(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】改良物品、被覆物品、および改良合金
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20230815BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20230815BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230815BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20230815BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20230815BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C22C19/05 B
C22C19/03 G
C23C26/00 B
C23C26/00 L
F01D5/28
F01D25/00 L
F01D25/00 X
F02C7/00 C
F02C7/00 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017163831
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コンラッド・シェイファー
(72)【発明者】
【氏名】シャン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・エム・モッラ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダグラス・アーネット
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120976(JP,A)
【文献】特表2016-520709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00-19/05
C22C 30/00-30/06
C23C 24/00-30/00
F01D 1/00-11/24
F02C 1/00-9/58
F23R 3/00-7/00
F01D 13/00-15/12,23/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良合金を含む物品であって、前記改良合金は、
i)
ガンマプライム相を含むニッケル基超合金からなり、ii)ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満の前記ガンマプライム抗酸化剤の濃度を有するベース合金組成物であって、CMSX 10、TMS 75、TMS 82、Rene N2、Rene N5、Rene N6、Rene N500、Rene N515及びTWA 1484からなる群から選択されるベース合金組成物と、
前記ベース合金組成物と混合されて前記改良合金を形成し、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記濃度を少なくとも前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度に増加させる付加ガンマプライム抗酸化剤と
からなり、前記ガンマプライム抗酸化剤がセリウム又はセリウムとランタンの組合せであり、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度は、前記ニッケル基超合金と比較して、前記ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を前記改良合金にもたらす濃度であり、かつ重量で、前記ガンマプライム相の1%~5%である、物品。
【請求項2】
前記物品が、タービン構成要素の一部である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記タービン構成要素の部分が、1,100°F未満の動作温度を有する、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記タービン構成要素が、バケット(ブレード)、ノズル(ベーン)、シュラウド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2または3に記載の物品。
【請求項5】
前記改良合金が、単結晶ミクロ組織または柱状粒子ミクロ組織を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記改良合金における前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度が、重量で、前記改良合金の0.1%~1%である、請求項1乃至5のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
前記改良合金が、前記ニッケル基超合金と比較して、応力加速ガンマプライム酸化静的亀裂成長感受性の低下という特性を含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
前記物品が、前記物品の表面に配置された耐酸化性材料を有するコーティングを含み、前記耐酸化性材料が、前記ベース合金組成物より耐酸化性である、請求項1乃至7のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
i)
ガンマプライム相を含むニッケル基超合金からなり、ii)ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満の前記ガンマプライム抗酸化剤の濃
度を有するベース合金組成物であって、CMSX 10、TMS 75、TMS 82、Rene N2、Rene N5、Rene N6、Rene N500、Rene N515及びTWA 1484からなる群から選択されるベース合金組成物と、
前記ベース合金組成物と混合されて前記改良合金を形成し、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記濃度を少なくとも前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度に増加させる付加ガンマプライム抗酸化剤と
からなる改良合金であって、前記ガンマプライム抗酸化剤がセリウム又はセリウムとランタンの組合せであり、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度は、前記ニッケル基超合金と比較して、前記ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を前記改良合金にもたらす濃度であり、かつ重量で、前記ガンマプライム相の1%~5%である、改良合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良物品、被覆物品、および改良合金に関する。より具体的には、本発明は、酸化駆動亀裂伝播に耐性を有する改良物品、被覆物品、および改良合金に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、腐食性環境下において高温を含む極端な条件下で動作する。向上した効率を達成するためにガスタービンの動作温度は上昇しており、ニッケル基超合金のような先進材料が、特に高温ガス経路における様々なタービン構成要素に利用されている。特定の重要な高温ガス経路構成要素を含むいくつかの合金および用途では、単結晶粒子組織を有するニッケル基超合金は、他の利用可能な材料より優れた機械的特性を含み得る望ましい特性を有する。
【0003】
しかし、ニッケル基超合金は、応力加速ガンマプライム酸化(SAGPO)静的亀裂成長の影響を受けやすい可能性がある。SAGPO静的亀裂成長は、ガスタービンの動作条件下で亀裂先端が内部でかつ優先的に酸化されたときに起こり得る。SAGPO静的亀裂伝播の高い感受性は、単結晶粒子組織を有するニッケル基超合金に存在し得る。実際、この感受性は、場合によっては、先進単結晶ニッケル基超合金から形成されたタービン構成要素が動作条件下で破壊される可能性があるほど深刻となり得る。特に、単結晶ニッケル基超合金は、たとえば、約1,100°F未満の温度などの合金の通常の動作プロファイルより下の温度に曝されるタービン構成要素の一部に合金が位置する場合に、SAGPO静的亀裂成長に対する感受性が高まる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
例示的な実施形態では、物品は、改良合金を含む。改良合金は、ベース合金組成物と、付加ガンマプライム抗酸化剤とを含む。ベース合金組成物は、ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満のガンマプライム抗酸化剤の濃度を含む。付加ガンマプライム抗酸化剤は、ベース合金組成物と混合されて改良合金を形成する。付加ガンマプライム抗酸化剤は、ガンマプライム抗酸化剤の濃度を少なくともガンマプライム抗酸化剤の有効濃度に増加させる。ガンマプライム抗酸化剤は、改良合金のガンマプライム相に優先的に偏析する。有効濃度は、ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を改良合金にもたらす濃度である。
【0005】
別の例示的な実施形態では、被覆物品は、ベース合金組成物を含む物品と、物品の表面に配置されたコーティングとを含む。コーティングは、耐酸化性材料を含み、耐酸化性材料は、ベース合金組成物より耐酸化性である。被覆物品は、ベース合金組成物と比較して、応力加速ガンマプライム酸化静的亀裂成長感受性の低下という特性を含む。
【0006】
別の例示的な実施形態では、改良合金は、ベース合金組成物と、付加ガンマプライム抗酸化剤とを含む。ベース合金組成物は、ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満のガンマプライム抗酸化剤の濃度を含む。付加ガンマプライム抗酸化剤は、ベース合金組成物と混合されて改良合金を形成する。付加ガンマプライム抗酸化剤は、ガンマプライム抗酸化剤の濃度を少なくともガンマプライム抗酸化剤の有効濃度に増加させる。ガンマプライム抗酸化剤は、改良合金のガンマプライム相に優先的に偏析する。有効濃度は、ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を改良合金にもたらす濃度である。
【0007】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例示により示した添付図面を伴って、好適な実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的な改良物品、被覆物品、および改良合金が提供される。本開示の実施形態は、本明細書で開示される1つまたは複数の特徴を利用しない物品、被覆物品、および合金と比較して、SAGPO静的亀裂成長を低減または排除し、コストを低減し、構成要素寿命を改善し、耐久性を向上させ、またはそれらの組合せ。
【0009】
一実施形態では、改良合金は、ベース合金組成物と、付加ガンマプライム抗酸化剤とを含む。ベース合金組成物は、ガンマプライム抗酸化剤を含まないか、またはガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満のガンマプライム抗酸化剤の濃度を含む。付加ガンマプライム抗酸化剤は、ベース合金組成物と混合されて改良合金を形成し、ガンマプライム抗酸化剤は、改良合金のガンマプライム相に優先的に偏析する。
【0010】
付加ガンマプライム抗酸化剤は、ガンマプライム抗酸化剤の濃度を少なくともガンマプライム抗酸化剤の有効濃度に増加させる。本明細書で使用される場合、「有効濃度」は、ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を改良合金にもたらす濃度を指す。本明細書で使用される場合、「酸化感受性の低下」は、酸化感受性の完全な排除を含む。理論に束縛されるものではないが、ガンマプライム抗酸化剤は、充分な濃度で不動態化効果を示し、改良合金のガンマプライム相への酸素侵入を低減または排除し得る不活性外向き成長酸化物層を形成することができると考えられる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ガンマプライム抗酸化剤」は、ベース合金組成物のガンマプライム相が受ける動作条件下でベース合金組成物のガンマプライム相と比較して、優先的または犠牲的に酸化される材料を指す。ガンマプライム抗酸化剤は、チタン、ハフニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、およびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない任意の適切な材料とすることができる。
【0012】
ベース合金組成物は、ニッケル基超合金、少なくとも50体積%のガンマプライム相を含むニッケル基超合金、CMSX 10、TMS 75、TMS 82、Rene N2、Rene N5、Rene N6、Rene N500、Rene N515、およびTWA 1484の少なくとも1つを含むがこれらに限定されない任意の適切な材料組成物とすることができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「CMSX 10」は、重量で、約2.65%のクロム、約7%のコバルト、約5.8%のアルミニウム、約0.8%のチタン、約6.4%のタングステン、約0.6%のモリブデン、約5.5%のレニウム、約7.5%のタンタル、約0.4%のニオブ、約0.06%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「TMS 75」は、重量で、約3.5%のクロム、約12.5%のコバルト、約13.7%のアルミニウム、約2%のタングステン、約1.2%のモリブデン、約1.6%のレニウム、約2%のタンタル、約0.04%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「TMS 82」は、重量で、約5.8%のクロム、約8.2%のコバルト、約12.2%のアルミニウム、約0.63%のチタン、約2.9%のタングステン、約1.2%のモリブデン、約0.8%のレニウム、約2.1%のタンタル、約0.04%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「Rene N2」は、重量で、約7.5%のコバルト、約13%のクロム、約6.6%のアルミニウム、約5%のタンタル、約3.8%のタングステン、約1.6%のレニウム、約0.15%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「Rene N5」は、重量で、約7.5%のコバルト、約7.0%のクロム、約6.5%のタンタル、約6.2%のアルミニウム、約5.0%のタングステン、約3.0%のレニウム、約1.5%のモリブデン、約0.15%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「Rene N6」は、重量で、約12.5%のコバルト、約4.2%のクロム、約7.2%のタンタル、約5.75%のアルミニウム、約6%のタングステン、約5.4%のレニウム、約1.4%のモリブデン、約0.15%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「Rene N500」は、重量で、約7.5%のコバルト、約0.2%の鉄、約6%のクロム、約6.25%のアルミニウム、約6.5%のタンタル、約6.25%のタングステン、約1.5%のモリブデン、約0.15%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「Rene N515」は、重量で、約7.5%のコバルト、約0.2%の鉄、約6%のクロム、約6.25%のアルミニウム、約6.5%のタンタル、約6.25%のタングステン、約2%のモリブデン、約0.1%のニオブ、約1.5%のレニウム、約0.6%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「TWA 1484」は、重量で、約10%のコバルト、約5%のクロム、約5.6%のアルミニウム、約8.7%のタンタル、約6%のタングステン、約3%のレニウム、約2%のモリブデン、約0.1%のハフニウム、および残部のニッケルの組成物を含む合金を指す。
【0022】
改良合金は、単結晶ミクロ組織、柱状粒子ミクロ組織、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない任意の適切なミクロ組織を含むことができる。一実施形態では、改良合金は、ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、SAGPO静的亀裂成長感受性の低下という特性を含む。
【0023】
一実施形態では、ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度は、ガンマプライム抗酸化剤の最大濃度を含み、最大濃度は、ベース合金組成物の環境的、物理的および機械的特性の少なくとも1つに実質的にかつ負の影響を及ぼすガンマプライム抗酸化剤の濃度より低い。本明細書で使用される場合、材料の負の影響は、改良合金が受ける動作条件によって要求される公差の外側に改良合金組成物を置くベース合金組成物の特性の有害な変化である。
【0024】
全体として改良合金に関して考慮すると、ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度は、重量で、約0.05%~約2%、あるいは約0.1%~約1%、あるいは約0.1%~約2% 、あるいは約0.25%~約0.75%、あるいは約0.25%~約2%、あるいは少なくとも約0.05%、あるいは少なくとも約0.1%、あるいは少なくとも約0.5%とすることができる。改良合金単独のガンマプライム相に関して考慮すると、ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度は、重量で、約0.5%~約10%、あるいは約0.5%~約2%、あるいは約1%~約2%、あるいは約1%~約5%、あるいは約1%~約10%、あるいは約2%~約4%、あるいは約2%~約10%、あるいは少なくとも約0.5%、あるいは少なくとも約1%、あるいは少なくとも約1.5%、あるいは少なくとも約2%とすることができる。
【0025】
一実施形態では、物品は、改良合金を含む。物品は、タービン構成要素またはタービン構成要素の一部であってもよい。タービン構成要素は、バケット(ブレード)、ノズル(ベーン)、シュラウド、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない任意の適切なタービン構成要素とすることができる。タービン構成要素の部分は、タービン構成要素の第2の部分、内部空洞、シャンク、またはそれらの組合せに対して低温に曝される部分を含むがこれに限定されない任意の適切な部分とすることができる。
【0026】
一実施形態では、タービン構成要素の部分は、約1,500°F未満、あるいは約1,300°F未満、あるいは約1,100°F未満、あるいは約900°F未満、あるいは約800°F~約1,300°F、あるいは約900°F~約1,100°Fの動作温度を含む。さらなる実施形態では、タービン構成要素の第2の部分は、少なくとも約1,550°F、あるいは少なくとも約1,600°F、あるいは少なくとも約1,700°F、あるいは約1,550°F~約2,500°F、あるいは約1,600°F~約2,000°Fの動作温度を含む。
【0027】
別の実施形態では、被覆物品は、物品の表面に配置された耐酸化性材料を有するコーティングを含む。物品は、ベース合金組成物または改良合金を含むことができる。耐酸化性材料は、任意の適切な耐酸化性材料とすることができ、耐酸化性材料は、重量で、少なくとも約45%のニッケル、あるいは少なくとも約50%のニッケル、あるいは少なくとも約60%のニッケル、および約30%以下のアルミニウム、あるいは約10%~約30%のアルミニウム、あるいは約20%~約30%のアルミニウムを含む耐酸化性材料を含むがこれに限定されないベース合金組成物より耐酸化性である。耐酸化性材料はさらに、クロムおよびコバルトの少なくとも1つを含むことができる。一実施形態では、耐酸化性材料は、クロムおよびコバルトの残部を含む。
【0028】
コーティングは、約2ミル以下、あるいは約0.5ミル~約2ミルの厚さを含むがこれらに限定されない任意の適切な厚さを有することができる。コーティングは、物品の表面全体に配置されてもよく、またはコーティングは、これに限定されないが、酸化による亀裂が生じやすい表面のような物品の表面全体より小さい表面の一部に配置されてもよい。コーティングが塗布される表面の部分は、物品の表面全体の単一の別個の領域または複数の分離した別個の領域を含むことができる。
【0029】
コーティングは、コーティングと物品との間に本質的に安定した領域を形成するために、任意の適切な熱処理に供されてもよい。一実施形態では、相互拡散領域とも呼ばれ得る本質的に安定した領域は、熱的および機械的特性を含み、これはコーティングとベース合金の同等の特性の中間、またはコーティングと改良合金の同等の特性の中間である。理論に束縛されるものではないが、このような中間特性を有することは、コーティングの剥離を減少または排除すると考えられる。
【0030】
理論に束縛されるものではないが、耐酸化性材料を有するコーティングは、ベース合金組成物または改良合金のマトリックス中への酸素の進入を防止し、被覆表面のすぐ近くの応力状態を変化させ、それによりベース合金組成物または改良合金のガンマプライム相がその粒状形態を維持することができると考えられる。さらなる実施形態では、コーティングは、耐酸化性材料からなる。コーティングがなければ、ベース合金または改良合金に存在するガンマプライム相は、各ラフトが局部引張に直交するラフト形態に遷移する可能性がある。理論に束縛されるものではないが、粒状形態のガンマプライム相を有することは、優れた機械的特性を有し、ラフト形態と比較してSAGPO静的亀裂成長に対してより抵抗性を有することができると考えられる。
【0031】
本発明を好適な実施形態に関して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その要素を種々変更させることができ、均等物で置換することができることは当業者によって理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内に属するすべての実施形態を含むことになることを意図している。
[実施態様1]
改良合金を備える物品であって、前記改良合金は、
ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満の前記ガンマプライム抗酸化剤の濃度を含むベース合金組成物と、
前記ベース合金組成物と混合されて前記改良合金を形成し、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記濃度を少なくとも前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度に増加させる付加ガンマプライム抗酸化剤であって、前記ガンマプライム抗酸化剤は、前記改良合金のガンマプライム相に優先的に偏析する付加ガンマプライム抗酸化剤とを備え、
前記有効濃度は、前記ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、前記ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を前記改良合金にもたらす濃度である、物品。
[実施態様2]
前記物品が、タービン構成要素の一部である、実施態様1に記載の物品。
[実施態様3]
前記タービン構成要素の部分が、約1,100°F未満の動作温度を有する、実施態様2に記載の物品。
[実施態様4]
前記タービン構成要素が、バケット(ブレード)、ノズル(ベーン)、シュラウド、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様2に記載の物品。
[実施態様5]
前記改良合金が、単結晶ミクロ組織を含む、実施態様1に記載の物品。
[実施態様6]
前記改良合金が、柱状粒子ミクロ組織を含む、実施態様1に記載の物品。
[実施態様7]
前記改良合金における前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度が、重量で、約0.1%~約1%である、実施態様1に記載の物品。
[実施態様8]
前記改良合金の前記ガンマプライム相における前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度が、重量で、約1%~約5%である、実施態様1に記載の物品。
[実施態様9]
前記ベース合金組成物が、ニッケル基超合金、少なくとも50体積%のガンマプライム相を含むニッケル基超合金、CMSX 10、TMS 75、TMS 82、Rene N2、Rene N5、Rene N6、Rene N500、Rene N515、およびTWA 1484の少なくとも1つからなる群から選択される、実施態様1に記載の物品。
[実施態様10]
前記ガンマプライム抗酸化剤が、チタン、ハフニウム、イットリウム、ランタン、セリウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様1に記載の物品。
[実施態様11]
前記ガンマプライム抗酸化剤が、ランタン、セリウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様10に記載の物品。
[実施態様12]
前記改良合金が、前記ベース合金組成物からなる前記ベース合金と比較して、応力加速ガンマプライム酸化静的亀裂成長感受性の低下という特性を含む、実施態様1に記載の物品。
[実施態様13]
前記物品が、前記物品の表面に配置された耐酸化性材料を有するコーティングを含み、前記耐酸化性材料が、前記ベース合金組成物より耐酸化性である、実施態様1に記載の物品。
[実施態様14]
前記耐酸化性材料が、重量で、約30%以下のアルミニウムを含む、実施態様13に記載の物品。
[実施態様15]
ベース合金組成物を含む物品と、
前記物品の表面に配置され、前記ベース合金組成物より耐酸化性である耐酸化性材料を含むコーティングとを備え、
前記ベース合金組成物と比較して、応力加速ガンマプライム酸化静的亀裂成長感受性の低下という特性を含む、被覆物品。
[実施態様16]
前記耐酸化性材料が、重量で、少なくとも約50%のニッケルと、約30%以下のアルミニウムとを含む、実施態様15に記載の被覆物品。
[実施態様17]
前記耐酸化性材料が、クロムおよびコバルトの残部をさらに含む、実施態様16に記載の被覆物品。
[実施態様18]
前記表面が、前記物品の表面全体より小さい前記物品の前記表面全体の一部である、実施態様15に記載の被覆物品。
[実施態様19]
前記ベース合金組成物が、ニッケル基超合金、少なくとも50体積%のガンマプライム相を含むニッケル基超合金、CMSX 10、TMS 75、TMS 82、Rene N2、Rene N5、Rene N6、Rene N500、Rene N515、およびTWA 1484の少なくとも1つからなる群から選択される、実施態様15に記載の被覆物品。
[実施態様20]
ガンマプライム抗酸化剤の有効濃度未満の前記ガンマプライム抗酸化剤の濃度を含むベース合金組成物と、
前記ベース合金組成物と混合されて前記改良合金を形成し、前記ガンマプライム抗酸化剤の前記濃度を少なくとも前記ガンマプライム抗酸化剤の前記有効濃度に増加させる付加ガンマプライム抗酸化剤であって、前記ガンマプライム抗酸化剤は、前記改良合金のガンマプライム相に優先的に偏析する付加ガンマプライム抗酸化剤とを備え、
前記有効濃度は、前記ベース合金組成物からなるベース合金と比較して、前記ガンマプライム相の酸化感受性の低下という特性を前記改良合金にもたらす濃度である、改良合金。