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特許7330721変性ポリオレフィン材料及びその製造方法、並びに、樹脂フィルム及び包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】変性ポリオレフィン材料及びその製造方法、並びに、樹脂フィルム及び包装材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/34 20060101AFI20230815BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20230815BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08F8/34
B65D65/02 E
C08F210/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019040572
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020143215
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】西森 工
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 清
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲也
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-523760(JP,A)
【文献】特開平04-198308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0283733(US,A1)
【文献】特開平06-122715(JP,A)
【文献】特開昭56-116703(JP,A)
【文献】特開昭57-092091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/34
B65D 65/02
C08F 210/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン単位と、スルホン酸基と含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を有するスルホネート単位と、を有する変性ポリオレフィン系共重合体を含み、
前記スルホネート単位が、下記式(1):
【化1】

、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、非イオン性の有機基を示し、互いに結合して環状基を形成していてもよく、
Zは非イオン性の有機基を示し、
Xは、直接結合、又は、非イオン性の有機基を示す、
で表される単位であり、
スルホン酸基と含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を有し前記変性ポリオレフィン系共重合体とは異なるスルホネート化合物を更に含んでいてもよく、
前記スルホネート単位が有する前記スルホネート基、及び前記スルホネート化合物が有する前記スルホネート基の合計の割合が、前記変性ポリオレフィン系共重合体中の全モノマー単位の量に対して、0.1~2.0モル%である変性ポリオレフィン材料を含む、樹脂フィルム。
【請求項2】
前記スルホネート化合物が、以下のスルホン酸アンモニウム化合物1および3~6の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の樹脂フィルム:
【化2】
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂フィルムを有する、包装材料。
【請求項4】
オレフィン単位と含窒素基を有する含窒素モノマー単位とを有する変性ポリオレフィン系共重合体を、スルホン酸基と含窒素基との塩であるスルホネート基を有するスルホネート化合物と反応させ、それにより、前記スルホネート化合物のスルホン酸基と前記含窒素モノマー単位の前記含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を有するスルホネート単位を有する変性ポリオレフィン系共重合体を形成する工程を備え、
前記スルホネート単位が、下記式(1):
【化3】

、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、非イオン性の有機基を示し、互いに結合して環状基を形成していてもよく、
Zは非イオン性の有機基を示し、
Xは、直接結合、又は、非イオン性の有機基を示す、
で表される単位である、
変性ポリオレフィン材料を製造する方法。
【請求項5】
前記スルホネート化合物が、以下のスルホン酸アンモニウム化合物1および3~6の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法:
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリオレフィン材料及びその製造方法、並びに、樹脂フィルム及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気を透過する機能を有し、かつ液体に対する透過性は示さない通気性液体不透過フィルムが、使い捨てオムツに代表される使い捨てのパーソナルケアおよびヘルスケアの物品や、野菜や果実等の青果物の包装材として用いられることが多い。このようなフィルムとしては、エチレンと、アクリル酸またはメタクリル酸と、アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルとの3元共重合体組成物を含む水蒸気透過膜が知られている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-524833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面の目的は、水蒸気に対する高い透過性を有する、ポリオレフィン系共重合体を含む樹脂フィルムを提供することにある。樹脂フィルム自体が水蒸気に対する高い透過性を有していれば、より簡易に包装材料を製造できることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、オレフィン単位と、スルホン酸基と含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を有するスルホネート単位と、を有する変性ポリオレフィン系共重合体を含む、変性ポリオレフィン材料に関する。
【0006】
本発明の別の一側面は、上記変性ポリオレフィン材料を含む樹脂フィルムに関する。この樹脂フィルムは、それ自体、水蒸気に対する高い透過性を有することができる。そのため、樹脂フィルムを、単独で又は必要により他の層と組み合わせることで、例えば包装材料を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリオレフィンフィルムの水蒸気に対する透過性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
一実施形態に係る変性ポリオレフィン材料は、オレフィン単位と、スルホネート基を有するスルホネート単位とを有する変性ポリオレフィン系共重合体を含む。一実施形態に係る変性ポリオレフィン系共重合体は、主としてオレフィン単位から構成される。オレフィン単位は、オレフィンに由来するモノマー単位である。オレフィン単位の割合は、例えば、変性ポリオレフィン系共重合体中の全モノマー単位の量に対して、80モル%以上、又は90モル%以上である。
【0010】
オレフィン単位を誘導するオレフィンの例としては、エチレン、炭素数3~20の直鎖状のα-オレフィン、及び環状オレフィンが挙げられる。変性ポリオレフィン系共重合体に含まれるオレフィン単位のうち、エチレン単位の割合が50~100モル%、70~100モル%、又は90~100モル%であってもよい。
【0011】
炭素数3~20の直鎖状のα-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、及び1-エイコセンが挙げられる。
【0012】
環状オレフィンの例としては、ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-フルオロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロへキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジクロロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-クロロノルボルネン、5,5-ジクロロノルボルネン、5-フルオロノルボルネン、5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチルノルボルネン、5-クロロメチルノルボルネン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネン、シクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3,5-ジメチルシクロペンテン、3-クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3-メチルシクロへキセン、4-メチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、3-クロロシクロヘキセン、シクロへプテン、及びビニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0013】
変性ポリオレフィン系共重合体を構成するスルホネート単位が有するスルホネート基は、スルホン酸基(-SOH)と含窒素基とにより形成された塩である。スルホネート基は、変性ポリオレフィン系共重合体の主鎖に結合した含窒素基と、スルホン酸化合物との塩であってもよいし、変性ポリオレフィン系共重合体の主鎖に結合したスルホン酸基と、アンモニア又は含窒素有機化合物との塩であってもよい。
【0014】
スルホネート基を構成する含窒素基は、スルホン酸基と塩を形成し得るカチオン性の基であればよく、その例としては、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基又は含窒素複素芳香環にプロトンが付加して形成された含窒素カチオン基、4級アンモニウム基、及びアンモニウムイオン(NH )が挙げられる。
【0015】
スルホネート単位の一例は、下記式(1)で表される単位である。
【化1】

、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、非イオン性の有機基を示し、互いに結合して環状基を形成していてもよい。Zは非イオン性の有機基を示す。Xは、直接結合、又は、非イオン性の有機基を示す。
【0016】
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)であってもよく、互いに結合して脂環基を形成していてもよい。R及びRがそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基で、Rが水素原子であってもよい。
【0017】
Xは、非イオン性の2価の有機基であればよく、その例としては、カルボニルオキシアルキレン基が挙げられる。
【0018】
Zは、下記式(10)で表されるアルキルポリオキシアルキレン基であってもよい。Zが式(10)のアルキルポリオキシアルキレン基であると、親水性の表面を有しながら、水蒸気に対するより一層高い透過性を有する樹脂フィルムが得られ易い。
【化2】
【0019】
式中、Rは直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、nは2~50の整数を示し、n個のRは同一でも異なってもよく、Rは置換されていてもよい直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。式(10)のアルキルポリオキシアルキレン基が、Rが異なる2種以上のオキシアルキレン単位(-RO-)を含む場合、それらはランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい。
【0020】
は、炭素数2~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であってもよく、その例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(-CH-CH(CH)-)、n-ブチレン基、1-メチルプロピレン基(-CH-CH-CH(CH)-)、2-メチルプロピレン基(-CH-CH(CH)-CH-)、ジメチルエチレン基(-CH-C(CH-)、及びエチルエチレン基(-CH-CH(CHCH)-)が挙げられる。Rが、エチレン基、プロピレン基及びエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種であってもよく、これらから選ばれる2種であってもよい。
【0021】
nは、2~30、又は2~20の整数であってもよい。変性ポリオレフィン材料中に含まれる式(10)のアルキルポリオキシアルキレン基におけるnの平均値が、これら数値範囲内にあってもよい。
【0022】
は、置換されていてもよい炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキル基であってもよい。このアルキル基の炭素数は、8以上又は12以上であってもよく、16以下又は14以下であってもよく、13であってもよい。アルキル基の炭素数がこれら数値範囲内にあると、親水性の表面を有しながら、水蒸気に対するより一層高い透過性を有する樹脂フィルムが得られ易い。
【0023】
のアルキル基の例としては、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、及びn-テトラデシル基が挙げられる。Rのアルキル基は、例えば、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキルスルファニル基、及びアリールスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。
【0024】
変性ポリオレフィン系共重合体は、オレフィン単位及びスルホネート単位に加えて、その他のモノマー単位を更に有してもよい。
【0025】
変性ポリオレフィン材料は、スルホン酸基と含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を有するスルホネート化合物を更に含んでもよい。このスルホネート化合物は、ポリオレフィン系共重合体ではない、比較的低分子量の化合物である。このスルホネート化合物は、例えば下記式(2)で表される。
【化3】
【0026】
Zは、非イオン性の有機基を示し、式(1)中のZと同様の基であることができる。Qは含窒素カチオンを示す。式(1)中のZと式(2)中のZは同一でも異なってもよい。Qは、スルホン酸基と塩を形成し得る含窒素カチオンであればよく、その例としては、脂肪族アミン、芳香族アミン又は含窒素複素芳香化合物にプロトンが付加して形成された含窒素カチオン、4級アンモニウム化合物、及びアンモニウムイオン(NH )が挙げられる。
【0027】
変性ポリオレフィン材料における上記スルホネート化合物の含有量は、変性ポリオレフィン材料の質量を基準として、0~5質量%、0~4質量%、0~3質量%、0~2質量%又は0~1質量%であってもよい。
【0028】
変性ポリオレフィン材料が上記スルホネート化合物を含む場合、変性ポリオレフィン材料中には、変性ポリオレフィン系共重合体のスルホネート単位が有するスルホネート基、及び、スルホネート化合物が有するスルホネート基が存在する。変性ポリオレフィン材料において、スルホネート単位が有するスルホネート基、及びスルホネート化合物が有するスルホネート基の合計の割合が、変性ポリオレフィン系共重合体中の全モノマー単位の量に対して、0.1~2.0モル%であってもよい。これにより、より一層優れた水蒸気に対する透過性を有する樹脂フィルムが得られ易い。
【0029】
変性ポリオレフィン材料は、変性ポリオレフィン系共重合体及びスルホネート化合物の他に、必要によりその他の成分を更に含んでもよい。その他の成分の例としては、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂が挙げられる。その他の成分の合計の含有量は、変性ポリオレフィン材料の質量を基準として、0~20質量%、又は0~10質量%であってもよい。
【0030】
変性ポリオレフィン材料は、例えば、オレフィンと、スルホネート基及び重合性不飽和基を有するスルホネートモノマーとを含むモノマー混合物を重合する方法、又は、官能基を有する変性ポリオレフィン系共重合体にスルホネート基を導入する方法により、製造することができる。
【0031】
オレフィンと、スルホネート基及び重合性不飽和基を有するスルホネートモノマーとを含むモノマー混合物を重合する方法の場合、高圧重合法等の任意の重合法を採用することができる。この場合、スルホネートモノマー及び/又はこれから誘導されたスルホネート化合物が、変性ポリオレフィン材料中に残存し得る。
【0032】
官能基を有する変性ポリオレフィン系共重合体にスルホネート基を導入する方法は、例えば、オレフィンと官能基を有する共重合モノマーとを含むモノマー混合物を重合させて、官能基を有する変性ポリオレフィン系共重合体を形成する工程と、官能基が関与する反応を含む方法によってスルホネート基を導入する工程とを含む。
【0033】
共重合体モノマーの官能基が含窒素基である、すなわち、変性ポリオレフィン系共重合体が含窒素モノマー単位を含む場合、含窒素基とスルホネート化合物との反応により、スルホネート化合物のスルホン酸基と含窒素基とによって形成された塩であるスルホネート基を導入することができる。共重合体モノマーの官能基と含窒素化合物との反応により含窒素基を導入し、導入された含窒素基とスルホネート化合物との反応によりスルホネート基を導入してもよい。スルホネート化合物は、上述の式(2)で表される化合物であってもよい。少量のスルホネート化合物が、変性ポリオレフィン材料中に残存し得る。
【0034】
下記反応式は、共重合モノマーが官能基としてアルキルエステル基を有するメチルアクリレートである場合に、アルキルエステル基が関与する反応を含む、スルホネート基を導入する方法の一例を示す。この反応式は、アルキルエステル基を有する変性ポリオレフィン系共重合体20とアミノ基及び水酸基を有する含窒素化合物21との反応により、アミノ基を有するアミン変性ポリオレフィン系共重合体22を得ることと、アミン変性ポリオレフィン系共重合体22と式(2)で表されるスルホネート化合物との反応により、スルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体23を得ることとを含む。
【0035】
【化4】
【0036】
上記反応式中、p及びqは、それぞれ、オレフィン及びメチルアクリレートの重合度を示す整数であり、R及びRは式(1)中のR及びRと同義であり、Rはアルキレン基(例えばエチレン基)を示す。各反応は、必要により触媒を用いて行われる。
【0037】
スルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体のメルトフローレート(MFR)の上限値は、樹脂フィルム製造の容易性の観点から、50g/10分、又は40g/10分以下であってもよい。MFRの下限値は、樹脂フィルム製造時の負荷低減の観点から、0.1g/10分、又は1g/10分であってもよい。MFRは、JIS K7210-1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nで測定される。
【0038】
スルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の下限値は、樹脂フィルム製造時の押出負荷の低減の観点から、2、2.5、又は3であってもよい。分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、樹脂フィルムの高い機械的強度の観点から、8、5、4.5、又は4であってもよい。ここでの分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフを用いて求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、及び標準ポリスチレン換算の数平均分子量Mnから計算される値である。
【0039】
スルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体のポリエチレン換算の重量平均分子量は、樹脂フィルムのロールからのより良好な剥離性の観点から、40000以上80000以下、又は50000以上70000以下であってもよい。ポリエチレン換算の重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によって求められた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量と、ポリエチレンとポリスチレンのQファクターの比(17.7/41.3)との積である。
【0040】
一実施形態に係る樹脂フィルムは、以上説明した変性ポリオレフィン材料からなる成形体である。樹脂フィルムの厚さは、例えば10~100μmであってもよい。樹脂フィルムは、T-ダイ法、インフレーション法またはプレス成形等の通常の方法で製造することができる。
【0041】
樹脂フィルムは、水蒸気に対する高い透過性を有することから、例えば包装材料として有用である。包装材料は、青果物等の食品用包装材料であってもよい。包装材料は、変性ポリオレフィン材料を含む単層の樹脂フィルムであってもよいし、微多孔膜、接着層等の他の層を更に有する積層フィルムであってもよい。包装材料の厚さは、10μmより薄いと、均一な厚みに製膜することが困難であり、200μmより厚いと水蒸気の透過度が小さくなる。樹脂フィルム(包装材料)の厚さが15~150μmであってもよい。
【実施例
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
1.含窒素基を有する変性ポリオレフィン系共重合体の合成
合成例1
500mLのセパラブルフラスコに、100gのエチレン-メチルアクリレート共重合体と、200mLのジエチルアミノエタノールとを入れた。フラスコ内の反応液を、160℃に加熱しながらメカニカルスターラーにて攪拌した。反応液が均一な粘性溶液になった時点で、0.4mLのテトライソプロポキシチタンを注入し、反応液を160℃で更に8時間攪拌した。その後、反応液を多量のエタノールに注ぎ込み、生成したアミン変性ポリオレフィン系共重合体をエタノール中で固化させた。回収した固形のアミン変性ポリオレフィン系共重合体Aを80℃で8時間、真空乾燥した。
エチレン-メチルアクリレート共重合体として、エチレン単位の含有量が80質量%、メチルアクリレート単位の含有量が20質量%、メルトフローレート(MFR)が7g/10分のものを用いた。
【0044】
合成例2
エチレン-メチルメタクリレート共重合体として、エチレン単位の含有量が75質量%、メチルアクリレート単位の含有量が25質量%、MFRが7g/10分のものを用いたこと以外は合成例1と同様にして、固形のアミン変性ポリオレフィン系共重合体Bを得た。
【0045】
2.スルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体の合成
【化5】
【0046】
以下のスルホン酸アンモニウム化合物1~6を準備した。
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
実施例1
300mLのフラスコバイアルに、アミン変性ポリオレフィン系共重合体Aを20gと、トルエン100mlと、スルホン酸アンモニウム化合物1を1.28gとを入れ、フラスコバイアル内の反応液を100℃で加熱しながら8時間攪拌した。スルホン酸アンモニウム化合物1の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.34モル%であった。加熱攪拌の後、反応液を大量のアルコールに注ぎ込み、生成したスルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体をアルコール中で固化させた。固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を80℃で8時間、真空乾燥した。
【0053】
実施例2
300mLのフラスコバイアルに、アミン変性ポリオレフィン系共重合体Bを20gと、トルエン100mlと、スルホン酸アンモニウム化合物1を1.40gとを入れ、フラスコバイアル内の反応液を100℃で加熱しながら8時間攪拌した。スルホン酸アンモニウム化合物1の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.40モル%であった。加熱攪拌の後、反応液を大量のアルコールに注ぎ込み、生成したスルホネート基を有する変性ポリオレフィン系共重合体をアルコール中で固化させた。固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を80℃で8時間、真空乾燥した。
【0054】
実施例3
スルホン酸アンモニウム化合物1に代えて、スルホン酸アンモニウム化合物2の1.28gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物2の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.36モル%であった。
【0055】
実施例4
スルホン酸アンモニウム化合物1に代えて、スルホン酸アンモニウム化合物3の1.28gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物3の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.32モル%であった。
【0056】
実施例5
スルホン酸アンモニウム化合物1に代えて、スルホン酸アンモニウム化合物4の1.00gを用いたこと以外は実施例2と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物3の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.40モル%であった。
【0057】
実施例6
スルホン酸アンモニウム化合物1に代えて、スルホン酸アンモニウム化合物5の2.22gを用いたこと以外は実施例2と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物3の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.40モル%であった。
【0058】
実施例7
スルホン酸アンモニウム化合物1に代えて、スルホン酸アンモニウム化合物6の0.62gを用いたこと以外は実施例2と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.40モル%であった。
【0059】
実施例8
スルホン酸アンモニウム化合物1の量を2.73gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.72モル%であった。
【0060】
実施例9
スルホン酸アンモニウム化合物1の量を1.74gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.46モル%であった。
【0061】
実施例10
スルホン酸アンモニウム化合物1の量を1.51gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.40モル%であった。
【0062】
実施例11
スルホン酸アンモニウム化合物1の量を0.41gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.11モル%であった。
【0063】
実施例12
スルホン酸アンモニウム化合物1の量を0.20gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、スルホネート基を有する固形の変性ポリオレフィン系共重合体を含む変性ポリオレフィン材料を得た。スルホン酸アンモニウム化合物6の仕込み量の比率は、エチレン単位及びN,N―ジエチルアミノエチルアクリレート単位の合計量に対して0.06モル%であった。
【0064】
比較例1
低密度ポリエチレン(LDPE)(スミカセンL705、住友化学株式会社製、密度:919kg/m、MFR:7g/10分)を、比較例1のポリエチレンとして準備した。
【0065】
比較例2
合成例1で使用したエチレン-メチルアクリレート共重合体を、比較例2として評価した。
【0066】
比較例3
合成例2で使用したエチレン-メチルメタクリレート共重合体を、比較例3として評価した。
【0067】
3.水蒸気透過性の評価
各変性ポリオレフィン材料を、プレス成形によって成形して、100μmの厚さの樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33」)を用いて、JIS K7129 B法に準じた40℃、90%RHの条件下で測定した。結果を表1、表2及び表3に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】