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特許7330832印刷装置および印刷装置における液体循環方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷装置における液体循環方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20230815BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230815BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230815BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 121
B41J2/01 401
B41J2/175 503
B41J2/165 203
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019171158
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021045932
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】陶山 忠義
(72)【発明者】
【氏名】古市 考次
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086439(JP,A)
【文献】特開2012-006302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0117240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードリザーバと、
前記フィードリザーバからフィード経路を介して供給された液体をノズルから吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドからリターン経路を介して前記液体を回収するリターンリザーバと、
前記吐出ヘッドをバイパスして前記フィードリザーバから前記リターンリザーバへ前記液体を送るバイパス経路と、
前記フィードリザーバから前記リターンリザーバへ向けて前記液体を送る第1送液動作を実行する送液部と、
前記バイパス経路を閉じつつ前記フィード経路および前記リターン経路を開いた状態で前記送液部に前記第1送液動作を実行させることで、前記フィードリザーバから前記吐出ヘッドに流入した液体を、前記リターンリザーバを経由して前記フィードリザーバに戻す通常循環と、前記フィード経路および前記リターン経路を閉じつつ前記バイパス経路を開いた状態で前記送液部に前記第1送液動作を実行させることで、前記フィードリザーバから前記バイパス経路に流入した前記液体を、前記リターンリザーバを経由して前記フィードリザーバに戻すバイパス循環とを選択的に実行する制御部と
、前記リターンリザーバから前記フィードリザーバに前記液体を送る共通経路と、
前記液体の一の種類に属する第1液体を前記フィードリザーバおよび前記リターンリザーバから排出する排液動作を実行する排液部と、
前記一の種類と異なる前記液体の他の種類に属する第2液体を、前記リターンリザーバ、前記共通経路および前記フィードリザーバのいずれかに供給する液供給動作を前記排液動作の後に実行する液体供給部と
を備え
前記通常循環および前記バイパス循環の両方において、前記共通経路を介して前記リターンリザーバから前記フィードリザーバへ前記液体が戻され、
前記制御部は、前記液供給動作によって供給された前記第2液体を、前記バイパス循環によって前記フィードリザーバと前記リターンリザーバとの間で循環させつつ、前記フィードリザーバと前記リターンリザーバに前記第2液体を充填するリザーバ充填処理を実行する印刷装置。
【請求項2】
前記送液部は、前記フィードリザーバから前記フィード経路を介して前記吐出ヘッドに前記第2液体を供給するとともに、前記リターンリザーバから前記リターン経路を介して前記吐出ヘッドに前記第2液体を供給する第2送液動作を実行可能であり、
前記制御部は、前記リザーバ充填処理の後に、前記送液部に前記第2送液動作を実行させることで、前記吐出ヘッドに残留する前記第1液体を前記ノズルから排出させつつ前記吐出ヘッドに前記第2液体を充填するヘッド充填処理を実行する請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ヘッド充填処理では、前記第1液体に続いて前記第2液体を前記ノズルから排出させる請求項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ヘッド充填処理の後に、前記通常循環によって前記フィードリザーバと前記リターンリザーバとの間で前記第2液体を循環させる請求項またはに記載の印刷装置。
【請求項5】
液体を吐出する吐出ヘッドにフィードリザーバからフィード経路を介して前記液体を供給するとともに、前記吐出ヘッドからリターン経路を介して前記液体をリターンリザーバに回収する印刷装置における液体循環方法であって、
前記吐出ヘッドをバイパスして前記フィードリザーバから前記リターンリザーバへ前記液体を送るバイパス経路を閉じつつ前記フィード経路および前記リターン経路を開いた状態で、前記フィードリザーバから前記吐出ヘッドに流入した液体を、前記リターンリザーバを経由して前記フィードリザーバに戻す通常循環を実行する工程と、
前記フィード経路および前記リターン経路を閉じつつ前記バイパス経路を開いた状態で、前記フィードリザーバから前記バイパス経路に流入した前記液体を、前記リターンリザーバを経由して前記フィードリザーバに戻すバイパス循環を実行する工程と
前記液体の一の種類に属する第1液体を前記フィードリザーバおよび前記リターンリザーバから排出する排液動作を実行する工程と、
前記一の種類と異なる前記液体の他の種類に属する第2液体を、前記リターンリザーバから前記フィードリザーバに前記液体を送るときに介される共通経路、前記リターンリザーバおよび前記フィードリザーバのいずれかに供給する液供給動作を前記排液動作の後に実行する工程と
を備え
前記通常循環を実行する工程と、前記バイパス循環を実行する工程の両方の工程では、前記共通経路を介して前記リターンリザーバから前記フィードリザーバへ前記液体を戻し、
前記液供給動作によって供給された前記第2液体を、前記バイパス循環によって前記フィードリザーバと前記リターンリザーバとの間で循環させつつ、前記フィードリザーバと前記リターンリザーバに前記第2液体を充填する、印刷装置における液体循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルから液体を吐出する吐出ヘッドに液体を循環的に供給する経路において液体の置換を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式により吐出ヘッドのノズルからインク(液体)を吐出することで印刷を行う印刷装置が知られている。また、特許文献1に記載の印刷装置は、吐出ヘッドにインクを供給する供給タンクと、吐出ヘッドからインクを回収する回収タンクとを備え、供給タンクから吐出ヘッドを介して回収タンクに流入したインクを供給タンクに戻すことで供給タンクと回収タンクとの間でインクを循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-101516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷時には、上記の循環経路で液体を循環させることで、吐出ヘッドに順次液体を供給しつつ吐出ヘッドのノズルから液体を吐出できる。一方、印刷以外にメンテナンスなどを行う際には、上記の循環経路によってフィードリザーバ(供給タンク)とリターンリザーバ(回収タンク)との間で液体を循環させることが必ずしも適当ではなかった。なぜなら、液体を循環し続けることで液体に加わる負荷(例えばポンプによる負荷)によって、液体から微小な異物が徐々に発生する場合がある。そのため、上記の循環経路で液体を循環させると、異物が吐出ヘッドに混入する場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出ヘッドへの異物の混入を抑制しつつ、フィードリザーバとリターンリザーバとの間で液体を循環させることを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、フィードリザーバと、フィードリザーバからフィード経路を介して供給された液体をノズルから吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドからリターン経路を介して液体を回収するリターンリザーバと、吐出ヘッドをバイパスしてフィードリザーバからリターンリザーバへ液体を送るバイパス経路と、フィードリザーバからリターンリザーバへ向けて液体を送る第1送液動作を実行する送液部と、バイパス経路を閉じつつフィード経路およびリターン経路を開いた状態で送液部に第1送液動作を実行させることで、フィードリザーバから吐出ヘッドに流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻す通常循環と、フィード経路およびリターン経路を閉じつつバイパス経路を開いた状態で送液部に第1送液動作を実行させることで、フィードリザーバからバイパス経路に流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻すバイパス循環とを選択的に実行する制御部と、リターンリザーバからフィードリザーバに液体を送る共通経路と、液体の一の種類に属する第1液体をフィードリザーバおよびリターンリザーバから排出する排液動作を実行する排液部と、一の種類と異なる液体の他の種類に属する第2液体を、リターンリザーバ、共通経路およびフィードリザーバのいずれかに供給する液供給動作を排液動作の後に実行する液体供給部とを備え、通常循環およびバイパス循環の両方において、共通経路を介してリターンリザーバからフィードリザーバへ液体が戻され、制御部は、液供給動作によって供給された第2液体を、バイパス循環によってフィードリザーバとリターンリザーバとの間で循環させつつ、フィードリザーバとリターンリザーバに第2液体を充填するリザーバ充填処理を実行する
【0007】
本発明に係る印刷装置における液体循環方法は、液体を吐出する吐出ヘッドにフィードリザーバからフィード経路を介して液体を供給するとともに、吐出ヘッドからリターン経路を介して液体をリターンリザーバに回収する印刷装置における液体循環方法であって、吐出ヘッドをバイパスしてフィードリザーバからリターンリザーバへ液体を送るバイパス経路を閉じつつフィード経路およびリターン経路を開いた状態で、フィードリザーバから吐出ヘッドに流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻す通常循環を実行する工程と、フィード経路およびリターン経路を閉じつつバイパス経路を開いた状態で、フィードリザーバからバイパス経路に流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻すバイパス循環を実行する工程と、液体の一の種類に属する第1液体をフィードリザーバおよびリターンリザーバから排出する排液動作を実行する工程と、一の種類と異なる液体の他の種類に属する第2液体を、リターンリザーバからフィードリザーバに液体を送るときに介される共通経路、リターンリザーバおよびフィードリザーバのいずれかに供給する液供給動作を排液動作の後に実行する工程とを備え、通常循環を実行する工程と、バイパス循環を実行する工程の両方の工程では、共通経路を介してリターンリザーバからフィードリザーバへ液体を戻し、液供給動作によって供給された第2液体を、バイパス循環によってフィードリザーバとリターンリザーバとの間で循環させつつ、フィードリザーバとリターンリザーバに第2液体を充填する
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷装置における液体循環方法)では、通常循環を実行することで、フィードリザーバから吐出ヘッドに流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻すことができる。したがって、通常の印刷時には、通常循環によって循環される液体を吐出ヘッドのノズルから吐出することができる。一方、バイパス循環を行うことで、フィードリザーバからバイパス経路に流入した液体を、リターンリザーバを経由してフィードリザーバに戻すことができる。このバイパス経路は、吐出ヘッドをバイパスするため、バイパス循環において液体は吐出ヘッドを経由しない。その結果、各リザーバから吐出ヘッドへの異物の混入を抑制しつつ、フィードリザーバとリターンリザーバとの間で液体を循環させることができる。
【0009】
また、リターンリザーバからフィードリザーバに液体を送る共通経路をさらに備え、通常循環およびバイパス循環の両方において、共通経路を介してリターンリザーバからフィードリザーバへ液体が戻されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、各循環において、共通経路を介してリターンリザーバからフィードリザーバに液体を戻すことができる。
【0010】
また、液体の一の種類に属する第1液体をフィードリザーバおよびリターンリザーバから排出する排液動作を実行する排液部と、一の種類と異なる液体の他の種類に属する第2液体を、リターンタンク、共通経路およびフィードタンクのいずれかに供給する液供給動作を排液動作の後に実行する液体供給部とをさらに備え、制御部は、液供給動作によって供給された第2液体を、バイパス循環によってフィードリザーバとリターンリザーバとの間で循環させつつ、フィードリザーバとリターンリザーバに第2液体を充填するリザーバ充填処理を実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成は、第1液体から第2液体への液体の変更を実行するのに好適である。特に、各リザーバから第1液体の排出後に、バイパス循環によって第2液体を各リザーバ間で循環させているため、排出しきれずにリザーバに残留した第1液体を第2液体に拡散させることができる。したがって、以後の第2液体の排出に伴って第1液体を速やかに排出でき、第1液体がリザーバに長期に残留し続けるのを防止できる。
【0011】
また、送液部は、フィードリザーバからフィード経路を介して吐出ヘッドに第2液体を供給するとともに、リターンリザーバからリターン経路を介して吐出ヘッドに第2液体を供給する第2送液動作を実行可能であり、制御部は、リザーバ充填処理の後に、送液部に第2送液動作を実行させることで、吐出ヘッドに残留する第1液体をノズルから排出させつつ吐出ヘッドに第2液体を充填するヘッド充填処理を実行するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、吐出ヘッドに充填される液体を第1液体から第2液体に置換することができる。
【0012】
また、ヘッド充填処理では、第1液体に続いて第2液体をノズルから排出させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第2液体に拡散された第1液体を第2液体とともに速やかに排出することができる。
【0013】
また、制御部は、ヘッド充填処理の後に、通常循環によってフィードリザーバとリターンリザーバとの間で第2液体を循環させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、排出しきれずに吐出ヘッドに残留した第1液体を第2液体に拡散させることができる。したがって、以後の第2液体の排出に伴って第1液体を速やかに排出でき、第1液体が吐出ヘッドに長期に残留し続けるのを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、各リザーバから吐出ヘッドへの異物の混入を抑制しつつ、フィードリザーバとリターンリザーバとの間で液体を循環させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムを模式的に示す正面図。
図2図1の印刷システムが備える前段印刷装置を模式的に示す正面図。
図3図1の印刷システムが備える後段印刷装置を模式的に示す正面図。
図4】吐出ヘッドの構成を模式的に示す図。
図5図4の吐出ヘッドに液体を供給する液体供給装置の構成を模式的に示す図。
図6図5の液体供給装置が備える制御機構を示すブロック図。
図7】液体入換作業の一例を示すフローチャート。
図8図7の液体入換作業の各工程で液体供給装置のコントローラにより設定される内容を示す図。
図9図7の液体入換作業で実行される動作を模式的に示す図。
図10図7の液体入換作業で実行される動作を模式的に示す図。
図11図7の液体入換作業で実行される動作を模式的に示す図。
図12図7の液体入換作業で実行される動作を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムを模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を適宜示す。ここで、X方向およびY方向はそれぞれ水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。図1に示すように、印刷システム1は、互いに同一の高さを有する前段印刷装置2、前段乾燥機4、後段印刷装置6および後段乾燥機8をこの順で配列した構成を具備する。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで印刷媒体Mを搬送しつつ、前段印刷装置2で印刷した印刷媒体Mを前段乾燥機4で乾燥させ、さらに後段印刷装置6で印刷した印刷媒体Mを後段乾燥機8で乾燥させる。ここでは、透明のフィルムである印刷媒体Mに対して水性インクで印刷を行う場合を例示して説明する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面と、表面の反対側の面を裏面と適宜称する。
【0017】
図2図1の印刷システムが備える前段印刷装置を模式的に示す正面図である。前段印刷装置2では、同図の右から左へ向かう搬送方向Amに沿って印刷媒体Mが搬送される。この前段印刷装置2は、繰出ロール11から繰出された印刷媒体Mを搬入する搬入ローラ21と、印刷媒体Mを前段乾燥機4に向けて搬出する搬出ローラ23とを有する。搬入ローラ21および搬出ローラ23は、印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けて、印刷媒体Mを搬送方向Amに駆動する。さらに、前段印刷装置2は、搬送方向Amにおいて搬入ローラ21と搬出ローラ23との間に配置された複数のバックアップローラ25を有する。これらバックアップローラ25のそれぞれは、搬送方向Amに搬送される印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けることで、印刷媒体Mを支持する。
【0018】
複数のバックアップローラ25のうち、搬送方向Amにおいて最上流のバックアップローラ25と最下流のバックアップローラ25との間に、前段印刷経路Paが形成される。最上流および最下流のバックアップローラ25は、互いに同じ高さで印刷媒体Mを支持するとともに、前段印刷経路Paの内側のバックアップローラ25ほどより高い位置で印刷媒体Mを支持する。
【0019】
さらに、前段印刷装置2は、前段印刷経路Paに沿って搬送される印刷媒体Mの上方で搬送方向Amに並んで、印刷媒体Mの表面に対向する複数のプリントバーBを備える。具体的には、隣接する2個のバックアップローラ25の間を進む印刷媒体Mの表面に対してプリントバーBが配置されており、各プリントバーBは、こうして両側が2個のバックアップローラ25によって支持された印刷媒体Mの表面にインクジェット方式でインクを吐出する。ここで示す例では、4色のプロセスカラー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクを吐出する4個のプリントバーBと、2色(オレンジ、バイオレット)の特色インクを吐出する2個のプリントバーBとを含む6個のプリントバーBが設けられている。したがって、前段印刷装置2は、互いに異なる色のカラーインクを吐出する6個のプリントバーBによって、カラー画像を印刷媒体Mの表面に印刷することができる。
【0020】
前段印刷経路Paで画像が印刷された印刷媒体Mは、前段印刷経路Paの最下流のバックアップローラ25と搬出ローラ23との間を斜めに下降して搬出ローラ23に到達する。この搬出ローラ23は、複数のバックアップローラ25の搬送方向Amの下流で印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛ける。そして、搬出ローラ23は、印刷媒体Mを前段乾燥機4に搬出する。なお、搬出ローラ23は、印刷媒体Mの裏面を吸引するサクションローラであり、前段乾燥機4から前段印刷装置2へ印刷媒体Mの振動が伝達するのを抑制して、前段印刷経路Paでの印刷媒体Mの位置を安定させる。その結果、前段乾燥機4での印刷媒体Mの搬送が前段印刷装置2での印刷に影響するのを抑制可能となっている。
【0021】
図1に示すように、前段乾燥機4は、印刷媒体Mの搬送方向AmをZ方向に適宜折り返しながら印刷媒体Mを乾燥する。そして、前段乾燥機4で乾燥された印刷媒体Mは、前段乾燥機4から後段印刷装置6へと搬出される。
【0022】
図3図1の印刷システムが備える後段印刷装置を模式的に示す正面図である。後段印刷装置6は、前段乾燥機4からX方向に搬出された印刷媒体Mを斜め上方に折り曲げるエアターンバー61を有する。このエアターンバー61は、エアの噴射によって印刷媒体Mの表面に対して隙間を設けながら、印刷媒体Mの表面を巻き掛ける。また、後段印刷装置6は、印刷媒体Mを後段乾燥機8に向けて搬出する搬出ローラ63と、エアターンバー61と搬出ローラ63との間に配置された搬送ローラ65とを有する。搬送ローラ65および搬出ローラ63は、印刷媒体Mの裏面を下方から巻き掛けて、印刷媒体Mを搬送方向Amに駆動する。
【0023】
また、後段印刷装置6は、搬送ローラ65と搬出ローラ63との間に2個のバックアップローラ67を有する。2個のバックアップローラ67の間には、後段印刷経路Pcが形成される。さらに、後段印刷装置6は、後段印刷経路Pcに沿って搬送される印刷媒体Mの上方で、印刷媒体Mの表面に対向するプリントバーBを備える。具体的には、2個のバックアップローラ67の間を進む印刷媒体Mの表面に対してプリントバーBが配置されており、プリントバーBは、こうして両側が2個のバックアップローラ67によって支持された印刷媒体Mの表面にインクジェット方式でインクを吐出する。ここで示す例では、プリントバーBは白色インクを吐出する。したがって、後段印刷装置6は、前段印刷装置2で印刷されたカラー画像に対して、印刷媒体Mの表面に白色の背景画像をプリントバーBにより印刷することができる。
【0024】
後段印刷経路Pcで画像が印刷された印刷媒体Mは、後段印刷経路Pcの最下流のバックアップローラ67と搬出ローラ63との間を斜めに上昇して搬出ローラ63に到達する。この搬出ローラ63は、2個のバックアップローラ67の搬送方向Amの下流で印刷媒体Mを下方から巻き掛ける。搬出ローラ63は、こうして後段印刷経路Pcから斜めに上昇してきた印刷媒体Mを巻き掛けることで、印刷媒体MがX方向に移動する経路に沿って印刷媒体Mを後段乾燥機8に搬出する。なお、搬出ローラ63は、印刷媒体Mの裏面を吸引するサクションローラであり、後段乾燥機8から後段印刷装置6へ印刷媒体Mの振動が伝達するのを抑制して、後段印刷経路Pcでの印刷媒体Mの位置を安定させる。その結果、後段乾燥機8での印刷媒体Mの搬送が後段印刷装置6での印刷に影響するのを抑制可能となっている。
【0025】
図1に示すように、後段乾燥機8は、印刷媒体Mの搬送方向AmをX方向に適宜折り返しながら印刷媒体Mを乾燥する。そして、後段乾燥機8で乾燥された印刷媒体Mは、後段乾燥機8から搬出されて、巻取ロール12に巻き取られる。
【0026】
上記のように、前段印刷装置2および後段印刷装置6が備えるプリントバーBは、インクジェット方式で液体(インク)を吐出する。具体的には、プリントバーBの底部では、Y方向に配列された複数のノズルNから印刷媒体Mへ液体を吐出する複数の吐出ヘッドH(図4図5)がY方向に配列されている。
【0027】
図4は吐出ヘッドの構成を模式的に示す図である。図4に示すように、吐出ヘッドHは、ハウジングHaを有し、複数のノズルNがハウジングHaの底部にY方向に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルNにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通する液体供給室Hcとが設けられており、液体供給室Hcから供給された液体LがキャビティHbに貯留される。そして、キャビティHbに設けられた圧電素子がキャビティHbから液体Lを押し出すことで、当該キャビティHbに連通するノズルNから液体Lが吐出される。なお、液体Lを吐出する具体的方法は、圧電素子による方法によらず、液体Lを加熱するサーマル方式でも構わない。また、吐出ヘッドHの上部では、液体供給口Hdと、液体回収口Heとがそれぞれ開口し、液体Lは、液体供給口Hdを介して液体供給室Hcに供給され、液体回収口Heを介して液体供給室Hcから回収される。
【0028】
図5図4の吐出ヘッドに液体を供給する液体供給装置の構成を模式的に示す図であり、図6図5の液体供給装置が備える制御機構を示すブロック図である。図5では、液体供給装置9内に存在する液体Lがドットハッチングで示されている。前段印刷装置2および後段印刷装置6のそれぞれは、各プリントバーBに対して液体供給装置9を備える。ただし、各プリントバーBで液体供給装置9の構成は共通するため、ここでは、1個のプリントバーBに対する液体供給装置9の構成を説明する。
【0029】
液体供給装置9は、液体Lを貯留するフィードリザーバ91fと、フィードリザーバ91fと吐出ヘッドHの液体供給口Hdとを接続するフィード配管92f(フィード経路)とを備える。そして、フィードリザーバ91fからフィード配管92fに供給された液体Lは、液体供給口Hdを介して液体供給室Hcに流入する。さらに、液体供給装置9は、液体Lを貯留するリターンリザーバ91rと、リターンリザーバ91rと吐出ヘッドHの液体回収口Heとを接続するリターン配管92r(リターン経路)とを備える。そして、吐出ヘッドHの液体供給室Hcから液体回収口Heを介してリターン配管92rに流出した液体Lは、リターンリザーバ91rに回収される。
【0030】
このように、液体供給装置9では、フィードリザーバ91fからフィード配管92fを介して吐出ヘッドHに液体Lが供給されるとともに、吐出ヘッドHからリターン配管92rを介してリターンリザーバ91rに液体Lが回収される。つまり、フィードリザーバ91fから吐出ヘッドHを経由してリターンリザーバ91rに到る液体Lの経路が設けられている。これに対して、液体供給装置9は、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間に、吐出ヘッドHと並列に設けられたバイパス連通管93(バイパス経路)を備える。つまり、バイパス連通管93は、吐出ヘッドHをバイパスして(すなわち、吐出ヘッドHを経由せずに)、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとを連通させる配管であり、液体Lはフィードリザーバ91fからリターンリザーバ91rへ向けてバイパス連通管93内を移動する。
【0031】
また、液体供給装置9は、リターンリザーバ91rとフィードリザーバ91fとを接続するリザーバ連通管94(共通経路)を備える。このリザーバ連通管94は、リターンリザーバ91rとフィードリザーバ91fとを連通させる配管であり、液体Lはリターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fへ向けてリザーバ連通管94内を移動する。
【0032】
そして、リザーバ連通管94に対しては、循環ポンプ95、フィルタ96および脱ガス器97が設けられている。循環ポンプ95、フィルタ96および脱ガス器97は、液体Lがリザーバ連通管94内を流れる方向にこの順で並ぶ。循環ポンプ95は、リターンリザーバ91rから流出した液体Lをリザーバ連通管94に沿ってフィードリザーバ91fに送る機能を果たす。フィルタ96は、フィードリザーバ91fに流入する前にリザーバ連通管94内を流れる液体Lから固形物を除去し、脱ガス器97は、フィードリザーバ91fに流入する前にリザーバ連通管94内を流れる液体Lから気体を除去する。
【0033】
また、液体供給装置9は、多量の液体Lを貯留可能なメインリザーバ91mと、メインリザーバ91mとリザーバ連通管94とを接続する液体供給管92mとを備える。具体的には、液体供給管92mは、リザーバ連通管94のうち、リターンリザーバ91rと循環ポンプ95との間と、メインリザーバ91mとを接続する。そして、メインリザーバ91m内に貯留される液体Lが、液体供給管92mを介してリザーバ連通管94内に供給される。
【0034】
さらに、液体供給装置9は、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rそれぞれに付与される圧力を調整する圧力調整機構98を備える。この圧力調整機構98は、フィードリザーバ91fに付与する圧力を調整するフィード側調整部98fと、リターンリザーバ91rに付与する圧力を調整するリターン側調整部98rとを有する。これらフィード側調整部98fおよびリターン側調整部98rは共通する構成を具備し、負圧タンクを負圧ポンプにより減圧することで負圧タンク内に生成した負圧を、それぞれフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rに付与する。
【0035】
また、液体供給装置9は、各種バルブVf、Vr、Vd、Vm、Vb(電磁弁)を備える。フィードバルブVfは、フィード配管92fに対して設けられる。フィードバルブVfが開くと、フィード配管92fを介したフィードリザーバ91fと吐出ヘッドHとの間の液体Lの移動が許容され、フィードバルブVfが閉じると、フィード配管92fを介したフィードリザーバ91fと吐出ヘッドHとの間の液体Lの移動が禁止される。
【0036】
リターンバルブVrは、リターン配管92rに対して設けられる。リターンバルブVrが開くと、リターン配管92rを介したリターンリザーバ91rと吐出ヘッドHとの間の液体の移動が許容され、リターンバルブVrが閉じると、リターン配管92rを介したリターンリザーバ91rと吐出ヘッドHとの間の液体Lの移動が禁止される。
【0037】
ドレインバルブVdは、リターンリザーバ91rに接続されたドレイン管92dに対して設けられる。そして、ドレインバルブVdが開くと、リターンリザーバ91r内の液体Lがドレイン管92dから排出され、ドレインバルブVdが閉じると、リターンリザーバ91rからドレイン管92dを介した液体Lの排出が禁止される。
【0038】
メインバルブVmは、液体供給管92mに対して設けられる。メインバルブVmが開くと、メインリザーバ91mから液体供給管92mを介したリザーバ連通管94への液体Lの移動が許容され、メインバルブVmが閉じると、メインリザーバ91mから液体供給管92mを介したリザーバ連通管94への液体Lの移動が禁止される。
【0039】
バイパスバルブVbは、バイパス連通管93に対して設けられる。バイパスバルブVbが開くと、バイパス連通管93を介したフィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間の液体Lの移動が許容され、バイパスバルブVbが閉じると、バイパス連通管93を介したフィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間の液体Lの移動が禁止される。
【0040】
かかる液体供給装置9は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであるコントローラ99を備える。そして、コントローラ99が、各種バルブVf、Vr、Vd、Vm、Vb、循環ポンプ95および圧力調整機構98を制御することで、液体供給装置9における液体Lの移動を制御する。
【0041】
例えば、図5において、バルブVf、Vr、Vd、Vm、Vbのうち、斜線のハッチングが施されたバルブが閉じられており、ハッチングが施されていないバルブが開いている。つまり、バイパスバルブVbおよびドレインバルブVdが閉じており、フィードバルブVf、リターンバルブVrおよびメインバルブVmが開いている。この状態において、コントローラ99は、破線で示す通常循環経路Coに沿って液体Lを循環させる通常循環を実行することができる。
【0042】
この通常循環では、コントローラ99は、フィードリザーバ91fからリターンリザーバ91rに向けて液体Lを送る第1送液動作を圧力調整機構98に実行させる。この第1送液動作は、フィードリザーバ91fからリターンリザーバ91rに向かう圧力を液体Lに付与する負圧差付与動作である。つまり、圧力調整機構98は、フィード側調整部98fによりフィードリザーバ91f内の圧力Pfを負圧に調整するとともに、リターン側調整部98rによりリターンリザーバ91r内の圧力Prを圧力Pfより低い負圧に調整する負圧差付与動作を、第1送液動作として実行する。これによって、フィードリザーバ91fの圧力Pfとリターンリザーバ91rの圧力Prとの間に負圧差ΔPが生成され、フィードリザーバ91fからリターンリザーバ91rへ向かう圧力が液体Lに加わる。負圧差付与動作の実行中は、コントローラ99は循環ポンプ95を稼動させて、リターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fへ向けて液体Lを循環ポンプ95に排出させることで、リターンリザーバ91rに液体Lが溜まり過ぎるのを防止する。
【0043】
この際、コントローラ99は、バイパスバルブVbを閉じている一方、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrを開いている。したがって、フィードリザーバ91fから吐出ヘッドHを経由してリターンリザーバ91rに到った後に、リターンリザーバ91rからリザーバ連通管94を介してフィードリザーバ91fに戻る通常循環経路Coに沿って液体Lは循環する(通常循環)。そして、吐出ヘッドHは、通常循環経路Coに沿って供給された液体L(インク)をノズルNから吐出して、印刷を実行する。
【0044】
ところで、上記のような液体供給装置9では、液体供給装置9内の液体Lを入れ換える液体入換作業を実行する必要が適宜生じる。例えば、前段印刷装置2あるいは後段印刷装置6といった印刷装置は、インクに代えてインクの溶媒を充填した状態で工場から出荷される場合がある。このような場合、ユーザへの納入後に、液体供給装置9内の液体Lを溶媒からインクに入れ換えるために液体入換作業が実行される。あるいは、印刷に用いるインクの仕様が変わるような場合には、仕様変更前のインクから仕様変更後のインクにインクを入れ換えるために液体入換作業が実行される。
【0045】
図7は液体入換作業の一例を示すフローチャートであり、図8図7の液体入換作業の各工程で液体供給装置のコントローラにより設定される内容を示す図であり、図9図12図7の液体入換作業で実行される動作を模式的に示す図である。図9図12において、バルブVf、Vr、Vd、Vm、Vbのうち、斜線のハッチングが施されたバルブが閉じられており、ハッチングが施されていないバルブが開いている。これらの図に示す液体入換作業は、液体L1から液体L2に液体Lを入れ換える作業であり、液体供給装置9のコントローラ99の制御によって実行される。ここで、液体L1は液体Lの一の種類に属し、液体L2は液体Lの他の種類(一の種類と異なる)に属する。一の例では、液体L1が溶媒であって液体L2がインクであり、他の例では、液体L1の仕様と液体L2の仕様とが異なる。
【0046】
先ずは、図8について説明する。「大気圧開放」のカラムにおいて、マーク「○」は、圧力調整機構98がフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rを大気圧に開放した状態を示し、マーク「×」は、圧力調整機構98がフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rを大気圧に対して閉塞した状態を示す。「負圧差」のカラムにおいて、マーク「○」は、圧力調整機構98が負圧差付与動作を実行することを示し、マーク「×」は、圧力調整機構98が負圧差付与動作を実行しないことを示す。「メインバルブ」のカラムにおいて、マーク「○」は、メインバルブVmを開くことを示し、マーク「×」は、メインバルブVmを閉じることを示す。ヘッドバルブのカラムにおいて、マーク「○」は、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrを開くことを示し、マーク「×」は、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrを閉じることを示す。「パージ」のカラムにおいて、マーク「○」は、パージを実行することを示し、マーク「×」は、パージを実行しないことを示す。ここで、パージとは、吐出ヘッドHのノズルNから液体Lを強制的に排出する動作である。
【0047】
液体入換作業の開始時には、液体供給装置9は図5に示す状態にあり、液体供給装置9の各リザーバ91f、91rおよび吐出ヘッドHには液体L1(薄いドットハッチングで示される液体L)が充填されている。また、コントローラ99は、フィードバルブVf、リターンバルブVrおよびメインバルブVmを開きつつ、バイパスバルブVbおよびドレインバルブVdを閉じた状態で圧力調整機構98に負圧差付与動作を実行させることで、通常循環経路Coに沿って液体L1を循環させている(通常循環)。ただし、図5の状態と異なり、メインリザーバ91m内には、次の液体L2(図9図12で濃いドットハッチングで示される液体L)が準備されている。
【0048】
ステップS101では、コントローラ99は、圧力調整機構98に負圧差付与動作を停止させる。これによって、フィードリザーバ91fの圧力Pfと、リターンリザーバ91rの圧力Prとの間の負圧差ΔPが消失し、通常循環経路Coに沿った液体L1の循環(通常循環)が停止する。また、コントローラ99は、負圧差付与動作の停止に伴って、循環ポンプ95も停止させる。そして、コントローラ99は、フィードバルブVfおよびリターンバルブVr(ヘッドバルブ)を閉じ(ステップS102)、バイパスバルブVbを開ける(ステップS103)。さらに、コントローラ99は、メインバルブVmを閉じるとともに、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rを大気圧に開放する(ステップS104)。この状態から、コントローラ99は、ドレインバルブVdを開く(ステップS105)。
【0049】
このように、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rを大気圧に開放した状態で、バイパスバルブVbおよびドレインバルブVdが開く。これによって、リターンリザーバ91rからドレインバルブVdを介して液体L1が排出されるとともに、フィードリザーバ91fからバイパスバルブVbを介してリターンリザーバ91rに流入した液体L1がドレイン管92dから排出される(ステップS105)。こうして、図9に示すように、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rから液体L1が排出される(排液動作)。なお、液体L1を排出する排液動作中は、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrは閉じられているため、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rから吐出ヘッドHへの液体L1の流入は禁止されている。
【0050】
排液動作が完了すると、コントローラ99は、メインバルブVmを開いてから(ステップS106)、圧力調整機構98に負圧差付与動作を実行させる(ステップS107)。この圧力差付与動作の開始に伴って、循環ポンプ95の稼動が開始され、メインリザーバ91mからリザーバ連通管94に供給された液体L2は、循環ポンプ95によってフィードリザーバ91fに供給される。また、圧力差付与動作の開始によって、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rの間には負圧差ΔPが発生する。この際、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrが閉じており、バイパスバルブVbが開いているため、フィードリザーバ91fに供給された液体L2は、バイパス連通管93を介して、リターンリザーバ91rに流入する。これによって、図10に示すように、ステップS107では、フィードリザーバ91fからバイパス連通管93を経由してリターンリザーバ91rに到った後に、リターンリザーバ91rからリザーバ連通管94を介してフィードリザーバ91fに戻るバイパス循環経路Cb(破線)に沿って液体L2は循環する(バイパス循環)。
【0051】
このバイパス循環によって、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rに液体L2が充填される。なお、バイパス循環の実行中は、フィード配管92fおよびリターン配管92rは閉じられているため、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rから吐出ヘッドHへの液体L2の流入は禁止されている。
【0052】
コントローラ99は、所定時間だけバイパス循環を継続してから(ステップS108)、圧力調整機構98に負圧差付与動作を停止させる(ステップS109)。これによって、フィードリザーバ91fの圧力Pfと、リターンリザーバ91rの圧力Prとの間の負圧差ΔPが消失し、バイパス循環経路Cbに沿った液体L2の循環(バイパス循環)が停止する。また、コントローラ99は、負圧差付与動作の停止に伴って、循環ポンプ95も停止させる。そして、コントローラ99は、フィードバルブVfおよびリターンバルブVr(ヘッドバルブ)を開けるとともに、バイパスバルブVbを閉じる(ステップS110)。
【0053】
この状態で、コントローラ99は、圧力調整機構98にパージを実行させる(ステップS111)。つまり、圧力調整機構98は、フィード側調整部98fによってフィードリザーバ91fに正圧を付与するとともに、リターン側調整部98rによってリターンリザーバ91rに正圧を付与する正圧付与動作を実行する。この際、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rには、同じ正圧が付与される。この正圧付与動作によって、フィードリザーバ91fからフィード配管92fを介して吐出ヘッドHの液体供給室Hcに液体L2を供給するとともに、リターンリザーバ91rからリターン配管92rを介して吐出ヘッドHの液体供給室Hcに液体L2を供給する第2送液動作が実行される。なお、第2送液動作の実行に伴って、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rから流出した液体L2は、メインリザーバ91mからフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rのそれぞれに補充される。
【0054】
この第2送液動作によって、吐出ヘッドHの液体供給室Hcに流入した液体L2は、液体供給室Hc内の液体L1を追い出して、ノズルNから流出させる(パージ)。これによって、図11に示すように、吐出ヘッドHの液体供給室Hcから液体L1が排出されて、吐出ヘッドHの液体供給室Hcに液体L2が充填される。さらに、この第2送液動作は、液体L1がノズルNから流出したのに続いて、液体L2がノズルNから流出するまで継続される。また、ノズルNから液体L1、L2が流出した吐出ヘッドHに対してワイプが実行される。ワイプは、ワイパーによって吐出ヘッドHから液体L1、L2を拭き取る動作である。
【0055】
ステップS112では、コントローラ99は、圧力調整機構98に正圧付与動作を停止させるとともに、負圧差付与動作を実行させる。この際、フィードバルブVfおよびリターンバルブVrが開いているとともに、バイパスバルブVbが閉じているため、液体L2に対する通常循環が実行され、液体L2は通常循環経路Coに沿って循環する(図12)。そして、コントローラ99は、所定時間だけ通常循環を継続してから(ステップS113)、液体入換作業を終了する。
【0056】
以上に説明した実施形態では、通常循環経路Coに沿ってインク(液体L)を循環させる通常循環(図12、ステップS112)を実行することで、フィードリザーバ91fから吐出ヘッドHに流入したインクを、リターンリザーバ91rを経由してフィードリザーバ91fに戻すことができる。したがって、通常の印刷時には、通常循環によって通常循環経路Coに沿って循環されるインクを吐出ヘッドHのノズルNから吐出することができる。一方、バイパス循環経路Cbに沿って液体Lを循環させるバイパス循環(図10、ステップS107)を行うことで、フィードリザーバ91fからバイパス連通管93に流入した液体Lを、リターンリザーバ91rを経由してフィードリザーバ91fに戻すことができる。このバイパス連通管93は、吐出ヘッドHをバイパスするため、バイパス循環において液体Lは吐出ヘッドHを経由しない。その結果、各リザーバ91f、91rから吐出ヘッドHへの異物の混入を抑制しつつ、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間で液体Lを循環させることができる。なお、異物には、例えばインクの循環時にポンプからインクに加わる負荷によってインクから徐々に発生する微小な凝集物が含まれる。
【0057】
また、液体供給装置9は、リターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fに液体Lを送るリザーバ連通管94(共通経路)が、通常循環経路Coとバイパス循環経路Cbとに共通して具備する。そして、通常循環およびバイパス循環の両方において、リザーバ連通管94を介してリターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fへ液体Lが戻される。かかる構成では、各循環において、リザーバ連通管94を介してリターンリザーバ91rからフィードリザーバ91fに液体Lを戻すことができる。
【0058】
また、ドレイン管92dが液体L1をフィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rから排出する排液動作(図9、ステップS103~S105)を実行する一方、メインリザーバ91mが液体L2をリザーバ連通管94に供給する液供給動作(ステップS106)を、排液動作の後に実行する。そして、ステップS107において、コントローラ99は、液供給動作によって供給された液体L2を、バイパス循環経路Cbに沿ったバイパス循環によってフィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間で循環させつつ、フィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rに液体L2を充填する(リザーバ充填処理)。かかる構成は、液体L1から液体L2への液体Lの変更を実行するのに好適である。特に、各リザーバ91f、91rから液体L1の排出後に、バイパス循環経路Cbに沿ったバイパス循環によって液体L2を各リザーバ91f、91r間で循環させているため、排出しきれずにリザーバ91f、91rに残留した液体L1を液体L2に拡散させることができる。したがって、以後の液体L2の排出(例えば、ステップS111)に伴って液体L1を速やかに排出でき、液体L1がリザーバ91f、91rに長期に残留し続けるのを防止できる。
【0059】
また、圧力調整機構98(送液部)は、フィードリザーバ91fからフィード配管92fを介して吐出ヘッドHに液体L2を供給するとともに、リターンリザーバ91rからリターン配管92rを介して吐出ヘッドHに液体L2を供給する第2送液動作(図11、ステップS111)を実行する。そして、コントローラ99は、リザーバ充填処理(ステップS107)の後に、圧力調整機構98に第2送液動作を実行させることで、吐出ヘッドHに残留する液体L1を液体L2によってノズルNから排出させつつ吐出ヘッドHに液体L2を充填するヘッド充填処理(図11、ステップS111)を実行する。かかる構成では、吐出ヘッドHに充填される液体Lを液体L1から液体L2に置換することができる。
【0060】
また、ヘッド充填処理(ステップS111)では、液体L1に続いて液体L2をノズルNから排出させる。かかる構成では、液体L2に拡散された液体L1を液体L2とともに速やかに排出することができる。
【0061】
また、コントローラ99は、ヘッド充填処理(ステップS111)の後に、通常循環経路Coに沿った通常循環によってフィードリザーバ91fとリターンリザーバ91rとの間で液体L2を循環させる(図12、ステップS112)。かかる構成では、排出しきれずに吐出ヘッドHに残留した液体L1を液体L2に拡散させることができる。したがって、以後の液体L2の排出(例えば、印刷の開始に伴って後に実行するパージなど)に伴って液体L1を速やかに排出でき、液体L1が吐出ヘッドHに長期に残留し続けるのを防止できる。
【0062】
以上に説明した実施形態では、前段印刷装置2あるいは後段印刷装置6が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、フィードリザーバ91fが本発明の「フィードリザーバ」の一例に相当し、メインリザーバ91mが本発明の「液体供給部」の一例に相当し、リターンリザーバ91rが本発明の「リターンリザーバ」の一例に相当し、ドレイン管92dが本発明の「排液部」の一例に相当し、フィード配管92fが本発明の「フィード経路」の一例に相当し、リターン配管92rが本発明の「リターン経路」の一例に相当し、バイパス連通管93が本発明の「バイパス経路」の一例に相当し、リザーバ連通管94が本発明の「共通経路」の一例に相当し、圧力調整機構98が本発明の「送液部」の一例に相当し、コントローラ99が本発明の「制御部」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、液体L、L1、L2が本発明の「液体」の一例に相当し、液体L1が本発明の「第1液体」の一例に相当し、液体L2が本発明の「第2液体」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「ノズル」の一例に相当する。
【0063】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えばリザーバ91f、91rからの排液は、フィードリザーバ91fおよびリターンリザーバ91rのそれぞれにドレイン管92dを設けることで、それぞれ個別に行ってもよい。
【0064】
また、メインリザーバ91mからの液体Lの補給先は、リザーバ連通管94に限られない。したがって、メインリザーバ91mから液体供給管92mを介してフィードリザーバ91fに液体Lを補給してもよいし、メインリザーバ91mから液体供給管92mを介してリターンリザーバ91rに液体Lを補給してもよい。
【0065】
また、吐出ヘッドHとフィードリザーバ91fとを連通・接続するフィード配管92fにフィルタを設けてもよい。このような構成では、吐出ヘッドHへの異物の混入をさらに抑制できるとともに、フィルタへの異物の付着による目詰まりを抑制してフィルタの交換回数を抑えることができる。
【0066】
また、前段印刷装置2で印刷媒体Mに吐出するカラーインクの種類は、上記の6色に限られない。
【0067】
また、搬送方向Amにおいて前段印刷装置2の上流側に、白色インクを吐出する印刷装置を設けて、白色インクを印刷媒体Mに吐出してから、カラーインクを印刷媒体Mに吐出するように構成しても良い。
【0068】
また、白色インクの印刷媒体Mへの印刷は、フレキソ印刷あるいはグラビア印刷等のアナログ印刷により実行しても良い。
【0069】
また、前段印刷装置2は、印刷媒体Mをプラテン上で停止させて、プリントバーBを直交方向Arに操作させつつノズルNからカラーインクを吐出するものであっても良い。
【0070】
また、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でも良い。
【0071】
また、インクの種類は水性インクに限られず、ラテックスインク、溶剤インクあるいはUV(Ultra Violet)インクでも良い。UVインクを用いる場合には、前段乾燥機4および後段乾燥機8に代えて、印刷媒体M上のUVインクに紫外線を照射する光照射装置を配置すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、印刷技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
2…前段印刷装置(印刷装置)
6…後段印刷装置(印刷装置)
91f…フィードリザーバ(フィードリザーバ)
91m…メインリザーバ(液体供給部)
91r…リターンリザーバ(リターンリザーバ)
92d…ドレイン管(排液部)
92f…フィード配管(フィード経路)
92r…リターン配管(リターン経路)
93…バイパス連通管(バイパス経路)
94…リザーバ連通管(共通経路)
98…圧力調整機構(送液部)
99…コントローラ(制御部)
H…吐出ヘッド
L…液体
L1…液体(第1液体)
L2…液体(第2液体)
N…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12