(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】反応処理装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230815BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230815BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230815BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
G01N37/00 101
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020073337
(22)【出願日】2020-04-16
(62)【分割の表示】P 2019564763の分割
【原出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2018004295
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509233699
【氏名又は名称】株式会社ゴーフォトン
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】福澤 隆
(72)【発明者】
【氏名】川口 磨
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀光
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094674(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119382(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199933(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/132645(WO,A1)
【文献】特開2014-212705(JP,A)
【文献】特開2014-163713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/686
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が移動する流路と、前記流路の両端に設けられた一対の第1空気連通口および第2空気連通口とを備え
、平面視で長辺と短辺を有する略矩形状の反応処理容器と、
前記流路における前記第1空気連通口および前記第2空気連通口の間に、第1温度に維持された第1温度領域と、前記第1温度よりも高い第2温度に維持された第2温度領域とを提供する温度制御手段と、
試料を前記流路内で移動および停止させる送液システムと、
前記流路内の試料からの蛍光を検出する蛍光検出器と、
を備える反応処理装置であって、
前記第1温度領域および前記第2温度領域に属する流路は、それぞれ、前記反応処理容器の長辺に略平行な複数の第1直線部と、前記第1直線部に略直角な複数の第2直線部と、前記第1直線部同士を接続するための第1曲線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とを接続するための第2曲線部と、を含み、
前記第1温度領域と前記第2温度領域は、単一の接続流路によって接続され、
前記単一の接続流路の一端は前記第1温度領域に含まれる前記第1直線部に接続され、
前記単一の接続流路の他端は前記第2温度領域に含まれる前記第1直線部に接続され、
前記第1温度領域と前記第2温度領域との間隔は、前記第1温度領域または前記第2温度領域における、当該間隔を規定する方向の長さより大きく、
当該反応処理装置は、試料を前記第1温度領域と前記第2温度領域を繰り返し往復移動することによりサーマルサイクルを付与するPCRのための装置であり、
前記蛍光検出器は、前記単一の接続流路内の試料からの蛍光を検出し、
前記反応処理容器は、前記第1空気連通口と前記第1温度領域の間に設けられた第1フィルタと、前記第2空気連通口と前記第2温度領域の間に設けられた第2フィルタと、をさらに備え、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは、前記流路のコンタミネーションを防止するものであり、
前記送液システムは、前記第1空気連通口または前記第2空気連通口を介して前記流路内を加圧可能なポンプと、前記ポンプの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
試料を前記第1温度領域から前記第2温度領域に移動させるときは、前記流路における前記第1空気連通口と試料との間の圧力を、前記流路における前記第2空気連通口と試料との間の圧力より大きくするとともに、前記流路における前記第2空気連通口と試料との間の圧力を大気圧にし、
試料を前記第2温度領域から前記第1温度領域に移動させるときは、前記流路における前記第2空気連通口と試料との間の圧力を、前記流路における前記第1空気連通口と試料との間の圧力より大きくするとともに、前記流路における前記第1空気連通口と試料との間の圧力を大気圧に
する、
ことを特徴とする反応処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、試料を前記第1温度領域または前記第2温度領域内で停止させるときは、前記流路における前記第1空気連通口と試料との間の圧力および前記流路における前記第2空気連通口と試料との間の圧力をいずれも大気圧とすることを特徴とする請求項1に記載の反応処理装置。
【請求項3】
前記ポンプは、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなることを特徴とする請求項1または2に記載の反応処理装置。
【請求項4】
前記ポンプは、マイクロブロアポンプであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の反応処理装置。
【請求項5】
前記反応処理容器は、基板と、前記基板に形成された前記流路と、前記基板に形成された前記第1空気連通口および前記第2空気連通口と、前記流路を封止するための流路封止フィルムと、前記第1空気連通口および前記第2空気連通口を封止するためのフィルムと、を備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の反応処理装置。
【請求項6】
前記送液システムは、ニードルを備え、
前記ニードルが前記第1空気連通口と前記第2空気連通口を封止する前記フィルムを穿孔することによって前記第1空気連通口と前記第2空気連通口とが前記ポンプに連通することを特徴とする請求項
5に記載の反応処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)に使用される反応処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子検査は、各種医学分野における検査、農作物や病原性微生物の同定、食品の安全性評価、さらには病原性ウィルスや各種感染症の検査にも広く活用されている。微小量のDNAを高感度に検出するために、DNAの一部を増幅して得られたものを分析する方法が知られている。中でもPCRを用いた方法は、生体等から採取されたごく微量のDNAのある部分を選択的に増幅する注目の技術である。
【0003】
PCRは、DNAを含む生体サンプルと、プライマーや酵素などからなるPCR試薬とを混合した試料に、所定のサーマルサイクルを与え、変性、アニーリングおよび伸長反応を繰り返し起こさせて、DNAの特定の部分を選択的に増幅させるものである。
【0004】
PCRにおいては、対象の試料をPCRチューブ又は複数の穴が形成されたマイクロプレート(マイクロウェル)などの反応処理容器に所定量入れて行うことが一般的であるが、近年、基板に形成された微細な流路を備える反応処理容器(チップとも呼ばれる)を用いて行うことが実用化されてきている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流路を備える反応処理容器を用いたPCRを行う場合、流路に高温領域や低温領域などの温度領域を設定し、試料を流路内で往復式に移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与える。
【0007】
反応処理容器の流路内で試料を往復移動させる方法としては、2つの送液機構を用いる方法が考えられる。送液機構は、例えばポンプ等である。流路の両端にそれぞれポンプを接続し、流路内の圧力の加減により試料を移動させるものである。
【0008】
しかしながら、こういったポンプの特性には個体差が存在する可能性がある。二つ以上のポンプを用いる方法では、これらのポンプの特性に個体差がある場合に流路内の圧力を正確に制御することが難しいという課題がある。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、反応処理容器の流路内での試料の移動の制御が容易な反応処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の反応処理装置は、試料が移動する流路と、流路の両端に設けられた一対の第1空気連通口および第2空気連通口とを備える反応処理容器と、流路における第1空気連通口および第2空気連通口の間に、第1温度に維持された第1温度領域と、第1温度よりも高い第2温度に維持された第2温度領域とを提供する温度制御手段と、試料を流路内で移動および停止させる送液システムと、を備える。送液システムは、吐出口から空気を吐出可能なポンプと、ポンプの吐出口と反応処理容器の第1空気連通口とを接続する第1空気流路と、ポンプの吐出口と反応処理容器の第2空気連通口とを接続する第2空気流路と、第1空気流路に配置され、第1空気連通口が吐出口と連通する状態と、第1空気連通口が大気圧に開放される状態とを切替可能な第1切替弁と、第2空気流路に配置され、第2空気連通口が吐出口と連通する状態と、第2空気連通口が大気圧に開放される状態とを切替可能な第2切替弁と、ポンプ、第1切替弁および第2切替弁の動作を制御する制御部と、を備える。
【0011】
第1温度領域は流路の第1空気連通口側に位置し、第2温度領域は流路の第2空気連通口側に位置し、制御部は、試料を第1温度領域から第2温度領域に移動させるとき、ポンプから空気を吐出させるとともに、第1切替弁を第1空気連通口が吐出口と連通する状態且つ第2切替弁を第2空気連通口が大気圧に開放される状態にし、試料を第2温度領域から第1温度領域に移動させるとき、ポンプから空気を吐出させるとともに、第1切替弁を第1空気連通口が大気圧に開放される状態且つ第2切替弁を第2空気連通口が吐出口と連通する状態にしてもよい。
【0012】
制御部は、流路内で試料を停止させるとき、ポンプからの空気の吐出を停止させてもよい。
【0013】
ポンプは、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなり、制御部は、流路内で試料を停止させるとき、第1切替弁を第1空気連通口が大気圧に開放される状態にするとともに、第2切替弁を第2空気連通口が大気圧に開放される状態にしてもよい。
【0014】
第1切替弁および第2切替弁は、三方弁であってもよい。
【0015】
本発明の別の態様もまた、反応処理装置である。この装置は、試料が移動する流路と、流路の両端に設けられた一対の第1空気連通口および第2空気連通口とを備える反応処理容器と、流路における第1空気連通口および第2空気連通口の間に、第1温度に維持された第1温度領域と、第1温度よりも高い第2温度に維持された第2温度領域とを提供する温度制御手段と、試料を流路内で移動および停止させる送液システムと、を備える。送液システムは、内部の圧力が反応処理装置の周辺環境の気圧より高く維持された加圧チャンバと、加圧チャンバ内に配置された、吐出口から空気を吐出可能なポンプと、ポンプの吐出口と反応処理容器の第1空気連通口とを接続する第1空気流路と、ポンプの吐出口と反応処理容器の第2空気連通口とを接続する第2空気流路と、第1空気流路に配置され、第1空気連通口が吐出口と連通する状態と、第1空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態とを切替可能な第1切替弁と、第2空気流路に配置され、第2空気連通口が吐出口と連通する状態と、第2空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態とを切替可能な第2切替弁と、ポンプ、第1切替弁および第2切替弁の動作を制御する制御部と、を備える。
【0016】
第1温度領域は流路の第1空気連通口側に位置し、第2温度領域は流路の第2空気連通口側に位置し、制御部は、試料を第1温度領域から第2温度領域に移動させるとき、ポンプから空気を吐出させるとともに、第1切替弁を第1空気連通口が吐出口と連通する状態且つ第2切替弁を第2空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態にし、試料を第2温度領域から第1温度領域に移動させるとき、ポンプから空気を吐出させるとともに、第1切替弁を第1空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態且つ第2切替弁を第2空気連通口が吐出口と連通する状態にしてもよい。
【0017】
制御部は、流路内で試料を停止させるとき、ポンプからの空気の吐出を停止させてもよい。
【0018】
ポンプは、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなり、制御部は、流路内で試料を停止させるとき、第1切替弁を第1空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態にするとともに、第2切替弁を第2空気連通口が加圧チャンバの内部空間に開放される状態にしてもよい。
【0019】
第1切替弁および第2切替弁は、三方弁であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反応処理容器の流路内での試料の移動の制御が容易な反応処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、本発明の実施形態に係る反応処理装置で使用可能な反応処理容器を説明するための図である。
【
図2】
図1(a)に示す反応処理容器のA-A断面図である。
【
図4】試料が反応処理容器内に導入された様子を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る反応処理装置を説明するための模式図である。
【
図6】
図5に示す反応処理装置における、ポンプ、第1三方弁および第2三方弁の制御方法を説明するための図である。
【
図7】
図5に示す反応処理装置における、ポンプ、第1三方弁および第2三方弁の別の制御方法を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係る反応処理装置によるPCRの増幅結果を示す図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係る反応処理装置を説明するための模式図である。
【
図10】本発明のさらに別の実施形態に係る反応処理装置を説明するための模式図である。
【
図11】
図10に示す反応処理装置における、ポンプ、第1三方弁および第2三方弁の別の制御方法を説明するための図である。
【
図12】本発明のさらに別の実施形態に係る反応処理装置を説明するための模式図である。
【
図13】
図12に示す反応処理装置における、ポンプ、第1三方弁、第2三方弁および電磁弁の制御方法を説明するための図である。
【
図14】
図12に示す反応処理装置における、ポンプ、第1三方弁、第2三方弁および電磁弁の別の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る反応処理装置について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
図1(a)および
図1(b)は、本発明の実施形態に係る反応処理装置で使用可能な反応処理容器10を説明するための図である。
図1(a)は、反応処理容器10の平面図であり、
図1(b)は、反応処理容器10の正面図である。
図2は、
図1(a)に示す反応処理容器10のA-A断面図である。
図3は、反応処理容器10が備える基板14の平面図である。
【0024】
反応処理容器10は、下面14aに溝状の流路12が形成された樹脂性の基板14と、基板14の下面14a上に貼られた、流路12を封止するための流路封止フィルム16と、基板14の上面14b上に貼られた2枚の封止フィルム(第1封止フィルム18および第2封止フィルム20)とから成る。
【0025】
基板14は、温度変化に対して安定で、使用される試料溶液に対して侵されにくい材質から形成されることが好ましい。さらに、基板14は、成形性がよく、透明性やバリア性が良好で、且つ、低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが好ましい。このような材質としては、ガラス、シリコン(Si)等の無機材料をはじめ、アクリル、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂、中でもシクロオレフィンポリマー樹脂(COP)が好適である。基板14の寸法の一例は、長辺76mm、短辺26mm、厚み4mmである。
【0026】
基板14の下面14aには溝状の流路12が形成されている。反応処理容器10において、流路12の大部分は基板14の下面14aに露出した溝状に形成されている。金型等を用いた射出成形により容易に成形できるようにするためである。この溝を封止して流路として活用するために、基板14の下面14a上に流路封止フィルム16が貼られる。流路12の寸法の一例は、幅0.7mm、深さ0.7mmである。
【0027】
流路封止フィルム16は、一方の主面が粘着性を備えていてもよいし、押圧や紫外線などのエネルギー照射、加熱等により粘着性や接着性を発揮する機能層が一方の主面に形成されていてもよく、容易に基板14の下面14aと密着して一体化できる機能を備える。流路封止フィルム16は、粘着剤も含めて低い自家蛍光性を有する材質から形成されることが望ましい。この点でシクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはアクリルなどの樹脂からなる透明フィルムが適しているが、これらに限定されない。また、流路封止フィルム16は、板状のガラスや樹脂から形成されてもよい。この場合はリジッド性が期待できることから、反応処理容器10の反りや変形防止に役立つ。
【0028】
基板14における流路12の一端12aの位置には、第1空気連通口24が形成されている。基板14における流路12の他端12bの位置には、第2空気連通口26が形成されている。一対の第1空気連通口24および第2空気連通口26は、基板14の上面14bに露出するように形成されている。
【0029】
基板14中における第1空気連通口24と流路12の一端12aとの間には、第1フィルタ28が設けられている。基板14中における第2空気連通口26と流路12の他端12bとの間には、第2フィルタ30が設けられている。流路12の両端に設けられた一対の第1フィルタ28および第2フィルタ30は、低不純物特性が良好であるほか、空気のみを通し、PCRによって目的のDNAの増幅やその検出を妨げないようにコンタミネーションを防止する。フィルタ材料としては、例としてポリエチレンを撥水処理したものを用いることができるが、上記の機能を備えるようなものであれば公知の材料から選択できる。第1フィルタ28および第2フィルタ30の寸法は、基板14に形成されたフィルタ設置スペースに隙間なく収まるような寸法に形成され、例えば直径4mm、厚さ2mmであってよい。
【0030】
図1(a)に示すように、流路12は、一対の第1空気連通口24および第2空気連通口26の間に、試料にサーマルサイクルを与えるためのサーマルサイクル領域32と、所定量の試料を抽出する所謂分注を行うための分注領域34とを備える。サーマルサイクル領域32は、流路12における第2空気連通口26側に位置している。分注領域34は、流路12における第1空気連通口24側に位置している。サーマルサイクル領域32と分注領域34は連通している。分注領域34で分注した試料をサーマルサイクル領域32に移動させて、サーマルサイクル領域32に含まれる所定の温度に維持された反応領域間を連続的に往復移動させることにより、試料にサーマルサイクルを与えることができる。
【0031】
流路12のサーマルサイクル領域32は、後述の反応処理装置に反応処理容器10が搭載された際に、比較的低温(約60℃)に維持される反応領域(以下「低温領域38」と称する)と、それより高温(約95℃)に維持される反応領域(以下、「高温領域36」と称する)と、高温領域36と低温領域38を接続する接続領域40とを含む。低温領域38は第1空気連通口24側(言い換えると分注領域34側)に位置しており、高温領域36は第2空気連通口26側に位置している。
【0032】
高温領域36および低温領域38はそれぞれ、曲線部と直線部とを組み合わせた連続的に折り返す蛇行状の流路を含んでいる。このように蛇行状の流路とした場合、後述の温度制御手段を構成するヒータ等の限られた実効面積を有効に使うことができ、反応領域内での温度のばらつきを低減することが容易であるとともに、反応処理容器の実体的な大きさを小さくでき、反応処理装置の小型化に貢献できるという利点がある。接続領域40は、直線状の流路であってよい。
【0033】
流路12の分注領域34は、サーマルサイクル領域32の低温領域38と第1フィルタ28との間に位置している。上述したように、分注領域34は、PCRに供される所定量の試料を分注する機能を有する。分注領域34は、所定量の試料を規定するための分注流路42と、分注流路42から分岐する2つの支流路(第1支流路43および第2支流路44)と、第1支流路43の端に配置された第1試料導入口45と、第2支流路44の端に配置された第2試料導入口46とを備える。第1試料導入口45は、第1支流路43を介して分注流路42と連通している。第2試料導入口46は、第2支流路44を介して分注流路42と連通している。分注流路42は、最小限の面積で所定量の試料を分注するために蛇行状の流路とされている。第1試料導入口45および第2試料導入口46は、基板14の上面14bに露出するように形成されている。第1試料導入口45は比較的小径に形成され、第2試料導入口46は比較的大径に形成されている。第1支流路43が分注流路42から分岐する分岐点を第1分岐点431とし、第2支流路44が分注流路42から分岐する分岐点を第2分岐点441としたとき、PCRに供される試料の体積は第1分岐点431と第2分岐点441の間の分注流路42内の体積によってほぼ決まる。
【0034】
反応処理容器10においては、サーマルサイクル領域32と第1フィルタ28との間に分注領域34を設けたが、分注領域34の位置はこれに限定されず、サーマルサイクル領域32と第2フィルタ30の間に設けられてもよい。また、正確にピペット等で分注できるのであれば、分注領域34は設けずに流路を構成してもよいし、サーマルサイクル領域32等に直接試料を導入することができるように構成してもよい。
【0035】
第1空気連通口24、第2空気連通口26、第1フィルタ28、第2フィルタ30、第1試料導入口45および第2試料導入口46は、基板14の上面14bに露出している。そこで、第1空気連通口24、第2空気連通口26、第1フィルタ28および第2フィルタ30を封止するために第1封止フィルム18が基板14の上面14bに貼り付けられる。第1試料導入口45および第2試料導入口46を封止するために第2封止フィルム20が基板14の上面14bに貼り付けられる。第1封止フィルム18および第2封止フィルム20を貼った状態では、全流路は閉空間となっている。
【0036】
第1封止フィルム18は、第1空気連通口24、第2空気連通口26、第1フィルタ28および第2フィルタ30を同時に封止可能なサイズのものが用いられる。第1空気連通口24、第2空気連通口26への送液システム(後述する)の接続は、送液システムに備わった中空のニードル(先端がとがった注射針)で第1空気連通口24、第2空気連通口26のそれぞれに対応する第1封止フィルム18の一部分に穿孔することにより行う。そのため、第1封止フィルム18は、ニードルによる穿孔が容易な材質や厚みから成るフィルムが好ましい。反応処理容器10では、第1空気連通口24、第2空気連通口26、第1フィルタ28および第2フィルタ30を同時に封止するサイズの封止フィルムについて記載したが、これらを別個に封止する態様でもよい。また、第1空気連通口24、第2空気連通口26を封止しているフィルムを剥がして送液システムと接続してもよい。
【0037】
第2封止フィルム20は、第1試料導入口45および第2試料導入口46を封止可能なサイズのものが用いられる。第1試料導入口45および第2試料導入口46を通じての試料の流路12内への導入は、第2封止フィルム20を一旦、基板14から剥がして行い、所定量の試料の導入後には第2封止フィルム20を再び基板14の上面14bに戻し貼り付ける。そのため、第2封止フィルム20としては、数サイクルの貼り付け/剥がしに耐久するような粘着性を備えるフィルムが望ましい。また第2封止フィルム20は、試料導入後には新しいフィルムを貼り付ける態様であってもよく、この場合は繰り返しの貼り付け/剥がしに関する特性の重要性は緩和されうる。
【0038】
第1封止フィルム18および第2封止フィルム20は、流路封止フィルム16と同様に、一方の主面に粘着剤層が形成され、または押圧により粘着性や接着性を発揮する機能層が形成されていてもよい。例としてシクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン又はアクリルなどの樹脂からなる透明フィルムが適しているが、これらに限定されない。また上述したように複数回の貼り付け/剥離によっても、その粘着性等の特性が使用に影響をきたす程度に劣化しないことが望ましいが、剥離して試料等の導入後や加圧式ポンプとの接続後に、新たなフィルムを貼り付ける態様である場合は、この貼り付け/剥がしに関する特性の重要性は緩和されうる。
【0039】
次に、以上のように構成された反応処理容器10の使用方法について説明する。まず、サーマルサイクルにより増幅すべき試料を準備する。試料としては、例えば、PCR試薬として耐熱性酵素および4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を添加したものがあげられる。これに反応処理対象のDNAに特異的に反応するプライマー、蛍光プローブを混合する。これらについては、市販されているリアルタイムPCR用試薬キット等も使用することができる。更に反応処理対象(例えばPCRによる増幅対象)の一または二以上の種類のDNAを含む混合物を加える。
【0040】
次に、第2封止フィルム20を基板14から剥がし、第1試料導入口45および第2試料導入口46を開放する。
【0041】
次に、試料導入口に試料をスポイトやシリンジ等で導入する。
図4は、試料50が反応処理容器10内に導入された様子を模式的に示す。試料50は、第1試料導入口45および第2試料導入口46のいずれか一方から分注流路42に導入される。導入の方法はこれらに限られないが、例えばピペットやスポイトで適量の試料50を直接導入してよい。ピペットで導入する場合、比較的小径の第1試料導入口45から試料50を導入する。この場合、試料50は、分注流路42内を第2試料導入口46に向かって充填される。スポイトで導入する場合、比較的大径の第2試料導入口46から試料50を導入する。この場合、試料50は、分注流路42内を第1試料導入口45に向かって充填される。いずれか一方の試料導入口から導入された試料のうち、支流路の体積を超えて余剰なものはもう一方の試料導入口に溜まる。それ故試料導入口部分を一種のリザーバとして活用する目的で、ある一定のスペースを有するように作製してもよい。後述するように、第1空気連通口24、第2空気連通口26からの加圧により、第1分岐点431および第2分岐点441間の分注流路42に充填された試料50がPCRに供されることになる。このように、反応処理容器10の分注領域34は、所定量の試料を分注する機能を果たす。
【0042】
次に、第2封止フィルム20を再び基板14に貼り戻し、第1試料導入口45および第2試料導入口46を封止する。剥がした第2封止フィルム20に代えて、新たな第2封止フィルム20を貼ってもよい。以上で反応処理容器10への試料50の導入は完了である。
【0043】
上記の反応処理容器における分注機能は、ピペット単体で試料を精密に分注しながら導入することを妨げるものではない。
【0044】
図5は、本発明の実施形態に係る反応処理装置100を説明するための模式図である。
【0045】
本実施形態に係る反応処理装置100は、反応処理容器10が設置される容器設置部(図示せず)と、温度制御システム102と、CPU105とを備える。温度制御システム102は、
図5に示すように、容器設置部に設置される反応処理容器10に対して、反応処理容器10の流路12における高温領域36を約95℃、低温領域38を約60℃に精度よく維持、制御できるように構成されている。
【0046】
温度制御システム102は、サーマルサイクル領域の各温度領域の温度を調節するものであって、具体的には、流路12の高温領域36を加熱するための高温用ヒータ104と、流路12の低温領域38を加熱するための低温用ヒータ106と、各温度領域の実温度を計測するための例えば熱電対等の温度センサ(図示せず)と、高温用ヒータ104の温度を制御する高温用ヒータドライバ108と、低温用ヒータ106の温度を制御する低温用ヒータドライバ110とを備える。さらに、反応処理装置100は、流路12の分注領域を加熱するための分注用ヒータ(図示せず)と、分注用ヒータドライバ(図示せず)を備えてもよい。温度センサによって計測された実温度情報は、CPU105に送られる。CPU105は、各温度領域の実温度情報に基づいて、各ヒータの温度が所定の温度となるよう各ヒータドライバを制御する。各ヒータは例えば抵抗加熱素子やペルチェ素子等であってよい。温度制御システム102はさらに、各温度領域の温度制御性を向上させるための他の要素部品を備えてもよい。
【0047】
本実施形態に係る反応処理装置100は、さらに、蛍光検出器140を備える。上述したように、試料50には所定の蛍光プローブが添加されている。DNAの増幅が進むにつれ試料50から発せられる蛍光信号の強度が増加するので、その蛍光信号の強度値をPCRの進捗やその終結の判定材料としての指標とすることができる。
【0048】
蛍光検出器140としては、非常にコンパクトな光学系で、迅速に測定でき、かつ明るい場所か暗い場所かにもかかわらず、蛍光を検出することができる日本板硝子株式会社製の光ファイバ型蛍光検出器FLE-510を使用することができる。この光ファイバ型蛍光検出器は、その励起光/蛍光の波長特性を試料50の発する蛍光特性に適するようにチューニングしておくことができ、様々な特性を有する試料について最適な光学・検出系を提供することが可能であり、さらに光ファイバ型蛍光検出器によってもたらされる光線の径の小ささから、流路などの小さいまたは細い領域に存在する試料からの蛍光を検出するのに適しており応答スピードも優れている。
【0049】
光ファイバ型の蛍光検出器140は、光学ヘッド142と、蛍光検出器ドライバ144と、光学ヘッド142と蛍光検出器ドライバ144とを接続する光ファイバ146とを備える。蛍光検出器ドライバ144には励起光用光源(LED、レーザその他特定の波長を出射するように調整された光源)、光ファイバ型合分波器および光電変換素子(PD,APD又はフォトマル等の光検出器)(いずれも図示せず)等が含まれており、これらを制御するためのドライバ等からなる。光学ヘッド142はレンズ等の光学系からなり、励起光の試料への指向性照射と試料から発せられる蛍光の集光の機能を担う。集光された蛍光は光ファイバ146を通じて蛍光検出器ドライバ144内の光ファイバ型合分波器により励起光と分けられ、光電変換素子によって電気信号に変換される。
【0050】
本実施形態に係る反応処理装置100においては、高温領域36と低温領域38とを接続する流路内の試料50からの蛍光を検出することができるように光学ヘッド142が配置される。試料50は流路内を繰り返し往復移動させられることで反応が進み、試料50に含まれる所定のDNAが増幅するので、検出された蛍光の量の変動をモニタリングすることで、DNAの増幅の進度をリアルタイムで知ることができる。また、本実施形態に係る反応処理装置100においては、蛍光検出器140からの出力値を利用して、試料50の移動制御に活用する。蛍光検出器は、試料からの蛍光を検出する機能を発揮するものであれば光ファイバ型蛍光検出器に限定されない。
【0051】
本実施形態に係る反応処理装置100は、さらに、試料50を反応処理容器10の流路12内で移動および停止させるための送液システム120を備える。送液システム120は、ポンプ121と、ポンプ121を駆動するためのポンプドライバ122と、第1三方弁123と、第2三方弁124とを備える。ポンプドライバ122、第1三方弁123および第2三方弁124は、CPU105により制御される。
【0052】
ポンプ121は、吐出口121aから空気を吐出可能である。ポンプ121は、例えばダイアフラムポンプからなるマイクロブロアポンプであってよい。ポンプ121としては、例えば株式会社村田製作所製のマイクロブロアポンプ(型式MZB1001T02)などを使用することができる。このマイクロブロアポンプは、動作時に一次側より二次側の圧力を高めることができるが、停止した瞬間または停止時には一次側と二次側の圧力が等しくなる。CPU105は、ポンプドライバ122を介して、ポンプ121からの送風や加圧を制御する。
【0053】
ポンプ121の吐出口121aは、第1空気流路129により反応処理容器10の第1空気連通口24と接続されている。第1空気流路129の中途には第1三方弁123が配置されている。また、ポンプ121の吐出口121aは、第2空気流路130により反応処理容器10の第2空気連通口26と接続されている。第2空気流路130の中途には第2三方弁124が配置されている。
【0054】
第1三方弁123および第2三方弁124はそれぞれ、ポートA、ポートBおよびポートCを備える3ポートバルブであり、CPU105の制御により、ポートAとポートCが連通した状態(ポートBとポートCは連通しない)と、ポートBとポートCが連通した状態(ポートAとポートCは連通しない)とを切替可能である。第1三方弁123および第2三方弁124としては、例えばSMC株式会社製の3ポートソレノイドバルブ(LVM095R-6A)等を使用することができる。
【0055】
第1三方弁123のポートAは、第1チューブ125によってポンプ121の吐出口121aと接続される。第1三方弁123のポートCは、第2チューブ126によって反応処理容器10の第1空気連通口24と接続される。第1チューブ125および第2チューブ126は、第1空気流路129を構成する。第2チューブ126の一端と第1空気連通口24の接続部には、気密性を確保するためのパッキン134やシールが配置されることが好ましい。第1三方弁123のポートBは、大気圧に開放される。
【0056】
このように配置された第1三方弁123は、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ121の吐出口121aと連通する状態と、反応処理容器10の第1空気連通口24が大気圧に開放される状態とを切替可能である。反応処理容器10の第1空気連通口24とポンプ121の吐出口121aとを連通する場合、第1三方弁123はポートAとポートCとが連通する状態に制御される。一方、反応処理容器10の第1空気連通口24を大気圧に開放する場合、第1三方弁123はポートBとポートCとが連通する状態に制御される。
【0057】
第2三方弁124のポートAは、第3チューブ127によってポンプ121の吐出口121aと接続される。第2三方弁124のポートCは、第4チューブ128によって反応処理容器10の第2空気連通口26と接続される。第3チューブ127および第4チューブ128は、第2空気流路130を構成する。第4チューブ128の一端と第2空気連通口26の接続部には、気密性を確保するためのパッキン136やシールが配置されることが好ましい。第2三方弁124のポートBは、大気圧に開放される。
【0058】
このように配置された第2三方弁124は、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ121の吐出口121aと連通する状態と、反応処理容器10の第2空気連通口26が大気圧に開放される状態とを切替可能である。反応処理容器10の第2空気連通口26とポンプ121の吐出口121aとを連通する場合、第2三方弁124はポートAとポートCとが連通する状態に制御される。一方、反応処理容器10の第2空気連通口26を大気圧に開放する場合、第2三方弁124はポートBとポートCとが連通する状態に制御される。
【0059】
本実施形態に係る反応処理装置100においては、ポンプドライバ122、第1三方弁123および第2三方弁124の動作を制御することにより、試料50を流路内で往復移動させて、反応処理容器10の流路12の各温度領域に繰り返し曝すことができ、その結果、試料50にサーマルサイクルを与えることが可能となる。より具体的には、高温領域36において変性、低温領域38においてアニーリング・伸長の各工程を繰り返し与えることにより、試料50中の目的のDNAを選択的に増幅させる。言い換えれば高温領域36は変性温度域、低温領域38はアニーリング・伸長温度域とみなすことができる。また各温度領域に滞留する時間は、試料50が各温度領域の所定の位置で停止する時間を変えることによって適宜設定することができる。
【0060】
本実施形態に係る反応処理装置100では、送液システム120で用いているポンプは1つであるため、2つのポンプを用いる場合と異なり、ポンプの制御においてポンプ特性の個体差を考慮する必要はない。三方弁はポートAとポートCの連通またはポートBとポートCの連通がなされているか否かだけであるので、圧損の十分に小さい三方弁を選択する限り個体差は生じない。従って、本実施形態に係る反応処理装置100は、2つのポンプを用いる場合と比較して、試料の移動の制御が容易である。また、一般的に三方弁はポンプよりも安価であるため、反応処理装置100の低コスト化を図ることができる。
【0061】
図6は、
図5に示す反応処理装置100における、ポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御方法を説明するための図である。
図6で説明する制御方法は、ポンプ121として、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなるポンプを用いている。
【0062】
図6および以降の図では、ポンプ121の動作状態(すなわち空気の吐出状態)を「ON」で示し、ポンプ121の非動作状態(すなわち空気の吐出停止状態)を「OFF」で示す。また、第1三方弁123および第2三方弁124については、ポートAとポートCとが連通した状態を「A-C」で示し、ポートBとポートCとが連通した状態を「B-C」で示す。
【0063】
工程1は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程1では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0064】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程2では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ121の吐出口121aと連通するとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26が大気圧に開放される状態となるので、ポンプ121からの空気の吐出により第1空気連通口24が正圧となり、試料50が低温領域38から高温領域36に向かって移動する。
【0065】
工程3は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程3では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止する。
【0066】
工程4は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程4では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止したままとなる。
【0067】
工程5は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程5では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。
【0068】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程6では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24が大気圧に開放されるとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ121の吐出口121aと連通する状態となるので、ポンプ121からの空気の吐出により第2空気連通口26が正圧となり、試料50が高温領域36から低温領域38に向かって移動する。
【0069】
工程7は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程7では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止する。
【0070】
工程8は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程8では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止したままとなる。
【0071】
以上説明した工程1~8を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0072】
図7は、
図5に示す反応処理装置100における、ポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の別の制御方法を説明するための図である。
図7で説明する制御方法は、ポンプ121として、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなるポンプを用いている。
【0073】
工程1は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程1では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0074】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程2では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ121の吐出口121aと連通するとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26が大気圧に開放される状態となるので、ポンプ121からの空気の吐出により第1空気連通口24が正圧となり、試料50が低温領域38から高温領域36に向かって移動する。
【0075】
工程3は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程3では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止する。
【0076】
工程4は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程4では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止したままとなる。
【0077】
工程5は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程5では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0078】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程6では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24が大気圧に開放されるとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ121の吐出口121aと連通する状態となるので、ポンプ121からの空気の吐出により第2空気連通口26が正圧となり、試料50が高温領域36から低温領域38に向かって移動する。
【0079】
工程7は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程7では、ポンプ121は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止する。
【0080】
工程8は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ121、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程8では、ポンプ121は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも大気圧に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止したままとなる。
【0081】
以上説明した工程1~8を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0082】
以上のように構成された反応処理装置100の効果を確認するために、特定の菌株を本実施形態に係る反応処理装置100により、PCRで増幅する実験を行った。ここでは、上記の
図6で説明した制御方法を使用した。ベロ毒素VT1の検出を企図し、日本ジェネティクス社のPCR酵素であるKAPA3G Plant PCRキットを使用し、以下の表に掲げる要領でPCR用試薬を調整した。
【表1】
【0083】
一方で、鋳型として20000copies/μLのものを準備し、これを希釈し、鋳型濃度が20000、1000、100および10copies/μLの水溶液を作製した。
【0084】
さらに、上記調整したKAPA 3G Plant溶液19μLに対し、各濃度の鋳型を含む水溶液を1μLだけ添加し、20μLの陽性(ポジティブコントロール)試薬とした。
【0085】
上記濃度の試料に対し、反応処理装置100において、高温領域36の温度を96℃に設定し、低温領域38の温度を62℃に設定し、高温領域36での待機時間を3.5秒間とし、低温領域38での待機時間を15秒間とし、50サイクル(50Ct)のサーマルサイクルを実施しPCRを行った。送液時間は約1秒間とした。最初のサイクルの高温領域36における待機時間は15秒とした。
【0086】
図8は、本実施形態に係る反応処理装置100によるPCRの増幅結果を示す。
図8において、横軸はサイクル数(Ct)であり、縦軸は蛍光信号強度(任意単位)である。上述の反応処理装置100を用いて、サイクル数に対する蛍光検出器140で検出される蛍光信号の強度を測定した。試料中の検体が増幅すると、蛍光信号強度が増加する。
【0087】
ここでは、初期濃度が20000copies/μL、1000copies/μL、100copies/μLおよび10copies/μLの検体を含む試料に対しPCRを行った。
図8に示すように、20000copies/μLの試料は30サイクル付近から蛍光信号強度が急激に立ち上がっている。また、1000copies/μLの試料は35サイクル付近から蛍光信号強度が急激に立ち上がっている。また、100copies/μLの試料は38サイクル付近から蛍光信号強度が急激に立ち上がっている。また、10copies/μLの試料は41サイクル付近から蛍光信号強度が急激に立ち上がっている。このような蛍光信号強度の急激な立ち上がりは、試料中の検体が増幅していることを示しており、本実施形態に係る反応処理装置100を用いて良好なPCRを行うことができることが分かる。
【0088】
図9は、本発明の別の実施形態に係る反応処理装置200を説明するための模式図である。PCRでは通常、高温領域が約95℃に設定される。試料は水溶液であるので、標高の高い場所では沸点が低下する。例えば標高が1000mの場所では、気圧は大体897hPaで沸点は計算上96.6℃、標高が1500mの場所では、気圧が845hPaで沸点は95℃、標高が2000mの場所では、気圧が797hPaで沸点は93.4℃となる。このような場所では、試料が高温領域で容易に沸騰して気化・発泡したり、試料の蒸発が著しくなったりするので、PCRを行うことが困難な場合がある。本実施形態に係る反応処理装置200は、そのような気圧の低い場所でも、試料の沸騰や気泡の発生を防止しつつPCRを行うことができる。
【0089】
反応処理装置200は、送液システム220の構成が
図5に示す反応処理装置100の送液システム120と異なる。送液システム220は、送液システム120と同様に、ポンプ221と、ポンプ221を駆動するためのポンプドライバ222と、第1三方弁223と、第2三方弁224とを備える。ポンプドライバ222、第1三方弁223および第2三方弁224は、CPU105により制御される。
【0090】
本実施形態の送液システム220はさらに、加圧チャンバ238と、加圧チャンバ用ポンプ244と、該加圧チャンバ用ポンプ244を制御するための加圧チャンバ用ポンプドライバ245とを備える。本実施形態では、送液用のポンプ221が加圧チャンバ238内に配置される。
【0091】
加圧チャンバ238は、その内部に一定の体積を有する空間を形成している。加圧チャンバ238には、加圧チャンバ用ポンプ244が接続されている。加圧チャンバ用ポンプドライバ245は、CPU105からの指示に従い、加圧チャンバ238内の空間が所定の圧力となるよう加圧チャンバ用ポンプ244を制御する。加圧チャンバ用ポンプ244としては、応研精工株式会社のローリングポンプ(型式:RSP08D-02RW)等を使用することができるほか、簡易的なところではゴム球やシリンジ等による加圧手段も使用することができる。
【0092】
本実施形態では、加圧チャンバ238内の圧力は、反応処理中、反応処理装置200の周辺環境の気圧より高い値(例えば1.3気圧)に維持される。反応処理装置200の周辺環境の気圧とは、反応処理装置200が設置されている場所、反応処理装置200によるPCRが行われる場所、又は反応処理装置200が周りから区画された場所に設置されている場合は、その区画された場所、における圧力(又は大気圧)のことを指す。加圧チャンバ238内の圧力は、試料が高温(95℃程度)に繰り返し曝されても、PCR反応処理に影響するような著しい試料の蒸発や気泡等の発生を防止できる程度に加圧すればよい。加圧チャンバ238内の圧力は高ければ高いほど、試料の蒸発等の影響を抑止することができるが、反面、その取扱いも含めて送液システム220が複雑化したり大型化したりするため、当業者は装置の用途や目的、費用、効果等を総合的に判断し、全体のシステムの設計をすることができる。
【0093】
加圧チャンバ238には、大気圧開放バルブ248が設けられている。大気圧開放バルブ248は、反応処理容器10の脱着時に、送液システム220や反応処理容器10の流路12内の圧力が大気圧に等しくなるように制御される。これにより、試料50の急激な移動やとびだしを防ぐことができる。また、反応処理中、加圧チャンバ用ポンプ244を停止させて、大気圧開放バルブ248を開にしておくことで、反応処理装置100と実質的に等価な反応処理装置となる。
【0094】
また、加圧チャンバ238には、その内部空間の圧力を常時モニタするための圧力センサ(図示せず)が設けられてもよい。圧力センサで検出した実圧力をCPU105に送ることで、加圧チャンバ238内の圧力を好適に制御できる。
【0095】
本実施形態においても、ポンプ221として、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなるタイプのポンプを用いることができる。
【0096】
ポンプ221の吐出口221aは、第1空気流路229により反応処理容器10の第1空気連通口24と接続されている。第1空気流路229の中途には第1三方弁223が配置されている。また、ポンプ221の吐出口221aは、第2空気流路230により反応処理容器10の第2空気連通口26と接続されている。第2空気流路230の中途には第2三方弁224が配置されている。
【0097】
第1三方弁223のポートAは、第1チューブ225によってポンプ221の吐出口221aと接続される。第1三方弁223のポートCは、第2チューブ226によって反応処理容器10の第1空気連通口24と接続される。第1チューブ225および第2チューブ226は、第1空気流路229を構成する。第1三方弁223のポートBは、第5チューブ231によって加圧チャンバ238の内部空間と連通する。
【0098】
このように配置された第1三方弁223は、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ221の吐出口221aと連通する状態と、反応処理容器10の第1空気連通口24が加圧チャンバ238の内部空間に開放される状態とを切替可能である。反応処理容器10の第1空気連通口24とポンプ221の吐出口221aとを連通する場合、第1三方弁223はポートAとポートCとが連通する状態に制御される。一方、反応処理容器10の第1空気連通口24を加圧チャンバ238の内部空間に開放する場合、第1三方弁223はポートBとポートCとが連通する状態に制御される。
【0099】
第2三方弁224のポートAは、第3チューブ227によってポンプ221の吐出口221aと接続される。第2三方弁224のポートCは、第4チューブ228によって反応処理容器10の第2空気連通口26と接続される。第3チューブ227および第4チューブ228は、第2空気流路230を構成する。第2三方弁224のポートBは、第6チューブ232によって加圧チャンバ238の内部空間と連通する。
【0100】
このように配置された第2三方弁224は、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ221の吐出口221aと連通する状態と、反応処理容器10の第2空気連通口26が加圧チャンバ238の内部空間に開放される状態とを切替可能である。反応処理容器10の第2空気連通口26とポンプ221の吐出口221aとを連通する場合、第2三方弁224はポートAとポートCとが連通する状態に制御される。一方、反応処理容器10の第2空気連通口26を加圧チャンバ238の内部空間に開放する場合、第2三方弁224はポートBとポートCとが連通する状態に制御される。
【0101】
本実施形態に係る反応処理装置200においても、ポンプドライバ222、第1三方弁223および第2三方弁224の動作を制御することにより、試料50を流路内で往復式に移動させて、反応処理容器10の流路12の各温度領域に繰り返し曝すことができ、その結果、試料50にサーマルサイクルを与えることが可能となる。また、用いているポンプは1つであるため試料の移動の制御が容易且つ低コスト化を図ることができる点も上述の反応処理装置100と同様である。
【0102】
さらに本実施形態に係る反応処理装置200では、周辺環境の気圧より高い圧力(例えば1.3気圧)に設定された加圧チャンバ238の内部空間にポンプ221を配置するとともに、第1三方弁223および第2三方弁224のポートBが加圧チャンバ238の内部空間に開放されるよう構成されている。従って、反応処理中は、流路12全体が周辺環境の気圧より高い圧力に維持されている。このため、高地などの低い大気圧の環境下においても、主に水溶液からなる試料50の沸点が低下して試料50が沸騰・発泡することを防ぐことが可能となり、安定したPCRを行うことができる。
【0103】
反応処理装置200におけるポンプドライバ222、第1三方弁223および第2三方弁224の制御方法は、
図6に示すものを利用できる。再度
図6を参照して制御方法を説明する。ポンプ221は、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなるポンプを用いる。反応処理装置200においては、予め、大気圧開放バルブ248を閉とし、加圧チャンバ用ポンプ244を動作状態にして、加圧チャンバ238の内部空間の圧力を高め、各チューブ、流路12内を加圧しておく。このときの第1三方弁223および第2三方弁224は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。
【0104】
工程1は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程1では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0105】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程2では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ221の吐出口221aと連通するとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26が加圧チャンバ238の内部空間に開放される状態となる。本実施形態ではポンプ221が加圧チャンバ238内に配置されているので、ポンプ221から空気が吐出されると、反応処理容器10の第1空気連通口24の圧力は第2空気連通口26よりも高くなり、試料50が低温領域38から高温領域36に向かって移動する。
【0106】
工程3は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程3では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止する。
【0107】
工程4は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程4では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止したままとなる。
【0108】
工程5は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程5では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。
【0109】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程6では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24が加圧チャンバ238の内部空間に開放されるとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ221の吐出口221aと連通する状態となるので、ポンプ221から空気が吐出されると、反応処理容器10の第2空気連通口26の圧力は第1空気連通口24よりも高くなり、試料50が高温領域36から低温領域38に向かって移動する。
【0110】
工程7は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程7では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止する。
【0111】
工程8は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程8では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止したままとなる。
【0112】
以上説明した工程1~8を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0113】
反応処理装置200におけるポンプドライバ222、第1三方弁223および第2三方弁224の制御方法は、
図7に示すものを利用することもできる。再度
図7を参照して制御方法を説明する。この制御方法は、ポンプ221として、停止時に一次側と二次側の圧力が等しくなるポンプを用いる。同様に、反応処理装置200においては、予め、大気圧開放バルブ248を閉とし、加圧チャンバ用ポンプ244を動作状態にして、加圧チャンバ238の内部空間の圧力を高め、各チューブ、流路12内を加圧しておく。
【0114】
工程1は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程1では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0115】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程2では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24がポンプ221の吐出口221aと連通するとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26が加圧チャンバ238の内部空間に開放される状態となる。本実施形態ではポンプ221が加圧チャンバ238内に配置されているので、ポンプ221から空気が吐出されると、反応処理容器10の第1空気連通口24の圧力は第2空気連通口26よりも高くなり、試料50が低温領域38から高温領域36に向かって移動する。
【0116】
工程3は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程3では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止する。
【0117】
工程4は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程4では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は高温領域36で停止したままとなる。
【0118】
工程5は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程5では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0119】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程6では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。これにより、反応処理容器10の第1空気連通口24が加圧チャンバ238の内部空間に開放されるとともに、反応処理容器10の第2空気連通口26がポンプ221の吐出口221aと連通する状態となるので、ポンプ221から空気が吐出されると、反応処理容器10の第2空気連通口26の圧力は第1空気連通口24よりも高くなり、試料50が高温領域36から低温領域38に向かって移動する。
【0120】
工程7は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程7では、ポンプ221は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。これにより、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止する。
【0121】
工程8は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ221、第1三方弁223および第2三方弁224の制御状態を示す。工程8では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、ポートAとポートCが連通した状態(A-C)または、ポートBとポートCが連通した状態(B-C)のいずれかに制御される。このときも、第1空気連通口24および第2空気連通口26は両方とも加圧チャンバ238の内部空間に開放された状態となるので、試料50は低温領域38で停止したままとなる。
【0122】
以上説明した工程1~8を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0123】
図10は、本発明のさらに別の実施形態に係る反応処理装置300を説明するための模式図である。この反応処理装置300は、送液システム320において停止時に一次側と二次側の圧力が等しくならないタイプのポンプ321を用いている点が
図5に示す反応処理装置100と異なる。このようなポンプ321としては、例えば高砂電気工業株式会社製のピエゾマイクロポンプ(型式SDMP302(306))などを使用することができる。
【0124】
図11は、
図10に示す反応処理装置300における、ポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御方法を説明するための図である。
【0125】
工程1は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程1では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0126】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程2では、ポンプ321は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0127】
工程3は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程3では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁124はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0128】
工程4は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程4では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0129】
工程5は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程5では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。
【0130】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程6では、ポンプ321は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。
【0131】
工程7は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程7では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁124はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。
【0132】
工程8は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ321、第1三方弁123および第2三方弁124の制御状態を示す。工程8では、ポンプ321は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁123および第2三方弁124は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。
【0133】
以上説明した工程1~8を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。本実施形態に係る反応処理装置300においても、用いているポンプは1つであるため試料の移動の制御が容易且つ低コスト化を図ることができる。
【0134】
図12は、本発明のさらに別の実施形態に係る反応処理装置400を説明するための模式図である。この反応処理装置400は、送液システム420において停止時に一次側と二次側の圧力が等しくならないタイプのポンプ421を用いている点が
図9に示す反応処理装置200と異なる。ポンプ421としては、例えば高砂電気工業株式会社製のピエゾマイクロポンプ(型式SDMP302(306))などを使用することができる。
【0135】
本実施形態に係る反応処理装置400はさらに、電磁弁401を備える。この電磁弁401は、加圧チャンバ238と第1空気流路229、第2空気流路230とをつなぐ流路に設けられており、CPU105の指示により開状態と閉状態とを切替可能である。電磁弁401が開状態のとき、第1空気流路229、第2空気流路230は、加圧チャンバ238の内部空間と連通する。一方、電磁弁401が閉状態のとき、第1空気流路229、第2空気流路230は、加圧チャンバ238の内部空間と連通しない。電磁弁401としては、例えばティーディーエス株式会社製の電磁弁(型式TDS-V05B)などを使用することができる。
【0136】
図13は、
図12に示す反応処理装置400における、ポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御方法を説明するための図である。
【0137】
工程1は、加圧チャンバ238の内部空間の圧力を高め、各チューブ、流路12内を加圧するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程1では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は開状態に制御される。
【0138】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程2では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0139】
工程3は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程3では、ポンプ421は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0140】
工程4は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程4では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0141】
工程5は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程5では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は開状態に制御される。
【0142】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程6では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0143】
工程7は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程7では、ポンプ421は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0144】
工程8は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程8では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0145】
工程9は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程9では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は開状態に制御される。
【0146】
以上説明した工程2~9を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0147】
反応処理装置400におけるポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御方法は、
図14に示すものを利用することもできる。
【0148】
工程1は、加圧チャンバ238の内部空間の圧力を高め、各チューブ、流路12内を加圧するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程1では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は開状態に制御される。
【0149】
工程2は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動する前のポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程2では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0150】
工程3は、低温領域38から高温領域36に試料50を移動するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程3では、ポンプ421は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0151】
工程4は、試料50が高温領域36に到達したときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程4では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートAとポートCが連通した状態(A-C)、第2三方弁224はポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0152】
工程5は、試料50が高温領域36で待機しているときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程5では、ポンプ221は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0153】
工程6は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動する前のポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程6では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0154】
工程7は、高温領域36から低温領域38に試料50を移動するときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程7では、ポンプ421は動作状態(ON)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0155】
工程8は、試料50が低温領域38に到達したときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程8では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223はポートBとポートCが連通した状態(B-C)、第2三方弁224はポートAとポートCが連通した状態(A-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0156】
工程9は、試料50が低温領域38で待機しているときのポンプ421、第1三方弁223、第2三方弁224および電磁弁401の制御状態を示す。工程9では、ポンプ421は非動作状態(OFF)に制御される。また、第1三方弁223および第2三方弁224は、共にポートAとポートCが連通した状態(A-C)または共にポートBとポートCが連通した状態(B-C)に制御される。また、電磁弁401は閉状態に制御される。
【0157】
以上説明した工程2~9を繰り返すことにより、低温領域38と高温領域36の間で試料50を連続的に往復移動させることによって、試料50にサーマルサイクルを与えることができる。
【0158】
本実施形態に係る反応処理装置400においても、用いているポンプは1つであるため試料の移動の制御が容易且つ低コスト化を図ることができる。
【0159】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0160】
10 反応処理容器、 12 流路、 14 基板、 16 流路封止フィルム、 18 第1封止フィルム、 20 第2封止フィルム、 24 第1空気連通口、 26 第2空気連通口、 28 第1フィルタ、 30 第2フィルタ、 32 サーマルサイクル領域、 34 分注領域、 36 高温領域、 38 低温領域、 40 接続領域(流路)、 42 分注流路、 43 第1支流路、 44 第2支流路、 45 第1試料導入口、 46 第2試料導入口、 50 試料、 100,200,300,400 反応処理装置、 102 温度制御システム、 104 高温用ヒータ、 105 CPU、 106 低温用ヒータ、 108 高温用ヒータドライバ、 110 低温用ヒータドライバ、 120,220,320,420 送液システム、 121,221,321,421 ポンプ、 122,222 ポンプドライバ、 123,223 第1三方弁、 124,224 第2三方弁、 125,225 第1チューブ、 126,226 第2チューブ、 127,227 第3チューブ、 128,228 第4チューブ、 129,229 第1空気流路、 130,230 第2空気流路、 134,136 パッキン、 140 蛍光検出器、 142 光学ヘッド、 144 蛍光検出器ドライバ、 146 光ファイバ、 231 第5チューブ、 232 第6チューブ、 238 加圧チャンバ、 244 加圧チャンバ用ポンプ、 245 加圧チャンバ用ポンプドライバ、 248 大気圧開放バルブ、 401 電磁弁、 431 第1分岐点、 441 第2分岐点。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に利用できる。
【0162】
配列番号1:フォワードPCRプライマー
配列番号2:リバースPCRプライマー
配列番号3:プローブ
【配列表】