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特許7330575モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/365 20060101AFI20230815BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/48
A61P3/06
A61P1/16
A61P9/00
A61P11/06
A61P3/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022536532
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2020126114
(87)【国際公開番号】W WO2021129166
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】201911340509.X
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911338798.X
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513148853
【氏名又は名称】天津科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】陳勉華
(72)【発明者】
【氏名】王玉栄
(72)【発明者】
【氏名】劉▲曾▼麗
(72)【発明者】
【氏名】王晶
(72)【発明者】
【氏名】李鵬
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-056618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61P 3/06
A61P 1/16
A61P 9/00
A61P 11/06
A61P 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用。
【請求項2】
前記脂肪減少製品は、トリグリセリドの低減に用いられる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記脂肪減少製品は、脂肪減少機能性食品である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記脂肪減少製品は、脂肪減少医薬品である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
前記脂肪減少医薬品は、個体の脂質代謝異常に関連する疾患の予防又は治療に用いられ
前記個体の脂質代謝異常に関連する疾患は、脂肪肝、心血管疾患、糖尿病、及び喘息のうちの一種又は複数種を含む、請求項に記載の使用。
【請求項6】
前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝を含む、請求項に記載の使用。
【請求項7】
前記脂肪減少医薬品の製剤の形態は、ハードカプセル、ソフトカプセル、錠剤、顆粒剤、粉末剤、経口液剤、又は注射剤である、請求項4-6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記脂肪減少医薬品は単位製剤である、請求項4-7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記単位製剤に50-200mgのモナスシノールが含まれる、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月23日に中国特許庁に出願された、出願番号が201911340509.Xであり、出願の名称が「モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、当該中国特許出願に記載された全ての内容を本出願に援用する。本出願は、2019年12月23日に中国特許庁に出願された、出願番号が201911338798.Xであり、出願の名称が「モナスシノール調製用のモナスカス及びそれを使用してモナスシノールを調製する方法」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、当該中国特許出願に記載された全ての内容を本出願に援用する。
【0002】
本発明は、モナスシノールの用途に関し、特にモナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
脂質は、細胞膜とリポタンパク質の組成成分の一つとして、主にコレステロールとトリグリセリドからなり、体内のステロイド物質の合成に使用されるだけでなく、人体の代謝に必要なエネルギーを提供することができる。人体に脂質が過剰に蓄積されると、高脂血症を引き起こす。高脂血症(Hyperlipidemia,HLP)とは、人体の血漿中の総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)レベルが著しく増加し、高密度リポタンパク質コレステロール(HLD-C)が低い代謝性疾患であり、アテローム性動脈硬化症、脂肪肝などの心血管疾患を誘発する重要な要因である。
【0004】
コレステロールは、生体細胞膜の主成分の一つであるとともに、すべてのステロイドホルモンの前駆体でもあり、生命活動にとってとても重要である。肝臓は、コレステロール代謝の核心となる器官であり、主に複数種のアポリポタンパク質と周辺組織によって、コレステロールを輸送する。通常の場合、コレステロールの合成、吸収及び排泄は恒常性を保っているが、過剰なコレステロールの合成又は吸収は、コレステロール代謝の異常をもたらして、高脂血症を引き起こす。トリグリセリドは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化よりなり、血中脂質の主成分であり、生体の重要なエネルギー供給物質でもある。トリグリセリドは主に、ホスファチジン酸経路及びモノグリセリド経路との二つの経路で生成される。肝細胞では、トリグリセリドは、主にホスファチジン酸経路によって合成され、そして、アポリポタンパク質及びコレステロールなどと超低密度リポタンパク質を合成し、血液循環に介して肝外組織に輸送され、貯蔵又は利用される。肝細胞におけるトリグリセリドの合成の増加、超低密度リポタンパク質の分泌の減少、及び脂肪酸の酸化力の低下は、いずれも、肝臓中でのトリグリセリドの蓄積をもたらし、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を引き起こす。NAFLDの流行は肥満と密接に関与する。食事制限を通じて、NAFLDの初期段階からの介入予防は、現在、NAFLDのさらなる悪化を防ぐための重要な一環である。モノグリセリド経路は、主に小腸で行われ、人体が摂取した脂肪は口と胃によって初歩的に消化され、小腸で膵リパーゼによってグリセロールと脂肪酸に加水分解され、そして、人体に吸収される。トリグリセリドを過剰に摂取すると、肥満になる。膵リパーゼ阻害剤は、小腸中の膵リパーゼの活性を阻害し、脂質の吸収をある程度に低下させることができるので、医薬品で肥満を治療する効果的な方法の一つである。
【0005】
トリグリセリドとコレステロールは人体の脂質の重要な成分であるが、過剰な貯蔵は肥満、心血管疾患、糖尿病などを患う可能性を急速に上昇させる。肥満による血中脂質の過度増加は、動脈硬化を引き起こし、心血管疾患を患うリスクを増加する。脂肪肝は肥満の人に発生しやすい。肥満の人では、過剰な体脂肪も気道に蓄積し、呼吸器系の機能に影響を与え、喘息患者の症状を悪化させる。肥満は、心血管疾患、糖尿病、喘息、脂肪肝、変形性関節症のがんなどを引き起こす重要な要因である。
【0006】
モナスカス(Monascus)は、中国の発酵食品での使用に千年以上の歴史がある。モナスカスの発酵産物に見つかったロバスタチン(Monacolin K)は、内因性コレステロールの合成を阻害することにより血中脂質を低減させる効果をもたらす。モナスカス色素は、モナスカスの二次代謝産物であり、現在、文献で記載された明らかな完全な構造解析データのあるモナスカス色素は60種類以上ある。潘子明教授らの研究により、モナシン(Monascin:MS)とアンカフラビン(Ankaflavin:AK)は、トリグリセリドの生成を阻害し、脂肪酸のβ-酸化を促進することで、オレイン酸に誘発されたマウスFL83B肝細胞の脂肪変性を軽減させることを発見した。方玉祥らの研究により、MSとAKとは非競合的に膵リパーゼ活性を阻害し、潜在的な抗肥満効果を有することを発見した。呂旭聡らの研究により、モナスカス色素は、高脂肪食のWistarラットの肝臓における脂肪蓄積を改善し、脂質代謝障害を改善することができることを発見した。MSとAKとの二種類のモナスカスイエロー色素は、生体の脂肪蓄積を予防し、血中脂質の異常を改善する生理学的活性を有する。
【0007】
2008年、日本発明特許JP2008-56618Aは、Monascinolと命名されたモナスカスイエロー色素が抗炎症と抗がんの機能を有することを初めて報告した。2014年、中国台湾発明特許TW1437001Bは、Monascuspiloinと命名されたモナスカスイエロー色素(TW1437001B)が、5α-リダクターゼの活性を阻害し、男性ホルモンであるジヒドロテストステロンの生成を減少し、男性ホルモン不均衡に関連する疾患を治療することができることを報告した。比較すると、色素MonascuspiloinとMonascinolは同様な構造を有し、同一の化合物である。
【0008】
現在、色素MonascuspiloinとMonascinolが血中脂質を低減させ、体重増加を制御し、体脂肪の蓄積を阻害する効果を有することがまだ発見されていない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、モナスシノール(Monascinol)の脂肪減少製品の調製における使用を提供し、当該モナスシノールは、血中脂質の低減、体重増加の制御、体脂肪の蓄積の抑制に著しく機能する。
【0010】
本発明の技術案において、モナスシノール(Monascinol)は、色素Monascuspiloin及びMonascinolと同様な構造を有し、同一のものであり、本発明において、出願人はそれをモナスシノール(Monascinol)と命名し、MCと略し、出願人は、それが血中脂質の低減、体重増加の制御、体脂肪の蓄積の抑制に著しく機能することを発見した。
【0011】
本発明は、モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用を提供する。
【0012】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前記脂肪減少製品は、トリグリセリドの低減に用いられる。
【0013】
本発明の一つの具体的な実施形態において、前記脂肪減少製品は、脂肪減少機能性食品を含む。
【0014】
さらに、前記脂肪減少機能性食品は、個体の肥満に関連する亜健康状態の予防又は改善に用いられる。
【0015】
本発明のもう一つの具体的な実施形態において、前記脂肪減少製品は、脂肪減少医薬品を含む。
【0016】
さらに、前記脂肪減少医薬品は、個体の脂質代謝異常に関連する疾患の予防又は治療に用いられる。
【0017】
さらに、前記個体の脂質代謝異常に関連する疾患は、脂肪肝、心血管疾患、糖尿病、及び喘息のうちの一種又は複数種を含む。
【0018】
さらに、前記脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝を含む。
【0019】
さらに、前記脂肪減少医薬品の製剤の形態は、ハードカプセル、ソフトカプセル、錠剤、顆粒剤、粉末剤、懸濁液、シロップ、経口液剤、又は注射剤であり得る。
【0020】
選択された製剤の形態に応じて、前記脂肪減少医薬品は、さらに薬学的に許容される賦形剤、補助剤などを含み得る。
【0021】
さらに、本発明の技術案において、前記脂肪減少医薬品は、単位製剤である。例えば、前記単位製剤には50-200mgのモナスシノールが含まれる。もちろん、個体の脂質代謝異常に関連する疾患を予防又は治療することができれば、前記モナスシノールの量は、異なる投与対象に応じて調整することもできる。
【0022】
本発明の技術案において、単位製剤におけるモナスシノールの量は、通常の成人の体重に対して、一回で投与された薬剤における有效成分の量である。前記単位製剤は、一回の投与に必要とされる有效成分を満たす製剤であり、一般的な単位製剤は、1単位(錠)の錠剤、1単位(本)の注射剤又は粉末注射剤などのようなものがある。患者の一回の投与に必要とされる医薬品の量は、患者の体重かけるその患者の一回の投与に必要とされる単位体重あたりの用量の値を算出することで得られる。用量は、例えば、医薬品を調製する過程で、一般的に、成人の体重を50-90kgと考え、実験動物とヒトの間の単位体重あたり用量の等価用量換算関係によって確定されることができる。例えば、FDA、SFDAなどの食品医薬品局が掲げたガイダンスによって、又は(黄継漢ら、「薬理試験における動物の間及び動物とヒトの間の等価用量換算」、「中国臨床薬理学と治療学」,Sep 2004;9(9):1069-1072)を参考して確定することができる。本発明の実施形態において、ヒトとハムスターの用量は、ヒトとハムスターの体表面積に応じた換算係数0.12で換算されることができる。
【0023】
本発明は、前記脂肪減少医薬品を用いる、個体の脂質代謝異常に関連する疾患を予防又は治療するための方法を提供する。
【0024】
本発明の技術案におけるモナスシノールは、2014年中国台湾発明特許TW1437001に記載されたMonascuspiloinを獲得する方法又はJP2008-56618Aに記載されたMonascinolを獲得する方法によって獲得されることができる。
【0025】
あるいは、以下のモナスシノールを調製する方法によって、獲得されることができ、当該方法は、
1)固形培地の調製:米を水に浸した後、滅菌して、前記固形培地を獲得すること;
2)種子液の調製:前記モナスカスを活性化させ、活性化されたモナスカスを種子液培地に接種して培養し、種子液を獲得すること;
3)発酵:前記種子液を前記固形発酵培地に注入し、発酵させ、発酵した米、即ち、紅麹米を得ること;及び
4)モナスシノールの抽出:前記紅麹米を乾燥し粉砕した後、エタノールで抽出し、得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、前記モナスシノールを獲得すること、を含む。
【0026】
前記方法において、米の供給源は特に限定されず、前記米は例えば、一般的に市販される米であってもよい。
【0027】
使用したモナスカスは2014年中国台湾発明特許TW1437001に記載されたモナスカスであってもよい。出願人が2019年9月20日に、住所が北京市朝陽区北辰西路1号院3号であるChina General Microbiological Culture Collection Center(略してCGMCC)に寄託した、受託番号がCGMCC No.18578であるモナスカスであってもよい。
【0028】
CGMCC No.18578のモナスカスを使用して調製する場合、生産量を向上させるために、以下のステップでモナスシノールを調製することができる。
1)固形培地の調製:米を水に浸した後、滅菌して、前記固形培地を獲得する;
2)種子液の調製:前記モナスカスを活性化させ、活性化されたモナスカスを種子液培地に接種して培養し、種子液を獲得する;
3)発酵:前記種子液を1:5-10L/kgの割合で前記固形発酵培地に注入し、発酵させ、発酵した米、即ち、紅麹米を得る;
4)モナスシノールの抽出:前記紅麹米を乾燥し粉砕した後、50%-80%のエタノールで抽出し、抽出プロセスに、紅麹米とエタノールとの重量比が1:5-20になるように制御し、得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、前記モナスシノールを獲得する。
【0029】
本発明のもう一つの具体的な実施形態において、前記モナスシノールを調製する方法は、
1)固形培地の調製:前記米を水に浸した後に形成された湿った米を三角フラスコに広げ、滅菌して、固形発酵培地を得ること;
2)種子液の調製:前記モナスカスを活性化培地を使用して活性化された後、種子液培地に接種して培養し、モナスカスの種子液とすること;
3)発酵:前記モナスカスの種子液をろ過して菌糸体を除去し、菌糸体が除去された前記モナスカスの種子液を1:5-10L/kgの割合で前記固形発酵培地に注入し、発酵させ、発酵した米、即ち、紅麹米を得ること;
4)モナスシノールの抽出:発酵して得られた紅麹米を乾燥し粉砕した後、50%-80%のエタノールで抽出し、抽出プロセスに、紅麹米とエタノールとの重量比が1:5-20になるように制御し、得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、前記モナスシノールを獲得することを含む。。
【0030】
さらに、ステップ1)の浸した過程において、米と水との割合は1:1kg/Lであり、室温で4-24h浸す。
【0031】
さらに、ステップ2)において、前記モナスカスの活性化温度は25-35℃であり、2-5日活性化培養される。さらに、前記ステップ2)において、前記活性化培地は、麦汁斜面培地である。
【0032】
前記麦汁斜面培地は当分野の一般的な培地であり、購入して獲得することができる。軽く粉砕された大麦麦芽粒を250.0g量り、水1Lを入れ、60℃の恒温水浴で4h保ち、ろ過した後に水を入れ、糖度を12°Brixに希釈し、寒天3.0gを入れ、121℃、0.1MPaの条件下で20min滅菌することで調製して獲得することもできる。
【0033】
さらに、ステップ2)において、活性化されたモナスカスを種子液培地に接種して培養することは恒温振とう機で行い、恒温振とう機の温度を25-35℃に、恒温振とう機の回転速度を150-200r/minに、培養時間を24-48時間に制御する。
【0034】
前記種子液培地は当分野の一般的な培地であり、購入して獲得することができる。下記のように調製して獲得することもできる。前記種子液培地は、重量で、6.0部のグルコース、2.0部のペプトン、1.0部のNaNO、1.0部のKHPO、0.5部のMgSO、及び100部の水を含む。例えば、6.0gのグルコース、2.0gのペプトン、1.0gのNaNO、1.0gのKHPO、0.5gのMgSOを100mLの水に溶かし、250mLの三角フラスコに仕込み、8層のガーゼとクラフト紙で封口し、121℃、0.1MPaの条件下で20min滅菌することで獲得することができる。
【0035】
さらに、ステップ3)において、発酵の温度は25-35℃であり、発酵時間は10-25日である。
【0036】
前記ステップ4)において、得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、前記モナスシノールを獲得するプロセスで、抽出液からモナシン(Monascin、略してMS)を獲得することをさらに含む。出願人の検測により、MSとMCは同時に当該抽出液に存在することを見出し、一般的な技術手段で両者を抽出液から分離することができ、例えば、MSとMCのピーク発生時間の違いに応じて、高速液体クロマトグラフィーの分離過程中でMSとMCをそれぞれ収集することは、当業者として実現できることである。
【0037】
さらに、MSは式1のようにMCに変換されることができる。本発明に提供されたMCを調製する方法は、MCの生産量をさらに向上させるように、抽出液から獲得されたMSをMCに変換するステップ5)を含んでもよい。
【化1】
【0038】
当該MSが式1のようにさらにMCに変換されることで、本発明のモナスカスの発酵によって生産されたMCの生産量を向上させることができる。
【0039】
本発明の技術案は以下の利点を有する。
1)モナスシノールは、血中脂質の低減、体重増加の制御、体脂肪の蓄積の抑制に著しく機能し、そして、低減された細胞毒性を有することから、脂肪減少製品としてより高い使用安全性があることを初めて発見した。
2)本発明は、モナスシノールの脂肪減少製品の調製における使用を提供し、個体の肥満に関連する亜健康状態の予防又は改善に用いられ、前記個体は、例えば、体重管理を必要とする、成人及び青年を含む亜健康な人であってもよい。
3)本発明は、さらに、モナスシノールの、脂肪減少医薬品を含む脂肪減少製品の調製における使用を提供し、脂肪肝、心血管疾患、糖尿病、及び喘息を含む、個体の脂質代謝異常に関連する疾患の予防又は治療に用いられ、さらに、例えば、糖尿病、心血管疾患、喘息、及び変形性関節症などの肥満に密接に関与する一連の疾患の予防及び治療に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下では本発明の実施例に用いられる図面を簡単に紹介するが、明らかなことに、以下に説明される図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働がなくても、以下の図面よりその他の図面を得ることができる。
【0041】
図1図1Aは、オレイン酸添加前のHepG2細胞の状況を示し、図1Bは、オレイン酸添加後のHepG2細胞の脂質蓄積状況を示す。
図2図2は、異なる投与量のMCとMSの、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞生存率に対する影響を示す。
図3図3は、異なるMC投与濃度の、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞におけるTGの含有量に対する影響を示す。
図4図4は、MCとMSの、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞におけるTGの含有量に対する影響を示す。
図5図5Aは、オレイン酸モデリング群のHepG2細胞における脂質蓄積を示す図であり;図5Bは、MS群のHepG2細胞における脂質蓄積を示す図であり;図5Cは、MC群のHepG2細胞における脂質蓄積を示す図である。
図6図6は、MCの膵リパーゼに対する阻害活性が濃度につれて変化を示す図である。
図7図7Aは、MS(モナシン,Monascin)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図であり;図7Bは、AK(アンカフラビン,Ankaflavin)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図であり;図7Cは、MC(モナスシノール,Monascinol)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図である。
図8図8は、MCのラインウィーバー=バークプロットを示す。
図9図9A図9Cは、各群におけるハムスターの肝臓組織切片の100x光学顕微鏡における結果を示し;図9a-図9cは、各群におけるハムスターの肝臓組織切片の400x光学顕微鏡における結果を示す。
図10図10A図10Cは、各群におけるハムスターの脂肪組織切片の100x光学顕微鏡における結果を示し;図10a-図10cは、各群におけるハムスターの脂肪組織切片の400x光学顕微鏡における結果を示す。
図11図11は、MCのLCMS一次カチオンスペクトルを示す。
図12図12は、MCのH-NMRスペクトルを示す。
図13図13は、MCの13C-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施例におけるHepG2細胞は協和細胞資源中心(資源番号:3111C0001CCC000035)から購入され、実験過程中に使用される各試薬がいずれも一般的な試薬であり、市販で獲得することができる。モナスシノール(Monascinol、略してMC)は、JP2008-56618A又はTW1437001Bに記載の方法で調製することができる。モナシン(Monascin、略してMS)は、JP2008-56618Aに記載の方法で調製することができる。モナスシノール(Monascinol、略してMC)及びモナシン(Monascin、略してMS)は、本発明に記載のモナスカス(ベニコウジカビ、Monascus sp)を使用して調製することができる。当該モナスカス(ベニコウジカビ、Monascus sp)は、2019年9月20日にChina General Microbiological Culture Collection Center(略してCGMCC)に寄託され、受託番号がCGMCC No.18578であるモナスカスである。原料は一般的に市販される米であり、培地における各成分はいずれも当分野の一般的に市販される試薬である。
【0043】
実施例1 モナスシノールの細胞毒性
1)オレイン酸モデリングHepG2細胞
成長状態が良好なHepG2細胞を、2*10個/mL、各ウェル1mLで6ウェル培養プレートに接種した。細胞付着率が80%-90%に達したとき、培地を廃棄した。空白群とモデリング群を設定し、空白群に完全培地を入れ、モデリング群に完全培地で希釈された0.3mmol/Lのオレイン酸誘導液を入れ、各ウェルに2mLを入れ、24h培養した後に、オイルレッドOで染色し、細胞における脂肪滴蓄積状況を観察した。
【0044】
空白群の細胞は紡錘形であり、細胞の縁は明確であり、細胞内に脂肪滴の明らかな蓄積はない。0.3mmol/Lのオレイン酸誘導液2mLを入れる付着HepG2細胞は、インキュベートして24h培養した後、明らかな増殖損傷がなく、空白群に比べて、細胞の縁では、明らかな赤い脂肪滴が細胞核の周りに回っているのが見られ、細胞の輪郭が明らかであり、モデリングが成功したことを示す。図1を参照し、図1A図1Bは、オレイン酸添加前後のHepG2細胞における脂質蓄積状況を示す(倒立顕微鏡×400)。
【0045】
2)モナスシノール(Monascinol、略してMC)及びモナシン(Monascin、略してMS)の、オレイン酸モデリングHepG2細胞に対する細胞毒性実験
a.成長状態が良好なHepG2細胞を、5*10個/mL、各ウェル100μLで96ウェル培養プレートに接種した。細胞付着率が80%-90%に達したとき、培地を廃棄した。
【0046】
b.MSとMCをそれぞれジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して5mg/mLの母液を調製し、母液を-20℃で保存した。5mg/mLの母液を取り、各サンプルにおけるDMSOの最終濃度が0.5%になるように、オレイン酸0.3mmol/Lを含む完全培地で実験に必要とされるMSサンプル濃度又はMCサンプル濃度(2、4、6、8、10、12μg/mL)に希釈した。
【0047】
c.モデリング群と投与群の設定
1日目(培地を廃棄した後)で、モデリング群のHepG2細胞にオレイン酸0.3mmol/Lを含む完全培地200μLを入れ、投与群のHepG2細胞にオレイン酸0.3mmol/L及び上記の濃度が異なるMS又はMCサンプルを含む完全培地200μLを入れた。
24h後、MTT実験方法に従い、各群のHepG2細胞生存率を検測した。
【0048】
d.結果は図2に示す通りである。MS投与濃度が10μg/mL以上になるとき、細胞生存率が36.7%のみであり、細胞毒性が出るようになり、細胞が大量に死亡した。MC投与濃度が12μg/mLになるとき、細胞生存率が66.7%であり、同じ投与濃度のMSの細胞毒性より明らかに小さい。
【0049】
実施例2 異なる投与量のモナスシノールの、細胞におけるトリグリセリド含有量に対する影響
以下のように実験する。
a.成長状態が良好なHepG2細胞を、2*10個/mL、各ウェル1mLで6ウェル培養プレートに接種し、12h培養し、細胞が付着した後に培地を廃棄した。
【0050】
b.培地を廃棄した後、空白群、モデリング群及び投与群を設定した。
空白対照群:完全培地2mLを入れた;
オレイン酸モデリング群:オレイン酸0.3mmol/Lを含む完全培地2mLを入れた;
MC低用量群:オレイン酸0.3mmol/L及びモナスシノール2μg/mLを含む完全培地2mLを入れた;
MC中用量群:オレイン酸0.3mmol/L及びモナスシノール4μg/mLを含む完全培地2mLを入れた;
MC高用量群:オレイン酸0.3mmol/L及びモナスシノール8μg/mLを含む完全培地2mLを入れた。
【0051】
投与完了後、各群の細胞を24時間培養し、各群の細胞を収集し、トリグリセリドキット(Applygen Technologies Inc.)によって、各群のHepG2細胞におけるトリグリセリドの含有量を測定した。
【0052】
c.結果は図3に示す通りである。異なるアルファベットは空白群に比べて有意差があることを示し、P<0.01である。
【0053】
図3から分かるように、空白群に比べて、モデリング群におけるTG(トリグリセリド、Triglyceride)の含有量が明らかに上昇し(P<0.01)、細胞におけるTGの含有量が正常群の3.2倍になり、モデリングが成功したことを示す。モデリング群に比べて、低、中、高用量MCがいずれも明らかに(P<0.01)細胞におけるTGの含有量を減少させることができる。MC濃度が2μg/mLと4μg/mLである場合、細胞におけるTGの含有量がそれぞれ38.9%、34.6%減少し、濃度が8μg/mLである場合、細胞におけるTGの含有量が51.3%減少した。従って、MCはHepG2細胞におけるTGの含有量を効果的に減少させることができる。
【0054】
実施例3 モナスシノール(Monascinol、略してMC)及びモナシン(Monascin、略してMS)の、オレイン酸モデリングHepG2細胞におけるトリグリセリドの含有量に対する影響
以下のように実験する。
まず、正常なHepG2細胞を獲得し、実施例1の方法に従い、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞(オレイン酸濃度0.3mmol/L)を獲得した。
【0055】
1日目、空白対照群は、HepG2細胞を処理せずに正常に培養した;オレイン酸モデリング群(オレイン酸濃度0.3mmol/L)は、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞を処理せずに正常に培養した;MC群は、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞にモナスシノール、即ち、MCを2μg/mL投与した;MS群は、オレイン酸モデリング後のHepG2細胞にモナシン、即ち、MSを2μg/mL投与した。
【0056】
投与完了後、続けて各群の細胞を24時間培養し、各群の細胞を収集し、トリグリセリドキット(Applygen Technologies Inc.)によって、各群のHepG2細胞におけるトリグリセリドの含有量を測定し、結果を図4に示す。
【0057】
図4から分かるように、オレイン酸0.3mmol/LでHepG2細胞を24hインキュベートした後、細胞におけるTGの含有量が空白群より明らかに増加した(P<0.01)。同じ濃度のMSとMCはいずれも細胞におけるTGの含有量を明らかに減少させた(P<0.01)。2μg/mLのMSとMCは、細胞におけるTGの含有量をそれぞれ26.3%と33.3%減少させることができ、両者の脂質減少効果には有意差がない(P>0.01)。
【0058】
オイルレッドOで染色してさらに形態学的観察を行い、結果は図5A-5C(倒立顕微鏡×400)に示す通りである。図5Aはオレイン酸モデリング群のHepG2細胞における脂質蓄積図であり、図5BはMS群のHepG2細胞における脂質蓄積図であり、図5CはMC群のHepG2細胞における脂質蓄積図である。これで分かるように、オレイン酸モデリング群に比べて、2μg/mLのMS群とMC群はいずれも細胞における脂肪滴を減少させ、色を浅くすることができる。それはTGの検測結果と一致している。
【0059】
実施例4 MCの膵リパーゼに対する阻害活性及び阻害様式
実験では、オレイン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUO)を基質として使用し、蛍光検出法でMCの膵リパーゼ(II型、ブタ膵臓由来)に対する阻害活性を評価した。
【0060】
以下の群を設定した(表1を参照してもよい)。
空白群:MCサンプルを含まず、基質、膵リパーゼ、及びTris-HCL緩衝液のみある;
空白背景群:MCサンプル及び膵リパーゼを含まず、基質及びTris-HCL緩衝液のみある;
サンプル背景群:膵リパーゼを含まず、MCサンプル、基質、及びTris-HCL緩衝液のみある;
サンプル群:Tris-HCL緩衝液を含まず、MCサンプル、基質、及び膵リパーゼのみある。
【0061】
【表1】
【0062】
以下の公式で阻害率を算出した:
阻害率(%)=[(A-A)-(A-A)]/(A-A)×100
:空白群の蛍光値;A:空白背景群の蛍光値
:サンプル群の蛍光値;A:サンプル背景群の蛍光値
【0063】
各群に含まれる物質を表1に示された割合で黒色の96ウェル培養プレートのウェル中に入れ、各群の実験に三個の重複実験を設け、ここで、4-MUOの濃度は0.1mMであり、MCサンプルをDMSOで溶解させ(5、10、20、40、80、160μg/mLと6個の異なる濃度を設定する)、リパーゼ溶液の濃度は1mg/mLであり、25℃の条件下で30min反応させた後、0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液100μLを入れ、反応を停止させた。リパーゼは基質であるオレイン酸4-メチルウンベリフェリル(4-MUO)を触媒して、生成物である4-メチルウンベリフェロンを生成し、4-メチルウンベリフェロンは、励起波長340nm、発光波長460nmで蛍光強度を示す。蛍光値の大きさを検出することにより、リパーゼ活性を間接的に判断することができる(即ち、リパーゼ活性が高いほど、より多くの4-メチルウンベリフェロンが触媒、生成され、蛍光シグナルが強くなる)。従って、励起波長360±40nm、発光波長460±40nmの条件下で生成物である4-メチルウンベリフェロンを測定した。
【0064】
上記のMCの6個の濃度を対数濃度に変換した後、対数濃度を横軸として、阻害率を縦軸として、図6に示すS字型の曲線が描かれ、これで分かるように、MCの膵リパーゼに対する阻害率は濃度の増加につれて増加する。さらに、当該S字型の曲線に基づいた後、当分野の既知のソフトウェアによってIC50値を算出したところ、IC50値が75.8μg/mLであった。この結果から、MCは、膵リパーゼに対して一定の阻害活性を有し、モノグリセリドの吸収経路を阻害することにより、トリグリセリドの腸内摂取量を減少させ、潜在的な抗肥満効果を有することが示されている。
【0065】
阻害剤と酵素の異なる結合方法と特性に応じて、阻害様式は、可逆的阻害と不可逆的阻害の2つの様式に分けられる。不可逆的阻害は、通常比較的に強固な共有結合で酵素タンパク質における基に結合し、酵素を不活性化させる。可逆的阻害は、競合的阻害、非競合的阻害、及び不競合的阻害に分けられる。研究によると、MSとAKの膵リパーゼに対する阻害様式は非競合的阻害である。本部分の実験は、MS及びAKを対照として、反応物の添加順を変更することでMCの阻害様式を判定し、三種類の色素阻害剤の介入濃度はいずれも80μg/mLである。結果は図7A-7Cに示す通りである。図7Aは、MS(モナシン,Monascin)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図であり、図7Bは、AK(アンカフラビン,Ankaflavin)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図であり、図7Cは、MC(モナスシノール,Monascinol)反応物の異なる添加順における阻害率の結果を示す図である。MCの阻害様式がMS及びAKの阻害様式と異なることが分かる。図7A-7Cにおいて、S:基質、I:阻害剤,E:酵素。
【0066】
以下、ラインウィーバー=バーク二重逆数プロット法の結果により、MCの膵リパーゼに対する阻害様式を確定する。当分野で既知されたように、2本の直線が1/S軸で交差する場合、阻害様式は非競合的阻害であり、2本の直線が1/V軸で交差する場合、阻害様式は競合的阻害であり、2本の直線が平行である場合、阻害様式は不競合的阻害である。
【0067】
図8は、MCのラインウィーバー=バークプロットを示し、ここで、1/Sは基質濃度の逆数であり、1/Vは反応速度の逆数であり、反応速度は反応前後の蛍光値の差を時間の差で除したものである。ラインウィーバー=バーク曲線を描く実験の基本的な流れとして、以下の通りである。リパーゼ濃度(1mg/mL)が一定である条件下で、一連の異なる基質濃度で酵素触媒反応の速度を測定した。空白群は阻害剤MCを含まず(MCサンプルを含まず、異なる濃度の基質、膵リパーゼ、及びTris-HCL緩衝液のみある)、MC群は、160μg/mLのMC、異なる濃度の基質、膵リパーゼ、及びTris-HCL緩衝液が入れられるものである。図8から分かるように、二重逆数プロット法より、2本の直線が平行になる傾向があることを示し、可逆的阻害における不競合的阻害に属する。それは、MCは酵素に直接結合せず、酵素-基質複合体に結合することにより膵リパーゼの触媒反応速度を低下させることを表している。
【0068】
実施例5 MC動物実験データ
動物実験では、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.より購入された、体重が110-120グラムであり、年齢が8週であるオスのゴルデンシリアンハムスター(Golden Syrian hamster、略してハムスター)24匹が使用された。
【0069】
一定期間飼育した後、ランダムに3群に分け、各群に8匹があり、以下のように群分けと実験を行う。
1日目から毎日:
正常群(NOR):自由に基本飼料を摂取させ、胃内投与でMC群と同量なCMC-Na溶液を与えた;
高脂肪群(HFD):自由に高脂肪成分を有するチュアブル飼料を摂取させ、胃内投与でMC群と同量なCMC-Na溶液を与えた;
MC群:自由に高脂肪成分を有するチュアブル飼料を摂取させ、20mg/kg体重の用量で胃内投与でMC(CMC-Na溶液に溶解させた)を与えた。
【0070】
毎週でハムスターの体重及び摂食量を測定した。10周後、組織サンプル又は血清サンプルを採取し、以下のように分析した。
【0071】
5.1 MCのハムスターの体重、肝臓重量、腎臓重量及び脂肪組織重量に対する影響
表2は、ハムスターの肝臓、腎臓、脂肪などの脂質代謝に関与する臓器重量指標を記録する。以上の実験データから分かるように、HFD群に比べて、MC群は、ハムスターの高脂肪食による体重、肝臓重量の増加及び周囲脂肪の蓄積を著しく阻害することができる(p<0.05)。
【0072】
【表2】
【0073】
5.2 MCのハムスターの肝臓、血清におけるTG(トリグリセリド、Triglyceride)とTC(総コレステロール,Total Cholesterol)に対する影響
Folch法に従い、肝臓中のTCとTGを抽出し、Nanjing Jiancheng Bioengineering Insituteにより製造されたTCとTGの検出キットを使用し、取扱説明書に提供された方法で肝臓組織のTCとTGの含有量を測定した。
【0074】
採取された血清サンプルに対して、Cobas8000 E602全自動生化学分析装置(Roche Diagnostics)によって血清におけるTCとTGを測定した。結果を表3に記録する。
【0075】
表3のデータから分かるように、HFD群のハムスターの肝臓と血清におけるTGとTCの含有量は、NOR群に比べて、著しく増加した(p<0.05)。MC群のハムスターの肝臓と血清におけるTGとTCの含有量は、HFD群のハムスターに比べて、著しく減少し(p<0.05)、特に、MCが介入された高脂肪食のハムスターの肝臓におけるTGの平均含有量はNOR群と同じであった。MCは高脂肪食による血清と肝臓における脂質蓄積に対して顕著な阻害効果があり、特に肝臓と血清におけるTG蓄積に対する阻害効果がより優れたことを示し、それは、MCがHepG2細胞におけるTGの蓄積を阻害する細胞実験の結果と一致している。
【0076】
【表3】
【0077】
5.3 ハムスターの肝臓、脂肪組織の病理学的切片分析
図9A図9Cは、各群におけるハムスターの肝臓組織切片の100x光学顕微鏡における結果を示し、図9a-図9cは、各群におけるハムスターの肝臓組織切片の400x光学顕微鏡における結果を示し、ここで、図9A図9aはNOR群の結果であり、図9B図9bはHFD群の結果であり、図9C図9cはMC群の結果である。これで分かるように、脂質蓄積によるHFD群の肝臓細胞の増大に比べて、MC群の細胞における脂質蓄積は著しく減少し、肝細胞索は正常になる傾向があった。
【0078】
図10A図10Cは、各群におけるハムスターの脂肪組織切片の100x光学顕微鏡における結果を示し、図10a-図10cは、各群におけるハムスターの脂肪組織切片の400x光学顕微鏡における結果を示し、ここで、図10A図10aはNOR群の結果であり、図10B図10bはHFD群の結果であり、図10C図10cはMC群の結果である。これで分かるように、HFD群の精巣上体周囲脂肪組織細胞と腎周囲脂肪組織細胞はNOR群より体積が明らかに増大し、MC群の細胞はHFD群より体積が明らかに減少し、細胞の体積がNOR群とHFD群の細胞体積の間にあった。
【0079】
以上の細胞実験、生体外酵素実験及び動物実験により、MCは高脂肪食による体重増加、周囲脂肪の蓄積、血液と肝臓におけるTCとTGの蓄積を効果的に予防することができることが分かっていた。肥満による脂質代謝異常及びそれに関与するメタボリックシンドローム(例えば、脂肪肝、糖尿病、喘息、変形性関節症など)を予防及び治療するに用いられる。本発明に提供された、モナスカスの発酵による、当該MCに富む紅麹米、或いは当該紅麹米より抽出し分離して得られたMC又はMSは、脂質代謝異常の調節に関与する機能性食品及び医薬品としての医薬品原薬の開発に用いられることができる。
【0080】
実施例6 本発明に提供されたモナスカスによるモナスシノールの調製
モナスカスは、2019年9月20日にChina General Microbiological Culture Collection Center(略してCGMCC)に寄託され、受託番号がCGMCC No.18578であるモナスカスである。原料は一般的に市販される米であり、培地における各成分はいずれも当分野の一般的に市販される試薬である。
【0081】
一、モナスカスCGMCCNo.18578によってモナスシノールを調製し、以下のステップを含む。
1)米と水を1:1の質量体積比(kg/L)で室温で4-24h浸し、水を切った後、培養瓶に入れ、121℃、0.1MPaの条件下で20min滅菌し、固形発酵培地を獲得した;
2)4℃の冷蔵庫に保存されたモナスカスCGMCCNo.18578を新鮮な麦汁斜面培地に移し、当該モナスカスを活性化するように30℃で48h培養し;滅菌後の無菌水を無菌操作で活性化された菌種斜面に注ぎ、胞子を白金耳からこすり取って胞子懸濁液を作り、種子液培地に移し、30℃、180r/minの恒温振とう機で36h培養し、モナスカスの種子液を獲得した。
【0082】
ここで、活性化用の斜面培地は、軽く粉砕された大麦麦芽粒を250.0g量り、水1Lを入れ、60℃の恒温水浴で4h保ち、ろ過した後に水を入れ、糖度を12°Brixに希釈し、寒天3.0gを入れ、121℃、0.1MPaの条件下で20min滅菌することで調製して獲得した。
【0083】
種子液培地は、6.0gのグルコース、2.0gのペプトン、1.0gのNaNO、1.0gのKHPO、0.5gのMgSOを100mLの水に溶かし、250mLの三角フラスコに仕込み、8層のガーゼとクラフト紙で封口し、121℃、0.1MPaの条件下で20min滅菌することで獲得した。
【0084】
3)二層のガーゼで前記モナスカスの種子液をろ過して、菌糸体を除去し、菌糸体が除去された前記モナスカスの種子液を1:5-10L/kgの体積重量比で前記固形発酵培地に注入し、30℃で20日間発酵させ、発酵した米、即ち、紅麹米を得た。
4)発酵して得られた紅麹米をオーブンにて60℃で乾燥し粉砕した後、70%のエタノールで抽出し、紅麹米とエタノールとの重量比は1:5-20であり、得られた抽出液を高速液体クロマトグラフィーによって分離し、前記モナスシノールを獲得した。
【0085】
二、モナスカスCGMCCNo.18578によって調製されたMCの構造解析
ESI-MSで獲得されたモナスシノールの結果は図11に示す通りである。その一次カチオンピークのm/zは361.2000[M+H]であり、当該化合物の分子式はC2128である。モナスシノールのH-NMRの結果は図12に示す通りであり、モナスシノールの13C-NMRの結果は図13に示す通りであり、当該結果は文献JP2008-56618Aに記載されたMonascinolの構造特性評価の情報と同じである。
【0086】
三、モナスカスCGMCCNo.18578によって調製されたMCの含有量の測定
MC検量線の描画:
調製し精製したMC(HPLC純度>95%)を70%のエタノールに溶解させ、4mg/mlの母液を調製し、勾配で希釈して、濃度がそれぞれ400、200、100、50、25μg/mlであるMC標準溶液が得られ、Agilent Technologies 1260型HPLCで検量線を測定し描画する。HPLC条件:カラム ZORBAX Eclipse Plus C18(5μm,4.6×250mm);移動相 アセトニトリル-0.1%ギ酸水60:40(V/V)、定組成溶離;ダイオードアレイ検出器;検出波長390nm;カラム温度25℃;流速1mL/min;サンプル体積20μL。濃度Xをピーク面積Yで線形回帰し、得られたMC回帰方程式はY=31.63x+122、R=0.998である。
【0087】
紅麹発酵生成物におけるMCの含有量の測定
60℃で発酵生成物(即ち、発酵した後の紅麹米)を乾燥させ、粉砕して篩い分け(200メッシュ)した後、0.50gを精秤し、10mLの遠沈管に入れ、試料と溶液の比率が1:20である70%のエタノール溶液で30min超音波抽出し、3500r/minで10min遠心し、上澄みを適宜に希釈した後、0.22μmの有機フィルターでろ過し、得られた抽出液をHPLC用バイアルに入れ、HPLCで検測した。サンプルから検測されたMCのピーク面積及びサンプル希釈倍数、ならびにMC検量線によって算出して得られた発酵生成物におけるMCの含有量が8mg/gであった。当該含有量は中国台湾発明特許TW1437001Bに使用されたモナスカスによって発酵された紅麹米におけるMCの含有量(0.31mg/g)より遥かに高い。当該モナスカスCGMCCNo.18578によって発酵された、MCに富む紅麹生成物、例えば発酵した後の紅麹米は、脂質代謝異常の調節に関与する機能性食品及び医薬品としての医薬品原薬の開発に用いられることができる。
図1A-1B】
図2
図3
図4
図5A-5C】
図6
図7
図8
図9A-9C】
図9a-9c】
図10A-10C】
図10a-10c】
図11
図12
図13