(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】可変温度限界を有する電力制御式の短時間アブレーション
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019008298
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル・ジルバーマン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131658(JP,A)
【文献】特表2015-511860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0224150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触しているトランスデューサと、を備える遠位端を有する、プローブと、
前記組織をアブレーションするために、前記トランスデューサに電力を送出するように構成された電源と、
前記電源及び前記プローブに結合されたコントローラであって、
前記温度センサから信号を受信し、前記信号に応答して前記組織の温度の表示を出力することと、
第1の期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて第1の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記組織の第1の最高許容温度を超えたときには前記トランスデューサに送出される前記電力を低減することと、
前記第1の期間の直後の遷移期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて、前記第1の目標電力未満の第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記組織の前記第1の最高許容温度を超えたときには
前記トランスデューサに送出される前記電力を低減することと、
前記遷移期間の直後の第2の期間の間、前記電源を作動させて、前記第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記第1の最高許容温度未満の第2の最高許容温度を超えたときには
前記トランスデューサに送出される前記電力を低減することと、を行うように構成された、コントローラと、を備える、装置。
【請求項2】
前記トランスデューサは、電極及び超音波送信機のうちの一方を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電力は高周波電力を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の期間には、前記第1の目標電力未満の第1の実電力を送出し、前記遷移期間及び前記第2の期間には、前記第2の目標電力未満の第2の実電力を送出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記トランスデューサは電極を備え、前記電源は、前記第1の期間、遷移期間、及び第2の期間の間に前記電極のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスが事前設定値を超えた場合には前記電力の送出を停止するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の目標電力は70W~100Wであり、前記第2の目標電力は20W~60Wである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の期間は1秒間~6秒間であり、前記遷移期間は1秒間~2秒間であり、前記第2の期間は最大で13秒間である、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/620,703号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は概ね、外科手術、具体的には、高周波アブレーションを用いた外科手術に関する。
【背景技術】
【0003】
高周波(Radiofrequency、RF)アブレーションは、熱によって不要な組織を死滅させる治療法である。RFアブレーションは、1980年代の心不整脈治療から始まり、多くの疾患における臨床的応用を見出し、現在では特定の種類の心不整脈及び特定の癌に対する一般的な治療法である。RFアブレーションの間、カテーテルの遠位領域にある電極が、医療用画像による指導の下で標的領域に近接して挿入される。標的領域内の電極を包囲する組織は、RF電流によって加熱することにより破壊される。
【0004】
典型的には、アブレーション処置の間、遠位領域において測定される最高許容温度は通常、55℃~65℃の範囲で一定のままである。温度を参照するいくつかのシステムについて以下で説明する。
【0005】
Francischelliらの米国特許出願第2012/0123400号には、組織の経時的な積算実効温度のうちの少なくとも1つが熱照射閾値を超え、また組織の経時的な積算実効エネルギーが実効エネルギー閾値を超えたことに少なくとも部分的に基づいて、アブレーションエネルギーの送出が一度に中止されるシステムが記載されている。
【0006】
McCarthyらの米国特許出願第2013/0237977号には、放射測定フィードバックを用いた温度制御式アブレーションのためのシステムが記載されている。
【0007】
Hoovenの米国特許出願第2005/0021024号には、第1及び第2のジョー部材を備え、それらのジョー部材の少なくとも一方がアブレーション部材を有する器具を使用した経壁アブレーションのための装置が記載されている。監視デバイスはインピーダンス又は温度などの適切なパラメータを測定し、組織が完全にアブレーションされたことを表示する。
【0008】
本特許出願に参照により組み込まれる文献は、いずれかの用語がこれらの組み込まれた文献において、本明細書に明確に、又は暗示的になされる定義と矛盾する形で定義されている場合には、本明細書中の定義のみが考慮されるべきである点を除き、本出願と一体化した部分とみなされるものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、
温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触しているトランスデューサと、を組み込む遠位端を有する、プローブと、
組織をアブレーションするために、トランスデューサに電力を送出するように構成された電源と、
電源及びプローブに結合されたコントローラであって、
温度センサから信号を受信し、その信号に応答して組織の温度の表示を出力することと、
第1の期間の間、組織をアブレーションするために、電源を作動させて第1の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、組織の第1の最高許容温度を超えたときにはトランスデューサに送出される電力を低減することと、
第1の期間の直後の遷移期間の間、組織をアブレーションするために、電源を作動させて、第1の目標電力未満の第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、組織の第1の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減することと、
遷移期間の直後の第2の期間の間、電源を作動させて、第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、第1の最高許容温度未満の第2の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減することと、を行うように構成された、コントローラと、を備える、装置を提供する。
【0010】
通常、トランスデューサは、電極及び超音波送信機の一方である。
【0011】
開示される一実施形態において、電力は高周波電力からなる。
【0012】
開示される更なる一実施形態では、コントローラは、第1の期間には、第1の目標電力未満の第1の実電力を送出し、遷移期間及び第2の期間には、第2の目標電力未満の第2の実電力を送出するように構成されている。
【0013】
開示される更なる別の一実施形態では、トランスデューサは電極を含み、電源は、第1の期間、遷移期間、及び第2の期間の間に電極のインピーダンスを測定し、インピーダンスが事前設定値を超えた場合には電力の送出を停止するように構成されている。
【0014】
代替的な一実施形態では、第1の目標電力は70W~100Wであり、第2の目標電力は20W~60Wである。
【0015】
更なる代替的な一実施形態では、第1の期間は1秒間~6秒間であり、遷移期間は1秒間~2秒間であり、第2の期間は最大で13秒間である。
【0016】
更に、
温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触するように構成されたトランスデューサと、を有する遠位端を有する、プローブを設けることと、
組織をアブレーションするために、電源からトランスデューサに電力を送出することと、
温度センサから信号を受信し、その信号に応答して組織の温度の表示を出力することと、
第1の期間の間、組織をアブレーションするために、電源を作動させて第1の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出し、組織の第1の最高許容温度を超えたときにはトランスデューサに送出される電力を低減することと、
第1の期間の直後の遷移期間の間、組織をアブレーションするために、電源を作動させて、第1の目標電力未満の第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、組織の第1の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減することと、
遷移期間の直後の第2の期間の間、電源を作動させて、第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、第1の最高許容温度未満の第2の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減することと、を含む、方法が提供される。
【0017】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、処置において使用されるプローブの遠位端を概略的に示している。
【
図2B】本発明の一実施形態による、処置において使用されるプローブの遠位端を概略的に示している。
【
図2C】本発明の一実施形態による、処置において使用されるプローブの遠位端を概略的に示している。
【
図2D】本発明の一実施形態による、処置において使用されるプローブの遠位端を概略的に示している。
【
図3】本発明の一実施形態による、処置のアブレーションセッションの間に実施される工程のフローチャートを示している。
【
図4】本発明の一実施形態による、フローチャートの工程を表す概略的グラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概略
通常、RFアブレーション処置においては、プローブの遠位端上の電極が標的領域に接触するように挿入され、エネルギーが電極から伝達されて組織が加熱され、組織が効果的に破壊される。この処置の間、遠位端の、したがって組織の最高許容温度は、典型的には40℃~65℃の範囲内で通常は一定に保たれる。
【0020】
しかしながら、処置の全体を通じて最高許容温度を1つの値に一定に保つことは、アブレーションされる組織の特性を考慮せず、特に、組織応答対温度が極端に非線形であるという事実を考慮しない。
【0021】
本発明の実施形態は、アブレーションの低電力フェーズの間の最高許容温度を低減することによって、非線形の組織挙動に適応するものである。例えば、4秒間の第1のアブレーションフェーズでは、ジェネレータからの目標RF電力は90Wであり、最高許容温度は65℃に設定される。目標電力は次いで50Wに低下され、この電力が更に4秒間にわたって供給される。低電力フェーズの間、最高許容温度は45℃に低減される。しかしながら、この低減は4秒間の後には行われないが、それは、そうしなければジェネレータが停止するからである。むしろ、最高許容温度の低減は、目標電力の低減後の事前設定された遷移期間のみで実施される。通常、遷移期間は約1秒間程度であり、予想される測定温度が新たな許容温度に既に到達しているように設定される。
【0022】
したがって、本発明の一実施形態は、温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触している、典型的には電極であるトランスデューサと、を有する遠位端を有する、プローブを備える。組織をアブレーションするために、電源はトランスデューサに電力を供給する。
【0023】
組織の温度の表示を出力するために、コントローラが温度センサから信号を受信する。第1の期間の間、コントローラは、組織をアブレーションするために、第1の目標電力以下の電力をトランスデューサに供給するように電源を作動させるが、組織の第1の最高許容温度を超えたときにはトランスデューサに送出される電力を低減する。
【0024】
第1の期間の直後の遷移期間の間、組織をアブレーションするために、コントローラは電源を作動させて、第1の目標電力未満である第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、組織の第1の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減する。
【0025】
遷移期間の直後の第2の期間の間、コントローラは電源を作動させて、第2の目標電力以下の電力をトランスデューサに送出するが、第1の最高許容温度未満である第2の最高許容温度を超えたときには送出電力を低減する。
【0026】
発明を実施するための形態
図1は、本発明の一実施形態による、アブレーション装置12を用いた侵襲性医療処置の概略図である。処置は医師14により行われ、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒトの患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むことが想定される。ただし、本発明の実施形態は、この特定の処置にのみ適用され得るものではなく、生物学的組織に対する実質的にいかなるアブレーション処置も包含し得るものと理解されよう。
【0027】
アブレーションを行うために、医師14は、プローブ20を患者の内腔に挿入し、それで、プローブの遠位端22が患者の心臓に入る。遠位端22は、遠位端の外側に取り付けられた1つ以上の電極24を備えており、それらの電極は、心筋の対応する箇所に接触する。プローブ20は、近位端28を有する。プローブの遠位端22については、
図2A、
図2B、
図2C及び
図2Dを参照して以下で更に詳細に説明する。
【0028】
装置12は、本明細書においてコントローラ46とも呼ばれるシステムプロセッサ46により制御され、これは装置の操作コンソール48内に配置されている。コンソール48は、医師14がプロセッサと通信するために使用する制御装置49を備える。処置の間、コントローラ46は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてプローブの遠位端22の位置及び配向を追跡するのが一般的である。例えば、コントローラ46は、患者18の体外にある磁気送信機が遠位端に配置されたコイル内に信号を発生させる磁気追跡方法を用い得る。Biosense Webster(33 Technology Drive、Irvine、CA 92618、USA)によって製造されているCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を用いている。
【0029】
プロセッサ46用のソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上で提供され得る。遠位端22の行路は、典型的には画面62上に患者18の心臓の3次元表示60で表示される。装置12で実施されるアブレーションの進行は、典型的に、画面62にグラフィック64及び/又は英数字データ66としても表示される。
【0030】
装置12を操作するために、プロセッサ46は、装置を操作するためにプロセッサにより使用される多くのモジュールを有するモジュールバンク50と通信する。したがって、モジュールバンク50は、温度モジュール52と、電力制御モジュール54と、力モジュール56と、灌注モジュール58と、を備えており、これらの機能については以下で説明する。モジュールは、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含み得る。
【0031】
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dは、本発明の一実施形態による、プローブ20の遠位端22を概略的に示している。
図2Aはプローブの長さに沿った断面図であり、
図2Bは
図2Aに記された切断線IIB-IIBに沿った横断面図であり、
図2Cは遠位端の一区間の斜視図であり、
図2Dは遠位端の近位部分92の中に組み込まれた力センサ90の概略的横断面図である。挿入管70は、プローブの長さに沿って延在し、その遠位端の終端部において、アブレーションに用いられる伝導性キャップ電極24に接続されている。伝導性キャップ電極24Aは、本明細書において焼灼電極とも称される。キャップ電極24Aは、その遠位端に略平坦な導電面84を有し、その近位端に実質的に円形の縁部86を有する。焼灼電極24Aの近位には、典型的に、電極24Bなどの他の電極がある。典型的に、挿入管70は、可撓性の生体適合性ポリマーを含み、一方、電極24A、24Bは、例えば、金又は白金などの生体適合性金属を含む。焼灼電極24Aは、通常は潅注開口72のアレイにより穿孔されている。一実施形態では、電極24Aの上に均等に分布する36個の開口72がある。
【0032】
電気伝導体74は、電力制御モジュール54(
図1)から挿入管70を通じて電極24Aへと高周波(RF)電気エネルギーを伝達し、したがって、電極と接触している心筋組織をアブレーションするように電極に通電する。したがって、電極24Aは電気エネルギーを熱エネルギーに変換するエネルギー変換器として作用し、本明細書ではトランスデューサ24Aとも呼ばれる。以下で説明するように、モジュール54は電源として作用し、トランスデューサ24Aを介して散逸されるRF電力のレベルを制御する。モジュール54はまた、本明細書では電源54とも呼ばれる。アブレーション処置の間、開口72を通って流出する潅注流体が、治療中の組織を洗浄し、流体の流速は潅注モジュール58によって制御される。潅注流体は、挿入管70内の管(図示せず)によってトランスデューサ24Aに送出される。
【0033】
軸方向にも円周方向にも、プローブの遠位先端の周りに配列された場所にて、温度センサ78が、導電キャップ電極24A内に取り付けられている。本明細書で考察される開示の一実施形態では、キャップ24Aは6つのセンサを含み、3つのセンサからなる一方の群は、先端部に近い遠位位置にあり、3つのセンサからなるもう一方の群は、それよりもわずかに近位側の位置にある。この分布は単に例として示されるが、より多い又はより少ない数のセンサが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてよい。センサ78は、熱電対、サーミスタ、又は任意のその他の好適な種類の小型温度センサを備えてもよい。センサ78は、温度信号を温度モジュール52に供給するために、挿入管70の長さ全体にわたって延びるリード(略図には図示せず)によって接続されている。
【0034】
開示されている一実施形態において、キャップ24Aは、温度センサ78と先端部の中央空洞75の内側の潅注流体との間に所望の断熱性がもたらされるように、0.5mm厚程度の比較的厚い側壁73を備えている。潅注流体は、開口72を通って空洞75から出る。センサ78は、側壁73の長手方向の内径部79に嵌入されるロッド77上に取り付けられている。ロッド77は、ポリイミドなどの適切なプラスチック材を含むことができ、かつ、エポキシなどの適切な接着剤81により遠位端にて所定の位置に保持することができる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/716,578号では、先述したものと類似の構成で取り付けられた温度センサを有するカテーテルが説明されている。先述した構成は、6つのセンサ78の配列を提供するが、センサの他の構成及び他の数が当業者には明らかとなり、すべてのそのような構成及び数は本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
本明細書における説明では、遠位端22は一組のxyz直交軸線を画定すると想定され、遠位端の軸線94はこの組のz軸線に対応する。簡単にするため、また一例として、y軸を紙の平面内にあると想定し、xy平面を本明細書では円86で画定された平面に対応するものと想定し、xyzの軸の原点を円の中心であると想定する。
【0036】
図2Dは、本発明の一実施形態による、力センサ90の概略断面図である。センサ90はばね94を備え、このばねは本明細書において、キャップ24Aを近位端92に接続する複数の螺旋体96を備えると想定される。位置センサ98がばね94の遠位側に固定されており、本明細書では、伝導体100によって力モジュール56に結合された1つ以上のコイルを備えると想定される。
【0037】
典型的にはコイルであるRF送信機102は、ばね94の近位側に固定され、送信機のためのRFエネルギーが力モジュール56から伝導体104を介して供給される。送信機からのRFエネルギーはセンサ98を通過し、センサの伝導体100内に対応する信号を生成する。
【0038】
動作の際、力がキャップ24Aに及ぼされると、センサ98は送信機102に対して移動し、その移動がセンサの信号の変化を引き起こす。力モジュール56はセンサの信号の変化を用いて、キャップ24Aにかかる力の測定基準を提供する。この測定基準は通常、力を大きさ及び方向で示すものである。
【0039】
センサ90に類似したセンサの更に詳細な説明が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第2011/0130648号に記載されている。更に、本発明の実施形態は1つのタイプの力センサに限定されるものではなく、したがって、本発明の範囲には、当該技術分野で知られている実質的にすべての力センサが含まれることが理解されよう。
【0040】
図1に戻るが、温度モジュール52は、キャップ24A内の6つのセンサ78から信号を受信し、それらの信号を用いて、6つの測定温度のうちの最高値を決定する。温度モジュールは、本明細書では33ms毎と想定される一定の速度で最高温度を計算するように構成されているが、他の実施形態は、より高い又はより低い速度で最高温度を計算してもよい。いくつかの実施形態では、最高温度は少なくとも30Hzの周波数で決定される。算出された最高温度は、本明細書では測定温度とも称され、この測定温度は、アブレーションされている組織の温度に対応すると想定される。温度モジュールは、測定温度値を電源54に渡す。
【0041】
電源54は、1W~100Wの範囲でRF電力をキャップ24Aに供給し、また本発明の実施形態では、電力は、本明細書においてフェーズとも呼ばれる2つの期間に供給される。最初のフェーズでは、モジュールは、70W~100Wの範囲内に設定され得る最初の最高RF電力をキャップ24Aに供給するように構成され得る。最初のフェーズの直後の後続のフェーズでは、モジュールは、最初の最高値とは異なる範囲にある後続の最高RF電力をキャップ24Aに供給するように構成され得る。一実施形態において、後続の最高電力の範囲は20W~60Wである。最初の最高RF電力及び後続の最高RF電力は、本明細書では第1の目標電力及び第2の目標電力とも称される。
【0042】
最初の最高電力及び後続の最高電力、並びにそれらの異なる電力が送達される期間は、以下で説明する他の可変パラメータと共に、医師14によって選択される。医師14は通常、医師に画面62上で提示される事前設定メニューからパラメータの値を選定してよい。あるいは、医師14は、可変パラメータの値を個々に選定してもよい。アブレーション処置の間の任意の時点で送出される実電力は、以下で説明するように、温度モジュール52から受信される測定温度によって決定される。
【0043】
したがって、電力は医師によって選択されるにも関わらず、電力制御モジュールは、温度モジュールから受信された測定温度が最高許容温度に達するか又はそれを超えた場合、典型的には約5%~約95%だけ、送出される電力を低減するように構成されている。最高許容温度は、アブレーション処置のフェーズに従って設定され、また以下で説明することを除き、通常は各フェーズごとに異なっている。通常、最高許容温度を超えると、アブレーションされる組織中で、炭化、キャップ24A上での凝固、及び/又はスチームポップなどの望ましくない影響が生じる。
【0044】
最初のフェーズの間、最高許容温度は第1の最高許容温度に設定され、一実施形態では、第1の最高許容温度は65℃である。後続のフェーズの間、最初のフェーズの直後の遷移期間を除き、最高許容温度は第2の最高許容温度に設定され、一実施形態では、第2の最高許容温度は45℃である。一実施形態では1秒間である遷移期間の間、最高許容温度は依然として、第1の最高許容温度に対して設定された値にある。
【0045】
また、電力制御モジュールは、キャップ24Aのインピーダンスを測定する。インピーダンスは、本明細書では500ms毎であると想定される既定の速度で測定されるが、他の実施形態は、より低い又はより高い速度でインピーダンスを測定してもよい。
【0046】
典型的には、アブレーションセッションの間、キャップ24Aのインピーダンスは減少する。本発明の実施形態はまた、インピーダンスが前のインピーダンス測定値から、本明細書では7Ωと想定される事前設定値を超えて増加するか否かを確認するが、他の実施形態は、事前設定値として、より大きい又は小さいインピーダンス増加値を用いてもよい。一般に、インピーダンスの増加は、炭化又はスチームポップのような、アブレーションされている組織に望ましくない変化が存在する場合に生じる。インピーダンスが事前設定値を超えて増加した場合、電力制御モジュールは、キャップ24AへのRF送出を停止するように構成されている。
【0047】
上記で説明したように、力モジュール56はキャップ24Aにかかる力を測定することが可能である。ある実施形態において、アブレーションに対する許容力は0.05N~0.5N(5g~50g)の範囲にある。
【0048】
灌注モジュール58は、カテーテル先端部に灌注流体が送達される速度を管理する。本発明のいくつかの実施形態では、これは8~45mL/分の範囲で設定され得る。
【0049】
図3は、本発明の実施形態による、アブレーションセッションの間に装置12の操作において実施される工程のフローチャート110、112、114、及び116を示し、
図4は、フローチャートの工程を表す概略的グラフを示している。本発明の一実施形態において、アブレーションセッションは2つのタイムフェーズを含んでおり、最初のフェーズ又は第1の期間の間は、第1の目標電力及び第1の最高許容温度が適用される。最初のフェーズの最後に、後続のフェーズが開始され、その間は第2の目標電力が適用される。
【0050】
後続のフェーズは2つの期間に分割され、遷移期間に第2の期間が続く。第1の期間の終了後の遷移期間の間、第1の最高許容温度が適用される。第2の期間の間、第2の最高許容温度が適用される。各期間内における目標電力は、電力制御モジュール54によって送出され得る最高RF電力である。
【0051】
通常、アブレーションセッションに先立ち、上記で言及した可変パラメータの各々に対する範囲が設定される。一実施形態では、その範囲は表Iに示すように設定される。
【0052】
【0053】
アブレーションセッションの開始時に、医師14は、装置12に組み込まれた追跡システムを用いて、心筋16の所望の位置へとプローブ20を挿入する。
【0054】
アブレーション処置を実施するのに先立って、医師14は、処置に用いられる、表Iに記載されるパラメータの値を選択し、制御装置49を用いてシステムにその値を提供する。あるいは、医師は、一般的には値を含む「レシピ」をこうしたレシピの群から選択することによって、表Iに記載されるパラメータの値の所定のセットを選択する。(レシピの群は通常、メニューの形式で画面62上で医師に提示され、その中から医師は1つのレシピを選択する)。選択される値は、一般には、処置によって形成することを所望される損傷の深さに依存する。
【0055】
以下の表IIは、深さ最大6mmの深い損傷を形成するための、表Iのパラメータの例示的な値を示す。
【0056】
【0057】
アブレーションセッションの全体を通じて、プロセッサ46はフローチャート110及び112の工程を実施する。以下でより詳細に説明するように、セッションの第1の期間及び遷移期間の間、プロセッサはまた、フローチャート114の工程を実施し、このセッションの第2の期間の間、プロセッサはフローチャート116の工程を実施する。
【0058】
フローチャート110を参照すると、このフローチャートは、上述したように、プロセッサがアブレーションセッションの全体を通じて(反復的に)実施するものであるが、比較工程120では、プロセッサは、アブレーション電極によって送出される電力に対するインピーダンスが、本明細書では7Ωと想定される事前設定値を超えて変化するか否かを確認する。確認が否定を返した場合、この比較は反復される。確認が肯定を返した場合、プロセッサはアブレーションセッションを停止する。
【0059】
フローチャート112は、アブレーションセッションの全体に対してやはりプロセッサによって実施される工程を含む。最初の工程124では、プロセッサは、セッションの最初のフェーズに対して、第1の目標電力P1及び最高許容温度T1の選択値を適用する。これらの値は、アブレーションの時間が第1の期間t1を過ぎていないかを比較126においてプロセッサが確認することによって維持される。
【0060】
第1の期間が過ぎると、制御は目標電力変更工程130に進み、ここでプロセッサは、最高許容温度をT1に維持しながら、目標電力を第2の目標電力値P2に変更する。プロセッサは、比較134において時間がΔtを過ぎていないことを確認することによって、遷移期間Δtにわたって値P2及びT1を維持する。
【0061】
フローチャート112の工程124~134を実施すると同時に、プロセッサは更にフローチャート114を実施し、比較工程140において、測定温度が最高許容温度T1を超えていないことを確認する。温度がT1を超えている場合、プロセッサは、電力低減工程144において、上述したようにアブレーション電極への電力を低減する。
【0062】
目標電力対時間のグラフ150(
図4)は、工程124及び比較126が実行中である時間に対応する第1の期間の間、目標電力がP1に設定されていることを示している。このグラフはまた、遷移期間Δtの間、すなわち、比較134が実行中であるとき、目標電力がP2に低減されていることを示している。
【0063】
最高許容温度対時間のグラフ154、及び測定温度対時間のグラフ158は、第1の期間の間、最高許容温度がT1に設定され、測定温度がこれよりも低いことを示している。このグラフが更に示すこととして、遷移期間Δtの間、最高許容温度はT1に維持されるが、目標電力がP2に低減されるために測定温度は低下する。
【0064】
フローチャート112に戻るが、比較134が否定を返したとき、すなわち、遷移期間Δtが完了したとき、制御は最高許容温度変更工程150に進み、ここで目標電力はP2に維持されるが、最高許容温度はT2に低減される。プロセッサは、比較154が肯定を返したことを確認することによって、アブレーションの第2の期間の間、すなわち第2の時間t2にわたって、これらの値P2及びT2を維持する。比較154が否定を返したとき、第2の期間t2は完了しており、アブレーション電極に供給される電力をプロセッサがゼロ化することによって、アブレーション処置が完了する。
【0065】
フローチャート112の工程150及び154を実施すると同時に、プロセッサは更にフローチャート116を実施し、比較工程160において、測定温度が最高許容温度T2を超えていないことを確認する。温度がT2を超えている場合、プロセッサは、電力低減工程164において、アブレーション電極への電力を低減する。
【0066】
上述した遷移期間をアブレーション処置に組み込みことによって、本発明の実施形態が、非線形な組織応答対組織温度特性を克服することが理解されよう。この遷移期間は、電力ジェネレータが電力を供給し続けることを可能にしながら、測定温度が徐々に低下することを可能にしている。
【0067】
上記の説明では、電力をアブレーションに用いられる熱に変換する電極をトランスデューサ24Aが備えていると想定されているが、本明細書の説明を必要に応じて変更して、他のトランスデューサが用いられてもよいことが理解されよう。例えば、トランスデューサ24Aは、電力を超音波に変換する超音波送信機を備えてもよく、その超音波が熱に変換される。そのようなすべてのトランスデューサは本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0068】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上文に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触しているトランスデューサと、を備える遠位端を有する、プローブと、
前記組織をアブレーションするために、前記トランスデューサに電力を送出するように構成された電源と、
前記電源及び前記プローブに結合されたコントローラであって、
前記温度センサから信号を受信し、前記信号に応答して前記組織の温度の表示を出力することと、
第1の期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて第1の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記組織の第1の最高許容温度を超えたときには前記トランスデューサに送出される前記電力を低減することと、
前記第1の期間の直後の遷移期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて、前記第1の目標電力未満の第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記組織の前記第1の最高許容温度を超えたときには前記送出電力を低減することと、
前記遷移期間の直後の第2の期間の間、前記電源を作動させて、前記第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記第1の最高許容温度未満の第2の最高許容温度を超えたときには前記送出電力を低減することと、を行うように構成された、コントローラと、を備える、装置。
(2) 前記トランスデューサは、電極及び超音波送信機のうちの一方を備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記電力は高周波電力を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記コントローラは、前記第1の期間には、前記第1の目標電力未満の第1の実電力を送出し、前記遷移期間及び前記第2の期間には、前記第2の目標電力未満の第2の実電力を送出するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記トランスデューサは電極を備え、前記電源は、前記第1の期間、遷移期間、及び第2の期間の間に前記電極のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスが事前設定値を超えた場合には前記電力の送出を停止するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0070】
(6) 前記第1の目標電力は70W~100Wであり、前記第2の目標電力は20W~60Wである、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記第1の期間は1秒間~6秒間であり、前記遷移期間は1秒間~2秒間であり、前記第2の期間は最大で13秒間である、実施態様1に記載の装置。
(8) 温度センサと、生きた被験者の身体内の組織と接触するように構成されたトランスデューサと、を備える遠位端を有する、プローブを設けることと、
前記組織をアブレーションするために、電源から前記トランスデューサに電力を送出することと、
前記温度センサから信号を受信し、前記信号に応答して前記組織の温度の表示を出力することと、
第1の期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて第1の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出し、前記組織の第1の最高許容温度を超えたときには前記トランスデューサに送出される前記電力を低減することと、
前記第1の期間の直後の遷移期間の間、前記組織をアブレーションするために、前記電源を作動させて、前記第1の目標電力未満の第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記組織の前記第1の最高許容温度を超えたときには前記送出電力を低減することと、
前記遷移期間の直後の第2の期間の間、前記電源を作動させて、前記第2の目標電力以下の電力を前記トランスデューサに送出するが、前記第1の最高許容温度未満の第2の最高許容温度を超えたときには前記送出電力を低減することと、を含む、方法。
(9) 前記トランスデューサは、電極及び超音波送信機のうちの一方を備える、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記電力は高周波電力を含む、実施態様8に記載の方法。
【0071】
(11) 前記第1の期間には、前記第1の目標電力未満の第1の実電力を送出し、前記遷移期間及び前記第2の期間には、前記第2の目標電力未満の第2の実電力を送出することを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記トランスデューサは電極を備え、前記方法は、前記第1の期間、遷移期間、及び第2の期間の間に前記電極のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスが事前設定値を超えた場合には前記電力の送出を停止することを更に含む、実施態様8に記載の方法。
(13) 前記第1の目標電力は70W~100Wであり、前記第2の目標電力は20W~60Wである、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記第1の期間は1秒間~6秒間であり、前記遷移期間は1秒間~2秒間であり、前記第2の期間は最大で13秒間である、実施態様8に記載の方法。