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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】洗浄液及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/66 20060101AFI20230815BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20230815BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C11D1/66
C11D17/08
B41J2/165 401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019097635
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020189954
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018130361
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019092051
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】崔 波
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博俊
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 哲也
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-169314(JP,A)
【文献】特開2008-214525(JP,A)
【文献】特開2018-090807(JP,A)
【文献】特開2004-217814(JP,A)
【文献】国際公開第2007/060971(WO,A1)
【文献】特開2018-002785(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003235(WO,A1)
【文献】特開2017-226752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
C09D11/00-13/00
B41J 2/01- 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する着色剤を含有する水系インク用洗浄液であって、一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満であり、前記着色剤を含有する水系インク用洗浄液が含有する、HLB値が10.0~20.0の界面活性剤(界面活性剤A)と、HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤(界面活性剤B)の総質量中における、界面活性剤AとBの含有比が、/1~1/であり、かつ、前記着色剤を含有する水系インク用洗浄液の総質量に対する界面活性剤の総含有量が0.2%~8%である、着色剤を含有する水系インク用洗浄液。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【化1】
【請求項2】
前記HLB値が10.0~20.0の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である、請求項1に記載の着色剤を含有する水系インク用洗浄液。
【請求項3】
前記HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である請求項1又は請求項2に記載の着色剤を含有する水系インク用洗浄液。
【請求項4】
さらに、グリコールエーテルを含有する請求項1に記載の着色剤を含有する水系インク用洗浄液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の着色剤を含有する水系インク用洗浄液の、インクジェットプリンタの洗浄における使用。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の着色剤を含有する水系インク用洗浄液を用いて、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物を洗浄する、インクジェットプリンタの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、及びそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー印刷方法の中で、インクジェットプリンタによる印刷方法(インクジェット印刷方法)は、代表的方法の1つである。この方法は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の基材に付着させ印刷を行う方法である。近年、インクジェット印刷方法は、産業用途としての応用が進んでいる。インクジェットインクが含有する着色剤は、水溶性の着色剤と、水不溶性の着色剤とに大別される。これらのうち、顔料を代表とする水不溶性の着色剤は、水溶性の着色剤と比較して、一般に各種の堅牢性に優れる。このため、産業用のインクジェットインクは、水不溶性の着色剤を含有することが多い。
【0003】
産業用途に用いられる基材は、各種の紙、繊維、及びフィルム等、多様化しており、非・難吸収性基材も多い。近年、非・難吸収性基材の印刷に用いるインクとしては、非水系の溶剤インク、及び硬化性インク等が知られている。しかし、例えば自然環境、及び生体等に対する安全性の観点から、非・難吸収性基材にも印刷が可能な水性インクが強く要望されている。そのような水性インクは、水不溶性の着色剤、及び分散剤を含有し、さらに、耐擦過性や耐溶剤性等を向上させる目的で、一般にポリマーやワックス等も含有する。このため、そのような水性インクは固形分の含有量が多く、極めて乾燥しやすい。インクの乾燥は、長期の保管、高温・低湿度環境での保管等において、インクジェットヘッドのノズル部やインク流路内での固形物の形成を生じ、目詰まりが発生しやすい。このようにインクジェットヘッド内で目詰まりが生じると、インクの吐出が安定して行なえず、画像濃度が低下するという問題を招く。そのため、一般に、産業用インクジェットヘッドには、ノズル部にキャップ部材を装備し、インクの乾燥を防止する等の工夫がされている。しかし、それでもなお、保管の環境が厳しい場合には、インクの乾燥を完全に回避することは難しかった。
【0004】
前記の状況から、インクが乾燥して固形物を生じることによりインクジェットヘッドが目詰まりしても、これを洗浄できる洗浄液(クリーニング液、又はメンテナンス液等ともいう。)が強く要望されている。特許文献1~6には、インクジェット記録装置の洗浄に用いる洗浄液が開示されている。
【文献】特許第5027444号
【文献】特許第4649823号
【文献】特許第4397220号
【文献】特許第5618250号
【文献】特許第5819206号
【文献】特許第5819205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できる洗浄液の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくともHLB値が10.0~20.0の界面活性剤と、HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤と、水を含有する洗浄液により、前記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の1)~6)に関する。
1)
少なくとも2種類の界面活性剤と、水とを含有する洗浄液であって、一方の界面活性剤のHLB値が10.0~20.0であり、他方の界面活性剤のHLB値が3.0以上10.0未満である洗浄液。
但し、界面活性剤のHLB値は以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で撹拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。
【0007】
【化1】
【0008】
2)
前記HLB値が10.0~20.0の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である、前記1)に記載の洗浄液。
3)
前記HLB値が3.0以上10.0未満の界面活性剤が、ノニオン界面活性剤から選択される界面活性剤である前記1)又は2)に記載の洗浄液。
4)
さらに、グリコールエーテルを含有する前記1)に記載の洗浄液。
5)
前記1)~4)のいずれか一項に記載の洗浄液の、インクジェットプリンタの洗浄における使用。
6)
前記1)~4)のいずれか一項に記載の洗浄液を用いて、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物を洗浄する、インクジェットプリンタの洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できる洗浄液を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、特に断りの無い限り「%」及び「部」は、いずれも質量基準で記載する。また、本明細書において「A~B」と記載するときは、特に断りのない限り「A以上B以下」を意味する。
【0011】
[少なくとも2種類の界面活性剤]
前記の洗浄液は、少なくとも2種類の界面活性剤を含有する。そのうちの一方の界面活性剤のHLB値は通常10.0~20.0、好ましくは10.5~20.0、より好ましくは10.5~19.5(以下「界面活性剤A」ということがある。)である。また、他方の界面活性剤のHLB値は通常3.0以上10.0未満、好ましくは3.5以上10.0未満、より好ましくは4.0以上10.0未満(以下「界面活性剤B」ということがある。)である。
界面活性剤A及びBの種類は特に限定されず、ノニオン、アニオン、カチオン、両性、シリコン、及びフッ素等の、各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではノニオン、及びアニオンの各界面活性剤から選択される界面活性剤が好ましく、ノニオン界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤のHLB値は、以下のようにして算出する。
[HLB値の算出方法]
界面活性剤0.5gをエタノール5mLに溶解させて溶液を得る。得られた溶液を25℃で攪拌し、この溶液に2質量%フェノール水溶液を滴下し、液が混濁したところを終点とする。終点までに要した2質量%フェノール水溶液の量がQ(mL)のとき、下記式(1)によってHLB値を算出する。算出したHLB値は小数点以下2桁目を四捨五入することにより、小数点以下1桁目までを算出値として用いる。なお、エタノール5mLに溶解しない界面活性剤、及び、2質量%フェノール水溶液を滴下しても混濁を生じない界面活性剤は、界面活性剤A及びBには含まれない。
【0012】
【化1】
【0013】
[ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;ポリグリコールエーテル系等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、日信化学株式会社のサーフィノール 104、104PG50、82、420、440、465、485、オルフィン STG;花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500、MS-110;EVONIC社製のTEGO Wet 500、505、510、株式会社日本触媒製のソフタノール30、90、EP-9050;第一工業製薬株式会社製のDKS NL-30;竹本油脂株式会社製のパイオニン D-1502、D-1305P等が挙げられる。
【0014】
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0015】
カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0016】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0017】
シリコン界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール 960、980;日信化学株式会社製のシルフェイス SAG 001、002、003、005、503A、008、009、010;及び、ビックケミー社製のBYK-345、347、348、349、3455、LP-X23288、LP-X23289、LP-X23347;Evonic Tego Chemie社製のTEGO Twin 4000、TEGO Wet KL 245、250、260、265、270、280等が挙げられる。
【0018】
フッ素界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
【0019】
下記表1に界面活性剤のHLB値の一例を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
前記洗浄液の総質量に対する界面活性剤の総含有量は通常0.1%~10%、好ましくは0.2%~8%、より好ましくは0.3%~8%である。このような含有量のとき、再分散性及び洗浄性が良好になる。
【0022】
前記洗浄液が含有する界面活性剤AとBの総質量中における、界面活性剤AとBの含有比は通常8/1~1/8、好ましくは7/1~1/7、より好ましくは6/1~1/6である。このような含有比とすることにより、洗浄性が良好になる。
【0023】
[グリコールエーテル]
前記の洗浄液は、グリコールエーテルを含有することができる。グリコールエーテルとしては、ジ又はトリC2-C4アルキレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
C2-C4アルキレングリコール部分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールが挙げられる。これらの中ではエチレングリコール、及びプロピレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
モノアルキルエーテル部分のアルキルの炭素数の範囲は、通常C1-C6、好ましくはC1-C5、より好ましくはC2-C4、さらに好ましくはC3-C4、特に好ましくはC4である。
その具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中ではブチルジグリコールが好ましい。
洗浄液の総質量中における、グリコールエーテルの総含有量は通常0~15%、好ましくは0.1~15%、より好ましくは0.2~13%、さらに好ましくは0.5~10%である。
【0024】
前記洗浄液は、前記した成分以外に、インク調製剤をさらに含有することができる。インク調製剤としては、例えば、有機溶剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。インク調製剤の各種類は、いずれも1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
洗浄液の総質量に対して、有機溶剤以外のインク調製剤の総含有量は通常0%~30%、好ましくは0%~20%、より好ましくは0%~10%程度である。
【0025】
前記洗浄液は、実質的に着色剤を含有しない。本明細書において「実質的に」とは、洗浄液中に、意図的に着色剤を加えることはしないことを意味する。
【0026】
[有機溶剤]
有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、及び第三ブタノール等の、ヒドロキシ基を1つ有するC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、及び1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、及びエチレンカーボネート等の、ケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、及びジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-へキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、1,2-オクタンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4,4-ジメチル-1,2-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量が400以上のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等の、C2-C8アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール);γ-ブチロラクトン、及びジメチルスルホキシド等から選択される有機溶剤が挙げられる。
【0027】
[防腐剤]
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。
防腐剤の市販品の具体例としては、アーチケミカル社製のプロクセル GXL(S)、XL-2(S)等が挙げられる。
【0028】
[防黴剤]
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
【0029】
[pH調整剤]
pH調整剤としては、調製されるインク組成物に悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できれば、任意の物質を使用することができる。
その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0030】
[キレート剤]
キレート試薬の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
[防錆剤]
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0032】
[水溶性紫外線吸収剤]
水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えばスルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0033】
[酸化防止剤]
酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及び複素環類等が挙げられる。
【0034】
前記の洗浄液は、前記した全ての成分について、そのうちの1種類を選択して含有することができる。また、2種類以上を選択して含有することもできる。例えば、洗浄液は式(1)で表される化合物の中から、1種類の化合物を選択して含有することができる。また、2種類以上の化合物を選択して含有することもできる。他の成分についても同様である。
【0035】
前記洗浄液は、前記した成分と、必要に応じてインク調製剤とを加え、十分に混合することにより得ることができる。
前記インクジェットプリンタの洗浄方法は、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物を洗浄する方法であれば、特に限定されない。通常の洗浄方法としては、例えば、洗浄液をスポンジ等に吸収させて、着色インクが付着した部分の汚れをふき取る方法等が挙げられる。一方、例えば着色インクがインクジェットヘッド上で乾燥し、インクジェットヘッドの汚れが激しいときは、着色インクの代わりに洗浄液をインクジェットヘッドに充填して洗浄することもできる。
洗浄液をインクジェットヘッドに充填して洗浄をするときは、洗浄液から夾雑物を除去する目的で、洗浄液を精密濾過するのが好ましい。
精密濾過をするときは、メンブランフィルター及び/又はガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は通常0.5μm~20μm、好ましくは0.5μm~10μmである。
【0036】
前記洗浄液のpHは、インクジェットプリンタ部材を腐食させない目的で通常pH5~11、好ましくはpH7~10.5である。
洗浄液の表面張力は通常10mN/m~50mN/m、好ましくは20mN/m~40mN/mである。
洗浄液の粘度は通常30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下、下限は0.1mPa・s程度である。
【0037】
前記洗浄液は、各種の着色剤を含有する水系インクの洗浄に使用することができる。着色剤の一例としては、例えば、酸性染料、直接染料、及び反応染料等の水溶性染料を含有する水系染料インク;分散染料、及び顔料等の水不溶性着色剤を含有する水系インク等が挙げられる。
前記洗浄液は洗浄力が高いため、水不溶性着色剤、特に顔料を含有する水系インクの洗浄に用いることが好ましい。
【0038】
前記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【実施例
【0039】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。また、洗浄液、及び着色インクの調製は、特に断りのない限り、いずれも攪拌下に行った。
また、実施例中で使用した「水」は、イオン交換水である。
【0040】
[実施例1~5]:洗浄液の調製。
下記表2に記載の各成分を混合して、それぞれ総量100部の液を得た後、得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、実施例1~5の洗浄液を得た。
【0041】
[比較例1~10]:比較用の洗浄液の調製。
下記表3に記載の各成分を使用する以外は、前記の実施例1~5と同様にして、比較例1~10の比較用の洗浄液を得た。
【0042】
下記表2及び3中の略号等は、以下の意味を有する。また、表2及び3中の数値は「部」である。
Gly:グリセリン
2Py:2-ピロリドン。
BDG:ブチルジグリコール。
SN465:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 465。
SN485:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 485。
LA-16:第一工業製薬株式会社製アニオン界面活性剤、ハイテノール LA-16。
NL-30:第一工業製薬株式会社製ノニオン界面活性剤、DKS NL-30。
A-90:花王株式会社製ノニオン界面活性剤、エマルゲン A-90。
MS-110:花王株式会社製ノニオン界面活性剤、エマルゲン MS-110。
D-1305P:竹本油脂株式会社製ノニオン界面活性剤、パイオニン D-1305P。
TW500:EVONIC社製ノニオン界面活性剤、TEGO Wet 500。
TW505:EVONIC社製ノニオン界面活性剤、TEGO Wet 505。
TW510:EVONIC社製ノニオン界面活性剤、TEGO Wet 510。
TEA:トリエタノールアミン。
GXL(S):プロキセルGXL(S)。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
以下に、前記の洗浄液の洗浄力の評価に用いる、着色インクの調製について記載する。
[調製例1]:樹脂Aの調製。
ジョンクリル678(MW:8500)25部、及びトリエタノールアミン14.3部をイオン交換水60.7部に溶解し、一時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を、樹脂Aとする。
【0046】
[調製例2]:顔料分散液の調製。
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られた高分子分散剤5部を、2-ブタノン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.4部)を水(50.6部)に溶解させた液を加え、樹脂溶液A(4部)添加後、1時間攪拌して乳化液を得た。この乳化液にC.I.Pigment Yellow 74(20部、クラリアント社製HANSA YELLOW 5GX 01-JP)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(100部)を滴下した後、この液をろ過し濾液を得た。得られたろ液から、エバポレータで2-ブタノン、及び水の一部を減圧留去することにより、顔料含有量が12.4%の顔料分散液(Dp1)を得た。
分散液中の顔料含有量は、株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS-70を用いて、乾燥重量法により、液中の全固形分から、顔料含有量の換算値として求めた。
【0047】
[調製例3]樹脂Bの調製。
国際公開第2015/147192号ガゼットの調製例4を追試することにより、酸価が6KOHmg/g、Tgが0℃、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを「樹脂B」とする。
【0048】
[調製例4]:着色インクの調製。
下記表2に記載の各成分を混合して総量100部の液を得た後、得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、洗浄液の洗浄力の評価に用いる着色インクを得た。
【0049】
下記表4中の略号等は、以下の意味を有する。また、下記表3中の数値は「部」である。
着色分散液:調製例2の着色分散液。
TEG:トリエチレングリコール。
1,2HD:1,2-ヘキサンジオール。
SN465:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 465。
AQ515:ビックケミー社製ポリエチレンワックス、AQUACER 515(固形分35.0%)。
【0050】
【表4】
【0051】
[洗浄液の安定性試験]
各実施例、及び比較例で得た洗浄液を、室温で12時間静置した後、洗浄液の状態を目視で観察し、その安定性を評価した。評価基準は以下の2段階とした。評価結果を下記表5及び6に示す。
[評価基準]
A:洗浄液の状態に変化はなかった。
C:洗浄液から分離した液状成分が、洗浄液の表面に浮いているのが観察された。
【0052】
[洗浄液の洗浄性の試験]
前記の調製例4で得た着色インクをガラスシャーレ上に20マイクロリットル滴下し、60℃の恒温槽に1時間静置して乾燥させることにより、着色インクが固化した固形物を得た。
得られた固形物に実施例、及び比較例の各洗浄液を10ミリリットル滴下し、固形物を洗浄できるか否かを目視で評価した。評価基準は以下の4段階とした。評価結果を下記表5及び6に示す。
[評価基準]
A:固形物の残存が認められず、均一な液となった。
B:わずかに固形物の残存が認められるが、ほぼ均一な液となった。
C:明らかに固形物が残存し、均一な液とは認められなかった。
D:固形物の形状が全く変化しなかったか、又は、ほとんど変化しなかった。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
前記の結果から明らかなように、実施例の洗浄液は、比較例の洗浄液と比較して、洗浄性に優れることが確認された。また、比較例6~9の洗浄液は、洗浄性は「A」であったが、洗浄液から分離した成分が目視で確認できるほど、不均一な状態であった。このため、比較例6~9の洗浄液が長期的に、安定した洗浄力を示せるのかが疑問視される結果だった。
【0056】
[実施例6]:洗浄液の調製。
下記表7に記載の各成分を使用する以外は、前記の実施例1~5と同様にして、実施例6の洗浄液を得た。
【0057】
[比較例11~12]:比較用の洗浄液の調製。
下記表7に記載の各成分を使用する以外は、前記の実施例1~5と同様にして、比較例11~12の比較用の洗浄液を得た。
【0058】
下記表7中の略号等は、前記表2及び表3に記載の略号等と同じ意味を有する。また、表7中の数値は「部」である。
【0059】
【表7】
【0060】
実施例6、及び比較例11~12の洗浄液について、前記と同様にして[洗浄液の安定性試験]、及び[洗浄液の洗浄性の試験]を行った。試験結果を下記表8に示す。
【0061】
【表8】
【0062】
表8から明らかなように、実施例6は実施例1~5と同様に優れた安定性と洗浄性を示した。また、各比較例11~12は比較例1~10と同様に、安定性及び洗浄性のいずれかが各実施例に対して劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の洗浄液は、着色インク、特には水不溶性の着色剤を含有する水性インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できるため、着色インクの洗浄液、特に着色インクジェットインクの洗浄液として極めて有用である。