(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】混合室を制御する手段を含むツインスクリュー混合押出機
(51)【国際特許分類】
B29B 7/20 20060101AFI20230815BHJP
B29B 7/26 20060101ALI20230815BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20230815BHJP
B29C 48/525 20190101ALI20230815BHJP
B29C 48/37 20190101ALI20230815BHJP
【FI】
B29B7/20
B29B7/26
B29C48/40
B29C48/525
B29C48/37
(21)【出願番号】P 2020566344
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2019051145
(87)【国際公開番号】W WO2019162803
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】102018000002860
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520308880
【氏名又は名称】コルメック エス ピー エイ
【氏名又は名称原語表記】COLMEC S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ウバルド コロンボ
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-518590(JP,A)
【文献】実開昭61-160908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96,
B29B 7/00-7/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム系材料やシリコーン系材料などのプラスチック材料を混合し押出すための装置であって、閉鎖手段(4)によって閉塞されるのに適した押出ダイ(3)に向かって収束する2つの円錐スクリュー(2)が取り付けられたダンプ押出機本体を備え、前記円錐スクリュー(2)が低圧混合室(1)内および高圧室(2')を画成する1対の収束円錐チャネル内に収容され、前記低圧
混合室
(1)が押出し方向に関して上流領域に対応している、装置において、
前記高圧室(2')には、前記高圧室(2')の容積の制御された変化を画定するのに適した可動壁を形成する第1プレッサー本体(6)が設けられており、
前記第1プレッサー本体(6)は、少なくとも混合工程中に所定の位置に変位され、前記閉鎖手段(4)が、プラスチック材料が前記押出ダイ(3)を通過するのを阻止する、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記高圧室(2’)が、位置が制御される前記第1プレッサー本体(6)を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記低圧
混合室(1)に、さらにプラスチック材料投入開口(1a)を閉塞するように配置されている第2プレッサー本体(5、5’)が設けられている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1又は第2プレッサー本体(5、6)のいずれかが摺動可能に取り付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1又は第2プレッサー本体(5、6)のいずれかが、制御されたアクチュエータの作用の下で、上昇位置と下降位置との間で移動可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記アクチュエータが、前記第1又は第2プレッサー本体(5、6)の定位置を決定する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1プレッサー本体(6)が、2つの互いに交わる円錐表面部分として形成された可動壁を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1プレッサー本体(6)が、前記高圧室(2')を画定する円錐チャネルの拡大部の可動壁を構成する、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記閉鎖手段(4)は、停止されて前記
押出ダイ(3)の出口を閉塞する抽出ギアポンプの形態である、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、シリコーン、プラスチックおよび熱可塑性材料、または他の材料のための混合押出機に関し、より詳細には、混合室を一時的に調整するための手段を備えた混合押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
合成材料、特にゴム、エラストマー、プラスチックおよび/または熱可塑性材料、またはシリコーンなどの良好な弾性を有する材料のためのいくつかのタイプのスクリュー押出機では、押出スクリューへの供給は上部に開口したローディングホッパーによって行われることがよく知られている。
【0003】
特に効果的であることが証明されている市販の押出機は、本出願人名義のWO2005/039847号に記載されたものであり、参考として本明細書に組み込まれ、ツインスクリューダンプ押出機型の押出機に設けられている。
【0004】
より正確には、このような従来の機械を示す
図1の部分断面図を参照すると、このような従来技術の機械では、混合室1が材料を押出ダイ3に向かって押し出す1対の押出円錐スクリュー2を収容し、押出ダイ3はめくらフランジまたは閉鎖カバー4によって閉鎖することができる。混合室1には、フィードホッパー(図示せず)に開口した入口1aが設けられている。閉鎖カバー4は押出ダイ3を塞ぎ、材料を強制的に混合室1内に再循環させて、2つの円錐形スクリューによる混合を引き起こす。材料は、実際には前方に、つまり押出ダイ3に向かって、1対の逆回転スクリューによって押し出され、ダイがカバー4によって塞がれたときに強制的に戻される。特定の用途では、2つのスクリューの回転は混合の効果を高めるために、一時的に逆転させることもできる。
【0005】
カバー4は、所望されるまで、混合工程中押出ダイ3を閉塞状態に保ち、その後開くか、または容易に取り外して、押出し材料を混合の終わりに流出させることができる。
【0006】
ダンプ押出機の押出ダイ3がカバー4で閉じられると、ホッパーから導入された材料は、混合室1内で強制的に再循環させられ、均一に混合される。
【0007】
特に、動作中、めくらフランジ4は閉鎖位置にあり、混合すべき材料、例えば、既に別の機械で事前混合された混合物、またはゴム、充填剤、促進剤などのバルク材料が、フィードホッパーに取り込まれ、混合室1内に送り込まれるとともに、モータが円錐スクリューを逆回転状態に維持し、混合すべき材料をダイの方へ押し進める。しかしながら、めくらフランジ4が混合室1からの混合物の流出を許さず、混合物を混合室へと押し戻し再循環させる。したがって、低い圧力の材料供給領域と、めくらフランジ4の近くの高い圧力の「ダクト」領域との間に増大した圧力勾配が得られる。変化する圧力領域間における種々の基本成分の再循環によって、混合物の迅速かつ効果的な混合が可能となる。
【0008】
2つの逆回転する円錐スクリューは、材料が供給される大きな室1内に部分的に収容されるとともに、収束して交わる円錐チャネル内に部分的に収容される。スクリューのスレッドの周囲プロファイルはチャネル表面に隣接して延びている。したがって、材料はスクリューの羽根形状に従って次第に狭くなる容積部に押し出され、圧力が増加する。材料の再循環を達成するために(カバー4が閉じているとき)、少なくとも円錐チャネルの最先端部において、スクリューベーンが周囲壁からある程度離れるように、周囲壁に拡大部が設けられる。通常、拡大部は収容チャネルの上部に設けられる。押出スクリューを収容するためのチャネルのこの拡大部の存在のおかげで、カバーが閉じられたとき、材料は後方に循環することができ、混合室1の低圧領域に戻り、その結果、効果的な混合が行われる。
【0009】
この押出機は完全に機能するが、出願人は改善の余地があることに気付いた。実際、混合される材料は、局所的な圧力に基づいて混合室1内に自由に配分され、これにより、混合の停滞または遅延を生じ、場合によっては、材料の温度と圧力に過度の上昇を生じる可能性がある。したがって、混合工程中のプロセスをよりよく制御することが望ましいであろう。
【0010】
従来技術では、押出機のいくつかの特異な構成がすでに提案されており、それらは可動要素を使用して、少なくとも押出機スクリューへの材料の投入を制御している。例えば、DE102007033355は、押出機の入口ホッパー内で作動する材料スラストプレートを備えた押出機を開示している。対照的に、US2016 / 0361697はミキサーに関し、このミキサーでは、材料混合室を開閉する取り外し可能な閉鎖要素が設けられている。しかしながら、これらの従来技術のシステムのいずれも、プロセス中に、混合される材料の圧力および温度条件を制御することができず、混合条件および押出条件の両方に適応することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の根本的な課題は、上記の欠点を克服し、処理中の材料の混合および温度/圧力並びに混合時間のより優れた制御を可能にする、上記のゴム系またはシリコーン系材料を押出し混合する機械を供給することである。
【0012】
この目的は、添付の特許請求の範囲の必須項で特定される特徴によって達成される。
【0013】
特に、第1の態様によれば、プラスチック材料、例えばゴム系およびシリコーン系の材料を混合し押出すための装置が提供され、該装置は、閉鎖手段によって閉塞されるのに適した押出ダイに向かって収束する2つの円錐スクリューが取り付けられたダンプ押出機本体を備え、前記円錐スクリューが低圧混合室内および高圧室を画成する1対の収束円錐チャネル内に収容され、前記低圧室が押出し方向に関して上流領域に対応している、装置であり、
前記高圧室および/または前記低圧室には、それぞれの室の容積の制御された変化を画定するのに適した可動壁を形成するプレッサー本体が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
好ましい態様によれば、少なくとも前記高圧室に、位置が制御されるプレッサー本体が設けられている。
【0015】
好ましい態様によれば、前記低圧室の前記プレッサー本体は、前記ダンプ押出機本体の入口ホッパーなどのプラスチック材料投入開口部を閉塞するように配置されている。
【0016】
典型的には、前記プレッサー本体は、摺動可能に取り付けられるが、1つ以上の回転角度を有するように取り付けることもできる。前記プレッサー本体は、好ましくは制御されたアクチュエータの作用の下で、上昇(またはホーム)位置と下降(または動作)位置との間で移動可能である。変形例によれば、前記アクチュエータは、混合中に前記プレッサーの定位置を決定する。
【0017】
好ましい態様によれば、前記プレッサー本体は前記2つのスクリューの羽根の輪郭に適合して追従するように、2つの互いに交わる円錐表面部分として形成された可動壁を有する。
【0018】
前記プレッサーは、少なくとも混合工程中に所定の位置に変位され、前記閉鎖手段が、プラスチック材料が前記押出ダイを通過するのを阻止することが理解される。
【0019】
前記閉鎖手段は、停止されて前記ダイの出口を閉塞する抽出ギアポンプの形態にしてもよい。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例として単に与えられ、添付の図面に示されている、いくつかの好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の押出機/混合機システムの部分側面および部分断面図である。
【
図2A】
図1の単一混合室の細部の概略拡大図であるが、本発明の第1の実施形態による押出機システムに関するものである。
【
図2B】
図2Aと同様の図であるが、第1の実施形態の変形に関するものである。
【
図3A】
図2Aと同様の図であるが、本発明の第2の好ましい実施形態に関するものである。
【
図4A】再循環室の拡大ステップにおける
図3Aと同様の図である。
【
図5】
図2Aと同様の図であるが、第3の実施形態に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
押出混合機は、
図1に示す基本要素からなり、参考文献として本明細書に組み込まれたWO2005/039847を参照して導入部で既に説明されている。
【0023】
特に、「ダンプ押出機」は、互いに噛み合うスパイラル羽根と押出ダイ3に向かって収束する軸を備えた1対の円錐押出スクリュー2を収容する混合室1を画定するマシン本体を備えている。
【0024】
押出ダイ3は、取り外し可能なカバーなどの適切な閉鎖手段4(図に概略的に示されている)によって、または単に停止されてダイの出口を塞ぐ抽出ギアポンプによって、閉鎖してもよい。
【0025】
混合室1は上部入口1aを有し、そこからゴム系またはシリコーン系の材料などの処理すべき材料が導入される。
【0026】
室1の前部において、押出ダイ3の近くで、一対の円錐スクリュー2は収束円錐チャネル内に、内壁がほぼ円錐スクリューの羽根縁に接触する状態で収容される。したがって、このような円錐チャネルの断面形状は、2つの互いに交わる円の形をしている。そのような断面形状の少なくとも1つの領域において、チャネルの内壁は拡大部を有し、したがって、円錐スクリュー2の羽根から引き離され、材料再循環室を画定する。典型的には、そのような拡大部は、円錐スクリュー2の上部に設けられる(
図4Bの領域2’を参照)。
【0027】
ここで
図2Aおよび
図2Bを参照すると、本発明の第1の実施形態によれば、混合室1の入口1aに、以下でプレッサー(押さえ)と呼ばれる閉塞体5が設けられ、この閉塞体5は昇降可能に取り付けられている。
【0028】
特に、第1の変形例によれば、プレッサー5は、(
図2Aのように)上昇位置と室1内の材料と接触する位置との間で直線的にスライド可能に取り付けられ、本例では、プレッサー5は、入口1aを閉塞する本質的にピストンと同様に構成し、一対のスクリュー2が横たわる平面に実質的に垂直な軸に実質的に沿って入口1a内を移動可能にして、室1を可変的に閉じるための要素とする。
【0029】
第2の変形例によれば、(
図2Bのように)上向きに回転した位置と室内の材料と接触する下向きに回転した位置との間でプレッサー5’がヒンジ5aを中心に枢動するように取り付けられる。
【0030】
プレッサー5または5'は、入口1aに対して所定のクリアランスで取り付けられるため、室1への入口をシールする必要はなく、室内で混合される材料の上に置くことで、局所的に、室1の低圧領域にて、圧力を材料自体に与えることが意図されている。言い換えると、プレッサー5または5’は、制御された方法で材料の圧力および温度を望みどおりに制御できるように、制御された方法で室1の容積を減少させることが意図されている。
【0031】
プレッサー5による局所的な圧力作用は、一対の円錐スクリューにより混合されている材料に有利な効果を及ぼす。特に、高圧領域から低圧領域に戻る途中の材料は、プレッサーによって円錐スクリューの羽根の内側に保持され、混合効果が向上する。
【0032】
室1のこの低圧領域の圧力は、材料の還流量のよりよい制御を可能にし、材料の均質化効果を促進および加速する。
【0033】
この目的のために、プレッサーは、上記のように、単に、同じ圧力(重力の影響下での自重による)が常に材料に加えられるように取り付けられた可動重量体の形で作るか、または油圧、電気または空気圧ジャッキなどの制御アクチュエータ(図示せず)の作用による可動ピストンの形で作ることができる。
【0034】
第2の例では、アクチュエータを、一定の力を及ぼすように制御して、重量効果と同様の効果を生み出すか、ピストンを固定位置に維持するように制御して、所望の容積を実際に設定し、圧力を周期的に変化させることができる。さらに、プレッサー5、5’の位置および押圧力は、混合および押し出しサイクル中に変化および設定することができる。
【0035】
プレッサー5は、必ずしも円形の断面形状にする必要はなく、他の形状、例えば、正方形、長方形、三角形、または円形の断面形状にしてもよい。もちろん、入口1aの輪郭に適合する形状でなければならない。
【0036】
図2Aおよび
図2Bの第1の実施形態の2つの変形例では、プレッサー5、5 ’は、室1のいわゆる低圧領域、すなわち投入口1aのすぐ隣の領域に適用される。
【0037】
対照的に、好ましい実施形態(
図3A~
図4B)では、プレッサー6は、押出室1の高圧領域、すなわち、2つの円錐スクリューがそれぞれの円錐チャネル内に収容される領域で動作する。高圧室内の圧力は、通常5~200barの範囲である。この場合、ホッパーの入口1aは、一定の容積を規定する単純なカバーによって開閉することができ、混合される材料への圧力制御は、プレッサー6によってのみ与えられる。
【0038】
特に、
図3Bと
図4Bの比較によりよく表されているように、この好ましい実施形態では、プレッサー6は、高圧混合室2’を画定する円錐チャネルの拡大部の可動壁を構成する。したがって、プレッサー6を変位させることにより、高圧混合室2 ’の容積の変化を制御することができ、それにより、圧力の変化を、そして間接的に、処理される材料の温度の変化を決定することができる。
【0039】
この場合、プレッサー6は円錐チャネルの壁がスクリューの羽根縁に隣接する高圧領域で動作するため、プレッサー6は、実際にそれぞれの円錐チャネルの一部を構成する2つの互いに交わる円錐表面として成形された可動壁を画定する(
図4Bに明確に示されている)。
【0040】
高圧領域の大きさは低圧領域の大きさよりもはるかに小さいので、プレッサー6はアクチュエータによって制御するのが確かに好ましく、アクチュエータは、小さなプレッサーに作用している間、材料に十分な全体圧力を加えることができる。さらに、この領域、つまり高圧混合室の体積の変化は、高率の変化を引き起こし、材料の挙動に大きな影響を与えるため、非常に効果的であることを証明している。
【0041】
第3の実施形態によれば、低圧領域にプレッサー5、5 ’と高圧領域に制御プレッサー6の両方が設けられる。制御動作は、最大の介入柔軟性が得られるように、両方のプレッサーで実行するのが好ましい。
【0042】
理解できるように、高圧室2'および/または低圧室1の容積を変化させる可動式プレッサー5、5'および/または6を使用することにより、追加の制御要素を配置することが可能であり、これにより、混合度と処理速度/性能を最適に調整することができる。
【0043】
また、押し出し工程の間、すなわち、閉鎖カバー4が開かれ、材料がダイ3により押し出されるときでも、プレッサーの介入を制御するのが便利であることも分かった。したがって、この工程において、材料の流出圧力と混合室の向上した排出をより適切に調整することができ、材料への空気の混入を、もしあったとしても、回避することができる。
【0044】
しかしながら、本発明は上述の特定の構成に限定されると考えられるべきではなく、それらは本発明のいくつかの例示的な実施形態のみを表すものであり、様々な変更が以下の特許請求の範囲によって特定される発明の範囲内において当業者に想到可能である。