(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】キノリン構造を有するpan-KITキナーゼ阻害剤及びその適用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20230815BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20230815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230815BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K31/4709
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021533277
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2018122307
(87)【国際公開番号】W WO2020118753
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】201811520008.5
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519365388
【氏名又は名称】安徽中科拓苒▲薬▼物科学研究有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 静
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 青松
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲雲▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ベイ▼蕾
(72)【発明者】
【氏名】▲斉▼ 紫平
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲鳳▼▲鳴▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 青旺
(72)【発明者】
【氏名】王 文超
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 程
(72)【発明者】
【氏名】王 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】王 黎
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-506777(JP,A)
【文献】国際公開第97/017329(WO,A1)
【文献】特表2008-537748(JP,A)
【文献】特表2003-509499(JP,A)
【文献】特表2008-540390(JP,A)
【文献】Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2012年,Vol.22,pp.262-266
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2005年,Vol.48,pp.1359-1366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型KIT及び/又は変異型KITチロシンキナーゼの活性を阻害するためのキナーゼ阻害剤であって、式(I):
【化1】
(式中、Yは、
【化2】
であり、
Aはフェニルであり、
nは1であり、
R
1は、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、
及びC
1~6アルコキ
シから選択され、
R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6アルコキシから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニル若しくは5員ヘテロシクリルを形成する)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を含む、キナーゼ阻害剤。
【請求項2】
R
1が、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、
又はプロピ
ルから選択され、R
2及びR
3がそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシから選択されるか、又はR
2及びR
3が共にフェニル若しくはジオキソランを形成する、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、式(Ia):
【化3】
(式中、R
1は、水素、フルオロ、クロロ、及びメチルから選択され、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリ
フルオロメチルから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニルを形成する)の化合物である、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
【表1-1】
【表1-2】
に列挙される化合物から選択される、請求項1に記載のキナーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のキナーゼ阻害剤と、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意に他の治療剤とを含む
、野生型KIT及び/又は変異型KITチロシンキナーゼの活性を阻害するための医薬組成物。
【請求項6】
野生型KIT及び/又は変異型KITキナーゼの活性によって調節されるか若しくは影響を受ける、又は野生型KIT及び/又は変異型KITキナーゼの活性が関係している疾患、障害又は病態の治療、予防又は改善のための、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記疾患、障害又は病態が、以下の増殖性疾患:固形腫瘍、肉腫、消化管間質腫瘍、結腸直腸癌、急性骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、甲状腺癌、全身性肥満細胞症、好酸球増多症候群、線維症、エリテマトーデス、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、肥満細胞腫、肺癌、気管支癌、精巣上皮内腫瘍、黒色腫、乳癌、神経芽細胞腫、甲状腺乳頭癌/甲状腺濾胞癌、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性内分泌腫瘍2型、褐色細胞腫、甲状腺癌、副甲状腺過形成/副甲状腺腫、結腸癌、結腸直腸腺腫、卵巣癌、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、膵臓癌、悪性胸膜内皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓癌、肝臓癌、副腎癌、膀胱癌、胃癌、直腸癌、膣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、頭頸部腫瘍、及び新生物、又はそれらの組合せから選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記疾患、障害又は病態が、以下の自己免疫疾患:関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、狼瘡、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、骨関節炎、スティル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、家族性自律神経失調症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経筋緊張症、強皮症、外陰部痛、又はそれらの組合せから選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記疾患、障害又は病態が、以下の血液悪性腫瘍:骨髄腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞急性リンパ芽球性白血病、三血球系脊髄形成異常を伴う急性骨髄芽球性白血病、混合系統白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄性肉腫、又はそれらの組合せから選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記疾患、障害又は病態が、KIT変異に関連する消化管間質腫瘍である、請求項6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、KITキナーゼ阻害剤、特に野生型cKIT又はその様々な変異型に対して阻害活性を有する化合物、かかる化合物を含む医薬組成物、並びにかかる化合物又は組成物を使用してキナーゼ活性を阻害する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管間質腫瘍(GIST)は、消化管の最も一般的な間葉系腫瘍である。GISTの発生率は10万人~20万人に約1人で、消化管の全腫瘍の1%~3%を占める。この疾患は中高年層によく見られ、発症年齢の中央値は50歳~65歳である。40歳未満ではまれであるが、子供でも報告されている。現在、GISTは潜在的に悪性の挙動を伴う腫瘍であると考えられており、生物学的挙動を予測することは困難である。GISTは消化管のどの部分でも発生する可能性があり、胃で最も一般的(60%~70%)で、次いで小腸(20%~30%)で発生する場合があり、食道、結腸及び直腸での発生率は10%未満であるが、腹膜の網(omentum)及び腸間膜にも見られることがある。
【0003】
臨床研究によると、消化管間質腫瘍の病因は、それらの遺伝子分子プロファイリングに基づいて、cKIT変異型(80%~85%)、PDGFRα変異型(5%~10%)、及びcKIT野生型(10%)のGISTという3つのカテゴリーに分けることができる。消化管間質腫瘍の病因は、cKITタンパク質(CD117)シグナル伝達経路の活性化と関連している。癌原遺伝子であるcKITは、ネコ線維肉腫ウイルスから単離されたvKIT遺伝子のホモログである。cKITは、長さが約90kbのヒト4番染色体(4q12-13)にあり、21個のエクソン及び20個のイントロンからなり、進化の過程で高度に保存されている。cKITタンパク質は、細胞膜上にある受容体型チロシンキナーゼ(RTK)であり、相対分子量は145000である。cKITは、細胞表面の抗原決定基によりCD117と名付けられている。cKITタンパク質はRTKファミリーの3番目のタイプに属し、5つの免疫グロブリン様ドメイン(D1~D5)と、1つの膜貫通ドメインと、膜近傍ドメイン(JMD)及びチロシンキナーゼ(TK)ドメインを含む1つの細胞質領域とからなる。TKドメインは更に、アデノシン三リン酸(ATP)ドメイン(TK1)とホスホトランスフェラーゼドメイン(TK2)とに分けられる。幹細胞因子(SCF)リガンドは細胞外ドメインに結合して二量体を形成し、細胞質領域のTKドメインでチロシンの自己リン酸化をもたらして、更に様々な下流効果の自己リン酸化を引き起こし、様々なシグナルの伝達を実現する。主なシグナル伝達経路には、PI3Kシグナル伝達経路、JAK-STATシグナル伝達経路、Ras-Erkシグナル伝達経路、Srcファミリーキナーゼシグナル伝達経路、及びPLCγシグナル伝達経路があり、最終的に細胞の増殖及び分裂、並びに組織の成長及び生存を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、伝統的な外科的治療手段としての外科手術が、依然として消化管間質腫瘍の治療のための主なアプローチであり、近年の標的薬の出現は、GISTの治療における新たな段階を開始している。現在、イマチニブは消化管間質腫瘍の治療のための第一選択の臨床薬であるが、一般的に2年間の投与後、患者の90%近くが薬剤耐性を発現し、腫瘍の再発に苦しんでいる。薬剤耐性の主な要因は、薬剤耐性cKITキナーゼの変異に関連している。現在、薬剤耐性cKITキナーゼ変異によって引き起こされる課題を臨床的に克服するものとして、第二選択の阻害剤であるスニチニブ及び第三選択の阻害剤であるレゴラフェニブがあるが、臨床応答性は低く、多くのcKIT変異は薬剤に感受性がなかった。したがって、消化管間質腫瘍の複数のc-KIT標的を標的とするpan-cKIT変異型キナーゼ阻害剤には、臨床において依然として大きな需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I):
【化1】
(式中、Yは、
【化2】
から選択され、
Aはアリール又は6員ヘテロシクリルから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、
R
1は、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6アルコキシ、及びシアノから選択され、
R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6アルコキシから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニル若しくは5員ヘテロシクリルを形成する)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む、選択的キナーゼ阻害剤を提供する。
【0006】
好ましい実施の形態では、Yが、
【化3】
である場合、nは好ましくは1であり、Yが、
【化4】
である場合、nは好ましくは3である。別の態様では、Aは、好ましくは、フェニル、N-モルホリニル、N-ピペリジル、又はN-ピペラジニルから選択される。更に好ましくは、R
1は、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、プロピル、又はシアノから選択され、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニル若しくはジオキソランを形成する。
【0007】
好ましい実施の形態では、本発明のキナーゼ阻害剤は、式(Ia):
【化5】
(式中、R
1、R
2及びR
3は上記に規定される通りである)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0008】
より好ましくは、R1は、水素、フルオロ、クロロ、及びメチルから選択され、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリメチルから選択されるか、又はR2及びR3は共にフェニルを形成する。
【0009】
更に好ましい実施の形態では、本発明のキナーゼ阻害剤は、式(Ib):
【化6】
(式中、A、R
1、R
2及びR
3は、上記に規定される通りである)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0010】
より好ましくは、Aはフェニル又はN-モルホリニルから選択され、R1は水素であり、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリフルオロメチルから選択される。
【0011】
本発明は更に、上記の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む医薬組成物、チロシンキナーゼ(野生型KIT及び/又は変異型KIT)活性を阻害する方法、及び阻害するための上記の化合物又は医薬組成物の使用、並びに野生型KIT及び/又は変異型KITのキナーゼ活性によって調節されるか、そうでなければ影響を受ける、又は野生型KIT及び/又は変異型KITのキナーゼ活性が関係している疾患、障害又は病態を治療、予防又は改善する方法及びその使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1a-1cは、tel-cKIT/T670I-BaF3細胞を用いて樹立した腫瘍移植マウスモデルにおける化合物1及び化合物2の腫瘍阻害効果を示す図である。
【
図2】
図2a-2cは、tel-cKIT/Y823D-BaF3細胞を用いて樹立した腫瘍移植マウスモデルにおける化合物1及び化合物2の腫瘍阻害効果を示す図である。
【
図3】
図3a-3cは、tel-cKIT/D820G-BaF3細胞を用いて樹立した腫瘍移植マウスモデルにおける化合物1及び化合物2の腫瘍阻害効果を示す図である。
【
図4】
図4a-4cは、GIST-T1-T670I細胞を用いて樹立した腫瘍移植マウスモデルにおける化合物1及び化合物2の腫瘍阻害効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語
特段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、特許請求の範囲に記載の主題が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0014】
特段の指示がない限り、本発明では、当業者の技能範囲内の質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の慣例的な方法が使用される。特段の規定が示されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学並びに創薬化学及び医薬品化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの実験手順及び技術は、当該技術分野で既知のものである。上述の技術及び手順は一般に、当該技術分野でよく知られ、本明細書全体にわたって引用及び議論される様々な一般的な参考文献及びより具体的な参考文献に記載される慣例的な方法で実施することができる。
【0015】
「アルキル」という用語は、分岐鎖又は直鎖を有してもよい脂肪族炭化水素基を指す。構造に応じて、アルキル基は、一価基又は二価基(すなわち、アルキレン基)であり得る。本発明では、アルキル基は、好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは1個~6個の炭素原子を有する「低級アルキル」、更により好ましくは1個~4個の炭素原子を有するアルキルである。典型的なアルキル基には、限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。本明細書で言及される「アルキル」は、アルキルの取り得るあらゆる立体配置及び立体配座を包含し、例えば本明細書で言及される「プロピル」は、n-プロピル及びイソプロピルを包含することを意図し、「ブチル」は、n-ブチル、イソブチル及び第三級ブチルを包含し、「ペンチル」は、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル及びペンタ-3-イルを包含するものと理解されるべきである。
【0016】
「アルコキシ」という用語は、アルキルが本明細書で規定されるものである-O-アルキル基を指す。典型的なアルコキシ基には、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が含まれる。
【0017】
「シクロアルキル」という用語は、炭素及び水素のみを含む単環式基又は多環式基を指す。シクロアルキル基には、3個~12個の環原子を有する基が含まれる。構造に応じて、シクロアルキル基は、一価基又は二価基(例えば、シクロアルキレン基)であり得る。本発明では、シクロアルキル基は、好ましくは3個~8個の炭素原子を有するシクロアルキル、より好ましくは3個~6個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」である。シクロアルキルの例には、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、及びアダマンチルが含まれる。
【0018】
「芳香族」という用語は、4n+2個(ここで、nは整数である)のπ電子を含む非局在化π電子系を有する平面環を指す。芳香族環は5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の原子によって形成され得る。芳香族は任意に置換されていてもよい。「芳香族」という用語には、炭素環式アリール(例えば、フェニル)基及びヘテロ環式アリール(又は「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)基(例えば、ピリジン)の両方が含まれる。その用語には、単環式基又は縮合環型多環式基(すなわち、隣接した炭素原子の対を共有する環)が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合に、「アリール」という用語は、環を形成する原子の各々が炭素原子である芳香族環を指す。アリール環は5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の炭素原子によって形成され得る。アリール基は任意に置換されていてもよい。アリール基の例には、限定されるものではないが、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル及びインデニルが含まれる。構造に応じて、アリール基は、一価基又は二価基(すなわち、アリーレン基)であり得る。
【0020】
「アリールオキシ」という用語は、アリールが本明細書で規定されるものである-O-アリールを指す。
【0021】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個以上の環ヘテロ原子を含むアリール基を指す。N含有「ヘテロアリール」部分は、環の骨格原子の少なくとも1つが窒素原子である芳香族基を指す。構造に応じて、ヘテロアリール基は、一価基又は二価基(すなわち、ヘテロアリーレン基)であり得る。ヘテロアリール基の例には、限定されるものではないが、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、ナフチリジニル、フロピリジニル等が含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合に、「ヘテロアルキル」という用語は、1個以上の骨格鎖原子がヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン又はそれらの組合せである、本明細書で規定されるアルキル基を指す。ヘテロアルキル基の任意の内部位置に又はヘテロアルキル基が分子の残部に結合されている位置に、1個以上のヘテロ原子が配置されていてもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合に、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」という用語は、環を形成する1個以上の原子が窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族環を指す。ヘテロシクロアルキル環は3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の原子によって形成され得る。ヘテロシクロアルキル環は、任意に置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキルの例には、限定されるものではないが、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状カルバメート、テトラヒドロチオピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3-ジオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピロリドン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3-ジオキソール、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、及び1,3-オキサチオランが含まれる。構造に応じて、ヘテロシクロアルキル基は、一価基又は二価基(すなわち、ヘテロシクロアルキレン基)であり得る。
【0024】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0025】
「ハロアルキル」、「ハロアルコキシ」及び「ハロへテロアルキル」という用語には、少なくとも1個の水素がハロゲン原子で置き換えられているアルキル構造、アルコキシ構造及びヘテロアルキル構造が含まれる。2個以上の水素原子がハロゲン原子で置き換えられている或る特定の実施形態では、それらのハロゲン原子は互いに同じ又は異なっている。
【0026】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0027】
「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0028】
「エステル基」という用語は、式-COOR(ここで、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して接続される)及びヘテロシクリル(環炭素を介して接続される)から選択される)の化学部分を指す。
【0029】
「アミノ」という用語は、-NH2基を指す。
【0030】
「アミノアシル」という用語は、-CO-NH2基を指す。
【0031】
「アミド」又は「アシルアミノ」という用語は、-NR-CO-R’(ここで、R及びR’はそれぞれ独立して、水素又はアルキルである)を指す。
【0032】
「任意に」という用語は、続いて記載される1つ以上の事象が起こっても又は起こらなくてもよいことを意味し、起こる1つ以上の事象と起こらない事象の両方を含む。「任意に置換された」又は「置換された」という用語は、言及される基が、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、アミド、ニトロ、ハロアルキル、アミノ、メシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、アミノアシル、アミノ保護基等からなる群から個々に独立して選択される1つ以上の更なる基で置換され得ることを意味する。ここで、アミノ保護基は、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、アリルオキシカルボニル、及びトリフルオロアセチル等から選択されることが好ましい。
【0033】
本明細書で使用される「チロシンプロテインキナーゼ(TPK)」という用語は、アデノシン三リン酸(ATP)からタンパク質上のチロシン残基へのγ-リン酸の転移を触媒し、様々なタンパク質基質のチロシン残基のリン酸化を触媒し得ることで細胞の成長、増殖、及び分化において重要な効果を有するキナーゼの一種である。
【0034】
本明細書で使用されるキナーゼを「阻害する」、キナーゼを「阻害している」又はキナーゼの「阻害剤」という用語は、ホスホトランスフェラーゼ活性の阻害について言及している。
【0035】
本明細書に開示される化合物の「代謝物」は、化合物が代謝される場合に形成されるその化合物の誘導体である。「活性代謝物」という用語は、化合物が代謝される場合に形成される化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。本明細書で使用される「代謝される」という用語は、生物が特定の物質を変化させる過程(限定されるものではないが、加水分解反応及び酵素によって触媒される反応、例えば酸化反応を含む)を合わせたものを指す。したがって、酵素は化合物に特定の構造変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化的反応及び還元的反応を触媒するのに対して、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、活性化グルクロン酸分子を芳香族アルコール基、脂肪族アルコール基、カルボン酸基、アミン基及び遊離スルフヒドリル基に転移することを触媒する。代謝についての更なる情報は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Edition, McGraw-Hill (1996)から入手することができる。本明細書に開示される化合物の代謝物は、宿主への化合物の投与及び宿主からの組織試料の分析、又はin vitroでの肝細胞と一緒の化合物のインキュベート及び得られた化合物の分析のいずれかによって同定することができる。両方の方法は当該技術分野でよく知られている。幾つかの実施形態では、化合物の代謝物は酸化的過程によって形成され、対応するヒドロキシ含有化合物に相当する。幾つかの実施形態では、化合物は薬理学的に活性な代謝物に代謝される。本明細書で使用される「調節する」という用語は、標的と直接的又は間接的のいずれかで相互作用させて、標的の活性を高めること、標的の活性を阻害すること、標的の活性を限定すること、又は標的の活性を延長することを例としてのみ含む、標的の活性を変化させることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合に、「標的タンパク質」という用語は、選択的結合化合物によって結合することができるタンパク質分子又はタンパク質の一部を指す。或る特定の実施形態では、標的タンパク質は、チロシンキナーゼKIT(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、ABL(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、EGFR(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、FLT3(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、VEGFR2(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、RET(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、PDGFRα(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、PDGFRβ(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR1(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR2(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR3(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)、FGFR4(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)である。
【0037】
本明細書で使用されるIC50は、阻害の応答を測定するアッセイにおいて、最大応答の50%阻害を達成する特定の試験化合物の量、濃度又は投与量を指す。
【0038】
本明細書で使用されるEC50は、特定の試験化合物によって誘導、誘発又は増強される特定の応答の最大発現の50%で用量依存性応答を惹起する試験化合物の投与量、濃度又は量を指す。
【0039】
本明細書で使用されるGI50は、細胞増殖の50%を阻害するために必要な薬剤の濃度、すなわち、癌細胞等の細胞の成長が50%阻害又は制御される薬剤濃度を指す。
【0040】
本発明の新規キナーゼ阻害剤
本発明は、式(I):
【化7】
(式中、Yは、
【化8】
から選択され、
Aはアリール又は6員ヘテロシクリルから選択され、
nは1~3から選択される整数であり、
R
1は、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6アルコキシ、及びシアノから選択され、
R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、ハロ、C
1~6アルキル、C
1~6ハロアルキル、C
1~6アルコキシから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニル若しくは5員ヘテロシクリルを形成する)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む、選択的キナーゼ阻害剤を提供する。
【0041】
好ましい実施形態では、Yが、
【化9】
である場合、nは好ましくは1であり、Yが、
【化10】
である場合、nは好ましくは3である。別の態様では、Aは、好ましくは、フェニル、N-モルホリニル、N-ピペリジル、又はN-ピペラジニルから選択される。更に好ましくは、R
1は、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、プロピル、又はシアノから選択され、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシから選択されるか、又はR
2及びR
3は共にフェニル若しくはジオキソランを形成する。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明のキナーゼ阻害剤は、式(Ia):
【化11】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、上記に規定される通りである)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0043】
より好ましくは、R1は、水素、フルオロ、クロロ、及びメチルから選択され、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリメチルから選択されるか、又はR2及びR3は共にフェニルを形成する。
【0044】
更に好ましい実施形態では、本発明のキナーゼ阻害剤は、式(Ib):
【化12】
(式中、A、R
1、R
2及びR
3は、上記に規定される通りである)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0045】
より好ましくは、Aはフェニル又はN-モルホリニルから選択され、R1は水素であり、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びトリフルオロメチルから選択される。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明のキナーゼ阻害剤は、下記表1の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグを含む。
【0047】
【0048】
本明細書では、様々な可変部について上記の基のあらゆる組合せが考慮される。当業者であれば、化学的に安定であり、当該技術分野で知られる技術だけでなく本明細書に示される技術によっても合成することができる化合物を得るために、本明細書に示される化合物における置換基及び置換パターンを選択することができると理解される。
【0049】
本明細書には、新規のキナーゼ阻害剤が記載される。これらの化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、薬学的に活性な代謝物及びプロドラッグも本明細書に記載される。
【0050】
追加の実施形態又は更なる実施形態では、本明細書に記載される化合物は、それを必要とする生物に投与することで、代謝されて代謝物を生じ、その後に代謝物が使用されて、所望の治療効果を含む所望の効果がもたらされる。
【0051】
本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容可能な塩として形成され得る及び/又は使用され得る。薬学的に許容可能な塩の種類には、限定されるものではないが、(1)化合物の遊離塩基形態を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸等の薬学的に許容可能な無機酸、又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、2-ナフタレンスルホン酸、tert-ブチル酢酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸、ステアリン酸、ムコン酸等の有機酸と反応することにより生成される酸付加塩;(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン又はカルシウムイオン)、若しくはアルミニウムイオンに置き換わるか、又は有機塩基若しくは無機塩基と配位結合する場合に生成される塩基付加塩が含まれる。許容可能な有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、N-メチルグルカミン等が含まれる。許容可能な無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が含まれる。
【0052】
薬学的に許容可能な塩の対応する対イオンは、限定されるものではないが、イオン交換クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、誘導結合プラズマ、原子吸光分析、質量分析又はそれらの任意の組合せを含む様々な方法を使用して分析及び特定され得る。
【0053】
塩は、以下の技術:濾過、非溶媒による沈殿後の濾過、溶媒の蒸発又は水溶液の場合は凍結乾燥の少なくとも1つを使用することによって回収される。
【0054】
薬学的に許容可能な塩、多形体及び/又は溶媒和物のスクリーニング及び特性決定は、限定されるものではないが、熱分析、X線回折、分光法、顕微鏡法及び元素分析を含む様々な技術を使用して行うことができる。使用される様々な分光技術には、限定されるものではないが、ラマン、FTIR、UVIS及びNMR(液体状態及び固体状態)が含まれる。様々な顕微鏡法技術には、限定されるものではないが、IR顕微鏡法及びラマン顕微鏡法が含まれる。
【0055】
本発明の医薬組成物
本出願はまた、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は該化合物の薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、薬学的に活性な代謝物若しくはプロドラッグと、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、任意に他の治療剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0056】
治療の過程で、上記化合物は、状況に応じて、単独で、又は1つ以上の他の治療剤と組み合わせて使用され得る。本発明の化合物を含む薬剤は、注射、経口、吸入、直腸及び経皮投与のうち少なくとも1つを介して患者に投与され得る。他の治療剤は、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス、シクロスポリン、ラパマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、アザチオプリン、メルカプトプリン、ミコフェノール酸、又はFTY720)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、フルオキシプレドニゾロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルドステロン)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、サリチル酸塩、アリールアルカン酸、2-アリールプロピオン酸、N-アリールアントラニル酸、オキシカム、コキシブ、又はスルホンアニリド)、アレルギーワクチン、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、β-アゴニスト、テオフィリン、抗コリン作動薬、又は他の選択的キナーゼ阻害剤(例えば、mTOR阻害剤、c-Met阻害剤)又はher2抗体から選択され得る。また、他の治療剤はまたラパマイシン、クリゾチニブ、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、グリベック(商標)(イマチニブ)、タキソール(商標)(パクリタキセル)、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン、シタラビン、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート(MTX)、タキソテール(商標)(ドセタキセル)、ゾラデックス(商標)(ゴセレリン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、ジェムザール(商標)(ゲムシタビン)、エポチロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノルビシン(Daunonibicin)、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン又はイダルビシンであってもよい。或いは、他の治療剤は、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)等のサイトカインであってもよい。或いは、他の治療剤は、CMF(シクロホスファミド、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル)、CAF(シクロホスファミド、アドリアマイシン及び5-フルオロウラシル)、AC(アドリアマイシン及びシクロホスファミド)、FEC(5-フルオロウラシル、エピルビシン及びシクロホスファミド)、ACT若しくはATC(アドリアマイシン、シクロホスファミド及びパクリタキセル)、又はCMFP(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル及びプレドニゾン)であってもよい。
【0057】
本発明の実施形態では、患者が本発明に従って治療される場合、所与の作用物質の量は、特定の投与計画、疾患又は病態の種類及びその重症度、治療を必要とする被験体又は宿主の個性(例えば、体重)等の要因に応じて変動することとなるが、例えば、投与される特定の作用物質、投与経路、治療される病態、及び治療される被験体又は宿主を含む、症例を取り巻く特定の状況に従って、当該技術分野で既知の方式で定型的に決定することができる。一般に、成人の治療に採用される用量は、典型的には、1日当たり0.02mg~5000mgの範囲、例えば1日当たり約1mg~1500mgである。所望の用量は、単回用量で、又は同時に(又は短期間にわたって)若しくは適切な間隔で、例えば1日当たり2回、3回、4回又はそれ以上の部分用量(sub-doses)として投与される分割用量として適宜表記され得る。上記の投与量範囲が示されているものの、当業者には、具体的な有効量は患者の病態及び医師の判断に応じて適切に調節され得ることが理解されるであろう。
【0058】
本発明の医薬品の使用
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又はそれを含む医薬組成物は、チロシンキナーゼKIT(野生型若しくは様々な変異型、又はそれらの組合せ)の活性を阻害するために使用され得る。式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又はその医薬組成物は、固形腫瘍(良性又は特に悪性のタイプを含む)、特に肉腫、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸癌、急性骨髄芽球性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、新生物(neoplasia)、甲状腺癌、全身性肥満細胞症、好酸球増多症候群、線維症、エリテマトーデス、移植片対宿主病、神経線維腫症、肺高血圧症、アルツハイマー病、精上皮腫、未分化胚細胞腫、肥満細胞腫、肺癌、気管支癌、精巣上皮内腫瘍、黒色腫、乳癌、神経芽細胞腫、甲状腺乳頭癌/甲状腺濾胞癌、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性内分泌腫瘍2型、褐色細胞腫、甲状腺癌、副甲状腺過形成/副甲状腺腫、結腸癌、結腸直腸腺腫、卵巣癌、前立腺癌、神経膠芽腫、脳腫瘍、悪性神経膠腫、膵臓癌、悪性胸膜内皮腫、血管芽細胞腫、血管腫、腎臓癌、肝臓癌、副腎癌、膀胱癌、胃癌、直腸癌、膣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、頭頸部腫瘍、並びに他の増殖性の病態等、又はそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の疾患の治療、予防又は改善のために使用され得る。消化管間質腫瘍(GIST)、結腸直腸癌、急性骨髄芽球性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、甲状腺癌等、又はそれらの組合せの治療に特に好ましい。
【0059】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又はその医薬組成物は、関節炎、リウマチ性関節炎、骨関節炎、狼瘡、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、骨関節炎、スティル病、若年性関節炎、糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎(Ord's hyroiditis)、グレーブス病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス運動失調、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、汎発性脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、家族性自律神経失調症、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経筋緊張症、強皮症、外陰部痛、又はそれらの組合せからなる群から選択される自己免疫疾患の治療、予防又は改善のために使用され得る。
【0060】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、酸、代謝物若しくはプロドラッグ、又はその医薬組成物は、好ましくは、以下の血液悪性腫瘍:骨髄腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、慢性好中球性白血病、急性未分化白血病、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞急性リンパ芽球性白血病、三血球系脊髄形成異常を伴う急性骨髄芽球性白血病、混合系統白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄性肉腫、又はそれらの組合せの治療、予防又は改善のために使用され得る。
【0061】
本発明は、より好ましくは、消化管間質腫瘍、特にKIT変異に関連する消化管間質腫瘍、より詳しくは、KIT変異によって引き起こされるイマチニブ及び/又はスニチニブに耐性のある消化管間質腫瘍を治療、予防又は改善するのに有用である。
【0062】
化合物の調製
式(I)の化合物を、当業者に既知の標準的な合成技術を使用して、又は当該技術分野で既知の方法を本明細書に記載される方法と組み合わせて使用して合成することができる。また、本明細書に提示される溶媒、温度、及び他の反応条件は、当業者に応じて変化し得る。更なるガイドとして、以下の合成方法も利用することができる。
【0063】
反応を、本明細書に記載の化合物を提供するために順番通りに用いることができ、又はそれらを使用して、本明細書に記載の及び/又は当該技術分野で既知の方法によってその後結合される断片を合成することができる。
【0064】
或る特定の実施形態では、本明細書に記載されるチロシンキナーゼ阻害剤化合物の作製方法及び使用方法が本明細書で提供される。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、以下の合成スキームを使用して合成することができる。適切な代替の出発材料を使用することにより、以下に記載されるのと類似の方法論を使用して化合物を合成することができる。
【0065】
本明細書に記載される化合物の合成に使用される出発材料は、合成されても又は商業的供給源から入手されてもよい。本明細書に記載される化合物及び種々の置換基を有する他の関連化合物は、当業者に知られる技術及び材料を使用して合成することができる。本明細書に開示される化合物の通常の調製方法は、当該分野で既知の反応から導き出すことができ、その反応は、本明細書に示される分子に様々な部分を導入するために当業者によって認識されるであろう適切な試薬及び条件を使用することによって変更され得る。
【0066】
所望であれば、限定されるものではないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を含む慣例的な技術を使用して反応生成物を単離及び精製することができる。このような生成物は、物理定数及びスペクトルデータを含む慣例的な手段を使用して特性決定され得る。
【0067】
式(I)の化合物の調製のための合成アプローチの非限定的な例は、以下の合成経路に示されている。
【実施例】
【0068】
実施例1:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化13】
4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニルアミン(A2):丸底フラスコに4-ヒドロキシフェニルアミン(2.0g)、続いてジメチルスルホキシド(30ml)を加え、次いで氷浴下、水素化ナトリウム(807mg)を滴加した。反応系を室温で30分間撹拌した。次に、4-クロロ-6,7-ジメトキシキノリン(4.1g)を加え、反応系を90℃で一晩反応させた。反応の完了後、この系に水を加えて濾過し、固形物を水、そして少量のメタノールによる洗浄に供した。得られた褐色の固体を次の工程で直接使用した。
【0069】
N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド(1):丸底フラスコに4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニルアミン(1g)を加え、続いてN,N-ジメチルホルムアミド(10ml)、HATU(1.92g)、4-メチル-3-トリフルオロメチルフェニル酢酸(1.10g)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.87g)を加えた。反応系を室温で一晩撹拌した。反応の完了後、この系に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウム上での乾燥に供した。有機相を濾過し、溶媒を濾液から減圧下で除去し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物1を得た。LC/MS:M+H 497.1。
【0070】
実施例2:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)-アセトアミド
【化14】
実施例2の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:517.11。
【0071】
実施例3:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-フェニルアセトアミド
【化15】
実施例3の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:415.16。
【0072】
実施例4:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(ピペリジン-1-イル)プロパンアミド
【化16】
実施例4の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:436.22。
【0073】
実施例5:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-フルオロフェニル)アセトアミド
【化17】
実施例5の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:467.11。
【0074】
実施例6:N-(2-クロロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化18】
実施例6の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:517.11。
【0075】
実施例7:N-(2-クロロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化19】
実施例7の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:517.11。
【0076】
実施例8:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化20】
実施例8の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:483.15。
【0077】
実施例9:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化21】
実施例9の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:483.15。
【0078】
実施例10:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3,4-ジメトキシフェニル)アセトアミド
【化22】
実施例10の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:475.18。
【0079】
実施例11:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3,4-ジメチルフェニル)アセトアミド
【化23】
実施例11の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:443.19。
【0080】
実施例12:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)アセトアミド
【化24】
実施例12の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:451.14。
【0081】
実施例13:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化25】
実施例13の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:501.14。
【0082】
実施例14:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(2,6-ジフルオロフェニル)アセトアミド
【化26】
実施例14の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:451.14。
【0083】
実施例15:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)アセトアミド
【化27】
実施例15の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:451.14。
【0084】
実施例16:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミド
【化28】
実施例16の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:447.17。
【0085】
実施例17:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3,4-ジクロロフェニル)アセトアミド
【化29】
実施例17の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:483.08。
【0086】
実施例18:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)アセトアミド
【化30】
実施例18の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:459.15。
【0087】
実施例19:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(ナフト-2-イル)アセトアミド
【化31】
実施例19の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:465.18。
【0088】
実施例20:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3-フルオロフェニル)アセトアミド
【化32】
実施例20の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:433.15。
【0089】
実施例21:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセトアミド
【化33】
実施例21の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:437.21。
【0090】
実施例22:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパンアミド
【化34】
実施例22の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:451.23。
【0091】
実施例23:N-(2-クロロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化35】
実施例23の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:551.07。
【0092】
実施例24:N-(2-フルオロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化36】
実施例24の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:535.10。
【0093】
実施例25:N-(3-フルオロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化37】
実施例25の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:535.10。
【0094】
実施例26:N-(2-メチル-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化38】
実施例26の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:531.12。
【0095】
実施例27:N-(3-メチル-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化39】
実施例27の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:531.12。
【0096】
実施例28:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-モルホリノプロピル)ウレア
【化40】
フェニル(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)カルバメート(G1):4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニルアミン(1g)をジクロロメタン(30ml)に溶解し、続いてピリジン(0.4g)を加え、氷浴下、クロロギ酸フェニル(0.8g)を滴加した。撹拌を3時間続けた。反応の完了後、反応系に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過に供した。ジクロロメタンを減圧下で除去し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物G1を得た。MS:(M+1)417.14。
【0097】
1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-モルホリノプロピル)ウレア(42):丸底フラスコにフェニル(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)カルバメート(50mg)、N-(3-アミノプロピル)モルホリン(26mg)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(23mg)及びテトラヒドロフラン(3ml)を加えた。反応混合物を80℃で一晩反応させた。反応の完了後、反応系を濃縮し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物28を得た。MS:(M+1)467.22。
【0098】
実施例29:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピル)ウレア
【化41】
実施例29の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:480.26。
【0099】
実施例30:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-フェニルプロピル)ウレア
【化42】
実施例30の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:458.20。
【0100】
実施例31:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(3-フルオロフェニル)プロピル)ウレア
【化43】
実施例31の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:476.19。
【0101】
実施例32:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(4-フルオロフェニル)プロピル)ウレア
【化44】
実施例32の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:476.19。
【0102】
実施例33:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)プロピル)ウレア
【化45】
実施例33の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:526.19。
【0103】
実施例34:(1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(3-(メチル)フェニル)プロピル)ウレア
【化46】
実施例34の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:472.22。
【0104】
実施例35:1-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)プロピル)ウレア
【化47】
実施例35の化合物の合成を、実施例28のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:526.19。
【0105】
実施例36:N-(3-トリフルオロメチル-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化48】
実施例36の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:585.10。
【0106】
実施例37:N-(3-メトキシ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化49】
実施例37の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:547.12。
【0107】
実施例38:N-(3-クロロ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化50】
実施例38の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:551.08。
【0108】
実施例39:N-(3-シアノ-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化51】
実施例39の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:542.11。
【0109】
実施例40:N-(4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化52】
実施例40の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:483.15。
【0110】
比較例1:N-(6-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2-フェニルアセトアミド
【化53】
6,7-ジメトキシ-4-((5-ニトロピリジン-2-イル)オキシ)キノリン(D2):丸底フラスコに4-ヒドロキシ-6,7-ジメトキシキノリン(0.5g)を加え、続いてアセトニトリル(10ml)、次いで炭酸セシウム(0.87g)を加えた。この混合物を室温下で5分間撹拌した。次いで、2-クロロ-5-ニトロピリジン(0.42g)を加え、室温で一晩撹拌を行った。反応の完了後、濾過を行い、濾液を濃縮し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物D2を得た。
【0111】
6-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-アミン(D3):丸底フラスコに6,7-ジメトキシ-4-((5-ニトロピリジン-2-イル)オキシ)キノリン(0.42g)を加え、続いてメタノール(10ml)、パラジウム/炭素(0.11g)を加えた。水素雰囲気下で一晩反応を起こさせた。反応の完了後、濾過を行い、濾液を濃縮し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物D3を得た。LC/MS:M+H 298.11。
【0112】
N-(6-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2-フェニルアセトアミド(比較例化合物1):丸底フラスコに6-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-アミン(50mg)を加え、続いてN,N-ジメチルホルムアミド(2ml)、HATU(96mg)、フェニル酢酸(34mg)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(66mg)を加えた。反応系を室温で一晩撹拌した。反応の完了後、この系に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウム上での乾燥に供した。有機相を濾過し、溶媒を濾液から減圧下で除去し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、比較例化合物1を得た。LC/MS:M+H 416.16。
【0113】
比較例2:N-(5-クロロ-6-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-2-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド
【化54】
比較例2の化合物の合成を、比較例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:518.10。
【0114】
比較例3:N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ベンズアミド
【化55】
4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)安息香酸メチル(E2):丸底フラスコに4-クロロ-6,7-ジメトキシキノリン(1.0g)及び4-ヒドロキシ安息香酸メチル(0.68g)を加え、該混合物を、145℃で一晩撹拌した。反応の完了後、この混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物E2を得た。
【0115】
4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)安息香酸(E3):丸底フラスコに4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)安息香酸メチル(0.5g)、メタノール/テトラヒドロフラン(5:1、10ml)、及び水酸化リチウム(0.18g)を加えた。室温で一晩反応を起こさせた。反応の完了後、濃縮を行い、濃塩酸でpHを約5に調整した。濾過を行い、フィルターケーキを水で洗浄して化合物E3を得た。LC/MS:M+H 326.10。
【0116】
N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)ベンズアミド(比較例化合物3):丸底フラスコに4-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)安息香酸(20mg)を加え、続いてN,N-ジメチルホルムアミド(2ml)、3-トリフルオロメチルベンジルアミン(13mg)、EDCI(17mg)、HOBT(12mg)及びトリエチルアミン(12mg)を加えた。反応系を室温で一晩撹拌した。反応の完了後、この系に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウム上での乾燥に供した。有機相を濾過し、溶媒を減圧下で濾液から除去した。残留物を加圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、比較例化合物3を得た。LC/MS:M+H 483.15。
【0117】
比較例4:N-(4-((6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)オキシ)フェニル)-2-(3-メトキシフェニル)アセトアミド
【化56】
比較例4の化合物の合成を、実施例1のものと同様の手順を使用することによって完了した。MS(ESI)m/z(M+1)+:446.17。
【0118】
実施例41:癌細胞の増殖に対する効果
本明細書で提供される化合物を、癌細胞の成長に対するそれらの効果を試験することにより、癌細胞の増殖に対するそれらの阻害効果について更に評価した。本実施例では、以下の細胞を使用した:初代マウスB細胞BaF3(ATCCから購入)、ヒト消化管間質腫瘍細胞株のGIST-T1細胞(野生型KIT遺伝子を発現)(Cosmo Bio Co., Ltd.(日本)から購入)。本発明者らの研究室は、更に以下を構築して使用した:マウスTel-Kit-BaF3(KIT野生型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/T670I-BaF3(KIT T670I変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V559A-BaF3(KIT V559A変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V559D-BaF3(KIT V559D変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V559G-BaF3(KIT V559G変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V560D-BaF3(KIT V560D変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/L576P-BaF3(KIT L576P変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V654A-BaF3(KIT V654A変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/V654A/V559D-BaF3(KIT V654A V559D変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/T670E-BaF3(KIT T670E変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/T670I/V559D-BaF3(KIT T670I V559D変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/S709F-BaF3(KIT S709F変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/D816E-BaF3(KIT D816E変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/D816H-BaF3(KIT D816H変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/D820E-BaF3(KIT D820E変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/D820G-BaF3(KIT D820G変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/D820Y-BaF3(KIT D820Y変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/N822K-BaF3(KIT N822K変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/Y823D-BaF3(KIT Y823D変異型キナーゼを安定して発現)、マウスTel-Kit/A829P-BaF3(KIT A829P変異型キナーゼを安定して発現)、ヒト消化管間質腫瘍細胞株のGIST-T1-T670I細胞(KIT-T670I変異遺伝子を発現)。上記の細胞株を、PCRを介してヒトKITの配列及びKITの様々な変異型キナーゼ領域をそれぞれ増幅すること、N末端TELフラグメント及び/又はNPMフラグメント及び/又はTPRフラグメント(Clontechから購入)を有するMSCV-Puroベクターにフラグメントをそれぞれ挿入すること、レトロウイルスを用いてマウスBaF3細胞をベクターでトランスフェクトし、安定的にトランスフェクトされた細胞を取得すること、成長因子IL-3を除去すること、それによって最終的に移入されたタンパク質KIT又はKITの様々な変異型に依存する細胞株を取得することにより構築した。GIST-T1-T670I(C-KIT-T670I変異遺伝子を発現)細胞株は、本発明者らの研究室によって、CRISPR Design Tool(ウェブサイト:crispr.mit.edu、Zhang Feng Lab)によりKIT遺伝子のT670周辺の領域を標的とするsgRNAを設計すること、それをpSpCas9(BB)-2A-Puroベクターにクローニングすること、得られたベクター及びT670に近いT670I部位変異を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを用いて細胞を同時トランスフェクトすること、得られたものを抗生物質スクリーニングに供し、続いて希釈し、96ウェルプレートで単細胞培養すること、サンガーシーケンシングによる配列検出により細胞の部位T670を検証することにより構築した。
【0119】
本実施例では、上記の細胞に、種々の濃度(0.000508μM、0.00152μM、0.00457μM、0.0137μM、0.0411μM、0.123μM、0.370μM、1.11μM、3.33μM、10μM)の本発明の化合物、従来技術化合物としてのイマチニブ(中国のMedChem Express)及びスニチニブ(中国のMedChem Express)、並びに比較例化合物1~4を添加し、72時間インキュベートした。インキュベーション後の細胞を、CCK-8(中国上海のMedChem Expressから購入)細胞生存率アッセイキット(CCK-8は、生細胞内のデヒドロゲナーゼによって、水溶性の高い黄色のホルマザン生成物に還元され得て、得られるホルマザンの量は生細胞の数に比例する)を使用して検出し、マイクロプレートリーダーで生細胞数を定量し、化合物及び対照化合物のGI50を計算した(結果を表2及び表3に示す)。
【0120】
表2の実験結果は、本発明の化合物が、野生型KIT及び変異型KIT-T670Iの両方に対して或る特定の阻害効果を示すことを示した。比較例化合物1及び2に関して、それらの構造は、本発明の化合物と類似しているが、化合物骨格の中央のフェニル環がピリジン環で置換されているという点で異なり、試験の後、比較例化合物1及び2は、野生型KIT及び変異型KIT-T670Iに対して有意な阻害効果を示さないことが分かった。化合物の骨格中のアミノ及びカルボニルの位置が変更されると、例えば、比較例化合物3では、KIT及びKIT-T670Iに対する活性は実質的に消失した。本発明の化合物のキノリン骨格の代わりにキナゾリン骨格を含む比較例化合物4は、或る特定の阻害活性を示したが、cKIT及びcKIT-T670Iに対しては本発明の化合物よりも低く、またBaF3に対してより弱い選択性を示した。対照的に、本発明の化合物は、親BaF3細胞と比較して、野生型KIT及び変異型KIT-T670Iに対して有意な選択的阻害を示し、本発明の化合物が標的cKIT及びT670I変異型に対して強い阻害効果を有することが示された。
【0121】
表3は、化合物1及び化合物2が、イマチニブ耐性及び/又はスニチニブ耐性を示すKIT変異細胞に対して強い阻害効果を示したことを示し、本発明の化合物が、イマチニブ及び/又はスニチニブに耐性のKIT変異によって引き起こされる疾患の治療に有用であることが示された。GIST-T1(消化管間質腫瘍細胞株)及びGIST-T1-T670I細胞株(本発明者らの研究室で構築され、イマチニブに対する耐性を引き起こす変異を有する)に対する試験によると、本発明の化合物は、イマチニブに感受性のある消化管間質腫瘍細胞に対する強力な阻害効果だけでなく、イマチニブに耐性のあるGIST-T1-T670Iに対する強力な阻害効果も有することが分かった。本発明の化合物が、KIT変異を有する消化管間質腫瘍の治療に有用となり得ることが実証された。
【0122】
【0123】
【0124】
実施例42:動物実験
本実施例では化合物1及び化合物2をそれぞれ、TEL-cKIT/T670I-BaF3、TEL-cKIT/Y823D-BaF3、TEL-cKIT/D820G-BaF3、及びGIST-T1-T670Iのマウスモデルで試験した。
【0125】
実験プロトコルは以下の通りであった。
【0126】
(1)4週齢~6週齢のBal b/c雌性マウスをBeijing Weitong Lihua Laboratory Animal Co., Ltd.から購入し、マウスをSPF実験室で飼育した。飲料水及び敷き藁(padding)をオートクレーブ滅菌した。マウスに対する全ての操作を無菌条件下で行った。
【0127】
(2)0日目に、約5×106個のTEL-cKIT/T670I-BaF3細胞、TEL-cKIT/Y823D-BaF3細胞、TEL-cKIT/D820G-BaF3細胞又はGIST-T1-T670I細胞をそれぞれ、全てのマウスの左背部に皮下注射した。
【0128】
(3)6日目から、TEL-cKIT/T670I-BaF3マウスモデルでは、対応するマウスに、ビヒクルとしてメチルセルロース(HKI)(5匹のマウス)、10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg、100mg/kgマウス体重の投与量の化合物1及び化合物2(各群に5匹のマウス)、並びに40mg/kgマウス体重の投与量のスニチニブ(中国のMedChemExpressから購入)(5匹のマウス)を毎日経口投与した。6日目から、TEL-cKIT/Y823D-BaF3及びTEL-cKIT/D820G-BaF3マウスモデルでは、対応するマウスに、ビヒクルとしてメチルセルロース(HKI)(5匹のマウス)、40mg/kg、80mg/kgマウス体重の投与量の化合物1及び化合物2(各群に5匹のマウス)、並びに40mg/kgマウス体重の投与量のスニチニブ(中国のMedChemExpressから購入)(5匹のマウス)を毎日経口投与した。15日目から、GIST-T1-T670Iマウスモデルでは、対応するマウスに、ビヒクルとしてメチルセルロース(HKI)(5匹のマウス)、20mg/kg、40mg/kg、80mg/kgマウス体重の投与量の化合物1及び化合物2(各群に5匹のマウス)、並びに40mg/kgマウス体重の投与量のスニチニブ(5匹のマウス)を毎日経口投与した。
【0129】
(4)それぞれ、6日目から(TEL-cKIT/T670I-BaF3、TEL-cKIT/Y823D-BaF3、TEL-cKIT/D820G-BaF3のマウスモデル)及び15日目から(GIST-T1-T670Iマウスモデル)、皮下腫瘍の長さ/幅を毎日ノギスで測定し、マウスの体重を毎日記録して、マウスの体重及び腫瘍サイズに対する化合物1及び化合物2の効果をそれぞれ判定した。
【0130】
(5)TEL-cKIT/T670I-BaF3マウスモデルの場合は投与後の11日目、TEL-cKIT/Y823D-BaF3及びTEL-cKIT/D820G-BaF3のマウスモデルの場合は投与後の9日目、またGIST-T1-T670Iマウスモデルの場合は投与後の28日目にマウスを屠殺した。皮下腫瘍を取り出し、腫瘍の重さを量って比較した。
【0131】
(6)皮下腫瘍の成長傾向を計算し、腫瘍サイズを長さ×幅×幅/2mm3に従って計算した。
【0132】
実験結果を
図1a~
図1c、
図2a~
図2c、
図3a~
図3c、及び
図4a~
図4cに示した。TEL-cKIT/T670I-BaF3、TEL-cKIT/Y823D-BaF3、TEL-cKIT/D820G-BaF3及びGIST-T1-T670Iのマウス腫瘍モデルにおいて、化合物1及び化合物2は、40mg/kgの投与量でマウスの腫瘍に対して優れた阻害効果を示し、化合物1及び化合物2は、投与日数が増加するにつれて、マウスの腫瘍に対してより有意な阻害効果を示し、特に、化合物2を40mg/kgで投与した場合、腫瘍阻害率は全て80%以上であった。化合物1及び化合物2は、マウスの体重に著しい影響を与えることなく、マウスにおいて腫瘍の成長を効果的に阻害することができ、化合物1及び化合物2が動物への投与に適用可能であり得ることが示唆される。さらに、TEL-cKIT/Y823D-BaF3及びTEL-cKIT/D820G-BaF3のモデルでの結果から、本発明の化合物1及び化合物2が、スニチニブに耐性のあるKIT変異によって引き起こされる疾患に対しても潜在的な治療効果を有することも確認された。したがって、化合物1及び化合物2は、KIT変異と関連する消化管間質腫瘍を治療するために使用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、選択的KITキナーゼ阻害剤を提供し、これは、野生型及び/又は変異型KITキナーゼの活性を阻害するのに有用となり得て、また野生型KIT及び/又は変異型KITのキナーゼ活性によって調節されるか、そうでなければ影響を受ける、又は野生型KIT及び/又は変異型KITのキナーゼ活性が関係している疾患、障害又は病態の治療、予防又は改善に有用となり得る。したがって、本発明の化合物は、対応する薬剤に調製することができ、産業上の利用可能性を有する。