(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】キャップ、及びキャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/04 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
B65D41/04 100
(21)【出願番号】P 2019198827
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-022222(JP,Y1)
【文献】実開昭62-177651(JP,U)
【文献】特開2012-232773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0103742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着して該口部の上部開口を閉鎖するキャップであって、
前記口部を取り囲むとともに該口部の外周面に設けた雄ねじ部に適合する雌ねじ部を有する外周壁と、
前記外周壁に連結するとともに前記上部開口を覆う天壁と、
前記天壁に連結するとともに該口部の内周面に当接する第一シール部を有する環状壁と、
前記キャップを前記口部に装着した状態において、前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって上方に傾いて延在して、先端部が該口部の外周面に当接する係止片と、を備え
、
前記係止片は、前記外周壁の内周面において間欠状に設けられるキャップ。
【請求項2】
前記天壁は、前記口部の上面に当接する環状のコンタクトリングを有する請求項
1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記環状壁は、前記口部の内周面に対して前記第一シール部とは別異に当接する第二シール部を有する請求項
1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載のキャップと前記容器とを備えるキャップ付き容器において、
前記口部は、上部の内周面が前記中心軸から離れる向きに広がる環状段部を有し、
前記第一シール部を、前記環状段部の内周面に当接させたキャップ付き容器。
【請求項5】
容器の口部に装着して該口部の上部開口を閉鎖可能であって、
前記口部を取り囲むとともに該口部の外周面に設けた雄ねじ部に適合する雌ねじ部を有する外周壁と、
前記外周壁に連結するとともに前記上部開口を覆う天壁と、
前記天壁に連結するとともに該口部の内周面に当接する第一シール部を有する環状壁と、
前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって下方に傾いて延在する係止片と、を備え
、前記係止片は、前記外周壁の内周面において間欠状に設けられるキャップにおいて、
前記キャップを前記口部に被せ、
次いで、前記雄ねじ部に前記雌ねじ部が螺合するように前記キャップを回転させることによって、前記係止片の先端部を前記口部に当接させて、該係止片を、前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって上方に傾ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着するキャップ、及びこのキャップと容器で構成されるキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、容器の口部に装着して口部の上部開口を閉鎖するキャップが使用されている。このようなキャップには、例えば容器を倒した場合に内容液が漏れ出さないようにするため、口部に液密に当接するシール部を設けている。例えば特許文献1には、天板部22から内側シール部35と外側シール部38を垂下させるとともに、内側シール部35の外周面に環状凸部36を設けたキャップが示されている。このキャップによれば、容器の口部に装着した際、口部の内周面に環状凸部36が当接するため、口部からの内容液の漏れ出しが防止される。また、環状凸部36が当接することで口部には径方向外側に押し出される力が作用するものの、口部の外周面には外側シール部38が当接していて、口部が径方向外側に広がらないように支持しているため、口部の内周面と環状凸部36との密着性が確保されて、内容液の漏れ出し防止により効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、このような外側シール部38は、その内周面が口部の外周面に対して上下方向に全面的に当接しているため、キャップを口部から取り外すにあたっては、口部に対してキャップを強く回転させる必要がある。このため、力の弱い使用者(高齢者や女性など)にとっては開けづらく、使い勝手の点で難があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであって、容器に装着した状態において、口部との密封性を保持しつつ、口部からの取り外しも行い易いキャップ、及びこのキャップと容器で構成されるキャップ付き容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の口部に装着して該口部の上部開口を閉鎖するキャップであって、
前記口部を取り囲むとともに該口部の外周面に設けた雄ねじ部に適合する雌ねじ部を有する外周壁と、
前記外周壁に連結するとともに前記上部開口を覆う天壁と、
前記天壁に連結するとともに該口部の内周面に当接する第一シール部を有する環状壁と、
前記キャップを前記口部に装着した状態において、前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって上方に傾いて延在して、先端部が該口部の外周面に当接する係止片と、を備え、
前記係止片は、前記外周壁の内周面において間欠状に設けられるキャップである。
【0008】
前記天壁は、前記口部の上面に当接する環状のコンタクトリングを有することが好ましい。
【0009】
前記環状壁は、前記口部の内周面に対して前記第一シール部とは別異に当接する第二シール部を有することが好ましい。
【0010】
また本発明は、上述した何れか一つのキャップと前記容器とを備えるキャップ付き容器において、
前記口部は、上部の内周面が前記中心軸から離れる向きに広がる環状段部を有し、
前記第一シール部を、前記環状段部の内周面に当接させたキャップ付き容器でもある。
【0011】
また本発明は、容器の口部に装着して該口部の上部開口を閉鎖可能であって、
前記口部を取り囲むとともに該口部の外周面に設けた雄ねじ部に適合する雌ねじ部を有する外周壁と、
前記外周壁に連結するとともに前記上部開口を覆う天壁と、
前記天壁に連結するとともに該口部の内周面に当接する第一シール部を有する環状壁と、
前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって下方に傾いて延在する係止片と、を備え、前記係止片は、前記外周壁の内周面において間欠状に設けられるキャップにおいて、
前記キャップを前記口部に被せ、
次いで、前記雄ねじ部に前記雌ねじ部が螺合するように前記キャップを回転させることによって、前記係止片の先端部を前記口部に当接させて、該係止片を、前記外周壁の内周面から該外周壁の中心軸に向かって上方に傾ける方法でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャップは、口部の内周面に当接する第一シール部を有する環状壁と、キャップを口部に装着した状態において、外周壁の内周面から外周壁の中心軸に向かって上方に傾いて延在して、先端部が口部の外周面に当接する係止片とを備えている。すなわち、口部の内周面に第一シール部が当接することによって、口部には径方向外側に押し出される力が作用するものの、口部の外周面には係止片が当接するため、口部の内周面と第一シール部との密着性が確保され、内容液の漏れ出しをより確実に防止することができる。また係止片は、外周壁の内周面から外周壁の中心軸に向かって上方に傾いて延在するものであって、その先端部が外周壁の内周面に近づくように撓ませることができるため、口部に対して係止片が強く当たり過ぎることがない。このため、キャップを回転させる際に過度な力は必要なく、力の弱い使用者であっても容易にキャップを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に従うキャップの一実施形態を示す部分拡大断面図である。
【
図2】
図1のキャップを口部に装着することによって係止片の傾きを変える方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に従うキャップの一実施形態について説明する。なお、本明細書等における「上」方向、「下」方向とは、基本的には
図1において仮想線で示した正立姿勢の容器に対してキャップを装着する際の向きである。
【0015】
本実施形態のキャップ1は合成樹脂製であって、容器50に装着されるものである。まず容器50について説明する。
【0016】
容器50は、全体的に有底筒状をなすように形作られていて、その上部において、円筒状をなすとともに上方を開口させた口部51を備えている。ここで、円筒状をなす口部51の中心軸を、中心軸Oと称することとする。また上述した口部51の開口を、上部開口52と称することとする。なお上部開口52は、容器50の内側に形成された収容空間Sの出入り口であって、この上部開口52を通して収容空間Sに内容液が収容され、また収容空間Sの内容液が注出される。また口部51は、その上部において、内周面が中心軸Oから離れる向きに広がる環状段部53を備えている。そして口部51の外周面には、雄ねじ部54が設けられている。
【0017】
キャップ1は、口部51に装着した際に口部51の周囲を取り囲む円筒状の外周壁2を備えている。なお、外周壁2の中心軸は口部51の中心軸Oと同一であるため、本明細書等では外周壁2の中心軸も中心軸Oとして説明する。外周壁2の上端部には、上部開口52を覆う天壁3が設けられている。本実施形態の天壁3は、キャップ1を口部51に装着した際に口部51の略直上に位置する部位において、下方に向けて窪んだ環状の段差部4を備えていて、段差部4の径方向内側には、中心軸Oに向かうにつれて上方に向けて緩やかに湾曲する湾曲部5が設けられている。また湾曲部5の中央部には、下方に向けて窪んだ窪み部6が設けられている。
【0018】
天壁3の下面(湾曲部5の外縁部周辺の下面)には、下方に向けて延在する環状壁7が設けられている。環状壁7は、天壁3に連結する根元部8を備えていて、根元部8の下方には、順に中間部9と先端部10が設けられている。なお環状壁7は、その内周面は略垂直に延在するものであるが、その外周面は、根元部8、中間部9、先端部10で形状が異なっていて、また厚みも根元部8、中間部9、先端部10で異なっている。
【0019】
具体的に説明すると、根元部8は、環状壁7において厚みが最も厚い部位であって、その外周面は、径方向外側に向けて膨出するように形作られている。根元部8の外周面は、環状段部53の内周面よりも大径であって、キャップ1を口部51に装着した際には、環状段部53の内周面に液密に当接する。なお、以下の説明においては、根元部8の外周面を第一シール部11と称する。
【0020】
また中間部9の外周面は、下方に向かうにつれて中心軸Oに近づく向きに傾斜していて、中間部9の厚みは、上方から下方に向けて徐々に薄くなっている。
【0021】
そして先端部10の外周面は、中間部9と連結する部位から径方向外側に向けて膨出していて、そこから下方に向かうにつれて中心軸Oに近づく向きに傾斜している。ここで、先端部10の外周面における径方向外側に向けて膨出した部位の外径は、環状段部53の下方における口部51の内周面よりも大径であって、キャップ1を口部51に装着した際には、口部51の内周面に液密に当接する。なお、以下の説明においては、先端部10の外周面を第二シール部12と称する。
【0022】
また天壁3の下面(段差部4の略直下の下面)には、下方に向けて膨出するように形成された環状のコンタクトリング13が設けられている。コンタクトリング13は、キャップ1を口部51に装着した際に、口部51の上面に液密に当接する。
【0023】
そして外周壁2の内周面には、中心軸Oに向かって上方に傾いて延在する係止片14が設けられている。
図1に示すように口部51にキャップ1を装着した際、係止片14の先端部は、第一シール部11が環状段部53の内周面に当接する部位の略反対側で口部51の外周面に当接する。このような係止片14は、中心軸Oを周回する方向に切れ目無く環状に設けられるものでもよいし、間欠状に設けられるものでもよい。なお本明細書等で係止片14が間欠状に設けられるとは、係止片14が中心軸Oを周回する途中で複数に分断されるように設けられる(外周壁2の内周面における円周の長さに対してこの円周よりも周方向長さの短い複数の係止片部分が、中心軸Oを周回する方向に間隔をあけて複数設けられる)ものだけでなく、このような係止片部分が一つ設けられることも含む。
【0024】
また外周壁2の内周面において、係止片14の下方には、雄ねじ部54に適合する雌ねじ部15が設けられている。
【0025】
このように形成されるキャップ1は、口部51に対して、雄ねじ部54と雌ねじ部15とが螺合する向きに回転させることによって、口部51に装着することができる。口部51にキャップ1を装着した際、口部51に設けた環状段部53の内周面に第一シール部11が液密に当接する。また、口部51の外周面には係止片14の先端部が当接して、口部51は径方向外側から支持されるため、環状段部53の内周面と第一シール部11との密着性を確保することができる。このため、内容液が環状段部53の内周面と第一シール部11との間を通過して、外部に漏れ出す不具合を有効に防止することができる。また、口部51にキャップ1を装着する際、環状壁7は、第一シール部11が環状段部53に当接することによって径方向内側に倒れるような動きをするが、本実施形態では、天壁3の湾曲部5が梁の役目を果たすため、環状壁7の倒れ込みを防止することができる。このため、環状段部53の内周面と第一シール部11との密着性を維持することができる。
【0026】
本実施形態においては、口部51の内周面に第二シール部12が液密に当接し、またコンタクトリング13が口部51の上面に液密に当接する。このため、これらの間でも内容液の通過を防ぐことができるため、内容液が外部に漏れ出す不具合が更に有効に防止される。
【0027】
口部51に装着したキャップ1を取り外すに当たっては、螺合した雄ねじ部54と雌ねじ部15を緩める向きにキャップ1を回転させる。ここで係止片14は、外周壁2の内周面に向けて先端部が近づくように撓ませることが可能である。すなわち、係止片14の先端部が口部51の内周面に強くあたり過ぎることがないため、キャップ1を口部51から取り外す際、それ程大きな回転力を加えずにキャップ1を緩めることができる。また、係止片14を間欠状に設ける場合は、キャップ1を緩める際に要する力が更に小さくて済む。
【0028】
ところで係止片14は、キャップ1を口部51に装着した状態において、外周壁2の内周面から中心軸Oに向かって上方に傾いて延在するものである。このような係止片14は、キャップ1を形成する時点で上方に向けて傾斜するように形作ってもよいが、金型で成形する際、当初からこのような形態で形作ることは困難である。このため本実施形態の係止片14は、キャップ1を金型で成形する時点においては、
図2(a)に示すように、外周壁2の内周面から中心軸Oに向かって下方に傾いて延在するように形作っている。そして、容器50の収容空間Sに内容液を収容した後、キャップ1を口部51に被せ、次いで、雄ねじ部54に雌ねじ部15が螺合するようにキャップ1を回転させる。これにより口部51に対してキャップ1がねじ込まれ、係止片14の先端部が口部51に押し当たる。そしてキャップ1の回転を継続すると、口部51に押し当たった係止片14は、先端部が天壁3に近づくように反転するため、
図2(b)に示すように、上方に向かって傾斜させることができる。そして、
図2(c)に示すように最後までキャップ1を回転すれば、第一シール部11を環状段部53の内周面に、第二シール部12を口部51の内周面に、コンタクトリング13を口部51の上面に、それぞれ液密に当接させることができ、また係止片14の先端部を、第一シール部11が環状段部53の内周面に当接する部位の略反対側で、口部51の外周面に当接させることができる。
【0029】
なお、下方に向けて傾斜していた係止片14を上方に向けて傾斜させるには、
図2を参照しながら説明した方法以外のものでもよく、例えばキャップ1を成形後、口部51に装着する前に、治具で係止片14を反転させて押し込んでもよい。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、第二シール部12やコンタクトリング13は、何れか一方のみを設けてもよいし、両方とも省略してもよい。また、係止片14の形状も図示したものに限られず、例えばその肉厚や傾斜角度(上方に向けて傾く角度、及び金型で成形した際の下方に向けて傾く角度)は適宜設定可能である。そして、口部51に当接する係止片14の先端部における形状(口部51に当接させる範囲(周方向及び上下方向)や、当接する部位における形状)についても適宜設定可能である。また、環状壁7も適宜変更可能であって、本実施形態では1つの環状壁7に第一シール部11と第二シール部12を設けたが、環状壁7を2つ設けて1つの環状壁に第一シール部11を設け、もう1つの環状壁に第二シール部12を設けてもよい。より詳細に説明すると、図示した環状壁7に替えて、上下方向の長さが短い外側環状壁と、外側環状壁に対して同心二重配置をなすとともに、外側環状壁よりも上下方向の長さが長く径方向内側に位置する内側環状壁とを設け、外側環状壁の外周面に第一シール部11を設けて環状段部53の内周面に当接させ、内側環状壁の外周面に第二シール部12を設けて口部51の内周面に当接させてもよい。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0031】
1:キャップ
2:外周壁
3:天壁
4:段差部
5:湾曲部
6:窪み部
7:環状壁
8:根元部
9:中間部
10:先端部
11:第一シール部
12:第二シール部
13:コンタクトリング
14:係止片
15:雌ねじ部
50:容器
51:口部
52:上部開口
53:環状段部
54:雄ねじ部
O:中心軸
S:収容空間