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特許7330933はんだ付けされた接地ピンを有する基体、その製造方法、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】はんだ付けされた接地ピンを有する基体、その製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20230815BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20230815BHJP
   B23K 26/356 20140101ALI20230815BHJP
【FI】
B23K1/00 330D
B23K26/352
B23K26/356
【請求項の数】 29
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158251
(22)【出願日】2020-09-23
(62)【分割の表示】P 2018190159の分割
【原出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2021000663
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】10 2017 123 278.8
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハートル
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート ランフトル
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-063129(JP,A)
【文献】特開2010-264473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045387(US,A1)
【文献】特開2010-185653(JP,A)
【文献】特開2003-110231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00
B23K 26/352
B23K 26/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製基体(1)と、
ことに電気絶縁性固定材料(10)中の機能エレメント(5)を収容するための少なくとも1つの貫通開口部(4)と、
前記基体とはんだ結合によって突き合わせて導電性に結合されている少なくとも1つのピン状導体(6)とを含み、
前記はんだ結合は金属製はんだ材料(7)を含み、
前記金属製はんだ材料(7)は前記基体(1)の表面領域を覆い、かつ前記基体の表面上にはんだ領域を形成し、
前記基体(1)は、少なくとも前記はんだ領域内で微細構造(8)を有し、前記微細構造は前記基体の表面内で少なくとも凹陥部を含み、
前記微細構造(8)の前記凹陥部は、相互に並んで配置されていて、かつ/または少なくとも領域的に重複し、
前記微細構造は、平面図において点状パターンまたは網状構造または鱗状構造またはこれらの組み合わせの群から選択される構造を形成し、かつ
前記ピン状導体(6)を前記基体(1)と導電性に結合している前記金属製はんだ材料(7)は、前記基体(1)の表面への移行部でメニスカスを形成し、前記メニスカスは最大で0.40mmの半径を有する、フィードスルーエレメント用の基体。
【請求項2】
前記微細構造(8)の前記凹陥部は、前記基体の表面から測定して、ほぼ70μmまで、好ましくは0.7μm~70μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さを有する、請求項1に記載の基体(1)。
【請求項3】
前記凹陥部の直径は、その最も狭い箇所で測定して、10μm~200μm、好ましくは20μm~150μm、特に好ましくは80μm~150μm、全く特に好ましくは80μm~150μmである、請求項1または2に記載の基体(1)。
【請求項4】
前記微細構造の前記凹陥部は、前記基体の前記表面内のレーザー構造化された領域、ことにレーザーアブレーションされた領域および/またはレーザー励起された局所的に熱変形された領域および/またはレーザー励起された圧力作用により局所的に変形された領域を含む、請求項1~3のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項5】
前記微細構造(8)の前記凹陥部は、個々の凹陥部の間にウェブが存在するように形成されていて、前記ウェブは、前記凹陥部の表面上に存在する酸化物層とは異なる酸化物層で覆われていているか、または前記ウェブは酸化物層で覆われていてかつ前記凹陥部はほぼブランクの金属表面を有する、請求項1~4のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項6】
前記基体は、少なくとも微細構造(8)が存在する領域内で、クロム含有金属を有するかまたはクロム含有金属からなり、ことにクロム含有特殊鋼を含めたクロム含有鋼からなり、かつ少なくとも前記微細構造の前記凹陥部内で前記表面は、CrOXおよび/またはNiOXを含む均一な層で覆われていて、好ましくは前記層は、CrOX(OH)2-X・nH2Oおよび/またはNiOX(OH)2-X・nH2Oを有するかまたはこれらからなる、請求項1~5のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項7】
前記微細構造(8)は、前記金属製はんだ材料(7)用のはんだストップである、請求項1~6のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項8】
前記微細構造(8)は溝の形状を有し、かつ/または前記微細構造は円形および/または楕円形および/または矩形の直径を有する凹陥部を有し、好ましくは前記凹陥部はクレーター状および/またはカップ状である、請求項1~7のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項9】
前記基体は、前記微細構造(8)の領域内で、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmを有する、請求項1~8のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項10】
前記微細構造(8)の領域内の前記基体の平均粗さRaは、0.35μm~15μmの範囲内にあり、かつ/または最大高さRzは、1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは、1μm~15μmの範囲内にある、請求項1~9のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項11】
前記金属製はんだ材料は、硬質はんだであり、好ましくは前記金属製はんだ材料はほぼパラジウム不含である、請求項1~10のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項12】
前記導体(6)の前記基体に向かう表面と前記基体の微細構造化された表面(8)との間に、金属製はんだ材料で充填されたはんだギャップ(70)が存在し、前記はんだギャップは、前記微細構造の前記凹陥部の最も深い点から測定して、最大で100μm、好ましくは3nm~100μm、特に好ましくは最大で80μm、または最大で70μm、特に好ましくは3nm~70μmのはんだギャップ幅(s)を有する、請求項1~11のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項13】
前記基体は、フィードスルーエレメントまたは前記フィードスルーエレメントの構成要素であり、少なくとも1つの貫通開口部(4)内で機能エレメントとして導体(5)が電気絶縁性固定材料(10)中に配置されていて、かつ前記基体と導電性に結合された導体は接地ピン(6)として構成されていて、前記接地ピンは前記はんだ領域(7)内で前記基体(1)と突き合わせてはんだ付けされている、請求項1~12のいずれかに記載の基体(1)。
【請求項14】
前記接地ピン(6)は1mm±0.02mmの直径を有し、かつ前記金属製はんだ材料のメニスカスは、前記基体(1)の表面への移行部で形成され、前記メニスカスは、最大で0.40mm、好ましくは最大で0.36mm、特に好ましくは最大で0.30mm、全く特に好ましくは最大で0.22mmの半径を有する、請求項13記載の基体(1)。
【請求項15】
前記金属製はんだ材料の体積は、0.16mm3未満、好ましくは0.13mm3未満、特に好ましくは0.10mm3未満、全く特に好ましくは0.07mm3未満である、請求項13または14に記載の基体。
【請求項16】
前記はんだ領域は、1mm~2.0mmの直径を有する、請求項14または15に記載の基体。
【請求項17】
5000個の基体(1)の試験量を含み、前記接地ピンの曲げ試験の際にエラー率が1対2000未満である、エアバッグ点火器またはベルトテンショナーまたはガス発生器を製造するための請求項1316のいずれかに記載の多量の基体。
【請求項18】
1000個の基体の試験量を含み、前記試験量において、前記はんだ領域の直径の平均値の標準偏差は、前記試験量中の前記はんだ領域の平均直径の0%~6%の範囲内にある、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器を製造するための請求項1316のいずれかに記載の多量の基体。
【請求項19】
次の方法工程
- 所定の厚みおよび所定の外側輪郭を有し、2つのほぼ向かい合う表面(31,32)を有する金属製基体(1)を準備すること、
- 前記基体(1)内に少なくとも1つの貫通開口部(4,20)を作製すること、
- 前記基体(1)の表面内に凹陥部を導入することで、微細構造(8)が生じることにより、前記基体の表面の少なくとも1つの領域を微細構造化し、ここで、前記微細構造は、平面図において点状パターンまたは網状構造または鱗状構造またはこれらの組み合わせの群から選択される構造を形成すること、
- 少なくとも1つの機能エレメント(5)を準備すること、
- 電気絶縁性固定材料(10)を準備すること、
- 少なくとも1つの導体(6)を準備すること、
- 前記電気絶縁性固定材料(10)を前記少なくとも1つの貫通開口部(4)内に配置し、かつ前記電気絶縁性固定材料中に前記少なくとも1つの機能エレメントを固定すること、
- 前記少なくとも1つの導体(6)を、前記基体と、前記微細構造(8)が存在する領域内で、はんだ付け過程で融解する金属製はんだ材料(7)を用いてはんだ付けし、ここで、融解したはんだ材料(7)の流れは少なくとも前記微細構造(8)の構成要素によって停止および/または制限され、かつ前記はんだ材料で覆われた、前記基体(1)の表面上の領域がはんだ領域を形成するので、前記少なくとも1つの導体(6)は前記はんだ領域内で導電性に前記基体と結合されること、
を含み、前記導体(6)を前記基体(1)と導電性に結合している前記金属製はんだ材料(7)は、前記基体(1)の表面への移行部でメニスカスを形成し、前記メニスカスは最大で0.40mmの半径を有する、フィードスルーエレメント用の基体(1)の製造方法。
【請求項20】
前記基体は、前記微細構造(8)の領域内で、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記微細構造(8)を、前記基体(1)の表面から材料を除去する方法により、好ましくは前記基体の研磨により、特に好ましくは前記基体内への押し込みにより作製する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記微細構造(8)の作製のためにレーザー構造化、好ましくはレーザーアブレーションおよび/またはレーザー脱着を適用し、レーザービームの作用の際に、前記基体(1)の表面材料、ことに酸化物層および/または有機不純物は除去され、かつ前記基体(1)のほぼブランクの金属表面が露出され、前記金属表面は入射するレーザービームを反射し、好ましくは露出したブランクの金属表面が微細構造の深さを制限する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
レーザービームの作用の際に、前記基体(1)の表面材料を、ことに前記基体(1)の材料のことに局所的な融解を伴う局所的加熱によりかつ/またはレーザー励起された圧力作用により変形させ、前記レーザービームは少なくとも前記基体(1)の付近で気体雰囲気を局所的に加熱し、かつことに局所的にプラズマを点火するため、前記基体の表面を変形させる圧力波が形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記基体(1)は、前記微細構造の導入後に、少なくとも前記凹陥部内に有機材料および/または炭素を有しない、好ましくは少なくとも前記凹陥部内に純粋な金属表面または十分に均一でかつ好ましくは薄い酸化物層(400)が存在し、前記酸化物層の厚みは、好ましくは10nm未満、特に1nm~6nmである、請求項2023のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記基体(1)は、少なくとも前記微細構造が存在する領域内で、クロム含有金属を含むかまたはクロム含有金属からなり、ことにクロム含有特殊鋼を含めたクロム含有鋼からなり、かつ少なくとも前記微細構造の前記凹陥部内で前記表面は、酸化により、CrOXおよび/またはNiOXを含む均一な層(400)で覆われ、好ましくは前記層はCrOX(OH)2-X・nH2Oおよび/またはNiOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれからなる、請求項2024のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
金属製はんだ材料(7)として硬質はんだを使用し、好ましくは前記金属製はんだ材料(7)はほぼパラジウム不含であり、好ましくは前記金属製はんだ材料は、はんだ付けの前に前記導体(6)の周りにリングの形状に置かれるので、はんだ付けの際に前記金属製はんだ材料は前記微細構造(8)内へ流入し、かつ前記導体(6)と、前記微細構造(8)の領域内の前記基体(1)の表面との間にはんだギャップ(70)を有するはんだ領域(7)を形成し、前記はんだギャップは前記金属製はんだ材料で充填されている、請求項2025のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記微細構造は、前記基体の表面から測定して、70μmまで、好ましくは0.7μm~70μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さを有する、請求項2026のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記微細構造は、平均粗さRaは0.35μm~15μmの範囲内にありかつ/または最大高さRzは1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは1μm~15μmの範囲内にあるように前記基体中に導入される、請求項2027のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
着火技術的点火装置および/またはエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器および/またはセンサーおよび/またはアクチュエーターおよび/または大型フィードスルーおよび/またはトランジスタ-アウトライン-ハウジングおよび/または電気貯蔵装置、ことにバッテリーおよび/または蓄電池および/またはコンデンサーにおける、請求項1~16のいずれかに記載の基体(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードスルーエレメント用の、一般に、例えばセンサー用のフィードスルーおよび/または大型フィードスルーおよび/またはトランジスタ-アウトライン-ハウジング中のフィードスルーおよび/またはバッテリーフィードスルーもしくはコンデンサーフィードスルー用の基体、ならびにこのようなフィードスルー自体に関する。ことに、例えばエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器内での着火技術的パーソナル保護装置を点火するために使用するような点火装置用のフィードスルーが予定されている。ことに、本発明は、このようなフィードスルーエレメントのベースの実施態様、その製造方法、およびその用途に関する。
【0002】
センサーのフィードスルーは、ことにセンサーエレメントに電流を供給することができかつ/またはその信号を評価ユニットに伝送することができる。大型フィードスルーは、一般に、安全容器内で、例えば液体ガスタンクおよび/または反応器内で使用される。
【0003】
バッテリーフィードスルーまたはコンデンサーフィードスルーとして、原則として、蓄電池を含むバッテリーまたはコンデンサーのハウジングを貫通するフィードスルーであると解釈される。この概念は、同様に、スーパーキャパシターともいわれるスーパーコンデンサーの分野も包含する。フィードスルーは、通常では、バッテリーハウジングまたはコンデンサーハウジングの内部の電極と接続するために用いられる。
【0004】
TOハウジングともいわれるトランジスタ-アウトライン-ハウジングは、通電するエレクトロニクスハウジングである。TOハウジングは、基本的に2つの部材の、ベースとキャップとからなる。ベースは、とりわけカプセル化された構成部材の電力供給を保証し、キャップは、オプトエレクトロニクスの分野において光学信号の確実な伝達のために用いられる。これは、送信器(例えばレーザーダイオード)も、光学信号の受信器(例えばフォトダイオード)も含む。TOベースは、例えば半導体、レーザーダイオードまたは簡単な電気回路のような電子工学構成部材および光学構成部材を取り付けるための機械的台座である。同時に、このTOベースは、保護された構成要素に接続ピンを用いて電流を供給する。
【0005】
着火技術的パーソナル保護装置として、自動車においてことにエアバッグおよび/またはベルトテンショナーが用いられる。この種の安全システムは、負傷のリスクを大幅に低減することができる。しかしながら、衝突の場合には、それぞれの安全システムが故障しないことが前提条件である。この場合、ことに、このような安全装置の機能にとって不可欠な着火技術的装置の点火器に特に注意が向けられる。ことに、この点火器は、その製造後の多年にわたって申し分なく機能しなければならない。このような点火器の平均寿命として、しばしば15年が挙げられている。この場合、持続的な申し分ない機能を保証するために、点火器内に存在する推進装填物は時間の経過で変化しないことを保証しなければならない。この種の変化は、例えば点火器内に進入する湿分により引き起こされることがある。したがって、点火器の推進装填物は機密にカプセル化することが重要である。点火器はまた、安全システムのガス発生器の推進装填物を点火するために、点火された推進装填物のガスを正しい方向に放出しなければならない。
【0006】
このことを保証するために、先行技術から公知の点火器は、キャップまたはカバーと、比較的堅いベースとを有し、この間でこれらの部材から形成された空間内に推進装填物が封入されている。ベースを通して、電気接続部によって電流が推進装填物の点火のために供給される。したがって、ベースは原則として貫通開口部を有し、この貫通開口部内に金属ピンが存在し、この金属ピンは一方の側にプラグ接続により電流を供給することができ、かつ他方の側で例えば点火ブリッジによって結合されていて、この点火ブリッジは通電時に推進剤との接触で推進剤の点火を引き起こす。したがって、このベースは、一般にフィードスルーエレメントともいわれる。フィードスルーエレメントの設計の際に、推進装填物の点火時にいずれの場合でもキャップまたはカバーまたはそれらの一部が引き裂け、かつ電気フィードスルーはベースから脱落しないことを保証しなければならない。
【0007】
このようなフィードスルーエレメントの場合に、ベースの基体は金属からなり、かつ点火ブリッジは溶接された架橋ワイヤを用いて実現される。この実施形態の場合に、金属ピンは、基体の貫通開口部内で電気絶縁性固定材料中のピンとして固定されている。固定材料として、通常ではガラス材料、ことに硬質ガラスまたはガラスはんだが使用される。それにより、この金属ピンはガラスにより外部導体から絶縁されている。同様に、セラミック、ガラスセラミックおよび/またはポリマーが絶縁材料として可能である。
【0008】
ピンとしての第2の金属ピンは、底板ともいわれる基体により表される外部導体に溶接またははんだ付けされている。フィードスルーエレメントの上側(これは、組み立てが終わった点火装置の点火キャップに向かう側である)には、したがって、架橋ワイヤ(たいていはタングステン合金からなる)が点火ブリッジとしてガラス材料の表面と接触している。架橋ワイヤは損傷を受けず、かつ点火エレメントは例えば自動車における使用の場合に長い寿命を有するために、ガラス材料の表面は通常では研磨されなければならない、というのも表面の粗さが架橋ワイヤを損なうことがあるためである。
【0009】
ワイヤの長さは、抵抗に影響を及ぼし、それにより点火装置の作動特性に影響を及ぼす。点火の場合に、生じる爆発圧力は小さなガラス面に作用し、したがってこの実施形態は極めて頑丈であると見なされる。この実施態様により与えられる他の利点は、ピンが外部導体と直接結合され、このピンを介して点火器の簡単な接地が行われることである。このピンは、原則として、接地導体、アースピンまたは接地ピンといわれる。
【0010】
ことにエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生装置の持続的な動作安定性について、接地導体とベースおよび/または基体との確実な結合が重要である。接地導体がすでに欠陥のある結合で提供されかつ/または強い温度変化および/または振動を引き起こすことがある作動の場合にベースが破壊されることを避けることができる。同様に、例えば、導体がプラグ内に差し込まれ、それにより機械的負荷に曝される場合に、接地導体とベースおよび/または基体との間の結合は、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーの組み立てにより損なわれるかまたは弱まることがある。
【0011】
上述の種類の点火装置は、例えば独国特許出願公開第10133223号明細書(DE 101 33 223 A1)から公知であり、この場合、アースピンは基体に突き合わせて溶接されている。突き合わせ溶接とは、この場合、接地ピンの端面が基体の表面の領域上に溶接されることを意味する。
【0012】
TOハウジングは、例えば米国特許第8,908,728号明細書(US 8,908,728 B1 )に示されている。ここでは、基体を電気的に接地するために、接地ピンが基体と結合することが考えられる。
【0013】
大型フィードスルーは、例えば独国特許発明第102007061175号明細書(DE 10 2007 061 175 B3)に記載されている。基体は、通常では、切削加工法により、例えば出発成形体を旋削することにより作製される。ここでも、接地ピンを基体と結合することが可能である。
【0014】
一般に、接地ピンは基体と、溶接法による代わりに、はんだ付け法によって結合することができ、ことに突き合わせてはんだ付けすることができる。このために、原則として、熱の作用下で融解する金属製はんだ材料が使用される。この場合、金属製はんだ材料からはんだメニスカスおよび/またははんだギャップが形成され、この金属製はんだ材料は接地ピンの溶接された端部の領域と基体の面とを覆い、それにより接地ピンを導電性でかつ機械的に強固に基体と結合する。基体についてはんだメニスカスおよび/またははんだギャップにより覆われた領域の大きさを制御することは困難である。基体をさらに加工するために、これは、金属製はんだ材料が基体の縁部を越えて基体の側面に達することがあり、ここでさらなる加工を困難にするという問題を引き起こす。例えば、エアバッグ点火器中で基体を使用する場合に、キャップを基体の側面上に被せそこでレーザー溶接によって溶接する。これは、側面に存在するはんだ材料により妨げられかつ/または少なくとも困難になる。同様に、金属製はんだ材料が貫通開口部内へ流入することも重大である。はんだ材料が、貫通開口部内の絶縁材料と基体との間に、つまり原則としてガラス融着部のガラスと外部導体との間に侵入する場合、貫通開口部内での絶縁材料と基体との結合の機械強度が臨界的なほど低下するという重大な危険が生じる。この機械強度は、ガラス押し込み試験によって試験することができる。これは、このような構成部材の工業的大量生産における通常の処置である。
【0015】
同様に、不完全に形成されたはんだメニスカスおよび/またははんだギャップまたは不完全に形成されたはんだ部位は、はんだ付けされた接地ピンの機械的不安定性を引き起こすことがある。この機械的安定性、つまり接地ピンと基体との間のはんだ結合の機械的安定性は、曲げ試験により調査される。はんだ結合の不十分な品質の場合、接地ピンはこの曲げ試験において基体から剥離する。したがって、はんだメニスカスおよび/またははんだギャップの制御不能な形成は、曲げ試験における統計的な故障を引き起こす。
【0016】
この背景から、本発明の課題は、先行技術の欠点が低減されかつ導電体と基体との間の確実なはんだ結合を提供し、工業的大量生産において合理的にかつわずかな不良品率で製造することができるフィードスルーエレメント用の基体を提供することである。
【0017】
この課題は、独立請求項に記載の基体およびその製造方法により解決される。好ましい実施形態および用途は、その従属請求項から明らかとなる。同様のことが、この基体から得られる本発明によるフィードスルーエレメントおよびその用途にも当てはまる。
【0018】
本発明による基体は、金属製基体と、ことに電気絶縁性固定材料中の機能エレメントを収容するための少なくとも1つの貫通開口部とを含む。この機能エレメントは、導電体であるかもしくは導電体を含んでよいが、光学素子および/または熱電対および/または導波体などであってもよい。本発明によるフィードスルーエレメントは、さらに、基体とはんだ結合により導電性に結合されている少なくとも1つの導体を含む。このはんだ結合は、金属製はんだ材料を含み、この金属製はんだ材料は基体の表面領域を覆い、こうして基体の表面上にはんだ領域を形成する。
【0019】
したがって、はんだ領域は、基体の表面上の、金属製はんだにより覆われた面として定義される。本発明の場合に、基体は、少なくともはんだ領域内に微細構造を有し、この微細構造は少なくとも基体の表面内の凹陥部を含む。ことに凹陥部とは、その凹陥部の最も深い点がはんだ領域外の基体の表面下にあることを意味する。一般に、凹陥部はウェブにより互いに区切られていてよい。ウェブは、はんだ領域外で測定して基体の表面下に後退し、つまりはんだ領域外で基体の表面の平面の下に位置してよい。これは、記載されたように、金属製はんだ材料がはんだ領域内で微細構造を覆うことを意味する。金属製はんだ材料と微細構造とは相互作用し、これは本発明の利点を生じさせる。
【0020】
微細構造は、本発明の意味内容で、意図的に導入された構造であることにより特徴付けられる。この構造は、ことに、一定の秩序基準に従って基体内に導入されていてかつこうして全体として微細構造を形成する単一構造の組み合わせから生じる。このような本発明による微細構造は、必然的にランダムな配列に従った基体内に存在する引っ掻き傷および/または押し込み跡とは明確に区別される。
【0021】
好ましくは、基体は少なくとも1つの平坦な表面を有し、その平坦な表面内にはんだ領域が存在する。特に好ましくは、基体は2つの平行平面の表面を有する。貫通開口部はこれらの表面を結合する。ことに、エアバッグ点火器またはベルトテンショナー用の基体は円盤状である。バッテリーハウジングおよび/またはコンデンサーハウジング用の基体は、好ましくは矩形の形状を有してよい。
【0022】
発明者は、はんだ領域内の微細構造が金属製はんだ材料用のはんだストップとして機能することを知見した。記載されたように、はんだ付け過程において金属製はんだ材料は融解し、かつはんだ領域内の基体ならびに基体と結合されるべき導体の範囲を濡らす。濡れる際にはんだ材料は流展する。微細構造なしでは、はんだ材料の流展は制御することが困難である。発明者は、微細構造が融解したはんだ材料の流展を制限することを知見した。したがって、金属製はんだ材料の流れを、微細構造の導入によっていわば制御することができる。したがって、微細構造は金属製はんだ材料用のはんだストップである。これは、多数の本発明による基体を製造する際に、はんだ領域の直径の変化が、微細構造なしの場合よりも小さいという結果になる。はんだ領域内での微細構造の本発明による存在は、はんだ領域の直径を確実に制御することができる。この場合、はんだ材料の流れの制限は、微細構造の縁部で行われる必要はなく、この制限は微細構造の個々の構成要素ですでに行われ、つまりいわば微細構造内の領域内で行われることを確認することができる。
【0023】
好ましくは、微細構造の凹陥部はほぼ規則的な模様を形成する。特に好ましくは、微細構造の凹陥部は互いに隣り合って配置されていてかつ/またはこの凹陥部は少なくとも領域的に重なっている。特に好ましくは、微細構造は、平面図において点状パターンとしておよび/または網状構造としておよび/または鱗状構造として構成されている。
【0024】
全く特に好ましくは、微細構造の凹陥部は、基体の表面内でのレーザー構造化された領域である。好ましくは、このレーザー構造化された領域は、レーザーアブレーションされた領域、および/またはレーザービームにより局所的に熱変形された領域、および/またはレーザー励起された圧力作用により局所的に変形された領域であってよい。もちろん、任意の組み合わせも可能である。これについてのさらなる詳細は、後述の章で説明する。
【0025】
あるいは、微細構造を製造するための他の方法、例えば微細構造化されたパンチによるエンボス加工、ならびに/または研磨および/または彫り込みのような材料除去する方法も可能であり、かつ同様に本発明に含まれる。
【0026】
好ましくは、微細構造は溝の形状を有し、かつ/または微細構造は円形および/または楕円形の直径を有する凹陥部を含むかまたはこのような凹陥部からなる。同様に、ことに丸められた角部を有する矩形の直径も可能である。特に好ましくは、凹陥部はクレーター状および/またはカップ状である。これらの形状は、特に有利に、レーザーアブレーションおよび/またはレーザー脱着により、または他のレーザーアシスト方法により作製することができる。
【0027】
好ましくは、微細構造の凹陥部は、70μmまで、好ましくは0.7μm~70μm、好ましくは0.7μm~50μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さを有する。この深さは、微細構造の外側の基体の表面の平面から微細構造の最も深い点まで測定される、つまり例えばクレーター状の凹陥部の場合には微細構造の外側の基体の表面の平面からクレーター底部の最も深い点まで測定される。もちろん、微細構造が基体の全体の表面上に存在することも同様に本発明により予定されかつ含まれる。次いで、凹陥部の間に存在しかつ/または凹陥部を区切るウェブの最も高い点の平均値の平面からの微細構造の凹陥部の深さが測定される。
【0028】
特に好ましくは、本発明による基体は、微細構造の領域内で、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmを有する。全く特に好ましくは、Raは、0.35μm~15μmの範囲内にあり、かつ/またはRzは、1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは、1μm~15μmの範囲内にある。
【0029】
平均粗さ(mittlere Rauheit)Raおよび最大高さRzは、当業者に公知のように定義されている。平均粗さRaは、垂直方向の断面内の測定点の平均距離、つまり中心線に対する微細構造のプロフィールの平均距離を表す。中心線は、参照区間内で実際のプロフィールと、プロフィール偏差の合計が(中心線を基準として)最小となるように交差する。平均粗さRaは、したがって、中心線からの絶対値で示す偏差の算術平均に相当する。Rzは、いわゆる最大高さ(gemittelte Rautiefe)である。これは、5つの測定区間内の個々の粗さにおける深さからの算術平均値を表す。Rzは、微細構造内の基体の表面上の定義された測定区間を7つの個々の測定区間に分け、ここで中央の5つの測定区間が同じ大きさであることにより測定される。この評価は、この5つの測定区間によってのみ行われる。微細構造のプロフィールのこの個々の測定区間の各々から、最大値と最小値との差を測定する。こうして得られた5つの個々の粗さにおける深さから、平均値Rzが形成される。
【0030】
有利に、微細構造の凹陥部は、個々の凹陥部の間にウェブが存在し、このウェブが個々の凹陥部を相互に区分可能に分離および/または限定するように形成されている。ウェブ幅は可変であり、かつ1μm未満から、例えば約100μmまで、または50μmまで、または20μmまで、または10μmまでであってよい。
【0031】
特に好ましくは、微細構造の凹陥部の直径は、その最も狭い箇所で測定して、10μm~150μm、ことに10μm~120μm、ことに50μm~150μm、ことに50μm~120μmである。この述べられた全ての範囲について同様に適切な下限は80μmである。
【0032】
全く特に好ましくは、基体の微細構造の導入により、基体が少なくともはんだ領域内で同時に調整されることが達成される。ことに、はんだ付け過程の前に、不所望な酸化物層および/または例えば生産の間に基体に付着することがある沈着物、ことに潤滑剤のような有害な物質は、少なくとも微細構造の凹陥部内でほぼ除去される。したがって、微細構造の表面は、全く特に好ましくは少なくとも凹陥部内で有機材料および/または炭素を有しない。特に好ましくは、少なくとも凹陥部内で純粋な金属表面または十分に均一でかつ好ましくは薄い酸化物層が存在し、この酸化物層の厚みは、好ましくは10nm未満、特に好ましくは1nm~6nmである。
【0033】
金属製基体は、通常では微細構造の導入前に自然酸化物層を有する。この層は、原則として、頻繁にその組成においておよび/またはことにその厚みにおいても不均一である。さらに、金属製基体は、通常では金属加工法、例えば旋削および/または打ち抜きおよび/または常温成形および/または切り出しによって所望の形状にされる。同様に、貫通開口部は、例えば穿孔および/または打ち抜きにより導入される。
【0034】
同様に、潤滑剤、例えば生産機械の潤滑剤の残留物が、基体上に存在することもある。このような潤滑剤およびこの残留物は、ことに有機物質および/または一般に炭素化合物を含む油であってよい。微細構造の導入により、これらの有害な酸化物層および/または残留物は少なくともはんだ領域内で少なくとも部分的に除去される。自然酸化物層の除去の際に、特に好ましくは、少なくとも微細構造の凹陥部内で、ブランクの金属表面が残り、この金属表面はもちろん後酸化されてよい。この後酸化された表面は、自然酸化物層と比べてわずかな層厚およびより大きな均一性を有する。この後酸化された表面は、はんだ付け過程およびはんだ結合の形成を妨げないかまたは少なくとも著しくわずかしか妨げない。
【0035】
特に好ましい実施形態の場合に、微細構造の凹陥部の間のウェブは、凹陥部内の表面自体とは異なる酸化物層で覆われている。したがって、ウェブ上の酸化物層は、凹陥部の表面上の存在する酸化物層とは異なる。同様に、記載されたように、ウェブは酸化物層で覆われていて、かつ凹陥部の表面はほぼブランクの金属表面であることも可能である。
【0036】
通常では、基体用にSt35および/またはSt37および/またはSt38のような標準鋼または特殊鋼および/またはステンレス鋼が、基体用の材料として使用される。DIN EN 10020による特殊鋼は、硫黄含有率およびリン含有率(いわゆる鉄随伴元素)が0.035%を超えない合金化鋼または非合金化鋼についての名称である。その後、頻繁に、さらなる熱処理(例えば急冷焼戻し)が予定されている。特殊鋼には、例えば特別な製造プロセスにより融液からアルミニウムおよびケイ素のような成分を除外した高純度鋼、さらには後の熱処理が予定されている高合金工具鋼が含まれる。このような特殊鋼は、ことにクロムを含む。例えば次のものが使用可能である:X12CrMoS17、X5CrNi1810、XCrNiS189、X2CrNi1911、X12CrNi177、X5CrNiMo17-12-2、X6CrNiMoTi17-12-2、X6CrNiTi1810およびX15CrNiSi25-20、X10CrNi1808、X2CrNiMo17-12-2、X6CrNiMoTi17-12-2。
【0037】
本発明によるフィードスルーエレメントの最大のコスト効率を保証するために、金属製基体は好ましくは特殊鋼から構成されていなくてよい。好ましくは、基体は、その代わりに、1.01xx~1.07xx(非合金化高品質鋼)の群からなる鋼から形成される。鋼の群の記述は、この場合、DIN EN 10027-2に従って行われ、この場合、最初の桁は素材の主要群を示し、かつ最初のピリオドの後の後続する桁は鋼の群の番号を示す。
【0038】
できる限り良好な耐腐食性を保証するために、基体は金属で被覆されていてよい。好ましくは、ニッケル被覆が使用される。これは、ことに、非合金化高品質鋼から形成される基体に当てはまる。
【0039】
好ましくは、本発明による基体は、少なくとも微細構造が存在する領域内で、クロム含有金属、ことにクロム含有特殊鋼を含む。同様に好ましくは、基体はクロム含有金属、ことにクロム含有特殊鋼からなる。微細構造の凹陥部内で、表面は、ことにCrOXを含む均一の層で覆われている。特に好ましくは、この層は、CrOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれからなる。この述べられた層は、ことに記載された材料の使用の際に、自然酸化により生じてよい。
【0040】
好ましくは、金属製はんだ材料として硬質はんだを使用する。硬質はんだとは、通常では棒形状、バー形状、線形状、シート形状、および部分的にペースト形状で存在する、銀含有率が高い合金、洋銀および/または黄銅を基礎とする通常の合金をいう。硬質はんだペーストは、すでに融剤を含むので、同様にペーストとして、他のはんだ形状の場合と同様に、もはや別個の添加は必要はない。通常では、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーのためにパラジウム(Pd)含有硬質はんだが使用される。Pd含有硬質はんだは、ことには金属製基体上でのはんだ材料の特に良好な付着を有する。
【0041】
特に本発明の意味内容で、ほぼパラジウム(Pd)不含の金属製はんだ材料が好ましい。ほぼ不含とは、不純物および/または天然の同位体割合を除くことを意味する。このような不純物は、2000ppmまで、ことに1000ppmまでのオーダーで存在してよい。本発明は、ことに、はんだ領域内での微細構造の存在により、および微細構造の領域内での金属の記載された調整により、例えば薄く均一な酸化物層の存在により、ほぼPd不含の金属製はんだ材料を使用することを可能にする。パラジウムは、刺激性でかつ容易に可燃性であると見なされる極めて高価な原料であるので、この特に好ましい実施態様は、製造コストの特に好ましい低減に寄与する。
【0042】
金属ピンと基体との記載された導電性結合の際に、好ましくは金属製はんだ材料の融解時に基体の表面への移行部ではんだメニスカスが形成される。特に好ましくは、このメニスカスは最大0.40mmの半径を有する。メニスカスのこの比較的小さな半径は、ことにはんだ領域内での微細構造の存在による金属製はんだ材料の流れの本発明による制御により可能となる。
【0043】
基体とはんだ付けされた金属ピンの端部と基体の表面との間に、はんだ領域内では金属製はんだ材料で充填されたギャップ、いわゆるはんだギャップが存在する。はんだギャップの幅、すなわち金属ピンの端部と基体の表面との間のはんだ材料の厚みは、同様に、形成されるはんだ結合の信頼性についての尺度でもある。特に好ましい実施形態の場合に、したがって、導体の基体に向いた側の表面と、基体の微細構造化された表面との間には、金属製はんだ材料で充填されたはんだギャップが存在し、このはんだギャップは、微細構造の凹陥部の最も深い点から測定して、最大で100μm、好ましくは3nm~100μm、特に好ましくは最大で80μmまたはことに70μm、特に好ましくは3nm~70μmのはんだギャップ幅を有する。
【0044】
接地ピンと基体との間の良好なはんだ結合は、金属製はんだ材料を用いて基体と結合した接地ピンをはんだ領域内で剪断するために必要とされる剪断力に基づき評価することができる。本発明は、特に好ましい様式で、はんだ領域内での記載された微細構造を有する本発明による基体の場合の剪断力が、統計的平均で、微細構造なしの慣用の基体の場合の剪断力と比べて少なくとも10%高められていることを引き起こす。この剪断力は、部材をクランプ装置内に取り付け、金属スクレーパーを基体に添って案内することにより測定される。はんだ付けされた導体との衝突の際に、剪断されるまで、この剪断のために必要な力(N)が記録される。
【0045】
はんだ領域内での微細構造によるはんだの流れの制御は、同様にはんだ領域の直径が、同じ量の金属製はんだ材料の場合に、微細構造なしの基体と比べて小さくなることを引き起こす。微細構造がことにはんだストップとして機能する本発明による基体の場合に、微細構造が存在しない場合よりも、金属ピンにはんだ材料がより多く引き上げられることができることが観察された。
【0046】
特に好ましい実施形態の場合には、はんだ領域は、基体の表面に対して平行方向で測定して、基体との導電性金属ピン、つまり接地ピンの、最大で二倍の直径に相当する最大直径を有する。例えば、接地ピンは2mmの直径を有することができる。はんだ領域は、特に好ましくは、基体の表面に対して平行方向で測定して、最大で4mmの直径を有することができる。接地ピンが1mmの直径を有する場合に、最大2mmの直径を有するはんだ領域が生じる。
【0047】
本発明により、接地ピンは、貫通開口部の縁部に、および/または基体の縁部により近づけて配置することが可能である、それというのも、はんだの流れは微細構造により制御されかつ工業的大量生産の場合に、金属製はんだが貫通開口部内に流れ込むかまたは基体の縁部を流れ越え、かつその箇所で、つまり貫通開口部の内側周壁で、またはその中に存在する絶縁材料の表面で、および/または基体の縁部面で、後続加工を妨げかつ/またはそれどころか故障した部分が生じるという危険が低減されるためである。導電性金属製はんだ材料は、機能エレメントが配置されている貫通開口部内に存在する絶縁材料に流れ着く場合に、機能エレメントと基体との短絡または少なくともフラッシュオーバー電圧の低下を生じることがある。
【0048】
特に好ましくは、本発明による基体は、エアバッグ点火器またはベルトテンショナーまたはガス発生器を製造するための基体であり、この場合、少なくとも1つの貫通開口部内に、電気絶縁性固定材料中の機能エレメントとしての導体が配置されていて、かつ基体と導電性に結合した導体が接地ピンとして構成されていて、この接地ピンははんだ領域内に基体と突き合わせてはんだ付けされている。このような基体は、一般に、ベースまたはヘッダーともいわれる。
【0049】
全く特に好ましくは、接地ピンは、この適用の場合に、1mm±0.02mmの直径を有し、かつ基体の表面への移行部での金属製はんだ材料のメニスカスは0.40mm未満、好ましくは0.36mm未満、特に好ましくは0.30mm未満、全く特に好ましくは0.22mm未満の半径を有する。
【0050】
本発明により、使用した金属製はんだ材料の量を低減することが可能となる。このようなヘッダーの全く特に好ましい実施形態の場合に、金属製はんだ材料の体積は、0.16mm3未満、好ましくは0.13mm3未満、特に好ましくは0.10mm3未満、全く特に好ましくは0.07mm3未満である。
【0051】
はんだ領域は、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器の用途の場合に、基体の表面に対して平行方向で測定して、好ましくは1mm~2mmの直径を有する。これは、はんだ領域の直径が、接地ピンの直径に相当してもよいことを意味する。次いで、接地ピンの突き合わせ端部と基体との間のはんだギャップだけに金属製はんだ材料が設けられている。
【0052】
工業的大量生産の場合には、ことにエラー率および/または製品部材の欠陥部材に対する比率が重要である。本発明により、エラー率を低減することができ、かつ/または製品部材の欠陥部材に対する比率を改善することができる。これは、統計的な考察である。この構成部材の評価のための尺度は、接地ピンの曲げ試験の結果である。この場合、基体は、接地ピンを、接地ピンのはんだ付けされた端部付近の支点を用いて機械的に曲げることにより調査される。接地ピンのはんだ結合が、およびそれによりこの接地ピンが基体から剥がれる場合、該当する基体についてこの試験は不合格と見なされ、その他の場合には合格と見なされる。エラー率は、曲げ試験に合格した試験した基体の数の、曲げ試験に合格しなかった基体の数に対する比率である。本発明による基体の場合に、エラー率は、5000個の基体の試験量の曲げ試験において、好ましくは1対1000(1パーミルに相当)未満、特に好ましくは1対2000(0.5パーミルに相当)未満、ことに好ましくは最大で1対5000、全く特に好ましくは0対5000である。
【0053】
構成部材の評価についての他の尺度は、生産された構成部材の量におけるはんだ領域の直径の変動である。はんだ領域の直径は、各々の生産された構成部材においてできる限り同じであるように努められ、つまりできる限り低い分散に努められる。したがって、全く特に好ましい実施形態の場合に、本発明は、本発明による基体の1000個の試験量を含む、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器の製造用の基体の量に関し、ここで、この試験量の場合に、はんだ領域の直径の平均値の統計的標準偏差は、基体の表面に対して平行で測定して、この試験量の場合に、はんだ領域の平均直径の0%~6%の範囲内にある。
【0054】
同様に、本発明は、フィードスルーエレメント用の基体を製造する方法にも関する。この方法は、次の方法工程を含み、これらの方法工程は、言語表現上で示された順序で行われる必要はない。当業者は、この記載により、この目的にとってさらなる方法工程を補うかつ/またはその順序を交換することができる。
【0055】
本発明による方法は、所定の厚みおよび所定の外側輪郭を有し、2つのほぼ向かい合う表面を有する金属製基体を準備することを予定する。基体内に少なくとも1つの貫通開口部を作製する。この貫通開口部は、2つのほぼ向かい合う表面を結合する。この方法の場合に、基体の表面内に凹陥部を導入することにより、基体の表面の少なくとも1つの領域を微細構造を生じさせる。さらに、少なくとも1つの機能エレメント、および電気絶縁性固定材料を準備する。さらに、少なくとも1つの導体を準備する。電気絶縁性固定材料は、少なくとも1つの貫通開口部内に配置され、かつ少なくとも1つの機能エレメントは、電気絶縁性固定材料内に固定されるかまたは換言すると配置される。これは、いわば貫通開口部内で固定材料により保持される。導体は、基体と、微細構造が存在する領域内で、金属製はんだ材料ではんだ付けされる。金属製はんだ材料は、はんだ付け過程の際に融解し、融解したはんだ材料の流れは、少なくとも微細構造の構成要素によって停止および/または制限される。基体の表面上のはんだ材料により覆われた領域は、はんだ領域を形成するので、少なくとも1つの導体ははんだ領域内で基体と導電性に結合されている。この導体は接地導体を表す。
【0056】
基体は、ことに金属部分からなる旋削部材であってよくかつ/または板から打ち抜かれていてよくかつ/または棒材もしくは線材から常温成形によって製造されていてよい。貫通開口部は、例えば穿孔されていてよくかつ/または打ち抜かれていてよくかつ/または常温成形で成形されていてよい。製造方法に依存して、基体上に離型剤および/または潤滑剤および/または流動化剤、例えば油、ことに鉱油が存在していてよい。さらに、基体の表面は酸化物層で覆われていてよい。
【0057】
電気絶縁性固定材料は、通常では、ガラス材料またはガラスセラミック材料またはセラミック材料またはプラスチック、例えば高性能ポリマーである。これらの材料の組み合わせ、ことに層状の組み合わせも可能である。固定材料に、結合剤および/または充填剤が設けられていてもよい。機能エレメントは、ことに導電体であってよく、ことに金属ピン、導波路、熱電対、導波体、導光体などであってもよい。通常では、固定材料は機能エレメントおよび貫通開口部の内側周壁と融合されている。エアバッグ点火器またはベルトテンショナーの場合、通常ではガラスが固定材料として使用され、この固定材料は粉末に粉砕され、かつ結合剤と一緒に圧粉体に加工され、これは機能エレメントと一緒に貫通開口部内にはめ込まれる。加熱の際に、結合剤は、原則として焼失し、ガラスは融解し、かつ貫通開口部の内側周壁と機能エレメントと結合する。冷却時に、この固定材料は凝固し、かつ貫通開口部を閉鎖する。このことは、同様にガラスセラミック材料および場合によりセラミック材料にも当てはまる。同様に、管状部分からなるプリフォームを製造することも可能である。
【0058】
接地ピンまたはアースピンともいわれる接地導体のはんだ付けの際に、通常では、同様に金属製はんだ材料からなるプリフォームを使用し、このプリフォームは同様に結合剤および/または融剤を有していてよい。これは、接地ピンと同様に、後のはんだ領域の領域内に位置していてよく、かつ加熱により基体とはんだ付けされてよい。接地ピンのはんだ付けおよび電気絶縁性固定材料の基体および/または機能エレメントとの融合は、同時に行われてもよい。
【0059】
微細構造は、基体の表面から材料を除去する方法により、好ましくは基体の研磨、特に好ましくは基体内への押し込みにより作製されてよい。この押し込みは、例えば構造化されたスタンプにより行われてよい。
【0060】
全く特に好ましくは、微細構造は、レーザー励起された構造化法および/またはレーザー構造化法により作製される。
【0061】
述べられた意味内容で、公知のレーザー励起された構造化法は、レーザーアブレーションおよびレーザー脱着であり、この場合、基体の表面材料が除去される。同様に、レーザーの照射時に、基体の表面材料はレーザービーム、ことに基体の材料のことに局所的な融解を伴う局所的加熱によりおよび/またはレーザー励起された圧力作用により変形されることも可能であり、この場合、レーザービームは少なくとも基体の付近でガス雰囲気を局所的に加熱しかつことに局所的にプラズマを添加するので、圧力波が形成され、この圧力波が基体の表面を変形させる。この場合、レーザーの焦点は、ことに基体の表面の前方の1つの平面内に置かれる。同様に、収束型レーザービームを基体の表面で反射させることができ、かつ反射したビームの焦点は基体の上方の1つの平面内に置かれることも可能である。両方のビーム管理の組み合わせも、もちろん同様に使用可能である。
【0062】
同様に、述べられたレーザーに基づく方法を組み合わせることも可能である。例えば、まず、レーザーアブレーションまたはレーザー脱着で材料、ことに酸化物層および/または潤滑剤の残留物を基体から除去することができ、この場合、基体は局所的に加熱され、かつこうしてすでに熱変形されるかまたは少なくとも軟化されてよく、かつ/またはブランクの金属表面の露出後に、場合によりレーザービームのフォーカスをずらしながら、ことに表面の付近でプラズマを点火することで、基体の方向に圧力波を動かし、かつ基体を局所的に変形させ、いわば押し込んでよい。この変形は、材料の上述の熱的軟化により支援してよい。
【0063】
上述の全ての方法は、ことに好ましくは、微細構造が平面図で点状パターンおよび/または矩形パターンおよび/または網状構造および/または鱗状構造を生じるように実施される。
【0064】
特に好ましくは、微細構造の作製の際に同時に、基体の表面上に存在する不純物および/または有機物質および/または炭素含有物質および/または酸化物が除去される。レーザーアブレーションまたはレーザー脱着の使用の際にこれらの物質は蒸発および/または昇華する。
【0065】
存在する酸化物層の除去後に、後酸化が好ましいことがある。好ましい方法は、基体が少なくとも微細構造の領域内で微細構造の作成後でかつ導体のはんだ付けの前に、ほぼ均一でかつ薄い酸化物層で覆われていることを予定する。特に好ましくは、この場合、酸化物層形成のための酸素は周囲雰囲気に由来する。
【0066】
特に好ましい方法によれば、基体は微細構造の導入後に少なくとも凹陥部内で有機材料および/または炭素を有しない。好ましくは、少なくとも凹陥部内に純粋な金属表面または十分に均一でかつ好ましくは薄い酸化物層が存在し、この厚みは好ましくは10nm未満、特に好ましくは1nm~6nmである。
【0067】
基体は、上述の金属からなるか、またはこれらの金属を含むことができる。基体用の材料として、ことに特殊鋼を使用することができる。同様に、1.01xx~1.07xxの群(DIN EN 10027-2による)からなる鋼が可能でありかつ方法効率の観点から好ましい。ことに、ことにこれらの材料からなる基体が貫通開口部と共にニッケルで被覆されていてよく、ニッケル層の厚みは、好ましくは1μm~15μm、ことに4μm~10μmであってよい。
【0068】
特に好ましくは、基体は、クロム含有および/またはニッケル含有金属、ことにクロム含有および/またはニッケル含有特殊鋼を含めたクロム含有および/またはニッケル含有鋼からなるか、またはこの鋼を含む。したがって、方法の好ましい実施態様は、基体が、少なくとも微細構造が存在する領域内でクロム含有金属、ことにクロム含有および/またはニッケル含有特殊鋼を含めたクロム含有および/またはニッケル含有鋼を含むかまたはこの鋼からなり、かつ少なくとも微細構造の凹陥部内で表面は酸化により、CrOXおよび/またはNiOXを含む均一な層で覆われている。好ましくは、この層は、CrOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれからなり、かつ/またはこの層はNiOX(OH)2-X・nH2Oからなるかまたはこれを含む。
【0069】
本発明は、通常の硬質はんだの他に、本発明による方法において、ほぼパラジウム不含であり、原則として不純物を除いてパラジウム不含である金属製はんだ材料を使用することも可能にする。
【0070】
導体と基体とのはんだ結合の製造のために、金属製はんだ材料は、好ましくははんだ付けの前に、導体を取り巻く環状の形状である。はんだ付けの際に、金属製はんだ材料は微細構造内に流れ込み、かつこうして、導体(6)と、微細構造(8)の領域内の基体の表面との間に、金属製はんだ材料で充填されているはんだギャップを有するはんだ領域を形成する。いわば、金属製はんだ材料は、微細構造により支援されて、ことにピン状の導体の端面の下方に流れ、かつそこではんだギャップを形成しかつ/またははんだギャップを充填する。このはんだ材料は、はんだ領域内で、微細構造を覆いかつ/またはカバーし、かつこの微細構造と相互作用する。これは、基体の製造可能性において利点を有し、ことにはんだ付け前の組み立ての手間を低減する。
【0071】
好ましい実施形態の場合に、この方法は、微細構造が、基体の表面から測定して、ほぼ70μmまで、ことに50μmまでの深さを有し、ことに0.7μm~70μm、ことに0.7μm~50μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さを有するように行われる。
【0072】
特に好ましくは、微細構造は、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmが生じるように基体内に導入される。好ましくは、Raは、0.35μm~15μmの範囲内にあり、および/またはRzは、1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは、1μm~15μmの範囲内にある。平均粗さRaおよび最大高さRzは先に定義された。
【0073】
本発明による方法の場合に、金属製はんだ材料の融解時にはんだ材料の流れは微細構造により制限および/または停止されるという発明者の知見が用いられる。
【0074】
特に好ましい方法は、微細構造の作製のために、レーザー構造化および/またはレーザー励起された構造化法を適用することが予定される。この方法およびその態様は先に記載された。好ましくは、レーザーアブレーションおよび/またはレーザー脱着が適用され、この場合、レーザービームの作用の際に基体の表面材料、ことに酸化物層および/または有機不純物が除去され、入射するレーザービームを反射する基体のブランクの金属表面が露出する。記載されたように、レーザー励起された熱変形および/または機械的変形、ならびにこれらの各々の組み合わせが可能であり、かつ本発明に含まれる。
【0075】
特に好ましくは、ことにレーザーアブレーションまたはレーザー脱着により露出したブランクの金属表面は、微細構造の深さを制限する。発明者は、レーザーアブレーションの使用の際に、微細構造の深さならびにそれによるRaおよびRzはいわば自動的に調節されることを知見した。述べられた基体上に存在する、潤滑剤の残留物および/または酸化物層のような不純物はレーザービームを吸収し、かつそれにより蒸発および/または昇華し、かつそれにより除去される。ことに、基体上に存在する不純物はレーザービームを部分的にしか吸収せず、かつ最初の酸化物層は比較的高い吸収ないし完全な吸収を有することが可能である。この材料の除去は、レーザービームが露出したブランクの金属表面に当たるまで行われる。この表面はレーザービームを反射し、かつ通常はさらに除去されない。この効果はレーザー出力とは十分に無関係であり、それによりレーザーアブレーションおよび/またはレーザー脱着により作製された微細構造の良好な再現性を達成可能である。
【0076】
レーザービームは局所的に制限され、かつ記載されたように、好ましくはパターン化されたまたは鱗状の微細構造が生じるように案内されるため、この微細構造は、さしあたりブランクの金属表面を有する凹陥部と、例えば当初の酸化物層および/または不純物の場合により低減された層厚を有するウェブとからなる。ブランクの金属表面を有する凹陥部は、通常の周囲条件下で後酸化されてよい。しかしながら、この後酸化はほぼ均一であるので、上述の酸化物層厚を形成する。これは、いわば制御された酸化物層を形成する。
【0077】
ことに、赤外スペクトル領域のレーザービームが適していることが判明した。例えば、Nd:YAGレーザーを使用することができる。これは、1064nmの発光波長を有する。他の移行領域は946nm、1320nmおよび1444nmに存在する。全ての移行領域が任意の組み合わせでも利用されることも可能でありかつ本発明に含まれる。同様に、CO2レーザーの使用も可能である。これは、典型的に9400nm~10600nmの帯域で発光する。同様に、基体の表面をUVレーザービームで前処理することも可能である。これは、ことに有機不純物および/または炭素含有不純物を分離および/または除去するために有利であることがある。このために、例えば、308nmの発光波長を有するXeClエキシマレーザーおよび/または337nmの発光波長のNO2エキシマレーザーおよび/または248nmの発光波長のKrFエキシマレーザーが使用可能である。他の適したUVレーザーももちろん同様に使用可能である。ことに、多様な金属および/または金属酸化物を基体の金属表面から短パルスUVレーザーを用いて剥離させることが可能である。約20nsから約0.2psまでのパルス幅は、KrFエキシマレーザーの場合に、例えばニッケル、銅、モリブデンおよび/またはタングステンを基体の表面から剥離させるために適していることが判明した。したがって、適切なレーザービームにより基体の表面を、ことに基体の表面領域内の金属成分の組成を局所的に変更することにより調整することが可能である。
【0078】
当業者にとって明らかであるように、同様に、微細構造の作製の全体のプロセスをUVレーザーを用いて実施することも可能である。同様に、多様なレーザー、ことにIRレーザーおよび/またはUVレーザーおよび/または可視スペクトル領域のレーザー発光波長を有するレーザーを相互に組み合わせることも可能である。もちろん、これには、同じタイプのレーザーの相互作用も同様に含まれる。
【0079】
本発明による基体は、好ましくは電気フィードスルーエレメントおよび/または光学フィードスルーエレメントにおいて使用することができる。特に好ましくは、少なくとも1つの貫通開口部内に固定材料中の少なくとも1つの導電体が基体から電気絶縁して配置されている。特に好ましくは、固定材料は、ガラス、ガラスセラミック材料および/またはセラミック材料である。
【0080】
本発明による基体の全く特に好ましい用途は、着火技術的点火装置および/またはエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器および/またはセンサーおよび/またはアクチュエーターおよび/または大型フィードスルーおよび/またはトランジスタ-アウトライン-ハウジングである。
【0081】
本発明を、さらに次の実施例および図面を用いて説明する。
【0082】
一実施例は、エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器における本発明による基体の用途に関する。エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器において点火の場合に、通常では1000barを超える高い爆発圧力が生じることがあるため、基体は、通常では相応して高い厚み、つまり材料の厚みに設計される。この基体の厚みは、ことに、1.2mm~4mmの範囲内にある。好ましくは、1.5および1.7~3mm、特に好ましくは1.8~2.5mmの範囲内にある。第2の貫通開口部の孔径は、通常では0.8mm~1.5mmである。
【0083】
大型フィードスルー、例えば安全容器のフィードスルーは、基体の厚みおよび第2の貫通開口部の直径は数センチメートルであることがある。
【0084】
エアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器において、機能エレメントは、基体とはんだ付けされる接地ピンと同様に、貫通開口部内で固定される金属ピンである。通常では、これらの金属ピンは、その軸に沿って少なくとも部分領域内で金で被覆されている。金被覆は、腐食に対する持続的な不感応性および持続的な接触を引き起こす。頻繁に、金属ピンはその端部領域で金で被覆されている。この様式で、好ましくは金属ピンの、点火装置の使用のための組み立ての際にプラグ結合部内に存在する領域は金メッキされている。この様式で、プラグ接続内での接触抵抗を低減することができる。
【0085】
好ましい実施形態の場合に、少なくとも2つの金属ピンは、基体の推進剤側に向かう側で、点火ブリッジを用いて相互に導電性に結合されている。点火ブリッジは、すでに記載された点火ワイヤによって形成されていてよく、この場合、金属ピンはこの側で、通常では、基体のこの側に存在する面を越える突起部を有していない。
【0086】
記載されたように、はんだ領域内の微細構造は平均粗さRaおよび最大高さRzにより特徴付けられていてよい。同様の実施例を表す試験において、導入された微細構造なしの今までの標準基体を、少なくともはんだ領域内に微細構造が導入された一連の基体と比較した。この結果は表1にまとめられている。
【0087】
表1
【表1】
【0088】
大量生産からそれぞれ5つの基体を取り出し、Ra値およびRz値に関して測定した。測定法として、Hommel探針を用いる当業者に公知の触覚測定を適用した。それぞれ決定された値から、表1において同様に算術平均およびこの場合に生じる標準偏差σを示す。
【0089】
「微細構造なし」の文字を有する欄には、導入された微細構造なしの基体の結果を示す。もちろん、このような基体も完全に平坦ではなく、したがって、Ra値およびRz値は0ではない。肉眼では、このような非平坦さは、例えば表面内に引っ掻き傷またはクレーターとして見える。これらは、ことに基体の表面にランダムに分布し、かつ例えば基体の輸送の際に、ことに輸送容器の内壁との接触の際に、および/または基体の相互の衝突に際に生じることがある。Raの平均値は、導入された微細構造なしの基体の場合に、0.06μmの標準偏差σで0.16μmである。
【0090】
「微細構造あり」の欄には、RaおよびRzについての測定値が少なくともはんだ領域内に微細構造がパルスIRダイオードレーザーによって導入された基体についてまとめられている。製造条件は、パラメータ1~5に相応して、レーザーにより導入されたレーザー出力により区別され、このレーザー出力は、レーザーパルスの時間経過の積分、それによるパルス幅、およびパルスの最大出力と相関する。パラメータ1の欄では、最も低いレーザービームが入射され、パラメータ2の欄ではパラメータ5の欄までより大きなレーザー出力が入射された。入射されたレーザー出力は、ことに個々のレーザーパルスの重なりおよび/またはそのパルス周波数によっても調節することができる。
【0091】
RaおよびRzの全体の値、つまりそれぞれの個々の測定からの全ての値は、微細構造なしの基体についてのそれぞれの値よりも有意に大きな値を有することを観察することができる。このことは、ことにRaおよびRzのそれぞれの平均値についても当てはまる。したがって、本発明の意味内容で、導入された微細構造を有する基体は、導入された微細構造なしの今までの基体とは明らかに異なることが明らかである。約0.3μm~10μmのRaについての値は、パルスレーザーによって可能であるように思われる。連続波(CW)レーザーを用いた試験も同様に実施した。それにより、それどころか0.3μm~約100μmのRaについての値を達成することができる。
【0092】
この大きな粗さ値は、高い堆積レーザー出力の場合に有機不純物および/または炭素含有不純物および/または金属酸化物層を基体の表面からすでに除去するばかりか、熱変形および/またはその他のレーザー励起された変形の上述の効果に同様に役割を果たすことを推測させる。
【0093】
はんだ領域内での微細構造の存在は、記載されたように、ことにはんだ材料と微細構造との間の相互作用により、本発明の意味内容で、第2の金属ピンである接地導体と基体との間で改善されたはんだ結合を生じさせる。このはんだ結合の品質は、曲げ試験により判定することができる。この場合、はんだ付けされた金属ピンを把持し、かつこの金属ピンの軸から両方向にそれぞれ45°相違する角度まで機械的に曲げる。曲げの支点は、この場合、できる限り基体の表面近くにある。この曲げ試験を、構成部材の試験量、例えばはんだ付けされた接地ピンを有する5000個の基体に関して実施する。
【0094】
微細構造なしの基体および微細構造ありの基体の場合のこのような曲げ試験の結果が表2に、しかもそれぞれ臨界条件下での試験系列でまとめられている。
【0095】
表2
【表2】
【0096】
試験条件の欄に表示されたように、試験系列を、金属、ここではアルミニウムによる通常の不純物を有する基体を用いて実施した。これは、有機成分と混合した粉末として基体上に層として存在した。この試験は、生産プロセスにおいて頻繁に生じるような金属粒子汚染の発生をシミュレートする。この場合に通常では表面処理工程が実施される。適用可能な滑り研磨(Gleitschleifen)は、DIN 8589に記載されていて、そこでは滑り切削(Gleitspanen)ともいわれる、というのも必ずしも研磨プロセスではなく、方法に依存してラッピングまたはポリシングも行われるためである。ドラム中での滑り研磨は、ドラム研磨(Trowalisieren)としても公知である。この場合、いわゆるドラム研磨石(Trowalsteine)が使用され、このドラム研磨石により製造された基体上での金属摩耗を達成することができる。
【0097】
別の試験系列では、基体の試験量を油浴中で21日間貯蔵した。これは鉱物性機械油である。この試験は、生産プロセスにおける潤滑剤による汚染をシミュレートする。
【0098】
両方の試験条件は、工業的大量生産において生じることがある好ましくない生産条件の特殊な事例を表す。これらの試験は、プロセスの信頼性を評価するために適している。この様式でそれぞれ準備された基体の試験量は、微細構造が存在しないように製造され、次いで接地ピンをはんだ付けした。同じ製造条件下での他の試験量は、はんだ領域内でパルスダイオードレーザーを用いて、微細構造を付与し、引き続きそこに接地ピンをはんだ付けした。相応する試験量を、曲げ試験にかけた。
【0099】
表2で明らかなように、微細構造なしの構成部材は、5000個の構成部材のうちの123個または5000個の構成部材のうちの3個のエラー率を有する。表2では、NOKは、「not OK」を表し、かつ上述の曲げ試験に合格しなかった部材の数を表す。興味深いことに、金属による汚染は、はんだ結合にとって、油の蓄積よりもより重大であると思われる。
【0100】
それに対して、微細構造を備えた構成部材の試験量は、エラー部材を有しなかった。つまり、全ての試験構成部材は、汚染とは無関係に曲げ試験に合格した。これは、微細構造の存在が、本発明の意味内容で、はんだ結合の製造の信頼性の有意な改善を引き起こし、それによりこのようなフィードスルーの製造可能性の明らかな改善を引き起こすことを証明する。図2に示されたような試験系列は、旋削部材からなる基体、打ち抜かれた基体および常温成形された基体について実施した。はんだ領域内に微細構造を有する基体が確実なはんだ結合を提供するという結果が、基体の製造方法とは無関係に確認された。
【0101】
本発明を、次に図面を用いて詳細に説明する。図面は寸法通りではなく、図示された実施形態は概略的である。これらの図面は、例示的な実施例でもある。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】はんだ領域内で微細構造なしの先行技術によるフィードスルーエレメントを含む公知の点火装置を示す。
図2a】本発明によるフィードスルーエレメントの、その軸方向の中心軸に対して平行方向の断面図を示す。
図2b】本発明によるフィードスルーエレメントの表面の平面図を示す。
図3】微細構造化されたはんだ領域を有する本発明によるフィードスルーエレメントの、その軸方向の中心軸に対して平行方向の部分断面図を示す。
図4】先行技術による湿式化学処理の間の基体の金属構造を概略的に示す。
図5】その処理の間の本発明による基体の金属構造を概略的に示す。
図6a】微細構造の一部の写真を示す。
図6b図6aに対応する図面に変換された部分図を示す。
図7】はんだストップとしての微細構造の機能を概略的に示す。
図8】はんだ結合のメニスカスを有する本発明による基体の部分断面図を概略的に示す。
図9】全面的な微細構造を有する本発明による基体を示す。
【0103】
図1には、着火式保護装置用の先行技術から公知の点火装置、ここでは例としてエアバッグ点火器が示されている。この場合、図1は、ことにフィードスルーエレメントの断面図を示す。フィードスルーエレメントは、円盤状の基本形状を有す基体(1)を有する金属支持部を含む。このフィードスルーエレメントは、しばしばベースエレメント、または省略してベースまたは英語でヘッダーともいわれる。基体(1)の貫通開口部(4)内には、さらに、機能エレメントとして金属ピン(5)が配置されている。この場合、貫通開口部(4)は、基体(1)から打ち抜かれている。金属ピン(5)は、点火ブリッジ(9)が電流に接続するために用いられ、この点火ブリッジを介して仕上がった点火器内に封入された推進装填物(25)が点火される。貫通開口部(4)内の電流フィードスルーは、ことにガラス-金属-フィードスルーとして構成されていて、ここで、ガラスは、金属ピン(5)と、金属製基体(1)内の貫通開口部(4)の内壁との間の固定材料(10)として用いられる。同様に、この貫通開口部内に高性能ポリマーまたは他の適切な材料を使用することも可能である。
【0104】
この貫通開口部(4)は、図1に示された例の場合に、基体(1)の軸方向の中心軸に対して偏心で配置されている。それにより、基体(1)の小さな半径の場合であっても、第2の金属ピン(6)の固定のために十分に大きな箇所を提供することが達成される。第2の金属ピン(6)は、基体(1)にはんだ結合により突き合わせではんだ付けされていて、それによりアースピンともいわれる接地ピン(6)として用いられる。はんだ材料(7)として、記載されたはんだ、ことに金属製はんだ材料、ことに硬質はんだが使用される。はんだ材料(7)は、基体の表面と接地ピン(6)との間にメニスカスを形成する。はんだ材料(7)は、基体(1)の表面領域を覆い、かつはんだ領域を形成する。はんだ材料(7)は、はんだ領域内で微細構造を覆う。これは、全ての図面および実施例に当てはまる。はんだ領域の直径は、はんだ材料(7)の直径に相当する。製造可能性の理由から、はんだ材料(7)は、貫通開口部(4)内にかつ/またはこの貫通開口部内に存在する絶縁材料(10)に流展してはならない。したがって、接地ピン(6)は、貫通開口部(4)までの最小距離を維持しなければならない。同様に、基体(1)の外側周壁がはんだ材料(7)で濡れることも避けるべきである。したがって、同様に接地ピン(6)と基体(1)の縁部に対して最小距離を維持しなければならない。かつ、最小距離が維持される場合であっても、製造プロセスにおいて統計的な偏差および/または軽微なエラーにより、はんだ材料(7)のこのような不所望な広がりが生じることがあり、これは、不良のしたがって排除されるべき構成部材を生じさせる。
【0105】
図2aは、それに対して、本発明によるフィードスルーエレメントの、その軸方向の中心軸に対して平行方向でかつこの中心軸を通過する断面図を示す。基体(1)は第1の表面(11)、ここでは上面を有し、かつ多くの実施形態の場合にはこの上面に対して平行に延びる第2の表面(12)、ここでは下面を有する。上面(11)は、通常では、推進剤(25)に向いていて、下面(12)には、通常では電気接続が取り付けられる。図2bは、下面(12)の平面図を示す。
【0106】
円盤状の金属製基体(1)は貫通開口部(4)を有し、この貫通開口部を通過するように金属ピン(5)がピンとして案内されている。この貫通開口部(4)は、基体(1)から打ち抜かれていてよい。この例の場合に、基体(1)の外側の輪郭も同様にプレートストランドから打ち抜かれ、その結果、全体の基体(1)はここでは打ち抜き部材として表される。基体を線材から常温成形により製造することも同様に可能であり、かつ本発明に含まれる。貫通開口部(4)内に、金属ピン(5)がガラス材料(10)によって基体(1)から電気的に絶縁されて、接続ピンともいわれる第1のピンとして固定されている。この第1の金属ピン(5)は、金属製基体(1)の第1の貫通開口部(4)内で気密にガラス封着されている。このガラス-金属-フィードスルーのガラス材料(10)は、外側導体を表す基体(1)の金属により完全に取り囲まれている。ガラス材料(10)は、ことに基体(1)の金属よりも小さな熱膨張係数を有するので、基体(1)は、ガラス材料(10)内への金属ピン(5)のはんだ付けの後の冷却の際に、いわばこのガラス材料に、かつそれによりガラス-金属-フィードスルーに収縮ばめされ、かつこの様式でこのフィードスルーおよびガラス材料(10)に持続的に機械的圧力がかかる。この様式で、特に金属ピン(5)、ガラス材料(10)および基体(1)の間で緊密でかつ機械的に安定な結合が達成される。この配置は、押圧ガラス封着といわれ、かつ例えばエアバッグ点火器のために有利である。同様にガラスセラミック材料および/または高性能ポリマーの使用も同様に可能であり、かつ本発明に含まれる。
【0107】
第2の金属ピン(6)は、基体(1)とはんだ領域(7)内ではんだ結合によって接地ピンとして結合されている。少なくとも、はんだ領域(7)内で基体(1)は微細構造(8)を有し、この微細構造は、この実施形態に従って、基体の表面内の凹陥部により特徴付けられる。この凹陥部の間で、凹陥部の底部と比べてわずかな深さを有するウェブが存在し、このウェブは、いわば微細構造(8)の個々の凹陥部の間の縁部を表す。ことに、これらの縁部は、はんだ材料のためのはんだストップを表す。これは、ことに融解の際のはんだ材料の流れがこの微細構造(8)により制御されることを意味する。上記したように、はんだ材料(7)は、はんだ領域内で微細構造を覆い、かつこの微細構造と相互作用する。はんだ材料(7)を有するはんだ領域は、微細構造によって、直径(d)についても制限される。
【0108】
本発明によるフィードスルーエレメント(1)およびその製造方法は、とりわけ、微細構造(8)の存在によりはんだ領域(7)の直径(d)が制御されるため、ことに先行技術から公知の点火装置よりも、あまり手間のかからない点火装置の構造を可能にする。それにより、工業的大量生産の際に、欠陥のある構成部材の数は減少し、それにより廃棄物は低減される。
【0109】
図3は、図2aのはんだ結合の領域の部分図を示す。はんだ材料(7)を有するはんだ領域が明らかとなる。はんだ材料は、接地ピン(6)の周壁で半径(r)を有するメニスカスを形成する。はんだ領域(7)は、直径(d)を有する。はんだ領域内でおよび場合によりこのはんだ領域を越えて微細構造(8)が存在する。金属ピン(6)と基体(1)との間のはんだ結合は、本発明の場合に微細構造が存在する場所に存在する。本発明の意味内容で、微細構造は基体(1)の全体の下面(12)に存在することも同様に可能である。接地ピン(6)の上面と基体(1)の表面との間に、通常でははんだ材料で充填されたギャップが存在し、このギャップは、はんだギャップ幅(s)を有するいわゆるはんだギャップ(70)である。有利にはんだギャップ幅は、10μm~70μmでもある。
【0110】
図4は、先行技術による湿式化学処理の間の基体の金属構造を概略的に示す。これは、それぞれ基体の部分図を表す。基体は、この例の場合に、クロム含有オーステナイト鋼からなる。基体の金属組織は、オーステナイト(101)およびマルテンサイト(102)からなる相を含み、この金属組織の形成は、ことに基体の製造の際の基体の変形プロセスにより促進されてよい。上側の図では、このような基体(1)の基底状態が表されている。基体(1)の表面は、酸化クロムからなる層(40)で覆われていて、その中に、酸化鉄からなる領域(41)が存在することがある。ことに、基体の表面上の錆区域のような酸化鉄からなる領域が配置されていてよい。
【0111】
先行技術からの従来の製造プロセスの場合には、基体は混酸からなる浴中でのエッチングプロセスに供される。このようなエッチングプロセスの結果は、中央の図に示されている。これからわかるように、酸化クロム層の大部分は除去されるが、領域(40)は残留する。同様に、酸化鉄(41)の領域も、エッチングの後でも残留する。エッチングにより、頻繁に金属組織の異なる相の選択腐食が生じる。例えば、この図では、ことにマルテンサイトは選択腐食(英語:selective corrosion)により領域(103)内で攻撃される。一般に、マルテンサイトは、フェライトよりも酸による攻撃によりより強く攻撃され、かつこのフェライトはまたオーステナイトよりもより強く攻撃される傾向がある。別の損傷イメージは、領域(104)内の粒界腐食(英語:grain boundary corrosion)である。金属組織の同じ相の粒界の間で、酸による攻撃がギャップ形成を引き起こすこと考えられる。同様に、領域(105)内で孔食(英語:pitting corrosion)が生じ、この孔食は、基体の表面内での孔状の陥没を引き起こすことがある。
【0112】
図面の下側の部分では、従来のプロセスにおける大気条件下での老化後の基体の状態が示されている。主要な効果は、表面上での酸化鉄層(410)により明らかになる金属表面の後酸化である。同様に、粒界腐食(104)の領域内で、金属組織中のクロム割合の低下が生じることがあり、これが、金属組織を弱体化しかつ/またはその化学特性に関して変化させることがある。エッチング後に残留する、酸化クロム(40)および酸化鉄(41)からなる層を有する領域は、もちろん依然として存在する。全体で見て、基体における腐食は、Ra値およびRz値が0から逸脱する粗い表面を生じさせる。しかしながら、この構造はランダムに配置されていて、かつ微細構造を形成しない。同様に、表面上の凹陥部は本発明による微細構造よりも小さくかつあまり深くはない。従来の製造プロセスによる基体のRa値およびRz値は、表1に示されている値に対応する。
【0113】
従来のプロセスと比較して、図5には、本発明による物理的処理の間の基体の金属構造が概略的に表される。この例の場合に、レーザーに基づく、ここでは赤外線ダイオードレーザーを用いた表面処理による基体の処理を行った。図5の上側の図では、ここでも基体(1)の基底状態が表されている。これは、図4からの基底状態に対応する。
【0114】
図5の中央の図では、ここではレーザー構造化により作製された微細構造(8)の導入後の基体の状態が表されている。選択腐食、粒界腐食および孔食を観察できないことが確認された。同様に、酸化クロム層(40)および酸化鉄層(41)は除去されたため、これらはこの図面中には存在していない。その代わりに、表された構造は、ウェブ(80)により互いに分離された極めて平坦で均一な表面を生じる。これらのウェブは、ウェブ幅(b)を有し、このウェブ幅はこの図中では約0.5μm~約8μmであってよい。これらのウェブは、ウェブ(80)の間の凹陥部の孔深さ(t)に相当するウェブ高さを有する。この孔深さは、この例では約4μm~8μmに相当する。ウェブの相互の距離は、孔幅(l)に相当する。この孔幅は、この例では約50μmである。しかしながら、この孔幅は、本発明の意味内容で、ことに上述の好ましい範囲内で調節可能である。ウェブ(80)とそのウェブの間に存在する凹陥部および/またはそのウェブにより限定された凹陥部との組み合わせは、本発明の意味内容で微細構造を表す。ウェブ高さは、ことに、図4に相当する腐食により生じる基体の凹陥部よりも大きい。RaおよびRzについての値は、この図5に相当するこの実施例の場合に、ことに表1に示された値をとることもできる。
【0115】
図5の下側の図では、ここでも大気条件下での老化後の基体の状態を表す。主要なプロセスは、ここでも酸化である。ことに、ウェブの間の凹陥部内では意外にも少なくともほぼ理想的な不動態化皮膜または層(400)が形成されることが明らかとなった。この層は、観察されたように、原則として極めて薄い。この図内では、表示の理由から、層はウェブ(80)などの寸法との関連で表されていない。この例では、この層は約3nmの厚みである。これは、不動態化層が、ウェブの高さおよび/または凹陥部高さ(t)より薄くてよいことを意味する。不動態化層の組成は、基体の金属に依存する。クロム含有鋼からなる基体のこの例の場合に、層(400)は、CrOXを含み、ことに好ましくはこの層は、CrOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれからなる。
【0116】
図6aは、記載された方法により製造された基体(1)の一部の写真を示し、この場合、微細構造はレーザー処理により導入された。微細構造の網目状の構造がはっきりと認識できる。網目ラインは、いわばウェブ(80)により形成され、編目開口部は凹陥部により形成される。
【0117】
図6bでは、分かり易くするために、図6aの写真を線画に変換した。微細構造(8)の凹陥部は、孔幅(l)を有し、この孔幅はここでは例えば70μmであってよい。
【0118】
図7は、はんだ領域の端部の領域内の本発明による基体の一部、つまりはんだ領域内の微細構造(8)の領域の断面図を概略的に示す。基体(1)の表面の濡れは、ここでは微細構造の領域内で終わる。金属製はんだ材料(7)が記載されたように接地ピン(6)に対してメニスカスを形成する場合であっても、はんだ領域の端部で基体の平面に対して接触角または濡れ角φが存在する。微細構造(8)の個々のエレメントは、はんだ材料(7)の流れを制限する。上述のように行われた基体の表面の材料の調整は、融解した金属製はんだ材料と、場合により粘着力および/または他の結合力を介して相互作用すると考えられる。それにより、金属製はんだ材料(7)の広がりは制限されると考えられる。同様に、微細構造(8)内の構造変化は融解した金属製はんだ材料の表面張力と相互作用するので、接触角または濡れ角φは増大し、それにより融解したはんだ材料の流れは、例えば微細構造のウェブで停止されると考えることもできる。同様に、この効果の組み合わせも考慮される。
【0119】
図8では、はんだ付けされた接地ピン(6)の領域内の本発明による基体とはんだ領域(7)の一部とからなる部分を概略的に示す。金属製はんだ材料(7)は、接地ピン(6)に対して、接地ピン(6)に接して引き上がるはんだメニスカスを形成する。ここでは、簡略化の理由から微細構造は図示されていない。基体(1)の表面と接地ピン(6)の上面との間に、はんだギャップ幅(s)を有するはんだギャップ(70)が存在する。はんだメニスカスは半径(r)を有し、半径(r)を有する破線で示された円により示される。記載されたように、本発明は、半径Rを制御しかつ/または先行技術と比べて低減することも可能である。これは、はんだ領域(7)のわずかでかつ制御された直径(d)を可能にする。ことに、微細構造(8)により、記載されたように、半径(r)およびはんだ領域の直径(s)の変動は低減される。比較的わずかなはんだ材料の使用が可能であり、かつ製造の信頼性が高められ、これがまた本発明による基体の明らかに低減された製造の手間を引き起こす。
【0120】
図9は、ここではエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器用のフィードスルーの形の本発明による基体(1)を概略的に表す。これらの構成要素はすでに上述された。ここから明らかなように、基体は、全体の表面上に微細構造(8)を有する。記載されたように、レーザーに基づく処理方法により、今までに適用された湿式化学法から生じるような金属表面の腐食を抑制することができる。示された基体(1)は、ことに均一な不動態化層(400)を有する。このような基体(1)は、ことに、今まで公知の基体よりも、機械的により強固でかつより耐腐食性であることができる。
【0121】
本発明は、次の確認事項によって要約することもできる。この確認事項の内容およびその従属関係は、同様にこの明細書の全体の開示内容の一部を形成する。当業者は、この明細書および/または確認事項をさらに発展させることができる。
【0122】
確認事項:
1.
金属製基体と、
ことに電気絶縁性固定材料中の機能エレメントを収容するための少なくとも1つの貫通開口部と、
前記基体とはんだ結合によって導電性に結合されている少なくとも1つの導体とを含み、
前記はんだ結合は金属製はんだ材料を含み、
前記金属製はんだ材料は前記基体の表面領域を覆い、かつ前記基体の表面上にはんだ領域を形成し、
前記基体は、少なくとも前記はんだ領域内に微細構造を有し、前記微細構造は前記基体の表面内に少なくとも凹陥部を含み、かつ
前記金属製はんだ材料は、前記はんだ領域内の前記微細構造を覆う、
フィードスルーエレメント用の基体。
【0123】
2. 前記微細構造は、前記金属製はんだ材料用のはんだストップである、確認事項1記載の基体。
【0124】
3. 前記微細構造の前記凹陥部は、ほぼ規則的な模様を形成する、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0125】
4. 前記微細構造の前記凹陥部は、相互に並んで配置されていて、かつ/または少なくとも領域的に重複されていて、好ましくは、前記微細構造は、平面図において点状パターンおよび/または網状構造および/または鱗状構造である、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0126】
5. 前記微細構造の前記凹陥部は、前記基体の表面内のレーザー構造化された領域、ことにレーザーアブレーションされた領域および/またはレーザー励起された局所的に熱変形された領域および/またはレーザー励起された圧力作用により局所的に変形された領域である、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0127】
6. 前記微細構造は溝の形状を有し、かつ/または前記微細構造は円形および/または楕円形および/またはほぼ矩形の直径を有する凹陥部を有し、好ましくは前記凹陥部はクレーター状および/またはカップ状である、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0128】
7. 前記微細構造の前記凹陥部は、前記基体の表面から測定して、ほぼ70μmまで、ことに50μmまで、ことに0.7μm~70μm、ことに0.7μm~50μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さを有する、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0129】
8. 前記基体は、前記微細構造の領域内で、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmを有し、好ましくはRaは、0.35μm~15μmの範囲内にあり、かつ/またはRzは、1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは、1μm~15μmの範囲内にある、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0130】
9. 前記微細構造の前記凹陥部は、個々の凹陥部の間にウェブが存在するように形成されている、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0131】
10. 前記凹陥部の直径は、その最も狭い箇所で測定して、10μm~200μm、好ましくは20μm~150μm、特に好ましくは80μm~150μm、全く特に好ましくは80μm~150μmである、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0132】
11. 前記微細構造の前記表面は、少なくとも前記凹陥部内に有機材料および/または炭素を有しない、好ましくは少なくとも前記凹陥部内に純粋な金属表面または十分に均一な酸化物層、好ましくは薄い酸化物層が存在し、前記酸化物層の厚みは、好ましくは10nm未満、特に好ましくは1nm~6nmである、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0133】
12. 前記基体は、少なくとも前記微細構造が存在する領域内で、クロム含有金属を含むかまたはクロム含有金属からなり、ことにクロム含有かつ/またはニッケル含有特殊鋼を含めたクロム含有かつ/またはニッケル含有鋼からなり、かつ少なくとも前記微細構造の前記凹陥部内で前記表面は、CrOXおよび/またはNiOXを含む均一な層で覆われていて、好ましくは前記層は、CrOX(OH)2-X・nH2Oおよび/またはNiOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれらからなる、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0134】
13. 前記金属製はんだ材料は、硬質はんだであり、好ましくは前記金属製はんだ材料はほぼパラジウム不含である、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0135】
14. 前記導体を前記基体と導電性に結合している前記金属製はんだ材料は、前記基体の表面への移行部ではんだメニスカスを形成し、前記はんだメニスカスは最大で0.40mmの半径を有する、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0136】
15. 前記導体の前記基体に向かう表面と前記基体の微細構造化された表面との間に、金属製はんだ材料で充填されたはんだギャップが存在し、前記はんだギャップは、前記微細構造の前記凹陥部の最も深い点から測定して、最大で100μm、好ましくは3nm~100μm、特に好ましくは最大で80μm、または最大で70μm、特に好ましくは3nm~70μmのはんだギャップ幅を有する、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0137】
16. 前記微細構造は、微細構造なしのフィードスルーエレメント(1)と比べて、前記接地ピンの剪断および/または剥離のために必要な力を高め、好ましくは剪断および/または剥離のための力を少なくとも10%高める、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0138】
17. 前記はんだ領域は、前記基体の表面に対して平行方向で測定して、最大で前記接地ピンの二倍の直径に相当する最大直径を有する、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0139】
18. 前記貫通開口部の外縁と前記導体の外縁との間の最短距離は、前記基体に対する結合箇所で測定して、最大で2.5mmである、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0140】
19. 前記基体の外縁と前記導体の外縁との間の最短距離は、前記基体に対する結合箇所で測定して、最大で2.5mmであり、好ましくはこの距離は2.0~2.4mmである、前記確認事項の少なくとも1項記載の基体(1)。
【0141】
20. 少なくとも1つの貫通開口部内で機能エレメントとして導体が電気絶縁性固定材料中に配置されていて、かつ前記基体と導電性に結合された導体は接地ピンとして構成されていて、前記接地ピンは前記はんだ領域内で前記基体と突き合わせてはんだ付けされている、エアバッグ点火器またはベルトテンショナーの製造のための前記確認事項の少なくとも1項記載の基体。
【0142】
21. 前記接地ピンは1mm±0.02mmの直径を有し、かつ前記金属製はんだ材料のメニスカスは、前記基体の表面への移行部で形成され、前記メニスカスは、0.40mm未満、好ましくは0.36mm未満、特に好ましくは0.30mm未満、全く特に好ましくは0.22mm未満の半径を有する、確認事項20記載の基体。
【0143】
22. 前記金属製はんだ材料の体積は、0.16mm3未満、好ましくは0.13mm3未満、特に好ましくは0.10mm3未満、全く特に好ましくは0.07mm3未満である、確認事項20から21までの少なくとも1項記載の基体。
【0144】
23. 前記はんだ領域は、1mm~2.5mm、ことに1mm~2.0mmの直径を有する、確認事項20から22までの少なくとも1項記載の基体。
【0145】
24. 少なくとも1つの貫通開口部内で少なくとも1つの機能エレメントが電気絶縁性固定材料中に配置されている、確認事項1から23の少なくとも1項記載の基体を有するフィードスルーエレメント。
【0146】
25. 前記機能エレメントは導電体、ことにピン状導電体、および/または導波体および/または導波管および/または導光体および/または熱電対である、確認事項24記載のフィードスルーエレメント。
【0147】
26. 前記基体は正確に1つの貫通開口部を有し、前記貫通開口部内で、導電体はガラス材料またはガラスセラミック材料またはセラミックまたはプラスチック中に配置されている、確認事項24および/または25記載のフィードスルーエレメント。
【0148】
27. 5000個の基体またはフィードスルーエレメントの試験量を含み、接地ピンの曲げ試験の際にエラー率が0.5パーミル未満である、エアバッグ点火器またはベルトテンショナーまたはガス発生器を製造するための前記確認事項の少なくとも1項記載の多量の基体またはフィードスルーエレメント。
【0149】
28. 1000個の基体またはフィードスルーエレメントの試験量を含み、前記試験量において、前記はんだ領域の直径の平均値の標準偏差は、前記試験量中での前記はんだ領域の平均直径の0%~6%の範囲内にある、エアバッグ点火器またはベルトテンショナーまたはガス発生器を製造するための前記確認事項の少なくとも1項記載の多量の基体またはフィードスルーエレメント。
【0150】
29. 次の方法工程
- 所定の厚みおよび所定の外側輪郭を有し、2つのほぼ向かい合う表面(31,32)を有する金属製基体を準備すること、
- 前記基体(1)内に少なくとも1つの貫通開口部(4,20)を作製すること、
- 前記基体の表面内に凹陥部を導入することにより、前記基体の表面の少なくとも1つの領域を微細構造化すること、
- 少なくとも1つの導体(5,6)を準備すること、
- 前記少なくとも1つの導体(5,6)を、前記基体と、前記微細構造が存在する領域内で、はんだ付け過程で融解する金属製はんだ材料を用いてはんだ付けし、ここで、融解したはんだ材料の流れは少なくとも前記微細構造の構成要素によって停止および/または制限され、かつ前記はんだ材料で覆われた、前記基体の表面上の領域がはんだ領域を形成するので、前記少なくとも1つの導体(5,6)は前記はんだ領域内で導電性に前記基体と結合されること、
を含む、フィードスルーエレメント用の基体を製造する方法。
【0151】
30. 前記微細構造を、前記基体の表面から材料を除去する方法により、好ましくは前記基体の研磨により、特に好ましくは前記基体内への押し込みにより作製する、確認事項29記載の方法。
【0152】
31. 前記微細構造の作製のために、レーザー構造化を適用する、確認事項29から30までの少なくとも1項記載の方法。
【0153】
32. 前記微細構造は、少なくとも部分的に、レーザーアブレーションおよび/またはレーザー脱着により生じ、レーザービームの作用の際に、前記基体の表面材料、ことに酸化物層および/または有機不純物は除去され、かつ前記基体のほぼブランクの金属表面が露出され、前記金属表面は入射するレーザービームを反射し、ことに露出したブランクの金属表面が、前記微細構造の深さを限定する、確認事項31記載の方法。
【0154】
33. レーザー構造化の際に、前記基体の表面材料を、レーザービームにより、ことに前記基体の材料のことに局所的な融解を伴う局所的加熱によりかつ/またはレーザー励起された圧力作用により変形させ、前記レーザービームは少なくとも前記基体の付近で気体雰囲気を局所的に加熱し、かつことに局所的にプラズマを点火するため、前記基体の表面を変形させる圧力波が形成される、確認事項31から32までの少なくとも1項記載の方法。
【0155】
34. 前記微細構造は、平面図において点状パターンおよび/または矩形パターンおよび/または網状構造および/または鱗状構造を生じる、確認事項29から33までの少なくとも1項記載の方法。
【0156】
35. 前記微細構造の作製の際に、前記基体の表面上に存在する不純物および/または有機物質および/または炭素含有物質および/または酸化物は除去される、確認事項29から34までの少なくとも1項記載の方法。
【0157】
36. 前記基体は、少なくとも前記微細構造の領域内で、前記微細構造の作製の後でかつ前記導体のはんだ付けの前に、ほぼ均一で薄い酸化物層で覆われ、好ましくは酸化物層形成するための酸素は周囲環境に由来する、確認事項29から35までのいずれか1項記載の方法。
【0158】
37. 前記基体は、前記微細構造の導入後に、少なくとも前記凹陥部内にほぼ有機材料および/または炭素を有しない、好ましくは少なくとも前記凹陥部内に純粋な金属表面または十分に均一でかつ好ましくは薄い酸化物層が存在し、前記酸化物層の厚みは、好ましくは10nm未満、特に1nm~6nmである、確認事項29から36までの少なくとも1項記載の方法。
【0159】
38. 前記基体は、少なくとも前記微細構造が存在する領域内で、クロム含有金属を含むかまたはクロム含有金属からなり、ことにクロム含有特殊鋼を含めたクロム含有鋼からなり、かつ少なくとも前記微細構造の前記凹陥部内で前記表面は、酸化によりCrOXおよび/またはNiOXを含む均一な層で覆われ、好ましくは前記層はCrOX(OH)2-X・nH2Oを含むかまたはこれからなり、かつ/または前記層はNiOX(OH)2-X・nH2Oからなるかまたはこれを含む、確認事項29から37までの少なくとも1項記載の方法。
【0160】
39. 金属製はんだ材料として硬質はんだを使用し、好ましくは前記金属製はんだ材料はほぼパラジウム不含であり、好ましくは前記金属製はんだ材料は、はんだ付けの前に前記導体の周りにリングの形状に置かれるので、はんだ付けの際に前記金属製はんだ材料は前記微細構造内へ流入し、かつ前記導体(6)と、前記微細構造(8)の領域内の前記基体の表面との間にはんだギャップを有するはんだ領域を形成し、前記はんだギャップは前記金属製はんだ材料で充填されている、確認事項29から38までの少なくとも1項記載の方法。
【0161】
40. 前記微細構造は、前記基体の表面から測定して、最大で70μm、ほぼ0.7μm~70μm、好ましくは0.7μm~20μm、特に好ましくは1μm~10μm、全く特に好ましくは2μm~10μmの深さで前記基体中に導入される、確認事項29から39までの少なくとも1項記載の方法。
【0162】
41. 前記微細構造は、平均粗さRa≧0.35μmおよび/または最大高さRz≧1μmが生じるように、好ましくはRaは0.35μm~15μmの範囲内にありかつ/またはRzは1μm~50μmの範囲内にあり、ことにRzは1μm~15μmの範囲内にあるように前記基体中に導入される、確認事項29から40までの少なくとも1項記載の方法。
【0163】
42. 電気フィードスルーエレメントにおける、確認事項1から23までの少なくとも1項記載の基体および/またはフィードスルーエレメントの使用。
【0164】
43. 着火技術的点火装置および/またはエアバッグ点火器および/またはベルトテンショナーおよび/またはガス発生器および/またはセンサーおよび/またはアクチュエーターおよび/または大型フィードスルーおよび/またはトランジスタ-アウトライン-ハウジングおよび/またはバッテリーハウジングおよび/またはコンデンサーハウジングにおける、またはその一部および/またはその領域としての、確認事項1から23までの少なくとも1項記載の基体および/またはフィードスルーエレメントの使用。
【0165】
上述のように、本発明による基体(1)は、今まで公知の基体と比べて多大な利点を有する。一方で、本発明による基体は、はんだ領域の制御により、はんだ領域の直径(d)、はんだメニスカスの半径(r)およびはんだギャップ幅(s)におけるわずかな変化を有する。これは、基体(1)と接地ピン(6)との間のはんだ結合が、いわば確実に形成されることを意味する。本発明による基体(1)は、それにより、合理的に製造可能であり、ことに不良品の数は低減される。同様に、使用されるはんだ材料の量を低減することが可能である。同様に、はんだ領域(7)の直径(d)の制御は、比較的小さな直径(d)を可能にするので、接地ピン(6)は、基体および/または貫通開口部(4)の縁部付近に配置することができる。それにより、基体(1)の直径を比較的小さく選択することができ、これはつまり小型化された基体を可能にする。さらに、本発明による基体は、その金属組織構造の腐食損傷を有しないか、または少なくとも著しくわずかな腐食損傷を有する。この基体は、さらに、効果的な、ことに均一な不動態化層で覆われていてもよい。これは、その機械的耐久力および/またはその耐腐食性を高める。この基体から製造された構成部材は、改善された寿命および/または信頼性を得る。
【符号の説明】
【0166】
1 基体
2 キャップ
4 フィードスルー開口部
5 機能エレメント、第1の金属ピン
6 導体、第2の金属ピン、接地ピン
7 金属製はんだ材料、はんだ領域
8 微細構造
9 架橋ワイヤ
10 電気絶縁性固定材料
11 基体の表面、上面
12 基体の表面、下面
25 推進装填物
40 酸化クロム
41 酸化鉄
70 はんだギャップ
80 ウェブ
101 オーステナイト相
102 マルテンサイト相
103 選択腐食
104 粒界腐食
105 孔食
400 不動態化皮膜
410 後生成された酸化鉄
d はんだ領域の直径
r メニスカスの半径
s はんだギャップ幅
b ウェブ幅
t 凹陥部高さ
l 孔幅
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9