(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】シワ改善剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/899 20060101AFI20230815BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230815BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20230815BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20230815BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230815BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230815BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230815BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20230815BHJP
【FI】
A61K36/899
A61P17/00
A61K36/06
A61K35/744
A61K8/9794
A61Q19/08
A61K8/99
A61K8/9728
(21)【出願番号】P 2023064487
(22)【出願日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591002795
【氏名又は名称】株式会社創研
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】徳山 孝
(72)【発明者】
【氏名】徳山 孝仁
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/148737(WO,A1)
【文献】特開2001-253807(JP,A)
【文献】特開昭63-154607(JP,A)
【文献】特開2008-194040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
A61K35/00-36/9068
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米に水を加えたもの又はその抽出物に対して、
澱粉分解酵素と蛋白分解酵素と脂肪分解酵素と繊維分解酵素とから構成される酵素及び/又は米麹を作用させたもの或いはその抽出物を、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得、前記発酵物を固液分離して液体部を得、前記液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、前記陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることにより得られたことを特徴とする、シワ改善剤。
【請求項2】
前記発酵物が、アルコール発酵させたものである、請求項1記載のシワ改善剤。
【請求項3】
米に水を加えたもの又はその抽出物に対して、
澱粉分解酵素と蛋白分解酵素と脂肪分解酵素と繊維分解酵素とから構成される酵素及び/又は米麹を作用させたもの或いはその抽出物を得る、加水又は抽出工程と、
前記加水又は抽出工程後、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得る発酵工程と、
前記発酵物を固液分離して液体部を得る固液分離工程と、
前記液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、前記陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させる吸着・溶出工程と
を有することを特徴とする、シワ改善剤の調製方法。
【請求項4】
前記発酵工程での発酵が、アルコール発酵である、請求項3記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ改善剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、米を原料とした外用剤が多く提案されている。例えば、特許文献1~6には、様々な用途に関し、米の粉砕物を有効成分として含有する組成物;米の抽出物を有効成分として含有する組成物;前記抽出物が、米に水又は有機溶媒を加えたもの、米を酸又はアルカリで処理したもの、米の加水物に酵素又は麹を作用させたもの、或いは、これらを加熱又は非加熱下でおこなったものである組成物;米を抽出するに際し、その抽出前、抽出と同時又は抽出後に酵素又は麹を作用させたものを有効成分として含有する組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-252129号公報
【文献】特開平7-41426号公報
【文献】特開平6-25004号公報
【文献】特開平5-339163号公報
【文献】特開平5-301823号公報
【文献】特開平5-139984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、米を原料とした、シワ改善に特に有効な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、米に水を加えたもの又はその抽出物に対して、酵素及び/又は米麹を作用させたもの或いはその抽出物を、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得、前記発酵物を固液分離して液体部を得、前記液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、前記陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることにより得られたことを特徴とする、シワ改善剤である。
本発明(2)は、前記発酵物が、アルコール発酵させたものである、前記発明(1)のシワ改善剤である。
本発明(3)は、米に水を加えたもの又はその抽出物に対して、酵素及び/又は米麹を作用させたもの或いはその抽出物を得る、加水又は抽出工程と、
前記加水又は抽出工程後、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得る発酵工程と、
前記発酵物を固液分離して液体部を得る固液分離工程と、
前記液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、前記陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させる吸着・溶出工程と
を有することを特徴とする、シワ改善剤の調製方法である。
本発明(4)は、前記発酵工程での発酵が、アルコール発酵である、前記発明(3)の調製方法である。
【0006】
本発明によれば、米を原料とした、シワ改善に特に有効な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例に係るシワ改善剤についての、コラーゲン産生試験の結果である。
【
図2】
図2は、実施例及び比較例に係るシワ改善剤についての、ヒアルロン酸産生試験の結果である。
【
図3】
図3は、実施例及び比較例に係るシワ改善剤についての、NMF産生試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一形態である本形態は、好適には、米に水を加えたもの又はその抽出物に対して、酵素及び/又は米麹を作用させたもの或いはその抽出物を、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得、前記発酵物を固液分離して液体部を得、前記液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、前記陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることにより得られたことを特徴とする、シワ改善剤である。
【0009】
≪シワ改善剤の製造方法≫
本形態に係るシワ改善剤は、例えば、(第一工程)米に水を加えたもの又はその抽出物を得る工程、(第二工程)第一工程で得られたものに対して、酵素及び/又は米麹を作用させる(又はそれを抽出する)工程、(第三工程)第二工程で得られたものに対して、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵させて発酵物を得る工程、(第四工程)第三工程で得られた発酵物を固液分離して液体部を得る工程、(第五工程)第四工程で得られた液体部を陽イオン交換樹脂に通した後、該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させる陽イオン吸着・溶出工程、により得られる。以下、本形態に係るシワ改善剤の製造方法を詳述する。
【0010】
<第一工程>
第一工程は、米に水を加えたもの又はその抽出物を得る工程である。ここで、「米」とは、白米、玄米及び発芽させた米といった米だけでなく、白糠及び赤糠等といった米の一部も含む概念である。但し、白米部分を必須的に含むもの、即ち、白米、玄米、発芽させた米、白糠を用いることが好適である。ここで、白米及び玄米に関しては、ジャポニカ、インディカ米を問わず、うるち米、及び餅米等の玄米及び白米を指し、品種、種類は問わない。また、白糠及び赤糠とは、一般に、精白時に出てくる92%以上の赤糠や92%以下の白糠を指すが、両者が混合したものを使用してもよい。尚、上記の原料は、浸漬、蒸煮、焙煎(砂焙り、網焙り、熱風焙煎等全てを指す)、蒸煮焙煎、凍結乾燥等の表面変性、UV照射等の光変性、パットライス等の加圧焙煎、揚げる等の原料処理をしてもよい。白米、玄米及び発芽させた米は、そのまま用いてもよく、粉砕して用いてもよい。白米、玄米及び発芽させた米を粉砕して粉体化するには、粉砕機又は精米機を用い一般的な方法で行なえばよい。
【0011】
発芽させた米を製造する場合、胚芽のついた米を水に浸漬又は水を噴霧して発芽させる。発芽させる時の温度は10~50℃である。但し、発芽さえすれば、温度及び時間は問わない。また、発芽中に水が腐敗する危険性がある場合は、腐敗しないように水を取り替えるか、何らかの防腐を行うのが好ましい。ここで、発芽とは、発芽する直前から発芽したものまで全てを指す。この発芽させた米をよく洗浄して用いる。この際、乾燥して用いてもよい。米を抽出、或いは酵素分解又は麹を作用させる場合、原料の米を粉砕して顆粒或いは粉体化すると、表面積が大きくなるため効率がよくなる。粉砕しなくてもよいが、この場合には、米組織の分解及び抽出に長時間を要する。
【0012】
次に、「抽出」とは、米を液体媒体で処理することを指す。ここで、液体媒体での処理としては、水抽出、酸抽出、アルカリ抽出、有機溶媒抽出等を挙げることができる。まず、米を水抽出する場合、抽出温度は、高温が効率的であるが、低温でも十分に抽出を行うことができる。但し、40℃以下の低温の場合は、pHを酸性又はアルカリ性にするか、防腐剤又はアルコールを加えて、米が腐敗しないように処理することが望ましい。抽出時間は、有効成分さえ抽出できれば、長くても短くてもよく、抽出温度により定めればよい。また、抽出は、加圧下又は常圧下で行っても、減圧下で行ってもよい。水抽出の場合、最も問題になるのは糊化現象である。糊状になれば、抽出効率が悪くなるばかりでなく、実作業においては困難を極める。これを防ぐためには、アミラーゼを加えて反応させるか、塩酸等で酸性にして澱粉を切ってやればよく、この方法を用いることにより、十分に解決でき、実用上も全く問題はない。また、酸分解抽出又はアルカリ分解抽出を行う場合、必要により中和、脱塩を行う。有機溶媒で抽出する場合も、米はなるべく微粉砕又は粉体化して抽出することが望ましい。有機溶媒はアルコール、アセトン、n-へキサン、酢酸エチル、メタノール等の一般的な有機溶媒でよいが、人体に対して有害なものは抽出後、溶媒を完全に除去する必要があるので安全なものがよい。
【0013】
<第二工程>
第二工程は、第一工程で得られたもの(米に水を加えたもの又はその抽出物)に対して、酵素及び/又は米麹を作用させる(又はそれを抽出する)工程である。ここで、酵素は、澱粉分解酵素(液化酵素、糖化酵素)、蛋白分解酵素、脂肪分解酵素、繊維分解酵素、リグニン分解酵素、ペクチン分解酵素等、米に働く酵素である。また、酵素は、1種でも2種以上を組み合わせてもよい(例えば、液化酵素と糖化酵素との組み合わせ)。また、米麹は、特に限定されない。即ち、麹菌の種類並びに米の品種及び種類は特に問わない。尚、第一工程と第二工程とは、同時に実施しても、異なったタイミングで行ってもよい(即ち、抽出の前、抽出と同時又は抽出の後に、酵素分解及び米麹を作用させてもよい)。
【0014】
<第三工程>
第三工程は、第二工程で得られたものを、アルコール発酵及び/又は乳酸発酵する工程である。ここで、発酵形態としては、もろみ発酵及び液体発酵のいずれでもよく、もろみ発酵が好適である。これらの発酵を2回以上繰り返す、又は異なる発酵法を組み合わせてもよい。尚、酵母による通気発酵、アルコール沈殿等を行なって除糖してもよい。
【0015】
<第四工程>
第四工程は、第三工程で得られた発酵物を固液分離して液体部を得る工程である。ここで、固液分離の手法は、特に限定されず、例えば、圧搾や濾過である。
【0016】
<第五工程>
第五工程は、第四工程で得られた液体部を陽イオン交換樹脂に通し、該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を取得する陽イオン交換処理工程である。ここで、陽イオン交換樹脂は、特に限定されず、強酸性(スルホ基等)であっても弱酸性(カルボキシル基等)であってもよい。また、陽イオン交換樹脂に吸着された成分の回収方法も特に限定されないが、好適には、苛性ソーダで溶出させることが好適である。
【0017】
<他の工程等>
本形態に係るシワ改善剤の製造方法は、上述した第一工程~第五工程以外の工程を有していてもよい。特に、該製造方法は、第五工程(陽イオン交換処理工程)の前及び/又は後に煮沸させる工程を有することが好適である。
【0018】
<工程の実施タイミング等>
本形態に係るシワ改善剤の製造方法は、基本的には、上述した第一工程~第五工程の順で実施され得る。ここで、上述した第一工程~第五工程及び他の工程に関しては、ある工程が完了した後に次の工程を実施してもよく、ある工程が完了する前に次の工程も並行して実施してもよく、ある工程と次の工程を同時に実施してもよい。例えば、上述の第一工程と第二工程において、酵素により水抽出物を得ることを想定したとき、米に水を入れた後に酵素を添加した場合には、第一工程(米に水を添加)の後に第二工程(米に水を入れたものに酵素を添加)を実施するケースに該当し、酵素を含有する水に米を入れる場合には、第一工程と第二工程を同時に実施するケースに該当する。また、本形態に係るシワ改善剤の製造方法は、上述した第一工程~第五工程以外の工程を含んでいてもよい。
【0019】
≪シワ改善剤の性質≫
<コラーゲン産生促進作用>
本形態に係るシワ改善剤は、前述のように、特定の液体部を陽イオン交換樹脂に通した後該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることで得られたことを特徴とするところ、好適には、陽イオン交換樹脂を通さない該特定の液体部と比較し、好適には、5%以上、7.5%以上、10%以上、12.5%以上、15%以上、17.5%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上のコラーゲン産生促進作用を有する(上限は特に限定されず、例えば500%)。
【0020】
<基底膜分解抑制作用>
本形態に係るシワ改善剤は、好適には、基底膜分解抑制作用を有する。ここで、基底膜分解抑制作用は、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼ(例えば、MMP2)の抑制作用を有することを指す。
【0021】
<ヒアルロン酸産生促進作用>
本形態に係るシワ改善剤は、前述のように、特定の液体部を陽イオン交換樹脂に通した後該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることで得られたことを特徴とするところ、好適には、陽イオン交換樹脂を通さない該特定の液体部と比較し、好適には、2.5%以上、5%以上、7.5%以上、10%以上、12.5%以上のヒアルロン酸産生促進作用を有する(上限は特に限定されず、例えば500%)。
【0022】
<NMF産生促進作用>
本形態に係るシワ改善剤は、前述のように、特定の液体部を陽イオン交換樹脂に通した後該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を溶出させることで得られたことを特徴とするところ、好適には、陽イオン交換樹脂を通さない該特定の液体部と比較し、好適には、2.5%以上、7.5%以上、10%以上、12.5%以上、15%以上、17.5%以上、20%以上、22.5%以上、25%以上のNMF産生促進作用を有する(上限は特に限定されず、例えば500%)。
【0023】
≪シワ改善剤の用途≫
本形態に係るシワ改善剤は、該組成物そのまま又は外用剤への添加成分として有用である。特に、コラーゲン産生促進作用、基底膜分解抑制作用、ヒアルロン酸産生促進作用、NMF産生促進作用を有するシワ改善剤として有用である。ここで、本形態に係るシワ改善剤は、各種添加剤を含有していてもよい。例えば、通常医薬品・医薬部外品・化粧品(例えば、皮膚化粧料、浴用剤、洗浄剤)に添加される成分、具体的には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、コーティング剤、保湿剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、薬剤を挙げることができる。具体的には、例えば、化粧料として用いる場合には、化粧料で汎用される水性成分、油性成分、粉末、界面活性剤、油剤、pH調整剤、防腐剤、アルコール、酸化防止剤、増粘剤、色素、香料、動物抽出液、植物抽出液等を必要に応じて適宜配合することにより調整する。
【0024】
(適用対象)
本形態に係るシワ改善剤の適用対象は、特に限定されず、例えば、中高年や高齢者のみならず、皮膚疾患者や若者(例えば、下記のシワ防止の用途)をも挙げることができる。また、シワも特に限定されず、例えば、小ジワ(例えば乾燥)、表情ジワ、たるみジワ(ほうれい線)、大ジワ、老齢によるたるみ、痩せたことによるハリのロストを挙げることができる。また、本明細書にいう「改善」は、シワが無くなるか減ることのみならず、シワの防止や抑制をも包含する概念である。
【0025】
(適用方法)
本形態に係るシワ改善剤は、皮膚に適用(例えば、塗布、吹付等)して使用する(典型的には、経皮外用剤)。例えば、皮膚外用剤、洗浄剤及び浴用剤等の医薬品、医薬部外品及び化粧品として用い得る。具体的には、ローション等の可溶化系(液状皮膚外用剤、化粧水等)、乳液等の乳化系(乳液状ファンデーション、O/W乳化型美容液等)、粉末・顆粒系(入浴化粧料等)、クリーム系(O/W乳化型クリーム、ハンドクリーム、メイクアップベースクリーム等)、軟膏系(O/W型乳剤性軟膏等)、気体系(エアゾール等)等、様々な剤型で提供可能である。より具体的には、塗布等の他、皮下注射、マイクロニードルパッチ、パップ剤、シートマスクも挙げることができる。
【0026】
(適用量)
本形態に係るシワ改善剤を皮膚に適用する場合、適用する組成物の全質量を基準として、該組成物中に前記シワ改善剤を0.0001質量%以上含有したものを用いることが好適であり、0.001質量%以上含有したものを用いることがより好適であり、0.01質量%以上含有したものを用いることが更に好適である。尚、上限値は特に限定されず、例えば100質量%である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を参照しながらより具体的に本発明を説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0028】
≪シワ改善剤の調製≫
<実施例1>
白米500gに澱粉分解酵素2g、蛋白分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2gと水1500mlを加え、50℃で20時間放置した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、濾過して、その後、酵母を加え、20日間アルコール発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、陽イオン交換カラム(三菱ケミカル DIAION SK104H)に通し水で洗浄した後、カラム吸着成分を苛性ソーダで溶出させ中和し0.4Lを得た。
【0029】
<実施例2>
白米500gに米麹125gと水1500mlを加え、55℃で48時間放置した。その後、酵母を加え、20日間アルコール発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、陽イオン交換カラム(三菱ケミカル DIAION SK104H)に通し水で洗浄した後、カラム吸着成分を苛性ソーダで溶出させ中和し0.4Lを得た。
【0030】
<実施例3>
玄米を粉砕機にかけ、粉砕物500gを得た。この粉砕物に米麹125gと水1500mlを加え、55℃で48時間放置した。その後、酵母を加え、20日間アルコール発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、陽イオン交換カラム(三菱ケミカル DIAION SK104H)に通し水で洗浄した後、カラム吸着成分を苛性ソーダで溶出させ中和し0.4Lを得た。
【0031】
<実施例4>
白米500gに澱粉分解酵素2g、蛋白分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2gと水1500mlを加え、50℃で20時間放置した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、濾過して、その後、乳酸菌を加え、5日間乳酸発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、陽イオン交換カラム(三菱ケミカル DIAION SK104H)に通し水で洗浄した後、カラム吸着成分を苛性ソーダで溶出させ中和し0.4Lを得た。
【0032】
<実施例5>
白米500gに米麹125gと水1500mlを加え、55℃で48時間放置した。その後、酵母を加え、20日間アルコール発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、陽イオン交換カラム(三菱ケミカル DIAION SK104H)に通し水で洗浄した後、カラム吸着成分を0.2Nの塩化ナトリウムで溶出させ0.4Lを得た。
【0033】
<比較例>
白米500gに澱粉分解酵素2g、蛋白分解酵素2g、脂肪分解酵素2g、繊維分解酵素2gと水1500mlを加え、50℃で20時間放置した。その後、徐々に温度を上げていき、5分間煮沸抽出した後、濾過して、その後、酵母を加え、 20日間アルコール発酵を行った。濾過器を用いて固液分離を行い85℃で30分加熱した後、減圧濃縮により0.4Lを得た。
【0034】
≪試験例≫
<試験例1.コラーゲン産生試験評価>
(試薬類)
・細胞:ヒト真皮由来正常線維芽細胞(クラボウ)
・培地:10%FBS(Fetal Bovine Serum)+1%L-グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン含有DMEM培地(Sigma-Aldrich)
・PBS(Sigma-Aldrich)
・L-アスコルビン酸2-リン酸エステル3ナトリウム(富士フイルム和光純薬)
・ペプシン(Sigma-Aldrich)
・酢酸、特級(富士フイルム和光純薬)
・Sircol Soluble Collagen Assay Kit(biocolor)
(試験方法)
ヒト由来真皮線維芽細胞を組織培養用12well plateに0.8×10
5cells/wellとなるように播種し、DMEMを加え、コンフルエントまで培養した。各種調整した試料が1.25%になるよう調製したL-アスコルビン酸2-リン酸エステル3ナトリウム50μmol/L含有DMEMに交換し、計21日間培養した。培養は全て37℃・5%CO
2環境下で行った。培養終了後、PBSで洗浄し、1mg/mLペプシン含有0.5mol/L酢酸水溶液でコラーゲンを抽出した。抽出液を市販のSircol Soluble Collagen Assay Kitに従い規定通り吸光プレートリーダーを用いてコラーゲン量を求めた。試験は独立して3回実施し、1wellあたりのコラーゲン量と、Controlを100%とした時の相対値と、を算出して比較した。表1は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、1wellあたりのコラーゲン量である。表2は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、Controlを100%とした時のコラーゲン量の相対値である(
図1は、該相対値を図示)。
【0035】
【0036】
【0037】
<試験例2.基底膜分解試験>
(試薬類)
・MMP酵素活性測定キット:MMP-2 Fluorometric Drug Discovery Kit,RED(Enzo)
(試験方法)
市販のヒトMMP酵素活性測定キットを用いて規定通りの方法により測定した。Control、陽性対照であるNNGH、各種濃度に希釈した試料をそれぞれ添加した時の酵素活性を蛍光検出プレートリーダーにより、励起波長535nm、検出波長590nmの条件で測定し、Controlを100%とした際の相対値を算出した。試料濃度と得られた相対値から酵素活性曲線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度、IC50(%)を算出した。表3は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物についての、in vitro MMP2酵素活性測定の結果である。尚、比較例は酵素活性阻害作用がなく算出できなかった。
【0038】
【0039】
<試験例3.ヒアルロン酸産生試験>
(試薬類)
・細胞:ヒト3次元表皮皮膚モデルEPI-200(クラボウ)
・培地:EPI-200専用培地(クラボウ)
・PBS(Sigma-Aldrich)
・セラミックス製粉砕ボール,φ2mm(東レ)
・Quantikine ELISA Hyaluronan(R&D Systems)
・DC プロテインアッセイ(バイオラッド)
(試験方法)
ヒト3次元表皮皮膚モデル(φ8mm)を専用培地で1日間培養後、各種試料150μLを角質層側に添加、毎日、培地交換、試料交換しながら2日間培養した。培養は全て、37℃・5%CO
2環境下で行った。培養終了後、PBSで洗浄し、皮膚モデルを取り出し、PBSを加えて、ビーズクラッシャーにより、細胞を破砕し、抽出液のヒアルロン酸量は、市販の専用キットに基づいて規定通りの試験方法で吸光プレートリーダーにより求めた。タンパク質量は市販の専用キットに基づいて吸光プレートリーダーにより求めた。各ヒアルロン酸量をタンパク質量で除し、単位タンパク質あたりのヒアルロン酸量を算出した。また、陰性対照の単位タンパク質あたりのヒアルロン酸量を100%とした時の相対値を算出した。表4は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、単位タンパク質あたりのヒアルロン酸量である。表5は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、陰性対照の単位タンパク質あたりのヒアルロン酸量を100%とした時の相対値である(
図2は、該相対値を図示)。
【0040】
【0041】
【0042】
<試験例4.NMF産生試験>
(試薬類)
・細胞:ヒト3次元表皮皮膚モデルEPI-200(クラボウ)
・培地:EPI-200専用培地(クラボウ)
・PBS(Phosphate Buffered Saline)(Sigma-Aldrich)
・セラミックス製粉砕ボール,φ2mm(東レ)
・RIPA Lysis Buffer system(コスモバイオ)
・アミノ酸混合標準液(Shimadzu)
・DC プロテインアッセイ(バイオラッド)
(試験方法)
ヒト3次元表皮皮膚モデル(φ8mm)を専用培地で1日間培養後、各種試料150μLを角質層側に添加、2日間培養した。培養は全て、37℃・5%CO
2環境下で行った。培養終了後、PBSで洗浄し、皮膚モデルを取り出し、PBSを加えて、ビーズクラッシャーにより、破砕した。破砕液RIPA Lysis Bufferで溶解し、NMF定量、タンパク質定量に用いた。タンパク質量は市販の専用キットに基づいて吸光プレートリーダーにより求めた。NMF量は高速液体クロマトグラフィー用いて、オルトフタルアルデヒドポストカラム誘導体化法により求めた。得られたNMF量をタンパク質量で除し、単位タンパク質あたりのNMF量を算出した。また、陰性対照の単位タンパク質あたりのNMF量を100%とした時の相対値を算出した。表6は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、単位タンパク質あたりのNMF量である。表7は、実施例1~5及び比較例に係る米抽出物について本試験を実施した際における、陰性対照の単位タンパク質あたりのNMF量を100%とした時の相対値である(
図3は、該相対値を図示)。
【0043】
【0044】
【要約】
【課題】 従来よりも優れた、新規なシワ改善剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 米に水を加えたものに対して、酵素を作用させ、アルコール発酵させた後、固液分離にて得た液体部を陽イオン交換樹脂で処理し、該陽イオン交換樹脂に吸着された成分を回収することにより得られたシワ改善剤である。
【選択図】
図1