IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

特許7330682連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造
<>
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図1
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図2
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図3
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図4
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図5
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図6
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図7
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図8
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図9
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図10
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図11
  • 特許-連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】連続繊維成分およびチョップド繊維成分の両方を有する複合部品の製造
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/30 20060101AFI20230815BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 70/12 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 39/12 20060101ALI20230815BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230815BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B29C70/30
C08J5/04
B29C70/12
B29C70/16
B29C70/48
B29C39/12
B29C39/24
B64C1/00 B
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018208772
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2019127031
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】15/877,628
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】キース・ダニエル・フムフェルド
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ハートショーン
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173334(JP,A)
【文献】特開平5-269785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/30
C08J 5/04
B29C 70/12
B29C 70/16
B29C 70/48
B29C 39/12
B29C 39/24
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型の第1の表面上に連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を配置するステップ(402)と、
成形型のキャビティに積層体と接触するチョップド繊維および樹脂を充填するステップ(406)と、
成形型の第2の表面上に積層体を配置するステップと、
チョップド繊維および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化するステップ(408)と、
一体化複合部品を成形型から分離するステップ(410)と、を含む方法。
【請求項2】
第1の表面は成形型の第1の部分にあり、チョップド繊維の集合体および積層体を硬化するステップが、チョップド繊維および積層体を加熱するステップを含み、方法が、
成形型の第1の部分とかみ合わせるために成形型の第2の部分を移動することによってキャビティを形成するステップであって、キャビティは成形型の第1の部分と成形型の第2の部分との間に存在し、積層体を取り囲む、ステップ(404)と、
チョップド繊維の集合体および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化させた後に、成形型の第2の部分を成形型の第1の部分から分離するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成形型の第2の部分を移動するステップが、成形型の第2の部分の第2の切欠き上に成形型の第1の部分の第1の切欠きを配置するステップと、第1の切欠きおよび第2の切欠きによって画定されキャビティに通じるポートを形成するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
積層体を配置するステップが、樹脂で予め含浸されたトウを配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
キャビティに樹脂を充填するステップが、キャビティにチョップド繊維を充填するステップとは別に行われることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
樹脂が熱硬化性樹脂であり、
チョップド繊維および積層体を一緒に硬化するステップが、熱硬化性樹脂を硬化温度に加熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
積層体を配置することにより、繊維の先端が第1の表面に露出することが防止される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
樹脂が熱可塑性樹脂であり、
方法が、加熱後に一体化複合部品を冷却し、積層体およびチョップド繊維で熱可塑性樹脂を固化させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサによって実行されるとき、方法を実行するように動作可能なプログラム命令を具現化する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
成形型の第1の表面上に連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を配置するステップ(402)と、
成形型のキャビティに、積層体に接触するチョップド繊維および樹脂を充填するステップ(406)と、
成形型の第2の表面上に積層体を配置するステップと、
チョップド繊維および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化するステップ(408)と、
一体化複合部品を成形型から分離するステップ(410)を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料の分野に関し、特に、繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
複合部品を製造するためにチョップド炭素繊維を使用することができる。例えば、ランダムに配向され、短い長さのチョップド炭素繊維の集合体を取得し、これらの繊維に液状樹脂を含浸させ、次いで樹脂を硬化させて複合部品を形成することによって、複合部品を製造することができる。チョップド繊維は、チョップド繊維複合部品が労働集約的なレイアッププロセスを必要とせず、より安価な材料を使用する点で、他の繊維強化材料に比べて利点を提供する。しかしながら、チョップド繊維複合部品は、いくつかの用途において、多くの理由により望ましくないままである。
【0003】
第1に、チョップド繊維複合部品は、ある方向から加えられる力に対して所望の構造強度よりも低い構造強度を示すことがある。さらに、チョップド繊維複合部品は、所望よりも粗い端部および表面を示すことがある。この粗さは、得られた複合部品の表面および/または端部から突出するランダムに配向された繊維の先端によって引き起こされる。これらの粗い端部は、それらが抗力を増大させ、完成した部品に対して所望の適合性および/または機能を提供できないことがあるため、航空宇宙用途には望ましくない場合がある。さらに、これらの粗い端部は、炭素繊維が導電体として作用するという事実のために、電磁気特性が所望のものよりも劣っている場合がある。
【0004】
したがって、上述の問題の少なくとも幾つか、および他の可能性のある問題を考慮している方法および装置を有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、チョップド繊維と、平行に配向された連続繊維の層の両方を含むハイブリッドである繊維強化複合部品を提供する。複合部品の1つ以上の外面は、チョップド繊維の集合体と一緒に硬化される1つ以上の連続繊維の層をレイアップすることによって形成される。したがって、得られる複合部品は、もしも多量のチョップド繊維が使用され得る場合でも、所望の表面特性を示す。
【0006】
一実施形態は、連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を成形型の第1の表面上に敷設するステップと、成形型のキャビティにチョップド繊維および積層体に接触する樹脂を充填するステップと、チョップド繊維および積層体を一体化された複合部品に一緒に硬化するステップと、一体化された複合部品を成形型から分離するステップとを含む方法である。
【0007】
さらなる実施形態は、プロセッサによって実行されたとき、方法を実行するように動作可能なプログラム命令を具現化する非一時的なコンピュータ可読媒体である。この方法は、連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を成形型の第1の表面上に敷設するステップと、成形型のキャビティにチョップド繊維および積層体に接触する樹脂を充填するステップと、チョップド繊維および積層体を一体化された複合部品に一緒に硬化するステップと、一体化された複合部品を成形型から分離するステップとを含む。
【0008】
さらなる実施形態は、製品である。製品は、複合部品の外面に配置された連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つの平面層と、3つの軸のすべてに沿って互いにランダムに配向されたチョップド繊維の集合体とを含む複合部品を含む。チョップド繊維の集合体は、複合部品の内部にある位置で、連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つの平面層に共硬化される。
【0009】
他の例示的な実施形態(例えば、前述の実施形態に関連する方法およびコンピュータ可読媒体)を以下に説明することができる。議論された特徴、機能、および利点は、様々な実施形態において独立して実現され得るか、またはさらなる詳細が以下の説明および図面を参照して理解され得るさらに他の実施形態において組み合わされ得る。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態を、単なる例示として、添付の図面を参照して、ここに説明する。同じ参照番号は、すべての図面において同じ要素または同じタイプの要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品の斜視図である。
図2】例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品を形成するための開いた成形型の斜視図である。
図3】例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品を形成するための閉じた成形型の斜視図である。
図4】例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品を製造する方法を示すフローチャートである。
図5】例示的な実施形態における複合部品の製造を示す側面断面図である。
図6】例示的な実施形態における複合部品の製造を示す側面断面図である。
図7】例示的な実施形態における複合部品の製造を示す側面断面図である。
図8】例示的な実施形態における複合部品の製造を示す側面断面図である。
図9】例示的な実施形態において、複数の外面に沿って連続繊維強化ポリマーを含む複合部品の斜視図である。
図10】例示的な実施形態における複合部品を製造する成形型のブロック図である。
図11】例示的な実施形態における航空機製造および保守点検方法の流れ図である。
図12】例示的な実施形態における航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面および以下の説明は、本開示の特定の例示的な実施形態を例示する。したがって、当業者であれば、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、本開示の範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載された例は、本開示の原理の理解を助けることを意図しており、そのように具体的に記載された例および条件に限定されるものではないと解釈される。結果として、本開示は、以下に記載される特定の実施形態または実施例に限定されず、特許請求の範囲およびそれらの同等物によって限定される。
【0013】
炭素繊維強化ポリマー(CFRP)部品などの複合部品は、初めに複数の層にレイアップされて、一緒に積層体を形成することができる。積層体の各層内部の個々の繊維は、典型的には互いに平行に整列しているが、異なる層は、異なる面内寸法に沿って得られる複合体の強度を増加させるために、異なる繊維配向を示してよい。積層体は、積層体を複合部品(例えば、航空機に使用するため)に固化させるために、高温で固化する液体樹脂を含むことができる。熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂(温度によって粘度が変化する)が含浸された炭素繊維は、「プリプレグ」と呼ばれる。他の種類の炭素繊維としては、熱硬化性樹脂が含浸されていないが、粘着付与剤または結合剤を含み得る、「乾式繊維」がある。硬化前に乾式繊維に樹脂を注入してもよい。熱硬化性樹脂では、固化は、硬化と呼ばれる一方向性のプロセスであるが、熱可塑性樹脂では、樹脂が再加熱されると、液体状に戻り得る。
【0014】
図1は、例示的な実施形態において、連続繊維122およびランダムに配向された繊維112(例えば、炭素繊維)の両方を含む複合部品100の斜視図である。具体的には、領域120は、繊維強化ポリマーの1つ以上の層126(例えば、1~4層)を含む。層126は、プライとも呼ぶことができる。例えば、領域120は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)テープ/トウの1つ以上の層によって形成することができる。各層126は、層中の他の繊維に対して平行な連続繊維122と、樹脂124の固化ポリマーとを含む。これらの連続繊維122は、領域120内部で数フィートまたは数十フィート延在することができる。領域120は、複合部品100の外面130を画定し、したがって外面130は、レイアップされた積層体に関連する平滑さなどの表面品質を示す。外面130は滑らかであるので、外面130は空力面としての使用に特に適する場合がある。これは、以下に説明するように、複合部品100がランダムに配向された繊維(例えば、3つの軸すべてに沿ってランダムに配向された繊維)を含む場合であっても当てはまる。
【0015】
領域110は、図1にも示されている。領域110は、領域120に化学的に結合され、ランダムに配向された繊維112(例えば、炭素繊維)、ならびに樹脂114を含む。ランダムに配向された繊維112は、ランダムに配向され、ランダムに配向された繊維112の各々(または繊維の小さなグループ)は、領域110内部の他のランダムに配向された繊維112に対して、ランダムな位置および/または配向(3本の軸152、154および156のすべてに沿って)を有してよい。例えば、ランダムに配向された繊維112は、ランダムに配向された小さなチップ(例えば、センチメートル程度の長さ未満)を含んでよく、各チップは、互いに平行に配向された小さなグループの繊維を含む。この構成は、使用できないスクラップ材料を残して、炭素部分をチップに細断し、次いでランダムに配向した繊維として再利用することを可能にする。同様のスクラップ材料は、複合テープ材料の切断、細断および/または破砕から得ることができる。ランダムに配向された繊維112は、例えばそれぞれ6センチメートル(長さが約3インチ)より短いチョップド繊維を含むことができる。樹脂124および樹脂114との両方が熱硬化性樹脂である実施形態では、領域110は領域120と共硬化されてよい。樹脂124と樹脂114が両方とも熱可塑性樹脂である実施形態では、樹脂124および樹脂114の両方は、同時に溶融状態から冷却されてよく、固化されたポリマー樹脂、ランダムに配向された繊維112、および連続繊維122が一体化された単一の本体をもたらす。外面132および外面134は、領域110によって画定され、その結果、チョップド繊維複合部品に関連する粗さおよび電気伝導率を有し得る。
【0016】
複合部品100は、連続繊維強化ポリマーの薄い境界を利用するため、従来の複合部品に比べて実質的な利点を提供する。例えば、領域120は、50,000分の1インチ(例えば、10,000分の1インチ~30,000分の1インチ)未満の厚さであってもよい。これは、領域120をレイアップするプロセスが、複合部品100の全てをレイアップするよりも指数関数的に速いことを意味する。同時に、複合部品100の1つ以上の外面は、連続繊維テープでレイアップされた複合部品に関する所望の表面特性を示す。複合部品100はまた、領域110が異方性であるという点でさらなる利点を示す。したがって、領域110の強度が、特定のタイプ/方向の力に関して領域120の強度よりも小さかったとしても、領域110は、実際には、他の種類の力に対して領域120よりも強い場合がある。完全に記載された複合部品100について、図2および3は複合部品100を製造するために使用され得る成形型を説明する
【0017】
図2は、例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品を形成するために開いている成形型200の斜視図である。図2によれば、成形型200は、第1の部分210および第2の部分220を含む。第2の部分220は、部分的に中空であり、切欠き222を含む。同様に、第1の部分210は、中空であり、容積216を画定し、切欠き212を含む。第1の部分210の表面214は、連続繊維および樹脂の1つ以上の層を含む積層体を受ける。成形型200が開いている間、積層体を配置することができる。成形型200が閉じられている間、容積216は、チョップド繊維の集合体および樹脂を受ける。
【0018】
図3は、例示的な実施形態において、連続繊維およびランダムに配向された繊維の両方を含む複合部品を形成するための閉じた成形型の斜視図である。図3に示すように、切欠き222および切欠き212が一体化されている場合、それらはポート310を形成し、そこを通ってチョップド繊維の集合体および樹脂が容積216に入り得る。
【0019】
成形型200の動作の例示的な詳細は、図4に関して論じられる。この実施形態では、成形型200が現在開いており、空であって、複合部品を形成するための未硬化材料を待っていると仮定する。
【0020】
図4は、例示的な実施形態における複合部品を製造する方法400を示すフローチャートである。方法400のステップは、図1の成形型200を参照して説明されるが、当業者であれば、方法400は、必要に応じて他の成形型および製造システムで実施できることを理解するであろう。本明細書に記載されたフローチャートのステップは、すべてを含むものではなく、図示されていない他のステップを含むことができる。本明細書に記載のステップは、代替的な順序で実行することもできる。
【0021】
ステップ402において、自動繊維配置(AFP)装置または他の装置は、連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を成形型200の第1の部分210の表面214上に配置する(ステップ402)。積層体は平滑な表面を提供し、必ずしも実質的な構造強度を提供する必要はない。例えば、図5図3の矢印5に対応する成形型200の断面側面図)に示すように、コントローラ560は、積層体510を表面214上に配置する際にAFPマシン550に指示するために、メモリに記憶された数値制御(NC)プログラムに従って命令を発行することができ、その後、成形型200が閉じられるとき、AFPマシン550をスタンバイ位置に移動させるように指示することができる。コントローラ560は、例えば、カスタム回路として、プログラムされた命令を実行するハードウェアプロセッサとして、またはそれらの組合せとして実装されてよい。図5に示すように、積層体510は、連続繊維512並びに未硬化(例えば、「グリーン」)樹脂514を含む。
【0022】
成形型200は、積層体510の配置が完了した後に閉じられてよい。すなわち、方法400は、成形型200の第2の部分220を、成形型200の第1の部分210とかみ合わせるように移動させるステップと、成形型200の第1の部分210と積層体510を囲む成形型200の第2の部分220との間にキャビティ590を形成するステップとをさらに含む。キャビティ590は、成形型200の内部にあり、積層体510と連通する(ステップ404)。キャビティ590はまた、ポート310とも連通する。例えば、コントローラ560は、アクチュエータ530を制御して、成形型200を閉じてキャビティ590を形成することができる。キャビティ590をチョップド繊維の集合体で充填するための準備として、配管500をポート310に取り付けることができる。
【0023】
ステップ406において、コントローラ560は、装置(例えば、加圧リザーバまたはポンプ)に、チョップド繊維および樹脂で成形型200のキャビティを満たすように指示する。このようにして、チョップド繊維の集合体が、容積内に注入/挿入される。繊維は、3つの軸すべてに沿ってランダムに配向されている(例えば、繊維は互いに対して非平面である)。この方法は、樹脂で含浸された繊維の集合体を配管500を介してキャビティ590内にポンプ輸送するようにポンプ520に指示するコントローラ560を含むことができる。図6は、成形型200内部の樹脂614で含浸されたランダムに配向された繊維612の集合体600を示す。この実施形態では、複合部品100が形成されるときに繊維が漏れ出ることを防止するためにポート310をキャップ650で封止している。
【0024】
ランダムに配向された繊維612(すなわち、チョップド繊維)の集合体600および積層体510は一緒に硬化され一体化部品となる(ステップ408)。例えば、もしも積層体510および集合体600が熱硬化性樹脂を利用する場合、コントローラ560は、ヒーター540に指示を出して樹脂が硬化する処理温度に成形型200に熱を加えてよく(図7に示される)、積層体510および集合体600を共硬化させる。あるいは、積層体510および集合体600が熱可塑性樹脂を利用する場合、コントローラ560は、ヒーター540に対して、樹脂を完全に溶融させる熱を加え、次いで樹脂の溶融温度より低い温度に成形型200を冷却するように指示することができる。これにより複合部品100が形成される。
【0025】
複合部品100が形成された後、複合部品100は成形型200から分離され、第2の部分220は成形型200の第1の部分210から分離される(ステップ410)。例えば、コントローラ560は、図8に示すように、第1の部分210を第2の部分220から分離するようにアクチュエータ530に指示することができる。これにより複合部品100が成形型200から取り外され、複合部品100が任意の所望の製造および/または組立工程で使用できるようになる。
【0026】
さらなる実施形態では、積層体510および集合体600は、それらが成形型200内に配置されたときに樹脂を含まない。次に、樹脂を成形型200内にポンプで注入し、複合部品100を形成するために成形型200を加熱する。さらなる実施形態では、キャビティ590と連通している成形型200の表面は、成形型1000からの複合部品100の取り出しを容易にするために離型剤(図示せず)で処理される。
【0027】
方法400は、連続繊維およびランダムな繊維の両方を含む複合部品の一体化された全体の製造を可能にする。連続繊維およびランダムに配向した繊維は同時に一緒に硬化または固化されるので、連続繊維の領域とランダムに配向された繊維の領域との間の界面強度が増加する。さらに、空気力学的表面を含む部品では、より安価なランダム配向繊維を依然として利用することができる。
【0028】
図9は、連続繊維強化ポリマーによって画定される複数の外面と、ランダムに配向された繊維強化ポリマーを含む内部領域とを含む複合部品900の斜視図である。この実施形態では、外面912は、連続繊維強化ポリマーの領域910によって画定され、外面932は、連続強化ポリマー930の領域920によって画定される。対照的に、領域920は、ランダムに配向された繊維強化ポリマーを含む。これは、効果的に、積層体面シートの間に挟まれたランダムに配向された繊維強化ポリマーコアをもたらす。
【実施例
【0029】
以下の実施例では、連続繊維およびランダムに配向された繊維を含む複合部品を製造する状況において、追加のプロセス、システム、および方法が記載される。
【0030】
図10は、例示的な実施形態における複合部品を製造する成形型1000のブロック図である。この例では、成形型1000は、表面1012を含む第1の部分1010を含む。表面1012は、未硬化部品1020の積層体1030を受ける。積層体1030は、それぞれが連続繊維1034並びに樹脂1036を含む多層1032を含む。未硬化部品1020はまた、ランダムに配向された繊維1042の集合体1040および樹脂1046を含む。未硬化部品1020は、キャビティ1090内部に配置される。集合体1040は、第1の部分1010の切欠き1014および第2の部分1050の切欠き1054によって形成されるポートを介して挿入される。第2の部分1050は、第1の部分1010とかみ合い、未硬化部品1020を囲む。集合体1040は、第2の部分1050の表面1052と接触する。
【0031】
より詳細に図面を参照すると、本開示の例示は、図11に示すような航空機の製造および保守点検方法1100および図12に示すような航空機1102という観点から説明することができる。先行生産の間、例示的な方法1100は、航空機1102の仕様および設計1104および材料調達1106を含んでよい。製造の間、航空機1102の構成要素および部分組立品の製造1108並びにシステム統合1110が行われる。その後、航空機1102は、就航中1114にするために、認証および搬送1112を経てもよい。顧客による就航中、航空機1102は、定期的な整備および保守点検1116(変更、再構成、改修などを含んでもよい)が予定されてよい。本明細書で具体化される装置および方法は、生産および保守点検方法1100(例えば、仕様および設計1104、材料調達1106、部品および部分組立品製造1108、システムインテグレーション1110、認証および配送1112、保守点検1114、定期的な整備および保守点検1116)および/または航空機1102の任意の適切な構成要素(例えば、機体1118、システム1120、内部1122、推進1124、電気1126、油圧1128、環境1130)の任意の1つ以上の適切な段階の間、使用されてよい。
【0032】
方法1100の各工程は、システムインテグレータ、第三者、および/またはオペレータ(例えば、顧客)によって実施または実行することができる。この説明の目的のために、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造業者および主要システム下請け業者を含み得るが、これらに限定されない。第三者は、非限定的に、任意の数の販売業者、下請業者及び供給業者を含んでよく、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍本体、サービス組織などであってよい。
【0033】
図12に示すように、例示的な方法1100に従って製造され得る航空機1102は、複数のシステム1120および内部1122を備えた機体1118を含んでもよい。高度システム1120の例は、推進システム1124、電気システム1126、油圧システム1128および環境システム1130のうちの1つまたは複数を含む。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙の例が示されているが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0034】
既に上述したように、本明細書で具体化される装置および方法は、生産および保守点検方法1100の任意の1つまたは複数の段階の間に使用されてよい。例えば、製造段階1108に対応する構成要素または部分組立品は、航空機1102が稼動している間に生成された構造要素または部分組立品と同様の方法で作製または製造されてよい。また、例えば、航空機1102の組立を実質的に迅速化するか、またはコストを低減することによって、製造段階1108および1110の間に、1つまたは複数の装置の実施形態、方法の実施形態、またはそれらの組み合わせを利用することができる。同様に、装置の実施形態、方法の実施形態、またはそれらの組み合わせの1つ以上は、航空機1102が、保守および点検1116に限定されることなく、例えば稼働中に利用されてもよい。例えば、本明細書に記載された技術およびシステムは、ステップ1106,1108、1110、1114および/または1116に関して使用されてよく、かつ/またはこれらの技術およびシステムは、機体1118および/または内部1122に関して使用されてよい。これらの技術およびシステムは、例えば、推進装置1124、電気装置1126、油圧装置1128、および/または環境1130などのシステム1120に関して使用されてもよい。
【0035】
一実施形態では、複合部品100は、機体1118の一部を含み、構成要素および部分組立品製造中に製造される(1108)。次に、複合部品100は、システムインテグレーション1110において航空機に組み立てられてよく、次いで、摩耗により複合部品100が使用不能になるまで就航中1114で使用され得る。その後、保守点検1116において、複合部品100は廃棄され、新たに製造された部品と交換することができる。本発明の構成要素および方法は、新しい部品を製造するために構成要素および部分組立品の製造1108を通して使用されてもよい。
【0036】
図面に示されているか、または本明細書に記載されている様々な制御要素(例えば、電気または電子構成要素)のいずれかは、ハードウェア、ソフトウェアを実装するプロセッサ、ファームウェアを実装するプロセッサ、またはこれらのいくつかの組み合わせとして実装することができる。例えば、要素は、専用ハードウェアとして実装されてもよい。専用のハードウェア要素は、「プロセッサ」、「コントローラ」、または同様の用語で呼ばれることがある。プロセッサによって提供される場合、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共用プロセッサによって、または複数の個別プロセッサによって提供されてよく、それらのうちのいくつかは共有されてもよい。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアのみを指すものと解釈すべきではなく、暗黙的に、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、用途特定集積回路(ASIC)または他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性記憶装置、ロジック、または他の物理的ハードウェア構成要素またはモジュールを含み得るが、これらに限定されない。
【0037】
また、制御要素は、要素の機能を実行するためにプロセッサまたはコンピュータによって実行可能な命令として実装されてもよい。命令の例には、ソフトウェア、プログラムコード、ファームウェアなどがある。命令は、プロセッサが要素の機能を実行するよう指示するためにプロセッサによって実行されるときに動作可能である。命令は、プロセッサによって読み取り可能な記憶装置に記憶されてもよい。記憶装置のいくつかの例は、デジタルまたは固体メモリ、磁気ディスクおよび磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、または光学的に読み取り可能なデジタルデータ記憶媒体である。
【0038】
本発明の装置および方法は、特許請求の範囲と混同されるべきではない以下の節でも言及される。
【0039】
A1.
成形型の第1の表面上に連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を配置するステップ(402)と、
成形型のキャビティに積層体と接触するチョップド繊維および樹脂を充填するステップ(406)と、
チョップド繊維および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化するステップ(408)と、
一体化複合部品を成形型から分離するステップ(410)と、を含む方法。
【0040】
A2.
A1に記載の方法において、
成形型の第2の表面上に積層体を配置するステップをさらに含む。
【0041】
A3.
A1に記載の方法において、
第1の表面は成形型の第1の部分にあり、チョップド繊維の集合体および積層体を硬化するステップは、チョップド繊維および積層体を加熱するステップを含み、方法が、
成形型の第1の部分とかみ合わせるために成形型の第2の部分を移動することによってキャビティを形成するステップであって、キャビティは成形型の第1の部分と成形型の第2の部分との間に存在し、積層体を取り囲む、ステップ(404)と、
チョップド繊維の集合体および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化させた後に、成形型の第2の部分を成形型の第1の部分から分離するステップとをさらに含む。
【0042】
A4.
A3に記載の方法において、
成形型の第2の部分を移動するステップが、成形型の第2の部分の第2の切欠き上に成形型の第1の部分の第1の切欠きを配置するステップと、第1の切欠きおよび第2の切欠きによって画定されキャビティに通じるポートを形成するステップとを含む。
【0043】
A5
A1に記載の方法において、
積層体を配置するステップが、樹脂で予め含浸されたトウを配置するステップを含む。
【0044】
A6
A1に記載の方法において、
キャビティに樹脂を充填するステップが、キャビティにチョップド繊維を充填するステップとは別に行われることをさらに含む。
【0045】
A7
A1に記載の方法において、
樹脂が熱硬化性樹脂であり、
チョップド繊維および積層体を一緒に硬化するステップが、熱硬化性樹脂を硬化温度に加熱するステップを含む。
【0046】
A8
A1に記載の方法において、
積層体を配置することにより、繊維の先端が第1の表面に露出することが防止される。
【0047】
A9
A1に記載の方法において、
樹脂が熱可塑性樹脂であり、
方法が、加熱後に一体化複合部品を冷却し、積層体およびチョップド繊維で熱可塑性樹脂を固化させるステップをさらに含む。
【0048】
本装置または方法のさらなる態様によれば、以下が提供される。
【0049】
B1.
プロセッサによって実行されるとき、方法を実行するように動作可能なプログラム命令を具現化する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
成形型の第1の表面上に連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つのプライを含む積層体を配置するステップ(402)と、
成形型のキャビティに、積層体に接触するチョップド繊維および樹脂を充填するステップ(406)と、
チョップド繊維および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化するステップ(408)と、
一体化複合部品を成形型から分離するステップ(410)を含む。
【0050】
B2
B1に記載の媒体において、
成形型の第2の表面上に積層体を配置するステップをさらに含む。
【0051】
B3
B1に記載の媒体において、
第1の表面が成形型の第1の部分にあり、チョップド繊維および積層体を硬化するステップが、チョップド繊維の集合体および積層体を加熱するステップを含み、方法が、
成形型の第1の部分とかみ合わせるために成形型の第2の部分を移動することによってキャビティを形成するステップであって、キャビティは成形型の第1の部分と成形型の第2の部分との間に存在し、積層体を取り囲む、ステップ(404)と、
チョップド繊維の集合体および積層体を一緒に一体化複合部品に硬化させた後に、成形型の第2の部分を成形型の第1の部分から分離するステップとをさらに含む。
【0052】
B4
B3に記載の媒体において、
成形型の第2の部分を移動するステップは、成形型の第2の部分の第2の切欠き上に成形型の第1の部分の第1の切欠きを配置するステップと、第1の切欠きおよび第2の切欠きによって画定されるポートを形成するステップであって、ポートがキャビティに通じるステップとを含む。
【0053】
B5
B1に記載の媒体において、
積層体を配置するステップが、樹脂で予め含浸されたトウを配置するステップを含む。
【0054】
B6
B1に記載の媒体において、
キャビティに樹脂を充填するステップが、キャビティにチョップド繊維を充填するステップとは別に行われることをさらに含む。
【0055】
B7
B1に記載の媒体において、
樹脂が熱硬化性樹脂であり、
チョップド繊維および積層体を一緒に硬化するステップが、熱硬化性樹脂を硬化温度に加熱するステップを含む。
【0056】
B8
B1に記載の媒体において、
積層体を配置することにより、繊維の先端が第1の表面に露出することが防止される。
【0057】
B9
B1に記載の媒体であって、
樹脂が熱可塑性樹脂であり、
方法が、加熱後に一体化複合部品を冷却し、積層体およびチョップド繊維で熱可塑性樹脂を固化させるステップをさらに含む。
【0058】
本装置または方法のさらなる態様によれば、以下が提供される。
【0059】
C1.
複合部品(100)を含む製品であって、
複合部品(100)が、
複合部品の外面130に配置された連続繊維(122)強化ポリマーの少なくとも1つの平面層(126)と、
3つの軸すべてに沿って互いにランダムに配向されたチョップド繊維(112)の集合体(600)とを含み、
チョップド繊維の集合体は、複合部品の内部の連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つの平面層に共硬化される。
【0060】
C2
C1に記載の製品において、
平面連続繊維強化ポリマーの少なくとも1つの層が、1つから4つの層を含む。
【0061】
C3
C1に記載の製品において、
複合部品は炭素繊維強化ポリマー(CFRP)を含む。
【0062】
C4
C1に記載の製品において、
チョップド繊維の集合体中の繊維の各々が、6センチメートル未満の長さである。
【0063】
C5
C1の製品を含む航空機。
【0064】
特定の実施形態が本明細書に記載されているが、本開示の範囲はこれらの特定の実施形態に限定されない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【符号の説明】
【0065】
100 複合部品
110 領域
112 ランダムに配向された繊維
114 樹脂
120 領域
122 連続繊維
124 樹脂
126 層
130 外面
132 外面
134 外面
200 成形型
210 第1の部分
212 切欠き
214 表面
216 容積
220 第2の部分
222 切欠き
310 ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12