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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230815BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019556945
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018057039
(87)【国際公開番号】W WO2018192730
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2019-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】102017206544.3
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ユンゲ
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】山村 浩
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-347633(JP,A)
【文献】特開平11-305034(JP,A)
【文献】特開2014-191321(JP,A)
【文献】特開平5-330362(JP,A)
【文献】特開2003-344801(JP,A)
【文献】特開2015-7763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像生成ユニット(10)、偏向ユニット(2)、およびミラーユニット(3)を備えたヘッドアップディスプレイにおいて、
前記偏向ユニット(2)は、ミラー要素(21)を有し、該ミラー要素(21)は、基板(211)上に存在する部分的分光反射層(212)を有し、該部分的分光反射層(212)上には、吸収偏光層(213)が該部分的分光反射層(212)に対して平行に配置され、該吸収偏光層(213)は、当該偏光層(213)と同じ偏光方向を有する光は透過し、他の偏光の光は吸収し、前記部分的分光反射層(212)は、可視成分を反射しかつ赤外線成分を透過するバンドパス特性を有し、前記基板(211)は、非透光性であり、赤外線成分を吸収する、
ことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記部分的分光反射層(212)は、実質的に、前記画像生成ユニット(10)によって生成される波長領域でのみ反射する、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記基板(211)は平坦な表面(215)を有し、前記部分的分光反射層(212)は、前記基板(211)に蒸着された層(212)であり、前記偏光層(213)は、積層されたフィルムである、請求項1または2記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記基板(211)は、中実の金属ブロック、プラスチック材料、およびガラス基板のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記基板(211)として、暗いプラスチック、金属、セラミック要素、または着色ガラスが使用される請求項1から4までのいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
ヘッドアップディスプレイを製造する方法であって、
平坦な表面(215)を有する基板(211)を提供するステップ(S1)と、
部分的分光反射層(212)を、前記基板(211)の表面に蒸着するステップ(S2)と、
吸収偏光層(213)を、前記部分的分光反射層(212)に積層するステップ(S3)と、
前記ステップによって得られたミラー要素(21)を、前記ヘッドアップディスプレイの偏向ユニット(2)に取付けるステップ(S4)と、
を含み、
前記部分的分光反射層(212)は、可視成分を反射しかつ赤外線成分を透過するバンドパス特性を有し、
前記吸収偏光層(213)は、前記部分的分光反射層(212)に対して平行に配置され、
前記吸収偏光層(213)は、当該偏光層(213)と同じ偏光方向を有する光は透過し、他の偏光の光は吸収し、
前記基板(211)は、非透光性であり、赤外線成分を吸収する、
ヘッドアップディスプレイを製造する方法。
【請求項7】
前記ミラー要素(21)は、最初に前記偏向ユニット(2)に取付けられ、その後でモジュールとしてヘッドアップディスプレイに組み込まれる、請求項6記載のヘッドアップディスプレイを製造する方法。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載のヘッドアップディスプレイに使用されるように構成され、設けられている、ミラー要素(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ユニットが外部からの入射光による損傷から保護されているヘッドアップディスプレイ、対応するミラー要素、ならびにヘッドアップディスプレイを製造する方法に関する。
【0002】
ヘッドアップディスプレイは、フロントガラスに、運転者にとって可視の仮想画像を生成する。この画像は、通常、例えば液晶表示器(LCD,Liquid Crystal Display)などの表示ユニットに生成され、ミラーを用いてダッシュボードの孔部を通してフロントガラスに反射される。とりわけ、表示ユニットを過熱から保護することはしばしば必要となる。
【0003】
独国特許出願公開第102005020233号明細書は、画像生成ユニット、偏向ユニット、およびミラーユニットを備えたヘッドアップディスプレイを示し、この場合、このヘッドアップディスプレイは、付加的に、偏向ユニットとミラーユニットとの間に配置された偏光層を有している。これには、外部から入射する散乱光が1つの偏光方向のみで画像生成ユニットまで到達する一方で、入射する光出力の約50%は偏光層によって阻止されるという利点がある。これに関する欠点とみなされるのは、付加的な要素、偏光層が配置されることにある。この発明はさらに、偏光方向に関する保護しか提供せず、一方、入射する障害光の約50%は画像生成ユニットにまで侵入し、その際この画像生成ユニットを損なわせる可能性がある。
【0004】
米国特許第9,423,615号明細書は、画像生成ユニット、偏向ユニットおよびミラーユニットを備えたヘッドアップディスプレイを示している。ここでは偏向ユニットは、光の赤外線(IR)成分を反射せずに透過させる部分的分光反射ミラーを有している。このミラーの後方に配置されたIRセンサーは、透過光の強度を検出する。この透過光の強度が高すぎる場合には、画像生成ユニットの光源の出力が低減されるかまたは完全にスイッチオフされる。これに関する欠点とみなされるのは、運転者のヘッドアップディスプレイが多くの状況において使用できなくなることである。なぜなら、過熱の危険性のためにスイッチオフされているからであり、あるいは光源の出力が低下した場合には、完全に使用できなくなる。
【0005】
ここで望ましいことは、画像生成ユニットを、外部からヘッドアップディスプレイに入射する障害光による、特に日光による損傷から保護することである。この損傷は、主に発熱によって、つまり光の長波IR成分によって生じ、ならびに他の波長成分の吸収と熱への変換とによって発生する。また短波UV成分によって引き起こされる損傷も可能な限り回避すべきである。
【0006】
本発明によれば、ヘッドアップディスプレイは、画像生成ユニット、偏向ユニット、およびミラーユニットを備え、ここで、偏向ユニットは、ミラー要素を有し、該ミラー要素は、基板上に存在する部分的分光反射層を有し、該部分的分光反射層には、吸収偏光層が存在し、該吸収偏光層は、当該偏光層と同じ偏光方向を有する光は透過し、他の偏光の光は吸収することが想定されている。ここでは、画像生成ユニットは、例えば液晶表示器であり、マイクロミラーに基づく、または他の適切な画像生成技術に基づくLEDもしくはOLEDベースの表示器である。
【0007】
特に液晶表示器では、過度の加熱が破壊に結びつく。少なくとも、過度の加熱は、液晶表示器の動作に影響を及ぼす。また、他の技術による表示器も、過度の光入射によって悪影響を受ける。偏向ユニットは、画像生成ユニットからの光をミラーユニットに偏向し、該ミラーユニットでは、画像生成ユニットの画像が周辺画像に重畳され、この重畳された画像が、ヘッドアップディスプレイが存在する車両の運転者の目に投影される。
【0008】
本発明によれば、部分的分光反射層の機能と、偏光層の機能とが、ヘッドアップディスプレイの偏向ユニットのミラーの機能を付加的に引き継ぐ単一の部品に組み合わされる。この二重の手段により、取り付けの際の費用の高騰を要することなく、発熱に対する保護が高められる。なぜなら付加的部品が存在しないからである。さらなる利点は、光学的界面の数を増やすことなく複数の機能を可能にさせることにある。各光学的界面には反射や光の屈折などが伴い、このことは、個別に見れば、運転者によって知覚される仮想画像のわずかな損傷を引き起こすだけであるが、全体として見れば、結像品質に影響を及ぼし、そのため対策が必要である。このことは、ヘッドアップディスプレイの複雑さと製造コストとを増加させる。単一の光学的界面の場合、観察者から邪魔に感じられる不所望な反射が既に発生する可能性がある。各さらなる光学的界面は、さらなる不所望な反射を引き起こす可能性がある。本発明によるミラー要素の場合、偏光層が、反射層に対して平行に当該反射層の上に配置されているため、ここでは付加的な妨害反射は発生しない。本発明によるミラー要素は、吸収偏光子である。偏光分離がどのように行われるかに応じて、偏光子は2つの種類に区別される。ここには反射偏光子があり、これは、入射された無偏光の光を、反射偏光成分と透過成分とに分解する。この場合、透過成分は、反射偏光方向の成分も含み得る。反射偏光子に対する一例は、既知の格子型偏光子である。さらに、ここでは吸収偏光子もあり、これは、無偏光の光から一方の偏光成分は吸収し、他方は例えば適切に配向された分子によって透過させる。つまり偏光子の種類に対しては、偏光分離の種類が決定的である。本発明によるミラーへのさらなる吸収層、偏光層の被着は、吸収層がこの配置構成において二重に光によって横断され、このことがその有効厚さを2倍にするというさらなる利点になる。つまり、不所望な偏光成分の十分な低減を達成するためには、比較的薄い吸収偏光層で既に十分となる。
【0009】
本発明によれば、部分的分光反射層がバンドパス特性を有することが想定されている。好適には、光の可視成分、つまり約400nm~約800nmの間の波長は反射され、一方、約800nmより大きい波長を有する赤外線成分ならびに約400nm未満の波長を有するUV成分は透過する。したがって、可視成分のみが画像生成ユニットに到達する。特に熱を発生する波長の長い赤外線成分は、部分的分光反射層を透過し、画像生成ユニットに損傷を与える可能性がない他の箇所で熱を発生する。相応のことは、波長の短い紫外線成分に対しても当てはまる。
【0010】
好適には、部分的分光反射層は、実質的に、画像生成ユニットによって生成される波長領域でのみ反射する。これには、画像生成ユニットの波長選択的な光生成において、例えば当該画像生成ユニットが、レーザー光源もしくは他の狭帯域光源に基づいている場合、このようにして障害光のさらにわずかな割合が画像生成ユニットに到達し、一方、他の波長領域は、部分的分光反射層を透過し、画像生成ユニットには到達しないという利点がある。それに対して、画像生成ユニットによって生成された光ビームは、運転者によって知覚される仮想画像を生成するために、所望のように、選択的分光反射層によって反射される。
【0011】
本発明によれば、基板は平坦な表面を有し、この平坦な表面に部分的分光反射層が蒸着されていることが想定されている。この場合、偏光層は、部分的分光反射層に積層されたフィルムである。これには、さらに安価に製造可能である単一の部品がここにあるという利点がある。平坦な表面を有する基板は、湾曲した表面を有する基板よりも容易に製造可能である。ここでは、例えば、大量生産からの板ガラスを使用することができる。平坦な面への蒸着は、信頼性が高く、ほぼ無駄なく実行される確立されたプロセスである。蒸着された平坦な面には、フィルムとして形成された偏光層を、特に容易にかつ高い信頼性のもとで積層することができる。例えば、ミラーユニットとして機能するフロントガラスの表面曲率を補償するために、ミラー要素の湾曲した表面が望まれる場合、これに対応するフィルムを被着させることもできる。これには、平坦な面よりも多くの手間が必要となるが、しかしながらこの手間は、さもなければ曲率補正に必要とされるさらなる要素の節約によって相殺可能である。
【0012】
本発明の一発展形態によれば、基板は非透光性に形成されている。この目的のために、例えば、暗いプラスチック、金属、セラミック要素、または着色ガラスが使用される。基板が非透光性であるならば、これには、部分的分光反射層を透過する赤外線成分が基板に吸収され、この場合当該基板を加熱するという利点がある。また、吸収偏光層は、透過されない偏光方向の光の吸収により加熱される。したがって、ミラー要素は、比較的均一に加熱され、このことは、基板と該基板上に配置された層との間の熱膨張に起因する応力を減少させ、それによってミラー要素の寿命が延びる。それに対して代替的に、基板は光透過性または部分的に光透過性に構成されている。しかしながらこれは、透過光が他の部品に入射し、当該他の部品を場合によっては不所望に加熱するかまたは当該他の部品によって不所望に反射されることにつながる。
【0013】
好適には、基板は、大きな質量体を有する。この目的のために、例えば、高い熱伝導率を有する例えばアルミニウムからなる中実の金属ブロックが設けられている。この中実の金属ブロックは、銅からなっていてもよい。この銅は、高い熱伝導率の他に、付加的にアルミニウムよりも高い比熱容量を有する。また、適切なプラスチック材料も、ここでは好適に使用することができる。同様に、ガラス基板も相応に大きな質量体と考えられる。大きな質量体を有する基板には、自身が過熱されることなく、あるいはヘッドアップディスプレイに固定される固定要素が過度な熱負荷にさらされることなく、より大きな熱量を受容することができるという利点がある。その他に、大きな質量体は、温度変化の際にも慣性を保証し、光入射において強い変化が短期間現れた場合でも、ミラー要素には緩慢な温度変化が生じるだけである。その際に場合によって生じる熱膨張に起因する応力はわずかなままである。このことは、ミラー要素の寿命を延ばし、ミラー要素の光学特性が一定に保たれることを保証する。つまり、運転者によって知覚可能なヘッドアップディスプレイの光学品質が、外部からの入射光の量の急激な変化に損なわれることはない。
【0014】
本発明による、ヘッドアップディスプレイを製造する方法は、以下のステップを含む。最初に、平坦な表面を有する基板が提供される。次に、部分的分光反射層が基板の表面に蒸着される。続いて、吸収偏光層が、フィルムとして部分的分光反射層の上に積層される。そのように得られたミラー要素は、ヘッドアップディスプレイの偏向ユニットに取付(einsetzen)けられる。その際、この取付けは段階的に行うことができ、詳細には、最初に偏向ユニットに取付けられ、その後で引き続きモジュールとしてヘッドアップディスプレイに組み込まれる。このミラー要素は、当該ミラー要素まで事前に組み立てられた状態でヘッドアップディスプレイに直接取付けることも、あるいはその中間段階で取付けることも可能である。本発明による方法は、装置クレームに対して説明した利点を有する。
【0015】
本発明によるミラー要素は、ヘッドアップディスプレイに向けられた先行する請求項の1つによるヘッドアップディスプレイに使用されるように構成され、設けられている。部分的分光反射層と偏光層とからなる本発明による組み合わせを備えたそのようなミラー要素は、好適には、ヘッドアップディスプレイの偏向ユニットに使用される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態およびそれらの利点は、以下の実施例に基づく説明においても明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヘッドアップディスプレイを示した図
図2】ミラー要素を示した図
図3】部分的分光反射層の反射率を示した図
図4】製造方法のフローチャートを示した図
【0018】
図1は、画像生成ユニット10、偏向ユニット2、およびミラーユニット3を備えた本発明によるヘッドアップディスプレイを示す。偏向ユニット2は、ミラー要素21を有する。ミラー要素21の基板211上には、部分的分光反射層212と偏光層213とが配置されている。これらの2つの層212および213は、この図面では区別できない位に薄い。さらに、ヘッドアップディスプレイのハウジング70には出力開口部7が認識される。この出力開口部7は破線で示されており、従来技術による多くのヘッドアップディスプレイでは、そこに偏光層が配置されている。
【0019】
画像生成ユニット10は、ミラー要素21によって反射される光ビームLS1に由来する画像を生成する。反射された光ビームLS2は、ミラーユニット3、例えば車両のフロントガラス、または当該フロントガラスと運転者との間に配置されたいわゆるコンバイナに到達する。そこから、当該光ビームLS2は、光ビームLS3として運転者の目61の方向に反射される。画像生成ユニット10により生成された画像は、運転者にとって車両の前方に浮かんでいるような仮想画像VBとして現れる。この仮想画像VBは、運転者にとって、周辺環境の周辺画像UBに重畳された画像として現れる。したがって、光ビームLS4は、現実には存在しないが、運転者からは仮想画像VBから来るものと解釈される。
【0020】
上方から到来する、矢印P1によって示された太陽光が認識され、光ビームLS2の延長上にあるこの太陽光は、当該光ビームLS2とは反対方向でミラーユニット3に入射する。このミラーユニット3は、例えば、周辺画像UBは透過させ、車両の運転者に交通の推移を見せることができるようにするために部分的に透過性である。所定の条件のもとでここに示された角度でミラーユニット3に入射する不所望な太陽光は、当該ミラーユニット3を透過し、ミラー要素21によって画像生成ユニット10の方向に反射され、さらにそこで、例えば液晶表示器の過熱のような悪影響をもたらす可能性がある。この液晶表示器は、これによって急速に経年劣化し、それどころか極端な場合には破壊されてしまう。
【0021】
図2は、ミラー要素21を拡大断面図で示している。ここでは図示されている厚さ比率は縮尺通りではない。ここでは、基板211、その上に存在する部分的分光反射層212、およびその上に存在する偏光層213が認識される。基板211は平坦な表面215を有し、該平坦な表面215に部分的分光反射層212が蒸着されている。この層212は比較的均一な厚さを有しており、そのため、この層212の表面216も平坦である。フィルムとして存在する偏光層213は、部分的分光反射層212の表面216に積層されている。
【0022】
光が偏光層213に入射すると、当該偏光層213と同じ偏光方向を有する光の部分のみが透過する。他の偏光を有する成分は、当該偏光層によって透過せず当該偏光層によって吸収される。このようにして、矢印P1の方向に入射する太陽光の大部分が吸収される。偏光層213を透過した後、入射光は、部分的分光反射層212において一部は反射され、他の一部は透過する。入射光の赤外線成分およびUV成分は透過する。可視光だけが反射され、続いて偏光層213を透過する。この可視光は画像生成ユニット10に到達する。赤外線成分およびUV成分は部分反射層を透過するので、これらは画像生成ユニット10には到達しない。
【0023】
画像生成ユニット10から放射された光ビームLS1は、偏光層213によってほぼ完全に反射されるように偏光されている。部分的分光反射層212は、画像生成ユニット10から放射される光の波長に調整されているため、この光は部分的分光反射層212も通り過ぎてほぼ減衰されない。ミラーユニット3も、所定の偏光方向の光を最適に反射する。画像生成ユニット10から放射された光の偏光は、相応に配向される。このことは、画像生成ユニット10から放射された光ビームLS1~LS3がそれらの強度をほとんど低減されることなく観察者の目61に入射し、一方、矢印P1に応じて外部から入射する障害光は、ミラー要素21によって大幅に減衰され、それによって、当該生成ユニット10に全く損傷を引き起こさないかまたはごくわずかしか引き起こさないことを意味する。
【0024】
図3は、部分的分光反射層212のナノメートルの波長にわたってプロットされた反射率をパーセントで示している。ここでは、反射率は、400nmを上回ってほぼ100%となり、約800nmまではわずかしか低下しないことが認識される。約820nmでは、反射率は約20%の低値に達し、その後再度約50%に上昇し、約900nmを超えてからは実質的に30%の反射率を下回り続ける。したがって、赤外光は、部分的分光反射層212によって大幅に低減され、一方、可視光はほぼ完全に反射される。このことは、全可視スペクトル内で放射する画像生成ユニット10にとって最適である。それに対して、この画像生成ユニット10が、変化の少ないそれぞれ固定の波長を有する光源を有するならば、当該波長領域のみを反射し他の波長は通過させる部分反射層を使用することが考えられる。ここでは対応する反射率が波長にわたって示されているわけではないが、当業者であるならば、この種の特性がどのように見えるかは容易に思い描けるであろう。したがって、図示された部分的分光反射層212は、バンドパス特性を有している。このことは、画像生成ユニット10の類似のもしくは異なる変形形態に様々な光源が使用されるようなケースにおいても有利である。実際に使用される波長に依存することなく、バンドパス特性は常に適切である。それに対して、より顕著な波長選択性は、画像生成ユニット10に入射する障害光を再度低減させる。
【0025】
図2では、基板211は非透光性である。したがって、部分的分光反射層を透過した光は、基板211によって吸収される。本発明の好適な変形形態によれば、基板211は、大きな質量体を有する。その厚さは、このケースでは図示のものよりも大幅に大きく示されている。
【0026】
図4は、本発明によるヘッドアップディスプレイを製造する方法のフローチャートを示す。ステップS1では、平坦な表面215を有する基板211が提供される。ステップS2では、部分的分光反射層212が表面215に蒸着される。続いて、ステップS3では、吸収偏光層213が部分的分光反射層212に積層される。そのように得られたミラー要素21は、ステップS4において、ヘッドアップディスプレイの偏向ユニット2に取付けられる。
【0027】
換言すれば、本発明は、ヘッドアップディスプレイに付加的コンポーネントを追加することなく、分光フィルタリングと偏光フィルタリングとを、1つの部品に、すなわちミラー要素21に組み合わせている。このミラー要素21は、いずれにせよヘッドアップディスプレイ内のこの箇所に必要とされるミラーと置き換えられ、透過性、非透光性、または部分的に透光性であり得る基板211からなっている。該基板211上には、画像生成ユニット10の光源から放射された光に対する反射層212が被着されており、この反射層212は、当該領域外の分光成分を透過もしくは吸収する。この反射層212には、吸収偏光子、すなわち偏光層213が被着されており、該偏光層213は、画像生成ユニット10の光源の偏光のみを透過し、他の偏光の光は吸収する。
【0028】
本発明の利点は、提案された組み合わせにより、ヘッドアップディスプレイに付加的コンポーネントを追加することなく、部品内の保護機能全体が可能になることにある。これにより、コンパクトな置き換えが可能になり、光学的界面の数が低減され、それによってより高い効率が達成され、逆反射が回避される。中実の基板211上に吸収偏光子、偏光層213を被着することにより、太陽により吸収された熱を容易に放出することができる。本発明は、偏光フィルタリングを必要とするミラーを備えた他の光学システムにも適している。
【0029】
本明細書に明示的に記載されていない場合であっても、上記手段の1つ以上を本発明の考察から逸脱することなく修正または他の組み合わせに使用することは、当業者の能力の範囲内である。
図1
図2
図3
図4