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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】泡吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20230815BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B65D47/20
B65D83/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019102837
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196475
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134938(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01205254(EP,A1)
【文献】特開2009-040443(JP,A)
【文献】米国特許第06227740(US,B1)
【文献】特開昭61-104960(JP,A)
【文献】特開2016-101969(JP,A)
【文献】国際公開第2007/014416(WO,A1)
【文献】米国特許第04531659(US,A)
【文献】特表2002-512120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 83/00
B65D 83/08-83/76
B05B 11/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する胴部を備え、内部が内容液の収容空間となる容器本体と、
前記容器本体の口部に装着され、前方に延びる筒状のノズルを有するキャップと、
前記キャップに保持され、前記ノズルの内部に連なる混合室を区画すると共に、前記混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔及び液導入孔を有するシリンダーと、
前記シリンダーの外部に設けられるとともに前記ノズルの内部を前記収容空間に連ねる戻し流路を、前記胴部を圧搾して前記ノズルの吐出口から内容液を泡状に吐出する際に閉塞し、前記胴部の復元時に開放する逆止弁と、を備え、
前記空気導入孔は、前記胴部の軸線よりも後方のみに配置されており、
前記シリンダーの軸線は、前記キャップの中心軸線と一致しており、
前記シリンダーは、前記シリンダーの軸線が前記胴部の軸線に対して前方に傾斜するように配置されていることを特徴とする泡吐出容器。
【請求項2】
可撓性を有する胴部を備え、内部が内容液の収容空間となる容器本体と、
前記容器本体の口部に装着され、前方に延びる筒状のノズルを有するキャップと、
前記キャップに保持され、前記ノズルの内部に連なる混合室を区画すると共に、前記混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔及び液導入孔を有するシリンダーと、
前記シリンダーの外部に設けられるとともに前記ノズルの内部を前記収容空間に連ねる戻し流路を、前記胴部を圧搾して前記ノズルの吐出口から内容液を泡状に吐出する際に閉塞し、前記胴部の復元時に開放する逆止弁と、を備え、
前記空気導入孔は、前記胴部の軸線よりも後方のみに配置されており、
前記シリンダーの軸線は、前記胴部の軸線に対して平行であり、
前記シリンダーは、前記シリンダーの軸線が前記胴部の軸線よりも後方に位置するように配置されていることを特徴とする泡吐出容器。
【請求項3】
前記液導入孔にパイプが接続され、
前記パイプの下端開口は、前記胴部の軸線よりも前方に配置されている、請求項1又は2に記載の泡吐出容器。
【請求項4】
前記空気導入孔は、前記液導入孔よりも後方のみに配置されている、請求項1~3の何れかに記載の泡吐出容器。
【請求項5】
前記泡吐出容器を正立姿勢又は傾倒姿勢とした際には前記空気導入孔を開放し、前記泡吐出容器を倒立姿勢とした際には前記空気導入孔を閉塞する第1弁構造と、
前記泡吐出容器を正立姿勢又は傾倒姿勢とした際には液導入孔を開放し、前記泡吐出容器を倒立姿勢とした際には前記液導入孔を閉塞する第2弁構造と、を備える、請求項1~4の何れか一項に記載の泡吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等の各種液体洗浄剤や整髪剤等の内容液を収容する容器として、容器本体の胴部を圧搾(スクイズ)することにより、容器本体内に収容された内容液を空気と混合してノズルから泡状に吐出させる泡吐出容器が使用されている。
【0003】
このような泡吐出容器では、内容液の流路中に内容液を空気と混合させる合流空間を設けるとともに、合流空間の下流に例えばメッシュ等からなる発泡部材を設けている。そして、容器本体の胴部を圧搾することで、内容液と空気を合流空間で混合し、発泡部材を通過させて発泡させ、ノズルから泡状に吐出するようにしている。
【0004】
例えば特許文献1には、口部、胴部、及び底部を有し、その内側を内容液の収容空間とする容器本体と、該容器本体の口部にベースキャップを介して吊り下げ保持され、胴部の圧搾に伴って吸引管から導入された内容液と空気導入孔から導入された空気とを混合、発泡させる合流空間を区画形成するシリンダーと、前方に向けて延在し、発泡させた内容液を吐出するノズルとを備える泡吐出容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-112411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような泡吐出容器は、容器本体の中心軸線が略鉛直方向となるように泡吐出容器を正立させた正立姿勢で使用することを前提としている。そのため、例えば、ノズルが下向きとなるように泡吐出容器を前方に傾けた横向きの姿勢(傾倒姿勢)で胴部を圧搾した際に、シリンダーに設けられた空気導入孔に内容液が浸入する虞がある。その場合、上記合流空間において内容液に空気を適度に混合することができなくなるため内容液が発泡せず、ノズルから液状のまま吐出されてしまうという問題がある。
【0007】
それゆえ本発明は、泡吐出容器を正立させた正立姿勢のみならず、前方に傾けた傾倒姿勢でも内容液を泡状に吐出することが可能な泡吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の泡吐出容器は、
可撓性を有する胴部を備え、内部が内容液の収容空間となる容器本体と、
前記容器本体の口部に装着され、前方に延びる筒状のノズルを有するキャップと、
前記キャップに保持され、前記ノズルの内部に連なる混合室を区画すると共に、前記混合室を前記収容空間に連ねる空気導入孔及び液導入孔を有するシリンダーと、
前記シリンダーの外部に設けられるとともに前記ノズルの内部を前記収容空間に連ねる戻し流路を、前記胴部を圧搾して前記ノズルの吐出口から内容液を泡状に吐出する際に閉塞し、前記胴部の復元時に開放する逆止弁と、を備え、
前記空気導入孔は、前記胴部の軸線よりも後方のみに配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明の泡吐出容器にあっては、前記液導入孔にパイプが接続され、
前記パイプの下端開口は、前記胴部の軸線よりも前方に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の泡吐出容器にあっては、前記空気導入孔は、前記液導入孔よりも後方のみに配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の泡吐出容器にあっては、前記シリンダーは、前記シリンダーの軸線が前記胴部の軸線に対して前方に傾斜するように配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の泡吐出容器にあっては、前記シリンダーは、前記シリンダーの軸線が前記胴部の軸線よりも後方に位置するように配置されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の泡吐出容器にあっては、前記泡吐出容器を正立姿勢又は傾倒姿勢とした際には前記空気導入孔を開放し、前記泡吐出容器を倒立姿勢とした際には前記空気導入孔を閉塞する第1弁構造と、
前記泡吐出容器を正立姿勢又は傾倒姿勢とした際には液導入孔を開放し、前記泡吐出容器を倒立姿勢とした際には前記液導入孔を閉塞する第2弁構造と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、泡吐出容器を正立させた正立姿勢のみならず、前方に傾けた傾倒姿勢でも内容液を泡状に吐出することが可能な泡吐出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態としての泡吐出容器を示す側面視での断面図である。
図2図1に示す泡吐出容器の部分拡大図である。
図3図1の泡吐出容器を前方に傾けた傾倒姿勢で内容液を吐出する様子を示す、側面視での断面図である。
図4】本発明の他の実施形態としての泡吐出容器を示す側面視での断面図である。
図5図4の泡吐出容器を傾けた傾倒姿勢で内容液を吐出する様子を示す、側面視での断面図である。
図6図4の泡吐出容器を倒立姿勢とした状態を示す、側面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る泡吐出容器1は、流動性を有する内容液を収容するとともに、該内容液を泡状に吐出するものである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の泡吐出容器1は、容器本体10と、キャップ20と、シリンダー40と、逆止弁50と、を備えている。図2は、図1の部分拡大図である。
【0018】
容器本体10は、例えば合成樹脂製であり、口部11、胴部12及び底部13を備え、内部に内容液の収容空間Sを区画している。胴部12は、可撓性を有しており、収容空間Sの周囲を囲んでいる。口部11は、胴部12の一端に連続して形成されており、底部13は、胴部12の他端に連続して形成されている。なお、以下の説明で記載する「上」側とは、底部13に対して口部11が位置する側を意味し、「下」側とはその反対側(口部11に対して底部13が位置する側)を意味する。また、「前」側とはノズル21の基端部に対して先端開口22が位置する側を意味し、「後」側とは、その反対側(ノズル21の先端開口22に対して基端部が位置する側)を意味する。
【0019】
図1に示すように、本例の容器本体10は、胴部12に対して口部11が前方に傾斜した形状となっている。図1に示す第1の軸線O1は、胴部12の軸線である。第1の軸線O1は、底部13の中心を通り、底部13の底面に対して垂直に延在している。また、第1の軸線O1は、後述する胴本体部12aの中心軸線に略一致する。図1に示す第2の軸線O2は、シリンダー40の軸線であり、口部11、キャップ20、シリンダー本体部40a及び孔形成部41の中心軸線と一致する。
【0020】
図1に示すように、水平面に底部13の底面を接地させた泡吐出容器1の正立姿勢において、第1の軸線O1は鉛直方向に延在している。また、泡吐出容器1の正立姿勢において、第2の軸線O2は、第1の軸線O1に対して前方に傾斜しており、第1の軸線O1との交点Pから前方斜め上向きに延在している。
【0021】
口部11は、上部を開口させた円筒状の形状を有している。胴部12は、口部11の下方に連なる筒状の形状を有している。胴部12は、底部13に連なる胴本体部12aと、胴本体部12aの上方に連なり、上方に向けて徐々に縮径しつつ、前方に向けて湾曲する湾曲部12bと、を有する。湾曲部12bの上端部は口部11に連結している。この容器本体10は、可撓性を有する胴部12を圧搾(スクイズ)することにより収容空間Sを減容させ、容器本体10内(収容空間S)を加圧することができるようになっている。
【0022】
容器本体10の口部11には、例えば合成樹脂製のキャップ20が装着されている。キャップ20は、ノズル21を備える。ノズル21は、外周壁24側の基端部から先端開口22が形成された先端部まで前方に向けて延在している。ノズル21は、内容液の吐出口としての先端開口22と、この先端開口22に連なる内容液の流路となるノズル内流路23とを区画している。
【0023】
図1に示すように、泡吐出容器1を正立姿勢とした状態において、本例のノズル21は、前方に向けて斜め下向きとなるように配置されている。なお、ノズル21の形状及び向きは適宜変更可能であり、例えば、前方に向けて斜め上向きであってもよい。
【0024】
キャップ20は、容器本体10の口部11を取り囲む円筒状の外周壁24を備える。キャップ20は、外周壁24の内周面に設けた雌ねじ部24aが口部11の外周面に設けた雄ねじ部11aにねじ結合することにより、容器本体10の口部11に装着されている。外周壁24の内側にはフランジ部25を介してシール筒部26が同軸且つ一体に設けられ、このシール筒部26が口部11の内側に嵌め込まれることで、キャップ20と口部11との嵌合部分がシールされて該部分からの液漏れが防止されるようになっている。
【0025】
口部11の根元には小突起11bと大突起11cとが周方向に間隔を空けて設けられ、外周壁24の下端部には、これらの突起11b、11cに対応した回り止めリブ24bが設けられている。キャップ20が口部11にねじ込まれると、そのねじ込み終了直前に回り止めリブ24bが小突起11bを乗り越えて小突起11bと大突起11cとの間に配置され、これによりキャップ20は口部11に対して回り止め保持される。
【0026】
図示する場合では、キャップ20を容器本体10の口部11にねじ結合により固定するようにしているが、キャップ20を容器本体10の口部11にアンダーカットで固定させる構成とすることもできる。
【0027】
シール筒部26はフランジ部25に対して上方にまで延びており、その上端部には径方向内側に向けて延びる段差部27が一体に設けられている。この段差部27の図中下方を向く内面は、平坦且つ環状に形成された下向きの段差面27aとなっており、逆止弁50の弁座として機能する。
【0028】
段差部27の内周縁には、ドーム状の頂壁28が連なっている。頂壁28にはノズル21が一体に設けられている。ノズル21は、筒状であり、第2の軸線Oに垂直な平面に対してやや上向きに延在している。ノズル21の底部には、第2の軸線Oに垂直な底壁29が設けられている。底壁29には流出入孔30が設けられており、ノズル内流路23はこれらの流出入孔30を介して戻し流路31と連通している。戻し流路31は、シリンダー40の外部に設けられるとともにノズル内流路23を収容空間Sに連ねている。また、底壁29には、ノズル内流路23をシリンダー40の空気と内容液を混合する混合室42に連通させる泡流出孔32が設けられている。なお、図示する場合では、泡流出孔32の後方に流出入孔30が設けられているが、その個数や形状は種々変更することができる。
【0029】
また、キャップ20の底壁29には、泡流出孔32を取り囲んで筒状の連結壁33が一体に垂設されている。連結壁33は、シリンダー40のシリンダー本体部40aに挿入、嵌合するように構成されていて、これによりシリンダー40を収容空間S内に吊り下げ保持するとともに、混合室42とノズル内流路23とをつないでいる。連結壁33の外周側には、底壁29から一体に垂下するとともに、シリンダー40の環状フランジ部40bに向けて延びる内部筒状壁34が設けられている。
【0030】
シリンダー40は、シリンダー本体部40aが連結壁33に嵌合することにより、キャップ20に保持される。シリンダー40は、例えば合成樹脂材により形成されており、混合室42を内部に区画する筒状のシリンダー本体部40aと、このシリンダー本体部40aの上端付近から径方向外側に延在する環状フランジ部40bと、を備えている。
【0031】
また、シリンダー40は、キャップ20のノズル内流路23に連なる混合室42を内部に区画すると共に、混合室42を容器本体10の収容空間Sに連ねる空気導入孔43及び液導入孔44を有している。空気導入孔43は、第1の軸線O1(胴部12の軸線)よりも後方のみに配置されている。なお、空気導入孔43は1つのみに限らず、複数形成されていてもよい。
【0032】
具体的に、シリンダー40のシリンダー本体部40aの下端部には孔形成部41が嵌合固定されており、孔形成部41は、シリンダー本体部40aと共に、シリンダー40の下部側に空気導入孔43と液導入孔44とを区画形成する。シリンダー本体部40aの外周面には、位置合わせ用の凹部40dが周方向の一部に形成されている。これに対応して、孔形成部41には、位置合わせ用の突出片41aが設けられている。凹部40dに、突出片41aを嵌め込むようにすることで、シリンダー本体部40aに対して孔形成部41の周方向の位置合わせを行うことができる。また、キャップ20の連結壁33には、周方向の一部に位置合わせ用の凹部33aが設けられている。これに対応して、シリンダー本体部40aの内周面には、位置合わせ用の凸部40cが設けられており、連結壁33の凹部33aに凸部40cを嵌め込むようにすることで、キャップ20に対してシリンダー40の周方向の位置合わせを行うことができる。これにより、空気導入孔43がノズル21とは逆側(泡吐出容器1の後側)に配置されるようにすることができる。
【0033】
本例では、空気導入孔43が、液導入孔44よりも後方のみに設けられている。収容空間S内の空気は空気導入孔43を通して混合室42に導入される。
【0034】
液導入孔44は、シリンダー40の中心に位置しており、第2の軸線O2上に配置されている。液導入孔44には容器本体10の底部13にまで延びる管状のパイプ45が接続され、当該パイプ45を介して液導入孔44は混合室42を収容空間Sに連通させている。したがって、収容空間S内の内容液はパイプ45と液導入孔44とを介して混合室42に導入される。本例のパイプ45は、湾曲部45aを有し、パイプ45の下端開口45b(吸込み口)は、収容空間Sにおける底部13の前端部付近に配置されている。なお、収容空間Sから混合室42に内容液及び空気を導入する構成は、本実施形態の構成に限られるものではなく、容器の形状等に応じて適宜変更することが可能である。
【0035】
上記のように、収容空間S内の空気と内容液は、空気導入孔43と液導入孔44より、それぞれ異なる通路を通過して混合室42に流入する。空気導入孔43から混合室42への空気の通路は、シリンダー本体部40aの内周面と、シリンダー本体部40aの径方向内側に挿入配置された孔形成部41の環状壁41b(図2参照)の外周面との間に区画形成される。液導入孔44から混合室42への内容液の通路は、孔形成部41の環状壁41bの内側に区画形成される。
【0036】
また、孔形成部41には、空気導入孔43に内容液がより浸入し難くなるように、傘状体46が一体に設けられているが、この構成に限られるものではなく、傘状体46を備えない構成とすることも可能である。
【0037】
シリンダー40の混合室42には一対の発泡部材47が設けられている。これらの発泡部材47としては、例えば、図示する場合のようにリングの端面にメッシュを固定した構成のものを用いることができる。また、図示する場合では、発泡部材47は互いのメッシュを逆側に向けた姿勢でシリンダー本体部40aの内側に嵌合固定されている。なお、発泡部材47としてはリングとメッシュを備えた構造のものに限らず、例えば焼結体等の多孔質体やその他の種々の構造のものを、内容液の種類等に応じて選択することができる。また、発泡部材47の設置個数も内容液の種類等に応じて種々変更することができる。
【0038】
シリンダー40の外部には、シリンダー40の内部を通る流路とは別系統で、ノズル内流路23を容器本体10の収容空間Sに連ねる戻し流路31が設けられている。つまり、ノズル内流路23は、この戻し流路31を介して容器本体10の収容空間Sに連通している。
【0039】
戻し流路31には、弾性材により形成された逆止弁50が設けられている。逆止弁50は、容器本体10の胴部12を圧搾してノズル21の先端開口22から内容液を泡吐出する際に、戻し流路31を閉塞する一方、胴部12が復元する際には戻し流路31を開放する。
【0040】
この逆止弁50は、キャップ20の段差面27aを弁座とし、通常はこの段差面27aに当接する環状の弁体51と、弁体51と一体連結するとともにキャップ20の内部筒状壁34に嵌合保持される環状本体部52と、環状本体部52の下端から径方向内側に向けて突き出す内向きフランジ53とを備えている。本実施形態では、段差面27aを弁座としているが、キャップ20の構成によっては、他の部位に設けることもできる。
【0041】
このような構成により、逆止弁50は、容器本体10の収容空間Sから戻し流路31を通したノズル21(ノズル内流路23)の側への内容液や空気の流れを阻止するとともに、ノズル21(ノズル内流路23)から戻し流路31を通した容器本体10の収容空間Sの側への内容液や空気の流れを許容するように作動することができる。
【0042】
次に、泡吐出容器1の使用方法について説明する。先ず、泡吐出容器1は、図1に示す正立姿勢で容器本体10の胴部12を圧搾することにより、内容液を泡状に吐出することができる。胴部12を圧搾すると、収容空間S内の内容液がパイプ45と液導入孔44とを介して混合室42に導入され、同時に、収容空間S内の空気が、空気導入孔43を介して混合室42に導入される。そして、混合室42にて空気と混合された内容液は、発泡部材47を通過することにより発泡し、ノズル内流路23を通ってノズル21の先端開口22から吐出される。
【0043】
また、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、図3に示すように泡吐出容器1を前方に傾けた横向きの姿勢(傾倒姿勢)であっても、正立姿勢の場合と同様に、内容液を泡状に吐出することができる。なお、図3において、泡吐出容器1は、第2の軸線O2が水平方向に延在する姿勢となっている。図3に示す傾倒姿勢で胴部12を圧搾すると、収容空間S内の内容液がパイプ45と液導入孔44とを介して混合室42に導入され、同時に、収容空間S内の空気が、空気導入孔43を介して混合室42に導入され、混合室42にて空気と混合された内容液が発泡部材47を通過して泡状となり、ノズル21の先端開口22から吐出される。この時、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、空気導入孔43が、第1の軸線O1(胴部12の軸線)よりも後方のみに配置されているため、図3に示す傾倒姿勢において、空気導入孔43が液面よりも鉛直方向の上側に配置されて内容液が空気導入孔43に浸入し難くなる。これにより、空気導入孔43から空気を導入することができるので、内容液を所期した通りの泡状に吐出することができる。
【0044】
なお、上記正立姿勢及び傾倒姿勢の何れの場合も、内容液の吐出後に胴部12の圧搾が解除されると、胴部12が元の形状に復元することで収容空間S内に負圧が発生し、この負圧により逆止弁50が開き、ノズル内流路23の内部に残留した内容液が、ノズル21の先端開口22から吸引される空気(外気)とともに戻し流路31を介して容器本体10の収容空間Sの内部に引き込まれる。サックバック機能とも呼ばれるこのような機能により、吐出後にノズル内流路23の内部に残留した内容液を空気とともに容器本体10の内部に向けて引き込むことができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、正立姿勢のみならず、泡吐出容器1を前方に傾けた横向きの傾倒姿勢でも内容液を泡状に吐出することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、空気導入孔43を液導入孔44よりも後方に設けることにより、図3に示す傾倒姿勢において、空気導入孔43がより鉛直方向上側に位置するようにしている。これにより、図3に示す傾倒姿勢で泡状内容液を吐出する際に、さらに内容液が空気導入孔43に浸入し難くなる。
【0047】
また、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、パイプ45の下端開口45bが、第1の軸線O1(胴部12の軸線)よりも前方に配置されているため、図3に示す傾倒姿勢において、パイプ45の下端開口45bが鉛直方向における下方側に配置される。その結果、内容液の残量が少なくなった場合でも、パイプ45の下端開口45bから内容液を導入することができるので、内容液を最後まで吐出し易くして、残留量を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、シリンダー40の軸線(第2の軸線O2)が胴部12の軸線(第1の軸線O1)に対して前方に傾斜するように配置されている。これにより、図3に示すように、泡吐出容器1を比較的小さく前方に傾けるだけで、ノズル21を下方に向けることができるので、操作が容易である。また、ノズル21を下方に向けるために泡吐出容器1を大きく前方に傾ける必要がないので、空気導入孔43が、鉛直方向上側に配置され易くなり、より確実に、空気導入孔43への内容液の浸入を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態の泡吐出容器1にあっては、図1に示すように、正立姿勢においてノズル21が前方に向けて斜め下向きとなるように配置されている。これにより、図3に示すように容器本体10を比較的小さく傾けるだけで、ノズル21の先端開口22を鉛直方向下方に向けることができる。その結果、空気導入孔43が、より鉛直方向上側に配置され易くなるため、空気導入孔43への内容液の浸入をさらに確実に防止することができる。
【0050】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
図4に示す泡吐出容器2は、容器本体10の口部11が胴部12に対して後方に偏心した形状となっている。すなわち、口部11の軸線(第2の軸線O2)は、胴部12の軸線(第1の軸線O1)よりも後方に位置している。また、泡吐出容器2の胴部12は、底部13に連なる胴本体部12aと、胴本体部12aの上方に連なり、上方に向けて徐々に縮径する肩部12cと、を有する。肩部12cの上端部は口部11に連結している。
【0052】
泡吐出容器2において、胴部12の軸線としての第1の軸線O1は、底部13の中心を通り、底部13の底面に対して垂直に延在している。また、第1の軸線O1は胴本体部12aの中心軸線に一致している。また、図4に示す第2の軸線O2は、シリンダー40の軸線であり、口部11、キャップ20、シリンダー本体部40a及び孔形成部41の中心軸線に一致する。なお、泡吐出容器2において、第2の軸線O2は、第1の軸線O1に対して平行となっている。
【0053】
泡吐出容器2においても、空気導入孔43は、第1の軸線O1(胴部12の軸線)よりも後方のみに配置されている。これにより、図4に示す正立姿勢のみならず、図5に示すように泡吐出容器2を横向きの姿勢(傾倒姿勢)とした場合でも、内容液を泡状に吐出することができる。なお、図5において、泡吐出容器2は、第1の軸線O1が水平方向に延在する姿勢となっている。泡吐出容器2にあっては、空気導入孔43が第1の軸線O1(胴部12の軸線)よりも後方のみに配置されているため、空気導入孔43が液面よりも鉛直方向の上側に配置され、内容液が空気導入孔43に浸入し難くなる。これにより、空気導入孔43から空気を導入することができるので、内容液を所期した通りの泡状に吐出することができる。
【0054】
また、泡吐出容器2において、シリンダー40は、シリンダー40の軸線(第2の軸線O2)が、胴部12の軸線(第1の軸線O1)よりも後方に位置するように配置されている。このような構成により、シリンダー40の軸線が胴部12の軸線に一致する(同軸配置される)場合と比較して、空気導入孔43がより後方に位置することとなる。その結果、図5に示すような傾倒姿勢において、内容液が空気導入孔43により浸入し難くなる。
【0055】
また、本実施形態の泡吐出容器2にあっては、空気導入孔43が液導入孔44よりも後方に設けられている。これにより、図5に示す傾倒姿勢において、空気導入孔43がより鉛直方向上側に配置されるため、傾倒姿勢で泡状内容液を吐出する際に、さらに内容液が空気導入孔43に浸入し難くなる。
【0056】
また、本実施形態の泡吐出容器2にあっては、図4に示す正立姿勢においてノズル21が前方に向けて斜め上向きとなるように構成されている。これによれば、内容液の吐出後にノズル内流路23に残留した内容液がノズル21から垂れることを抑制することができる。
【0057】
ここで、泡吐出容器2は、空気導入孔43を開閉可能な第1弁構造60と、液導入孔44を開閉可能な第2弁構造70と、を備える。
【0058】
第1弁構造60は、嵌合部61と、導入開口62と、保持筒部63と、移動弁体64とを有する。嵌合部61は環状であり、パイプ45の外周側でシリンダー40の傘状体46の下端開口を塞ぐように、傘状体46の下端部に嵌合保持される。導入開口62は、嵌合部61に形成された貫通孔である。保持筒部63は、導入開口62を取り囲むように嵌合部61から下方に突出しており、周方向の一部に設けられた切欠き63aを通して、導入開口62と収容空間Sとを連通させる。本例の保持筒部63は、保持筒部63の中心軸線が第2の軸線O2と平行に延在するように配置されている。移動弁体64は球状であり、保持筒部63の内側で保持筒部63の軸方向に移動可能に構成されている。移動弁体64は、保持筒部63の内側で、自重により鉛直方向下方側に移動するように構成されている。図4に示す正立姿勢、及び図5に示す傾倒姿勢では、移動弁体64が保持筒部63の下端部に位置し、切欠き63a及び導入開口62を通して空気導入孔43と収容空間Sとが連通状態となる。一方で、図6に示す泡吐出容器2の倒立姿勢(口部11の開口が下向きとなるように第2の軸線Oが水平面に対して傾斜する姿勢)では、移動弁体64が保持筒部63の上端部まで移動し、当該移動弁体64によって導入開口62が閉塞(封止)されるため、空気導入孔43と収容空間Sとが非連通状態となる。
【0059】
このように、第1弁構造60は、泡吐出容器2を図4に示す正立姿勢又は図5に示す傾倒姿勢とした際には空気導入孔43を開放し、また、泡吐出容器2を図6に示す倒立姿勢とした際には空気導入孔43を閉塞するように構成されている。
【0060】
第2弁構造70は、嵌合部71と、導入開口72と、保持筒部73と、移動弁体74とを有する。嵌合部71は環状であり、パイプ45の下端開口45bを外側から取り囲むようにパイプ45の下端部に嵌合保持される。導入開口72は、嵌合部71に形成された貫通孔である。保持筒部73は、嵌合部71に連なり、周方向の一部に設けられた切欠き73aを通して、導入開口72と収容空間Sとを連通させる。本例の保持筒部73は、保持筒部73の中心軸線がパイプ45の下端部の中心軸線と一致するように配置されている。移動弁体74は球状であり、保持筒部73の内側で保持筒部73の軸方向に移動可能に構成されている。移動弁体74は、保持筒部73の内側で、自重により下方へ移動するように構成されている。図4に示す正立姿勢及び図5に示す傾倒姿勢では、移動弁体74が保持筒部73の下端部に位置し、切欠き73a及び導入開口72を通して液導入孔44と収容空間Sとが連通状態となる。一方で、図6に示す泡吐出容器2の倒立姿勢では、移動弁体74が保持筒部73の上端部まで移動し、当該移動弁体74によって導入開口72が閉塞(封止)されるため、液導入孔44と収容空間Sとが非連通状態となる。
【0061】
このように、第2弁構造70は、泡吐出容器2を図4に示す正立姿勢又は図5に示す傾倒姿勢とした際には液導入孔44を開放し、泡吐出容器2を図6に示す倒立姿勢とした際には液導入孔44を閉塞するように構成されている。なお、上記の移動弁体64、74の形状は球体に限られず、適宜変更可能である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の泡吐出容器2を図6に示す倒立姿勢とした場合には、第1弁構造60によって空気導入孔43が閉塞され、第2弁構造70によって液導入孔44が閉塞されるため、内容液の吐出が抑制される。このように、本実施形態の泡吐出容器2にあっては、第1弁構造60及び第2弁構造70を設けたことにより、倒立姿勢での内容液の吐出を抑制することが可能となる。その結果、図4に示す正立姿勢又は図5に示す傾倒姿勢で内容液の吐出が行われるため、より確実に泡吐出容器2から泡状の内容液を吐出させることが可能となる。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、図1~3に示す泡吐出容器1に、図4~6の泡吐出容器2に設けた、空気導入孔43を開閉可能な第1弁構造60と、液導入孔44を開閉可能な第2弁構造70と、を設けてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:泡吐出容器
10:容器本体
11:口部
11a:雄ねじ部
11b:小突起
11c:大突起
12:胴部
12a:胴本体部
12b:湾曲部
12c:肩部
13:底部
20:キャップ
21:ノズル
22:先端開口(吐出口)
23:ノズル内流路
24:外周壁
24a:雌ねじ部
24b:リブ
25:フランジ部
26:シール筒部
27:段差部
27a:段差面
28:頂壁
29:底壁
30:流出入孔
31:戻し流路
32:泡流出孔
33:連結壁
33a:位置合わせ用の凹部
34:内部筒状壁
40:シリンダー
40a:シリンダー本体部
40b:環状フランジ部
40c:位置合わせ用の凸部
40c:位置合わせ用の凹部
41:孔形成部
41a:突出片
41b:環状壁
42:混合室
43:空気導入孔
44:液導入孔
45:パイプ
45a:湾曲部
45b:下端開口
46:傘状体
47:発泡部材
50:逆止弁
51:弁体
52:環状本体部
53:内向きフランジ
60:第1弁構造
61:嵌合部
62:導入開口
63:保持筒部
63a:切欠き
64:移動弁体
70:第2弁構造
71:嵌合部
72:導入開口
73:保持筒部
73a:切欠き
74:移動弁体
O1:第1の軸線(胴部の軸線)
O2:第2の軸線(シリンダーの軸線)
S:収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6