(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】化合物、表面処理剤、表面処理方法、および金属‐樹脂複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20230815BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230815BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230815BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C07F7/18 U CSP
C07F7/18 W
C09D5/00 Z
C09D7/63
C23C26/00 A
(21)【出願番号】P 2023013320
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2023-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114488
【氏名又は名称】メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 功貴
(72)【発明者】
【氏名】荻野 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】西峯 准
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163514(JP,A)
【文献】国際公開第2013/186941(WO,A1)
【文献】特開2022-063605(JP,A)
【文献】特開2018-188715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 7/63
C09D 5/00
C07D 251/54
C23C 26/00
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表される化合物:
【化1】
一般式(A)におけるQ
1~Q
6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、下記X、または下記Yであり、
【化2】
R
51
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~12のアルキレン基であり、
R
52
は、
ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~12のアルキレン基、または
主鎖に炭素原子および窒素原子を含み、主鎖を構成する原子の数が20個以下である2価の有機基であって、主鎖の一部が1,3,5-トリアジン環の一部を構成しているか、主鎖の窒素原子に1,3,5-トリアジン環の炭素原子が結合している2価の有機基
であり、
R
1は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基であり、
R
2は、水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~30のアラルキル基からなる群から選択される1価の炭化水素基であり、
aは1~3の整数であり、
R
3は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、および上記Xからなる群から選択される1価の有機基であり、
一般式(A)におけるQ
1~Q
6のうち、少なくとも1つがXであり、少なくとも1つがYである。
【請求項2】
一般式(A)において、Q
1がXであり、Q
3がYであり、Q
5がX、Yまたは水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Q
5がXである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Q
5がYである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(A)において、Q
2およびQ
6が水素原子であり、Q
4が水素原子またはXである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(A)において、Q
1がXであり、Q
2がYである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(A)において、Q
3、Q
4、Q
5およびQ
6が水素原子である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物と、溶媒とを含有する、表面処理剤。
【請求項9】
金属部材の表面に、請求項
8に記載の表面処理剤を接触させることにより、金属部材を表面処理する、表面処理方法。
【請求項10】
前記金属部材が銅または銅合金である、請求項
9に記載の表面処理方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の方法により金属部材を表面処理し、表面処理された金属部材に樹脂部材を接合する、金属‐樹脂複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、表面処理剤、表面処理方法、および金属‐樹脂複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や各種の成形体の製造においては、金属と、金属、セラミック、樹脂等の接合が行われ、金属と各部材間の接合性が求められている。例えば、プリント配線板の製造工程においては、金属層や金属配線の表面に、エッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト、プリプレグ等の樹脂材料が接合され、金属と樹脂との間に高い接着性が求められる。
【0003】
金属と樹脂等との接着性を高めるために、金属を表面処理する方法が知られている。例えば、特許文献1では、メラミンのアミノ基にアルキレンを介してSi-OH生成基(具体的にはアルコキシシリル基)が結合している化合物を用いて、金属を表面処理することにより、金属表面に被膜が形成され、金属と各種部材との接着性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の化合物を含む溶液により金属を表面処理して被膜を形成し、樹脂等と接合した場合、加速劣化試験を実施すると、接着力の著しい低下が生じる。本発明は、金属の表面処理剤として好適に使用可能な化合物、および当該化合物を用いた表面処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、下記の一般式(A)で表される化合物である。
【0007】
【0008】
一般式(A)において、Q1~Q6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、下記X、または下記Yであり、Q1~Q6のうち、少なくとも1つがXであり、少なくとも1つがYである。
【0009】
【0010】
R51およびR52は、それぞれ独立に任意の2価の有機基である。R1は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。R2は、水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~30のアラルキル基からなる群から選択される1価の炭化水素基である。aは1~3の整数である。R3は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、および上記Xからなる群から選択される1価の有機基である。
【0011】
一般式(A)の化合物は、Q1がX、Q3がYであり、XとYが異なる窒素原子に結合している下記一般式(1)の化合物と、Q1がX、Q2がYであり、XとYが同一の窒素原子に結合している下記一般式(2)の化合物に大別できる。
【0012】
【0013】
一般式(1)において、Q5は、X、Yまたは水素原子であってもよく、好ましくはXまたはYである。Q2、Q4およびQ6は、水素原子であってもよい。
【0014】
一般式(2)において、Q3、Q4、Q5およびQ6は、水素原子であってもよい。
【0015】
本発明の一態様は、上記の化合物を含む表面処理剤である。表面処理剤は、上記の化合物と溶媒とを含有する。金属部材の表面に、表面処理剤を接触させることにより、金属部材を表面処理して、被膜を形成できる。表面処理された金属部材は、樹脂との接着性に優れる。金属部材としては、銅または銅合金材料が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物を含む表面処理剤により、金属部材を表面処理することにより、金属部材と樹脂との接着性を向上できる。表面処理された金属部材と樹脂とを接合することにより、金属部材と樹脂部材との界面での接着性に優れる、金属‐樹脂複合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】表面処理金属部材の一形態を表す模式的断面図である。
【
図2】金属‐樹脂複合体の一形態を表す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[化合物の構造]
本発明の化合物は、下記の一般式(A)で表されるメラミン誘導体である。メラミンは、1,3,5-トリアジン環の2位、4位および6位にアミノ基(-NH2)を有する化合物であり、アミノ基の水素原子を置換することによりメラミン誘導体が得られる。
【0019】
【0020】
一般式(A)におけるQ1~Q6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、下記X、または下記Yである。
【0021】
【0022】
XおよびYにおいて、R51およびR52は、それぞれ独立に任意の2価の有機基である。Xにおいて、R1は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。R2は、水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~30のアラルキル基からなる群から選択される1価の炭化水素基である。aは1~3の整数である。
【0023】
Yにおいて、R3は、水素原子、アミノ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、および上記Xからなる群から選択される1価の有機基である。
【0024】
本発明の化合物は、一般式(A)における窒素原子に結合した置換基Q1~Q6のうち、少なくとも1つがXであり、少なくとも1つがYであることを特徴とする。同一分子内にXおよびYを有することにより、金属等の表面への被膜の形成性に優れるとともに、化合物により形成された被膜が、高温高湿環境下でも劣化が抑制される傾向がある。
【0025】
一般式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」と記載する場合がある)において、Q1~Q6のうち、2個以上がXであってもよく、2個以上がYであってもよい。2個以上のXは同一でもよく異なっていてもよい。2個以上のYは同一でもよく異なっていてもよい。化合物(A)において、XとYは、同一の窒素原子に結合していてもよく、XとYが異なる窒素原子に結合していてもよい。
【0026】
Xは、末端にアルコキシシリル基および/またはシラノール基を有する基であり、R1が水素原子である場合、-Si-OR1はシラノール基であり、R1がアルキル基である場合、-Si-OR1はアルコキシシリル基である。アルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基を生成する。化合物の安定性の観点から、R1はアルキル基であることが好ましい。被膜形成性および接着力向上の観点から、aは2以上が好ましく、aが3であることが特に好ましい。すなわち、Xにおける-Si(OR1)a(R2)3-aは、ジアルコキシモノアルキルシリル基、またはトリアルコキシシリル基であることが好ましく、トリアルコキシシリル基であることが特に好ましい。
【0027】
R1がアルキル基である場合、Xの-Si-OR1が加水分解してシラノール基が生成し、シラノールの縮合により、一般式(A)で表される化合物が縮合して被膜が形成される。加水分解性に優れることから、R1としては、炭素数が6以下のアルキル基が好ましい。炭素数6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0028】
Xにおけるaが1または2である場合、R2としては、水素原子または炭素数1~6のアルキル基が好ましい。炭素数1~6のアルキル基の具体例は上記の通りであり、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0029】
Yは、1,3,5-トリアジン環の炭素原子に直接結合しているアミノ基(-NH2)を有する。1,3,5-トリアジン環の炭素原子に直接結合しているアミノ基が2つ存在することにより、化合物(A)により形成される被膜が、部材間の接合性向上に寄与するとともに、高温高湿環境での被膜の劣化が抑制され、高い接着性が維持される傾向がある。
【0030】
化合物(A)は、その構造上、380以上の分子量を有している。化合物(A)の分子量は、400以上または420以上であってもよい。化合物(A)の分子量が過度に大きい場合は、溶媒への溶解性や被膜形成性が低下する傾向があるため、化合物(A)の分子量は2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下または1000以下であってもよい。
【0031】
少なくとも1個のXと少なくとも1個のYを有する化合物(A)は、XとYが異なる窒素原子に結合している化合物(「化合物(1)」と記載する場合がある)と、XとYが同一の窒素原子に結合している化合物(「化合物(2)」と記載する場合がある)に大別される。
【0032】
<化合物(1)>
一般式(A)において、異なる窒素原子にXとYが結合している化合物は、下記の一般式(1)で表される。
【0033】
【0034】
一般式(1)において、Q2、Q4、Q5およびQ6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、X、またはYである。
【0035】
一般式(1)において、Q
5はXまたはYであることが好ましい。すなわち、化合物(1)としては、下記の一般式(11)または一般式(12)の化合物が好ましい。
【化7】
【0036】
一般式(11)および一般式(12)において、Q2は水素原子またはXであることが好ましい。Q4およびQ6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、またはXであり、好ましくは水素原子またはXである。
【0037】
一般式(11)および一般式(12)において、Q2がXまたは水素原子であり、Q4およびQ6が水素原子である化合物は、下記の一般式群で表される。
【0038】
【0039】
一般式(1)において、Q5およびQ6が水素原子であってもよい。一般式(1)において、Q5およびQ6が水素原子である化合物は、下記の一般式(13)で表される。
【0040】
【0041】
一般式(13)において、Q2は水素原子またはXであることが好ましく、Q4は水素原子またはXであることが好ましい。一般式(13)において、Q2がXまたは水素原子であり、Q4が水素原子またはXである化合物は、下記の一般式群で表される。
【0042】
【0043】
一般式(132)および一般式(134)の化合物は、一般式(A)において、Q1がX、Q3がYであり、XとYが異なる窒素原子に結合しているから、化合物(1)に該当する。また、一般式(132)および一般式(134)の化合物は、一般式(A)において、Q3がY、Q4がXであり、同一の窒素原子にXとYが結合していることから、化合物(2)にも該当する。
【0044】
金属表面への被膜形成性、層間の密着性、および被膜の耐久性の観点から、化合物(1)は、XおよびYの数が1個または2個であり、かつXおよびYのいずれか一方または両方を2個有するものが好ましい。上記の中では、一般式(111)(121)(122)(133)の構造が好ましい。
【0045】
XにおけるR51は、メラミンのアミノ基の窒素原子と、シリル基のケイ素原子とを繋ぐ連結基であり、2価の有機基である。化合物(1)が2個以上のXを含む場合、それぞれのXにおけるR51は、同一でもよく異なっていてもよい。
【0046】
R51は直鎖状でも分枝を有していてもよい。R51の主鎖を構成する原子の数(メラミンのアミノ基の窒素原子と、シリル基のケイ素原子の間の原子の数)は、1~12個が好ましく、2~12個がより好ましい。
【0047】
R51は、アルキレン基でもよく、主鎖に炭素以外の原子(ヘテロ原子)を含むヘテロアルキレン基でもよい。ヘテロアルキレン基は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、アミノ基、イミノ基等を含んでいてもよい。R51は、好ましくは炭素数1~12の直鎖状のアルキレン基またはヘテロアルキレン基であり、中でも、炭素数1~12の直鎖状のアルキレン基が好ましい。R51が直鎖状のアルキレン基である場合、炭素数は、1~8が好ましく、2~6がより好ましい。R51はプロピレンであってもよい。分枝を有するアルキレン基の具体例としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、イソペンテン基等が挙げられる。
【0048】
YにおけるR3は、水素原子、アミノ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、またはXである。中でも、R3としては、水素原子が好ましい。水素原子以外のR3としては、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、X等が好ましい。
【0049】
YにおけるR52は、隣接する2つのメラミン骨格のアミノ基の窒素原子同士を繋ぐ連結基であり、2価の有機基である。化合物(1)が2個以上のYを含む場合、それぞれのYにおけるR52は、同一でもよく異なっていてもよい。
【0050】
R52は直鎖状でも分枝を有していてもよい。R52は環構造を含んでいてもよい。R52の主鎖を構成する原子の数(2つのメラミン骨格のアミノ基の窒素原子の間の原子の数)は、1~20個が好ましい。
【0051】
R52は、アルキレン基でもよく、主鎖に炭素以外の原子(ヘテロ原子)を含むヘテロアルキレン基でもよい。ヘテロアルキレン基は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、アミノ基、イミノ基等を含んでいてもよい。R52は、炭素数1~12の直鎖状のアルキレン基またはヘテロアルキレン基であってもよい。ヘテロアルキレンが主鎖に窒素原子(アミノ基)を含む場合、R52は、ヘテロアルキレンの窒素原子にアルキル基が結合している分枝構造を含んでいてもよい。
【0052】
上記の通り、R52は環構造を含んでいてもよい。R52が環構造を含む場合、R52の主鎖を構成する原子が環構造の一部を構成していてもよく、主鎖外の環構造が直接または間接的に主鎖に結合していてもよい。
【0053】
主鎖を構成する原子が環構造の一部を構成しているR52の例として、メラミン骨格を含み、主鎖の一部が1,3,5-トリアジン環の一部を構成しているものが挙げられる。このようなR52を有する化合物の例として、下記の一般式(125)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【0055】
一般式(125)におけるR3、Q2、Q4、Q6およびXは、上記のR3、Q2、Q4、Q6およびXと同様であり、複数のR3、Q2、Q4、Q6およびXは、それぞれ、同一でもよく、異なっていてもよい。R3、Q2、Q4およびQ6は、好ましくは水素原子である。
【0056】
一般式(125)の構造は、上記の一般式(12)の構造の一例であり、Y1およびY2が、一般式(12)の2つのYに相当する。Y1では、破線に囲まれたエチレン基R521が、Yにおける2価の有機基R52に相当する。Y2では、破線に囲まれた部分R522が、Yにおける2価の有機基R52に相当する。R522は、-C-C-N-[C=N-C]-N-C-C-が主鎖を構成しており、その一部である[C=N-C]が、1,3,5-トリアジン環の構成要素となっている。
【0057】
Yの2価の有機基R52の主鎖を構成する原子が環構造の一部を構成している例として、一般式(125)の構造について説明したが、R52の主鎖を構成する原子が環構造の一部を構成している例は、これに限定されない。例えば、R52は2個以上の環構造を含んでいてもよく、2個以上のメラミン骨格が連結している構造を含んでいてもよい。R52がメラミン骨格を含む場合、R52のメラミンの窒素原子にXが結合していることは必ずしも必要ではない。例えば、一般式(125)におけるR522のXに代えて、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基等が、メラミンの窒素原子に結合していてもよい。
【0058】
主鎖外に環構造を有するR52の例として、主鎖の窒素原子に、1,3,5-トリアジン環の炭素原子が結合しているものが挙げられる。このようなR52を有する化合物の例として、下記の一般式(135)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【0060】
一般式(135)におけるR3、Q2、Q4、Q5、Q6およびXは、上記のR3、Q2、Q4、Q5、Q6およびXと同様である。R3は、好ましくは水素原子である。Q2、Q4、Q5およびQ6は、好ましくは、水素原子またはXもしくはYである。
【0061】
一般式(135)におけるYが、一般式(1)におけるYに相当し、破線に囲まれた部分R523が、Yにおける2価の有機基R52に相当する。R523は、-C-C-N-C-C-が主鎖を構成しており、主鎖の窒素原子が、1,3,5-トリアジン環の炭素原子に結合することにより、メラミン骨格の一部を構成している。
【0062】
Yの2価の有機基R52が主鎖外に環構造を有する例として、一般式(135)の構造について説明したが、R52が主鎖外に環構造を有する例は、これに限定されない。例えば、R52は主鎖と主鎖外の環構造とが、アルキレン基等の2価の有機基を介して間接的に結合したものであってもよい。また、R52は主鎖外に2個以上の環構造を有していてもよく、2個以上のメラミン骨格を含んでいてもよい。R52がメラミン骨格を含む場合、主鎖との結合に関与しない窒素原子(一般式(135)において、トリアジン環の4位および6位の炭素原子に結合している環外の窒素原子)には、水素原子以外が結合していてもよい。例えば、一般式(135)においてR523に含まれる2つの-NH2は、それぞれ独立に、2つの水素原子の一方または両方が、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、XまたはY等に置換されていてもよい。
【0063】
<化合物(2)>
一般式(A)において、同一の窒素原子にXとYが結合している化合物は、下記の一般式(2)で表される。
【0064】
【0065】
一般式(2)において、Q3、Q4、Q5およびQ6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、X、またはYである。XおよびYの詳細は、化合物(1)について上記で説明したのと同様である。
【0066】
一般式(2)において、Q
3、Q
4、Q
5およびQ
6は、水素原子であることが好ましい。すなわち、化合物(2)としては、下記の一般式(21)の化合物が好ましい。
【化14】
【0067】
一般式(21)におけるX,Yを具体的に記載すると、下記の一般式(22)に書き換えられる。
【0068】
【0069】
一般式(22)におけるR1、R2、a、R3、R51およびR52およびの詳細は、先に記載した通りである。
【0070】
化合物(1)に関して先に詳述した通り、R52は、隣接する2つのメラミン骨格のアミノ基の窒素原子同士を繋ぐ連結基であり、2価の有機基である。R52は、典型的には、直鎖アルキレンであり、その具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、ペンテン基、ヘキセン基等が挙げられる。R52は、ヘテロアルキレン基でもよく、環構造を含んでいてもよい。R52が環構造を含む場合、R52の主鎖を構成する原子が環構造の一部を構成していてもよく、主鎖外の環構造が直接または間接的に主鎖に結合していてもよい。
【0071】
一般式(22)において、R52が主鎖外に環構造を含む化合物の例として、R52の主鎖の窒素原子に、1,3,5-トリアジン環の炭素原子が結合しているものが挙げられる。このようなR52を有する化合物の例として、下記の一般式(225)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【0073】
一般式(225)におけるR1、R2、a、R3およびR51は、上記と同様である。一般式(225)におけるYが、一般式(21)におけるYに相当し、破線に囲まれたれた部分R525が、Yにおける2価の有機基R52に相当する。R525は、-C-C-N-C-C-が主鎖を構成しており、主鎖の窒素原子が、1,3,5-トリアジン環の炭素原子に結合することにより、メラミン骨格の一部を構成している。
【0074】
Yの2価の有機基R52が主鎖外に環構造を有する例として、一般式(135)の構造について説明したが、R52が主鎖外に環構造を有する例は、これに限定されず、化合物(1)について前述した通り、種々の化学構造を含み得る。
【0075】
化合物(1)に関して先に詳述した通り、R3は、水素原子、アミノ基、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアミノアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~25のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数7~30のアラルキル基、またはXである。中でも、R3としては、水素原子が好ましい。水素原子以外のR3としては、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、X等が好ましい。一般式(22)におけるR3がXである化合物の具体例として、後述の実施例における化合物2Iが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
[化合物の合成方法]
上記の化合物の合成方法は特に限定されない。反応性および収率が高いこと等から、1,3,5-トリアジンの2位、4位、6位の炭素原子のいずれか1または複数に塩素原子が結合している1,3,5-トリアジン誘導体の塩素原子の反応を利用する方法が好ましい。1,3,5-トリアジン環の炭素原子に結合した塩素原子と、アミノ基との反応(脱塩酸縮合)により、トリアジン環の炭素原子に窒素原子が結合している化合物が得られる。
【0077】
<化合物(1)の合成>
下記のスキーム1に示す様に、炭素原子上の置換基として、-NH-R51-Si(OR1)a(R2)3-aおよび塩素原子を有する1,3,5-トリアジン誘導体(61)と、メラミンのアミノ基の水素原子がアミノアルキル基-R52-NH2で置換されたメラミン誘導体(71)との反応により、1つのXと2つのYを有する一般式(121)の化合物が得られる。
【0078】
【0079】
下記のスキーム2に示す様に、1,3,5-トリアジン誘導体(62)と、メラミン誘導体(71)との反応により、2つのXと1つのYを有する一般式(111)の化合物が得られる。
【0080】
【0081】
上記のスキーム1における1,3,5-トリアジン誘導体(61)に代えて、置換基として、-N[R51-Si(OR1)a(R2)3-a]2および塩素原子を有する1,3,5-トリアジン誘導体(63)を用いることにより、下記のスキーム3に示す様に、2つのXと2つのYを有する一般式(122)の化合物が得られる。
【0082】
【0083】
上記のスキーム1における1,3,5-トリアジン誘導体(61)に代えて、下記の1,3,5-トリアジン誘導体(64)を用いることにより、一般式(125)の化合物が得られる。
【0084】
【0085】
上記の1,3,5-トリアジン誘導体(61)~(64)とメラミン誘導体(71)との反応は、例えば、塩基存在下、20~200℃程度の温度で行われる。
【0086】
置換基として加水分解性シリル基および塩素原子を有する1,3,5-トリアジン誘導体(61)~(63)は、例えば、WO2013/186941号に記載の方法により合成できる。具体的には、塩化シアヌルと、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物との反応により、化合物(61)(62)が得られる。また、塩化シアヌルと、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン等のアミノシラン化合物との反応により、化合物(63)が得られる。
【0087】
化合物(64)は、下記のスキーム4に示すように、化合物(61)とエチレンジアミンとの反応により合成できる。この反応において、化合物(61)の量を、エチレンジアミンの2モル倍よりも過剰とすることにより、3量体以上の多量体の生成を抑制できる。
【0088】
【0089】
エチレンジアミンに代えて、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン等の鎖長の異なるジアミンを用いることにより、隣接する2つのメラミン骨格の窒素原子間の鎖長を変更できる。
【0090】
メラミンのアミノ基の水素原子がアミノアルキル基-R52-NH2で置換されたメラミン誘導体は、例えば、下記のスキーム5に示すように、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンとジアミン(H2N-R52-NH2)との反応により得られる。この反応において、ジアミンの量を2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンの量よりも過剰とすることにより、多量体の生成を抑制できる。
【0091】
【0092】
<化合物(2)の合成>
下記のスキーム6に示すように、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンとアミノシラン化合物(81)との反応により、同一の窒素原子にXとYが結合している一般式(22)の化合物が得られる。
【0093】
【0094】
反応収率を高める観点から、スキーム6の反応では、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンの量を、アミノシラン化合物(81)の2モル倍よりも過剰とすることが好ましい。R3が水素原子である場合、アミノシラン化合物(81)は、末端の第一級アミノ基(-NH2)の2つの水素原子のうちの1つが、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンと脱塩酸縮合すると、アミノ基のもう1つの水素原子は、酸性度が低く、かつ立体障害等により反応が制限されているため、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンとはほとんど反応しない。そのため、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンの量が過剰でも、副反応物はほとんど生成しない。
【0095】
R3が水素原子であるアミノシラン化合物(81)の具体例としては、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン、8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)イソブチルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)イソブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0096】
アミノシラン化合物(81)におけるR3は水素原子に限定されず、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基等であってもよく、R3は加水分解性シリル基を含んでいてもよい。R3が加水分解性シリル基を含むアミノシラン化合物(81)の具体例として、N,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミンが挙げられる。
【0097】
アミノシラン化合物として、加水分解性シリル基と末端のアミノ基(-NHR3)の間に、複数の-NH-を有する化合物を用いてもよい。例えば、下記のスキーム7に示す様に、複数の-NH-を有するアミノシラン化合物(82)と、2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンとの反応により、一般式(225)の化合物が得られる。
【0098】
【0099】
アミノシラン化合物(82)の具体例としては、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0100】
上記のアミノシラン化合物(81)(82)と2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンとの反応は、例えば、トリエチルアミン等の塩基存在下、20~200℃程度の温度で行われる。
【0101】
[表面処理剤]
上記の化合物(A)は、金属部材や樹脂部材の表面処理剤として利用できる。例えば、化合物(A)を溶媒に溶解することにより、表面処理剤が調製される。溶媒は、化合物(A)を溶解可能であれば特に限定されず、水、ジメチルスルホキシド、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドンやN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、エステル類、エーテル類、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、ケトン類、芳香族炭化水素等を用いることができる。溶媒は、混合溶媒であってもよい。水としては、イオン性物質や不純物を除去した水が好ましく、例えばイオン交換水、純水、超純水等が好ましく用いられる。
【0102】
表面処理剤における化合物(A)の濃度は特に限定されないが、金属表面への被膜形成性と溶液の安定性とを両立する観点から、0.01~60重量%程度が好ましく、0.05~50重量%、0.1~30重量%、0.5~25重量%または1~20重量%であってもよい。表面処理剤における化合物(A)のモル濃度は、例えば0.1~1500mmol/L程度であり、1~1000mmol/L、5~500mmol/Lまたは10~300mmol/Lであってもよい。
【0103】
表面処理剤には、複数種の化合物(A)が含まれていてもよい。複数種の化合物(A)を含む場合、合計の濃度が上記範囲であることが好ましい。
【0104】
表面処理剤は、化合物(A)および溶媒に加えて、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、銅イオン等の金属イオンまたはその塩、錯化剤、界面活性剤、安定化剤、シランカップリング剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0105】
[金属部材の表面処理]
金属部材の表面に上記の表面処理剤を接触させ、必要に応じて溶媒を乾燥除去することにより、
図1に示すように、金属部材11の表面に被膜12が形成される。金属部材11の表面に化合物(A)による被膜12が設けられることにより、金属部材と樹脂との接着性が向上する。
【0106】
被膜12は、化合物(A)が金属表面に吸着することにより形成される。化合物(A)は、1,3,5-トリアジン環の炭素原子に直接結合している第一級アミノ基(-NH2)を少なくとも4つ有しており、この第一級アミノ基が金属に配位しやすい。また、化合物(A)の-Si-OR1が加水分解縮合性を有しているため、金属表面に吸着した化合物(A)は、分子間で共有結合を形成可能である。そのため、化合物(A)は、金属表面への被膜形成性に優れるとともに、高温高湿環境での被膜の劣化が少なく、部材間の接合性向上に寄与すると考えられる。
【0107】
金属部材としては、半導体ウェハー、電子基板およびリードフレーム等の電子部品、装飾品、ならびに建材等に使用される銅箔(電解銅箔、圧延銅箔)の表面や、銅めっき膜(無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜)の表面、あるいは線状、棒状、管状、板状等の種々の用途の銅材が例示できる。特に、上記の表面処理剤は、銅または銅合金の表面への被膜形成性に優れている。そのため、金属部材としては、銅箔、銅めっき膜、および銅材等が好ましい。金属部材の表面は平滑でもよく、粗化されていてもよい。粗化された金属部材を表面処理して被膜を形成することにより、金属部材と樹脂との密着性がさらに向上する場合がある。
【0108】
金属部材の表面処理は、例えば以下のような条件で行われる。
一般には、酸等により、金属部材の表面洗浄が行われる。洗浄の他に、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射、酸処理、アルカリ処理、水蒸気処理等を行ってもよい。次に、上記の表面処理剤を金属部材に接触させる。例えば、金属部材を上記の処理液に浸漬し、2秒~30分間程度浸漬処理をする。この際の溶液の温度は、10~50℃程度が好ましく、より好ましくは15~35℃程度である。浸漬処理では、必要に応じて搖動を行ってもよい。表面処理剤を金属部材に接触させる方法として、浸漬法の他に、スプレー法、バーコート法、スピンコート法、コンマコート法、インクジェット法等の塗布法を採用してもよい。表面処理剤を金属部材に接触させた後、金属表面に付着した余剰の溶液を除去することにより、金属部材11の表面に被膜12を有する表面処理金属部材10が得られる。
【0109】
金属表面に付着した余剰の溶液を除去する方法としては、乾燥、洗浄等が挙げられる。金属表面に溶液が付着した余剰の表面処理剤の洗浄には、一般には、水または水溶液が用いられる。洗浄液として、薄酸またはアルカリ水溶液を用いてもよい。薄酸としては例えば0.1~6重量%程度の硫酸または塩酸が用いられる。アルカリとしては、0.1~5重量%程度のNaOH水溶液またはKOH水溶液が用いられる。洗浄液として有機溶媒を用いてもよい。
【0110】
図1では、板状の金属部材11の片面にのみ被膜12が形成されているが、金属部材の両面を表面処理して、金属部材の両面に被膜を形成してもよい。被膜は樹脂との接合面の全体に形成されることが好ましい。金属部材の表面処理は、浸漬法に限定されず、スプレー法やバーコート法等の適宜の塗布方法を選択できる。
【0111】
[金属‐樹脂複合体]
表面処理金属部材10の被膜12形成面上に、樹脂部材20を接合することにより、
図2に示す金属‐樹脂複合体50が得られる。なお、
図2では、板状の金属部材11の片面にのみ被膜12を介して樹脂部材(樹脂層)20が積層されているが、金属部材の両面に樹脂部材が接合されてもよい。
【0112】
被膜上に樹脂部材を形成する前に、被膜表面の濡れ性向上や、保管環境に応じた処理を実施してもよい。被膜表面の処理としては、洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射、酸処理、アルカリ処理、水蒸気処理等が挙げられる。また、被膜上に樹脂部材を形成する前に、加熱等の処理を実施してもよい。化合物(A)を含む表面処理剤により形成された被膜は、加熱による劣化が少ないため、樹脂部材の形成前や、樹脂部材形成時に加熱を行う場合でも、金属と樹脂間の高い接着性を発揮できる。
【0113】
表面処理金属部材10と樹脂部材20との接合方法としては、積層プレス、ラミネート、塗布、射出成形、トランスファーモールド成形等の方法を採用できる。樹脂層を形成後に、加熱や活性光線の照射により樹脂の硬化を行ってもよい。
【0114】
樹脂部材を構成する樹脂は、特に限定されず、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリプロピレン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル等の熱硬化性樹脂、あるいは紫外線硬化性エポキシ樹脂、紫外線硬化性アクリル樹脂等の紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は官能基によって変性されていてもよく、ガラス繊維、アラミド繊維、その他の繊維等で強化されていてもよい。
【0115】
化合物(A)を含む表面処理剤を用いて金属表面に形成された被膜は、金属と樹脂との接着性に優れるため、他の層を介することなく、金属部材表面に設けられた被膜12上に直接樹脂部材20を接合できる。すなわち、化合物(A)を含む表面処理剤を用いることにより、金属部材表面に被膜を形成し、その上に直接樹脂部材を接合するのみで、高い接着性を有する金属‐樹脂複合体が得られる。
【実施例】
【0116】
以下に、本発明の実施例を比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0117】
[中間化合物の合成]
<合成例1:2,4-ジアミノ-6-(6-アミノヘキシルアミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
反応容器(攪拌翼、温度計、還流冷却管を備えた四つ口フラスコ)に、380.4重量部のヘキサメチレンジアミン、および59.5重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後、1時間かけて110℃まで昇温し、その後3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮したのち、メタノールに溶解させ、濾過を行い、テトラヒドロフランで再沈精製を行った。その後、9%アンモニア水で洗浄したのち、減圧乾燥を行い、下記の化合物(80.5重量部、収率87.5%)を得た。
【0118】
【0119】
<合成例2:2,4-ジアミノ-6-(2-(2-アミノエチルスルフィド)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
反応容器に、246.0重量部の2,2’-チオビス(エチルアミン)、および119.0重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後、1時間かけて110℃まで昇温し、その後3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:メタノール)による精製を行い、下記の化合物(82.8重量部、収率44.2%)を得た。
【0120】
【0121】
<合成例3:2,4-ジアミノ-6-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
反応容器に、303.3重量部の1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、および119.0重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて110℃まで昇温し、3時間攪拌した。その後は、合成例2と同様にして精製を行い、下記の化合物(93.7重量部、収率44.6%)を得た。
【0122】
【0123】
<合成例4:2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
反応容器に、393.6重量部のエチレンジアミン、および59.5重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後、1時間かけて110℃まで昇温し、3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮して、過剰なジアミンを留去した後、9%アンモニア水に溶解させ、濾過し、メタノールとテトラヒドロフランで再沈精製を行った。濾物を減圧乾燥して、下記の化合物(62.9重量部、収率91.0%)を得た。
【0124】
【0125】
<合成例5:2,4-ジアミノ-6-(2-(2-アミノエチルメチルアミノ)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
反応容器に、239.9重量部の2,2'-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、および119重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて110℃まで昇温し、3時間攪拌した。その後は、合成例2と同様にして精製を行い、下記の化合物(81.5重量部、収率44.1%)を得た。
【0126】
【0127】
<合成例6:2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
WO2013/186941号の実施例の記載に従って、下記の化合物を合成した。
【0128】
【0129】
<合成例7:2,4-ジクロロ-6-(3-(ジエトキシメチルシリル)プロピル)アミノ-1,3,5-トリアジンの合成>
WO2013/186941号の記載に従って、下記の化合物を合成した。
【0130】
【0131】
<合成例8:2、4-ジクロロ-6-(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
WO2013/186941号の記載に従って、下記の化合物を合成した。
【0132】
【0133】
<合成例9:2-クロロ-4,6-ビス(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンの合成>
WO2013/186941号の記載に従って、下記の化合物を合成した。
【0134】
【0135】
<合成例10:N,N’-ビス(4-(2-クロロ-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン)-イル)-エチレンジアミンの合成>
攪拌翼、温度計および滴下漏斗を備えた四つ口フラスコに、300重量部のテトラヒドロフラン、191.3重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後30℃に調整した。この溶液に、47.5重量部のトリエチルアミン、14.1重量部のエチレンジアミンと100重量部のテトラヒドロフランの混合物を、2時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。0℃まで冷却した後静置し、デカンテーション後に濾過を行った。濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)による精製を行い、下記の化合物(135.0重量部、収率79%)を得た。
【0136】
【0137】
[表面処理剤用化合物の合成]
下記の合成例に従い、表1~5に示す化合物を合成した。化合物101,102および103は、WO2013/186941号の実施例の記載に従って合成した。化合物108:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランは、市販品を用いた。
【0138】
合成により得られた化合物は、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)により分析を行い、目的化合物のプロトン付加体およびナトリウムアダクトイオンに相当するm/z(表1~5の[M+H]+および[M+Na]+の値を参照)を有するイオンの検出により、目的化合物であることを確認した。上記の中間化合物の合成においても、精製後の化合物のLC/MS分析により、目的物が合成されていることを確認した。
【0139】
<合成例21:化合物1Aの合成>
反応容器(攪拌翼、温度計、還流冷却管を備えた四つ口フラスコ)に、300重量部のジメチルスルホキシド、および80.5重量部の2,4-ジアミノ-6-(6-アミノヘキシルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、66.0重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に39.8重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。その後、50重量部のテトラヒドロフランを加え、濾過を行い、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、さらに減圧乾燥をおこなった。生成物にジメチルスルホキシドを加え、化合物1Aを15重量%含む溶液を得た。
【0140】
<合成例22:化合物1Bの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および82.8重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-(2-アミノエチルスルフィド)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、66.7重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に40.2重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Bを18重量%含む溶液を得た。
【0141】
<合成例23:化合物1Cの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および31.5重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、103.0重量部の2-クロロ-4,6-ビス(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に20.7重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Cを13重量%含む溶液を得た。
【0142】
<合成例24:化合物1Dの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、68.7重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Dを15重量%含む溶液を得た。
【0143】
<合成例25:化合物1Eの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、63.1重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(ジエトキシメチルシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。その後は、合成例21と同様に精製を行い、化合物1Eを16重量%含む溶液を得た。
【0144】
<合成例26:化合物1Fの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、60.9重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリメトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Fを18重量%含む溶液を得た。
【0145】
<合成例27:化合物1Gの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および93.7重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、67.3重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に40.5重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Gを20重量%含む溶液を得た。
【0146】
<合成例28:化合物1Hの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、106.7重量部の2、4-ジクロロ-6-(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Hを18重量%含む溶液を得た。
【0147】
<合成例29:化合物1Iの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、91.0重量部の2、4-ジクロロ-6-(ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Iを15重量%含む溶液を得た。
【0148】
<合成例30:化合物1Jの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシド、および62.9重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-アミノエチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。この溶液に、135.0重量部のN,N’-ビス(4-(2-クロロ-6-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノ-1,3,5-トリアジン)-イル)-エチレンジアミンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に41.4重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Jを19重量%含む溶液を得た。
【0149】
<合成例31:化合物1Kの合成>
反応容器に、300重量部のジメチルスルホキシドと81.5重量部の2,4-ジアミノ-6-(2-(2-アミノエチルメチルアミノ)エチルアミノ)-1,3,5-トリアジンを仕込み、反応容器内を窒素ガス置換した後70℃まで昇温した。ここに66.5重量部の2,4-ジクロロ-6-(3-(トリエトキシシリルプロピル)アミノ)-1,3,5-トリアジンと50重量部のテトラヒドロフランの混合物を加えた後、120℃で2時間撹拌した。反応液を50℃まで冷却した後に40.1重量部のトリエチルアミンを加え、30分攪拌した。合成例21と同様に精製を行い、化合物1Kを18重量%含む溶液を得た。
【0150】
【0151】
【0152】
<合成例41:化合物2Aの合成>
反応容器に、47.3重量部の3-(2-アミノエチルアミノ)イソブチルトリメトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後、1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。反応液に600重量部のテトラヒドロフランを加え、室温まで冷却した後、濾過を行い、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮し、さらに減圧乾燥をおこなった。生成物にジメチルスルホキシドを加え、化合物2Aを15重量%含む溶液を得た。
【0153】
<合成例42:化合物2Bの合成>
反応容器に、58.5重量部の8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Bを18重量%含む溶液を得た。
【0154】
<合成例43:化合物2Cの合成>
反応容器に、44.5重量部の3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Cを17重量%含む溶液を得た。
【0155】
<合成例44:化合物2Dの合成>
反応容器に、41.3重量部の3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Dを18重量%含む溶液を得た。
【0156】
<合成例45:化合物2Eの合成>
反応容器に、62.5重量部の(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Eを16重量%含む溶液を得た。
【0157】
<合成例46:化合物2Fの合成>
反応容器に、53.1重量部の3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、101.9重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、71.0重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Fを20重量%含む溶液を得た。
【0158】
<合成例47:化合物2Gの合成>
反応容器に、52.9重量部の3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のエタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Gを20重量%含む溶液を得た。
【0159】
<合成例48:化合物2Hの合成>
反応容器に、55.7重量部の[3-(6-アミノヘキシルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、撹拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Hを18重量%含む溶液を得た。
【0160】
<合成例49:化合物2Iの合成>
反応容器に、76.9重量部のN,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エタン-1,2-ジアミン、72.8重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、撹拌した。この溶液に、50.8重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物2Iを17重量%含む溶液を得た。
【0161】
【0162】
【0163】
<合成例104:化合物104の合成>
反応容器に、44.3重量部の3-アミノプロピルトリエトキシシシラン、43.7重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、30.6重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のエタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物104を16重量%含む溶液を得た。
【0164】
<合成例105:化合物105の合成>
反応容器に、35.9重量部の3-アミノプロピルトリメトキシシシラン、43.7重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、30.6重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物105を18重量%含む溶液を得た。
【0165】
<合成例106:化合物106の合成>
反応容器に、38.7重量部のN-メチル-3-(トリメトキシシリル)プロピルアミン、43.7重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、30.6重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物106を16重量%含む溶液を得た。
【0166】
<合成例107:化合物107の合成>
反応容器に、47.1重量部の[3-(ブチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、43.7重量部の2-クロロ-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、および200重量部のジメチルスルホキシドを仕込み、攪拌した。この溶液に、30.6重量部のトリエチルアミンおよび20.0重量部のメタノールを加え、反応容器内を窒素ガス置換した後1時間かけて95℃まで昇温し、その後6時間攪拌した。合成例41と同様に精製を行い、化合物107を18重量%含む溶液を得た。
【0167】
【0168】
[表面処理剤の調製]
上記の表面処理剤を、表6,7に示す濃度で溶媒に溶解して溶液(表面処理剤)を調製した。溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSOとメタノールの1:1の混合溶媒、DMSOとエタノールの1:1の混合溶媒、またはDMSOとイオン交換水(DIW)の2:1の混合溶媒を用いた。
【0169】
[接着性の評価]
電解銅箔(三井金属鉱業社製 3EC-III、厚み35μm)を100mm×100mmに裁断し、常温の6.25重量%硫酸水溶液に30秒間浸漬揺動して除錆処理を行った後、水洗・乾燥したものを試験用銅箔(テストピース)として使用した。
【0170】
表6および表7に示す溶液(25℃)中に、テストピースを180秒間揺動浸漬した後、テストピースを溶液から取り出し、60℃で乾燥した。表面処理後のテストピース上に、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR-4グレード)を積層プレスし、銅箔と樹脂を接着させた。このテストピースの樹脂積層面と反対側から、銅箔に幅10mm×長さ60mmの矩形の切り込みを入れ、切り込みの外周部分の銅箔を剥離除去した。この試料を、130℃、相対湿度85%、2気圧の条件で50時間静置して、加速劣化試験(HAST)を行った。HAST後の試料の銅箔の先端をつかみ具で把持して、JIS C6481に準拠して50mm/分の剥離速度で60mmの長さにわたって90°剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
【0171】
実施例および比較例の溶液の組成、接着性の評価結果を、表6および表7に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
2以上のトリアジン環を含み、トリアジン環に直接結合した-NH2を有する化合物により表面処理を行った実施例1~22および実施例41~58は、いずれも剥離強度が0.20N/mm以上であり、HAST試験後の被膜の劣化が少なく、優れた接着性を示した。
【0175】
トリアジン環を含まないシランカップリング剤である化合物108により銅箔を表面処理した比較例10では、加速劣化試験の試料の剥離強度が0.1N/mm未満であり、銅箔と樹脂が接着していなかった。トリアジン環を1つ含む化合物101または化合物102により表面処理を実施した比較例1~3も、剥離強度は0.1N/mm未満であった。2つのトリアジン環および2つのトリアルコキシシリル基を含み、トリアジン環の炭素原子に直接結合した-NH2を含まない化合物103を用いた比較例4も剥離力が0.1N/mm未満であった。
【0176】
トリアジン環を1つ含み、トリアジン環の炭素原子に直接結合した-NH2を有する化合物104~107により銅箔を表面処理した比較例5~9では、比較例1~4に比べると、加速劣化試験の試料の剥離強度が高かったが、剥離強度は0.10N/mm未満であり、接合性が不十分であった。
【要約】 (修正有)
【課題】表面処理剤等に好適に使用される化合物を提供する。
【解決手段】下式(A)で表される化合物。
[式中、Q
1~Q
6のうち、少なくとも1つがXであり、少なくとも1つがYである。R
1は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。R
2は、水素原子、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~30のアラルキル基からなる群から選択される1価の炭化水素基である。aは1~3の整数である。]
【選択図】なし