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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20230815BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20230815BHJP
   F24C 3/08 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A47J37/06 316
F24C3/02 M
F24C3/08 S
F24C3/08 M
F24C3/08 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021073932
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168458
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592065221
【氏名又は名称】株式会社峰松電機
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宜博
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-200113(JP,A)
【文献】実開昭57-024906(JP,U)
【文献】特開2010-201033(JP,A)
【文献】米国特許第04796601(US,A)
【文献】特開2002-095583(JP,A)
【文献】特開平08-052078(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2235891(KR,B1)
【文献】特開2000-039154(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1999062(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 1/00-15/36
H05B 3/68-3/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロストルが配置される開口部が形成された天板と、
前記天板が蓋となる外箱部と、
前記外箱部の上方から下降させて内部に配置され、前記ロストルの下方に位置する底部が水皿となる内箱部と、
前記ロストルに載せられた食材を加熱する加熱部であり、前記内箱部の開口部から外れた前記加熱部の基端部を中心に、前記内箱部の開口部を超えて位置する前記加熱部の先端部を回転させて、前記ロストルの下方に位置した倒伏状態から起立状態に切り替え可能な加熱部と、前記加熱部の基端部の移動を規制する円弧状の第1ガイドと円弧状の第2ガイドとが連続して形成された案内部により前記加熱部の回転を案内する回転機構部とを有する器具本体を備え、
前記加熱部は、加熱される加熱体と、前記ロストルの下方位置における前記加熱体を露出した状態で前記加熱体を囲うカバー部と、前記カバー部の前記先端部の天面に設けられた把手とを備えた調理器具。
【請求項2】
前記加熱部は、前記カバー部の基端部の側面に突出して形成された軸部を備え、
前記第1ガイドおよび前記第2ガイドは、前記軸部を案内する2つの円弧状の孔が連続して案内板に穿孔されたものである
請求項1記載の調理器具。
【請求項3】
前記第1ガイドの上端部は、開口した状態に形成されている請求項2記載の調理器具。
【請求項4】
前記回転機構部は、前記加熱部が回転して起立状態となったときの前記加熱部の基端部を受ける受け板部を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項5】
前記天板には、前記開口部を囲う垂下壁に吸気用孔が形成され、
前記外箱部には、前記内箱部が内部に配置されることで前記内箱部との間に前記吸気用孔からの排煙を底面の開口部から排出させる排気路が形成される第1空間と、前記第1空間と区画壁により区画され、前記把手が位置する第2空間であり、前記加熱部の先端部の下方側に形成された開口部を有し、前記開口部から吸引された空気が前記把手を冷却する第2空間とを区画する区画壁が配置された請求項1から4のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項6】
前記回転機構部は、前記加熱部を倒伏状態から引き上げるときに、前記加熱部の基端部が回転する中心としての第1支点と、前記第1支点を中心に回転した後に、前記第1支点より低く、前記加熱部の基端部が前記加熱部の回転に伴って円弧状に移動する第2支点とにより、前記加熱部の回転を案内するものである請求項1から5のいずれか1項に記載の調理器具。
【請求項7】
前記第1支点は、前記加熱部の底面が接する、前記内箱部から前記加熱部の基端部の方向に向かって突出する突起部であり、
前記第2支点は、前記加熱部の基端部の角部が接する受け板部である請求項記載の調理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き肉などに使用され、テーブルにセットされる調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロストル(焼き網)に載せられた肉や野菜、魚、おにぎりなどの食材を焼きながら食す焼き肉などでは、グリルやロースターと称される調理器具が使用される。この調理器具は、テーブルに形成された開口部にセットされ、焼き網に載せられた肉が焼かれたときに発生する油脂分を含む排煙が、テーブルの下方から吸気して外部に排気される。また、焼き網からの油脂分は、焼き網の下方に位置した水皿に落下させて受ける。
【0003】
このような調理器具として特許文献1に記載のロースターが知られている。
この特許文献1に記載のロースターは、ロストルと、その下方に配設したガスバーナと、そのガスバーナの下方に配設した水皿とを備え、ガスバーナを水皿に対してその配設位置から退避させ得るように、バーナ本体が、ガス供給管に接続するヘッダーに対して回動して上方へ起立し得るように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-200113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のロースターは、バーナ本体を上方へ起立させて、水皿を上方に持ち上げれば、水皿の取り外しや洗浄後の再セットが容易となるものである。
しかし、食事後のバーナ本体は高温状態であるため、バーナ本体を持ち上げるには冷却するまで待つ必要がある。そのため、飲食店では、顧客の回転率を上げることが求められるが、バーナ本体の冷却時間中は、水皿の取り外しや洗浄後の再セットができないため、顧客の回転率を低下させてしまう。特に、電気シーズヒーターを使用した調理器具では、電気シーズヒーターが冷却に時間が要することから顕著である。
【0006】
そこで本発明は、食事後に直ぐに作業を開始することができることで、回転率を向上させることが可能な調理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の調理器具は、ロストルが配置される開口部が形成された天板と、前記天板が蓋となる外箱部と、前記外箱部の上方から下降させて内部に配置され、前記ロストルの下方に位置する底部が水皿となる内箱部と、前記ロストルに載せられた食材を加熱する加熱部であり、前記内箱部の開口部から外れた前記加熱部の基端部を中心に、前記内箱部の開口部を超えて位置する前記加熱部の先端部を回転させて、前記ロストルの下方に位置した倒伏状態から起立状態に切り替え可能な加熱部とを有する器具本体を備え、前記加熱部は、加熱される加熱体と、前記ロストルの下方位置における前記加熱体を露出した状態で前記加熱体を囲うカバー部と、前記カバー部の前記先端部の天面に設けられた把手とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の調理器具によれば、加熱部を倒伏状態から起立状態とするために、把手を持って持ち上げると、把手が、内箱部の開口部を超えてカバー部の先端部に設けられているため、食材を焼く際に極度に加熱されない。従って、飲食者が食事を終えると直ぐに、加熱部を持ち上げて、次の飲食者のための準備に取り掛かることができる。
【0009】
前記天板には、前記開口部を囲う垂下壁に吸気用孔が形成され、前記外箱部には、前記内箱部が内部に配置されることで前記内箱部との間に前記吸気用孔からの排煙を底面の開口部から排出させる排気路が形成される第1空間と、前記加熱部の先端部の下方側に形成された開口部を有する第2空間とを区画する区画壁が配置されたものとすることができる。
吸気用孔から吸引された天板の開口部の排煙は、第1空間の排気路により排出される。そして、吸気用孔からの吸い出しは、下方側に形成された開口部を有する第2空間から空気を吸引して、加熱部の先端部を通るため、先端部に設けられた把手を冷却することができる。
【0010】
前記加熱部の基端部には、前記加熱部を加熱させるための端子部が形成され、前記外箱部には、前記加熱部の基端部の下方側に形成された開口部を有する第3空間を区画する区画壁が配置されたものとすることができる。第3空間からも空気を吸引することで、端子部を冷却することができる。
【0011】
前記器具本体は、前記加熱部を倒伏状態から引き上げるときに、前記加熱部の基端部が回転する中心としての第1支点と、前記第1支点を中心に回転した後に、前記第1支点より低く、前記加熱部の基端部が前記加熱部の回転に伴って円弧状に移動する第2支点とにより、前記加熱部の回転を案内する回転機構部を備えたものとすることができる。
このように、第1支点を中心とした回転の後に、第2支点を中心とした回転を、回転機構部により加熱部にさせることで、加熱部を起立状態としたときに、第1支点のみで回転させたときより、加熱部の位置を低い位置とすることができる。従って、外箱部より突出した加熱部の範囲を小さくできるため、隣席への放熱を小さいものとすることができる。
【0012】
前記回転機構部は、前記加熱部の基端部の移動を規制する案内部であり、前記第1支点を中心に回転したときの円弧状の第1ガイドと、前記第2支点を中心に回転したときの円弧状の第2ガイドとが連続して形成された案内部を備えたものとすることができる。
案内部による第1ガイドと第2ガイドとが、加熱部の基端部の移動を規制するため、加熱部の移動を安定させることができるので、安心して加熱部を倒伏状態としたり起立状態としたりすることができる。
【0013】
前記第1支点は、前記加熱部の底面が接する、前記内箱部から前記加熱部の基端部の方向に向かって突出する突起部であり、前記第2支点は、前記加熱部の基端部の角部が接する受け板部であるものとすることができる。突起部を第1支点とすることで、内箱部を取り付けてないと、第1支点の位置が変わる。従って、内箱部を入れ忘れてしまった状態では、第2支点と第2ガイドとの位置関係は変わらないので、加熱部を起立状態から回転させることができるが、第1支点と第2ガイドとの位置関係が変わってしまうため、加熱部の回転が第2ガイドにより止まってしまう。これにより、内箱部の入れ忘れを店員などに気付かせることができる。
【0014】
前記加熱部が倒伏状態のときに前記加熱部の自重により押圧されて前記加熱部への通電を可能とし、引き上げられ前記加熱部が離間することで、前記加熱部への通電を遮断するスイッチが設けられたものとすることができる。
加熱部を引き上げると、加熱部がスイッチから離間することで、スイッチが加熱部への通電を遮断するので、加熱されていた加熱部を冷却状態へと変更することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の調理器具によれば、飲食者が食事を終えると直ぐに、加熱部を持ち上げて、次の飲食者のための準備に取り掛かることができるので、食事後に直ぐに作業を開始することができることで、回転率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る調理器具の分解斜視図である。
図2図1に示す調理器具をテーブルにセットした状態の正面図である。
図3図1に示す調理器具をテーブルにセットした状態の左側面図である。
図4】(A)は第2空間と第3空間との空気の吸い込みを説明するための図、(B)は(A)から吸い込まれた空気が排気路へ流れることを説明するための図である。
図5】加熱部を倒伏状態から起立状態へと切り替える動作を説明するための図であり、(A)は加熱部が倒伏状態の図、(B)は内箱部の突起部を第1支点として加熱部が回転している状態の図、(C)は加熱部の回転が第1支点から第2支点に切り替わる状態の図である。
図6図5(C)から引き続いて動作を説明するための図であり、(A)は加熱部における基端部の角部を第2支点として加熱部が回転している状態の図、(B)は加熱部が起立状態の図、(C)は内箱部をセットし忘れた状態で加熱部を回転させる状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る調理器具を図面に基づいて説明する。
図1から図3に示す調理器具1は、ロストルRに載せられた肉や野菜、魚、おにぎりなどの食材を焼きながら食す焼き肉を提供する店舗に設置され、テーブルTに形成された開口部に嵌め込まれ、下部から排煙が吸気される、グリルやロースターと称されるものである。
【0018】
調理器具1は、ロストルRが配置される開口部が形成された天板2と、天板2が蓋となる外箱部3と、ロストルRの下方に位置する底部が水皿となる内箱部4と、ロストルRに載せられた食材を加熱する加熱部5とを有する器具本体10を備えている。
【0019】
また、調理器具1は、器具本体10の外箱部3の底面に配置され、フィルタ61が収容されるダクトボックス6と、ダクトボックス6の底面に配置され、ファイヤダンパ71が収容される排気筒7とを備えている。
【0020】
天板2には、ロストルRがセットされる四角筒状の開口部21が形成されている。天板2は、開口部21の周囲の天面22がテーブルTの一部となる平面視矩形状に形成されている。天板2は、開口部21の下端に、ロストルRを配置するために内側に突出した突起部23が形成されている。また、天板2の開口部21を囲う4つの垂下壁24のうち、対向する一組の垂下壁24に、食材からの排煙を排気するために、開口部21内の空間と後述する排気路とを連通する吸気用孔25が、列状に形成されている。
天板2は、天面22の周縁が外箱部3に載ることで、天面22の面方向が水平方向に支持されている。
【0021】
外箱部3は、外箱部3にセットされる内箱部4の位置決めすると共に、内箱部4を支持するために、2枚で一対の区画壁31が配置され、外箱部3の内部が区画されている。
一対の区画壁31の間隔は、内箱部4の幅に合わせて配置されている。
区画壁31により、外箱部3の内部は、内箱部4が配置されることで、排気路R1が形成される第1空間S1と、第1空間S1を中央として、その両側に位置し、外部からの空気を取り入れるための第2空間S2および第3空間S3とが形成されている。
【0022】
区画壁31の上部には、矩形状の切り欠き部31aが形成されている。切り欠き部31aの高さは、天板2の後述する開口部を囲う垂下壁の長さと加熱部5の厚みとの合計の長さに合わせるように形成されている。
第1空間S1は、内箱部4が収納される。第1空間S1は、内箱部4が収納されたときに、外箱部3の側壁面32と内箱部4の側壁面41との間、外箱部3の底面33と内箱部4の底面42との間が、天板2の吸気用孔25からの排煙が流れる排気路R1となる。
【0023】
外箱部3の底面33であり、第1空間S1に位置する底面33には、フィルタ61を取り付けるための開口部34(図4(A)参照)が形成されている。また、第2空間S2および第3空間S3の下方側に位置する外箱部3には開口部35(図4(A)参照)が形成されている。本実施の形態では、第2空間S2の底部が開放状態に形成されている。また第3空間S3では、下部の側壁面にルーバー付き開口部36(図4(A)参照)が形成されている。
【0024】
内箱部4は、外箱部3の上方から下降させて内部に配置される。内箱部4は、開口部43を有する箱状に形成されている。内箱部4は、底部に水が入れられることで、ロストルRの下方に位置する底部が水皿となる。内箱部4は、倒伏状態の加熱部5が延びる方向F1と直交する方向に対向する側壁面41,41より、方向F1に対向する側壁面44,44の方が、上部が切り欠かれることで、高さが低く形成されている。
【0025】
側壁面44,44の上端部には、外箱部3の区画壁31の切り欠き部31aによりできた上端に引っ掛けるために、加熱部5の基端部の方向および先端部の方向の双方に向かって、互いが離れる方向に突出する一対の突起部44aが形成されている。突起部44aを区画壁31の切り欠き部31aに引っ掛けたときに、外箱部3の底面33と内箱部4の底面42との間に空間ができ、この空間が前述した排気路R1となる。
【0026】
加熱部5は、基端部5aが外箱部3の第3空間S3に位置し、先端部5bが外箱部3の第2空間S2に位置している。
加熱部5は、内箱部4の開口部43から外れた基端部5aを中心に、内箱部4の開口部43を超えて位置する先端部5bを回転させて、ロストルRの下方に位置した倒伏状態から起立状態に切り替え可能である。本実施の形態では、加熱部5は、電気ヒーターにより形成されている。
【0027】
加熱部5は、加熱される加熱体51と、ロストルRの位置合わせて加熱体51を露出した状態で加熱体51を囲うカバー部52と、カバー部52の先端部52aの天面52bに設けられた把手53とを備えている。
【0028】
加熱体51は、4本のヒーター棒により形成されている。加熱体51は、基端部に電流を供給するための配線が接続されている。
カバー部52は、平面視矩形状に形成された金属製の枠体により形成されたものである。カバー部52は、加熱体51の基端部と先端部との両方が箱部521,522により囲われ、ロストルRの下方に位置する中央部が加熱体51を露出させるように、連結部523により箱部521,522同士を連結している。
【0029】
カバー部52の基端部側の箱部521には、側面に軸部524が突出して形成されている。また、箱部521の底面には、カバー部52の基端部(加熱部5の基端部5a)の厚みを厚くする拡張部525が形成されている。
把手53は、コ字状に形成された金属板により形成されている。
【0030】
加熱部5は、温度を制御する制御盤が収納された制御ボックスB(図2参照)により電源供給される。制御ボックスBは、外箱部3の底面33であり、ダクトボックス6の側方に取り付けられている。制御ボックスBには、加熱部5が倒伏状態のときに、加熱部5の自重により押圧されてオンとなり、引き上げられ加熱部5が離間することでオフとなるスイッチB1(図2参照)が接続されている。
【0031】
ダクトボックス6は、外箱部3の底面33に取り付けられ、下方に向かって出っ張るフィルタ61を囲う箱状に形成されている。
排気筒7は、円筒形状に形成され、ダクトボックス6の底面に接続されている。排気筒7は、排気ダクトDに嵌め込まれることで、ダクトボックス6から流れ込み、ファイヤダンパ71を通過した排煙を、排気ダクトDに流す。
【0032】
ここで、加熱部5を回転させる回転機構部8について説明する。
回転機構部8は、外箱部3の第3空間S3に配置されている。回転機構部8は、外箱部3の第3空間S3に取り付けられた一対の案内部81と、加熱部5が回転して起立状態となったときの加熱部5の基端部5aを受ける受け板部82とを備えている。
【0033】
案内部81は、加熱部5を倒伏状態と起立状態とを切り替えるときに、加熱部5の後述する軸部の移動する案内および規制する第1ガイド81aおよび第2ガイド81bが案内板81cに形成されている。
第1ガイド81aおよび第2ガイド81bは、2つの円弧状の孔が連続して案内板81cに穿孔されたものである。第1ガイド81aの上端部は、開口した状態に形成されている。
受け板部82は、加熱部5の基端部5aの角部54(加熱部5が倒伏状態のときの下側の角部54)が擦れる水平板821と、外箱部3の内壁に一端部が取り付けられ水平板821の他端部を固定するための垂直板822とにより形成されている。水平板821には、通気用の貫通孔が形成されている。
【0034】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る調理器具1の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
まず、店員または飲食者は、テーブルの天板の下方に位置する制御ボックスBのスイッチを投入状態とすることにより、加熱部5が制御ボックスBにより調整された温度に加熱される。
【0035】
飲食者が食材をロストルRに載せて加熱部5からの熱により焼いて食す。牛肉や豚肉、鶏肉などを焼いたときに滴下した肉汁は、加熱部5に接触すれば高温により揮発するが、加熱部5を通過すると、内箱部4の開口部43から底部の水に落下する。
【0036】
食肉を焼いたときに発生する油分を含む排煙は、天板2の垂下壁24に形成された吸気用孔25に吸い込まれる。次に、内箱部4の他方の側壁面41と、外箱部3の第1空間S1に位置する側壁面32との間を排煙が通過して、内箱部4の下方に回り込み、外箱部3の底面33の開口部34に設置されたフィルタ61に至る。
そして、排煙は、フィルタ61とファイヤダンパ71とを通過して排気ダクトDに流れ、外部へ排出される。
【0037】
飲食者が飲食し終ると、店員による調理器具1の清掃が始まる。店員は、まずロストルRを上方に引き上げ、天板2から取り除く。次に天板2を上方に引き上げることで、加熱部5が露出する。
店員は、把手53を持って加熱部5の先端部5bを引き上げることで、基端部5a(軸部524)を中心にして回転させる。
【0038】
このとき、食材を焼くために高温状態であった加熱部5であっても、カバー部52における内箱部4の開口部43を超えて位置する先端部5bの天面52bに把手53が形成されているため、店員は温度の低い把手53を持って手早く加熱部5の引き上げることができる。
【0039】
また、食事中に、排煙が、天板2の吸気用孔25に吸い込まれ、排気路R1を通じて排気されるときに、天板2の開口部21の内側は負圧状態となり、第2空間S2の下方に位置する外箱部3の底部が、開口部35(図4(A))参照により開放状態であるため、外箱部3の底部より空気が吸引され、加熱部5の先端部5bに流れ、加熱部5の隙間を通って、天板2の開口部21へ流れる。そして、吸引された空気は、天板2の開口部21に流れて、吸気用孔25に吸引される。
【0040】
また、天板2は垂下壁24を内箱部4に載せただけであるため、天板2の垂下壁24と切り欠き部31aによって残った区画壁31との間には隙間ができる。従って、図4(A)に示すように、外箱部3の開口部35より吸引された空気は、加熱部5の先端部5bに流れ、第2空間S2側の垂下壁24と区画壁31との間から、図4(B)に示すように第1空間S1側の垂下壁24へ回り込み、排気路R1へ流れ込む。
このとき、第2空間S2の下方から吸引された空気が把手53を冷却する。
【0041】
従って、外箱部3の底部(開口部35)より空気が吸引されて、把手53を冷却しているため、加熱部5の中央部より、把手53を更に低温状態とすることできるので、店員は冷却期間を長く待つことなく加熱部5を引き上げることができる。
【0042】
更に、図4(A)に示すように、第3空間S3も外箱部3の側壁にルーバー付き開口部36が形成されているため、ルーバー付き開口部36から空気が吸引され、図4(B)に示す排気路R1へ流れるので、ヒーター棒により形成された加熱体51の端子部分を冷却させることができる。
【0043】
ここで、加熱部5を倒伏状態から起立状態へと切り替える動作を説明する。
図5(A)に示すように、倒伏状態の加熱部5は、軸部524が第1ガイド81aの上部に位置している。そして、加熱部5における基端部5aの底面5cは、内箱部4の側壁面44から突出した突起部44aに当たった状態である。また、スイッチB1は、加熱部5により押圧されることで、加熱部5は通電可能な状態である。
このような状態で、加熱部5の先端部5bを引き上げ回転させると、図5(B)に示すように、加熱部5の底面5cが接する、内箱部4の突起部44aを支点(第1支点)として、加熱部5の基端部5aが、軸部524を案内する第1ガイド81aの円弧に沿って下降する。
【0044】
また、加熱部5がスイッチB1から離間することで、スイッチB1がオフとなり、加熱部5への通電を遮断する。従って、加熱部5が倒伏状態のときに通電状態であっても、セーフティースイッチとして機能するスイッチB1が通電を遮断するので、加熱されていた加熱部5を冷却状態へと変更することができ、店員の安全を確保することができる。
【0045】
更に加熱部5の先端部5bを回転させると、図5(C)に示すように、軸部524が次の第2ガイド81bへ位置すると共に、加熱部5の基端部5aに位置する拡張部525の角部(加熱部5の基端部5aの角部54)が受け板部82に当たる。
そうなると、図6(A)に示すように、基端部5aの角部54(拡張部525の底部の角部525a)が新たな支点となって受け板部82(水平板821)を擦れながら移動する。また、軸部524は、新たな円弧である第2ガイド81bに沿って下降する。
そして、図6(B)に示すように、軸部524が第2ガイド81bの奥部に到達するまで、加熱部5の先端部5bを回転させると、加熱部5は起立した状態となる。
【0046】
第2支点を、加熱部5の基端部5aの厚みを厚くする拡張部525の角部525a(基端部5aの角部54)とすることで、加熱部5の厚みが薄くても第1支点から早めに第2支点に支点を移すことができる。
【0047】
加熱部5の回転が、高い位置の支点(第1支点)から、低く、加熱部5における基端部5aの角部54となる位置を支点(第2支点)に、途中で切り替わることで、加熱部5の回転後の基端部5aの位置(起立状態のときの位置)を、第1支点だけで回転させるより低い位置とすることができる。
従って、加熱部5の姿勢を起立状態としたときに、外箱部3からはみ出る加熱部5の高さを低く抑えることができるので、隣接したテーブルで食事している飲食者への放熱を抑えることができる。
【0048】
加熱部5が起立状態となれば、内箱部4が露出するため、店員は、内箱部4を上方に引き上げれば、簡単に内箱部4を外箱部3から取り外すことができ、油が浮いた底部の水を捨て交換することができる。
そして、上記説明とは反対の手順で、内箱部4を外箱部3にセットし、加熱部5を回転させて降下させることで倒伏状態に戻し、天板2とロストルRをセットすれば、次の飲食者を迎い入れることができる。
【0049】
例えば、フィルタ61のメンテンスや、ファイヤダンパ71のメンテンスを行う場合には、内箱部4を取り外した状態とすれば、フィルタ61が露出した状態となるため、フィルタ61の清掃や交換も容易である。更に、ファイヤダンパ71の点検の際にも、フィルタ61を取り外せば、ファイヤダンパ71が露出した状態となるため、容易に点検や交換が可能である。
【0050】
店員が、内箱部4を外箱部3にセットすることを忘れたまま、加熱部5を、図6(B)に示す起立状態から倒伏状態に復帰させようとする場合がある。
そうすると、図6(B)に示す状態から、図6(A)に示す状態までは、軸部524が第2ガイド81bに案内されてスムーズに移動できるが、図6(C)が示す状態まで軸部524が移動したときに、内箱部4(図5(C)参照)がセットされていないと、カバー部52の底面5cが突起部44aを支点にできないため、区画壁31の切り欠いた部分(切り欠き部31a)の上端を支点に回転することになる。
【0051】
そうなると、突起部44aの位置から区画壁31の位置までの支点がずれることで、支点から軸部524までの距離L1が、図5(C)に示す突起部44aから軸部524までの距離L2から変わるため、軸部524が描く円弧形状が、第1ガイド81aの円弧形状と異なってくる。
従って、加熱部5を起伏状態から倒伏状態に復帰させるときに、軸部524が第2ガイド81bから第1ガイド81aへ移動する際に、軸部524が第1ガイド81a内で引っ掛かるため、加熱部5が倒伏状態に回転させることができない。
そのため、店員は、内箱部4のセットを忘れていることを気付かせることができるので、食材を焼いたときの油を外箱部3の底面33やフィルタ61に落としてしまうことを防止することができる。
【0052】
このように、本発明の実施の形態に係る調理器具1によれば、飲食者が食事を終えると直ぐに、加熱部5を持ち上げて、内箱部4の水を交換したり、内箱部4を清掃したりして、次の飲食者のための準備に取り掛かることができる。
よって、調理器具1は、食事後に直ぐに作業を開始することができることで、回転率を向上させることが可能である。
【0053】
なお、本実施の形態では、第2空間S2の底部が開放状態に形成され、第3空間S3では、下部の側壁面にルーバー付き開口部36が形成されているが、下方側から空気が吸い上げられればよいため、第2空間S2の側壁面に開口部を設けても、第3空間S3の底部が開放状態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、焼き肉などに使用され、テーブルにセットされる調理器具に好適であり、店舗に設置される調理器具に最適である。
【符号の説明】
【0055】
1 調理器具
10 器具本体
2 天板
21 開口部
22 天面
23 突起部
24 垂下壁
25 吸気用孔
3 外箱部
31 区画壁
31a 切り欠き部
32 側壁面
33 底面
34 開口部
35 開口部
36 ルーバー付き開口部
4 内箱部
41 側壁面
42 底面
43 開口部
44 側壁面
44a 突起部
5 加熱部
5a 基端部
5b 先端部
5c 底面
51 加熱体
52 カバー部
52a 先端部
52b 天面
521,522 箱部
523 連結部
524 軸部
525 拡張部
525a 角部
53 把手
54 角部
6 ダクトボックス
61 フィルタ
7 排気筒
71 ファイヤダンパ
8 回転機構部
81 案内部
81a 第1ガイド
81b 第2ガイド
81c 案内板
82 受け板部
821 水平板
822 垂直板
S1 第1空間
S2 第2空間
S3 第3空間
R1 排気路
D 排気ダクト
T テーブル
R ロストル
B 制御ボックス
B1 スイッチ
L1,L2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6