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特許7330522ハニカムを利用した吸音ボードの製造方法およびこれを利用したハニカムを利用した吸音ボード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ハニカムを利用した吸音ボードの製造方法およびこれを利用したハニカムを利用した吸音ボード
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20230815BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20230815BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/172
G10K11/16 130
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001399
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2021152638
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035366
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521011651
【氏名又は名称】デソル オーシス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ナムグン,ジェ キュン
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102593(JP,A)
【文献】特開2019-136887(JP,A)
【文献】特表2003-534979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0225425(US,A1)
【文献】国際公開第2010/007834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/178
B60R 13/00-13/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム(10)の両側面にそれぞれガラス繊維マット(20)を積層し、前記ガラス繊維マット(20)の外部に露出した面にそれぞれポリウレタン(30)を発泡成形してなるハニカムを利用した吸音ボードの製造方法であって、
周波数帯域を設定するようにする第1段階;
ハニカム(10)のセル大きさ(S)とその厚さ(T)を設定するようにする第2段階;
ポリウレタン(30)の厚さ(t)範囲、前記ポリウレタン(30)に形成する穿孔(31)の直径(d)範囲、そして前記穿孔(31)による前記ポリウレタン(30)の気孔率を設定する第3段階;
前記第3段階の変数で穿孔(31)の固有音響インピーダンスを計算して周波数の変化による吸音率を得るものの、前記ポリウレタン(30)の厚さ(t)と穿孔(31)の直径(d)のうち少なくとも直径(d)を異ならせて入力しながら吸音率を計算して得る第4段階;および
前記第4段階で得た吸音率のうち、前記第1段階で設定した周波数帯域で吸音率が高く示された少なくとも一つの穿孔(31)の直径(d)を有する穿孔(31)の位置を前記ポリウレタン(30)において求める第5段階;を含むものの、
前記第4段階で前記穿孔(31)の固有音響インピーダンスは、次の数学式1を利用することを特徴とする、ハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【数1】
ここで、ζはインピーダンスを、Rはインピーダンスの実数部、Xはインピーダンスの虚数部、Mはマッハ数(Mach Number)、σは気工率、tは穿孔の厚さ(ポリウレタンの厚さ)、dは穿孔の直径をそれぞれ示す。
【請求項2】
前記ハニカム(10)は、
紙、アルミニウム、または合成樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【請求項3】
前記セル大きさ(S)は、
5~15mmであることを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【請求項4】
前記ガラス繊維マット(20)は、
面密度が150g/m~1,500g/mであることを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォーム(30)は、
面密度が150g/m~1,500g/mであることを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【請求項6】
前記穿孔(31)は、
0.2~4mmであることを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【請求項7】
前記穿孔(31)の間の間隔は、
前記セル大きさ(S)で形成したことを特徴とする、請求項1に記載のハニカムを利用した吸音ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハニカムを利用した吸音ボードの製造方法およびこれを利用したハニカムを利用した吸音ボードに関し、さらに詳細には、ポリウレタンに貫通形成する穿孔の直径により吸音率をあらかじめ計算して、最適の吸音性能が得られる穿孔を形成できるようにしたものである。そこで、同一または類似する吸音性能を有しつつも、既存の吸音ボードと比較して厚さが薄い吸音ボードを製作できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車のトランクなどに設置する吸音ボードのようにその上に物を載せて使うボードは、それ自体で吸音性能を有しつつも物の荷重を支持できるように構成する。このために、吸音ボードは多層構造で製作するか、下記の(特許文献1)~(特許文献3)のように、構造的剛性を補強できるだけでなく、軽量でありながらも容易に製作して使用できるハニカム構造物で構成される。
【0003】
(特許文献1)韓国公開特許第10-2017-0093423号
紙でハニカム構造物を製作し、その両側面にポリウレタンシートを追加構成することを含んでラゲージボードを製作するため、ハニカム構造物を通じて軽量でありながらも十分な構造的剛性を得るだけでなく、吸音効果も得ることができ、しかもこのハニカム構造物の両面にそれぞれポリウレタンシートを構成して吸遮音効果をさらに高めることができるように吸遮音性能を有する自動車用ラゲージボードを提供することにその目的がある。そして、2個のポリウレタンシートのうち少なくとも一つに複数の穿孔を形成するため、穿孔されていないポリウレタンシートで自動車の外部から入ってくる外部の騒音を遮音し、穿孔したポリウレタンシートとハニカム構造物を通じて吸音するようにして吸遮音性能を高めることができるようにした、自動車用ラゲージボードを提供することに他の目的がある。特に、このような穿孔の個数とその間の間隔そして穿孔の直径を通じて、車種ごとにトランクの外部からトランクに入ってきた他の特定の帯域の周波数領域を除去できるようにして、車種に応じて最適の騒音改善性能が得られるようにした、吸遮音性能を有する自動車用ラゲージボードを提供することにさらに他の目的がある。
【0004】
(特許文献2)韓国登録特許第10-1952485号
第1、第2スキン層とコア層の間に第1、第2結合強化層を形成して第1、第2スキン層とコア層の接着力を向上させて第1、第2スキン層とコア層が剥離することを防止することによって、ラゲージボードの寿命を増大させて維持費用を節減し、第1、第2強度補強層とサポート部によってラゲージボード用サンドイッチパネルの軽量化を図りながらも剛性を補強することによって自動車の安全性と信頼性を向上させ、自動車の燃費を改善し、使用者の便宜を図り得る自動車のラゲージボード用サンドイッチパネルおよびこの製造方法に関する。
【0005】
(特許文献3)韓国登録特許第10-2073212号
車両用ラゲージボードに関し、車両用内蔵材パネルの一つであって車両のトランクに設置される車両用ラゲージボードに関する。このような車両用ラゲージボードは、車両のトランクに設置される下部パネル;前記下部パネルの上部に位置する昇降パネル;および前記昇降パネルを上下動させる昇降装置からなり、前記下部パネルおよび昇降パネルはそれぞれ、紙材質のハニカム部材と、前記ハニカム部材の両面に積層されるチョップドストランドマット(Chopped Strand MAT)と、前記チョップドストランドマットの表面に発泡成形されるポリウレタン層と、前記ポリウレタン層の表面に接着される表面材からなる。
【0006】
しかし、既存のラゲージボードなどに使う吸音ボードは吸音性能を改善するために、ハニカムの他にも天然繊維強化ボードと中空成形(Blow)したPP(polypropylene)、そして打設したコンクリートの表面に覆わせて養生する時に、コンクリートの内部から発生する水和熱の発散を抑制する時に使うバブルシート(Bubble sheet)等の多様な材質を使う。このため次のような問題が発生する。
【0007】
(1)自動車の種類と会社によりトランク部分で発生する周波数帯域が異なるため、このような周波数帯域に合う吸音性能を有する吸音ボードの製作が困難である。
【0008】
(2)特に、広い周波数帯域に合わせて騒音性能が得られるようにするためには、吸音ボードの厚さが厚くなるだけでなく、その重量が重くなる。これは、限定された空間での空間活用度を落とすだけでなく自動車の燃費を落とす一つの要因として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0093423号
【文献】韓国登録特許第10-1952485号
【文献】韓国登録特許第10-2073212号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような点を考慮したものであって、軽量でありながらも構造的剛性を有するハニカム構造の両側にそれぞれガラス繊維マットを積層し、ポリウレタンを発泡させて製造する吸音ボードを製造する時、穿孔の直径と個数そして気孔率を利用して吸音率を計算するものの、あらかじめ定めた周波数帯域で吸音効果のある直径の穿孔をポリウレタンに形成できるように設計することによって、あらかじめ定めた周波数帯域での吸音性能をより一層高めることができるだけでなく、吸音ボードの厚さを薄く製作して重量を減らすことができるようにした、ハニカムを利用した吸音ボードの製造方法およびこれを利用したハニカムを利用した吸音ボードを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明に係るハニカムを利用した吸音ボードの製造方法は、ハニカム10の両側面にそれぞれガラス繊維マット20を積層し、前記ガラス繊維マット20の外部に露出した面にそれぞれポリウレタン30を発泡成形してなるハニカムを利用した吸音ボードの製造方法であって、周波数帯域を設定するようにする第1段階;ハニカム10のセル大きさSとその厚さTを設定するようにする第2段階;ポリウレタン30の厚さt範囲、前記ポリウレタン30に形成する穿孔31の直径d範囲、そして前記穿孔31の気孔率を設定する第3段階;前記第3段階の変数で穿孔31の固有音響インピーダンスを計算して周波数の変化による吸音率を得るものの、前記ポリウレタン30の厚さtと穿孔31の直径dのうち少なくとも直径dを異ならせて入力しながら吸音率を計算して得る第4段階;および前記第4段階で得た吸音率のうち、前記第1段階で設定した周波数帯域で吸音率が高く示された少なくとも一つの穿孔31の直径dで前記ポリウレタン30に穿孔31位置を表示する第5段階;を含むことを特徴とする。
【0012】
特に、前記ハニカム10は、紙、アルミニウム、または合成樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
また、前記セル大きさSは、5~15mmであることを特徴とする。
【0014】
そして前記ガラス繊維マット20は、面密度が150g/m~1,500g/mであることを特徴とする。
【0015】
また、前記ポリウレタンフォーム30は、面密度が150g/m~1,500g/mであることを特徴とする。
【0016】
一方、前記穿孔31は、0.2~4mmであることを特徴とする。
【0017】
この時、前記穿孔31の間の間隔は、前記セル大きさSで形成したことを特徴とする。
【0018】
本発明は前述したハニカムを利用した吸音ボードの製造方法で表示された穿孔31の直径dでポリウレタン30に穿孔して製造したことを特徴とするハニカムを利用した吸音ボードを含む。
【0019】
この時、前記穿孔31は、レーザーまたは複数のニードルを備えたローラまたはプレス、またはサーボまたはシリンダを備えたニードルを利用して形成することを特徴とする。
【0020】
最後に、前記ハニカムを利用した吸音ボードは、自動車用ラゲージボードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るハニカムを利用した吸音ボードの製造方法およびこれを利用したハニカムを利用した吸音ボードは、次のような効果がある。
【0022】
(1)ハニカムの両側に構成するポリウレタンのうちいずれか一側面に穿孔を形成するため、この穿孔を通じて特定帯域の周波数を除去することができ、吸音性能をより一層高めることができる。
【0023】
(2)特に、設計段階で特定帯域の周波数を吸音できるように、直径の異なる穿孔を形成できるように吸音ボードを設計するため、このような吸音性能を高めながらも吸音ボード全体の厚さを薄く製作することができる。
【0024】
(3)このとき、一つのポリウレタンには直径の異なる穿孔を貫通形成するため、直径の異なる穿孔ごとに異なる周波数を吸音するようにして特定帯域の周波数に対する吸音性能をさらに高めることができる。
【0025】
(4)このため、本発明の吸音ボードには別途に吸音材質を追加して構成しなくても済むためそれだけ吸音ボードの製造費用を減らしながらも厚さが薄くなり、吸音ボードの外観と自動車の室内の限定された空間を広く使用することができるようになる。
【0026】
(5)自動車の種類によって変わる吸音周波数帯域に応じてあらかじめ設計して最適の吸音性能が得られるように構成するため、自動車の設計変更などによって周波数帯域の変更や吸音性能にも変化があるべき時に、設計変更を通じて容易に設計変更された条件に合う最適の吸音ボードを設計して製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る吸音ボードをラゲージボードに使う状態を示す自動車の側面図である。
図2】本発明に係る吸音ボードの構成を示す分解斜視図である。
図3】本発明に係るハニカムを利用した吸音ボードの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明に係るハニカムを示す図面であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
図5】本発明により穿孔した状態を示すための吸音ボードの平面図である。
図6】Rao & Munjalのインピーダンスモデルを説明するための図面である。
図7】本発明に係るハニカムを利用した吸音ボードの製造方法を利用して、変数入力を通じて吸音率を計算した結果を例示的に示すグラフである。
図8】厚さの異なる3種からなるラゲージボードの周波数の変化による吸音率を比較するために実際に使った自動車のラゲージ写真である。
図9図8のラゲージボードにおいて、穿孔した実施例と穿孔していない比較例の吸音率を示すグラフである。
図10図8のラゲージボードにおいて、穿孔した実施例の吸音率を示すグラフである。
図11】本発明に係る吸音ボードを実際に自動車に直接装着した状態で、周波数の変化による吸音性能をテストしたグラフである。
図12】本発明に係るラゲージボードを実際に自動車に装着して測定した吸音率性能を示すグラフであって、吸音ボードに穿孔した実施例と穿孔していない比較例の周波数の変化による吸音率を示す。
図13】本発明に係るラゲージボードを実際に自動車に装着して測定した吸音率性能を示すグラフであって、穿孔の直径を3種に形成した例を示すグラフである。
図14】本発明により2種の直径で穿孔した吸音ボードを示す写真であって、直径の小さい穿孔は1mmであり、直径の大きい穿孔は1.5mmに形成した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例をさらに詳細に説明することにする。これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的または辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最高の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則って本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
【0029】
したがって、本明細書に記載された実施例と図面に図示された構成は本発明の最も好ましい一実施例に過ぎないものであって、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願時点でこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在し得ることが理解されるべきである。
【0030】
(製造方法)
本発明に係る製造方法は、図1図14のように、ハニカム10の両側面にそれぞれガラス繊維マット20を積層し、各ガラス繊維マット20の外部に露出した面にそれぞれポリウレタン30を発泡成形してなる吸音ボードBを設計する時、設定した周波数帯域で最適の吸音性能を有し得るようにポリウレタン30に穿孔31できるようにするためのものである。
【0031】
この時、ハニカム10のセル11大きさSと厚さT、前記セル11に貫通するようにポリウレタン30に形成した穿孔31の個数とその直径d、そして気孔率を利用して吸音率を計算して、あらかじめ設定した周波数帯域で吸音性能が優秀な位置に穿孔31して吸音性能を最適化できるようにしたものである。この時、穿孔31は同一直径dでのみなされるように設計するか場合によって直径の異なる、少なくとも2種で穿孔31できるように設計することによって、あらかじめ設定した周波数帯域に最適の吸音性能が得られるようにしたものである。
【0032】
以下、このような構成に関して添付図面を参照してさらに詳細に説明すると次の通りである。ここで、前記製造方法は5段階に亘ってなされるため、段階別に分けて詳細に説明する。ここで、吸音ボードは吸音性能と構造的剛性が必要なところであればいずれにも使うことができるが、ここではラゲージボードとして使う吸音ボードを例にして説明する。
【0033】
イ.第1段階
第1段階は、図3のように、周波数帯域を設定するようにする段階である。すなわち、本発明により製造した吸音ボードBを使う所により周波数帯域が異なるため、使用先で発生する周波数帯域のうち吸音効果を高めるための周波数帯域を設定するようにする。例えば、吸音ボードBをトランクリッドに適用して使う時にトランクの中で発生した周波数のうちこれを除去しなければならない周波数帯域は、同種の場合には同一または類似しているが車種によっては異なるため、このように異なる周波数帯域で吸音効果を得るための周波数帯域を設定しておくことによって、後述する穿孔31を形成することによって得られる吸音性能がこの周波数帯域で最適の吸音性能を発揮できるようにする。
【0034】
ロ.第2段階
第2段階は、図2図4のように、ハニカム10のセル大きさSとその厚さTを設定するようにする段階である。これは、ハニカム10を構成する各セル11の大きさとこのセル11の高さを設定するようにする段階である。ここで、セル大きさSは、図4のように、セル11の互いに向き合う辺の間の長さを、前記セル11のセル厚さTはハニカム10の厚さをそれぞれ示す。
【0035】
これは、本発明に係る吸音ボードBで使うハニカム10のセル11大きさとその厚さを限定することによって、使用先で要求する構造的剛性そして吸音ボードBの厚さなどを決定できるようにするためである。例えば、ラゲージボードに使う吸音ボードBの厚さが限定されることにより、吸音ボードBを構成するハニカム10の厚さTも制約を受けることになるが、第2段階ではこのように発生した制約条件に合う厚さTでハニカム10を構成できるようにセル大きさSとその厚さTを設定するようにするものである。また、前記セル大きさSは後述する穿孔31を形成する時に隣り合う穿孔31間の間隔として利用したりもする。
【0036】
一方、本発明の好ましい実施例で、前記ハニカム10は多様な材質で製作して使うことができるが、軽量でありながらも成形が容易であり、所望の大きさで容易に製作して使用できる紙、アルミニウム、または合成樹脂を利用することが好ましい。
【0037】
また、本発明の好ましい実施例で、前記セル大きさSは、5~15mmで製作することが好ましい。これは、ハニカム10の構造的剛性が弱化することなく各セル11の内部空間を通じて特定の周波数帯域、例えば中周波パターンノイズ(800Hz)で十分に吸音性能が得られるようにするためである。
【0038】
ハ.第3段階
第3段階は、図3および図4のように、ポリウレタン30の厚さt範囲、前記ポリウレタン30に形成する穿孔31の直径d範囲、そして前記穿孔31の気孔率を設定する。
【0039】
これは、後述する第4段階で吸音率を計算するためのものであって、特にポリウレタン30の厚さtと前記穿孔31の直径dはある程度の範囲に設定することによって、第4段階で吸音率を計算する時に、これら厚さtと直径d値を変えながら最適の吸音率を計算できるように構成することが好ましい。例えば、前記穿孔31はその直径dを0.2~4mmに形成することが好ましい。これは、前述した通り、一つの空間に該当するセル11に少なくとも一つの小さい直径dの穿孔31を形成することによって、各穿孔31で入射音エネルギーを熱エネルギーで消えるようにして吸音効果をさらに高めることができるようにするためである。この時、隣り合う穿孔31の間の間隔はハニカム10を構成するセル11の大きさSで形成することが好ましい。
【0040】
二.第4段階
第4段階は、図3図5および図6のように、吸音性能を計算して得る段階である。この時の吸音性能は前述した段階で入力された変数に基づいて吸音率の計算に使う穿孔の固有音響インピーダンスを通じて吸音性能を得る。
【0041】
ここで、穿孔の固有音響インピーダンスは、図6のように、Rao & Munjalのインピーダンスモデルに基づいて次の数学式1のように求めることができる。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、ζはインピーダンスを、Rはインピーダンスの実数部、Xはインピーダンスの虚数部、Mはマッハ数(Mach Number)、σは気工率、tは穿孔の厚さ(ポリウレタンの厚さ)、dは穿孔の直径をそれぞれ示す。
【0044】
ここで、このように穿孔の固有音響インピーダンス(ζ)を利用した吸音率は、前述した通り、ポリウレタン30の厚さtと穿孔31の直径dのうち、少なくとも直径dを異ならせて入力することを繰り返して吸音率を計算する。これは、例えば厚さtが8mmに一定なポリウレタン30に対して直径dが1mmである穿孔31のみ形成してもよく、この直径dが1mmと1.5mmである穿孔31を形成したり、これより多い異なる直径dを有する穿孔31を形成するようにするためである。したがって、この直径dを変えながら得た吸音率が前述した周波数帯域で吸音効果を発揮できるのであれば、この直径dの穿孔31をポリウレタン30に加工できるように設計過程で表示できるようにする。
【0045】
また、前記ポリウレタン30には、図5のように、ハニカム10を基準として両側に形成するもののうちいずれか一側面に穿孔31を形成する。穿孔31をポリウレタン30に貫通形成するように形成するものの、前述したセル11と通じるように少なくとも一つずつ形成する。これは、同じ気孔率を有した空間でも微細な穿孔が多いほど吸音性能が優秀であるため、時により一つのセル11に少なくとも一つの穿孔31を形成できるようにするためである。このような穿孔31は、穿孔31の中に入ってくる入射音が穿孔31の縁を通過する時に、摩擦によって入射音エネルギーが熱エネルギーで消えるようにして吸音効果が発揮されるようにする。
【0046】
一方、前記ポリウレタン30は、図5のように、前述したハニカム10の両側にそれぞれ発泡、好ましくは噴射方式で発泡させて形成するが、この時、その厚さtにより吸音性能が変わる。このため、本発明ではポリウレタン30の厚さt範囲をあらかじめ決定しておいてその中から選択された値でポリウレタン30を製造できるように設計するようにする。
【0047】
この時、前記ポリウレタン30は、図5のように、前述したハニカム10の両側にそれぞれ一体に積層したガラス繊維マット20の外部に露出した各面にそれぞれ発泡方式で成形する。ここで、前記ガラス繊維マット20はガラスを白金炉で溶融して小さい穴に落として長繊維の状態にしたものであって、耐熱性、耐久性、吸音性、電気絶縁性がよいため、断熱材、空気濾過材、電気絶縁剤、そして吸音材として使われるものとして広く知られているガラス繊維をマットの形態で製作したものである。このようなガラス繊維マット20は面密度が150g/m~1,500g/mであるものを使うことが最も好ましい。
【0048】
一方、本発明の好ましい実施例において、このような穿孔は本発明に係る吸音ボードBを製作する時に、レーザーまたは複数のニードルを備えたローラまたはプレス、またはサーボまたはシリンダを備えたニードルを利用して所望の位置に所望の個数だけ形成できるように構成することが好ましい。
【0049】
そして本発明の好ましい実施例において、前記ポリウレタンフォーム30は面密度が150g/m~1,500g/mであるものを使うことによって、軽量でありながらも吸音性能を最大限に高めることができるように製作することが好ましい。
【0050】
ホ.第5段階
第5段階は、図3および図5のように、前述した第4段階で得た吸音率に基づいてポリウレタン30に穿孔31を表示して加工できるようにする段階である。この時、穿孔31の位置表示は、前述した第1段階で設定した周波数帯域で吸音性能が高く示される直径dを有する穿孔31の位置を表示する。このような穿孔31の直径dは前述した通り、周波数帯域やポリウレタン30の厚さそして吸音ボードの層の構成などによって、直径が同じである一種の穿孔31を形成してもよく、直径dが異なる少なくとも2種の穿孔31を形成することになる。図5ではセル11ごとに中央に同一直径dで一つずつ穿孔31した例を示す。
【0051】
以上のように、本発明は穿孔の直径とポリウレタンの厚さそして気孔率などの変数を利用してあらかじめ吸音率を計算し、この吸音率があらかじめ定めた周波数帯域で吸音効率を高めることができるように穿孔の直径と厚さを決定することによって、最適の吸音性能を有する吸音ボードを設計できることになる。
【0052】
(ハニカムを利用した吸音ボード)
本発明は、前述したハニカムを利用した吸音ボードの製造方法で得た吸音性能に基づいて製作した吸音ボードを含む。この時、前記吸音ボードはあらかじめ定めた周波数帯域で最も吸収性能が優秀な変数値で吸音ボードを製作する。また、このような吸音ボードは自動車用ラゲージボードに利用することが好ましい。
【0053】
一方、このように製作した吸音ボードに対する性能と吸音率を計算した結果については以下で説明する。
【0054】
図7は本発明に係るハニカムを利用した吸音ボードの製造方法を利用して変数入力を通じて吸音率を計算した結果を示すグラフであって、横軸は周波数(Hz)を、縦軸は吸音率をそれぞれ示す。また、図7でグラフは設計する時に使う変数に吸音率が変わることを示す。
【0055】
図8図10は、厚さの異なる3種からなるラゲージボードの周波数の変化による吸音率を比較した結果を示す。図8で、(a)はラゲージボードを示す。そして(b)は(a)のラゲージボードで中央の明るい部分を拡大したイメージであって、縁は厚さが5mmであり、中央の小さい正四角形部分の厚さが6mmであり、残り部分の厚さが8mmである。この時、5mm厚さの部分には穿孔しておらず、6mm厚さと8mm厚さに直径1mmと1.5mmに穿孔したものである。
【0056】
図9は、図8のように5mm、6mm、そして8mm厚さで製作して実際に使うラゲージボードに穿孔した実施例と穿孔していない比較例に対する吸音率を比較して示すグラフであって、横軸は周波数を、縦軸は吸音率を、実線は実施例の吸音率グラフを、点線は比較例の吸音率グラフをそれぞれ示す。図9のように、実施例は約1k~8kHzの特定周波数の区域で比較例より吸音率が高いことが分かる。これは、周波数帯域を設定することによって該当周波数帯域で吸音率を改善できることを意味する。
【0057】
図10は、図8のようになされたラゲージボードに対して周波数の変化による吸音率を測定したグラフであって、この時、6mm厚さと8mm厚さの部分に対して1mmと1.5mmの穿孔を使って3ピーク(Peak)を適用して得た吸音率と実車試験を比較したグラフである。ここで、横軸は周波数を、縦軸は吸音率を、(4)のグラフは吸音率測定装備(Alpha Cabin)を利用して直接検出した吸音率グラフを、(1)と(3)のグラフはそれぞれ8mmに形成して理論的に吸音率を計算したグラフであり、(2)のグラフは穿孔を6mmに形成して理論的に吸音率を計算したグラフである。その結果、図10のように、理論的に計算した吸音率と実際に測定した吸音率が意図した周波数区間でほぼ類似して示されたことが分かる。
【0058】
図11は穿孔を形成した実施例と穿孔していない比較例を実際に自動車に装着して実車試験した結果を示す。この時、横軸は周波数(Hz)を、縦軸はPBNR(Power Based Noise Reduction)(db)を、点線は比較例のグラフを、実線は実施例のグラフをそれぞれ示す。この時、加振点はトランクでボリュームソース(Q-SOURCE)としたし、測定位置は後席の中央で測定した。その結果、図11のように、800~2,500Hzで1~3dbだけ改善したことが分かる。
【0059】
図12は、穿孔した実施例と穿孔していない比較例を同じ厚さ(17mm)のラゲージボードの形態で製作して穿孔の有無による吸音率を比較したグラフである。ここで、横軸は周波数(Hz)を、縦軸は吸音率を、実線は実施例を、点線は比較例をそれぞれ示す。その結果、穿孔の最適設計を通じて穿孔した実施例が、吸音率意図区間で100%以上改善したことを確認することができる。
【0060】
図13は、穿孔した実施例と穿孔していない比較例を同じ厚さ(17mm)のラゲージボードの形態で製作するものの、穿孔の直径を異にして吸音率を測定したグラフである。ここで、横軸は周波数(Hz)を、縦軸は吸音率を、(4)のグラフは実際に測定した吸音率を、(1)のグラフは1mmに穿孔した例を、(2)のグラフは1.5mmに穿孔した例を、(3)のグラフは2mmに穿孔した例をそれぞれ示す。その結果、穿孔理論計算を通じての吸音率と実際の吸音結果意図周波数区間で類似する結果を示すことが分かる。
【0061】
図14は本発明により製作した吸音ボードを示す写真であって、写真で小さい穿孔は直径が1mmであり、大きい穿孔は直径を1.5mmに形成したものである。
【符号の説明】
【0062】
10:ハニカム
11:セル
20:ガラス繊維マット
30:ポリウレタン
31:穿孔
B:吸音ボード
S:セル大きさ
T:ハニカムの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14