(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ヒーターホースへの通電を制御するための制御装置及びそれを備えた現場吹付け型発泡機
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20230815BHJP
B29C 39/38 20060101ALI20230815BHJP
B29C 39/44 20060101ALI20230815BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C39/38
B29C39/44
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2019194226
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530071(JP,A)
【文献】実開昭59-130484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29C 39/38
B29C 39/44
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場吹付け型発泡機に取り付けられたヒーターホースへの通電を制御するための制御装置にして、
前記ヒーターホースの温度センサからの情報に基づいた自動制御により、該ヒーターホースへの通電を制御する自動制御部と、前記自動制御を適用することなく前記ヒーターホースへの通電を制御する非自動制御部とを備え、
前記自動制御部による制御と前記非自動制御部による制御とが手動操作にて切替え可能とされている、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記非自動制御部が、操作者による手動操作に従って前記ヒーターホースへの通電を制御する手動制御部を有する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記非自動制御部が、予め記憶している通電パターンに基づいて前記ヒーターホースへの通電を制御する非常時制御部を有する請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
遠隔監視操作装置による、双方向通信を利用した遠隔操作が可能である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の制御装置と、かかる制御装置にて制御されるヒーターホースとを備える現場吹付け型発泡機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターホースへの通電を制御するための制御装置及びそれを備えた現場吹付け型発泡機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築現場等の施工現場において、ポリオールとポリイソシアネートとの液状混合物を被着体に対して吹き付け、被着体表面にて発泡、硬化させることによりポリウレタンフォームを製造する発泡機、所謂、現場吹付け型発泡機(以下、単に発泡機ともいう)が、広く使用されている。
【0003】
そのような現場吹付け型発泡機を用いてポリウレタンフォームを製造する、換言すれば、建築現場等においてポリウレタンフォームを施工する際には、一般に、発泡機で加熱された二種の液状原料(ポリオール、ポリイソシアネート)を、ヒーターホースを通じてスプレーガンに圧送し、かかるスプレーガンにおいて二種の液状原料が混合され、混合された液状原料が被着体に対して被着体に吹き付けられることにより、所定のポリウレタンフォームが被着体表面に形成されることとなる。
【0004】
ここで、従来の現場吹付け型発泡機の多くは、液状材料の管路や液状材料を圧送するためのポンプ等に設置された各種センサ、圧力計等からのデータを基に、二種の液状原料を圧送する際の各種条件を制御装置にて自動制御するように構成されており、また、ヒーターホースへの通電も、ヒーターホースに取り付けられた温度センサからの情報に基づいて、発泡機を制御するものと同一又は異なる制御装置にて自動制御するように構成されていることが、一般的である。
【0005】
また、上述のような制御装置にて自動制御するように構成されている現場吹付け型発泡機やヒーターホースの中には、例えば特許文献1(特開2014-162146号公報)に開示されている異常予告装置の如き、異常を検知した際に発泡機の作動(液状材料の圧送)やヒーターホースへの通電を強制的に終了させる機構を備えているものもある。
【0006】
しかしながら、自動制御のみによって制御するよう構成されている現場吹付け型発泡機やヒーターホースにあっては、ひとたび不具合が生じると、かかる不具合の原因を解消するまで発泡機の作動やヒーターホースへの通電を停止する必要があり、不具合解消までポリウレタンフォームの吹付け施工を中断せざるを得ないところから、工期の遅れを招く恐れがある。
【0007】
より具体的には、現場吹付け型発泡機とスプレーガンとの間に介在せしめられているヒーターホースにあっては、現場での吹付け施工の際に、かなりの頻度で曲げられ、引っ張られるところから、ヒーターホースに取り付けられた温度センサ自体やその配線にも大きな負荷がかかる。そのようなヒーターホースにおいて、温度センサの信号(情報)を制御装置に伝達する配線が切断等すると、自動制御のみを担う制御装置にて制御されているヒーターホースの場合、温度センサからの信号(情報)が伝達されないことから、ヒーターホースへの通電を停止せざるを得ず、同時に発泡機の作動(液状原料の圧送)も停止する必要がある。この場合、温度センサ及びその配線を確認し、必要に応じて部品交換等を行い、温度センサからの信号(情報)が制御装置に到達することを確認するまで、ポリウレタンフォームの吹付け施工を中断せざるを得ないのであり、作業の中断が長引けば工期の遅れを招来するという問題を、内在しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、現場吹付け型発泡機に取り付けられたヒーターホースへの通電を制御するための制御装置にして、ヒーターホースの温度センサが破損したり、その配線が切断等した場合でも、吹付け施工の中断時間を最小限に止めることが可能な装置を提供することにある。また、本発明は、そのような制御装置を備えた現場吹付け型発泡機を提供することも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載から把握され得る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0011】
(1) 現場吹付け型発泡機に取り付けられたヒーターホースへの通電を制御するための 制御装置にして、
前記ヒーターホースの温度センサからの情報に基づいた自動制御により、該ヒー ターホースへの通電を制御する自動制御部と、前記自動制御を適用することなく前 記ヒーターホースへの通電を制御する非自動制御部とを備え、
前記自動制御部による制御と前記非自動制御部による制御とが手動操作にて切替 え可能とされている、
ことを特徴とする制御装置。
(2) 前記非自動制御部が、操作者による手動操作に従って前記ヒーターホースへの通 電を制御する手動制御部を有する前記態様(1)に記載の制御装置。
(3) 前記非自動制御部が、予め記憶している通電パターンに基づいて前記ヒーターホ ースへの通電を制御する非常時制御部を有する前記態様(1)又は前記態様(2) に記載の制御装置。
(4) 遠隔監視操作装置による、双方向通信を利用した遠隔操作が可能である前記態様 (1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の制御装置。
(5) 前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の制御装置と、かかる制 御装置にて制御されるヒーターホースとを備える現場吹付け型発泡機。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に従う制御装置においては、ヒーターホースへの通電を制御する制御部として、1)ヒーターホースの温度センサからの情報に基づいた自動制御に従い、ヒーターホースへの通電を制御する自動制御部と、2)自動制御を適用することなくヒーターホースへの通電を制御する非自動制御部とを備えており、それら自動制御部による制御と非自動制御部による制御とが手動操作にて切替え可能とされて、構成されているのである。このような構成を有していることにより、例えば、本発明の制御装置にてヒーターホースへの通電を制御する機構を有する現場吹付け型発泡機にあっては、自動制御部によってヒーターホースへの通電を制御しながら吹付け施工を実施している際に、温度センサの破損等により自動制御が不可能となった場合でも、手動操作により、直ちに非自動制御部による制御に切り替えることが可能であり、このようにヒーターホースへの通電の制御を切り替えることによって、吹付け施工の中断時間を最小限に止めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従う制御装置を備えた一の現場吹付け型発泡機の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明に従う一の制御装置の構成を示す説明図である。
【
図4】本発明に従う制御装置を備えた他の一の現場吹付け型発泡機の構成を示す説明図である。
【
図5】本発明に従う他の一の制御装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜、参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に従う制御装置と、一方の端部にスプレーガンが取り付けられたヒーターホースとを備える現場吹付け型発泡機(以下、単に発泡機ともいう)の構成の一例が、概略的に示されている説明図である。
【0016】
図1に示されているように、現場吹付け型発泡機10の構成は、液体のポリオールを供給する第一の供給系統12と、液体のポリイソシアネートを供給する第二の供給系統14とに大別される。
【0017】
第一の供給系統12は、その上流端にポリオールを収容するタンク16が配設されている一方、下流端には接続口18が取り付けられてなる第一の管路20に、タンク16よりポリオールを汲み上げる為の第一の汲上ポンプ22と、第一の汲上ポンプ22が汲み上げたポリオールを接続口18に向けて圧送する第一のポンプ24と、第一のポンプ24の吐出圧力を測定する第一の圧力計26と、加熱装置28とが接続されて、構成されている。
【0018】
一方、第二の供給系統14は、その上流端にポリイソシアネートを収容するタンク30が配設されている一方、下流端には接続口32が取り付けられてなる第二の管路34に、タンク30よりポリイソシアネートを汲み上げる為の第二の汲上ポンプ36と、第二の汲上ポンプ36が汲み上げたポリイソシアネートを接続口32に向けて圧送する第二のポンプ38と、第二のポンプ38の吐出圧力を測定する第一の圧力計40と、加熱装置42とが接続されて、構成されている。
【0019】
また、第一の供給系統12の接続口18及び第二の供給系統14の接続口32の各々には、通電によって発熱し、内部を流れる流体を加熱するための発熱部を備えたヒーターホース44a、44bが接続されている。更に、それらヒーターホース44a、44bにおける長手方向の先端側には、ヒーターホース44aを通じて供給されるポリオールとヒーターホース44bを通じて供給されるポリイソシアネートとを混合、撹拌させて噴出可能なスプレーガン46が取り付けられている。なお、第一の供給系統12の接続口18及び第二の供給系統14の接続口32は、各々、図示しない電源と電気的に接続されている一方、ヒーターホース44a、44bはスプレーガン46の近傍にて電気的に接続されており、ヒーターホース44a、44bは、図示しない電源より電力が供給されることによって加熱可能とされている。また、ヒーターホース44b上には温度センサ48が配設されており、かかる温度センサ48にて測定される温度データは、電気ケーブル(図示せず)を通じて、後述する制御装置50に送信されるように構成されている。
【0020】
ここで、第一の汲上ポンプ22及び第二の汲上ポンプ38の各々は、複動型のプランジャポンプであり、外部のコンプレッサ(図示せず)からの圧縮空気によって作動するエアーモータ(図示せず)によって駆動するものである。エアーモータの各々は、供給される圧縮空気の圧力を調節するための電動のレギュレータ(図示せず)を備えており、それらレギュレータの各々と制御装置50とは電気ケーブル(図示せず)で接続されている。
【0021】
また、ポリオールを圧送する第一のポンプ24及びポリイソシアネートを圧送する第二のポンプ38の各々にあっても、複動型のプランジャポンプであり、それぞれ油圧モータ(図示せず)によって駆動するものである。油圧モータの各々は、油圧ポンプ(図示せず)から供給される油圧油の圧力を調節する電動のレギュレータ(図示せず)を備えており、それらレギュレータの各々と制御装置50とは電気ケーブル(図示せず)で接続されている。
【0022】
さらに、第一の圧力計26及び第二の圧力計40は、制御装置50と電気ケーブル(図示せず)にて接続されており、測定データ(管路内を流れる流体の圧力)を制御装置50に随時、送信可能とされている。
【0023】
また、
図1には図示されていないが、第一の供給系統12には加熱装置28内のポリオールの温度の測定する温度計が、第二の供給系統14には加熱装置42内のポリイソシアネートの温度を測定する温度計が、各々、配設されている。それら温度計は、制御装置50と電気ケーブル(図示せず)にて接続されており、温度計における測定データが制御装置50に随時、送信可能とされている。
【0024】
そして、本実施形態において、現場吹付け型発泡機10の各機構及びヒーターホース44a、44bは、何れも、制御装置50にて制御されるように構成されているのである。制御装置50の構成は、
図2に概略的に示されているところ、制御装置50は、発泡機制御部52とヒーターホース制御部54とを備えている。
【0025】
制御装置50における発泡機制御部52は、上述した第一の供給系統12及び第二の供給系統14における各機構、具体的には、第一の供給系統12における第一の汲上ポンプ22、第一のポンプ24、第一の圧力計26、温度計及び加熱装置28と配線接続されており、また、第二の供給系統14における第二の汲上ポンプ36、第二のポンプ38、第二の圧力計40、温度計及び加熱装置42と配線接続されている。そのような構成により、制御装置50は、複数の圧力計及び温度計からの測定データを随時、受信しながら、複数のポンプの停止及び起動、並びに圧力の制御、各加熱装置のヒーターの電源のオンオフ及び温度を制御することが、可能となっている。
【0026】
一方、制御装置50におけるヒーターホース制御部54は、ヒーターホース44b上に配設された温度センサ48と配線接続されており、ヒーターホース44a、44bに電力を供給する電源(図示せず)にも配線接続されている。ヒーターホース制御部54は、自動制御部56と非自動制御部58とを備えている。
【0027】
ヒーターホース制御部54における自動制御部56は、温度センサ48からの測定データを随時、受信しながら、図示しない電源のオンオフや電圧等を制御することにより、ヒーターホース44a、44bへの通電を制御し、以て、ヒーターホース44a内を流れるポリオール及びヒーターホース44b内を流れるポリイソシアネートの温度を、予め設定した目標値又は目標範囲内に調整することが可能とされている。自動制御部56には、温度センサ48からの測定データの受信が不可能となった場合や、異常な数値を示す測定データを受信した場合等の異常を検知した際に、制御装置50の操作者及び/又はスプレーガン46を手にしている施工者に対して異常を知らせるための警告手段として、警告音発生手段(図示せず)が設けられている。かかる警告音発生手段は、自動制御部56が異常を検知して警告音の発生を開始した場合、制御装置50及び発泡機10を停止するまで警告音が鳴り続けるように構成されている。なお、本発明においては、自動制御部に設けられる警告手段は警告音発生手段に限定されるものではなく、例えば、異常を検知した際に警告メッセージや警告灯を表示する手段(以下、警告表示手段と総称する。)等の従来より公知の警告手段であれば、本発明の目的を阻害しないものである限りにおいて採用することが可能である。また、警告手段を、後述する遠隔監視操作装置に設けることも可能であり、遠隔監視操作装置に設けられる警告手段としては、上述した警告音発生手段や警告表示手段に加えて、異常を検知した際に振動するバイブレーション機構を備えた手段等を、例示することが出来る。
【0028】
その一方、ヒーターホース制御部54における非自動制御部58は、温度センサ48からの測定データを使用することなく、ヒーターホース44a、44bに電力を供給する電源(図示せず)のオンオフや電圧等を制御することにより、ヒーターホース44a、44bへの通電を制御することが可能とされている。なお、非自動制御部58によるヒーターホース44a、44bへの通電の制御は、電源のオンオフや電圧等を設定された時間で切り替えること等によって実施される。
【0029】
ここで、制御装置50は、自動制御部56による制御と非自動制御部58による制御とを切り替える為の、手動操作による切替機構(図示せず)を備えている。即ち、発泡機の作動開始から自動制御部56にて異常を検知するまでは、自動制御部56による制御の下に発泡機10を作動させ、自動制御部56にて異常を検知した場合には、直ちに切替機構によって非自動制御部58による制御に切り替えることにより、発泡機10を再始動することが可能ならしめられているのである。なお、本発明において、制御装置50に設けられる手動操作による切替機構としては、従来より公知の構成を有するものであれば、何れも採用可能である。また、本発明における手動操作とは、スイッチ、レバー、ツマミ等の操作や、タッチパネルやキーボード等への入力等を意味するものである。
【0030】
制御装置50における非自動制御部58は、手動制御部60及び非常時制御部62を有しており、それら手動制御部60による制御と非常時制御部62による制御とは、手動操作による切替機構(図示せず)によって切替え可能とされている。なお、手動制御部60による制御と非常時制御部62による制御とを切り替える切替機構にあっても、従来より公知の構成を有するものを、適宜に用いることが出来る。
【0031】
非自動制御部58における手動制御部60は、図示しない入力手段によって入力された情報に基づいて、ヒーターホース44a、44bに電力を供給する電源を制御する。手動制御部60によるヒーターホース44a、44bへの通電の制御においては、例えば、制御対象が電源のオンオフ操作である場合、操作者が電源オンの時間と電源オフの時間とを手入力で設定し、設定された時間が経過する毎に電源のオンオフが切り替わるように手動制御部60により制御されることとなる。なお、本発明において、手動制御部60における制御対象としては、上述の如き、電源のオンオフの時間に限定されるものではなく、例えば、電源から供給される電力の電圧を複数の段階で切り替わるようにして、各段階の時間を手入力で設定可能に構成することも出来る。その際に設定される時間は、操作者によって都度、入力によって変更可能とすることも出来る。また、制御対象である時間を設定する以外にも、例えば操作者による電源のオンオフのスイッチ操作による制御や、ヒーターホース44a、44bに供給する電力の電圧を無段階に調節可能なツマミの操作による制御であっても、採用することが可能である。
【0032】
また、非自動制御部58における非常時制御部62は、
図3に示される如き通電パターンを記憶する記憶部(図示せず)を有している。非常時制御部62によるヒーターホース44a、44bへの通電の制御においては、
図3より理解されるように、1)その制御開始から時間:t1が経過するまでは、ヒーターホース44a、44bに電力を供給する電源のスイッチはオフとされ、2)制御開始から時間:t1が経過した時点で電源のスイッチはオンとされ、電源のスイッチがオンとされてから時間:t2が経過した後に電源はオフとされ、電源のスイッチがオフとされてから時間:t3が経過した後に電源はオンとされるのであり、上記2)の電源オンと上記3)の電源オフが、非常時制御部62による制御が停止されるまで、継続して実施されることとなる。なお、本発明において、非常時制御部62の記憶部が記憶する通電パターンは、
図3に示される如きものに何等、限定されるものではない。また、非常時制御部62の記憶部が複数の通電パターンを記憶可能に構成したり、既存の通電パターンを保有しつつ、手動操作等によって新たな通電パターンを記憶部に記憶させるように構成することも可能であり、非常時制御部62の記憶部が複数の通電パターンを記憶している場合、それら複数の通電パターンの中から適宜、一つの通電パターン選択され、その選択された通電パターンに基づいて、ヒーターホース44a、44bへの通電が制御されることとなる。更に、本発明における非自動制御部は、必ずしも上述した二つの制御部(手動制御部及び非常時制御部)を有するものに限定されるものではなく、何れか一方のみを有するものであっても良い。
【0033】
なお、本実施形態に係る制御装置50は、CPU(マイクロプロセッサ)、メモリ、入力ポート、出力ポート等を一又は複数、備えたPLC(プログラマブルロジックコントローラ)であるが、本発明の目的を阻害しない構成を有する制御装置であれば、如何なる構成の装置も採用することが可能である。
【0034】
上述の如き構成の制御装置50は、双方向通信により、遠隔監視操作装置70にて操作可能とされている。遠隔監視操作装置70は、タッチパネル式の入力手段(図示せず)を有しており、かかる入力手段より入力された情報が制御装置50に送信されることにより、現場吹付け型発泡機10の制御、及び、ヒーターホース44a、44bへの通電の制御が可能となっている。
【0035】
具体的に、遠隔監視操作装置70は、ヒーターホース44a、44bへの通電の制御に関して、制御装置50のヒーターホース制御部54における、1)自動制御部56による制御と非自動制御部58による制御との切替え、2)非自動制御部58による制御を選択した際の、手動制御部60による制御と非常時制御部62による制御との切替えが、入力手段を操作することによって可能である。
【0036】
また、遠隔監視操作装置70は、ヒーターホース制御部54の自動制御部52による制御を選択している場合、第一の管路20内を流れるポリオールの温度及び第二の管路34内を流れるポリイソシアネートの温度の目標値を、入力手段にて入力し、制御装置50に送信することが可能である。
【0037】
さらに、本実施形態においては、制御装置50の手動制御部60における制御対象が、ヒーターホース44a、44bへ電力を供給する電源のオンオフ操作であるところ、かかるスイッチのオンオフ操作が、電源のオンの時間(
図3におけるt2)及びオフの時間(
図3におけるt3)を遠隔監視操作装置70に手入力することにより設定可能とされている。また、遠隔監視操作装置70は、操作者が作業(吹付け施工)を行いながら適宜、手入力によって設定値の修正等を行うことが可能なように構成されている。
【0038】
また、制御装置50における非常時制御部62に、
図3に示される通電パターンを含む複数の通電パターンが記憶せしめられている場合には、遠隔監視操作装置70において、複数の通電パターンより一つの通電パターンを選択することが可能とされている。
【0039】
一方、遠隔監視操作装置70は、従来と同様に、現場吹付け型発泡機10の各機構を制御可能に構成されている。具体的には、タッチパネル式の入力手段を操作することにより、第一の汲上ポンプ22及び第二の汲上ポンプ36、第一のポンプ24及び第二のポンプ38を、個別に又は一括して、起動させ、又は停止させることが可能である。また、遠隔監視操作装置70は、入力手段により、第一の汲上ポンプ22を始めとする複数のポンプの作動を制御するための情報、例えば、各ポンプにおける吐出流量や吐出圧力の目標値を設定し、その設定された目標値を制御装置50に送信するように構成されている。更に、遠隔監視操作装置70は、制御装置50を介して、液体のポリオール及びポリイソシアネートの状態、具体的には、それら液体の温度や圧力等のデータを受信し、タッチパネル上に表示することが可能である。
【0040】
なお、本実施形態においては、遠隔監視操作装置70の入力手段はパッチパネル式のものであるが、本発明においては、例えば、表示画面とテンキー等が分離した形態の入力手段や音声入力が可能な入力手段等も、採用することが出来る。
【0041】
また、本発明において、遠隔監視操作装置としては、発泡機の制御装置の為に専用に設計されたものは勿論のこと、汎用の携帯型情報端末を装置全体又はその一部に利用した形態の装置であっても、使用することが可能である。ここで、汎用の携帯型情報端末とは、通信手段を介して、制御装置に制御情報を入力(送信)するための制御アプリケーションを、所定のウェブサイトからダウンロードすることによって取得可能なものである。そのような汎用の携帯型情報端末を使用すると、例えば、施工場所において飛散したポリウレタンフォームが付着して使用不能となった場合でも、容易に、且つ低コストにて、代替機に交換することが出来る。汎用の携帯型情報端末としては、具体的に、スマートフォン、携帯電話、ポータブルメディアプレーヤーや携帯ゲーム機等を、例示することが出来る。
【0042】
本実施形態における制御装置50と遠隔監視操作装置70との間の双方向通信は、無線LANによって行われる。このため、制御装置50及び遠隔監視操作装置70の各々は、無線LANのための送受信ユニットを備えている。このように無線LANを利用することにより、インターネットを介さずに制御装置50と遠隔監視操作装置70とを接続することが可能である。無線LANにおいては通信の暗号化が可能であることから、セキュリティーを強固にすることが出来、また通信を行うための構成要素(送受信ユニット等)を容易に入手可能であり、無線通信システムの設定や構築も容易に可能である等の利点を享受することが出来る。また、無線LANによれば、携帯電話の通信規格や広帯域移動無線アクセスシステムが使用出来ない僻地や山間地等においても、遠隔監視操作装置70を移用することが可能である。更に、中継機を使用することによって通信距離を延ばすことが出来るため、大きな建築物内においても通信が可能である。なお、そのような中継機は、通常、建築物内の商用の電源コンセントから電源を取得出来るため、発泡機10や制御装置50等から電源ケーブルを配線することなく、設置することが可能である。また、電源コンセントがある場所であれば、中継機の設置場所の変更も可能であり、同一建築物内での施工場所の移動にも、容易に対応可能である。一方、電源コンセントが無い等の理由により中継機が使用出来ない場合には、中継機に代えて、携帯電話の通信規格でテザリング可能な通信機器や、無線LANに接続可能な広帯域移動無線アクセスシステムの通信機器等を用いて、部分的にインターネットを介することにより、制御装置50と遠隔監視操作装置70とを接続することも出来る。
【0043】
本発明においては、制御装置50と遠隔監視操作装置70との間の双方向通信は、上述した無線LANに限定されるものではなく、その他の無線通信方式、有線LANや光ファイバーケーブル通信等の方式を採用することも可能である。但し、有線通信方式を採用すると、通信用ケーブルが液体原料(ポリオール、ポリイソシアネート)を供給するための高圧ホースと絡まる恐れがあることや、通信用ケーブルが引っ張られて遠隔監視操作装置が操作者の手元から落下し、装置の破損やケーブルの断線等を引き起こす恐れがあること等に、留意する必要がある。また、有線通信方式においては、作業終了後の撤収の際に、長い通信用ケーブルを収納する作業が必要となる。
【0044】
また、上記したその他の無線通信方式としては、携帯電話の通信規格に従うもの、広帯域移動無線アクセスシステム、無線LAN以外の近距離無線通信規格に従うもの等を、例示することが出来る。
【0045】
なお、携帯電話の通信規格としては、具体的に、第2世代移動通信システムであるPDC、GSM(登録商標)、cdmaOne等、第3世代移動通信システムであるW-CDMA、CDMA2000、HSPA、EV-DO、LTE等、第4世代移動通信システムであるLTE-Advanced等を、例示することが出来る。また、広帯域移動無線アクセスシステムとしては、WiMAX、XGP、モバイルWiMAX、WiMAX2、WiMAX2+、AXGP等を、例示することが出来る。これらの通信規格により、インターネットを介して制御装置と遠隔監視操作装置とを接続することが出来る。更に、無線LAN以外の近距離無線通信規格としては、ZigBee、Bluetooth(登録商標)等が挙げられる。
【0046】
そして、上述の如き、現場吹付け型発泡機10と制御装置50との接続が確保された状態で、制御装置50を操作することにより発泡機50を始動させると、制御装置50の発泡機制御部52の制御下において、1)タンク16より汲み上げられたポリオールは、第一のポンプ24により第一の管路20内で圧送され、加熱装置28にて加熱されて、接続口18よりヒーターホース44aに送り込まれ、その一方、2)タンク30より汲み上げられたポリイソシアネートは、第二のポンプ38により第二の管路34内で圧送され、加熱装置42にて加熱されて、接続口32よりヒーターホース44bに送り込まれる。ヒーターホース44aに送り込まれたポリオール、及びヒーターホース44bに送り込まれたポリイソシアネートは、各ヒーターホース中においても、制御装置50のヒーターホース制御部54による制御の下、加熱乃至保温され、そのようにして液温が調整されたポリオール及びポリイソシアネートがスプレーガン46に達すると、そこで両者は混合及び撹拌され、ポリオール及びポリイソシアネートの混合物の吹付けが開始されるのである。
【0047】
本発明に従う制御装置50を備えた現場吹付け型発泡機10にあっては、ヒーターホース44a、44bへの通電は、通常、ヒーターホース制御部54における自動制御部56の制御の下、吹付け施工が開始される。そして、施工者による吹付け施工中に自動制御部56が異常を検知し、警告音発生手段(図示せず)より警告音が鳴った場合には、直ちに制御装置50及び発泡機10を停止して吹付け施工を中断し、制御装置50における切替機構によって、自動制御部56による制御から非自動制御部58による制御へと切り替えると共に、非自動制御部58における切替機構によって、手動制御部60による制御又は非常時制御部62による制御の何れかを選択する。その後、発泡機10及び制御装置50を再始動することにより、制御装置50のヒーターホース制御部54における手動制御部60による制御、又は非常時制御部62による制御の下にヒーターホース44a、44bへの通電が再開され、吹付け施工を再開することが可能ならしめられているのである。
【0048】
このように、現場吹付け型発泡機の制御装置として本発明に従う制御装置を用いると、ヒーターホースの温度センサの異常等を検知した場合、ヒーターホースへの通電を、制御装置における自動制御部による制御から非自動制御部による制御へと、直ちに切り替えることが可能であり、このようにヒーターホースへの通電の制御を切り替えることにより、吹付け施工の中断時間を最小限に止めることが可能である。特に、その日(施工日)の吹付け施工の開始直後にヒーターホースの温度センサ等に異常が発生した場合、従来の制御装置であれば、異常の原因を解明し、温度センサを交換する等の作業が必要とされて、その日(施工日)に予定されていた吹付け施工が全く出来なくなるところ、本発明に従う制御装置を用いると、応急処置的ではあるものの、その日(施工日)の吹付け施工を行うことが可能である。また、吹付け施工がほぼ終了し、吹付け対象領域が残り僅かである状況下において、ヒーターホースの温度センサ等に異常が発生した場合、短時間の作業中断の後に吹付け施工を再開することが可能であり、工期の遅れを最小限に止めることが可能となっているのである。
【0049】
以上、本発明の代表的な実施形態の一つについて、詳述してきたが、本発明が上述した実施形態に限定されるものでないことは、言うまでもないところである。なお、以下の記載において参照する
図4及び
図5において、
図1又は
図2に明示されている箇所又は部位と同一の構成及び機能を有する箇所については、
図1又は
図2にて付されている符号と同一の符号を付し、詳細な説明は省略することとする。
【0050】
例えば、上述した実施形態に係る制御装置50は、ヒーターホース制御部54と共に発泡機制御部52をも備えた構成とされているが、ヒーターホースへの通電を制御する制御装置と、発泡機の作動を制御する制御装置とを別個のものとすることは、言うまでもなく可能である。
【0051】
また、現場吹付け型発泡機として、
図4に明示されている現場吹付け型発泡機80の如き、
図1に示される現場吹付け型発泡機10に発泡剤を圧送するための第三の供給系統82が追加された構成に係る発泡機においても、本発明に従う制御装置を使用することが可能である。
【0052】
図4に示される現場吹付け型発泡機80において、第三の供給系統82は、第一の供給系統12を流れるポリオールに発泡剤を添加するために設けられている。かかる第三の供給系統82は、発泡剤が高圧で充填されているタンク84が上流端に配置され、発泡剤を第一の供給系統12に圧送するための発泡剤ポンプ86と、発泡剤ポンプ86の吐出圧力を測定する第三の圧力計88と、電磁弁である開閉弁90と、逆止弁92と、それら構成要素を接続する第三の管路94より構成されている。そのような構成の第三の管路94は、合流箇所Jにおいて、第一の供給系統12の第一の管路20に接続されている。また、現場吹付け型発泡機80においては、制御装置100により、発泡剤ポンプ86の吐出量及び開閉弁90の動作が制御されるように構成されており、また制御装置100は、第三の圧力計88の測定値を随時受信できるように、第三の圧力計88に接続されている。更に、制御装置100は、遠隔監視操作装置110にて遠隔操作が可能とされている。なお、開閉弁90は、流量調整弁や圧力調整弁であっても良い。
【0053】
図5に示されているように、
図4の現場吹付け型発泡機80を制御するための制御装置100は、発泡機制御部52、及び、自動制御部56と、手動制御部60及び非常時制御部32を有する非自動制御部58とから構成されるヒーターホース制御部54に加えて、第三の供給系統82の発泡剤ポンプ86を制御する発泡剤ポンプ制御部102と、開閉弁90の動作を制御する開閉弁制御部104とを備える外添機構制御部106を有している。そして、そのような外添機構制御部106(発泡剤ポンプ制御部102及び開閉弁制御部104)は、遠隔監視操作装置110によって操作可能とされているのである。
【0054】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づき、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。また、本発明における制御装置の構成は概念としてのものであり、具体的に制御部に区分けられていなくても良く、また、プラグラムによって上記した各制御が実施可能に構成されていても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 現場吹付け型発泡機
50 制御装置
52 発泡機制御部
54 ヒーターホース制御部
56 自動制御部
58 非自動制御部
60 手動制御部
62 非常時制御部
70 遠隔監視操作装置
80 現場吹付け型発泡機
100 制御装置
102 遠隔監視操作装置