(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】複室容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20230815BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61J1/05 351A
B65D77/04 F
(21)【出願番号】P 2021097445
(22)【出願日】2021-06-10
(62)【分割の表示】P 2020067538の分割
【原出願日】2013-11-15
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐木川 尚彦
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110169(JP,A)
【文献】特開2011-194048(JP,A)
【文献】特開2006-055549(JP,A)
【文献】特表2005-523772(JP,A)
【文献】特開2007-125309(JP,A)
【文献】特開2008-280078(JP,A)
【文献】特開2006-034951(JP,A)
【文献】特許第6901172(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収納部と、前記複数の収納部のうち、いずれかの前記収納部に隣接して配置されると共に、隣接する前記収納部よりも容積が小さい小容器と、前記複数の収納部及び前記小容器を有する容器本体と、を備え、前記収納部内の圧力を高めることにより、前記収納部及び前記小容器は互に開封連通される複室容器であって、
前記小容器の一部分を封止すると共に、前記収納部内の圧力を高めることによって剥離する弱シール部と、
前記弱シール部よりもシール強度が高い第1の中シール部と、
前記弱シール部よりもシール強度が高い第2の中シール部と、を備え、
前記小容器は、隣接する前記収納部に対向する長辺部分を有する矩形状であり、
前記弱シール部は、前記長辺部分に設けられており、
前記第1の中シール部と前記第2の中シール部とは対向して配置されており、
前記第1の中シール部は、複数の収納部を有する容器本体の周縁部に近接する一方の端部と反対側の端部である先端部とを備え、
前記第2の中シール部は、前記容器本体の周縁部に近接する一方の端部と反対側の端部である先端部とを備え、
前記第1の中シール部の前記先端部と、前記第2の中シール部の前記先端部との間の領域は、前記弱シール部に沿って設けられており、
前記第1の中シール部の前記先端部から前記弱シール部までの距離は、前記第1の中シール部の前記一方の端部から前記第1の中シール部の前記先端部までの距離よりも短く、
前記第2の中シール部の前記先端部から前記弱シール部までの距離は、前記第2の中シール部の前記一方の端部から前記第2の中シール部の前記先端部までの距離よりも短く、
前記第1の中シール部と前記第2の中シール部とは、互いの間隔が、互いの前記先端部側である前記弱シール部に近くなる程、狭くなるように傾斜する部分を備えており、
前記第1の中シール部及び前記第2の中シール部の傾斜する部分により、前記収納部内の圧力及び剥離力は前記弱シール部に伝わって前記弱シール部を剥離させる、複室容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
静脈注射により患者に投与される薬剤の中には、予め配合すると望ましくない経時的変化を起こすような不安定な薬剤がある。例えばアミノ酸輸液とブドウ糖輸液を配合して保存しておくと、いわゆるメイラード反応によって混合液が褐変する。また、脂肪乳剤と電解質溶液とを配合して保存しておくと、脂肪分が凝集を生じ、リン酸含有液とカルシウム含有液を配合しておくと、リン酸カルシウムの沈殿を生じ、望ましくない変化を起こす。
【0003】
このような薬剤には、混合前の成分を個別に収納する医療用の複室容器が用いられることが多い。この医療用の複室容器は、個別に薬剤を収納する複数の収納部と、この収納部を仕切り、外部から圧力を加えることにより剥離し得る仕切り用弱シール部とを備えたものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-136570号公報
【文献】国際公開公報03/092574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8~10はそのような参考例に係る医療用の複室容器の一例を示す説明図で、
図8は平面図、
図9は
図8のX-X線矢視断面図、
図10は開通時の断面図である。
【0006】
図8に示すように、複室容器1は、周縁部3が接着され矩形状に形成された容器本体5の内部を、第1収納部9と第2収納部11とに仕切り部13で仕切ると共に、各収納部9、11には、予め混合或いは溶解しておくと望ましくない各種薬剤a、bをそれぞれ収納し、さらに各収納部9、11のいずれか(
図8では第1収納部9)に小容器15を設け、小容器15内に薬剤cを収納している。この小容器15は、
図9に断面を拡大して示すように容器本体5を構成するフィルム5a、5bの内側である小容器15のフィルム15a、15bの内面に接着部21を設けている。
図10に示すように、容器本体5の外部から力を加え、仕切り部13に圧力を与えて剥離力F、Fを与え、第1収納部9と第2収納部11とを開通させ、薬剤aとbとを混合させた時、同時に小容器15の接着部21も剥離し、小容器15内の薬剤cも各収納部9、11の薬剤a、bと混合する構造となっている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、例えば、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でないことなどにより、仕切り部13への圧力及び剥離力F、Fが不十分になると、小容器15の接着部21も剥離せず、小容器15内の薬剤cが各収納部9、11の薬剤a、bと混合されない場合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、容器本体内に小容器を収納した複室容器において、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、容器本体側の収納部や小容器が開通しやすい複室容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、複室容器の構造について鋭意検討した結果、特定の形状の2つの中シール部を設けることによって、上記課題を解決できる複室容器を見出した。
すなわち、本発明は、複数の収納部と、複数の収納部のうち、いずれかの収納部に接続された排出口と、複数の収納部のうち、いずれかの収納部内に設けられた小容器と、を備え、収納部内の圧力を高めることにより、複数の収納部及び小容器は互いに開封連通される複室容器であって、小容器の一部分を封止すると共に、収納部内の圧力を高めることによって剥離する弱シール部と、弱シール部よりもシール強度が高い第1の中シール部と、弱シール部よりもシール強度が高い第2の中シール部と、を備え、第1の中シール部と第2の中シール部とは対向して配置されており、第1の中シール部の第2の中シール部側の先端部と、第2の中シール部の第1の中シール部側の先端部とは、弱シール部に近接しており、第1の中シール部と第2の中シール部とは、互いの間隔が、弱シール部に近くなる程狭くなるように傾斜する部分を備えている、複室容器である。
【0010】
本発明の複室容器によれば、弱シール部は、第1の中シール部の先端部と、第2の中シール部の先端部とは、弱シール部に近接しており、第1の中シール部と第2の中シール部とは、互いの間隔が、弱シール部に近くなる程狭くなるように傾斜する部分を備えている。これによって、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合であっても、弱シール部への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなり、小容器の弱シール部が剥離しやすくなり、小容器内の内容物が各収納部の内容物と混合しやすくなる。
【0011】
本発明の弱シール部は、第1の中シール部と第2の中シール部との間である間隔と、排出口とを結ぶ延長線上に配置されていてもよい。
【0012】
本発明の第1の中シール部は、複室容器の周縁部に近接する一方の端部と反対側の端部である先端部とを備え、第2の中シール部は、複室容器の周縁部に近接する一方の端部と反対側の端部である先端部とを備え、第1の中シール部の先端部から弱シール部までの距離は、第1の中シール部の一方の端部から先端部までの距離よりも短く、第2の中シール部の先端部から弱シール部までの距離は、第2の中シール部の一方の端部から先端部までの距離よりも短くてもよい。
【0013】
本発明の弱シール部は、容器本体に非接着な状態で小容器を封止していてもよい。
【0014】
本発明において、小容器の内部に対し、弱シール部よりも外側部分には、小容器と容器本体とを接着する接着部が設けられていてもよい。
【0015】
接着部は、弱シール部に対向して設けられていてもよい。
【0016】
また、複数の収納部を有する容器本体と、収納部に接続された排出口と、収納部を仕切るとともに収納部内の圧力を高めることにより互いに開封連通される仕切り用弱シール部と、いずれかの前記収納部内に設けられた小容器と、を備えた複室容器であって、小容器を封止すると共に、仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される弱シール部と、仕切り用弱シール部よりもシール強度が高い第1の中シール部と、仕切り用弱シール部よりもシール強度が高い第2の中シール部と、を備え、仕切り用弱シール部の少なくとも一部は、第1の中シール部と第2の中シール部とに挟まれた間隔内に設けられており、弱シール部は、前記間隔内に設けられた仕切り用弱シール部に対向して設けられており、第1の中シール部の前記間隔側の先端部と、第2の中シール部の間隔側の先端部とは、弱シール部に近接している、複室容器にすることもできる。
【0017】
この複室容器によれば、仕切り用弱シール部の少なくとも一部は、第1の中シール部と第2の中シール部とに挟まれた間隔内に設けられており、弱シール部は、前記間隔内に設けられた仕切り用弱シール部に対向して設けられている。これによって、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合であっても、仕切り用弱シール部への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなり、小容器の弱シール部も剥離しやすくなり、小容器内の内容物が各収納部の内容物と混合しやすくなる。
【0018】
この複室容器において、小容器と容器本体とを接着すると共に、仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される接着部を更に備えていてもよい。
【0019】
この複室容器において、接着部は、仕切り用弱シール部と弱シール部との間で、弱シール部に沿って設けられていてもよい。
【0020】
この複室容器において、第1の中シール部及び第2の中シール部は、剥離可能であってもよい。
【0021】
この複室容器において、容器本体の周縁部は接着されており、第1の中シール部及び第2の中シール部のシール強度は、周縁部よりも低くてもよい。
【0022】
この複室容器において、前記間隔は、小容器の横幅の2分の1よりも長くてもよい。
【0023】
この複室容器において、第1の中シール部の先端部から弱シール部までの距離及び第2の中シール部の先端部から弱シール部までの距離は、仕切り用弱シール部の長手方向に直交する方向の幅よりも小さくてもよい。
【0024】
また、複数の収納部を有する容器本体と、収納部に接続された排出口とを備えており、容器本体を複数の収納部に仕切るとともに収納部内の圧力を高めることにより互いに開封連通される仕切り用弱シール部と、いずれかの収納部内に仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される小容器が設けられた複室容器であって、仕切り用弱シール部の一方の端側から中央側にかけて小容器側に傾斜した形状を有する第1の中シール部と、仕切り用弱シール部のもう一方の端側から中央側にかけて小容器側に傾斜した形状を有する第2の中シール部と、を有し、第1の中シール部と前記第2の中シール部とが互いに交わらず、一方の端からもう一方の端まで延びる仕切り用弱シール部の中央側には、第1の中シール部と第2の中シール部との間隔が設けられており、第1の中シール部及び第2の中シール部は、仕切り用弱シール部よりもシール強度が高く、第1の中シール部の前記中央側先端部と、前記第2の中シール部の前記中央側先端部との間隔が、前記小容器の横幅よりも短く、仕切り用弱シール部の少なくとも一部には、第1の中シール部と第2の中シール部との間で、小容器に対して離れた側から小容器側にかけて台形状に狭まる形状が形成されている複室容器にすることもできる。
【0025】
この複室容器によれば、仕切り用弱シール部の少なくとも一部に、よりシール強度が高く、小容器側に圧力及び/又は剥離力がより伝わりやすい傾斜した形状を有する第1の中シール部及び第2の中シール部を設ける。これによって、外部からの力が強力ではない場合や、力を加える位置が適切な部分からずれている場合であっても、仕切り用弱シール部への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなり、小容器の接着部や弱シール部も剥離しやすくなり、小容器内の内容物が各収納部の内容物と混合しやすくなる。
【0026】
この複室容器において、第1の中シール部の形状と第2の中シール部の形状とが互いに対称であってもよい。第1の中シール部の形状と第2の中シール部の形状とが互いに対称であれば、仕切り用弱シール部及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが均一に伝わりやすくなる。
【0027】
また、この複室容器において、第1の中シール部及び第2の中シール部の中央側先端部が、10°以上90°未満の角度を有してもよい。第1の中シール部及び第2の中シール部の中央側先端部の角度が10°以上90°未満の範囲であれば、仕切り用弱シール部及び小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0028】
上記第1の中シール部の中央側先端部と、第2の中シール部の中央側先端部との間隔が、小容器の横幅よりも短く、かつ、小容器の横幅の2分の1よりも長いことが好ましい。これにより、小容器への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0029】
この複室容器において、最大点荷重が250N以上1800N以下であってもよい。最大点荷重が上記範囲にあることによって、開封容易性と輸送時等における密封性とを兼ね備えた複室容器となる。
【0030】
また、仕切り用弱シール部の開通強度が2.5N/15mm以上4.5N/15mm以下であってもよい。仕切り用弱シール部の開通強度が本範囲にあることによって、開封容易性と輸送時等における密封性とを兼ね備えた複室容器となる。
【0031】
上記の複室容器は、医療用又は食品用であることが好ましい。このような開封容易性と輸送時等における密封性とを兼ね備えた複室容器は、医療用複室容器として使用することができ、また食品用としても用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、容器本体内に小容器を収納した複室容器において、複室容器への外部からの力が十分強くない場合や、力を加える位置が適切でない場合であっても、容器本体側の収納部や小容器が開通しやすい複室容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態である医療用複室容器の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である医療用複室容器の剥離開通状態を示す拡大断面図である。
【
図4】本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
【
図5】本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
【
図6】本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
【
図7】本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
【
図10】
図8に示した複室容器の剥離開通状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る複室容器の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の複室容器は、複数の収納部を有する容器本体と、収納部に接続された排出口とを備えており、容器本体を複数の収納部に仕切るとともに収納部内の圧力を高めることにより互いに開封連通される仕切り用弱シール部と、いずれかの収納部内に仕切り用弱シール部の開封連通と共に開封される小容器が設けられた複室容器である。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る複室容器における医療用複室容器を例とした平面図、
図2は
図1のA-A線部分拡大断面図である。
【0036】
図1に示すように、医療用複室容器1は、周縁部3が接着され矩形状に形成された容器本体5と、この容器本体5に接続されゴム栓を有し、薬剤を排出するための薬剤排出口7とを備えている。容器本体5は、長手方向に並べて配置された第1収納部9及び第2収納部11を有しており、2つの収納部9、11は剥離可能な仕切り用弱シール部13で仕切られている。また、第1収納部9及び第2収納部11には内容物として、予め混合或いは溶解しておくと望ましくない各種薬剤a,bがそれぞれ収納されている。
【0037】
医療用複室容器1は、2枚の単層又は複層のフィルムの周縁部を熱接着又は接着することにより形成される袋状の容器とすることができる。医療用複室容器1の容器本体5を構成する材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂等、種々の樹脂よりなるフィルムを採用することができる。
【0038】
仕切り用弱シール部13を剥離するために必要な圧力を調整するためには、例えば、熱可塑性樹脂よりなるフィルムを溶融接着する際、仕切り用弱シール部13の加熱接着時間を、容器本体5の周縁部3の加熱接着時間より短くすればよい。或いは、仕切り用弱シール部13の接着圧力を、容器本体5の周縁部3の接着圧力より低い接着圧力で行うことにより、接着強度を調整することが可能である。
【0039】
上記医療用複室容器1の第1収納部9には薬剤cを収納する小容器15が設けられ、小容器15を封止するシール部が弱シール部21とされている。
【0040】
小容器15の容器本体5に対する接着部19は、図示のように小容器15を構成するフィルム15a、15bの弱シール部21より外側部分の延出部23a、23bに形成されていてもよい。そして延出部23a、23bで、その長さ方向ほぼ全長にわたり連続する線状に接着されていてもよい。この接着手段は、例えば熱融着などの手段が好適に用いられる。
【0041】
なお、この延出部23a、23bの幅B(
図2参照)は、小容器15が容器本体5を構成するフィルム5a、5bに接着するに十分な幅とされていればよく、具体的には3~20mm、より好適には5~15mmである。また、
図1における延出部23a、23bの横幅は、弱シール部21と同じ長さの横幅であってもよい。
【0042】
上記小容器15は内層がポリエチレン、中間層がポリ環状オレフィン、外層がポリエチレンより成る3層構造とされたフィルムで、各層が剥離しやすい構造とされたフィルム15a、15bが好適に使用され、重ね合わせた二枚のフィルム15a、15bの周囲を熱接着することにより袋状の容器とされる。なお、この小容器15の弱シール部21を剥離するために必要な圧力の調整は、容器本体5の仕切り用弱シール部13と周縁部3とのシールと同様、弱シール部21の加熱接着時間を小容器15の他の周縁部の加熱接着時間より短くすればよい。或いは、弱シール部21の接着圧力を、小容器15の周縁部の接着圧力より低い接着圧力で行うことにより調整すればよい。
【0043】
図2は、
図1のA-A線矢視部分拡大断面図である。また、
図3は、本発明の一実施形態である医療用複室容器1の剥離開通状態を示す拡大断面図である。医療用複室容器1の使用に際しては、容器本体5(例えば第2収納部11の一部)に力を加え、
図2に示すように矢印F、F方向の力を発生させて仕切り用弱シール部13を剥離させ、第1収納部9と第2収納部11を開通させる。さらに、
図3に示すように小容器15の開口部は、延出部23a、23bから容器本体5のフィルム5a、5bに引かれ、弱シール部21に剥離力が伝わって
図3に示すように弱シール部21が剥離開通し、内部の薬剤cが流出する。
【0044】
このとき、接着部19は弱シール部21以外の位置とされているので、例えば熱による溶融接着の場合は熱によって弱シール部21の易剥離性に影響が及ぶことがなく、
図3に示すように確実に開封することが可能となる。また、接着部19は小容器15の外部とされているので、溶融接着時の熱によって内部の薬剤cが影響されることもなく、内部の薬剤cの品質を良好に維持することができる。
【0045】
本実施形態の医療用複室容器1においては、仕切り用弱シール部13の一方の端側から中央側にかけて小容器15側に傾斜した形状を有する第1の中シール部L
1が形成されている。また、仕切り用弱シール部13のもう一方の端側から中央側にかけて小容器15側に傾斜した形状を有する第2の中シール部R
1が形成されている。また、第1の中シール部L
1と第2の中シール部R
1とは互いに交わらない。第1の中シール部L
1及び第2の中シール部R
1の形状は、仕切り用弱シール部13の一方の端側から中央側にかけて小容器15側に傾斜した形状を有し、互いに交わらなければ、その形状は特に制限されないが、例えば
図1に示すように、第1の中シール部L
1はp
1、q
1、r
1を3辺とする、三角形の形状であってもよく、第2の中シール部R
1も第1の中シール部L
1と同様に三角形の形状であってもよい。
図1の第1の中シール部L
1においては、辺q
1が傾斜した形状における傾斜を示している。なお、傾斜した形状は、
図1の辺q
1のような直線状だけに限定されるものではなく、例えば円弧状であってもよい。
このように、第1の中シール部L
1及び第2の中シール部R
1が形成されることによって、仕切り用弱シール部13は、第2収納部11側から小容器15側へかけて台形状に狭まる形状となる。これにより、例えば第2収納部11の一部に荷重すると、圧力及び剥離力F、Fが第2収納部11側から仕切り用弱シール部13及び小容器15側へかけて伝わりやすくなり、小容器15の接着部19及び弱シール部21が剥離しやすくなる。この結果、小容器15内の薬剤cが各収納部9、11の薬剤a、bと混合されやすくなる。なお、本実施形態において中シール部とは、弱シール部よりもシール強度が高いシール部を意味する。
【0046】
本実施形態の医療用複室容器1において、第1の中シール部L1の形状と第2の中シール部R1の形状とは非対称であってもよいが、互いに対称であることが好ましい。第1の中シール部L1の形状と第2の中シール部R1の形状とが互いに対称であれば、仕切り用弱シール部13及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fが、第1の中シール部L1における傾斜した形状及び第2の中シール部R1における傾斜した形状から均一に伝わりやすくなる。
【0047】
また、本実施形態の医療用複室容器1において、第1の中シール部L1の中央側先端部X及び第2の中シール部R1の中央側先端部Yが、10°以上90°未満の角度を有してもよい。第1の中シール部L1の中央側先端部X及び第2の中シール部R1の中央側先端部Yの角度が10°以上90°未満の範囲であれば、仕切り用弱シール部13及び小容器15への圧力及び剥離力F、Fがより伝わりやすくなる。
【0048】
第1の中シール部L1の中央側先端部X及び第2の中シール部R1の中央側先端部Yは、10~80°の範囲がより好ましく、50~80°の範囲がさらに好ましく、60~70°の範囲が特に好ましい。
【0049】
上記第1の中シール部L1の中央側先端部Xと、第2の中シール部R1の中央側先端部Yとの間隔は、小容器15の横幅よりも短いほうが好ましく、小容器15の横幅の2分の1よりも長いことが好ましい。これにより、小容器15への圧力及び剥離力F、Fが伝わりやすくなる。
【0050】
また、第1の中シール部L1の中央側先端部Xと、第2の中シール部R1の中央側先端部Yとの間隔の中心部分は、仕切り用弱シール部13の横幅における中心部分とが、横幅に対する垂直線上で一致していることが好ましい。特に好ましくは、上記間隔の中心点が、仕切り用弱シール部13の横幅の中心点と一致する形状である。
【0051】
本実施形態の医療用複室容器1において、収納部(第2収納部11)内の圧力を高める作業を行った際の最大点荷重が250N以上1800N以下であることが好ましい。最大点荷重の範囲が上記範囲にあれば、医療従事者は適切な力で医療用複室容器1の仕切り用弱シール部13及び小容器15を十分に開通することが可能となる。最大点荷重(最大点荷重値)は、医療用複室容器1の第2収納部11に力を徐々に加えていく作業を行った際の、荷重値の最大値である。この値は、力を加えると一定時間は上昇し、仕切り用弱シール部13又は小容器15の接着部19及び弱シール部21が開通する直前がピークとなり、開通後は急激に下降する。最大点荷重値を250Nより低く設計した場合には、例えば輸送時に仕切り用弱シール部13又は小容器15の接着部19及び弱シール部21が意図せず開通してしまう恐れや医療従事者が意図せずに開通してしまう恐れがある。また、1800Nより高くなるように設計した場合には、仕切り用弱シール部13又は小容器15の接着部19及び弱シール部21の開通のために必要な収納部内の圧力を高める作業が困難になる恐れがある。より好ましくは、最大点荷重が300N以上1800N以下であり、さらに好ましくは、最大点荷重が350N以上1600N以下である。
【0052】
また、仕切り用弱シール部13の開通強度(N/15mm)は、15mm幅に切り取った仕切り用弱シール部13を剥がすのに必要な力であり、第1の中シール部L1及び第2の中シール部R1の開通強度よりも低く、開通強度が2.5N/15mm以上4.5N/15mm以下であってもよい。開通強度が2.5N/15mmより低いと、例えば輸送時に仕切り用弱シール部13が意図せず開通してしまうおそれがあり、また、4.5N/15mmより高いと、仕切り用弱シール部13又は小容器15の接着部19及び弱シール部21の開通のために必要な収納部内の圧力を高める作業が困難になる恐れがある。
【0053】
図4は、本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
図4に示すように、第1の中シール部L
2及び第2の中シール部R
2の中央側先端部は、
図1のX、Yのように鋭角ではなく、第1の中シール部L
2又は第2の中シール部R
2が台形の形状であって、中央側先端部がS
2のように辺であってもよい。ここで、
図4のように中央側先端部が鋭角ではなく辺を為す場合には、例えば第1の中シール部L
2においては、辺S
2と辺q
2との角度から直角分の90°を減じることによって、
図1の態様と同様に、好ましい角度としてもよい。
【0054】
図5は、本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
図5に示すように、第1の中シール部L
3又は第2の中シール部R
3の形状は、仕切り用弱シール部13からはみ出していてもよく、容器本体5の周縁部3や第2収納部11の一部に、第1の中シール部L
3又は第2の中シール部R
3の一部が重なっていてもよい。また、第1の中シール部L
3又は第2の中シール部R
3の形状は、
図1の態様のように三角形でなく、例えば三角形又は台形と長方形とが組み合わされた形状であってもよい。第1の中シール部L
3及び第2の中シール部R
3が形成されることによって、仕切り用弱シール部13において、第2収納部11側から小容器15側へかけて台形状に狭まる形状が少なくとも仕切り用弱シール部13の一部に形成されていればよい。
【0055】
図6、
図7は、本実施形態の変形例である医療用複室容器の平面図である。
図6、
図7に示すように、第1の中シール部L
4又は第2の中シール部R
4(第1の中シール部L
5又は第2の中シール部R
5)の形状は、
図1や
図4、
図5の態様と比較して、仕切り用弱シール部13からより大きくはみ出していてもよく、容器本体5の周縁部3や第2収納部11の一部に、第2収納部11の内容量が大きく減少しない範囲で、第1の中シール部L
4又は第2の中シール部R
4(第1の中シール部L
5又は第2の中シール部R
5)の一部が重なっていてもよい。また、第1の中シール部L
4又は第2の中シール部R
4(第1の中シール部L
5又は第2の中シール部R
5)の形状は、
図5の態様の同様に、三角形でなくてもよく、例えば三角形又は台形と長方形とが組み合わされた形状であってもよい。
【0056】
本実施形態の医療用複室容器1は、公知の医療用複室容器と同じように製造することができ、第1の中シール部L又は第2の中シール部Rについては、例えば仕切り用弱シール部13を形成した後に、第1の中シール部L又は第2の中シール部Rを形成したい部分をより高温で熱接着させることによって形成することができる。また、仕切り用弱シール部13を形成した後に、凹凸状の金型で第1の中シール部L又は第2の中シール部Rの形状のように凹凸をつけ、開通時に引っかかることによって開通を遅延させることも可能である。なお、上記凹凸の引っ掛かりは、例えば第1収納部9と第2収納部11とを大きく振動等によって混合させることによって、完全に開通させることもできる。
【0057】
また、本実施形態の医療用複室容器1においては、例えば第2収納部11の一部に荷重し、圧力及び剥離力F、Fを第2収納部11側から仕切り用弱シール部13及び小容器15側へ伝え、第1収納部9と第2収納部11、小容器15を開通させ、さらに、第1収納部9の一部を荷重することによって、仕切り用弱シール部13、第1の中シール部L及び第2の中シール部Rを完全に剥離することもできる。これにより、開通後の第2収納部11内の内容量を従来に比べて少なくならないように調整することも可能となる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、一例として医療用複室容器の実施形態を記載しているが、本実施形態は医療用に限定されるものではなく、例えば食品用の複室容器であってもよい。食品用複室容器である場合には例えば内容物は流動状の食品であり、排出口は食品が容器外に排出されるための食品排出口となる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
本実施例においては、医療用複室容器の仕切り用弱シール部に第1及び第2の中シール部を設け、収納部内の圧力を高める作業を行った際の最大点荷重値を測定した。
【0061】
実施例1~3の医療用複室容器の最大点荷重値は、手型押し板(170mm×100mm)を用いてテンシロン(製品名、エー・アンド・デイ社製)で測定した。
【0062】
(実施例1)
医療用複室容器として、エルネオパ2号(製品名、株式会社大塚製薬工場製、容量1500ml)を用いた。また、第1及び第2の中シール部の形状は
図5および表1に示す形状と同様の形状とした。仕切り用弱シール部13の開通強度は3.5N/15mmであり、第1の中シール部L
3、第2の中シール部R
3の開通強度は、仕切り用弱シール部13の開通強度よりも大きくなるように、仕切り用弱シール部13を形成した後に、第1の中シール部L
3、第2の中シール部R
3の形状で再度シール作業を行って作成した。この容器の第2収納部11に力を加え開通作業を行った際の最大点加重を表1に示す。
【0063】
(実施例2)
医療用複室容器として、エルネオパ2号(製品名、株式会社大塚製薬工場製、容量1500ml)を用いた。また、第1及び第2の中シール部の形状は
図6および表1に示す形状と同様の形状とした。仕切り用弱シール部13の開通強度は3.5N/15mmであり、第1の中シール部L
4、第2の中シール部R
4の開通強度は、仕切り用弱シール部13の開通強度よりも大きくなるように、仕切り用弱シール部13を形成した後に、第1の中シール部L
4、第2の中シール部R
4の形状で再度シール作業を行って作成した。この容器の第2収納部11に力を加え開通作業を行った際の、最大点加重を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
医療用複室容器として、エルネオパ2号(製品名、株式会社大塚製薬工場製、容量1500ml)を用いた。また、第1及び第2の中シール部の形状は
図7および表1に示す形状と同様の形状とした。仕切り用弱シール部13の開通強度は3.5N/15mmであり、第1の中シール部L
5、第2の中シール部R
5の開通強度は、仕切り用弱シール部13の開通強度よりも大きくなるように、仕切り用弱シール部13を形成した後に、第1の中シール部L
5、第2の中シール部R
5の形状で再度シール作業を行って作成した。この容器の第2収納部11に力を加え開通作業を行った際の、最大点加重を表1に示す。
【0065】
実施例1~3の中シール部の角度および間隔、また、開通した際の最大点荷重の測定結果を以下の表1に示す。
【0066】
【符号の説明】
【0067】
1…医療用複室容器、3…周縁部、5…容器本体、7…排出口、9…第1収納部、11…第2収納部、15…小容器、19…接着部、21…弱シール部、L、L1~L5…第1の中シール部、R、R1~R5…第2の中シール部、X…第1の中シール部の中央側先端部、Y…第2の中シール部の中央側先端部、q1…辺(傾斜した形状)。