(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】紙製品検査装置、および紙製品加工システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2021072334
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2021-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕之
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】上田 泰
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-338121(JP,A)
【文献】特開2020-183889(JP,A)
【文献】特開平5-188009(JP,A)
【文献】特開2016-75542(JP,A)
【文献】登録実用新案第3156399(JP,U)
【文献】特開2002-310799(JP,A)
【文献】特開2013-68544(JP,A)
【文献】特開2003-262593(JP,A)
【文献】特開2018-179939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される紙製品の移動量を測定する移動量測定装置と、
前記紙製品の品質を検査するためのラインセンサカメラと、
前記移動量測定装置および前記ラインセンサカメラに接続している制御装置と、
該制御装置に接続し、前記紙製品のマスタ画像を記憶している記憶装置と、を備え、
該制御装置は、
前記ラインセンサカメラにより取得された画像と、前記移動量と、を用いて前記紙製品の逐次画像を作成し、
前記紙製品のマスタ画像と比較して、前記逐次画像に現れた異常部分を抽出し、
前記異常部分の縦横比、
またはコントラス
トについてあらかじめ定められた閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断する、
ことを特徴とする紙製品検査装置。
【請求項2】
搬送される紙製品の移動量を測定する移動量測定装置と、
前記紙製品の品質を検査するためのラインセンサカメラと、
前記移動量測定装置および前記ラインセンサカメラに接続している制御装置と、
該制御装置に接続し、前記紙製品のマスタ画像を記憶している記憶装置と、を備え、
前記ラインセンサカメラが、可視光領域を赤の色信号で検出するRラインセンサカメラ、可視光領域を緑の色信号で検出するGラインセンサカメラ、可視光領域を青の色信号で検出するBラインセンサカメラを、それぞれの長手方向の軸心が等間隔で並列するように、かつ前記紙製品に対していずれも平行であるように配置されたRGBラインセンサカメラであり、
該制御装置は、
前記ラインセンサカメラにより取得された画像と、前記移動量と、を用いて前記紙製品の逐次画像を作成し、
前記紙製品のマスタ画像と比較して、前記逐次画像に現れた異常部分を抽出し、
前記異常部分の色についてあらかじめ定められた閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断する、
ことを特徴とする紙製品検査装置。
【請求項3】
前記浮遊物による異常部分が、複数色が順次出現するカラーパターンである、
ことを特徴とする請求
項2に記載の紙製品検査装置。
【請求項4】
前記逐次画像の作成のためのラインセンサカメラが1台のみである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の紙製品検査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の紙製品検査装置と、
前記紙製品検査装置からの信号に基づいて、欠陥のある前記紙製品を生産ラインから除去する除去装置と、を含む、
ことを特徴とする紙製品加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製品検査装置および紙製品加工システムに関する。さらに詳しくは、紙製品の欠陥を精度よく検出することが可能な紙製品検査装置および紙製品加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール製造ラインにおける画像検査装置は、段ボール上の欠陥を、画像上の異常部分として検知する。そして、その欠陥について致命度が高いと、その段ボールは製造ラインから除去される。この段ボールの製造ラインでは、段ボールは高速で製造されて、それに対する検査も高速で行われることが求められている。そのためこの検査では、欠陥の致命度が高いもの、すなわちあらかじめ定められた基準を超える欠陥を有するものについては、検査装置を通過した直後等に、欠陥がある段ボールであると目視でわかるように、インキを吹きかけるなどの措置を取り、その後、このインキを吹きかけられた段ボールが生産ラインから排除される。
【0003】
ここで、段ボール製造ラインでは、空中に浮遊している紙粉または糊カスなどが検査用のラインセンサカメラの視野部分に映り込み、画像上の異常部分として検知されることがある。すなわち、この場合は画像上に異常部分はあるが、実際の段ボールには欠陥がない。そのため、欠陥がない製品にインキが吹きかけられるなどの処置がされ、段ボールの製造者は、欠陥がない製品を廃棄せざるを得ない。
【0004】
上記の問題に関して、特許文献1の技術が開示されている。特許文献1では、判定手段が、複数のラインセンサカメラにより取得された2以上の同じ印刷面の画像情報を比較して、同じ位置に画像上の異常部分がない場合は、その異常部分は紙粉による異常部分であり、段ボール上の欠陥でないと判断して、その異常部分を段ボールの欠陥の候補から除外する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ラインセンサカメラが段ボールの流れ方向に2つ設けられ、段ボールと浮遊物との速度差があることにより初めて浮遊物による異常部分が検知できる。そのため、段ボールと浮遊物にほとんど速度差がない場合、浮遊物による異常部分であると判断することができないという問題がある。またこれを避ける方法としては、2つのラインセンサカメラの距離を流れ方向に対して離すことが考えらえるが、その場合、2つのラインセンサカメラの間に、実際の欠陥が発生した場合、それを浮遊物による異常部分と誤って判断するという問題がある。
加えて、特許文献1の構成では、2以上の画像情報を取得する必要があるために、複数組のラインセンサカメラが設けられる必要がある。このため検査装置が大型化するとともに、製造コストが高くなるという問題がある。
さらに、従来は一組のラインセンサカメラのみが設けられていた構成に対し、特許文献1の構成では複数組のラインセンサカメラを設ける必要がある。このため特許文献1の構成を実現するためには、装置全体のハード面を大きく変更する必要があった。すなわち、浮遊物による異常部分であると判断する機能を追加するために、従来の装置を特許文献1に記載の新しい装置に置き換えるか、大幅な改造を施すことが必要となるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、浮遊物による異常部分を、より確実に判断することができるとともに、装置の大型化およびコストの増大を抑制し、さらに従来の設備に簡易に追加することが可能となる紙製品検査装置および紙製品加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の紙製品検査装置は、搬送される紙製品の移動量を測定する移動量測定装置と、前記紙製品の品質を検査するためのラインセンサカメラと、前記移動量測定装置および前記ラインセンサカメラに接続している制御装置と、該制御装置に接続し、前記紙製品のマスタ画像を記憶している記憶装置と、を備え、該制御装置は、前記ラインセンサカメラにより取得された画像と、前記移動量と、を用いて前記紙製品の逐次画像を作成し、前記紙製品のマスタ画像と比較して、前記逐次画像に現れた異常部分を抽出し、前記異常部分の縦横比、またはコントラストについてあらかじめ定められた閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断することを特徴とする。
第2発明の紙製品検査装置は、搬送される紙製品の移動量を測定する移動量測定装置と、前記紙製品の品質を検査するためのラインセンサカメラと、前記移動量測定装置および前記ラインセンサカメラに接続している制御装置と、該制御装置に接続し、前記紙製品のマスタ画像を記憶している記憶装置と、を備え、前記ラインセンサカメラが、可視光領域を赤の色信号で検出するRラインセンサカメラ、可視光領域を緑の色信号で検出するGラインセンサカメラ、可視光領域を青の色信号で検出するBラインセンサカメラを、それぞれの長手方向の軸心が等間隔で並列するように、かつ前記紙製品に対していずれも平行であるように配置されたRGBラインセンサカメラであり、該制御装置は、前記ラインセンサカメラにより取得された画像と、前記移動量と、を用いて前記紙製品の逐次画像を作成し、前記紙製品のマスタ画像と比較して、前記逐次画像に現れた異常部分を抽出し、
前記異常部分の色についてあらかじめ定められた閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断することを特徴とする。
第3発明の紙製品検査装置は、第2発明において、前記浮遊物による異常部分が、複数色が順次出現するカラーパターンであることを特徴とする。
第4発明の紙製品検査装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記逐次画像の作成のためのラインセンサカメラが1台のみであることを特徴とする。
第5 発明の紙製品加工システムは、請求項1から4のいずれかに記載の紙製品検査装置と、前記紙製品検査装置からの信号に基づいて、欠陥のある前記紙製品を生産ラインから除去する除去装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、制御装置が、逐次画像に現れた異常部分の縦横比、またはコントラストの閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断することにより、紙製品の動作速度と、浮遊物の動作速度との差が小さい場合でも、制御装置は、より確実に浮遊物による異常部分であると判断できる。また、逐次画像を作成するためのラインセンサカメラは、最低一組のみが必要とされるので、検査装置全体の大型化、コストの増大を抑制することができる。また、一組のラインセンサカメラは、従来の検査装置にすでに設けられているので、ソフト面を改造するだけで浮遊物による異常部分であると判断できる新たな機能を追加できる。すなわち、ハード面の改造なしに、新たな機能を追加できる。
第2発明によれば、ラインセンサカメラが、RGBラインセンサカメラであり、制御装置は、異常部分の色に関して閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断することにより、浮遊物による異常部分であるとの判断が最も容易にできる閾値を用いているので、その判断の精度を上げることができる。
第3発明によれば、浮遊物による異常部分が、複数色が順次出現するカラーパターンであることにより、複数色に関して閾値を超えたものを浮遊物による異常部分であると判断するので、さらにその判断の精度を上げることができる。
第4発明によれば、逐次画像の作成のためのラインセンサカメラが1台のみであることにより、検査装置全体の大型化、コストの増大を抑制することができる。また、一組のラインセンサカメラは、従来の検査装置にすでに設けられているので、ソフト面を改造するだけで浮遊物による異常部分であると判断できる新たな機能を追加できる。すなわち、ハード面の改造なしに、新たな機能を追加できる。
第5発明によれば、紙製品加工システムが第1発明から第4発明のいずれかの紙製品検査装置と、そこからの信号に基づいて欠陥のある紙製品を生産ラインから除去する除去装置とを含んでいることにより、浮遊物による異常部分は欠陥ではないので、この紙製品加工システムは、浮遊物による異常部分により間違って廃棄される紙製品の数を抑制できる。これにより製造の歩留まりを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る紙製品検査装置の異常部分に対する判断手法の説明図である。(A)は、紙製品上に浮遊物が浮遊している状態の説明図、(B)は、その紙製品の逐次画像の説明図である。
【
図2】
図1の紙製品検査装置の側面方向からの概略構成図である。
【
図4】
図1の紙製品検査装置における逐次画像の作成方法の説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る紙製品検査装置の動作フロー図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る紙製品検査装置の異常部分に対する判断手法の説明図である。(A)は、紙製品上に浮遊物が浮遊している状態の説明図、(B)は、その紙製品の逐次画像の説明図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る紙製品検査装置の異常部分に対する判断手法の説明図である。(A)は、紙製品上に浮遊物が浮遊している状態の説明図、(B)は、その紙製品の逐次画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための紙製品検査装置および紙製品加工システムを例示するものであって、本発明は紙製品検査装置および紙製品加工システム以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、本明細書において、「欠陥」とは、紙製品上に現実に存在するものである。この致命度が高い場合、その「欠陥」を有する紙製品は生産ラインから除外される必要がある。これに対し「異常部分」は制御装置11において作成された逐次画像において、マスタ画像と異なる部分を意味する。すなわち「異常部分」には、「欠陥による異常部分」と、「浮遊物による異常部分」と、が含まれる。
【0012】
<第1実施形態>
(紙製品検査装置10の構成)
図2には、本発明の第1実施形態に係る紙製品検査装置10の概略構成図を示す。
図2は紙製品検査装置10の側面方向からの概略図であり、紙製品検査装置10の主要部材以外は省略している。また
図2では、被検査対象である紙製品の一つである段ボール20が、矢印の向きに搬送される。紙製品検査装置10は、この搬送中の段ボール20の表面の検査を行う装置である。
【0013】
図2に示すように、本実施形態の紙製品検査装置10は、搬送される紙製品の移動量を測定する移動量測定装置14と、紙製品の品質を検査するRGBラインセンサカメラ12と、移動量測定装置14およびRGBラインセンサカメラ12と電気的に接続している制御装置11と、を備えている。
図2では、移動量測定装置14と制御装置11とを結ぶ実線、およびRGBラインセンサカメラ12と制御装置11とを結ぶ実線は、電気的に接続していることを示している。RGBラインセンサカメラ12と段ボール20とを結ぶ一点鎖線は、RGBラインセンサカメラ12に入射する光線を示している。
【0014】
被検査対象である紙製品は、例えば段ボール20である。ただしこれに限定されない。紙製品は、模様のあるもの、無地であるものの両方を含む。紙製品検査装置10は、この段ボール20の表面にある欠陥の有無を検査する。表面にある欠陥とは、段ボール20の表面に付着した汚れであったり、へこみであったりする。この欠陥の致命度が高い場合、その欠陥のある段ボール20は、生産ラインから取り除かれる。
【0015】
段ボール20は、段ボール20の進行方向に垂直に並べられた複数の被動ローラ16の上を移動する。段ボール20は、例えば段ボール20を挟み込むように設けられた一対の駆動ローラ13により、あらかじめ定められた一定速度で移動する。
【0016】
紙製品の移動量を測定する移動量測定装置14は、例えば駆動ローラ13内に設けられたエンコーダである。ただし移動量測定装置14は、駆動ローラ13に設けられたエンコーダに限定されない。例えばエンコーダに替えてポテンショメータを用いることも可能である。また、移動量測定装置14は、段ボール20の移動に伴い回転する回転子を設け、そこにエンコーダを備える構成とすることも可能である。
【0017】
本実施形態の紙製品検査装置10は、RGBラインセンサカメラ12を有している。RGBラインセンサカメラ12とは、可視光領域を赤(R)、緑(G)、青(B)の色信号に分けて検出できるラインセンサカメラである。本実施形態では、それぞれの領域を担当するラインセンサカメラが3本設けられ、これらのラインセンサカメラはその長手方向が
図2の奥行き方向となるように配置されている。また3本のラインセンサカメラは、被検査対象である段ボール20に平行になるように、
図2の左右方向に並んで配置されている。RGBラインセンサカメラ12の長手方向の長さは、被検査対象の大きさにより異なるが、
図2の被検査対象の奥行き方向が一度に測定できる長さであることが好ましい。
【0018】
なお、本実施形態の紙製品検査装置10では、紙製品のカラー画像を取得するためRGBラインセンサカメラ12が設けられたが、白黒画像を取得する場合、白黒画像を取得できるラインセンサカメラであれば問題ない。
【0019】
紙製品検査装置10は、段ボール20の表面の明るさを確保するための照明15を備えている。本実施形態ではこの照明15はLEDにより構成されている。ただし、特にLEDに限定されるわけではなく、蛍光灯、白熱灯などでも問題ない。
【0020】
図3には、本実施形態の紙製品検査装置10の制御構成図を示す。制御装置11の左側には、制御装置11への入力信号を主に発信する機器が描かれ、制御装置11の右側には、制御装置11からの出力した信号を主に受信する機器が描かれている。本実施形態の紙製品検査装置10は、制御装置11を備えている。この制御装置11は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ、入出力機器、および記憶装置11aなどを備えている。制御装置11には、移動量測定装置14から紙製品の移動量の信号が入力される。制御装置11には、RGBラインセンサカメラ12からの画像の信号が入力される。RGBラインセンサカメラ12は3本のラインセンサカメラから構成されており、それぞれのラインセンサカメラから画像の信号が入力される。また制御装置11は、照明15と電気的に接続され、制御装置11の出力信号により照明15の入り切りが行われる。
【0021】
図4には、本実施形態の紙製品検査装置10の逐次画像の作成方法の説明図を示す。具体的に
図4は、RGBラインセンサカメラ12の3本のラインセンサカメラを上から見た平面図である。RGBラインセンサカメラ12は、例えばRラインセンサカメラ12a、Gラインセンサカメラ12b、Bラインセンサカメラ12cの3本のラインセンサカメラを含んで構成される。各ラインセンサカメラが、
図4に示すように、あらかじめ定められた間隔Lを有して平行に配置される。例えば本実施形態では、紙製品は
図4の紙面において上から下へ、すなわちRラインセンサカメラ12a側からBラインセンサカメラ12c側に流れる。
【0022】
制御装置11からの指令により、RGBラインセンサカメラ12の各ラインセンサカメラは、あらかじめ定められた時間ごとに段ボール20の画像信号を制御装置11へ送信する。ここでRGBラインセンサカメラ12の各ラインセンサカメラは段ボール20の表面の画像データを、各ラインセンサカメラの位置で計測するため、同じ時間に各ラインセンサカメラでとらえたデータは、ラインセンサカメラ間の間隔Lだけずれている。このため制御装置11は、移動量測定装置14で得られた移動量のデータを用いて、各ラインセンサカメラで得られたデータを、段ボール20の表面の同じ位置のデータとなるように調整したうえで、3つのラインセンサカメラの画像データを重ね合わせることで逐次画像を作成する。本実施形態では、時間T1のときにRラインセンサカメラ12aで得られた画像データは、時間T1からあらかじめ定められた時間tだけ経過したT2のときにGラインセンサカメラ12bで得られた画像データ、および時間T1からあらかじめ定められた時間tの2倍経過したT3のときにBラインセンサカメラ12cで得られた画像データと重ね合わされ、逐次画像が作成される。
【0023】
なおラインセンサカメラが、白黒画像を取得する場合、RGBラインセンサカメラ12の場合と異なり、ラインセンサカメラが取り込んだ画像がそのまま逐次画像となる。
【0024】
(紙製品加工システムの構成)
図2を用いて、本実施形態に係る紙製品検査装置10を含む紙製品加工システムを説明する。
図2に示すように、紙製品加工システムは、少なくとも紙製品検査装置10と、紙製品検査装置10の後段において、「欠陥」のある紙製品を生産ラインから除去する除去装置17とを含んで構成される。ここで「後段」とは、紙製品の製造ラインにおいて、紙製品検査装置10の工程の時間的に後であることを意味する。また、紙製品加工システムは、例えば、紙製品検査装置10の前段、すなわち紙製品検査装置10の工程の時間的に前に印刷機18を有する場合もある。なお図示していないが、本実施形態に係る紙製品検査装置10と除去装置17との間には、紙製品検査装置10が、致命度が高いと判断した場合に、その「欠陥」を有する紙製品にインキで印をつける装置が配置される場合がある。
【0025】
(紙製品検査装置10の動作フロー)
図5には本実施形態に係る紙製品検査装置10の動作フロー図を示す。また
図1には、本実施形態に係る紙製品検査装置10の「異常部分」に対する判断手法の説明図を示す。この動作フロー図は、紙製品1枚ごとに行われる動作を表したものである。
【0026】
上記の動作フローに至る前に、紙製品検査装置10の使用者は、被検査対象である段ボール20の表面のマスタ画像の情報を制御装置11の記憶装置11aに記憶させる。
【0027】
ステップ01(以下、ステップ01をS01のように記載する)において、制御装置11は、移動量測定装置14からの移動量のデータと、RGBラインセンサカメラ12からの画像データと、を用いて段ボール20の逐次画像を作成する。
【0028】
S02において制御装置11は、S01で作成された逐次画像と、段ボール20のマスタ画像とを用いて、その差分を抽出する。制御装置11は、差がある部分を「異常部分」として認識する。
【0029】
S03において制御装置11は、S02で「異常部分」の画像を二値化する。
【0030】
S04において制御装置11は、S03において二値化された画像から、段ボール20の表面の「欠陥」の候補、すなわち「異常部分」の確定をする。
【0031】
S05において制御装置11は、確定された「異常部分」について、その「欠陥」の致命度が高いのか低いのかを判断する。致命度が高いのか低いのかは、制御装置11が、記憶装置11a内にあらかじめ記憶させられていた閾値を用いて、その閾値を超えるかどうかにより判断する。すなわち制御装置11は、あらかじめ定められた閾値を超えるかどうかを判断する。
【0032】
具体的な判断手法について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る紙製品検査装置10の「異常部分」に対する判断手法の説明図である。
図1(A)は、段ボール20上に浮遊物が浮遊している状態を示し、
図1(B)は、その段ボール20の逐次画像を示している。
図1(A)の段ボール20上に描かれた矢印は段ボール20の進行方向を表している。
【0033】
まず
図1(A)に白丸で表された白色の第1浮遊物F1について説明する。第1浮遊物F1は、点線矢印で示すように、段ボール20とは逆方向に向けて浮遊するとする。ここで、第1浮遊物F1の動く速度と、段ボール20の動作速度とは異なるため、段ボール20の逐次画像において、第1浮遊物F1に対応する部分は、
図1(B)で示すように、細長い第1異常部分W1として表される。
【0034】
この細長い第1異常部分W1の色彩について説明する。第1浮遊物F1はまずBラインセンサカメラ12cの下を通過する。この際、Bラインセンサカメラ12cの色彩レベルのみ大きくなるため、第1異常部分W1の、
図1(B)の紙面におけるもっとも下側の部分は、青色の色彩が濃い画像となる。次に第1浮遊物F1は、Bラインセンサカメラ12cとGラインセンサカメラ12bの間を通過するので、第1異常部分W1の該当部分は、Bラインセンサカメラ12cとGラインセンサカメラ12bとの両方の色彩レベルが大きくなるため、水色の色彩の濃い画像となる。以下、第1浮遊物F1の移動に合わせて、白色、黄色、赤色の順に、
図1(B)の第1異常部分W1は表される。この画像に対して、制御装置11は、ある色のレベルが閾値を超えていれば、第1異常部分W1を「浮遊物による異常部分」と判断し、致命度が低いと判断する。ここで、ある色のレベルの取得方法については、特に限定されない。例えば、RGB色空間から、YUV色空間への変換と同様に、特定の色を抽出するための係数をかけて、ある色のレベルを抽出しても問題ない。また、Lab色空間に変換し、a(赤/マゼンダまたは緑)方向成分や、b(黄または青)方向成分から、ある色のレベルを抽出しても問題ない。HSV色空間(色相、彩度、明度)、または、HLS色空間(色相、彩度、輝度)に変換し、色相や彩度から、ある色のレベルを抽出することもできる。
【0035】
次に
図1(A)に黒丸で表された黒色の第2浮遊物F2について説明する。第2浮遊物F2は、点線矢印で示すように、段ボール20と同じ方向に向けて浮遊するとする。ここで、第2浮遊物F2の動く速度と、段ボール20の動作速度とは異なるため、段ボール20の逐次画像において、第2浮遊物F2に対応する部分も、第1異常部分W1と同じように、
図1(B)で示すように、細長い第2異常部分W2として表される。ただし、第2浮遊物F2は段ボール20と同じ方向に浮遊しているので、第1異常部分W1と比較すると第2異常部分W2の長手方向の長さは比較的短くなる。
【0036】
この場合、第2浮遊物F2はまずRラインセンサカメラ12aの下を通過する。この際第2浮遊物F2は黒色であるので、Rラインセンサカメラ12aの色彩レベルのみ小さくなり、第2異常部分W2の、
図1(B)の紙面におけるもっとも下側の部分は、水色の色彩の濃い画像となる。次に第2浮遊物F2は、Rラインセンサカメラ12aとGラインセンサカメラ12bの間を通過するので、第2異常部分W2の該当部分は、Rラインセンサカメラ12aとGラインセンサカメラ12bとの両方の色彩レベルが小さくなるため青色の色彩の濃い画像となる。以下、第2浮遊物F2の移動に合わせて、黒色、赤色、黄色の順に
図1(B)の第2異常部分W2は表される。致命度の判断は、例えば上記と同じように行われる。すなわち、第2異常部分W2に対応する部分の画像に対して、制御装置11は、ある色のレベルが閾値を超えていれば、第2異常部分W2を「浮遊物による異常部分」と判断し、致命度が低いと判断する。
【0037】
本実施形態では、
図4に示すようにRGBラインセンサカメラ12の各ラインセンサカメラが配置されている。ここで、逐次画像は、これらのラインセンサカメラの画像データを、移動量測定装置14の移動量に基づいて算出しており、段ボール20上のシミなどの欠陥は、段ボール20と同じ速度で動くので、逐次画像において実際の欠陥と同じカラー画像としてとらえることができる。しかし、紙製品検査装置10内の浮遊物をRGBラインセンサカメラ12がとらえた場合、この浮遊物は段ボール20と同じ速度で動くことはないため、この「浮遊物による異常部分」は、上記のように複数色が順次出現するカラーパターンとなる場合がある。このカラーパターンに対して、制御装置11は、例えばあらかじめ定められた閾値を超える場合は、致命度が低いと判断し、超えない場合は致命度が高いと判断する。なお、制御装置11が致命度の高低を判断する際、制御装置11は「異常部分」の画像をモニターなどに映し出すことができる。
【0038】
本実施形態では、「異常部分」のカラー画像のあらかじめ定められた色のレベルに関して制御装置11が判断をする。そのレベルがあらかじめ定められた閾値を超えていれば、その「異常部分」は「浮遊物による異常部分」であると制御装置11が判断し、致命度が低いと判断してS07へ進む。また、制御装置11は、致命度が高いと判断した場合は、制御装置11はS06へ進み、S06において、段ボール20の排出信号を出力する。そして、排出信号が出力されたことをS07で記録する。
【0039】
制御装置11が、逐次画像に現れた「異常部分」の縦横比、コントラスト、色の少なくとも一つの閾値を超えたものを「浮遊物による異常部分」であると判断することにより、紙製品の動作速度と、浮遊物の動作速度との差が小さい場合でも、制御装置は、より確実に浮遊物による異常部分であると判断できる。また、逐次画像を作成するためのラインセンサカメラは、最低一組のみが必要とされるので、検査装置全体の大型化、コストの増大を抑制することができる。また、一組のラインセンサカメラは、従来の検査装置にすでに設けられているので、ソフト面を改造するだけで「浮遊物による異常部分」であると判断できる新たな機能を追加できる。すなわち、ハード面の改造なしに、新たな機能を追加できる。
【0040】
ラインセンサカメラが、RGBラインセンサカメラ12であり、制御装置11は、「異常部分」の色に関して閾値を超えたものを「浮遊物による異常部分」であると判断することにより、「浮遊物による異常部分」であるとの判断が最も容易にできる閾値を用いているので、その判断の精度を上げることができる。
【0041】
「浮遊物による異常部分」が、複数色が順次出現するカラーパターンであることにより、モニター等でその異常部分を目視で容易に確認できる。また、この画像に対して、制御装置11は、ある色のレベルが閾値を超えていれば、第1異常部分W1を「浮遊物による異常部分」と判断し、致命度が低いと判断する。
【0042】
なお本実施形態では、「浮遊物による異常部分」の、ある色のレベルについて閾値を設けたが、これに限定されない。例えば該当部分について、赤色等の色彩の占める割合の変化率の閾値を設けることもできる。
【0043】
具体的に説明すると、第1浮遊物F1がRラインセンサカメラ12aの下のみを通過する場合を考えると、「浮遊物による異常部分」は赤色の色彩の占める割合が高くなる。この際、赤色の色彩の占める割合が、この「浮遊物による異常部分」の周辺部に対して非常に高くなる。このように色彩の占める割合の変化率に対して閾値を設けることで、制御装置11は、「浮遊物による異常部分」について致命度が低いと判断する。
【0044】
<第2実施形態>
(紙製品検査装置10の動作フロー)
図6には、本発明の第2実施形態に係る紙製品検査装置の「異常部分」に対する判断手法の説明図を示す。
図6(A)は、紙製品上に浮遊物が浮遊している状態の説明図であり、
図6(B)はその紙製品の逐次画像の説明図である。
【0045】
第1実施形態と第2実施形態との相違点は、動作フローのS05において、具体的な判断手法が異なる点である。よって動作フローについて詳細に説明するとともに、他の部分の説明は省略する。
【0046】
S05において制御装置11は、確定された「異常部分」について、その欠陥の致命度が高いのか低いのかを判断する。致命度が高いのか低いのかは、制御装置11が、記憶装置11a内にあらかじめ記憶させられていた閾値を用いて、その閾値を超えるかどうかにより判断する。
【0047】
本実施形態の具体的な判断手法について
図6を用いて説明する。
図6(A)の段ボール20上に描かれた矢印は段ボール20の進行方向を表している。またこの段ボール20には、人の顔を模した第1デザインD1が描かれており、記憶装置11a内にもこの第1デザインD1の画像が格納されている。
【0048】
まず、
図6(A)の紙面において第1デザインD1の左側に表されている第1欠陥R1について説明する。この第1欠陥R1は段ボール20上にある汚れなどである。この第1欠陥R1は、段ボール20と一緒に動作する。そのため、マスタ画像と比較した際に、「異常部分」と判断される。この第1欠陥Rの形状は様々なものがあるが、
図6ではほぼ円形状で表されている。
図6(B)においても、この第1欠陥R1と同じ形状の第3異常部分W3が逐次画像に現れる。
【0049】
次に
図6(A)の紙面において、第1デザインD1の右側に表されている第3浮遊物F3について説明する。この第3浮遊物F3は、たとえば
図6(A)に点線で示すように動作する。段ボール20の送り速度は、第3浮遊物F3よりも速いため、第3浮遊物F3に対応する第4異常部分W4の形状は、
図6(B)の第1デザインD1の右側で示すように、段ボール20の送り方向に平行に長くなる。
【0050】
第3浮遊物F3による第4異常部分W4は、このように第1欠陥R1による第3異常部分W3よりも、その形状が一方向に伸びる傾向がある。よって制御装置11は、「異常部分」の縦横比を算出し、その縦横比が、例えば3以上の「異常部分」は、「浮遊物による異常部分」であると判断し、その段ボール20の致命度は低いと判断する。ここで縦横比の縦は、例えば「異常部分」の形状において、最も長い長さを有する線分と定義し、横はその縦に対して90度の角度を有する線分と定義することができる。また、縦をシートの流れる方向の長さとし、その線分が閾値以上、かつ、横をそれに90度の角度を有する線分とし、その長さが閾値未満であるとすることもできる。なお、縦横比の定義は、これに限定されない。また、縦横比として、最も長い長さを有する線分と、この異常部分の面積とを取り上げることも可能である。
【0051】
本実施形態では、縦横比について制御装置11が判断をする。制御装置11が、その「異常部分」の縦横比が、あらかじめ定められた閾値よりも大きい場合は、その「異常部分」は「浮遊物による異常部分」であると判断し、致命度が低いと判断してS07へ進む。また、制御装置11は、致命度が高いと判断した場合は、制御装置11はS06へ進み、S06において、段ボール20の排出信号を出力する。そして、排出信号が出力されたことをS07で記録する。
【0052】
<第3実施形態>
(紙製品検査装置10の動作フロー)
図7には、本発明の第3実施形態に係る紙製品検査装置の異常分に対する判断手法の説明図を示す。
図7(A)は、紙製品上に浮遊物が浮遊している状態の説明図であり、
図7(B)はその紙製品の逐次画像の説明図である。なお、
図7(B)の紙面の下側に表されている2つのグラフは、
図7(B)の太点線Eにおける状態を表した図であり、上側が映像レベルを表したグラフ、下側がその映像レベルの変化を強調処理したグラフである。
【0053】
第1実施形態と第3実施形態との相違点は、動作フローのS05において、具体的な判断手法が異なる点である。よって動作フローについて詳細に説明するとともに、他の部分の説明は省略する。
【0054】
S05において制御装置11は、確定された「異常部分」について、その欠陥の致命度が高いのか低いのかを判断する。致命度が高いのか低いのかは、制御装置11が、記憶装置11a内にあらかじめ記憶させられていた閾値を用いて、その閾値を超えるかどうかにより判断する。
【0055】
本実施形態の具体的な判断手法について
図7を用いて説明する。
図7(A)の段ボール20上に描かれた矢印は段ボール20の進行方向を表している。またこの段ボール20には、十字の第2デザインD2が描かれており、記憶装置11a内にもこの第2デザインD2のマスタ画像が格納されている。
【0056】
まず、
図7(A)の紙面において第2デザインD2の左側に表されている第2欠陥R2について説明する。この第2欠陥R2は段ボール20上にある汚れなどである。この第2欠陥R2は、段ボール20と一緒に動作する。そのため、マスタ画像と比較した際に、「異常部分」と判断される。この第2欠陥R2について
図7(B)の映像レベルのグラフを確認する。「異常部分」の周辺は映像レベルが高く、「異常部分」の映像レベルが低く、「異常部分」とその周辺の映像レベルの差が大きいのがわかる。また映像レベルの変化の度合いが高いことが
図7(B)の強調処理したレベルを見るとわかる。
【0057】
次に
図7(A)の紙面において第2デザインD2の右側に表されている第4浮遊物F4について説明する。この第4浮遊物F4は例えば
図7(A)に点線で示すように動作する。この第4浮遊物F4が浮遊する高さは限定されない。しかしRGBラインセンサカメラ12のピントは、段ボール20の上面に設定されていることから、第4浮遊物F4に対してはピントがずれる。そのため映像レベルのグラフからわかるように、第2欠陥R2のように「異常部分」とその周辺との映像レベルにおいて差がでにくい。また
図7(B)の強調処理したレベルを見ると、映像レベルの変化の度合いが小さいことがわかる。
【0058】
本実施形態では、この映像レベルの差があること、すなわち映像レベルのコントラストについて制御装置11が判断をする。制御装置11が、あらかじめ定められた閾値よりも映像レベルの差が小さい場合は、その「異常部分」は「浮遊物による異常部分」であるとは判断し、致命度が低いと判断してS07へ進む。また制御装置11は、致命度が高いと判断した場合は、制御装置はS06へ進み、S06において、段ボール20の排出信号を出力する。そして、排出信号が出力されたことをS07で記録する。
【0059】
映像レベルのコントラストについて判断を行う場合、以下のような利点がある。ラインセンサカメラ12でとらえた画像内で、紙製品の動作速度と浮遊物の動作速度が、ほぼ同じである場合、すなわち浮遊物が紙製品のかなり上方を浮遊していて、画像内ではそれらの動作速度がほぼ同じ場合は、従来は見かけの速度が同じであるため、浮遊物による異常部分であると制御装置11が判断することは困難であったが、映像レベルのコントラストの閾値を用いる場合、紙製品の上方を浮遊する浮遊物は、ピントが合っていないので、
図7(B)に示すように、制御装置11は確実に浮遊物による異常部分であると判断することが可能となる。
【0060】
<その他>
各実施形態において、縦横比、コントラスト、色のそれぞれについて、あらかじめ定められた閾値を用いて、制御装置11が「浮遊物による異常部分」であると判断しているが、これらのパラメータは複数組み合わせて用いることも可能である。例えばコントラストと色との2つの閾値を用いて、いずれも満足する場合を「浮遊物による異常部分」と判断することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 紙製品検査装置
11 制御装置
11a 記憶装置
12 RGBラインセンサカメラ(ラインセンサカメラ)
14 移動量測定装置
17 除去装置