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特許7330864スクラップ画像撮影システム、スクラップ画像撮影方法、撮影支援装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】スクラップ画像撮影システム、スクラップ画像撮影方法、撮影支援装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 15/00 20210101AFI20230815BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230815BHJP
   H04N 23/695 20230101ALI20230815BHJP
【FI】
G03B15/00 T
H04N23/60
H04N23/695
H04N23/60 500
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019203114
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021076711
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】松永 博之
(72)【発明者】
【氏名】多田 隆良
(72)【発明者】
【氏名】植村 欣司
(72)【発明者】
【氏名】山内 太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼次 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 和茂
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-255339(JP,A)
【文献】特公昭47-046983(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/141321(WO,A1)
【文献】特開2018-144938(JP,A)
【文献】特開2018-187605(JP,A)
【文献】特開2019-119545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00 - 15/16
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
B66C 1/00 - 3/20
B65G 1/00 - 1/20
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンと、
前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段と、
前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成するカメラと、
を備え
前記検知手段は、前記吊り具を撮影して生成された動画像に基づいて、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
スクラップ画像撮影システム。
【請求項2】
前記吊り具を撮影して前記動画像を生成するビデオカメラをさらに備える、
請求項に記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項3】
前記検知手段は、学習用画像中の吊り具の範囲を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記動画像中の前記吊り具の範囲を推定する、
請求項またはに記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項4】
前記検知手段は、鉄スクラップの持ち上げの有無をさらに教師データとして構築された前記学習済みモデルを用い、前記動画像中の前記鉄スクラップの持ち上げの有無をさらに推定し、前記鉄スクラップを持ち上げた前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
請求項に記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項5】
前記検知手段は、前記動画像中に設定された判定線を前記吊り具が越えた場合に、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
請求項ないしの何れかに記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項6】
前記動画像中の前記吊り具の位置に基づいて前記カメラの向きを調整する調整手段をさらに備える、
請求項ないしの何れかに記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項7】
前記静止画像から、前記吊り具の範囲を基準として画定される、前記吊り具の下方の範囲を少なくとも含む部分画像を抽出する加工手段をさらに備える、
請求項1ないしの何れかに記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項8】
前記加工手段は、前記部分画像のうち、前記吊り具から下方に向かうに従って徐々に狭まる範囲を表示領域とし、他の範囲を非表示領域とするマスク加工を施す、
請求項に記載のスクラップ画像撮影システム。
【請求項9】
吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知し、
前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、カメラにより前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成する、
スクラップ画像撮影方法であって、
前記検知は、前記吊り具を撮影して生成された動画像に基づいて、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
スクラップ画像撮影方法
【請求項10】
吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段と、
前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像
を生成するカメラに撮影指令を出力する出力手段と、
を備え
前記検知手段は、前記吊り具を撮影して生成された動画像に基づいて、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
撮影支援装置。
【請求項11】
吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段、及び、
前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成するカメラに撮影指令を出力する出力手段、
としてコンピュータを機能させ
前記検知手段は、前記吊り具を撮影して生成された動画像に基づいて、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップ画像撮影システム、スクラップ画像撮影方法、撮影支援装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電炉メーカーのスクラップ受入現場では、リフティングマグネット等の吊り具により鉄スクラップをトラック又は船から持ち上げ、搬送し、スクラップヤードに降ろすところを検収員が観察し、鉄スクラップの等級割合などを判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような検収員による判定は、検収員の経験等によってばらつきが生じるおそれがあるため、記録として残すだけでなく、再判定などに用いることができるように、吊り具により搬送される鉄スクラップを撮影した画像を保存しておくことが求められている。
【0004】
しかしながら、吊り具により搬送される鉄スクラップを撮影した画像を動画像として保存する場合も、定期的に撮影した静止画像として保存する場合も、検収員による判定の対象となった鉄スクラップの画像を抽出することが困難である。また、動画像では、ボケやブレが生じることがある上、データ量が過大となってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、吊り具により鉄スクラップが持ち上げられる毎に静止画像を生成することが可能なスクラップ画像撮影システム、スクラップ画像撮影方法、撮影支援装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様のスクラップ画像撮影システムは、吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンと、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段と、前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成するカメラと、を備える。
【0007】
また、本発明の他の態様のスクラップ画像撮影方法は、吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知し、前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、カメラにより前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成する。
【0008】
また、本発明の他の態様の撮影支援装置は、吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段と、前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成するカメラに撮影指令を出力する出力手段と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の態様のプログラムは、吊り具により鉄スクラップを持ち上げ、搬送するクレーンの、前記吊り具が所定の高さに到達したことを検知する検知手段、及び、前記吊り具が所定の高さに到達した場合に、前記吊り具を含む範囲を撮影して静止画像を生成するカメラに撮影指令を出力する出力手段、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吊り具により鉄スクラップが持ち上げられる毎に静止画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スクラップ受入現場の例を示す図である。
図2】実施形態に係るスクラップ画像撮影システムの構成例を示す図である。
図3】データセットの例を示す図である。
図4】学習用画像の例を示す図である。
図5】学習フェーズの手順例を示すフロー図である。
図6】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図7】ビデオカメラにより撮影される動画像及び推定結果の例を示す図である。
図8】カメラにより撮影される静止画像の例を示す図である。
図9】変形例に係る学習用画像の例を示す図である。
図10】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図11】変形例に係るスクラップ画像撮影システムの構成例を示す図である。
図12】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
図13】加工処理の手順例を示すフロー図である。
図14】加工処理を説明するための図である。
図15】加工処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[システム概要]
図1は、実施形態に係るスクラップ画像撮影システム100が設置されるスクラップ受入現場の例を示す図である。図2は、スクラップ画像撮影システム100の構成例を示すブロック図である。
【0014】
スクラップ画像撮影システム100は、電炉メーカー等のスクラップ受入現場においてクレーン9の吊り具91により持ち上げられた鉄スクラップSをカメラ3により撮影するためのシステムである。
【0015】
スクラップ受入現場では、クレーン9の吊り具91により鉄スクラップSがトラックTから持ち上げられ、搬送され、スクラップヤードYに降ろされる。鉄スクラップSは、例えばヘビー屑であり、種々の大きさのものが混在している。
【0016】
クレーン9は、リフティングマグネット等の吊り具91を備えており、クレーン運転室R内の運転者Aによって操作される。吊り具91は、リフティングマグネットに限らず、グラブバケット等であってもよい。
【0017】
スクラップ受入現場において、トラックTが進入する車両進入エリアとスクラップヤードYとの間には壁Wが設置されている。トラックTの荷台で鉄スクラップSを保持した吊り具91は、壁Wを超える高さまで上昇し、スクラップヤードYへ移動する。
【0018】
スプラップ受入現場には、吊り具91を撮影して動画像を生成するビデオカメラ2と、吊り具91を撮影して静止画像を生成するカメラ3(スチルカメラ)が設置されている。ビデオカメラ2及びカメラ3は、スクラップ画像撮影システム100の一部である。
【0019】
ビデオカメラ2は、トラックTの荷台及びその上方の空間を撮影範囲に含むように設置されており、トラックTの荷台から鉄スクラップSを持ち上げる吊り具91を撮影する(図7参照)。また、ビデオカメラ2は、スクラップヤードY及び壁Wの上端も撮影範囲に含むように設置されている。
【0020】
カメラ3は、所定の高さに位置する吊り具91を含む範囲を撮影するように設置されている。具体的には、カメラ3は、所定の高さに位置する吊り具91及び吊り具91により持ち上げられた鉄スクラップSを撮影範囲に含むように設置されている。カメラ3は、ビデオカメラ2の撮影範囲よりも狭い範囲を拡大して撮影する。
【0021】
カメラ3は、複数あってもよい。例えば、吊り具91により持ち上げられた鉄スクラップSを互いに異なる角度から撮影するように複数のカメラ3を設けてもよいし、壁Wの幅方向における吊り具91の位置に応じて使用するカメラ3を使い分けるように複数のカメラ3を設けてもよい。
【0022】
カメラ3は、吊り具91により持ち上げられた鉄スクラップSをより多く撮影できるように、吊り具91により持ち上げられた鉄スクラップSを側方から水平に又は下方から上方に向かって撮影することが好ましい。
【0023】
クレーン運転室R内には、カメラ3により撮影された画像を表示する表示部4が設置されている。運転者Aは、検収員を兼ねており、吊り具91に持ち上げられた実際の鉄スクラップSと表示部4に表示された鉄スクラップSとを観察して等級割合などを判定する。
【0024】
また、遠隔の事務所にも表示部4を設置して、事務所にいる1又は複数の検収員Bにより、表示部4に表示された鉄スクラップSを観察して等級割合などを判定してもよい。
【0025】
なお、スクラップ画像撮影システム100は、スクラップ加工会社におけるスクラップ出荷現場に適用されてもよい。スクラップ出荷現場では、クレーン9の吊り具91により鉄スクラップSがスクラップヤードYから持ち上げられ、搬送され、トラックTに積込まれる。
【0026】
図2に示すように、スクラップ画像撮影システム100は、撮影支援装置1、ビデオカメラ2、カメラ3(スチルカメラ)、データベース5、及び学習装置6を備えている。これらの機器は、例えばLAN等の通信ネットワークを介して相互に通信可能である。
【0027】
撮影支援装置1は、制御部10を備えている。制御部10は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。制御部10のCPUは、ROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0028】
制御部10は、取得部11、検知部12、及び出力部13を備えている。これらの機能部は、制御部10のCPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0029】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0030】
学習装置6も、撮影支援装置1と同様に制御部60を備えている。制御部60は、取得部61、学習部62、及び保存部63を備えている。なお、学習装置6は、1又は複数のサーバコンピュータで構成されてもよい。
【0031】
撮影支援装置1及び学習装置6は、データベース5にアクセス可能である。データベース5には、学習装置6により構築された学習済みモデル51が、撮影支援装置1により読出し可能に保存されている。
【0032】
ビデオカメラ2は、鉄スクラップSを搬送する吊り具91を撮影し、生成した動画像を撮影支援装置1に出力する。カメラ3は、撮影支援装置1からの撮影指令に応じて鉄スクラップSを搬送する吊り具91を撮影し、静止画像を生成する。
【0033】
[学習フェーズ]
図3は、学習フェーズに用いられるデータセットの例を示す図である。図4は、データセットに含まれる学習用画像Lの例を示す図である。学習フェーズに用いられるデータセットは、学習用画像、ラベル、及び範囲を含んでいる。
【0034】
「ラベル」は、学習用画像L中の範囲Nに含まれる物体が吊り具91であることを表す。「範囲」は、学習用画像L中の吊り具91を含む範囲Nを座標により表す。「ラベル」及び「範囲」は、教師データであり、例えばユーザによって判断され、付与される。
【0035】
図4に示すように、学習用画像Lは、例えば鉄スクラップSを持ち上げる吊り具91の画像である。吊り具91に持ち上げられた鉄スクラップSは、下方に向かうに従って徐々に狭まる略逆円錐形状(側面視において略逆三角形状)となる。学習用画像Lには、後述する加工処理が施されてもよい。なお、学習用画像Lは、鉄スクラップSを持ち上げていない吊り具91の画像を含んでもよい。
【0036】
また、学習用画像Lは、スクラップ受入現場に設置されたカメラ3で撮影された画像を含んでもよいし、ビデオカメラ2で撮影された画像を含んでもよい。また、学習用画像Lは、他の場所において他のカメラで撮影された他の吊り具の画像を含んでもよい。
【0037】
図5は、学習装置6において実現される学習フェーズの手順例を示すフロー図である。学習装置6の制御部60は、同図に示す処理をプログラムに従って実行することにより、取得部61、学習部62、及び保存部63として機能する。
【0038】
まず、制御部60は、学習用画像、ラベル、及び範囲を含むデータセットを多数作成する(S11、図3及び図4参照)。
【0039】
次に、制御部60は、データセットのうちの一部のデータセットを、トレーニングデータとして取得する(S12;取得部61としての処理)。
【0040】
次に、制御部60は、取得したトレーニングデータを用いて機械学習を実行する(S13;学習部62としての処理)。具体的には、制御部60は、学習用画像を入力データとし、ラベル及び範囲を教師データとして、画像から吊り具の範囲を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0041】
学習済みモデルは、例えばYOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)又はFaster R-CNN等の物体検出モデルである。
【0042】
次に、制御部60は、データセットのうちのトレーニングデータとは別の一部のデータセットを、テストデータとして取得し(S14)、取得したテストデータを用いて学習済みモデルを評価する(S15)。
【0043】
その後、制御部60は、評価が所定以上であった学習済みモデルをデータベース5に保存し(S16)、学習フェーズを終了する。
【0044】
[推論フェーズ]
【0045】
図6は、撮影支援装置1において実現される、実施形態に係るスクラップ画像撮影方法としての推論フェーズの手順例を示すフロー図である。撮影支援装置1の制御部10は、同図に示す処理をプログラムに従って実行することにより、取得部11、検知部12、及び出力部13として機能する。
【0046】
まず、制御部10は、ビデオカメラ2から動画像を取得する(S21;取得部11としての処理)。
【0047】
次に、制御部10は、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用い、ビデオカメラ2から取得された動画像中の吊り具91の範囲を推定する(S22)。具体的には、制御部10は、動画像に含まれる複数の静止画像(フレーム)のそれぞれを入力データとして順番に学習済みモデルに入力する。
【0048】
次に、制御部10は、推定された吊り具91の範囲に基づいて、吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定する(S23;検知部12としての処理)。具体的には、制御部10は、吊り具91が上昇して所定の高さに到達したか否かを判定する。
【0049】
図7は、ビデオカメラ2により撮影される動画像Vの例を示す図である。動画像Vには、吊り具91が鉄スクラップSをトラックTの荷台から持ち上げ、壁Wを超え、スクラップヤードYに搬送する様子が映っている。
【0050】
動画像Vには、推定結果として、吊り具91を囲む範囲Mと、吊り具91であることの確度を表す数値とが付されている。さらに、動画像Vには、吊り具91を囲む範囲Mの中心点の軌跡Kも付されている。
【0051】
動画像Vには、吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定するための判定線Lが設定されている。判定線Lは、例えばユーザの操作によって任意の位置に設定される。図示の例では、判定線Lは、壁Wの上端に沿って設定されている。
【0052】
動画像V中の吊り具91の範囲Mの中心点又は全体が判定線Lを下側から上側に超えた場合に、吊り具91が所定の高さに到達したと判定される。
【0053】
図6の説明に戻り、吊り具91が所定の高さに到達した場合(S23:YES)、制御部10は、カメラ3に撮影指令を出力し(S24;出力部13としての処理)、カメラ3により生成された静止画像を保存する(S25)。カメラ3は、撮影指令を受けると、吊り具91及びそれに持ち上げられた鉄スクラップSを撮影して、静止画像を生成する。
【0054】
すなわち、吊り具91がトラックTの荷台からスクラップヤードYに向かうため判定線Lを下側から上側に横切った場合に、カメラ3による静止画像の撮影が行われる。一方、吊り具91がスクラップヤードYからトラックTの荷台に向かうため判定線Lを上側から下側に横切った場合には、カメラ3による静止画像の撮影は行われれない。
【0055】
なお、制御部10が撮影指令を出力するタイミングは、吊り具91が所定の高さに到達した(吊り具91の範囲Mが判定線Lを超えた)直後であってもよいし、吊り具91が所定の高さに到達してから所定時間経過後であってもよい。
【0056】
制御部10は、トラックTの荷台から全ての鉄スクラップSを搬送し終わるまで、上記S21~S25の処理を繰り返す(S26)。全ての鉄スクラップSを搬送し終えたか否かは、例えば運転者A等によって判断され、入力される。
【0057】
以上に説明した実施形態によれば、吊り具91が鉄スクラップSを持ち上げる毎にカメラ3により撮影された複数の静止画像を得ることが可能となる。
【0058】
このように得られる複数の静止画像は、例えば、等級割合などの判定結果を記載した検収伝票に添付される。これにより、検収における判定の根拠を示すことができ、判定結果の信頼性を向上させることが可能となる。また、複数の静止画像を保存しておくことで、検収における判定の根拠を後で見直すことも可能となる上、異物等の受入除外品が混入していた場合に証拠として利用することも可能となる。
【0059】
図8は、カメラ3により撮影される静止画像Cの例を示す図である。カメラ3により撮影された静止画像Cには、吊り具91及びそれに持ち上げられた鉄スクラップSが映っている。静止画像Cでは、動画像V(図7参照)よりも吊り具91及びそれに持ち上げられた鉄スクラップSが画像中に占める範囲が大きい。また、静止画像Cは、動画像Vよりも解像度が高く、ボケやブレが少ない。
【0060】
これに限らず、高解像度の動画像を撮影することが可能なビデオカメラ2であれば、動画像に含まれる複数の静止画像(フレーム)から、吊り具91が所定の高さに到達したときの静止画像を抽出するように構成してもよい。すなわち、ビデオカメラ2を上記態様における「カメラ」としてもよい。
【0061】
[第1変形例]
図9は、第1変形例に係る学習フェーズに用いられる学習用画像の例を示す図である。図10は、第1変形例に係る推論フェーズの手順例を示すフロー図である。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、本例に係る学習フェーズに用いられるデータセットは、学習用画像、ラベル、及び範囲に加えて、スクラップ有無をさらに含んでいる。「スクラップ有無」は、吊り具91が鉄スクラップSを持ち上げているか否かを表す。
【0063】
学習装置6の制御部60(図2参照)は、学習用画像を入力データとし、ラベル、範囲及びスクラップ有無を教師データとして、画像から吊り具の範囲及び鉄スクラップの持ち上げの有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0064】
例えば、学習済みモデルの鉄スクラップの持ち上げの有無を表す出力層にはソフトマックス関数が用いられ、鉄スクラップの持ち上げの有無の確度が0~1の間の数値として出力される。
【0065】
図10に示すように、本例に係る推論フェーズにおいて、制御部10は、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用い、ビデオカメラ2から取得された動画像中の吊り具91の範囲及び吊り具91による鉄スクラップSの持ち上げの有無を推定する(S37)。
【0066】
次に、制御部10は、吊り具91が鉄スクラップSを持ち上げており(S38:YES)、且つ、吊り具91が所定の高さに到達した場合に(S23:YES)、カメラ3に撮影指令を出力し(S24)、カメラ3により生成された静止画像を保存する(S25)。
【0067】
このように、鉄スクラップSを持ち上げている吊り具91が所定の高さに到達したことを検知してカメラ3で撮影することにより、鉄スクラップSを持ち上げていない吊り具91をカメラ3で撮影してしまうことを抑制することが可能となる。
【0068】
[第2変形例]
図11は、第2変形例に係るスクラップ画像撮影システム100の構成例を示す図である。図12は、第2変形例に係る推論フェーズの手順例を示すフロー図である。上記実施形態と重複する構成又は手順については、同番号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、本例に係るスクラップ画像撮影システム100は、カメラ3の向きを調整する調整部7をさらに備えている。調整部7は、例えば複数軸のモータを含んでいる。また、撮影支援装置1の制御部10は、吊り具91の位置を算出する位置算出部14と、調整部7を駆動してカメラ3の向きを調整する方向調整部15と、をさらに含んでいる。
【0070】
図12に示すように、本例に係る推論フェーズにおいて、制御部10は、吊り具91が所定の高さに到達した場合(S23:YES)、推定結果に基づいて吊り具91の位置を算出し(S47;位置算出部14としての処理)、吊り具91を向くようにカメラ3の撮影方向を調整した上で(S48;方向調整部15としての処理)、カメラ3に撮影指令を出力する(S24)。
【0071】
このように、吊り具91を向くようにカメラ3の撮影方向を調整することにより、静止画像において吊り具91及びそれに持ち上げられた鉄スクラップSが見切れてしまうことを抑制することが可能となる。
【0072】
[第3変形例]
図13は、カメラ3により生成された静止画像Cに対する加工処理の手順例を示すフロー図である。図14及び図15は、加工処理を説明するための図である。撮影支援装置1の制御部10は、同図に示す処理をプログラムに従って実行することにより、加工手段として機能する。
【0073】
まず、制御部10は、カメラ3から静止画像Cを取得する(S51)。図14(a)に示すように、静止画像Cに含まれる鉄スクラップSは、吊り具91から下方に向かうに従って徐々に狭まる略逆三角形状となっている。
【0074】
次に、制御部10は、静止画像Cにおける吊り具91の範囲Mを検出する(S52)は、吊り具91の範囲Mの検出は、上記S22と同様に、学習済みモデルを用いた推定により実現される。
【0075】
次に、制御部10は、静止画像Cから吊り具91の範囲Mを基準として画定される部分画像COを切り出す(S53)。図14(b)に示すように、部分画像COは、吊り具91の下方の範囲を少なくとも含むように画定される。
【0076】
具体的には、部分画像COの左右端は、吊り具91の左右端よりもやや外側に位置している。部分画像COの横幅は、吊り具91の横幅よりもやや広い程度(例えば1.1~1.5倍程度)とされる。
【0077】
また、部分画像COの上端は、吊り具91の上端の位置とされる。部分画像COの下端は、吊り具91の下端から所定の高さだけ下方に位置している。具体的には、部分画像COの下端は、部分画像COと同じ横幅の、吊り部91の下端と重なる底辺を持ち、下方に向かうに従って徐々に狭まる逆三角形(例えば、逆直角三角形など)の範囲MNの下端(頂点)の位置とされる。
【0078】
次に、制御部10は、部分画像COのうち、逆三角形の範囲MNを表示領域とし、その他の範囲MFを非表示領域とするマスク処理を行う(S54)。マスク処理は、逆三角形の範囲MNの左右に隣接する範囲MFを例えば黒く塗りつぶすことによって実現される。又は、範囲MFを透過としてもよい。
【0079】
以上により、加工処理が終了する。このようにして得られる画像は、上記図8に示す静止画像Cに代えて、検収伝票に添付されたり、証拠として保存される。これによれば、画像データの保存容量の低減を図ることが可能となる。また、マスク処理が施されているので、着目する必要のない背景部分を除外することも可能となる。
【0080】
なお、表示領域とする範囲MNの形状は、逆三角形に限らず、例えば図15(c),(d)に示すように、下方に向かうに従って徐々に狭まる逆台形状であってもよいし、図15(e),(f)に示すように矩形状であってもよい。また、図15(b),(d),(f)に示すように、表示領域とする範囲MNの上方の吊り具91及びその両側も、非表示領域として黒く塗りつぶしてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0082】
上記実施形態では、学習済みモデルを用いて吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定したが、これに限らず、例えば吊り具91の外周面に光学式マークを付しておき、ビデオカメラ2により生成される動画像中で光学式マークを認識することにより、吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、ビデオカメラ2により生成される動画像に基づいて吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定したが、これに限らず、例えばクレーン9にレーザー距離計等を設置することによって吊り具91が所定の高さに到達したか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 撮影支援装置、10 制御部、11 取得部、12 検知部、13 出力部、14 位置算出部、15 方向調整部、2 ビデオカメラ、3 カメラ、4 表示部、5 データベース、51 学習済みモデル、6 学習装置、60 制御部、61 取得部、62 学習部、63 保存部、7 調整部、9 クレーン、91 吊り具、100 スクラップ画像撮影システム、Y スクラップヤード、S 鉄スクラップ、T トラック、W 壁、R クレーン運転室、A 運転者(検収員)、L 学習用画像、N 範囲、V 動画像、M 範囲、K 軌跡、L 判定線、C 静止画像

図1
図2
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