギア15a、15bが配置される。
【0077】
(第2外枠体102R)
図11(c)に示すように、
図11(b)の状態のさらに右側に第2外枠体102Rが取り付けられる。第2外枠体102Rの前側には、
図11(c)及び
図12(a)に示すように、スライド案内溝102eが設けられている。スライド案内溝102eの後端には、前方を向いたバネ保持突起102dが設けられている。
【0078】
図11(d)及び
図12(b)に示すように、第2外枠体102Rの前端に、支持部材145が取り付けられている。支持部材145はT字形で、後方に延び且つ後端にバネ保持突起145cが設けられたスライド部145aと、スライド部145aの前端に設けられた保持部145bとを備える。
保持部145bの両端には係合孔145dが設けられ、それらの係合孔145dは、駆動部材150に設けられた係合突部150cに嵌合している。これにより、支持部材145は駆動部材150の右側を支持する。
スライド部145aは、スライド案内溝102e内に挿入され、バネ保持突起145cとバネ保持突起102dとの間にバネ部材160が配置されている。バネ部材160はコイルバネで、支持部材145を第2外枠体102Rに対して前後方向に移動可能に保持している、支持部材145が駆動部材150と一体となって後ろ側に押されると、バネ部材160が縮んでスライド部145aが後方にスライドする。
【0079】
図13(a)から(c)は、塗膜転写具100の塗膜転写時の動作を説明する図である。
図13(a)に示すように、塗膜転写のために塗膜転写具100を被転写面Sに近接させる。そうすると、駆動部材150は転写ローラ5の下方まで延びているので、駆動部材150は、転写ローラ5よりも先に被転写面Sと当接する。
【0080】
ここで、第1実施形態においては、切断部材40を被転写面Sに当接させ、切断部材40を退避させていたが、このとき、切断部材40の押圧方向が、塗膜tを被転写面Sに押し付ける方向に対して傾いた方向であった。
しかし、第2実施形態では、駆動部材150のフレーム部150aを被転写面Sに押し付ける。このときの押し付け方向が、塗膜tを被転写面Sに押し付ける方向と同じである。したがって、押し付ける方向が単純化される。また、フレーム部150aを被転写面Sに押し付けるので、視覚的な使用方法の分かりやすさも向上する。
【0081】
図13(b)に示すように駆動部材150を被転写面Sと当接させた後、塗膜転写具100を被転写面S側に押し付けて、転写ローラ5を被転写面Sに当接させる。そうすると、駆動部材150は被転写面Sによって、図中矢印A2で示す後方に押される。
切断部材140の第1カムフォロア143は、第1内枠体103Lの側面に設けられたカム120のカム面に沿って移動する。これにより、切断部材140は駆動部材150に設けられた切断部材取付軸153を中心として回転し、先端の切断歯141は、転写ローラ5から離れて、
図13(b)に示す退避位置へと移動し、転写ローラ5と被転写面Sとの当接が可能となる。
【0082】
このとき、駆動部材150の延在部155は図中上方に移動する。そうすると、延在部155(ギア係合歯156)も斜め上方に移動するので、ギア係合歯156と噛み合っているギア部材111が回転する。ギア部材111が回転すると第1実施形態と同様に転写テープ4Tがギア部材111の回転分だけ繰り出される。この状態で塗膜転写具100を被転写面Sに当接させると、転写テープ4Tにおける確実に塗膜が存在している部分が被転写面Sに転写される。この状態でバネ部材151は縮んだ状態となって付勢力が蓄積される。
【0083】
そして、図中矢印A1の方向に塗膜転写具100を移動させると、転写テープ4Tの塗膜tが被転写面Sに転写される。このとき、駆動部材150にガイドローラ150bが設けられているので、塗膜転写具100と被転写面Sとの摩擦抵抗が少なく塗膜転写具100の移動を滑らかに行うことができ、転写がしやすい。また、転写ローラ5とガイドローラ150bとの2か所で被転写面Sと当接することになるので、転写が安定する。さらに、塗膜転写時には、フレーム部150aにおける転写ローラ5を挟んだガイドローラ150bと反対側の符号150dで示す部分は、被転写面Sから離間しているので、転写後の塗膜tと接触しない。
【0084】
塗膜転写後、
図13(c)に示すように塗膜転写具100を被転写面Sから離間させる。そうすると、被転写面Sによる駆動部材150の押圧が解除される。バネ部材151の復元力で駆動部材150と切断部材140とは、図中下方の元の状態へと駆動される。このとき、第1実施形態と同様に供給リール4は回転せず、転写テープ4Tは移動しない。
【0085】
第1実施形態と同様に、塗膜転写時に、
図13(b)に示すように塗膜tと切断部材140(切断歯41)は接触していない。この状態で塗膜転写具100を持ち上げると、被転写面Sに転写された塗膜tと、転写テープ4Tの未転写の塗膜tとが切断されずに、間に糸引き現象が発生する場合がある。
【0086】
第2実施形態の塗膜転写具100は、駆動部材150の被転写面Sによる押圧が解除されると、縮んだ状態であったバネ部材151の復元力で、駆動部材150及び切断部材140が、
図13(c)に示すように退避位置から切断位置に戻る。
このとき、切断歯141は、退避位置から切断位置までの移動中において、糸引きによって塗膜tが連続している位置を通過し、塗膜tを切断する。したがって、転写ローラ5を被転写面Sから離間すると略同時に塗膜の糸引きを解消することができる。ゆえに、未転写の塗膜が糊玉となって被転写面Sに付くことがない。また、未転写の塗膜が引っ張られることにより、転写ローラ5に到達する前の塗膜が剥がれることを防ぐことができる。
【0087】
ここで、切断歯141が塗膜tを切断する場合、塗膜tは転写ローラ5の先端よりも手前側で切断される。このため、塗膜は転写ローラ5の先端部分に塗膜が存在していない状態となる。しかし、第1実施形態と同様に切断部材140が被転写面Sと当接して押圧されると、供給リール4も回転し、転写テープ4Tがギア部材111の回転分だけ繰り出されるので、転写ローラ5の先端部分Pにも塗膜が存在し、使用開始時に被転写面Sに塗膜が付着されない状態が回避される。
【0088】
以上、第1実施形態においては、切断部材40が直接、被転写面Sと当接する構成であった。しかし、第2実施形態では、駆動部材150が被転写面Sと当接し、切断部材140は駆動部材150と連動するようにした。また、第1実施形態では、内枠体3(カートリッジ側)に切断部材40、駆動部材50、バネ部材15が取付けられていたが、第2実施形態では、外枠体2(本体側)に設けられるようにした。
【0089】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、切断部材140が、転写テープ4Tの塗膜tを切断する切断位置と、切断位置から退避した退避位置とで位置変更可能なので、退避位置において、塗膜と接触しないように塗膜から離れた位置に配置することができる。したがって、退避位置において塗膜に悪影響を与えない。
また、切断位置においては、糸引き現象が発生した場合に塗膜を切断することができる。ゆえに塗膜が厚く連続なフラットタイプの切れにくい塗膜であっても、転写後に塗膜が伸びず(糸引きをせず)、糊玉なくきれいに切断でき、塗膜設計自由度を高め、様々な機能を付加できるようになる。
【0090】
駆動部材150のフレーム部150aは、塗膜tの転写の際に、転写ローラ5よりも先に被転写面Sに当接する。そして、駆動部材150が被転写面Sに押圧されると、切断部材140が退避位置に移動する。駆動部材150の被転写面Sによる押圧が解除されると、切断部材140は切断位置に戻る。したがって、作業者が切断部材140を駆動するための余分な作業が不要である。
【0091】
さらに、駆動部材150は、供給リール4とともに回転するギア部材111と噛み合うギア係合歯156が設けられており、駆動部材150は転写位置への移動とともにギア係合歯156が移動してギア部材111及び供給リール4を回転させ、供給リール4の回転により転写テープ4Tを繰り出す。このように駆動部材150の転写位置への移動に伴って自動的に転写テープ4Tが所定量進む。ゆえに、転写テープ4Tにおいて塗膜が存在する部分が転写位置にくるので、使用者が転写しようとしたときに、最初の一定量、塗膜が転写されない状態が発生せず、常に塗膜が転写される。
【0092】
駆動部材150及び切断部材140は、第1外枠体102L側に、片持ち状態で保持されているが、駆動部材150のフレーム部150aの2か所の係合突部150cと、第2外枠体102R側に保持された支持部材145に設けられた2箇所の係合孔145dとが係合することにより両持ち構造状態となり、強度が向上する。また、フレーム部150aの押圧動作に支持部材145も一体的に可動可能となるので、押圧動作の作動性が向上する。
【0093】
さらに、フレーム部150aを設けることで、フレーム部150aの全面を被転写面(紙面)押圧することになり、塗膜転写具100の転写角度が一定となり、転写しやすい角度となる。
さらに、第2実施形態では、切断部材140及び駆動部材150が本体側の外枠体102に取り付けられるので、カートリッジ側の内枠体3に取り付けられる第1実施形態に比べてカートリッジ側の部品点数が削減される。ただし、切断部材140及び駆動部材150はカートリッジ側の内枠体103に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0094】
S 被転写面
1,100:塗膜転写具
2,102:外枠体
2L,102L:第1外枠体
2R,102R:第2外枠体
3,103:内枠体
3L,103L:第1内枠体
3R,103R:第2内枠体
4:供給リール
4T:転写テープ
5:転写ローラ(転写部)
6:巻取リール
8:供給リール用支軸
8a:係止部
9:ロック部材
9a:切断部材固定部
10:ラチェット爪保持環
10a:爪部
10b:ラチェット爪
10c:アーム
11,111:ギア部材
11a:円環状突起
11b:ラチェット歯
11c:ギア歯
15:バネ部材
16a:ギア係合部挿通孔
16b:ギア係合部挿通孔
17,117:転写ローラ保持部
17a:転写ローラ取付孔
19a,119a:円形凹部
20,120:カム
40,140:切断部材
41,141:切断歯
43,143:第1カムフォロア
45:切断部材取付孔
50,150:駆動部材
51,151,160:バネ部材(弾性部材)
52:切断歯保持部
53,153:切断部材取付軸
54,バネ保持突起:バネ保持突起
56,156:ギア係合歯
102d:バネ保持突起
145:支持部材
145a:スライド部
145b:保持部
145c:バネ保持突起
150a:フレーム部
150b:ガイドローラ