(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ねじ山成形具、及びねじ山を成形する方法
(51)【国際特許分類】
B23G 7/02 20060101AFI20230815BHJP
B23G 5/06 20060101ALI20230815BHJP
B21H 3/10 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B23G7/02
B23G5/06 B
B21H3/10 Z
(21)【出願番号】P 2019528075
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2017080130
(87)【国際公開番号】W WO2018096002
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】102016122701.3
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505455004
【氏名又は名称】エミューゲ ヴェルク リチャード グリンペル ゲーエムベーハー ウント カンパニー ケージー ファブリック ファープレーツィシオンスヴェルクツォイゲ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】グリンペル、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ベルシュナイダー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】フェンゼル、ユルゲン
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504787(JP,A)
【文献】特開2002-370126(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005019921(DE,A1)
【文献】実開昭60-153725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 5/06,7/02;
B21H 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8mmから
20mmの間の公称直径を有するねじ山の非切削加工のためのねじ山工具であって、
複数の押圧ランドであって隣接する押圧ランドとの間に予め決定された分離角度で、工具軸を具体的には実質的にらせん状に周回する
カーブであるシェイピングカーブに沿って各々配置された押圧ランドを有するねじ山形成部を含み、
各々の分離角度は、予め決定された最大分離角度より小さいかこれと同じであり、ねじ山工具の公称直径が8mmから20mmの場合、最大分離角度は、
T
max=sin
-1((a×ND
y+b×ND+c)×2×π)
に従い、
ここで、
i)
8≦ND<10では、a=-0.0008、b=0.00705、c=0.1325、y=2;
ii)10≦ND<12では、a=1.7924/(2π)、b=0、c=0、y=-0.408;
iii)12≦ND≦20では、a=0.751/(2π)、b=0、c=0、y=-0.104となり、
T
maxは、最大分離角度であり、NDは、ミリメートル単位で計測されたねじ山工具の公称直径であり、
前記分離角度は、前記シェイピングカーブに沿った少なくとも周について、8mmから10mmの間のねじ山工具の公称直径では前記押圧ランドの数が厳密に7である、ねじ山工具。
【請求項2】
ねじ山の非切削加工によるねじ山工具であって、
請求項1に記載された、少なくとも1つ、好ましくは複数の押圧ランドを含み、
少なくとも1つの押圧ランドに設けられたねじ山工具の長手方向軸線の方向に向けられた少なくとも1つのフランクが、0ではない角度で前記ねじ山工具のコア直径から外側に延びる接線と交差する第1及び第2部分フランク表面を含み、
選択的に、前記接線は、ねじ山工具の長手方向軸線に対して実質的に径方向外側に延び、より具体的には軸方向投影で見たときに径方向と実質的に平行に外側に延びる、ねじ山工具。
【請求項3】
前記接線は、ねじ山の先端を通って延び、前記接線は、好ましくはねじ山工具の長手方向軸線と平行な軸方向投影で見たときに、幾分、径方向前端に存在する、請求項2に記載のねじ山工具。
【請求項4】
前記シェイピングカーブ又は頂上カーブに直線的な接線が存在し、
前記第1及び第2部分フランク表面は、予め決定された半径では、シェイピングラインと直交するカッティング平面で測定されたときにそれぞれの押圧ランドが前記直線的な接線で最大厚さを有するように前記直線的な接線で互いに接触し又は交差する、請求項2又は3に記載のねじ山工具。
【請求項5】
各々の分離角度は、シェイピングカーブに沿った各々の周について、シェイピングカーブに沿って連続する押圧ランドの押圧ランドの数が整数、より具体的には奇数であるように選択され、選択的に、分離角度は、シェイピングカーブに沿って連続する押圧ランドの押圧ランドの数が、ねじ山工具の公称直径についてND≧8、又はND>8の奇数で予め決定されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のねじ山工具。
【請求項6】
分離角度は、各々の周のシェイピングカーブに沿って連続して存在する押圧ランドにおける押圧ランドの数は、公称直径が10mm~12mm未満の場合、少なくとも9、より厳密には9となり、公称直径が12mm又は12mm以上、より好ましくは12mm~20mm未満の場合、少なくとも11、より厳密には11となるような方法で決定される、請求項5に記載のねじ山工具。
【請求項7】
押圧ランドは、前記ねじ山工具の長手方向軸線に対して径方向外側に延びるねじ山工具先端を含み、選択的に、前記押圧ランドは、前記ねじ山工具先端及び前記シェイピングカーブと平行に延びる中央平面に関して非対称である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のねじ山工具。
【請求項8】
前記押圧ランドは、径方向外側かつねじ山形成回転方向を指すタッピングエッジ、及び径方向外側かつねじ山形成回転方向とは反対側を指す自由タッピングエッジを含み、所定の測定深さに対する前記タッピングエッジで定められるタッピング角度は、所定の測定深さに対する前記自由タッピングエッジによって実現される自由タッピング角度よりも大きくなる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のねじ山工具。
【請求項9】
前記押圧ランドは、複数の押圧ウェブを形成するように組で配置され、選択的に、各々の押圧ウェブは、長手方向軸線と実質的に平行に延び、又は前記長手方向軸線に対してらせん状に延び、前記シェイピングカーブに沿って前記押圧ランドが他の押圧ランドの後ろにあるように配置された前記押圧ランドは、前記ねじ山工具のねじ山ピッチの1倍又は複数倍で長手方向軸線と平行に配置される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のねじ山工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ山成形具及びねじ山成形具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ山を製造し、又はねじ山を再生する方法として、非切削加工法及びねじ切り工具が知られている。非切削ねじ山製造工具の中には、例えば、いわゆる転造タップが含まれる。
【0003】
転造タップは、工具軸に関して軸方向に動作するねじ切り工具であり、一般に、一般に工具シャンク上に実現される作業領域を含み、成形くさび、押圧ランド、又はタッピング歯と呼ばれ、工具軸をらせん状に取り囲む作業面の構成を含む。
【0004】
ねじ山は、工具軸を中心とした工具の回転、及び工具軸に沿った軸方向の送りで作業面によってワークピース内に押圧される。転造タップは、ワークピースをそれぞれの接触位置/表面で加圧成形又は冷間成形することによってねじ山を製造する。
【0005】
非切削ねじ山製造工具、即ち転造タップの利点は、切削で作業するねじ山製造工具とは対照的に、フライス加工されたねじ山に対するねじ山の製造における加工物の変形により、ねじ山構造の領域での圧縮が得られ、それによってより耐摩耗性のねじ山を製造することができる。
【0006】
一般に転造タップのシャンクは、円筒形で実現され、そのタンがワークピース及び作業領域から遠くなるように、電動工具やドライブのクランピングチャックに受け入れられ、保持される。
【0007】
作業領域には、製造されるべきねじ山と反対の形状のねじ山成形プロファイルが設けられており、したがって、特に同じねじ山ピッチを有する。長手方向において又はねじ山形状において、ねじ山成形工具は、したがって、互いに同じ距離で離れた交互の高さ又は歯、及びへこみ又はしわを有し、これはねじ山のピッチが一定であることを意味する。歯の断面は、において半径方向外側に鋭角で先細りになっていてもよく、それらの頭又は山の領域は丸みを帯びていてもよい。
【0008】
作業領域内の断面において、転造タップは一般にほぼ多角形の外形を有し、作業表面(成形くさび、押圧ランドまたはタッピング歯)は、対応する多角形の角領域を形成する。例えば、溝、特に冷却用および/または潤滑用の溝を角部領域または押圧ランドの間に形成することができる。代替的に又は付加的に、転造タップは工具の内部に延びるチャネルを有することができ、その各々は冷却剤及び潤滑剤を供給するように構成することができる。
【0009】
転造タップの場合、転造タップの作業領域が、例えば、コーン形状ランアップ領域又はタッピング領域において、工具シャンクから離れて位置決めされた工具先端に向けてテーパーするように形成されてもよい。例えば、押圧ランドは、内向きにオフセット、より具体的には押圧ランドは大きく変化しない形状とされてもよい。
【0010】
タッピングにより、ねじ山形状、より具体的にはねじ山深さは、押圧ランドの増加する半径方向の前進の結果、徐々に製造される。その上、第1押圧ランド又はタッピング領域内のタッピング歯のワークピース、例えばボアの内壁内へのめり込みを容易にでき、これは押圧ランドでの成形力を減らすのを可能にする。
【0011】
ランアップ領域/タッピング領域内での隣接する又は連続する押圧ランド又はタッピング歯の間での半径方向の前進又は工具軸からの半径方向距離の増加は、成形高さに指定される。
【0012】
ランアップ領域につながるガイド又はキャリブレーション領域では、半径方向の前進又は押圧ランド若しくはタッピング歯の半径方向長さ、又は外径は一定のままである。上記領域は、転造タップを、ランアップ領域から形成することで製造されたねじ山に誘導し、該当する場合にはねじ山を滑らかにし、又はキャリブレーションする。
【0013】
転造タップで雌ねじ山を製造するためには、一般に、転造タップの作業領域の外径よりも小さい内径を有するボアがワークピース内に製造される。次いで、転造タップを、作業領域が定められた軸方向フィードに対して前にして、工具シャンクの長手方向軸回り、即ち工具軸回りの定められた回転で、ねじ山成形方向、即ち右ねじについては時計回りに、左ねじについては反時計回りの回転でボア内に挿入する。
【0014】
転造タップをボア内に挿入するとき、押圧ランド、具体的にはねじ山先端及び転造タップの関連する成形表面は、ワークピース又はボアの表面に押し込まれ又は押し付けられる。
【0015】
この場合、ワークピースの材料は、塑性変形し、転造タップの作業領域の押圧ランド又はタッピング歯の軸方向に隣接するへこみ又はしわの間に半径方向にずらされる。トルク及び摩擦、より具体的には機械的-摩擦学的荷重は、タッピングのとき、全てのタッピング歯が係合するまで増加する。一端、転造タップが十分に回転すると、それは反対方向に回転させることによって製造されたねじ山から取り除かれ、取り除く間、動的摩擦トルク及び機械的-摩擦学的荷重は連続的に減少する。
【0016】
ワークピースを成形した結果、ねじ山が製造されたとき、押圧ランドは、一方ではワークピースの成形をもたらし、他方では、機械的荷重として押圧ランド又はタッピング歯の製品寿命に重大な影響を有するささいではない力、より具体的には摩擦力にさらされる。より具体的には特定の半径では、前進及び押圧ランド又はタッピング歯の形態は、発生する力だけではなく製造されるねじ山の品質に影響を及ぼす。
【0017】
DE11 2009 005 043 T5は、ねじ山を製造するとき、摩擦トルク及び発生熱を減らす特別な特徴を有するタッピング歯を有する転造タップを開示する。
【0018】
DE 10 2012 100 734 A1は、成形挙動を向上させるために、作業領域のシェイピングカーブに沿って第1及び第2押圧ランドの間の分割角度を適合させた転造タップを開示する。
【発明の概要】
【0019】
ここから始まって、本発明の目的は、新規な、より具体的には大腿のねじ山成形具及び対応する製造方法を提供することである。より具体的には、精密なねじ山成形及び/又は、例えば従来のねじ山成形具がねじ山成形具において達成できたものと比較して長い製品寿命を可能にするねじ山成形具及び対応する方法が提供される。
【0020】
上記目的は、独立項の特徴により達成される。設計及び変形は、従属項から製造され、加えて、以下の詳細な説明、より具体的にはここで説明される設計及び実施形態から具体的に製造される。
【0021】
回転-直動によりねじ山を製造するために実現され、セットされたねじ山成形具(具体的には転造タップ)、即ちねじ山を製造する工具が本発明の設計にしたがって提供される。
【0022】
ねじ山を製造するコンセプトは、この場合、具体的にはねじ山の新規製造及びワークピース上の既存のねじ山の再加工の両方であると理解すべきである。
【0023】
「回転-直動」の用語は、ねじ山を製造する間、ねじ山成形具がその長手軸線(より具体的には、工具軸、回転軸)回りに回転し(回転部分)、同時にその方向、即ち長手方向軸線と平行に移動(直動部分)することを意味する。
【0024】
ねじ山成形具又は転造タップによるねじ山の非切削製造は、具体的にはワークピースを成形、より具体的には転造の結果、ワークピースにねじ山が製造されることを意味する。
【0025】
成形によって製造されたねじ山は、上述したように機械製造されたねじ山と比較して、ワークピース材料の繊維前端の結果として、ねじ山歯/タッピング歯の領域で改善された強度を実現できる。
【0026】
提案されるねじ山成形具は、即ち、複数の押圧ランド(より具体的には、作業表面、成形くさび、タッピング歯)を有する少なくとも1つ、より具体的には1つ又はそれ以上のねじ山成形部分を含む。
【0027】
押圧ランドは、具体的にはねじ山成形具の長手方向軸線を参照して、ねじ山を製造し、及び/又はねじ山を再加工するために、径方向外側に突出(より具体的には突き出る)するランド(より具体的には、歯、くさび)によって実現される。
【0028】
押圧ランドは、具体的には押圧ランドでの押圧の結果、ワークピースが対応する表面、及び/又は接触領域で成形されるように、かつ押圧ランド及びへこみ(具体的にはしわ)の間に配置された押圧ランドの構造で定められるねじ山が実現されるように、実現される。
【0029】
押圧ランドは、本発明の設計で、各々のケースでは予め決定された分離角度で設計され、分離角度は、工具軸(より具体的には回転軸、長手方向軸)の周りのシェイピングカーブに沿って隣接する押圧ランドの間に、具体的にはらせん状に定められる。らせん状のシェイピングカーブは、具体的には製造されるべきねじ山の各々のピッチから製造される。
【0030】
本発明によれば、シェイピングカーブに沿って隣接する押圧ランドの間の分離角度は、予め決定された最大分離角度よりも小さいか、同じである。
【0031】
公称直径が6mm~20mmの公称直径のねじ山成形具については、本発明の実施形態の最大分離角度は以下で決定され:
Tmax=sin-1((a×NDy+b×ND+c)×2×π)
ここで、
i)6≦ND<10では、a=-0.0008、b=0.00705、c=0.1325、y=2;
ii)10≦ND<12では、a=1.7924/(2π)、b=0、c=0、y=-0.408;
iii)12≦ND≦20では、a=0.751/(2π)、b=0、c=0、y=-0.104となり、
Tmaxは、最大分離角度であり、NDは、ミリメートル単位で計測されたねじ山工具の公称直径である。上記では「×」は、掛け算を示す。
【0032】
ねじ山工具の公称直径は、具体的には適用される場合にはランアップ領域(具体的にはタッピング領域)に接続される、ねじ山工具のガイド領域によって実質的にもたらされる可能性のある大き過ぎ又は小さ過ぎを考慮せず又は独立したねじ山工具の公称直径である。公称直径、即ちねじ山工具の公称直径は、関連する雌ねじの最小許容外径であると理解すべきである。
【0033】
分離角度は、具体的には軸方向突出を参照して定められ、シェイピングカーブに沿って連続する2つの押圧ランドの中央平面によって定められることを理解すべきである。具体的には、分離角度は、シェイピングカーブ又は周方向に沿って隣接する押圧ランドの間で、シェイピングカーブの方向又は周方向に工具軸を参照して測定された中間角度であることを理解すべきである。このように、分離角度の用語は、当該分野で通常使用されているものに対応する。
【0034】
具体的には、i)~iii)による特定の公称直径の範囲内にあるねじ山工具では、所与の関係を有する押圧ランドは、より大きい分離角度を有するねじ山工具と比較して、より具体的には比較可能な又はより向上したねじ山品質と共に大幅に製品寿命が延びたことが示された。
【0035】
例えば、実地試験又は調査では、本発明に対応して実現されたねじ山工具は、有利には、従来のねじ山工具と比較して1.5~2.0倍の製品寿命を有することが示された。
【0036】
特定の関係によって決定された分離角度は、従来技術で示されていた分離角度よりも全体的に小さく、これは具体的には、シェイピングカーブ全周にわたって配置された押圧ランドの数が従来のねじ山工具よりも多いことを意味する。
【0037】
具体的には、特定の関係から製造された押圧ランド間の最大許容距離、より具体的には中心間距離、及び関連するシェイピングカーブに沿った押圧ランドの数が製品寿命に多大な影響を及ぼすことは本発明による認識である。これに関して、製品寿命及び/又はねじ山品質/ねじ山強度は、最大分離角度を減らし、又は従来のねじ山工具と比較して押圧ランドの数を増やすことで達成できることが本発明による認識であり、最大許容分離角度の特定の関係が特に有利であることが証明された。
【0038】
上記の関係に対応する押圧ランドの配置の結果、例えば従来技術のねじ山工具と比較してより小さい周の間の小さい距離又は小さい分離角度により、押圧ランドの数の増加の結果もたらされた、ねじ山の製造の間に生じる摩擦の増加、及び関連するトルクの増加があっても製品寿命の明確な増加を達成できる。小さい分離角度では、ねじ山の製造の間、ねじ山の塑性部分の跳ね返りが形成されるのを減らせる。これに関連して、例えば連続する押圧ランドの間の周方向の距離、具体的にはねじ山工具の成形コーン領域が短くなったので、個々の成形歯に最小荷重をもたらすことができる。
【0039】
本発明の設計によりワークピースにねじ山を製造する方法が提供される。方法は、少なくとも以下のステップを含む、
ワークピースを提供し、
ここで説明した発明の設計によりねじ山工具を提供し、
ねじ山工具を軸方向-回転に同時に回転させ移動させることでねじ山を製造し、ねじ山工具は、予め決定された回転速度で、予め決定された軸送り速度で移動する。
【0040】
方法による利点及び有利な効果については、ここにも適用されるねじ山について述べた事項を引用する。
【0041】
ねじ山工具及び対応する方法の両方に適用される本発明の更なる設計は、具体的に対応する特徴がねじ山工具又はねじ山の製造方法と関連しているかに関わらず以下で説明される。
【0042】
ある設計では、各々の分離角度は、シェイピングカーブに沿った各々の周について、シェイピングカーブに沿って連続する押圧ランドの押圧ランドの数が整数、より具体的には奇数であるように選択される。
【0043】
具体的には分離角度は、一方で分離角度が最大分離角度よりも小さく、他方でねじ山成形部分のシェイピングカーブに沿って周当たり整数個、より具体的には奇数個の押圧ランドが存在するように選択される。
【0044】
具体的には同一ではない数の押圧ランドを使用するとき、実現された対応するねじ山工具について有利に長い製品寿命を達成できる。設計では、分離角度は、ねじ山の公称直径がND≧8又はND>8について、シェイピングカーブに沿って連続する押圧ランドの押圧ランドの数が奇数となるように選択される。
【0045】
最大分離角度及び/又は分離角度は、シェイピングカーブ9に沿って少なくとも1周、又は選択的に各々の周において6mmから8mmの間のねじ山工具の公称直径Daでは押圧ランドの数が厳密に6であり、8mmから10mmの間のねじ山工具の公称直径Daでは押圧ランドの数が厳密に7となるように決定される。
【0046】
分離角度は、例えば隣接する押圧ランドについて全て同じ値となるように選択される。
【0047】
変形例では、分離角度は、具体的には各々の場合について予め決定された所与のパターン又は規制に対応するシェイピングカーブに沿って連続する押圧ランドで異なるように決定される。例えば、分離角度は予め決定された間隔で周方向に繰り返してもよい。
【0048】
更なる設計では、分離角度は、シェイピングカーブに沿って各々のケースで予め決定された幾つかの押圧ランドの間の分離角度の和が周角度、即ち360°となるように選択されてもよい。
【0049】
設計では、特に後者の場合には、ここで提案された関係を維持する隣接する押圧ランドの間の分離角度は、ねじ山工具を軸方向投影で見たときに複数の組の押圧ランドが、他の押圧ランドの後ろにあるように、より具体的には他の押圧ランドの後ろに調和するように選択される。
【0050】
ある設計では、押圧ランドのそれぞれの組は、軸方向に延びる押圧ウェブを実現でき、隣接する押圧ウェブは中間溝、より具体的には冷却又は潤滑溝によって互いに分離できる。
【0051】
具体的には軸方向投影で連続して配置される押圧ランドの組では、ねじ山工具の長手方向軸線と平行に延びる押圧ウェブ又は溝を得られる。連続配置ではない設計の場合、押圧ランドの前端又は溝の前端がらせん経路又は湾曲を辿る押圧ウェブのグループを得られる。
【0052】
分離角度、即ち隣接する押圧ランドの間の分離角度は、各々の周のシェイピングカーブに沿って連続して存在する押圧ランドにおける押圧ランドの数は、公称直径が10mm~12mm未満の場合、少なくとも9、より厳密には9となり、公称直径が12mm又は12mm以上、より好ましくは12mm~20mm未満の場合、少なくとも11、より厳密には11となるような方法で決定される。
【0053】
具体的には、設計では、分離角度は、≧10mmかつ<12mmの公称直径では周方向においてにおいて厳密に9個の押圧ウェブが存在し、≧12mmかつ<20mmの公称直径では周方向においてにおいて厳密に11個の押圧ウェブが存在する方法で選択できる。
【0054】
具体的には、指定された公称直径について特定の数の押圧ランドについて、有利に長い製品寿命がもたらされる。
【0055】
本発明の更なる実施形態では、各々選択的に少なくとも1つ、ねじ山工具の長手方向軸線の方向に向けられた、より具体的には指向性要素の長手方向軸線と平行に向けられた少なくとも一つのフランクが提供され、押圧ランドは、各々の場合、第1部分及び第2部分フランク表面を有する。
【0056】
第1部分フランク表面は、例えば押圧ランドのタッピング表面、即ちねじ山の製造中、少なくとも部分的にワークピースの材料と能動的に係合する成形表面であってもよい。
【0057】
第2部分フランク表面は、例えばねじ山の製造中、タッピング表面の下流に連結された自由、即ち成形プロセスを先導するタッピング表面を追従するタンピング表面であってもよい。
【0058】
部分フランク表面は、例えばねじ山工具先端に向けられた押圧ランドのフランク上に実現されてもよい。しかしながら対応する部分フランク表面は、長手方向において押圧ランドの両方に存在してもよい。
【0059】
独立して請求可能な部分フランク表面は、これらが押圧ランドの部分フランク表面に平行な平面であり、ゼロではない角度、好ましくは鈍角でねじ山工具のコア直径から外側に延びる接線(具体的にはカッティングライン、カッティングエッジ)に沿って交差する方法で本発明の実施形態として実現されてもよい。
【0060】
ある設計では、部分フランク表面は、接線がねじ山工具の長手方向軸線に対してほぼ径方向外側に延びる方法で実現される。例えば、フランク表面は、軸方向投影時の接線は、ねじ山工具の長手方向軸線に対してほぼ半径方向と平行に外側に延びる方法で実現される。
【0061】
ねじ山工具のコア直径は、具体的には押圧ランドの間に実現されたへこみのへこみ底部においてねじ山工具で測定された直径と理解すべきである。コア直径は、具体的には外側直径以下、径方向高さ/それぞれの押圧ランドの長さからもたらされる。
【0062】
押圧ランドが対応して設計される場所では、押圧ランドは、外側に向けられた実質的に同符号の主曲率をもつ形態を含んでもよい。
【0063】
より具体的には同符号の主曲率をもつ形態だけではなく、本発明の他の実施形態、更なる実施形態では、押圧ランドは領域の最も外側の点を定める頂点又は頂上領域を含んでもよい。接線(具体的には接触端、カッティングライン、カッティングエッジ)は、この場合、及び本発明の更なる実施形態では、押圧ランドの頂点を通って延び、又は対応する頂上領域のほぼ中心を通る。例えば、半径方向投影で見たときに接線は、頂点又は頂上領域の中心を通るシェイピングカーブに沿って延びる押圧ランドの頂点カーブまで横方向、より具体的には直交して延びてもよい。
【0064】
接線は、ねじ山工具を製造するときに使用される切削ディスクの運動学、及び/又はねじ山工具でそれぞれ所望されるタッピング角度若しくは自由タッピング角度により生じ、より具体的には決定される。シェイピングカーブ又は頂点カーブは、より具体的には、コア直径から押圧ランドの少なくとも半分に至るまで延びる直線を描き又は仮想する方法で決定される。
【0065】
部分フランク表面は、予め決定された半径では対応する押圧ランドが形状付け線と直交するカッティング平面内の接線で測定された最大厚さを含む方法で、接線で互いに接触し(具体的にはカット)する方法の設計で提供されてもよい。
【0066】
最大分離角度の状態に加えて部分フランク表面が、接線が上述した設計のいずれかで実現された方法で実現されている具体的な場合には、向上した安定性と同時に精密なねじ山構造を決定できた。
【0067】
具体的には、ここで提案された1周当たりに存在する押圧ランドの数の選択肢、具体的には公称直径に依って提案した押圧ウェブの数と上述した設計の何れかによって説明されたフランク構造との組み合わせは、従来のねじ山工具と比べて向上した安定性を得られる。
【0068】
押圧ランド、より具体的には各々の押圧ランドが、ねじ山工具の長手方向軸線(具体的には、回転軸線)に対して半径方向外側に延びるねじ山工具先端を含む設計を提供してもよい。ねじ山工具先端は、例えば上述した頂点又は頂上領域であってもよい。
【0069】
外側に突出するねじ山工具先端は、具体的には先端に向けてテーパーし、又は先端の方法で外側に突出するねじ山工具の一部であることを理解すべきである。このような設計の利点及び有利な効果のために、外側に向く頂点に関連した上述の記載を参照し、ここに使用する。
【0070】
設計及び変形例では、押圧ランド、より具体的には各々の押圧ランドは、ねじ山工具先端を通りシェイピングカーブと平行に延びる中央平面に対して非対称に実現できる。
【0071】
押圧ランドが非対称な方法で設計されると、具体的にはねじ山工具の安定性を向上させられる。例えば、ねじ山工具の一端から先端まで、より具体的にはタッピングエッジに沿ったシェイピングカーブに沿った押圧ランドの径方向高さの整数が、ねじ山工具の先端から押圧ランドの他端まで、より具体的には押圧ランドの自由タッピングエッジに沿ったシェイピングカーブに沿った押圧ランドの径方向高さの整数よりも小さいとき有利である。
【0072】
具体的には、上述したねじ山工具先端の設計の場合、接線がねじ山工具先端を通って、より具体的には例えばねじ山工具先端の頂点を通って、例えば、軸方向投影において接線がねじ山工具の長手方向軸線と平行な、近似的径方向前端を示す方法で延びることがさらに有利である。具体的には、このような押圧ランドの寸法は、対応する成形プロセスの結果、ねじ山が十分な強度及び安定性で製造されるのを可能にし、ねじ山工具がそれに応じて実現されると、有利に長い製品寿命を同時に得られる。
【0073】
ある設計では、押圧ランド、より具体的には各々の押圧ランド、より具体的にはランアップ領域(より具体的には、タッピング領域)に存在する各々の押圧ランド、及び/又はガイド領域(より具体的には、キャリブレーション領域)にある各々の押圧ランドは、外側を指し、より具体的にはねじ山成形方向に向けられたタッピングエッジ、及び外側を挿し、より具体的にはねじ山成形方向と反対側に向けられた自由タッピングエッジを含む。
【0074】
タッピングエッジは、具体的には長手方向軸線に対して径方向外側を向き、ねじ山工具のねじ山成形方向(より具体的にはねじ山成形回転方向)に向けられており、ねじ山の製造時に材料内に能動的に押し進められるエッジであることを理解すべきである。それに対して、自由タッピングエッジは、長手方向軸線に対して径方向外側を指し、ねじ山工具のねじ山成形方向(より具体的には、ねじ山成形回転方向)とは反対側に向けられたエッジであると理解すべきであり、自由タッピングエッジは、タッピングエッジと比べて材料内の追加の前進が達成されないと理解すべきである。
【0075】
タッピング領域の用語は、導入において既に説明したように、工具シャンクから離れているねじ山工具の工具先端の領域であり、押圧ランドが径方向前進について、又は隣接する又は連続する押圧ランド又はタッピング歯の間の工具軸からの径方向距離について増加を示す領域であることを理解すべきである。上述したように、前進の増加は、成形高さを表す。
【0076】
その上、ガイド領域又はキャリブレーション領域は、少なくとも径方向前進が増加せず、前進が一定であるタッピング領域に接続される領域であるものと理解すべきである。
【0077】
本発明のある設計では、より具体的には対応して設計されたタッピングエッジ又は自由タッピングエッジでは、予め決定された測定深さに対するタッピングエッジによって実現されるタッピング角度は、予め測定された深さでの自由タッピングエッジによって実現される自由タッピング角度よりも大きくなるように提供されてもよい。
【0078】
測定深さの用語は、この場合、測定深さによって減じられたねじ山工具の(一般)外径の角度高さで実施されるタッピング角度又は自由タッピング角度の対応測定であることを理解すべきである。
【0079】
タッピング角度又は自由タッピング角度を決定するために、軸方向投影又はタッピングエッジ若しくは自由タッピングエッジを通って延びる押圧ランドの中心平面に対して、タッピングエッジ又は自由タッピングエッジと測定深さ円との交点においてタッピングエッジ又は自由タッピングエッジに接平面を配置する。タッピング角度又は自由タッピング角度は、したがって測定深さ円の指定の交差点での対応する接平面と参考接平面の間で実現される角度の量であり、<90°である。
【0080】
換言すれば、タッピング角度又は自由タッピング角度は、タッピングエッジ又は自由タッピングエッジがタッピングエッジ又は自由タッピングエッジと測定深さ円との交点で接平面が傾斜していなければならない傾斜角度の量であり、測定深さ円上の交点に配置された参考接平面と一致するように移動するために<90°である。
【0081】
タッピング角度及び自由タッピング角度の特定の範囲により、具体的には比較的長い製品寿命に繋がる低摩耗動作を得られる。
【0082】
押圧ランドの少なくとも1つのフランクが2つの部分フランク表面を含む設計では、シェイピングカーブ9に沿って少なくとも1周、又は選択的に各々の周について、公称ねじ山工具直径について、即ち6mmから10mm未満のねじ山工具のねじ山部分の公称直径では、押圧ランドの数が厳密に6であり、8mmから10mm未満の間のねじ山工具の公称直径では押圧ランドの数が厳密に7となるように決定される。換言すれば、6mmから8mm未満の公称直径に対応する設計では、厳密には1周、より具体的にはシェイピングカーブに沿った長手方向軸線の周りの任意の周当たり6個の押圧ランドが存在し、8mmから10mm未満の公称直径に対応する設計では、厳密には1周、より具体的にはシェイピングカーブに沿った長手方向軸線の周りの任意の周当たり7個の押圧ランドが存在する。
【0083】
より具体的には、押圧ランドの指定された数と、対応する部分フランク表面の組み合わせは、製品寿命に有利であり、達成可能なねじ山品質を証明した。
【0084】
ある設計では、押圧ランドが複数の押圧ウェブの形態の組で配置されてもよい。更なる設計では各押圧ウェブは、ねじ山工具の長手方向軸線(より具体的には回転軸線)と実質的に平行に延び又はねじ山工具の長手方向軸線(より具体的には回転軸線)に対してらせん状に延びてもよい。
【0085】
より具体的には、ある設計では、シェイピングカーブに沿って押圧ランドが他の押圧ランドの後ろにあるように配置された押圧ランドは、ねじ山工具のねじ山ピッチの1倍又は複数倍で長手方向軸線(より具体的には、回転軸線)と平行に配置されてもよい。
【0086】
ある設計では、押圧ランドの表面はポリシング処理の結果、少なくとも部分的に滑らかであってもよい。ポリッシング処理は、例えばダイアモンドダストでポリッシングしてもよく、ポリッシング処理はダイアモンドダストによる対応するポリッシングステップを含んでもよい。
【0087】
本発明を、例示の実施形態を例に挙げ添付の図面を参照して説明することにより、以下でより詳細に、より具体的には更なる特徴及び利点に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図2】ねじ山工具のねじ山工具ヘッドの拡大図を示す。
【
図3】ねじ山工具先端に向けて見たねじ山工具ヘッドの上面図を示す。
【
図4】ねじ山工具の押圧ランドの一部を拡大した図を示す。
【
図5】押圧ランドのタッピング及び自由タッピングの前端を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1乃至
図5において対応する部分及び要素は、同じ参照符号で示される。
【0090】
図1は、ねじ山工具1の斜視図を示し、例えば上述した材料で形成されたワークピース上に雌ねじ山を非切削加工するためのものである。
【0091】
ねじ山工具1は、ねじ山工具ヘッド3の形態で実現される作業領域で実現されるねじ山工具の一端に、モータ駆動チャック(図示せず)にクランプする工具シャンク2を含む。
【0092】
ねじ山工具ヘッド3は、長手方向軸線L(具体的には、工具軸、回転軸)の周りにらせん状に配置された複数の押圧ランド4を含み、他の要素と共にねじ山工具1のねじ山プロファイルを定める押圧ランド4のらせん状先端は、ねじ山工具ヘッド3で製造できるねじ山ピッチに対応する。その中央面がねじ山のピッチに対応するように角度付けられて配置された押圧ランド4は、長手方向軸線Lを横切って延び、らせん状先端の実質的に平行に並ぶ。
【0093】
特に、ねじ山工具1のねじ山ヘッド3の拡大図を示す
図2から分かるように、ねじ山工具ヘッド3は、ねじ山に、プロフィール仰角、及び押圧ランド4によって交互に形成され、らせん状先端と実質的に平行に並んだたへこみ又はしわを含む。長手方向軸線Lの方向に見たときに、かつ例示の実施形態では、押圧ランド4及び対応するそれぞれのへこみは、互いに同一の距離を有しており、これはねじ山のピッチが一定であることを意味する。
【0094】
例示の実施形態の押圧ランド4は、中央面の断面において径方向外側にテーパーし、前記押圧ランドは、径方向の最も外側の領域において、より具体的にはヘッド又は頂領域5において円みを帯びている。
【0095】
図示の転造タップ1の場合、作業領域、即ちねじ山工具ヘッド3が、コーン型のタッピング領域7において工具シャンク2から離れて配置された工具先端6に向けてテーパーしており、押圧ランド4は全体形状があまり変化せずに、タッピング領域7において徐々に内側にオフセットされている。
【0096】
タッピング領域7により、押圧ランド4の増加する径方向前進の結果、対応するねじ山プロフィールが徐々に製造され、その上、押圧ランド4の材料表面、即ち対応するボアの内壁内への侵入が、雌ねじ山を作るのを容易にし、押圧ランド4全体の作業負荷を減らすのを可能にする。
【0097】
ランアップ領域7に接続されるガイド又はキャリブレーション領域8では、押圧ランド4の径方向の前進(具体的には、径方向長さ)は実質的に一定であり、前記領域はランアップ領域で製造されたねじ山内で転造タップを誘導し、適用可能な場合にはねじ山を滑らかにし、又はねじ山をキャリブレートする。工具シャンク2の端に向けて、ガイド又はキャリブレーション領域8は、コーン型に減少する領域と併合され、押圧ランド4の径方向長さが工具シャフトのレベルまで減少する。
【0098】
ランアップ領域/タッピング領域内の隣接する又は連続する押圧ランド4の間の径方向前進の増加は、高さを形成することを指す。
【0099】
転造タップ1により雌ねじ山を製造するためには、一般に、最初にボアがワークピースに形成され、このボアは転造タップ1の外径Da、即ち公称直径Daよりも小さい(ねじ山先端6の方向からねじ山ヘッドを見た
図3を参照)。
【0100】
次いで転造タップ1は、工具先端を先頭にして、決定された角度送り出し、及び決定された長手方向軸線L回りの回転で、ねじ山形成方向Rに向けて、ボア内に導入される。
【0101】
この場合、押圧ランド4及び/又は例えば以下でより詳細に説明される押圧ランド4の軸方向に整列したフランクのような関連する成形表面がボア内に押し込まれ、材料成形、具体的には冷間加工によりボア内にねじ山が製造される。
【0102】
上述したようにワークピースの材料は、この場合、塑性変形し、ねじ山工具ヘッド3の押圧ランド4の間の凹み内に向けて径方向に変形する。
【0103】
タッピング中は、押圧ランド4が係合するまでトルクが増加する。転造タップ1が十分に回転したら、転造タップ1は反対方向に回転することにより製造されたねじ山から出され、出されるにしたがって摺動摩擦トルクは連続して減少する。
【0104】
ワークピースを成形してねじ山が製造されると、一方でワークピースの成形に影響を及ぼし、他方で機械的応力として押圧ランド4の製品寿命に明白な影響がある重大な力、より具体的には摩擦力が押圧ランド4に生じる。より具体的には、径方向の前進及び押圧ランド4の形態は、発生する力だけではなく、製造されるねじ山の品質及び強度に影響を及ぼす。
【0105】
本発明によるねじ山工具の場合、
図1乃至
図4に示すように押圧ランド4は、押圧ランド4により定められ長手方向軸線Lの周りにらせん状に延びる形状付けカーブ9に沿って配置され、押圧ランド4は、複数の押圧ウェブ10(
図3参照)の形態の組で配置される。
【0106】
例示の実施形態の各押圧ウェブ10は、長手方向軸線Lと実質的に平行に延びる。しかしながら押圧ランド4の他の配置も可能であり、例えば、押圧ウェブ10が長手方向軸線Lに対してらせん状に延び、又は例えばシェイピングカーブ9の方向で押圧ランド4の間隔が異なっており、長手方向軸線Lに沿った少なくとも一部には押圧ウェブ10が形成されていないことも可能である。
【0107】
複数の押圧ウェブ10の形態で押圧ランド4を組にする配置は、溝11をもたらし、溝は、例えば円周方向に隣接する押圧ウェブ10の間に潤滑剤及び/又は冷却剤を供給するのに使用できる。
【0108】
例えば工具シャンク2及びねじ山工具ヘッド3の内部に形成され、例えば工具先端6の領域に向けて開く、更なる潤滑剤/冷却剤溝(図示せず)も考えられる。
【0109】
図1乃至
図4に示すねじ山工具1は、公称直径Da、即ち10mmの外径を有するねじ山工具1である。総合的には、図示のネジ山工具1は、長手方向軸線L、即ち工具軸L1周当たり9つの押圧ランド4、又は押圧ウェブ10を含む。より具体的には、押圧ランド4のこのような配置は、高いねじ山品質及びねじ山強度と共に、低摩耗及び長い製品寿命に関して有利であることが証明された。
【0110】
より具体的には、
図1乃至
図4に示されたねじ山工具1では、押圧ランド4は、工具軸L、即ち長手方向軸線Lの周りで実質的にらせん形状に延びるシェイピングカーブ9に対して、予め決定された分離角度T(
図3参照)で配置されている。
【0111】
内在する発明、及び摩耗及びねじ山品質、及び/又はねじ山強度に関する内在する発明の結論に関して、押圧ランド4の間の各々の分離角度Tは、予め決定された最大分離角度Tmaxより小さいかこれと同じであり、最大分離角度Tmaxは、
Tmax=sin-1((a×NDy+b×ND+c)×2×π)で決定され、
ここで、
i)6≦ND<10では、a=-0.0008、b=0.00705、c=0.1325、y=2;
ii)10≦ND<12では、a=1.7924/(2π)、b=0、c=0、y=-0.408;
iii)12≦ND≦20では、a=0.751/(2π)、b=0、c=0、y=-0.104となる。Tmaxは、最大分離角度であり、NDは、ミリメートル単位で計測されたねじ山工具の公称直径である。
【0112】
より具体的には、独立して請求可能なこれらの領域i)、ii)、及びiii)は、上述した関係から作られる。
【0113】
Da=10mmである図示のねじ山工具では、上述の関係により最大分離角度は約45.76°である。1周当たり9個の分離ランド4、又は押圧ウェブ10の例の図示の実施形態の実際の又は有効な分離角度Tは、40°であり、したがって、実際に最大分離角度Taより小さい。実際の分離角度は、具体的には最大分離角度より小さいか又はこれと同じになるように選択でき、1周当たりの押圧ランドの数は、整数、例えば奇数である。
【0114】
全ての分離角度が同一である必要はない。それどころか、押圧ランド4を、2つ又はそれ以上の分離角度Taを用いてシェイピングカーブに沿って配置してもよい。
【0115】
公称直径、即ち外形Daが12mmである本発明のねじ山工具1では、上述の関係より最大分離角度Tmaxが約35.45°となる。
【0116】
製品寿命及びねじ山品質が特に有利であると証明された、押圧ランドの数が、各々の周についてシェイピングカーブに沿って整数となるように、より具体的には奇数となるように選択された場合、例えば12mmの公称直径Daでは、1周当たり11個の押圧ランドを提供でき、これは35.45°の最大分離角度Tmaxよりも小さい32.73°の有効分離角度Tに対応する。
【0117】
既に述べたように、特定の関係による最大分離角度について、ねじ山工具1の製品寿命と押圧ランド4の製品寿命に関して利点があり、これは、有利なねじ山品質及びねじ山安定性を同時に達成できる。
【0118】
より具体的には、本発明の枠組内のねじ山工具について得られた知識によれば、分離角度が、各々の周のシェイピングカーブ9に沿って連続して存在する押圧ランド4における押圧ランド4の数は、公称直径Daが10mm~12mm未満の場合、少なくとも9、より厳密には9となり、公称直径が12mm又は12mm以上、より好ましくは12mm~20mm未満の場合、少なくとも11、より厳密には11となるような方法で決定されることが有利であることが証明された。
【0119】
図2、
図3、特にねじ山工具1の分離ランド4の一部を拡大して示す
図4から分かるように、工具先端6に向けられた押圧ランド4のフランク13は、各々第1部分フランク表面13.1及び第2部分フランク表面13.2を含んでもよい。
【0120】
より具体的には、最大分離角度Tmaxの特定の関係下では、第1部分フランク表面13.1及び第2部分フランク表面13.2が、ねじ山工具のコア直径Dkから外側に延びる接線14に沿って交差するとき、向上した製品寿命及び/又はねじ山品質に関して有利であることが証明され、部分フランク表面13は、0ではない角度、より具体的には鈍角で交差する。後者は、例えば、各々の場合、押圧ランド4が周方向の接線14上で、長手方向軸線Lと平行な径方向部分で長手方向に測定された最大厚さを含む。
【0121】
例示の実施形態のねじ山工具1では、低減された摩耗に関して有利であることが証明された接線14は、ねじ山工具1の長手方向軸線Lに対して実質的に径方向外側に延びる。
【0122】
特に
図3から分かるように、押圧ランド4は、各々が、ねじ山工具1の長手方向軸線Lに関して径方向外側に延びるねじ山工具先端12となるように実現され、接線14はねじ山先端12に向けて開く。
【0123】
ねじ山先端12は、押圧ランド4の領域にねじ山が製造されたときに最大径方向前進を提供し、部分フランク表面13及び接線14に沿って比較的高い摩擦力及びトルクにさらされる。
【0124】
接線13が、各々の場合、ねじ山工具先端12に向けて開いたコア直径Dkにあるので、具体的には
図4から分かるように、ここでは径方向外側に向いた押圧ランド4のエッジ15は、接線14がエッジ15を越えて径方向外側に延びるように、対応するこぶを有する。
【0125】
その結果、ねじ山の製造中、径方向前進、及び径方向/軸方向成形力が、接線14に向けてねじ山成形方向Rとは反対側に増加し、接線から再び減少する。より具体的には、最大分離角度Tmaxにより与えられた、押圧ランド4の特別な形状、及び例えば周方向での押圧ランド4の間、より具体的にはねじ山先端12の間の距離により、ねじ山工具1の製品寿命に有利であり、本発明により比較的良いねじ山品質及び強度を達成できる。
【0126】
特に
図3から分かるように、各々の場合に周方向で隣接するねじ山先端12を接続する接線は、単純に3個のねじ山工具先端12を含む、
図3に示す多角形Pを形成する。
図1乃至
図4のねじ山工具1の例では、1周当たり見られるシェイピングカーブ9に沿った各多角形は、9個の角を含む。
【0127】
図2及び
図3に示すように、本例の全ての押圧ランド4は、ねじ山工具先端12を通って延び、シェイピングカーブ9と直交する前記カッティング平面S(
図3、5参照)は、非対称となるように実現される。
【0128】
例示の実施形態のねじ山工具1は、各々の押圧ランド4が、径方向外側に向くタッピングエッジ15.1を含み、ねじ山成形方向Rを向いており、第1部分フランク表面13.1と径方向に接続される。この場合、第1部分フランク表面13.1は、タッピング表面を表す。
【0129】
その上、各々の押圧ランド4が、径方向外側に向く自由タッピングエッジ15.2を含み、ねじ山成形方向Rと反対を向いており、第2部分フランク表面13.2と接続される。この場合、第2部分フランク表面13.2は、タッピング表面を表す。
【0130】
ある設計によれば、
図5に示すように、押圧ランド4は、タッピングエッジ15.1によって定められるタッピング角度が、予め測定された深さに関して、予め決定された測定深さにおいて、自由タッピングエッジ15.2により定められた自由タッピング角度よりも大きい。
【0131】
上述した接線14及び/又は対応するタッピングエッジ15.1及び自由たんっピングエッジ15.2、若しくはタッピング角度及び自由タッピング角度に関連する非対称に対応する具体的なねじ山工具1の場合、最大分離角度Tmaxが6mmから10mm未満の公称直径Daについて説明されたように決定される設計が提供され、実際の分離角度Tは、公称直径6mmから8mm未満について好ましくはシェイピングカーブ9に沿って1周当たり厳密に6個の押圧ランドが存在し、公称直径8mmから10mm未満については厳密に7個の押圧ランドが存在するように決定される。有利には、このような設計のために製品寿命及びねじ山品質及び/又はねじ山強度が作成される。
【0132】
さらなる設計では、少なくとも第1部分フランク表面13は、ポリッシング処理、例えばダイアモンドダストにより滑らかにされる。より具体的には、提案した押圧ランド4の特定の構成及び形状に加えて、製品寿命及びねじ山品質について更なる利点を達成できる。
【0133】
例示の実施形態から分かるように、ここで提案されるねじ山工具1はねじ山の製造を可能にし、対応する方法は、
ワークピースを提供し、
ここで提案されたねじ山工具を提供し、
ねじ山工具を軸方向-回転に同時に回転させ移動させることでねじ山を製造し、ねじ山工具は、予め決定された回転速度で、予め決定された軸送り速度で移動することを含む。
【0134】
ねじ山が製造されるとき、タッピングエッジ13.1及びタッピングフランク13.1、即ち第1部分フランク表面13.1及びねじ山工具先端12は、具体的にはタッピング領域7で径方向に進められ、押圧ランド4及び押圧ランド4の間のへこみの軸方向シーケンスに対応してワークピースの被加工面が成形、より具体的には冷間加工され、ねじ山工具ヘッド3の構造に対応するねじ山が製造される。
【0135】
ガイド及びキャリブレーション領域8では、(適用される場合には、ワークピース材料の塑性跳ね返りによるものは別にして)径方向へのさらなる前進は存在しない。上述したように、ガイド及びキャリブレーション領域8がねじ山工具ヘッド3を、タッピング領域7によって製造されたねじ山に導き、及び/又は既に製造され/既に存在するねじ山を再加工し又はキャリブレーションする目的で提供される。
【0136】
全体として、シェイピングカーブ9に沿って予め決定された分離角度Tで配置された複数の押圧ランドでねじ山を非切削加工するためにここで提案したねじ山工具により、具体的には比較的高いねじ山品質及びねじ山強度をと同時に、有利な製品寿命を可能にする。
【符号の説明】
【0137】
1 ねじ山工具
2 工具シャンク
3 ねじ山工具ヘッド
4 押圧ランド
5 頂部領域
6 工具先端
7 タッピング領域
8 ガイド領域、キャリブレーション領域
9 シェイピングカーブ
10 押圧ウェブ
11 溝
12 ねじ山工具先端
13 フランク
13.1 第1部分フランク表面
13.2 第2部分フランク表面
14 接線
15 エッジ
15.1 タッピングエッジ
15.2 自由タッピングエッジ
L 長手方向軸線
Da 外形
Dk コア直径
T 分離角度
Tmax 最大分離角度
E 中央平面
P 多角形
R ねじ山成形方向
S カッティング平面