(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】スポイト容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/18 20060101AFI20230815BHJP
B65D 51/32 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B65D47/18 100
B65D51/32
(21)【出願番号】P 2019086803
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1343697(KR,B1)
【文献】特開2007-275305(JP,A)
【文献】特開2001-161790(JP,A)
【文献】実開平03-076504(JP,U)
【文献】特開2015-224071(JP,A)
【文献】特開2015-127225(JP,A)
【文献】特開昭57-047637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/18
B65D 51/32
B65D 83/00
B01D 3/02
G01N 1/00
A61J 1/00
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を備える容器本体と、スポイトを備えるとともに前記口部を開閉可能なキャップとを有するスポイト容器であって、
前記スポイトは、管状のノズル部と、外部からの操作に応じて弾性変形及び復元変形することで前記容器本体内の内容液を前記ノズル部内に吸上げる吸上げ部と、該吸上げ部の内面への前記内容液の接触を防止するように前記内面に沿って設けられた隔離部とを有し、
前記キャップが、前記口部に着脱可能な装着筒部を備えるとともに該装着筒部の上端に径方向内側に延在する
環状頂部が一体に設けられた装着部材と、前記吸上げ部を備えるとともに該吸上げ部に前記環状頂部の下方に配置される上部フランジが一体に設けられた吸上げ部材と、前記隔離部を備えるとともに該隔離部に前記吸上げ部材の前記上部フランジの下面に沿って配置される中間フランジが一体に設けられた隔離部材と、前記ノズル部を備えるとともに該ノズル部に前記隔離部材の前記中間フランジの下方に配置される下部フランジが一体に設けられたノズル部材と、を有し、
前記ノズル部材の前記下部フランジの上面に、前記隔離部材の前記中間フランジの下面に全周に亘って圧接される環状凸部が一体に設けられていることを特徴とするスポイト容器。
【請求項2】
前記隔離部と前記吸上げ部とが互いに固着している、請求項1に記載のスポイト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部を備える容器本体と、スポイトを備えるとともに口部を開閉可能なキャップとを有するスポイト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
美容液等の化粧品や薬品等の内容液を吸上げ、所望の箇所に滴下することができるスポイト容器として、スポイトを備えるキャップを有し、スポイトが、管状のノズル部と吸上げ部とを有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなスポイト容器によれば、吸上げ部を直接的或いは適宜設けた操作部材を介して間接的に操作することで、吸上げ部を弾性変形及び復元変形させ、それにより内容液をノズル部内に吸上げ、再度の操作によりノズル部内から内容液を滴下することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスポイト容器では、内容液の吸上げ時や容器の転倒などによって内容液が吸上げ部の内面に接触することがある。しかし、吸上げ部は通常、ゴムやエラストマーなどの弾性変形可能な軟材質で形成されているため、吸上げ部と内容液との接触により、吸上げ部に膨潤などの変質を生じてしまったり、内容液に効能や香りの変化などの変質を生じてしまったりする虞があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、内容液及び吸上げ部の変質を生じ難いスポイト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスポイト容器は、口部を備える容器本体と、スポイトを備えるとともに前記口部を開閉可能なキャップとを有するスポイト容器であって、前記スポイトは、管状のノズル部と、外部からの操作に応じて弾性変形及び復元変形することで前記容器本体内の内容液を前記ノズル部内に吸上げる吸上げ部と、該吸上げ部の内面への前記内容液の接触を防止するように前記内面に沿って設けられた隔離部とを有し、前記キャップが、前記口部に着脱可能な装着筒部を備えるとともに該装着筒部の上端に径方向内側に延在する環状頂部が一体に設けられた装着部材と、前記吸上げ部を備えるとともに該吸上げ部に前記環状頂部の下方に配置される上部フランジが一体に設けられた吸上げ部材と、前記隔離部を備えるとともに該隔離部に前記吸上げ部材の前記上部フランジの下面に沿って配置される中間フランジが一体に設けられた隔離部材と、前記ノズル部を備えるとともに該ノズル部に前記隔離部材の前記中間フランジの下方に配置される下部フランジが一体に設けられたノズル部材と、を有し、前記ノズル部材の前記下部フランジの上面に、前記隔離部材の前記中間フランジの下面に全周に亘って圧接される環状凸部が一体に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明のスポイト容器は、上記構成において、前記隔離部と前記吸上げ部とが互いに固着しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内容液及び吸上げ部の変質を生じ難いスポイト容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るスポイト容器を示す部分断面側面図である。
【
図2】
図1に示すスポイト容器の要部を示す部分断面側面図である。
【
図3】
図1に示すスポイト容器における、インサート成形により一体に形成された吸上げ部材及び隔離部材を示す部分断面側面図である。
【
図4】
図1に示すスポイト容器における、インサート成形前の隔離部材を示す部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るスポイト容器1は、容器本体2と、スポイト3を備えるキャップ4とで構成されている。容器本体2内には、美容液等の化粧品が内容液として収容されている。なお、内容液は化粧品に限らず、薬品やその他の液体であってよいが、本実施形態に係るスポイト容器1は、特に油分を多く含んでいる化粧品等の、樹脂に浸透し易いものを内容物とする場合に好適である。
【0013】
容器本体2は、軸心Oを有する円筒状の口部5と、口部5の下端に一体に連なる胴部6とを有している。胴部6は、口部5から拡径する肩部分6aと、肩部分6aの外周縁から垂下する略円筒状の胴本体部分6bと、胴本体部分6bの下端を閉塞する底部分6cとで構成されている。容器本体2は、例えば、合成樹脂、ガラス、金属又はこれらの任意の組合せによって形成することができる。容器本体2はボトル形状をなしているが、これに限らず種々の形状を採用可能である。口部5の外周面には、キャップ4を着脱可能な雄ねじ部5aが一体に設けられている。なお、口部5は、キャップ4をねじ係合によって着脱可能な構成とされているが、これに限らず、アンダーカット係合によって着脱可能な構成としてもよい。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、上下方向とは、キャップ4を口部5に装着した状態でスポイト容器1を正立させたときの上下方向を意味するものとし、径方向とは、軸心Oと直交する方向を意味するものとし、周方向とは、軸心Oの周りを周回する方向を意味するものとする。
【0015】
キャップ4は、装着部材7及びスポイト3で構成されており、スポイト3は、吸上げ部材8、隔離部材9及びノズル部材10で構成されている。詳細は後述するが、ノズル部材10はノズル部3aを有し、吸上げ部材8は吸上げ部3bを有し、隔離部材9は隔離部3cを有している。したがって、スポイト3は、ノズル部3a、吸上げ部3b及び隔離部3cを有している。
【0016】
図2に示すように、装着部材7は、口部5に着脱可能な円筒状の装着筒部11を有している。装着筒部11の内周面には、雄ねじ部5aと螺合可能な雌ねじ部11aが一体に設けられている。装着筒部11の上端には、径方向内側に延在する環状頂部12が一体に設けられている。
【0017】
吸上げ部材8は、外部からの操作に応じて弾性変形及び復元変形可能な有頂円筒状の吸上げ部3bを有している。吸上げ部3bは、上方に突出するドーム形状の頂壁の外周縁に円筒状の周壁が一体に垂設された構成とされている。この周壁の下端、つまり吸上げ部3bの下端には、径方向外側に延在する円環状の上部フランジ8aが一体に設けられている。また、吸上げ部3bの周壁の外周面における下部には、全周に亘って径方向外側に突出する外周凸部8bが一体に設けられている。環状頂部12の内周縁には、全周に亘って径方向内側に突出する内周凸部12aが一体に設けられており、この内周凸部12aが外周凸部8bと上部フランジ8aとの間に嵌め込まれることにより、上部フランジ8aが環状頂部12の下方に配置された状態で吸上げ部材8が装着部材7に保持されている。
【0018】
隔離部材9は、吸上げ部3bの内面への内容液の接触を防止するようにこの内面に沿って設けられた有頂円筒状の隔離部3cを有している。隔離部3cは、上方に突出するドーム形状の頂壁の外周縁に円筒状の周壁が一体に垂設された構成とされている。この周壁の下端、つまり隔離部3cの下端には、径方向外側に延在する円環状の中間フランジ9aが一体に設けられている。吸上げ部材8の上部フランジ8aの下面には、この上部フランジ8aより外径が小さく設定されている隔離部材9の中間フランジ9aと相補的な形状を有する円環状の段部が形成されており、この段部内に中間フランジ9aが配置されている。このように、中間フランジ9aは、上部フランジ8aの下面に沿って配置されている。
【0019】
隔離部材9は、ポリプロピレン樹脂製のフィルムであり、例えばシート成形などによって有頂円筒状に形成することができる。そして、このように形成された
図4に示す隔離部材9を金型にセットした状態でゴムまたはエラストマーなどの軟材質を射出するインサート成形により、
図3に示すように互いに固着し、一体に形成された隔離部材9及び吸上げ部材8を得ることができる。隔離部材9は、ポリプロピレン樹脂製に限らず、内容液の成分等に応じて適宜採用される合成樹脂で構成することができるが、耐内容物性に優れるとともにゴムまたはエラストマーとの接着性に優れるポリプロピレン樹脂で構成することが好ましい。また、隔離部材9は、耐内容物性に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂製としてもよい。
【0020】
図1~
図2に示すように、ノズル部材10は、下部が下方に向けて縮径する円管状のノズル部3aを有している。ノズル部3aの上部には、径方向外側に延在する円環状の下部フランジ10aが一体に設けられている。下部フランジ10aは、隔離部材9の中間フランジ9aの下方に配置された状態で、装着部材7の装着筒部11の内周面にアンダーカット係合により保持されている。また、ノズル部3aの上端における外周面は、隔離部3cの下部における内周面に全周に亘って密接している。
【0021】
ノズル部材10の下部フランジ10aの上面には、全周に亘って上方に突出する円環状の環状凸部10bが一体に設けられている。環状凸部10bは、隔離部材9の中間フランジ9aの下面に全周に亘って圧接されることにより、隔離部材9の中間フランジ9aと吸上げ部材8の上部フランジ8aとの密着性を高めることができる。したがって、吸上げ部材8の上部フランジ8aと隔離部材9の中間フランジ9aとが剥離してしまうことを抑制し、また吸上げ部材8と隔離部材9との剥離が発生した場合には、剥離部への空気等の侵入を抑制することができるので、操作時の吸上げ部3bの変形に対する隔離部3cの変形の追従性を高め、安定した動作を確保することができる。
【0022】
ノズル部材10の下部フランジ10aの下方には、円環板状のパッキン13が配置されている。パッキン13は、パッキン13の上面が下部フランジ10aの下面に接触した状態で、ノズル部3aの外周面にアンダーカット係合により保持されている。
【0023】
なお、装着部材7及びノズル部材10は、それぞれ合成樹脂製であるが、これに限らない。
【0024】
本実施形態に係るスポイト容器1によれば、キャップ4で容器本体2の口部5を閉じた状態で吸上げ部3bを指で押圧して吸上げ部3bを弾性変形及び復元変形させることで容器本体2内の内容液をノズル部3a内に吸上げることができる。そして、キャップ4を口部5から取外し、所望の箇所で吸上げ部3bを再度押圧することで、ノズル部3a内から内容液を滴下することができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係るスポイト容器1は、耐内容物性を有する隔離部3cを吸上げ部3bの内面に沿って設けた構成を有しているため、ゴムまたはエラストマーで形成された吸上げ部3bと内容液との接触を防止することができる。したがって、吸上げ部3bに膨潤などの変質を生じてしまったり、内容液に効能や香りの変化などの変質を生じてしまったりすることを防止することができる。
【0026】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0027】
例えば、前記の実施形態では、インサート成形により隔離部材9と吸上げ部材8とが互いに固着した構成としているが、これに限らず、吸上げ部材8と隔離部材9とをそれぞれ形成した後に接着、溶着などによって互いに固着した構成としてもよいし、吸上げ部材8と隔離部材9とが互いに固着していない構成としてもよい。
【0028】
また、前記の実施形態では、吸上げ部3bは、外部からの直接的な操作に応じて弾性変形及び復元変形することで容器本体2内の内容液をノズル部3a内に吸上げるように構成されているが、これに限らず、吸上げ部3bを、適宜設けた操作部材を介した間接的な操作に応じて弾性変形及び復元変形することで容器本体2内の内容液をノズル部3a内に吸上げるように構成してもよい。
【0029】
さらに、前記の実施形態では、吸上げ部3b及び隔離部3cは有頂円筒状をなしているが、これに限らず、有頂円筒状以外の有頂筒状をなしていてもよいし、有頂筒状以外の形状(例えばドーム状や平面状等)をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 スポイト容器
2 容器本体
3 スポイト
3a ノズル部
3b 吸上げ部
3c 隔離部
4 キャップ
5 口部
6 胴部
6a 肩部分
6b 胴本体部分
6c 底部分
7 装着部材
8 吸上げ部材
8a 上部フランジ
8b 外周凸部
9 隔離部材
9a 中間フランジ
10 ノズル部材
10a 下部フランジ
10b 環状凸部
11 装着筒部
11a 雌ねじ部
12 環状頂部
12a 内周凸部
13 パッキン
O 軸心