(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】データ伝送システム及びデータ伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04N 21/236 20110101AFI20230815BHJP
H04N 21/434 20110101ALI20230815BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
H04N21/236
H04N21/434
H04L7/00 990
(21)【出願番号】P 2019197690
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-217660(JP,A)
【文献】特開2008-118345(JP,A)
【文献】特開2011-223611(JP,A)
【文献】特開2013-192148(JP,A)
【文献】特開2015-198379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0018387(US,A1)
【文献】栗原 弘一,ディジタル放送チャンネル選択方法,東芝技術公開集,日本,株式会社東芝,2001年04月26日,VOL.19-23,pp. 131-138
【文献】デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式,標準規格 ARIB STD-B60,第1.13版,日本,電波産業会,2018年10月11日,p. 205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 -21/858
H04L 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリーム形式のデータを送信装置から受信装置へ無線伝送するデータ伝送システムにおいて、
前記送信装置は、伝送対象のデータを符号化するデータ符号器から入力される符号化データを送信バッファに蓄積し、設定された送信タイミングに従って、前記送信バッファから前記符号化データを出力して前記受信装置へ送信し、
前記受信装置は、設定された受信タイミングに受信した前記符号化データを受信バッファに蓄積し、前記符号化データ内の復号時刻又は表示時刻に従って、前記受信バッファから前記符号化データを出力してデータ復号器に供給
するものであり、
前記送信装置
では、前記送信バッファに蓄積される前の前記符号化データに付加されたタイムスタンプに基づいて、前記データ符号器の基準クロックに同期したクロックを前記受信装置で再生するためのクロック再生情報を生成し
、前記送信バッファから出力された前記符号化データを誤り訂正符号化して第1のサブキャリア領域にマッピングしたデータを、前記クロック再生情報を前記符号化データとは独立に誤り訂正符号化して前記第1のサブキャリア領域とは異なる第2のサブキャリア領域にマッピングしたデータと共に変調して前記受信装置へ送信し、
前記受信装置
では、前記送信装置から受信した信号の復調結果における前記第1のサブキャリア領域のデマッピングおよび誤り訂正復号により復元された前記符号化データを前記受信バッファに蓄積し、前記復調結果における前記第2のサブキャリア領域のデマッピングおよび誤り訂正復号により復元された前記クロック再生情報に基づいて、前記データ符号器の基準クロックに同期したクロックを再生し、当該再生したクロック
と前記符号化データ内の復号時刻又は表示時刻とのマッチングにより前記受信バッファから出力された前記符号化データを、前記再生したクロックに基づいてタイムスタンプを修正した後に前記データ復号器に供給することを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ伝送システムにおいて、
前記送信装置は、前記送信バッファに蓄積される前の前記符号化データに付加されたタイムスタンプに基づいて、前記データ符号器の基準クロックに同期したクロックを再生し、前記送信バッファから出力された前記符号化データが送信されるタイミングでのクロックの値を前記クロック再生情報とすることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のデータ伝送システムにおいて、
前記受信装置は、前記送信バッファから出力された前記符号化データの先頭を検出し、その後に通過する前記符号化データ内のタイムスタンプと前記再生したクロックの値とを比較し、これらが一致しない場合に、前記符号化データ内のタイムスタンプを前記再生したクロックの値で置換することで、前記受信バッファから出力された前記符号化データ内のタイムスタンプの修正を行うことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデータ伝送システムにおいて、
前記送信装置は、OFDM方式により前記変調を行い、
前記第2のサブキャリア領域は、前記第1のサブキャリア領域であるデータサブキャリア領域に対して周波数方向の両側に配置された補助情報伝送キャリア領域であることを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項5】
映像又は音声を含むストリーム形式のデータを送信装置から受信装置へ無線伝送するデータ伝送方法において、
前記送信装置は、伝送対象のデータを符号化するデータ符号器から入力される符号化データを送信バッファに蓄積し、設定された送信タイミングに従って、前記送信バッファから前記符号化データを出力して前記受信装置へ送信し、
前記受信装置は、設定された受信タイミングに受信した前記符号化データを受信バッファに蓄積し、前記符号化データ内の復号時刻又は表示時刻に従って、前記受信バッファから前記符号化データを出力してデータ復号器に供給
するものであり、
前記送信装置
では、前記送信バッファに蓄積される前の前記符号化データに付加されたタイムスタンプに基づいて、前記データ符号器の基準クロックに同期したクロックを前記受信装置で再生するためのクロック再生情報を生成し
、前記送信バッファから出力された前記符号化データを誤り訂正符号化して第1のサブキャリア領域にマッピングしたデータを、前記クロック再生情報を前記符号化データとは独立に誤り訂正符号化して前記第1のサブキャリア領域とは異なる第2のサブキャリア領域にマッピングしたデータと共に変調して前記受信装置へ送信し、
前記受信装置
では、前記送信装置から受信した信号の復調結果における前記第1のサブキャリア領域のデマッピングおよび誤り訂正復号により復元された前記符号化データを前記受信バッファに蓄積し、前記復調結果における前記第2のサブキャリア領域のデマッピングおよび誤り訂正復号により復元された前記クロック再生情報に基づいて、前記データ符号器の基準クロックに同期したクロックを再生し、当該再生したクロック
と前記符号化データ内の復号時刻又は表示時刻とのマッチングにより前記受信バッファから出力された前記符号化データを、前記再生したクロックに基づいてタイムスタンプを修正した後に前記データ復号器に供給することを特徴とするデータ伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延時間揺らぎのある伝送路において固定遅延で映像を伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG-2やH.264等の映像符号器では、伝送対象の映像(動画)をTS(Transport Stream)形式のデータフォーマットに符号化する。TSデータは、伝送路を通じて受信側へと伝送され、受信側の映像復号器に入力される。この場合、映像符号器と映像復号器の間において、時間やクロック周波数などのタイミング同期をとる必要がある。そのため、TSデータに対してPCR(Program Clock Reference)と称されるタイムスタンプを付加することで、上記の同期を行っている。ただし、この同期処理では、映像符号器から映像復号器までの間の伝送路における遅延時間が一定である必要がある。
【0003】
一方、IP伝送等のジッタ(遅延時間揺らぎ)のある伝送路を用いて映像伝送を行う場合には、例えば非特許文献1に開示されるように、基準クロックであるSTC(System Time Clock)を予め映像符号器側と映像復号器で共有しておき、映像符号器側で遅延時間揺らぎを補正する処理が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】大西隆之,外2名、「MPEG-2 over IP伝送における遅延揺らぎ抑制効果に関する一検討」、<https://www.ieice.org/publications/conference-FIT-DVDs/FIT2003/pdf/J/J_024.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
双方向の無線伝送システムは伝送路の状況に応じて伝送レートを変化させており、例えば、TDD(Time Division Duplex;時分割複信)伝送では、上り伝送と下り伝送を時間的に分割して伝送を行う。このため、映像符号器からのデータを一時的にバッファに蓄積し、伝送が許可されている時間にバッファからデータを出力して送信する構成となっている。しかしながら、このような構成では、データ伝送遅延が一定にならないという問題がある。また、非特許文献1の技術では、送信側と受信側で予めSTCを共有する仕組みが必要であるが、無線伝送ではSTCを共有する仕組みがなかったため、映像符号器と映像復号器の間で同期をとることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、映像や音声などのストリーム形式のデータについて、送信側と受信側で基準クロック(例えば、STC)を直接共有することなく、遅延時間揺らぎのないデータ伝送を実現することが可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の目的を達成するために、ストリーム形式のデータを送信装置から受信装置へ無線伝送するデータ伝送システムを以下のように構成した。
すなわち、送信装置は、伝送対象のデータを符号化するデータ符号器から入力される符号化データを送信バッファに蓄積し、設定された送信タイミングに従って、送信バッファから符号化データを出力して受信装置へ送信する。受信装置は、設定された受信タイミングに受信した符号化データを受信バッファに蓄積し、符号化データ内の復号時刻又は表示時刻に従って、受信バッファから符号化データを出力してデータ復号器に供給する。
このとき、送信装置は、符号化データに付加されたタイムスタンプに基づいて、データ符号器の基準クロックに同期したクロックを受信装置で再生するためのクロック再生情報を生成して符号化データと共に受信装置へ送信する。そして、受信装置は、符号化データと共に受信したクロック再生情報に基づいて、データ符号器の基準クロックに同期したクロックを再生し、当該再生したクロックに従ってデータ復号器による符号化データの復号が行われるよう制御する。
【0008】
ここで、受信装置は、再生したクロックと受信バッファに蓄積されている符号化データ内の復号時刻又は表示時刻とのマッチングを行い、マッチングに成功した場合に、受信バッファから符号化データを出力してデータ復号器に供給する構成としてもよい。
【0009】
また、受信装置は、受信バッファから出力された符号化データを、再生したクロックに基づいてタイムスタンプを修正した後にデータ復号器に供給する構成としてもよい。
【0010】
また、クロック再生情報が、送信バッファ及び受信バッファを介さずに処理される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、映像や音声などのストリーム形式のデータについて、送信側と受信側で基準クロックを直接共有することなく、遅延時間揺らぎのないデータ伝送を実現することが可能なシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける映像送信側の構成例を示す図である。
【
図2】
図1の移動局が有するSTC再生部の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける映像受信側の構成例を示す図である。
【
図4】
図3の基地局が有するSTC再生部の構成例を示す図である。
【
図5】PCRのデータフォーマットを示す図である。
【
図6】STC情報の伝達に使用するキャリアについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムについて、図面を参照して説明する。なお、本発明はTDD伝送やFDD(Frequency Division Duplex;周波数分割複信)伝送や全二重無線伝送など、伝送路の状況に応じて伝送レートを変化させる双方向の無線伝送システムに適用可能であるが、以下では、移動局(MS:Mobile Station)から基地局(BS:Base Station)へTDD方式で映像データを伝送するシステムを例にして説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける映像送信側の構成例を示してある。映像送信側には、本発明に係るデータ符号器の一例である映像符号器10と、本発明に係る送信装置の一例である移動局20とが設けられている。移動局20は、バッファ21と、TDDタイミング制御部22と、符号器23と、マッピング部24と、変調部25と、TDD切り替え部26と、アンテナ27と、復調部28と、可変レート制御部29と、STC再生部30と、符号器31と、マッピング部32とを備える。
【0015】
映像送信側において、映像符号器10で伝送対象の映像が符号化され、映像符号器10からTSデータが出力される。TSデータは移動局20に入力され、送信用のバッファ21に一時的に蓄積される。TDDタイミング制御部22は、バッファ21に蓄積されたデータが時分割多重の基地局送信タイミング時に後段に出力されるよう制御する。バッファ21から出力されたデータは、符号器23で誤り訂正用の符号処理が施される。符号器23は、可変レート制御部29からの指示に基づいて、誤り訂正の符号化率を変化させることが可能である。符号化率が可変ということは、伝送レートが可変になるということである。
【0016】
マッピング部24は、符号器23により符号化されたデータを、QAM(Quadrature Amplitude Modulation;直角位相振幅変調)方式などを用いてIQ平面にマッピングする。変調部25では、マッピング部24によりマッピングされたデータに対し、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交波周波数分割多重)方式などの二次変調を施して、無線ベースバンド信号を生成する。TDD切り替え部26は、TDDタイミング制御部22からのタイミング信号に基づいて、無線ベースバンド信号を移動局送信タイミングに合わせてアンテナ27から送出させる。また、TDD切り替え部26は、受信タイミングの期間にアンテナ27で受信された信号を復調部28に出力し、復調部28にて受信信号の復調処理が行われる。可変レート制御部29は、復調処理の結果に基づいて符号化率を算出し、以降の処理に適用する符号化率として符号器23に指示する。
【0017】
以上は、一般的なTDD方式の無線伝送における送信処理に関する説明であるが、TDDタイミング制御や可変レート制御により、バッファ21から出力されるデータの遅延時間に揺らぎが生じる可能性がある。そこで、本例では、移動局20のSTC再生部30において、映像符号器10から出力されるTSデータのPCR情報に基づいて、映像符号器10に同期したSTCを再生する。ここで、本例のPCR情報は、
図5に示すように42ビットで構成されている。このPCR情報の上位33ビットは、90kHzで動作するカウンタ値であり、下位9ビットは、27MHzで動作して0から300まで巡回的にインクリメントするカウンタ値である。
【0018】
図2には、移動局20が有するSTC再生部30の構成例を示してある。STC再生部30では、映像符号器10から出力されるTSパケット内のPCR情報をPCR抽出部41により抽出して、PCR情報の上位33ビットを比較器46に入力し、下位9ビットを位相比較器42に入力する。位相比較器42は、PCR抽出部41から入力されたPCR情報の下位9ビットと、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)43からの27MHzの発振周波数に従ってインクリメントされる再生下位カウンタ44のカウンタ値とを比較し、これらの誤差を算出する。そして、位相比較器42が、下位カウンタの誤差が小さくなるように調整した電圧をVCO43へ出力することで、VCO43の発振周波数を変化させる。この仕組みにより、移動局20内の再生下位カウンタ44を映像符号器10内のSTCに同期させることができる。
【0019】
次に、再生下位カウンタ44が一周するたびに、再生上位カウンタ45をインクリメントする。比較器46は、PCR抽出部41から入力されたPCR情報の上位33ビットと、再生上位カウンタ45のカウンタ値とを比較し、上位カウンタに誤差がある場合には、PCR抽出部41から入力された値(つまり、PCR情報の上位ビット値)で再生上位カウンタ45をリセットする。以上の処理により、移動局20内のSTCを映像符号器10内のSTCに同期させることができる。
【0020】
STC再生部30は、上記のようにして映像符号器10に同期したSTCを再生し、基地局でもSTC再生を行えるようにSTC再生情報を出力する。基地局でのSTCの再生には、正確なタイミング情報が不可欠であるため、TDD伝送において実際にデータが伝送されるタイミングでのSTCの値をSTC再生情報とすることが好ましい。STC再生情報は、映像情報と同様の手法で(ただし、映像情報とは独立に)、符号器31で誤り訂正用の符号処理が施され、マッピング部24でIQ平面にマッピングされる。
【0021】
変調部25には、映像情報をマッピングしたデータと、STC再生情報をマッピングしたデータとが入力される。ここで、映像情報はバッファ21を経由するので、上記で説明した遅延時間揺らぎが生じているが、STC再生情報はバッファ21を経由しないので、遅延時間揺らぎが生じない。このため、映像情報が伝送されるタイミングで、STC再生情報を正確に映像受信側へ伝達することが可能となる。
【0022】
ここで、変調部25にはOFDM変調を用いられることが多く、OFDM変調ではサブキャリア単位でマッピングデータを多重伝送することが可能である。STC再生情報は、映像情報と比較して情報量が少ないため、OFDMの一部のサブキャリアを用いて伝送することができる。一般的に、帯域端のサブキャリアは伝送特性が劣化しやすく、映像情報に割り当てられることがないため、帯域端のサブキャリアにマッピングの変調多値数を下げたSTC再生情報を割り当てて伝送する。
【0023】
図6に示すように、OFDMフレームは、時間方向において、先頭にプリアンブルシンボル、次にパイロットサブキャリア、続いてデータサブキャリアの順に配置されている。本例では、このデータサブキャリアに対して周波数方向の両側に配置される補助情報伝送キャリア(ACキャリア)を使用して、STC情報を伝送している。これにより、映像情報の伝送に対する影響を抑えつつ、STC再生情報を映像受信側へ伝達することが可能である。
【0024】
図3には、本発明の一実施形態に係るデータ伝送システムにおける映像受信側の構成例を示してある。映像受信側には、本発明に係る受信装置の一例である基地局50と、本発明に係るデータ復号器の一例である映像復号器80とが設けられている。基地局50は、アンテナ51と、TDD切り替え部52と、復調部53と、デマッピング部54と、復号器55と、バッファ56と、TDDタイミング制御部57と、デマッピング部58と、復号器59と、STC再生部60と、PCR置き換え部61と、可変レート制御部62と、変調部63とを備えている。
【0025】
映像受信側において、移動局20から送信された信号は、基地局50のアンテナ51により受信される。TDD切り替え部52は、TDDタイミング制御部57からのタイミング信号に基づいて、受信タイミングの期間にアンテナ51で受信された信号を復調部53に出力する。復調部53は、移動局20の変調部25による二次変調に対応した復調処理(例えば、OFDM復調)を行い、時間領域の信号からサブキャリア単位の周波数領域の信号へと変換する。復調部53による復調結果の信号は、デマッピング部54及びデマッピング部58に入力される。
【0026】
デマッピング部54は、映像情報に割り当てられたサブキャリアの振幅及び位相情報から伝送信号を再生し、復号器55へ出力する。復号器55は、デマッピング部54により再生された信号に対して誤り訂正復号を行う。
同様に、デマッピング部58は、STC再生情報に割り当てられたサブキャリアの振幅及び位相情報から伝送信号を再生し、復号器59へ出力する。復号器59は、デマッピング部58により再生された信号に対して誤り訂正復号を行う。復号器59により復号されたSTC再生情報は、STC再生部60へ出力され、STCタイミングの再生(復元)に使用される。
【0027】
図4には、基地局50が有するSTC再生部60の構成例を示してある。STC再生部60は、基本的には移動局20のSTC再生部30と同様な構成となっている。ただし、移動局20のSTC再生部30では、PCR抽出部41によりPCR情報を抽出して位相比較器42や比較器46に入力していたが、基地局50のSTC再生部60では、復号器59により復号されたSTC再生情報を位相比較器72や比較器76に入力する構成となっている。基地局側の位相比較器72~比較器76の動作内容は、移動局側の位相比較器42~比較器46と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0028】
復号器55により復号された映像情報(TSデータ)は、受信用のバッファ56に入力される。バッファ56では、TDDタイミングにより時間的に間欠して受信したデータをある程度平準化するが、この平準化を行っても、映像符号器10からのTSデータのタイミングを正確に再現できるわけではないため、遅延時間揺らぎが残留している。バッファ56に蓄積されたTSデータは、STC復号部60で再生されたSTCとTSデータ内のPTS(Presentation Time Stamp;表示時刻)やDTS(Decode Time Stamp;復号時刻)とのマッチングが行われ、マッチングに成功した場合のみバッファ56から出力される。
【0029】
PCR置き換え部61は、残留した遅延時間揺らぎがなくなるように、バッファ56から出力されたTSデータ内のPCRのタイムスタンプを、STC再生部60にて再生されたSTCに基づいて修正する。具体的には、TSパケットの先頭を検出した後に、通過するTSパケット内のPCRと再生されたSTCの値とを比較し、これらが一致しない場合には、TSパケット内のPCRを再生されたSTCの値で置換する。なお、TSパケットの先頭には‘0x47’が配置されているため、‘0x47’とのマッチングを行うことで、TSパケットの先頭を検出することができる。
【0030】
バッファ56から出力されたTSデータは、PCR置き換え部61によるタイムスタンプの修正を経た後に、基地局50から映像復号器80へ出力される。映像復号器80は、基地局50から入力されたTSデータに対し、STCを共有しながら映像の復号処理を行う。つまり、映像復号器80は、映像符号器10内のSTCに同期したタイミングで復号処理を行う。
【0031】
以上のように、本例のデータ伝送システムでは、映像送信側となる移動局20が、伝送対象の映像データを符号化する映像符号器10から入力される符号化データを送信用のバッファ21に蓄積し、設定された送信タイミングに従って、バッファ21から符号化データを出力して基地局50へ送信する。このとき、移動局20は、符号化データに付加されたPCR(タイムスタンプ)に基づいて、映像符号器10のSTC(基準クロック)に同期したクロックを基地局50で再生するためのSTC再生情報を生成して符号化データと共に基地局50へ送信する。
【0032】
そして、映像受信側となる基地局50が、設定された受信タイミングに受信した符号化データを受信用のバッファ56に蓄積し、符号化データ内のDTS(復号時刻)又はPTS(表示時刻)に従って、バッファ56から符号化データを出力して映像復号器80に供給する。このとき、基地局50は、符号化データと共に受信したSTC再生情報に基づいて、映像符号器10のSTCに同期したクロックを再生し、当該再生したクロックに従って映像復号器80による符号化データの復号が行われるよう制御する。
【0033】
このような構成により、映像受信側において、基準クロックであるSTCを映像送信側と直接共有することなく、映像送信側のSTCに同期したタイミングで映像を復号して表示できるようになり、遅延時間揺らぎのない映像伝送を実現することが可能となる。
【0034】
ここで、本例のデータ伝送システムにおける基地局50では、映像復号器80での符号化データの復号タイミングの制御を、再生したクロックとバッファ56に蓄積されている符号化データ内のDTS又はPTSとのマッチングを行い、マッチングに成功した場合に、バッファ56から符号化データを出力して映像復号器80に供給する構成Aと、バッファ56から出力された符号化データを、再生したクロックに基づいてPCRを修正した後に映像復号器80に供給する構成Bとで実現している。なお、上述した構成A又は構成Bの一方を適用するだけでも、映像復号器80での符号化データを復号するタイミングを映像符号器10のSTCに同期させるように制御することが可能である。
【0035】
また、本例のデータ伝送システムでは、STC再生情報を、送信用のバッファ21及び受信用のバッファ56を介さずに処理する構成となっている。したがって、これらバッファの存在によりデータ伝送遅延の不均一性が生じる環境下でも、映像受信側のSTCを映像送信側に同期させることが可能となる。
【0036】
また、本例のデータ伝送システムでは、OFDMフレームを使用して映像情報及びSTC再生情報を伝送しており、特に、STC再生情報については、映像情報を伝送するデータサブキャリアに対して周波数方向の両側に配置される補助情報伝送キャリアを使用して伝送する構成となっている。したがって、映像情報の伝送に対する影響を抑えつつ、STC再生情報を映像受信側へ伝達することが可能である。
【0037】
なお、上記の説明では、映像の送信タイミングや受信タイミングについて、予め設定された固定のタイミングであることを想定しているが、伝送路の状況などに応じてタイミングを変化させても構わない。
また、上記の説明では、映像送信側に移動局20を配置し、映像受信側に基地局50を配置した構成であるが、これらは逆でもよいし、これらの無線通信装置が相互に映像情報を伝送し合う構成であってもよい。
また、上記の説明では、映像情報を伝送するシステムを例に説明したが、映像情報に代えて(又は映像情報と共に)、音声情報などの他のストリーム形式のデータを伝送するシステムに適用することも可能である。
【0038】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ストリーム形式のデータを送信装置から受信装置へ無線伝送するデータ伝送システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10:映像符号器、 20:移動局、 21:バッファ、 22:TDDタイミング制御部、 23:符号器、 24:マッピング部、 25:変調部、 26:TDD切り替え部、 27:アンテナ、 28:復調部、 29:可変レート制御部、 30:STC再生部、 31:符号器、 32:マッピング部、 41:PCR抽出部、 42:位相比較器、 43:VCO、 44:再生下位カウンタ、 45:再生上位カウンタ、 46:比較器、 50:基地局、 51:アンテナ、 52:TDD切り替え部、 53:復調部、 54:デマッピング部、 55:復号器、 56:バッファ、 57:TDDタイミング制御部、 58:デマッピング部、 59:復号器、 60:STC再生部、 61:PCR置き換え部、 62:可変レート制御部、 63:変調部、 72:位相比較器、 73:VCO、 74:再生下位カウンタ、 75:再生上位カウンタ、 76:比較器、 80:映像復号器