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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】光学部品のマウント方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/00 20210101AFI20230815BHJP
【FI】
G02B7/00 F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019142774
(22)【出願日】2019-08-02
(62)【分割の表示】P 2016512417の分割
【原出願日】2014-05-09
(65)【公開番号】P2019207425
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2019-08-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】1308433.0
(32)【優先日】2013-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,グレーム ペーター アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ムンロー,サイモン
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-70553(JP,A)
【文献】特開平10-303516(JP,A)
【文献】特開平6-50921(JP,A)
【文献】特開昭58-137293(JP,A)
【文献】特開2006-319265(JP,A)
【文献】特開2005-338862(JP,A)
【文献】特開平5-110242(JP,A)
【文献】特開2006-286985(JP,A)
【文献】特開2008-021888(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B7/00
G02B7/18-7/24
G02B6/26-6/27
G02B6/30-6/34
G02B6/42-6/43
B25J1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システム内に1またはそれ以上の光学部品をマウントするための光学部品マウント装置において、前記1またはそれ以上の光学部品がマウントされる第1の面および反対側の第2の面を有するベースプレートを具え、当該ベースプレートが前記第1の面に1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域を具え、当該1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域のそれぞれが、前記第1の面に設けられた1またはそれ以上の凹部または開口によって規定され、当該1またはそれ以上の凹部または開口の位置が、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域の外辺部を規定することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学部品マウント装置において、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、その外辺部の周りに配置された2またはそれ以上の凹部または開口で規定されることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学部品マウント装置において、前記ベースプレートがさらに、前記第1面から延在し前記熱活性型光学部品マウント領域の外辺部の周りに配置された1またはそれ以上のレッジを具えることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光学部品マウント装置において、さらに、前記1またはそれ以上の熱活性光学部品マウント領域に熱接触するよう配置される1またはそれ以上の発熱体を具えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光学部品マウント装置において、前記光学部品マウント装置はさらに1またはそれ以上のピラーを具え、当該1またはそれ以上のピラーは、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に機械的に連結された第1の端部を有することを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学部品マウント装置において、前記1またはそれ以上のピラーは、前記1又はそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に、半田で機械的に連結されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光学部品マウント装置において、前記1またはそれ以上のピラーは、光学部品に機械的に連結するのに好適な第2の端部を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学部品マウント装置において、接着剤が、前記1またはそれ以上のピラーの第2の端部と前記光学部品との間の機械的連結を提供することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の光学部品マウント装置において、前記1またはそれ以上のピラーの第1の端部は、外形が丸められているか半球形状であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の光学部品マウント装置において、さらに、1またはそれ以上の光学部品を機械的に取り付けるのに適した1またはそれ以上の角度付きマウントを具えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の光学部品マウント装置において、さらに、遠位端部に角度付きマウント取付部が設けられた、調節可能なアームを具えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光学部品マウント装置において、前記調節可能なアームはさらに、その近位端部に配置された取付アームを具え、当該取付アームは、前記調節可能なアームを基準点に取り付ける手段を提供することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光学部品マウント装置において、前記取付アームは、当該取付アームを前記基準点に対して配置する手段を提供するだぼ(dowel)を具えることを特徴とする装置。
【請求項14】
光学システム内における光学部品のマウント方法であって、
反対向きの第1および第2の面を有するベースプレートを提供するステップと、
1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域を設けるステップであって、当該1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域のそれぞれが、前記第1の面に設けられた1またはそれ以上の凹部または開口によって規定され、前記1またはそれ以上の凹部または開口の位置が、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域の外辺部を規定するものであるステップと、
-前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域と熱接触する1またはそれ以上の発熱体を配置するステップと、
-前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域内にピラーと光学部品のアセンブリを配置するステップと、
-前記1またはそれ以上の発熱体を用いて前記ピラーと光学部品のアセンブリとを前記熱活性型光学部品マウント領域に半田付けするステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の光学部品のマウント方法において、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、その外辺部の周りに2またはそれ以上の凹部または開口を設けて規定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の光学部品のマウント方法において、さらに、前記第1面から延在し熱活性型光学部品マウント領域の周りに配置された1またはそれ以上のレッジを設けるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれかに記載の光学部品のマウント方法において、レジスタ(register)とだぼ(dowel)のシステムを用いて、前記ピラーと光学部品のアセンブリを前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に配置するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の光学部品のマウント方法において、前記レジスタとだぼのシステムを用いるステップは、前記光学部品に角度付きマウントを機械的に取り付けるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の光学部品のマウント方法において、前記レジスタとだぼのシステムを用いるステップは、さらに、調整可能なアームを前記角度付きマウントの遠位端部に機械的に取り付けるステップと、前記調整可能なアームの近位端部を基準点に取り付けるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項14乃至19のいずれかに記載の光学部品のマウント方法において、前記ピラーと光学部品のアセンブリを前記熱活性型光学部品マウント領域に半田付けする前に、前記ピラーの第1の端部に錫の層を設けるステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学の分野に関する。より具体的には、本発明は、例えばレーザキャビティ内に用いられる光学部品といった光学部品のマウント方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部品は、「ボールとバネ」型のマウントを用いてレーザキャビティに搭載されている。当業者に知られているように、ボールとバネ型のマウントは、バネの劣化や、温度変化の影響を受けやすいため、定期的に再配列することが必要である。さらに、これらのマウントに配置される光学部品は典型的に、光学部品自体に直接かかる圧力源として作用するグラブねじを介して保持される。これらの要素の両方が、ボールとバネ型のマウントを商業的レーザ装置で使いにくくしている。
【0003】
当業者に知られている光学部品マウントの別の技術は、専用の発熱体を用いる基板上への接合媒体を用いることである。この発熱体は、光学部品のマウントまたは除去の必要に応じて、直接あるいは基板を介して接合媒体を加熱するのに用いられる。欧州特許公開番号EP0196875はこのようなシステムを記載しており、光学部品を基板上にマウントする手段を提供すべく、半田を局所的に加熱するのにチップ抵抗を用いている。あるいは、米国特許番号5,930,600は、発熱体としてPTCサーミスタまたはNTCサーミスタを用いることを記載する。これらの要素は、対応する溶融点以上の温度に加熱する必要がなく、このため基板に搭載するか取り去る光学部品にダメージを与える可能性が減るため、公知の抵抗ベースの発熱体より好ましいと記載されている。しかしながら、PTCサーミスタやNTCサーミスタは従来の抵抗ベースの発熱体より高価であり、商業システム内で用いるのにあまり望ましくない。
【0004】
上述した技術を用いるさらなる問題は、半田は冷却中に互いに固定される平面間で移動してしまうことが知られていることがある。PTCサーミスタまたはNTCサーミスタを用いる場合、これらの部品自体が加熱中や冷却中に内在的に移動しがちであることが知られており、この問題がさらに悪化する。このような移動は、利用可能な許容度を有意に狭めるため、光学部品の整列にとって明らかに不都合である。
【0005】
さらに、上記の発熱体を用いて平坦な基板を介して接合媒体を加熱すると、接合媒体に十分な熱を伝えるのが難しいことがある。これは、生成された熱が、光学部品がマウントされる領域に向かってのみならず、基板全体を通って伝わることによる。この問題の解法の一つは発熱体で生成する熱レベルを上げることだが、加熱および冷却サイクルにおける移動の問題を増大させてしまう。いくつかの場合、発熱体を基板に取り付ける接着剤が溶け出し、これらの要素が分離してしまう。
【0006】
この問題を解決する提案が、米国特許番号5,930,600に記載されている。これはすべての部品を基板の同じ側に1のスタックで搭載することを含み、1のスタックが半田層/光学部品/接着剤層/サーミスタを含む。この構成の有意な欠点は、半田が光学部品自体を介してサーミスタにより加熱されることである。当業者は理解するように、商業的レーザ装置では光学部品を直接的な加熱に繰り返しさらすことは、部品にダメージを与えるため望ましくない。さらに、このような例は、それぞれ異なる熱膨張係数を示す異なる接合媒体を用いる異なるインタフェースがあることから、関連する光学部品に熱安定性の重大な問題がある。光学部品はしばしば2またはそれ以上の半田、接着剤層、サーミスタ、支持プレート等のスタックを有する場合があり、これらのすべてが異なる熱膨張係数を示すことから、この問題はさらに悪化する。
【0007】
このため、本発明の一態様の目的は、この分野で公知の光学部品のマウント方法および装置の上述した不都合を解消するか、少なくとも低減させることにある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によると、1またはそれ以上の光学部品をマウントするための光学部品マウント装置が提供され、この装置は、対向する第1面および第2面を有するベースプレートを具え、当該ベースプレートが前記第1面または第2面に設けられた1またはそれ以上の凹部または開口を具え、当該1またはそれ以上の凹部または開口の位置は、1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域を規定する。
【0009】
前記1またはそれ以上の凹部または開口を用いると、前記ベースプレート全体に伝わる熱伝導を軽減するように作用する。結果として、ベースプレート内の所望の機械的強度を維持したまま、1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に選択的な加熱(preferential heating)を提供することができる。
【0010】
選択的に、1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、その外辺部(perimeter)の周りに配置された2またはそれ以上の凹部または開口で規定される。
【0011】
この1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、前記第2面に設けられた1またはそれ以上の凹部で規定されてもよい。
【0012】
より好適には、ベースプレートがさらに、前記第1面から延在し前記熱活性型光学部品マウント領域の外辺部の周りに配置された1またはそれ以上のレッジ(ledge)を具える。この1またはそれ以上のレッジを組み入れると、光学部品の装着または除去の間に半田を保持するのに役立つ。
【0013】
選択的に、ベースプレートがさらに、1またはそれ以上の座ぐりされた(countersunk)開口部を具える。これらの座ぐりされた開口部は、光学システム内に光学部品マウント装置をねじで固定する手段を提供する。
【0014】
光学部品マウント装置は好適には、さらに、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に熱接触するよう配置された1またはそれ以上の発熱体を具える。より好適には、前記1またはそれ以上の発熱体は、前記第2面に設けられた前記1またはそれ以上の凹部内に配置されている。
【0015】
より好適には、光学部品マウント装置はさらに1またはそれ以上のピラーを具え、当該1またはそれ以上のピラーは、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に機械的に連結された第1の端部を有する。この1またはそれ以上のピラーは、前記1又はそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に、半田で機械的に連結することができる。
【0016】
好適には、1またはそれ以上のピラーは、光学部品に機械的に連結するのに好適な第2の端部を有する。前記1またはそれ以上のピラーの第2の端部と光学部品との間の機械的連結は、接着剤とすることができる。
【0017】
前記1またはそれ以上のピラーの第1の端部は、外形が丸められているのが好ましい。最も好適には、前記1またはそれ以上のピラーの第1の端部は半球形状である。この丸くなった、あるいは半球の外形をピラーの第1の端部に用いると、マウントされた光学部品にかかるストレスを低減することができる。
【0018】
光学部品マウント装置はさらに、1またはそれ以上の光学部品を機械的に取り付けるための1またはそれ以上の角度付きマウントを具える。この部材の角度は、関連する光学部品に対する移動を減じるように選択される。
【0019】
好適には、前記1またはそれ以上の角度付きマウントは、ねじ穴を有する。
【0020】
光学部品マウント装置はさらに、角度付きマウント取付部が配置された遠位端部に、調節可能なアームを具える。この角度付きマウント取付部は、前記調節可能なアームが1またはそれ以上の角度付きマウントに機械的に連結される手段を提供する。
【0021】
調節可能なアームはさらに、その近位端部に配置された取付アームを具える。この取付アームは、前記調節可能なアームを基準点、例えば光学システムのハウジング壁に取り付ける手段を提供する。
【0022】
好適には、取付アームは、当該取付アームを前記基準点に対して配置する手段を提供するだぼ(dowel)を具える。
【0023】
本発明の第2の態様によると、光学部品のマウント方法が提供され、
-対向する第1面および第2面を有するベースプレートに、1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域を提供するステップと、
-前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域と熱接触する1またはそれ以上の発熱体を配置するステップと、
-前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域内にピラーと光学部品のアセンブリを配置するステップと、
-前記1またはそれ以上の発熱体を用いて前記ピラーと光学部品のアセンブリとを前記熱活性型光学部品マウント領域に半田付けするステップと、を具える。
【0024】
前記ベースプレートに前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域を提供するステップは、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域の位置を規定するように、1またはそれ以上の凹部または開口を設けるステップを具える。
【0025】
選択的に、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、その外辺部の周りに1またはそれ以上の凹部または開口を配置して規定される。
【0026】
前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域は、前記第2面に1またはそれ以上の凹部を設けて規定することができる。
【0027】
光学部品のマウント方法はさらに、前記第1面から延在し熱活性型光学部品マウント領域の周りに配置された1またはそれ以上のレッジを設けるステップを含んでもよい。
【0028】
光学部品のマウント方法はさらに、前記ベースプレートに1またはそれ以上の座ぐりされた開口を設けるステップを含んでもよい。
【0029】
最も好ましくは、1またはそれ以上の発熱体は、当該1またはそれ以上の発熱体を前記第2面の1またはそれ以上の凹部内に配置することにより、前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に熱接触するよう配置される。
【0030】
好適には、レジスタ(register)とだぼ(dowel)のシステムを用いて、ピラーと光学部品アセンブリを前記1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域に配置する。
【0031】
前記レジスタとだぼのシステムを用いるステップは、前記光学部品に角度付きマウントを機械的に取り付けるステップを含むことが好ましい。
【0032】
前記レジスタとだぼのシステムを用いるステップは、さらに、調整可能なアームを前記角度付きマウントの遠位端部に機械的に取り付けるステップを含んでもよい。
【0033】
前記レジスタとだぼのシステムを用いるステップは、さらに、前記調整可能なアームの近位端部を基準点に機械的に取り付けるステップを含んでもよい。この基準点は、光学システム内に配置された1またはそれ以上の開口を含んでもよい。
【0034】
選択的に、前記ピラーと光学部品アセンブリを前記光学部品マウント領域に半田付けする前に、前記ピラーの第1の端部に錫の層を設けるステップを具える。
【0035】
本発明の第2の態様の実施例は、本発明の第1の態様の好適あるいは選択的な特徴を実装した特徴を有してもよいし、逆も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の態様および利点が、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなる。
図1図1は、本発明の一実施例にかかる光学部品マウント装置の概略図である。
図2図2は、図1の光学部品マウント装置の分解図である。
図3図3は、図1の光学部品マウント装置のAA’軸に沿った断面図である。
図4図4は、光学部品のマウント方法のフローチャートである。
図5図5は、図1の光学部品マウント装置が配置されるレーザキャビティの一部の平面図である。
図6図6は、図5のレーザキャビティ内にミラーを搭載するのに用いられる調整可能なアームの(a)正面図、(b)側面図、および(c)背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
光学部品のマウント方法および方法を、図1乃至6を参照して以下に説明する。
【0038】
最初に、図1乃至3は、全体を符号1で示す光学部品マウント装置の多様な実施例を示す。ここに記載するマウント装置1の実施例は、例えばレンズやミラーである2つの光学部品2を搭載するよう設計されている。しかしながら、当業者は代替例において装置が単一の光学部品2、あるいは2つより多い光学部品2を搭載するのに適合し得ることを理解するであろう。
【0039】
光学部品マウント装置1は、対向する第1面4と第2面5を有するベースプレート3を具える。第1面4には、2つの熱活性型光学部品マウント領域6が設けられる。用語「熱活性型」は、マウント装置1に光学部品を搭載あるいは除去するために熱を加える必要性を強調するものである。
【0040】
熱活性型光学部品マウント領域6は、その外辺部の周りに配置された1またはそれ以上の開口部7、あるいは第2面5に設けられた凹部8の存在によって規定され、その詳細は後述される。第1面4から突出するレッジ9が、熱活性型光学部品マウント領域6の外辺部の周りに配置されていることが望ましい。前記1またはそれ以上の開口部7とともに用いる場合、開口部7はレッジ9で規定される範囲の外側にあるように配置される。
【0041】
本実施例では、各熱活性型光学部品マウント領域6は、円形のレッジ9と、4つの開口部7とを具え、各開口部7が、対応する熱活性型光学部品マウント領域6の中心の円形のレッジ9と同様の、弧部分を形成している。すべての開口部7はベースプレート3を貫通しているが、別の実施例では必ずしもその必要はない。図3から、各熱活性型光学部品マウント領域6は、第2面5に設けられた凹部8を有することが分かる。各凹部8は、対応する円形のレッジ9の面積より大きな円形の断面を有する。さらに、これらの凹部8は、対応する円形のレッジ9と同心である。以下に詳述するように、これらの凹部8は、対応する光学部品2のマウント工程で用いる発熱体10を収容する。通常の抵抗を、光学部品マウント装置1内の発熱体10として用いることができる。
【0042】
座ぐりされた(countersunk)開口部11がさらに、ベースプレート3の第1面4上に設けられている。この座ぐりされた開口部11は、ねじ12で光学部品マウント装置1を光学システム内に固定する手段を提供する。
【0043】
ベースプレートの代替実施例では、光学部品マウント領域6および対応する凹部8の相対的な寸法や位置は変更されてもよい。さらに、隆起したレッジ9の一方または双方が、第1面4に形成された凹部領域で置換されてもよい。
【0044】
光学部品マウント装置1はさらに、ピラー13を具える。図2に最もよく示すように、光学部品マウント領域6に配置されるピラー13の第1の端部14は、丸い輪郭を有し、さらに好ましくは半球体の輪郭を有する。
【0045】
半田15の層を用いて、ピラー13を光学部品マウント領域6に固定する。同じ方法で、接着剤の第1の層を用いて、光学部品2をピラー13の第2の端部16に固定している。接着剤の第2の層を用いて、角度付きマウント17を光学部品2に固定してもよい。後に詳述するマウント工程では、各度付きマウント17にはねじ穴18が設けられ、ピラー13と光学部品2の連結部のほぼ反対側となるように光学部品2に固定されることが好ましい。この部品の角度は、光学部品2が取り付けられる部分との相対動作を低減するよう選択される。各度付きマウント17は、例えば90°の角度である。
【0046】
光学部品マウント装置1の熱安定性を向上させるために、ひいては光学部品2の配置精度を高くするために、ベースプレート3とピラー13は、熱膨張係数が低い材料で製造することが望ましい。これらの部品に好適な材料はInvar(商標名)である。Invar(商標名)は一般にFeNi36として知られており、熱膨張係数がすばらしく低いことでこの分野で知られているニッケル鉄合金である。
【0047】
[光学部品の取付方法]
光学部品マウント装置1に光学部品2を取り付ける方法を、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
第1のステップは、1またはそれ以上の上述した熱活性型光学部品マウント領域6をベースプレート3に設けることを含む。
【0049】
その後に発熱体10が、熱活性型光学部品マウント領域6に熱接触するように配置される。これは、発熱体10を、第2面5の凹部8内に配置することで好適に達成することができる。
【0050】
ピラー13と光学部品2のアセンブリがその後、熱活性型光学部品マウント領域6に配置され、発熱体10を用いて光学部品マウント領域6内の半田を加熱する。これは、加熱時に新たな半田を光学部品マウント領域6に導入したり、光学部品マウント領域6内に既にある半田15を再加熱したり、これらの双方の処理の組み合わせで実現することができる。
【0051】
光学部品2が正確に配置されたら、光学部品マウント領域6にかけられた熱を取り去って半田15を硬化させ、したがって光学部品が所望の位置に固定される。
【0052】
ベースプレート3とピラー13がInvar(商標名)で構成される場合、上記の半田付け工程は、最初にピラー13の第1の端部14に錫を被せることが利点となる。錫を被せると、ピラー13の第1の面14の酸化作用を減らす作用があり、したがってベースプレート3とピラー13の間により丈夫で確実な取付が実現する。
【0053】
当業者は、上記の複数の工程の順番を変えてもよいことを理解するであろう。例えば、ピラー13と光学部品2のアセンブリは、発熱体10を光学部品マウント領域6内に配置する前に配置してもよい。
【0054】
上記の工程はさらに、接着剤の第1の層を導入して、光学部品2をピラー13の第2の端部16に固定するステップを含む。好適には、この工程は、ピラー13と光学部品2のアセンブリが熱活性型光学部品マウント領域6内に配置される前に行われる。あるいは、この工程は、ピラー13をベースプレート3に半田付けした後に行ってもよいが、光学部品2を正確に配置する困難性が大きくなるためこの順番はあまり望ましくない。
【0055】
[レジスタとだぼ(Register and Dowel)システム]
光学部品2を熱活性型光学部品マウント領域6内に配置する工程を、図5に概略的に示す光学システム19を参照して以下にさらに説明する。この工程は、図6に多様な様子を示す、角度付きマウント17に機械的に連結する調節可能なアーム20を用いるものであり、これによりレジスタとだぼシステムが構成される。
【0056】
調節可能なアーム20は、取付アーム21と細長部分22とを具え、これらは当該取付アーム21と細長部材22の双方にほぼ直交する支持バー23により、互いにほぼ平行に機械的に連結されている。支持バー23の向きが、調節可能なアーム20の基準軸24を規定する。
【0057】
取付アーム21を貫通する3つの穴25が、調節可能なアーム20のこの位置を3本のねじ26で光学システム19内に固定する手段を提供しており、これは以降に詳細に説明する。だぼ27が取付アーム21に取り付けられて、ここから基準軸24にほぼ平行な軸に沿って延在している。前述したように、だぼ27は、調節可能なアーム20の基準点を規定する。
【0058】
細長部分22の遠位端部にはスロット28が形成されている。このスロット28は、細長部分22のボールとバネ式マウント29の縦の位置を設定し、固定する手段を提供する。本実施例では、ねじ30が、ボールとバネ式マウント29が細長部分22から取付アーム21の方へ延在するような取付手段を提供している。
【0059】
ボールとバネ式マウント29は、各度付きマウント17の光学部品2に固定されていない面と整合するように形成された角度付きマウント取付部31を位置決めするのに用いられる。穴32が、角度付きマウント17のねじ穴18に対して配置されるように穴32に通されるグラブねじを用いて、角度付きマウント取付部31を角度付きマウント17に固定する手段を提供する。
【0060】
角度付きマウント取付部31は、スライドアーム33の遠位端部に配置されており、このスライドアームはボールとバネ式マウント29に、その中に配置された支持部34により機械的に連結されている。支持部34に対するスライドアーム33の動きは、基準軸24に実質的に平行する軸に沿って、各度付きマウント取付部31の空間的位置を変化させる。
【0061】
図5から、光学システム19は、外部壁36を有し内部にベースプレート3が配置されるハウジング35を具えることが分かる。
【0062】
第1の直径の3つのねじ穴37と、第2の直径のねじ無しの第4の基準穴38とが、外部壁36内に設けられている。ねじ穴37は、1またはそれ以上のねじ26が取付アーム21に通された後にこれらを受容するよう設計されている。ねじ無しの基準穴38は、取付アーム21のだぼ27と締まりばめ(interference fit)するよう設計されている。
【0063】
ピラー13と光学部品2のアセンブリをシステム19内に配備する際には、その各度付きマウント17を調節可能なアーム20の各度付きマウント取付部31に単に取り付ける。取り付けたら、だぼ27が適切なねじ無し基準穴38内に配置され、1またはそれ以上のねじ26で調節可能なアーム20がハウジング35の外部壁36に固定される。
【0064】
本実施例では、ねじ無し基準穴38の直径はねじ穴37の直径より小さく、ねじ26が不意にねじ無し基準穴38に挿入されないようになっている。
【0065】
この場合、ピラー13は、適切な熱活性型光学部品マウント領域6内に配置され、したがって半田15の層が前述のように適用される。半田15の層が硬化すると、角度付きマウント取付部31が角度付きマウント17から解放可能となり、調節可能なアーム20がハウジング35の外部壁36から解放される。これにより光学部品2が、光学システム19の光学的に正確に整列した状態で位置固定される。
【0066】
上記の工程は、光学システム19から光学部品2を取り外す必要が生じた場合には、単に逆にすればよい。
【0067】
ベースプレート3の設計は、光学部品マウント装置1にとって従来技術のシステムからみて多数の利点を提供する。第1に、開口部7および/または凹部8は、ベースプレート3の穴を通る熱伝導を低減するよう作用し、これにより、所望の機械的強度を維持したままで、光学部品マウント領域6に特化した加熱(preferential heating)を行うことができる。これは、半田15の層を溶融させるのに必要な熱が低レベルでよく、熱拡散の影響や、光学部品2自体の損傷の可能性が低減することを意味する。
【0068】
ピラー13の第1の端部14の丸められるか半円系の設計はまた、光学部品マウント装置1に従来技術システムに比べてさらに大きな利点を与える。この輪郭形状は、ベースプレート3に搭載されたときの光学部品2にかかるストレスを有意に低減させるよう作用する。
【0069】
光学部品マウント装置1、およびこれらの要素を用いる様々な光学システム19は、従来技術の光学部品マウント装置を用いるシステムに比べて非常に高い熱安定性を示す。例えば、光学部品マウント装置1を用いたレーザシステムは、熱ドリフトの影響が有意に低減したことが検証された。
【0070】
上記に加え、上述した装置と方法は、光学システム19の組み立てや、これに含まれる光学部品2の交換のプロセスを簡略化する。事実、光学システム19のアライメントに追加の調整を必要とすることなく、光学システム19に光学部品2を反復的に取り外し、そして挿入することができる。これらは、例えばレーザキャビティ内に用いられる光学部品などの商業的光学システムにとって明らかに高い利点となる。
【0071】
光学部品のマウント方法および装置について説明した。この装置は複数の光学部品をマウントするのに適し、対向する第1および第2の面を有するベースプレートを具える。凹部または開口がベースプレート内の第1面または第2面に形成され、熱活性型光学部品マウント領域を規定する。その後にピラーがこの熱活性型光学部品マウント領域に配置され、これらは光学部品をベースプレートに取り付ける手段を提供する。これらの凹部または開口部を用いると、ベースプレート全体への熱伝導が有意に低減する。結果として、ベースプレートの所望の機械的強度を維持したまま、1またはそれ以上の熱活性型光学部品マウント領域へ特化した加熱を与えることができる。光学部品マウント装置は高い熱安定性を示し、したがって装置を商業的光学システム内に用いるのに理想的にする。
【0072】
上述した本発明の記載は説明目的に提示されたものであり、開示された特定の形態に本発明を限定または制限する意図ではない。上述した実施例は、本発明の本質および実践的な応用を最もよく説明するために選択され説明されたものであり、当業者は本発明を多様な形態で実施することができ、使用環境に適するように多様な変更を加えることができる。このため、本発明の添付の特許請求の範囲に規定された範囲を逸脱することなくさらなる変更や改善を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6