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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ヘルメットの遮熱構造
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/28 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
A42B3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022201280
(22)【出願日】2022-12-16
【審査請求日】2022-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和4年12月7日に、ものづくり企業 展示・商談会2022にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512043360
【氏名又は名称】日本遮熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】野口 和恵
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0095535(KR,A)
【文献】特開平05-321011(JP,A)
【文献】特開2015-063789(JP,A)
【文献】実開昭55-087328(JP,U)
【文献】実開平03-053520(JP,U)
【文献】特開2001-303353(JP,A)
【文献】実開昭52-085611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット帽体と、このヘルメット帽体の内部に設けられるインナーキャップとを有するヘルメットに構築されるヘルメットの遮熱構造であって、
後方の上部形成された第一排気口及び後方かつ前記第一排気口よりも下側に形成された第二排気口を有する前記ヘルメット帽体と、
複数の貫通孔が形成されたインナーキャップ本体を有する前記インナーキャップと、
前記ヘルメット帽体と前記インナーキャップとの間に設けられるアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材と、を備え、
前記ヘルメット帽体の内側部と前記インナーキャップの周縁部との間に複数の吸気口が形成され、
前記インナーキャップ本体の外側に、前記インナーキャップ本体から突出して形成された突条部を有し、前記突条部は、2つの前側突条部と、前記前側突条部に連なって形成された1つの後側突条部とを有し、前記前側突条部と前記後側突条部が前記ヘルメット帽体に当接されることで、前記インナーキャップ本体と前記ヘルメット帽体との間に、一方の前記前側突条部と他方の前記前側突条部に囲まれる中央通気帯、前記一方の前側突条部と前記後側突条部に囲まれる一方側側方通気帯、前記他方の前側突条部と前記後側突条部に囲まれる他方側側方通気帯がそれぞれ形成され、
前記吸気口から吸気される前記ヘルメット帽体の外部の空気及び複数の前記貫通孔から吸気される前記インナーキャップの内側の空気のうち、前記中央通気帯を流れる空気は前記第一排気口から排出され、前記一方側側方通気帯及び前記他方側側方通気帯を流れる空気は前記第二排気口から排出される、
ことを特徴とするヘルメットの遮熱構造。
【請求項2】
前記前側突条部及び前記後側突条部は連なって構成され、
前記第二排気口は前記吸気口よりも上方に形成され、前記第二排気口が右側第二排気口と左側第二排気口とからなり、前記一方側側方通気帯を流れる空気は前記右側第二排気口から、前記他方側側方通気帯を流れる空気は前記左側第二排気口から、それぞれ排出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘルメットの遮熱構造。
【請求項3】
複数の前記貫通孔が、後方に向けて傾斜して形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルメットの遮熱構造。
【請求項4】
前記インナーキャップの周縁部の前方と側方に切込部が形成され、
前記吸気口が、前記切込部と前記ヘルメット帽体の内側部とによって構成される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルメットの遮熱構造。
【請求項5】
前記第一排気口及び前記第二排気口の開口部、前記吸気口の開口部を封鎖するキャップが取り付けられた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルメットの遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット帽体を通して頭部に照射される輻射熱を阻止し、更にヘルメット帽体内を通気する事により、夏場でも熱中症になりにくく、頭部が蒸れにくいヘルメットの遮熱構造を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面に遮熱塗装されたヘルメット、ヘルメット帽体の材料に反射性能を持たせた素材(例えば、ガラスビーズや酸化チタン等)を混錬したもの、内部に遮熱材が設けられた帽子等が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6840417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面に遮熱塗装をしたヘルメットが使用されている。最も熱量の大きい太陽からの輻射熱を阻止するには、ヘルメット帽体の外側に遮熱塗装をする事は効果的である。しかしながら、遮熱塗装は反射性能が十分でなく、年数が経つと性能が大幅に低下するというデメリットがある。又、ヘルメット帽体の表面に塗装されている為、傷や摩耗による性能の低下も問題である。
【0005】
ヘルメット帽体の材料に、反射性能を持たせた素材、例えばガラスビーズや酸化チタン等を混錬しているものがある。ヘルメット帽体の樹脂に反射材を練り込んだものは、遮熱塗装より効果的と言われている。しかし、一般のヘルメットの帽体内温度が75℃位の時遮熱塗装は66℃位でその差は9℃位である。表面温度も高く、温度低下もそれほど大きくない。従って、ヘルメット帽体の材料に、反射性能を持たせた素材、例えばガラスビーズや酸化チタン等を混錬しているものも暑さを回避するには充分とは言えない。
【0006】
内部に直接遮熱材が貼られたヘルメット帽体もある。直接貼る方法は、遮熱材の低放射性能を利用したもので、貼ると帽体内の表面温度が大幅に低下する。しかしながら、ヘルメットは太陽ともう一つ頭部という二つの熱源がある。帽体内の表面温度が低下すると、今度は頭部から帽体に向かって輻射熱が放射、この熱が遮熱材に反射され結果的には使用者の頭に戻ってくる。従って、使用者自身の熱で自身を暑くし、頭部が蒸れてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、ヘルメット帽体の内部に侵入する熱を阻止し、夏場でも熱中症になりにくく、かつ頭部が蒸れにくいヘルメットの遮熱構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、ヘルメット帽体と、このヘルメット帽体の内部に設けられるインナーキャップとを有するヘルメットに構築される。そして、後方に排気口が形成されたヘルメット帽体と、複数の貫通孔が形成されたインナーキャップ本体を有するインナーキャップと、ヘルメット帽体とインナーキャップとの間に設けられるアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材と、を備え、ヘルメット帽体の内側部とインナーキャップの周縁部との間に複数の吸気口が形成され、かつインナーキャップ本体とヘルメット帽体との間に通気帯が形成され、吸気口から吸気されたヘルメット帽体の外部の空気及び複数の貫通孔から吸気されたインナーキャップの内側の空気が、通気帯を介して、排気口から排出されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、インナーキャップ本体の外側に、インナーキャップ本体から突出して形成された突条部を有し、この突条部がヘルメット帽体に当接されることで、インナーキャップ本体とヘルメット帽体との間に、複数の通気帯が形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、複数の貫通孔が、後方に向けて傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、インナーキャップの周縁部の前方と側方に切込部が形成され、吸気口が切込部とヘルメット帽体の内側部とによって構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、排気口の開口部及び吸気口の開口部を封鎖するキャップが取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、ヘルメット帽体とインナーキャップとの間にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材が設けられ、インナーキャップ本体とヘルメット帽体との間に通気帯が形成され、ヘルメット帽体の内側部とインナーキャップの周縁部との間に形成された複数の吸気口から吸気された外部の空気及び複数の貫通孔から吸気されたインナーキャップの内側の空気が通気帯を介して、排気口から排出される。その為、ヘルメット帽体の内部に侵入する熱を阻止し、夏場でもヘルメット帽体の内部を涼しく保つことが出来る。また、通気帯を流れる空気が排気口から排出されることで、通気帯の内部が負圧となり、この負圧により、貫通孔を介して、インナーキャップ内の空気や湿気を取り除くことができ、使用者の頭部が蒸れにくいかつ頭部が涼しくなり、熱中症になりにくくなる。
【0014】
また、本発明に係るヘルメットの遮熱構造では、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材が、ヘルメット帽体の内部に設けられている為、電気関係仕様でも問題なく使用可能である。
【0015】
本発明のヘルメットの遮熱構造は、ヘルメットは熱いという常識を完全に覆したもので、熱中症対策に抜群の効果が期待出来る。そして、使用者の移動速度は早まる程、頭部は益々涼しく、ムレがなくなる。
【0016】
また、本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、排気口の開口部及び吸気口の開口部を封鎖するキャップを取り付けることも出来る。キャップの着脱によって吸気口や排気口の開閉をすることが出来、頭部の温度調節が出来る。従って、ヘルメットの使用者は、年間を通して、快適な状態を維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造を有するヘルメットの外観を示す図である。(a)は正面の斜視図であり、(b)は背面図である。
図2】本発明の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造を有するヘルメットを構成するインナーキャップを示す図である。(a)は正面図であり、(b)は背面斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造を構成するインナーキャップの底面図である。
図4】本発明の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造の作用を説明する為の図である。
図6】本発明のその他の実施形態に係るヘルメットの遮熱構造をフルフェイスヘルメットに適用するためのインナーキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
熊谷市で国内の最高気温41.4℃を記録、東京でも夏日、真夏日、猛暑日の日数が年間200日を超す現状であるが、今後は更に気温が上昇する超高温時代はもう直ぐという感じがする。屋外で作業する人の多くは、この炎天下の下でヘルメットをかぶり作業をしている。ヘルメットは、安全対策が目的である事は理解出来るが、炎天下ではヘルメットが屋根替わりになることをしっかり認識しておく必要がある。たった一層のプラスチック材で暑さ対策や熱中症対策をするのは、余りにも厳しすぎるように思える。
【0020】
ヘルメットに加わる熱で最も大きいのは太陽からの輻射熱で、これを阻止する事が最重要課題である。現在、種々のヘルメットメーカーで、輻射熱の阻止対策をしている。
ヘルメット帽体の外側に遮熱塗装を施したり、帽体の材料に反射性能を持たせた素材を混錬したりしている。確かに、ヘルメットの内側温度は低下するが今後の温度上昇を考えると十分とは言えない。更に、帽体から内部に放射される二次輻射熱が頭部に照射、更に半球体の上部に滞留する熱気で、暑さやムレを感じている人が非常に多く作業効率の低下は否めない事実である。
【0021】
本発明に係るヘルメットの遮熱構造は、ヘルメット帽体と、このヘルメット帽体の内部に設けられるインナーキャップとを有するヘルメットに構築される。このヘルメットの遮熱構造は、後方に排気口が形成されたヘルメット帽体と、複数の貫通孔が形成されたインナーキャップ本体を有するインナーキャップと、ヘルメット帽体とインナーキャップとの間に設けられるアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材と、を備えている。そして、ヘルメット帽体の内側部とインナーキャップの周縁部との間に複数の吸気口が形成され、かつインナーキャップ本体とヘルメット帽体との間に通気帯が形成され、吸気口から吸気されたヘルメット帽体の外部の空気及び複数の貫通孔から吸気されたインナーキャップの内側の空気が、通気帯を介して、排気口から排出される。
【0022】
以下、本実施形態に係るヘルメットの遮熱構造及び遮熱ヘルメットを、図1から図6を参照し説明する。
【0023】
本実施形態に係るヘルメットの遮熱構造10は、図1に示したヘルメット帽体1の内部に、図2に示したインナーキャップ2を設けた二重構造のヘルメットに構築される。インナーキャップ2は、ヘルメット帽体1に取り付けられる。このインナーキャップ2は、脱着可能に設けることも出来る。
【0024】
ヘルメット帽体1は、ツバ部1Aを有するプラスチック製のヘルメットであり、図1(b)に示すように、後方に外側と内側を貫通する排気口3が形成されている。排気口3は、上側排気口3Aと、左側排気口3Bと、右側排気口3Cとから構成されている。上側排気口3Aは左右方向Yに向けて2つ形成され、左側排気口3B及び右側排気口3Cは上下方向Zに向けてそれぞれ2つ形成されている。
ヘルメット帽体1の内側には、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材4(以下、高反射率素材4とも記す。)が設けられている。この高反射率素材4は、ヘルメット帽体1の内側の全面に貼り付けられている。
【0025】
インナーキャップ2は、図2に示すように、ヘルメット帽体1の内側の形状に沿った形状を有するインナーキャップ本体5と、このインナーキャップ本体5の外側に形成された突条6とを備えている。インナーキャップ本体5には、外側と内側を貫通する貫通孔7が形成され、本実施形態では、図3に示すように、前後に2つ、真ん中に3つの計7つの貫通孔7が形成されている。この貫通孔7は、通気口としての役割を担い、図5に示すように、後方に向けて傾斜して形成されている。インナーキャップ本体5の周縁部には、ツバ部5Aが設けられ、このツバ部5Aには所定の間隔で切込部5Bが形成されている。この切込部5Bとヘルメット帽体1の内側部によって吸気口8が形成される。
【0026】
インナーキャップ2は、通気帯と頭部エリアの界壁でもあるが、頭部から放射される輻射熱の吸収材でもある。従って、断熱性が高く、輻射熱を吸収しやすい素材が好ましく、インナーキャップ2には、例えば、発砲スチロールや樹脂マット等を使用することが出来る。厚みは、約3~10mmで良く、強度を高める為や他の部材との干渉を防止する事もあるので均一な厚みで有る必要はない。但し、空気の流れる面は極力凹凸のない事が望ましい。
【0027】
突条6は、インナーキャップ本体5から外側に突出して形成され、前後方向Xの前方のツバ部5Aからインナーキャップ本体5の頂部より若干後ろ側(後方上部)まで形成された、2つの前側突条6Aと、後方上部から後方のツバ部5Aまで形成された後側突条6Bとから構成される。これらの突条6は、インナーキャップ本体5の形状に沿って形成され、これらの前側突条6Aと後側突条6Bとは、後方上部で連結されている(図2(b))。
【0028】
インナーキャップ2は、図4に示すように、ヘルメット帽体1の周縁部よりも約2cm上側に、インナーキャップ2のツバ部5Aが密着し、当接するように設けられる。
インナーキャップ2がヘルメット帽体1の内部に設けられると、突条6がヘルメット帽体1の内側部に当接される。突条6がヘルメット帽体1の内側部に当接されると、突条6は境界壁となり、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間に3つの通気帯が形成される。具体的には、ヘルメット帽体1の内側部、インナーキャップ本体5及び2つの前側突条6Aに囲まれた中央通気帯と、ヘルメット帽体1の内側部、インナーキャップ本体5、前側突条6A及び後側突条6Bで囲まれ、左側方に形成される左側方通気帯と、ヘルメット帽体1の内側部、インナーキャップ本体5、前側突条6A及び後側突条6Bで囲まれ、右側方に形成される右側方通気帯である。この状態において、排出口3Aが中央通気帯の排出口、排出口3Bが左側方通気帯の排出口、排出口3Cが右側方通気帯の排出口に、それぞれ対応する。
【0029】
インナーキャップ2は、ヘルメット帽体1の内部全体に外気を流す通気帯を形成する事を大きな目的として使用される。インナーキャップ2は、ヘルメット帽体1の内部とほぼ同じ形状であり、大きさは通気帯の厚み分だけ小さく作製されている。インナーキャップ本体5の下側の周縁部には、インナーキャップ本体5と直交する様にツバ部5Aが形成されており、このツバ部5Aの幅は、通気帯の厚みと同じである。又、インナーキャップ2の外側周囲表面に沿って、空気の流れを決める突条6が施工され、半球体のインナーキャップ2の外面に空気の層が形成出来る様に構成される。突条6の高さは、各通気帯の高さと同じとなるが、突条6の高さや断面形状は任意であり、適宜設計することが出来る。従って、このインナーキャップ2をヘルメット帽体の下側から押し込むと、ツバ部5A及び突条6がヘルメット帽体1の内側部に密着し、当接され、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2とから構成される二重構造の内部全体に隔離された通気帯が形成される。
【0030】
ヘルメット帽体1全体を極力均一に通気するには、通気帯の空気の流れをどの様にするかが重要である。本発明のヘルメットの遮熱構造10では、インナーキャップ2の中心付近、即ち頭部の上部一体を中央通気帯、側面を右側方通気帯及び左側方通気帯とし、3つの空間に分けた。これは、頭部の上部は円周方向に沿って空気は流れ、側部の様な垂直空間では通気帯の上部を流れるからである。なお、本実施形態では、通気帯が3つ形成された例を示したが、ヘルメットの用途に応じ、更に多くの空間に分割し、通気帯の数を多くしてもよい。
【0031】
又、本実施形態では、インナーキャップ本体5とヘルメット帽体1との間隔、即ち通気帯の間隔(通気帯の高さ)は5mmから20mmに設計されている。この通気帯の間隔は、ヘルメットの大きさや形状により、適宜変更しても問題はない。インナーキャップ2の下側には、本体と直行する様にしかも外側全周にわたり通気帯の厚み分のツバ部5Aが形成され、ツバ部5Aの切込部5Bは吸気口8として利用される。
【0032】
中央通気帯に吸気する為の吸気口8は、インナーキャップ2の前方のツバ部5Aに形成されている。吸気口8の大きさは、通気帯の空間の厚み(高さ)と同じとし、約5mmから20mm、幅は約5cmから8cmである。勿論、吸気口8は大きくても小さくても良いが、空間が大きい方が吸気量は増えるので好ましい。
【0033】
右側方通気帯及び左側方通気帯は、ヘルメット帽体1の側面を冷却する目的で形成される。各側方通気帯に吸気する為の吸気口8(切込部)は、インナーキャップ2のツバ部5Aに少なくても各々2カ所形成されている。右側方通気帯及び左側方通気帯は、頭部の側面から後頭部に至るまでの大きな空間を冷却し、前方から吹く風の勢いを余り利用できない事もあり少なくても2カ所としている。吸気口8の大きさは、インナーキャップ2のツバ5Aの幅であるから約5mmから20mm、長さは約3cmから5cmに設計されている。但し、これらの大きさに限定されるものではない。
【0034】
排気口3B,3Cは、中央通気帯の排気口3Aよりも下側で、ヘルメット帽体1の後部の左右両側に上下に設けると良い。又、排気口3B,3Cの大きさは、吸気口8よりも大きい方が好ましい。右側方通気帯及び左側方通気帯は、全体が頭部の側面で有り鉛直方向の通気帯である。従って、これらを流れる空気は通気帯の上部を流れる為、排気口3B,3Cも通気帯の上部に位置する事が好ましい。即ち、吸気口8と排気口3の上下方向Zの位置関係は、排気口3の方が吸気口8よりも上方にある事が好ましい。
【0035】
本発明のヘルメットの遮熱構造10における重要なポイントは、以下の7点である。
【0036】
第一は、太陽からの輻射熱阻止に最も効果的な高反射率素材4を使用することである。高反射率素材4は反射率98%以上のものもあり、高性能の遮熱構造を構築することが可能である。
【0037】
第二に、ヘルメット帽体1の内側にインナーキャップ2を設けることで二重構造とし、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間全周に空気が流れる通気帯(中央通気帯、右側方通気帯、左側方通気帯)を設けたことである。インナーキャップ2を設ける事により、ヘルメット帽体1にかかる二つの熱源である太陽側と頭部側を分離して考える事が出来る。
【0038】
第三に、インナーキャップ2の材質が熱の吸収体で出来ている為、インナーキャップ2は頭部から放射される輻射熱を吸収する役割がある。吸収された熱は、伝導熱や対流熱となって排出し易くなる。
【0039】
第四に、通気帯に空気を供給する吸気口8(切込部)は、インナーキャップ2のツバ部5Aに形成されている点である。即ち、ヘルメット帽体1を着用した使用者の顔に当たった風は、歩く速度が早ければ早いほど、風の速度が早ければ早いほど吸気口8に吸気されやすい特徴がある。又、吸気口8が前面だけでなく側面にも形成されている為、前方からだけではなく、あらゆる方向からの風を吸気しやすい構造である。
【0040】
第五に、各通気帯の排気口3が、ヘルメット帽体1の頂部より若干後ろ側に形成されている事である。上下方向Zにおける吸気口8の高さ位置と排気口3の高さ位置には、差があるので、無風状態でも通気し易い。更に排気口3の形成されている位置が高いので、各通気帯に熱だまりが出来ず、各通気帯に吸気された空気をヘルメット帽体1の外部(大気)にスムーズに排気出来る。
【0041】
第六に、インナーキャップ2の頂部には、使用者の頭部周辺の熱が通気帯を通して、ヘルメット帽体1の外部に排出出来る様に、複数の貫通孔7が形成されている。使用者の頭部からは常時熱や湿気が放出されるが、これらも貫通孔7を介して通気帯に吸気され、排気口3からヘルメット帽体1の外部へ排出される。
【0042】
第七に、使用者の頭部の熱気やムレを少なくするには、頭部に風を送り込むのではなく、掃除機の様に負圧によって吸気する事である。熱気やムレのある頭部に風を送り込んだ場合、毛髪と熱気が絡み合い乱流状態となり、貫通孔等を設けても自然に抜けない。それよりは、負圧によって吸引することで、頭部の熱気は簡単に除くことができ、ムレ感を無くす事が可能である。吸気口8からの空気(図5:矢印F1)が通気帯を流れ、排気口3から排出されると、インナーキャップ2に形成された貫通孔7が負圧となり、この負圧によって、頭部に溜まった熱や湿気が通気帯に吸引される(図5:矢印F2)。
【0043】
ヘルメットに、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を使用する事は効果的である事は解っているが、種々の問題があり新品の商品にはこれ迄使用されていない。即ち、使い方が難しい。例えば、ヘルメット帽体に、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(高反射率素材)を施工するには以下の3つの方法が考えられる。
【0044】
第一の方法として、ヘルメット帽体の外側に高反射率素材を施工し、輻射熱を外側で反射する方法である。反射性能をそのまま利用でき、ヘルメット帽体に侵入する熱が非常に少なくなるので頭部が蒸れにくくなり非常に効果的であると考えられる。しかしながら、高反射率素材は金属製のものが多く、太陽光の下ではピカピカ反射して人の目を傷める事になる。又、ピカピカ反射することを防止するには、輻射熱を良く透過する樹脂膜などを施工する方法もあるが、今後の温度上昇に対して、シワや退色等の問題があり、使用する事は難しい。高反射率素材は金属であるから、電気関係の現場では使用しにくいという問題もある。
【0045】
第二の方法として、ヘルメット帽体の内部に高反射率素材を施工した板材、例えば遮熱材を反射面が帽体側になる帽体と空間を開けて設置する事である。即ち、帽体から照射される二次輻射熱を反射する方法である。この方法は、この空間を密封すると空間内の熱が遮熱材に伝達され、結果的には反射率が低下する。又、この空間は半球体であるヘルメットの上部に熱気が滞留し、ムレや暑さの要因になりやすい。又、高反射率素材はヘルメット帽体からの二次輻射熱を反射することになるが、この空間にはヘルメット帽体からの伝導熱の影響も大きく、高温になりやすい。無風状態では、熱伝導率の良い高反射率素材に熱が伝達され、頭部側に伝達されるだけでなく、反射率も低下し遮熱効果も低下する。従って、この工法を選択した場合、大きな吸気口と排気口を設ける必要があり、ヘルメット帽体の強度にも影響する可能性がある。
【0046】
第三の方法として、ヘルメット帽体の内側に高反射率素材を施工する事である。この方法は、アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材の低放射性能をそのまま利用可能である。例えば、気温28℃の時、ヘルメット帽体の温度は70℃にもなるが、高反射率素材の表面温度は30℃程度と低温になる。この状態で、36.5℃の頭部を帽体に入れると、頭部から放射される輻射熱が、高反射率素材の表面で反射され、再び頭部に戻され熱が発生し、暑さだけでなくムレの発生要因になる。即ち、使用者の熱で熱さを感じる事になる。従って、この状態では使用することは不可能である。
【0047】
本発明のヘルメットの遮熱構造10は、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2の二重構造とする事により、前述した第三の方法でも大幅な温度低下を実現出来る事、ムレや暑さ対策が可能であることを実現した。
高反射率素材4の施工位置は、前述の通り種々考えられるが、本発明のヘルメットの遮熱構造10ではヘルメット帽体1の内側とし、低放射性能を利用する。低放射性能を利用することにより、頭部側に放射される輻射熱を最小限にすることが可能である。放射熱は、絶対温度の四乗に比例、温度が少しでも上昇すると放射量が急増し、遮熱性能を大幅に低下する。本発明では、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2の二重構造とする事により、高反射率素材4の放射側を通気帯とする事ができ、放射側を常時低温に維持する事が出来る。
【0048】
蒸れない遮熱ヘルメット20を作製するには、大きなポイントが三つある。なお、遮熱ヘルメット20は、ヘルメットの遮熱構造10を有するヘルメットである。
第一のポイントは、頭部に最も大きな熱量を与える輻射熱の阻止で、最も良い方法はアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を利用する事である。アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材を帽体の内側に使用すると、低放射性能をそのまま利用する事が出来る。
第二のポイントは、頭部から放射される輻射熱を吸収する事である。ヘルメットには、太陽からの輻射熱ともう一つ頭部から放射される二つの熱源がある。この内、頭部から発生する輻射熱は、伝導熱や対流熱に変え通気帯から排出する事が重要である。その為には、インナーキャップの素材に熱を吸収しやすいものを選ぶことが重要である。
第三のポイントは、ムレを無くすには、湿気や熱を負の圧力で引き出す事である。帽子もそうであるが、髪の毛の中に空気を入れても熱と湿気そして空気が混じりあいムレが拡散するだけで、小さな排出口からでは開口部の抵抗が大きく中々排出出来ない。それよりはむしろ、掃除機の様に湿気や熱を負圧で吸引する事が効果的である。
【0049】
蒸れない遮熱ヘルメット20にする為、インナーキャップ2にもう一つの大きな特徴がある。それは、インナーキャップ2に通気口としての役割を担う貫通孔7が設けられ、頭部周辺の熱を持った空気が各通気帯に吸引される構成となっている点である。
この目的は、頭部に滞留する空気は常時高温であり湿気も多く含んでいる。この貫通孔7があれば、ヘルメット帽体1の外側から内側に侵入し頭部に沿って上昇する空気が、これらの熱や湿気をスムーズに通気帯を介してヘルメット帽体1の外側(大気)に排出される。
【0050】
本発明のヘルメットの遮熱構造10では、インナーキャップ2を有し、二つの熱源が分離されているように思えるが、インナーキャップ2には貫通孔7が形成されており、その部分はヘルメット帽体1と頭部は解放状態である。即ち、ヘルメット帽体1の内部の高反射率素材4が低温になると、頭部から高反射率素材4に貫通孔7を通って輻射熱が放射され、再び頭部に戻ってくる。これを防止する為にも、インナーキャップ2の貫通孔7は、前後方向Yの後方に傾斜して形成し、対面するヘルメット帽体1の内側部と頭部が直線状に繋がらないようにしている。
【0051】
勿論、インナーキャップ2の貫通孔7は通気帯の流れ方向に傾斜していると、通気帯の空気の流れに対する抵抗が小さくなり、スムーズに排出出来る利点もある。又、抵抗が小さいと、インナーキャップ2の貫通孔7内は負圧となりやすく、頭部付近の熱や湿気が効率的に排出されることになる。
インナーキャップ2は薄くて問題ないので、厚みが薄い場合は貫通孔7を傾斜して形成することは難しいが、厚みが取れる場合はこの方法が好ましい。場合によっては、貫通孔7が形成される頂部付近だけインナーキャップ2の厚みを厚くする事も出来る。
【0052】
本発明のヘルメットの遮熱構造10では、貫通孔7の大きさは、直径約3mmから5mmで有るが、貫通孔7の形状は円形以外の多角形状でもよい。又貫通孔7の数は、ヘルメット帽体1の大きさにより決定されるが、インナーキャップ2の頂部付近に少なくても約5から10個あればよい。本実施形態のインナーキャップ2では、厚み3mmのインナーキャップ2の頂部中心付近に1個、その周囲30mmの位置に6個、直径5mmの貫通孔7を合計7個設けている。貫通孔7の数は任意であるが、余り多いと無風状態の時の圧力の問題で、前方の通気帯の空気の流れが悪くなる可能性もある。
【0053】
ヘルメットの内側にはヘルメット衝撃吸収ライナーが設けられることがある。ヘルメット衝撃吸収ライナーは種々あるが、本発明の通気帯と兼用しても問題はない。ただし、低放射性能を維持する為には、伝導熱を阻止する高反射率素材4との接触部を最小限にする必要がある。
【0054】
高反射率素材4は、アルミ箔でもアルミ蒸着品でも問題はない。但し、当然のことながら輻射熱に対する反射率が高いものが好ましい。本発明では、不織布にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材4を熱溶着した遮熱材を、不織布が帽体内側になる様に接着している。高反射率素材4はアルミの純度が重要で、一般的には純度が99%以上のものが使用される。本発明では、純度99.5%以上のものを使用している。又、高反射率素材4には、輻射熱に対する反射率が98%のものが基本的に使用されている。高反射率素材4は、アルミホイルを使用することがほとんどで、厚みは数ミクロンから10ミクロン程度のものが一般的である。勿論、反射率が高ければアルミホイルやアルミ蒸着品に限らず他の素材を使用することも出来る。又、高反射率素材4は、反射材の表面に流れる屋外の空気は酸やアルカリ成分が含まれている場合があるため、実際には、酸やアルカリに強く、電食にも効果的な高透過樹脂層が表面に処理されている。高透過樹脂層を表面に処理する事により、反射率は90~95%になるが、高反射率素材4の腐食の防止をする事が可能である。
【0055】
インナーキャップ2は、通気帯と頭部エリアの界壁でもあるが、頭部から放射される輻射熱の吸収材でもある。従って、断熱性が高く、輻射熱を吸収しやすい素材が好ましい。
厚みは、約3から10mmで良く、強度を高める為や他の部材との干渉を防止する事もあるので均一な厚みで有る必要はない。但し、空気の流れる面は極力凹凸のない事が望ましい。
【0056】
本発明では、吸気口8及び排気口3を封鎖するキャップが取り付けられたヘルメットの遮熱構造10をも提案する。冬場、ヘルメット帽体の内部を空気が通気すると頭部が冷えて寒さを感じる場合がある。インナーキャップ2全体が取り外せない場合は吸気口8及び排気口3を塞ぐ為に、キャップを使用する。キャップの材質は、弾力性のあるゴム系の素材が好ましく、このキャップは簡単に着脱可能なものを使用する。
【0057】
次に、本発明のヘルメットの遮熱構造10のメカニズムを詳しく説明する。
【0058】
ムレのない快適なヘルメットの遮熱構造10及び遮熱ヘルメット20を作製する為には、重要なポイントが三つある。
第一のポイントは、屋外からの最大の熱である輻射熱を阻止するには、高反射率素材4を使用する事である。第二のポイントは、ヘルメットには二つの熱源があり、これら二つの熱を完全に阻止する事が重要である。第三のポイントは、頭部の熱気やムレを無くす為に風を吹き込むのではなく、掃除機の様に頭部付近の熱気を吸引する。
【0059】
第一のポイントは太陽からの輻射熱で、これを阻止するには輻射熱を98%以上も阻止可能な高反射率素材を使用する事である。ただ、この高反射率素材を何処に設けるかが問題である。先ずは、輻射熱に対して高反射率の性能を利用しヘルメット帽体の外側に使用する場合を考える。高反射率素材の多くは金属製で、表面が鏡面になっている。太陽光が当たるとまるで鏡の様に反射し、周囲の人間の目を傷める原因となり使用する事はできない。高反射率素材の外側に、着色剤を混錬し透過性の良い樹脂膜を形成すると、表面に乱反射構造が期待でき、ピカピカを阻止可能である。しかし、今後の気温上昇下ではしわや退色等の問題で使用する事は難しい。次に、輻射熱の低反射性能を利用しヘルメット帽体の内側に施工する事である。内側に施工すれば、ピカピカのまま使用でき、高反射率素材の性能をそのまま利用する事が出来る。例えば、反射率98%高反射率素材であるなら、放射は僅か2%である。
【0060】
ところが、ここに大きな落とし穴がある。このヘルメットを頭部に被せた状態を想定する。ヘルメットには、もう一つの熱源である頭部からの輻射熱がある。ヘルメット帽体内の高反射率素材の表面温度が低下すると、熱は高温から低温に移動の原則に則り、今度は頭部からヘルメット帽体に向かって輻射熱が照射され、この輻射熱は高反射率素材の表面で反射され、再び頭部に戻る。結果として、この状態では逆効果と言える。ここが反射素材を使用する事の難しさでもある。
【0061】
本発明のヘルメットの遮熱構造10は、上記の問題を解決したものであり、ヘルメット帽体1と、その内側にヘルメット帽体1とほぼ同形状のインナーキャップ2を使用する二重構造である。
【0062】
インナーキャップ2は、ヘルメット帽体1より通気帯の厚み分だけ小さく作製されているが、形状はヘルメット帽体1とほぼ同じである。ヘルメット帽体1の周縁部の全周には、ヘルメット帽体1と直角方向に通気帯の厚み位のツバ5Aが設けられている。更に、インナーキャップ2の外側に、通気帯の厚みと同等の高さの突条6が、インナーキャップ2の外側部を3分割する様に形成されている。
インナーキャップ2は、ヘルメット帽体1の下側から押し込む様に入れると、インナーキャップ2全体がヘルメット帽体1の内部にスッポリ入り、ヘルメット帽体1とはツバ5Aの全周及び突条6が密着する。本発明では、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間に、一定の空気層の厚みを持った3つの通気帯が形成されている。
【0063】
第二のポイントは、二重構造にする事により、太陽からの熱のあるヘルメット帽体1側と体温からの熱である頭部側とを分離する事が出来、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間の全空間に通気帯を設けている。
本来、高反射率素材4の放射側が狭小空間であると、この空間の温度が上昇しやすい。即ち、放射量は絶対温度の四乗に比例するというステファンボルツマンの法則に則り、急激に温度上昇する事になる。その結果、放射量は急増し遮熱効果は大幅に低下する事になる。本発明では、各通気帯に常時空気を流す事により、高反射率素材4の放射側を絶えず冷却、遮熱効果の低下を防止している。
【0064】
本発明のヘルメットの遮熱構造10では、ヘルメット帽体1の正面から頭上に位置する中央通気帯、ヘルメット帽体1の両側面に位置する右側方通気帯及び左側方通気帯の3つの通気帯が形成されている。中央通気帯の吸気口8は、ヘルメット帽体1の内側で顔の前面のインナーキャップ2のツバ5Aに形成され、顔面に当たった空気が自然と上部に流れ前方の吸気口8から中央通気帯に空気が吸気される。従って、歩く速さが早まれば早まる程吸気口8から吸気される空気の量が増え、中央通気帯全体を冷却する事が出来る。
吸気口8から入った空気は頭部の上部を移動し、ヘルメット帽体1の頂部より僅か後方に設けられた排気口3から排出される。中央通気帯は、頭部を冷やす最も重要な部分で有るから、殆ど無風の状態でも空気が流れる事が好ましい。排気口3が、ヘルメット帽体1の下側にあると、中央通気帯に熱だまりが出来る事になりムレの要因となる。
【0065】
又、排気口3は、頭頂部の若干後方の上部に形成されている。これは、吸気量が少ない場合でも、頂部に熱だまりが出来ない事が目的である。若し、排気口3が低い位置に形成されていた場合、空気が静止した状態で頭部に熱溜まりが出来る事になる。
排気口3の形状は、通気帯に沿うよう設けられているので、中央通気帯は基本的に水平方向の開口である。尚、帽体の強度を優先し、排気口3の形状は丸、四角、長方形等でも形状に拘らない。但し、排気口3の開口面積は吸気口8より大きい方が好ましい。
【0066】
右側方通気帯及び左側方通気帯は、ヘルメット帽体1の側面を冷却する目的で形成されている。側方の吸気口8は、インナーキャップ2のツバ部5Aに少なくても各々2カ所設けるのが良い。右側方通気帯及び左側方通気帯は、顔の側面から後頭部に至るまでの大きな空間を冷却する事、前方から吹く風の勢いを余り利用できない事もあり、少なくても2カ所としている。
排気口3B,3Cは、中央通気帯の排気口3Aの下側で、後頭部中央から両側に上下方向Zに設けると良い。排気口3B,3Cの形状や大きさは、ヘルメットのサイズや目的に応じて決めればよく、帽体の強度を優先することが大切である。
右側方通気帯及び左側方通気帯は、全体が頭部の側面で有り、上下方向Zの通気帯となる。従って、これらの通気帯を流れる空気は通気帯の上部を流れる為、排気口3B,3Cも通気帯の上部に位置する事が好ましい。
【0067】
第三のポイントは、蒸れないヘルメットを目的にしている。
頭部に空気を送り込むと頭部が涼しい様に思えるが、実際には空気と熱気や湿気が毛髪の中で絡み合い、しかも十分な排気処理が出来無いので頭部付近に滞留し、ムレの度合いは余り変わらない。
【0068】
本発明のヘルメットの遮熱構造10では、頭部の熱気や湿気を吸引する事でムレを防止している。その為、インナーキャップ2の頂部付近に、頭部側と通気帯側とを貫通する貫通孔7が複数形成されている。これらの貫通孔7は、通気帯を流れる空気に抵抗を与えない様、又頭部側の空気が通気帯側にスムーズに吸引される様、通気帯の流れ方向(後方に向けて)に傾斜するように形成されている事が望ましい。
通気帯に空気が流れると通気帯の内部は負圧となり、頭部周辺に滞留している熱気や湿気は貫通孔7を通って各通気帯に移動し、最終的にはヘルメット帽体1の外部に排出される。無風状態の時でも頭部から発生する熱はあるが、この時頭部の周辺の熱気は、インナーキャップ2の貫通孔7から各通気帯に移動し、外部に放出される。そうすると、この顔面前方の通気帯が負圧となり、吸気口8から外気が取りこまれ高反射率素材4の放射側を冷却する事が継続して出来る。
【0069】
冬場や寒い日は、頭部に空気が流れると寒い事がある。そこで、吸気口8及び排気口3を封鎖するゴム製のキャップを使用し、ワンタッチで取り付け又は取り外しが出来るので、使用者の好みの温度に合わせて使用する事が出来る。
【0070】
次に、フルフェイスヘルメットに利用するインナーキャップについて説明する。
フルフェイス用インナーキャップ30は、フルフェイスヘルメットの内部に設けられる。このインナーキャップ30は、図6に示すように、フルフェイスヘルメットに沿った形状のインナーキャップ本体31の外側に突条32が複数形成されている。また、インナーキャップ本体31の開口部に沿って、ツバ部33を設け、このツバ部33に吸気口34が形成されている。吸気口34から流れ込んだ外部の空気が、突条32で挟まれて形成された通気帯を通過する。
【0071】
フルフェイスのヘルメットは、顎の前から首の側面迄顔全面を覆う必要がある。従って、通常のヘルメットの通気帯だけでなく、サンバイザー付近や顎の付近に新たに増やすことが好ましい。その為、通気帯の突条32を顔の側面の水平方向に複数いれることが好ましい。勿論、吸気口34を設けるには排気口を形成しなければならないが、考え方は通常品と同様で問題はない。ただ、速度を伴うので吸気口や排気口も通常のヘルメットより小さくても問題はない。また、オートバイ等高速で移動する目的で使用するヘルメットは、吸気口34が大きすぎると風の影響を受けるので開口面積を考慮する必要がある。
【0072】
[試験1]
ヘルメット帽体の頂部から後ろ5cmの箇所に、水平方向の幅4cm、高さ1cmの開口部(排出口)を設けた。ヘルメット帽体の内側は、前面中央から両側に約8cmの位置から、前述の開口部の後ろ側まで囲む様に、台形状の高さ1センチメートルの境界壁(突条)を設けた。境界壁の内側の帽体全面に、遮熱材THB-CX(日本遮熱社製)を貼った。更に、境界壁が全て隠れる様にしかも密着する様に、厚さ3mmの頭部側表面が紙製のポリエチレンシートで覆った。これにより、高さ1センチメートルの通気帯を形成することが出来、ヘルメットの下部の吸気口は幅1cm、長さ5cmとした。
このテスト用ヘルメットと同形の一般のヘルメットの二つを、帽体外側が熱源になる様に1000W遠赤外線ヒーター前面300mmの位置に設置した。一般のヘルメット帽体の内側温度と本発明のポリエチレンシートの内側温度を、サーモグラフィーで測定した。室温は、25℃であった。
【0073】
[結果1]
【表1】
【0074】
[考察1]
(1)一般のヘルメットの帽体内側温度を、31,4℃から83.0℃と51.6℃上昇させたが、遮熱ヘルメットの内側温度27.6℃から32.9℃と僅か5.3℃しか上昇しなかった。
(2)一般のヘルメットの内部温度が83.0℃の時、遮熱ヘルメット内部温度は体温より遥かに低い32.9℃で、一般のヘルメットとの温度差は何と50.1℃にもなった。この時、遮熱ヘルメットの内部のポリエチレンシートに手を触れてみると、冷たい感じがして効果が絶大である事が解った。
【0075】
[試験2]
インナーキャップを入れたヘルメットを水平にし、実際に使用する状態に近づけて試験した。熱は、ハロゲンランプ投光器500W2台でヘルメット帽体の上300mmから照射、ヘルメット帽体表面が75℃になる迄加熱した。インナーキャップの通気口(貫通孔)の直径は5mm、頂部に1か所、その周囲30mmの所に6個、後頭部に4カ所合計11カ所設けた。又、インナーキャップの内側から通気帯を経由して空気が流れるかを確かめる為、インナーキャップの内側中央付近より線香で煙を流した。温度は、接触型のサーモレコーダーで測定した。室温は25℃だった。
【0076】
[結果2]
【表2】

【表3】
【0077】
[考察2]
(1)帽体表面温度が75,8℃でも、内部の温度は39,2℃と36.6℃も低く、超高性能である事が解る。勿論、内部に手を入れても全く暑さを感じない。
(2)無風状態でも煙が立ち上り、通気性の良さが解る。
【0078】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。本実施形態では、ヘルメット帽体1の内側の全面にアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材4が設けられている例を示したが、このアルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材4は、インナーキャップ2の外側の全面に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ヘルメット帽体
1A ツバ部
2 インナーキャップ
3 排気口
3A 上側排気口
3B 左側排気口
3C 右側排気口
4 アルミホイル等輻射熱に対して高反射率の素材(高反射率素材)
5 インナーキャップ本体
5A ツバ部
5B 切込部
6 突条
6A 前側突条
6B 後側突条
7 貫通孔(通気口)
8 吸気口
10 ヘルメットの遮熱構造
20 遮熱ヘルメット
30 フルフェイス用インナーキャップ
31 インナーキャップ本体
32 突条
33 ツバ部
34 吸気口
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
【要約】
【課題】本発明は、ヘルメット帽体の内部に侵入する熱を阻止し、更にヘルメット帽体の内部を通気する事により、夏場でも熱中症になりにくく、かつ頭部が蒸れにくいヘルメットの遮熱構造を提供する。
【解決手段】ヘルメットの遮熱構造10は、後方に排気口3が形成されたヘルメット帽体1と、複数の貫通孔7が形成されたインナーキャップ2と、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間に設けられる高反射率素材4とを備え、ヘルメット帽体1とインナーキャップ2との間に複数の吸気口8が形成され、かつインナーキャップ2とヘルメット帽体1との間に通気帯が形成され、吸気口8から吸気された空気及び貫通孔7から吸気された空気が通気帯を介して、排気口3から排出される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6