(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】分析物検出の改善のためのアッセイ法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20230815BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230815BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20230815BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230815BHJP
C07K 14/155 20060101ALN20230815BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20230815BHJP
C07K 14/16 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
G01N33/569 H ZNA
G01N33/53 N
G01N33/543 521
G01N33/53 A
G01N33/53 B
G01N33/53 G
G01N33/53 D
G01N33/569 L
C12M1/34 F
C07K14/155
C07K16/10
C07K14/16
(21)【出願番号】P 2020507665
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 US2018045749
(87)【国際公開番号】W WO2019032669
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502431489
【氏名又は名称】オラシュアテクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヤーウッド、グレアム
(72)【発明者】
【氏名】リード、マイケル
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513113(JP,A)
【文献】国際公開第2005/069002(WO,A1)
【文献】特表2002-510048(JP,A)
【文献】国際公開第2006/122450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12M 1/34
C07K 14/155
C07K 16/10
C07K 14/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体生体サンプル中の分析物を検出するための
ラテラルフローアッセイ法であって、
a)分析物を含有する疑いのある前記液体生体サンプルを、液相でリガンド‐標的コンジュゲートと接触させるステップ、ここで、前記リガンド‐標的コンジュゲートは、リガンド‐標的‐分析物複合体を形成するように前記サンプル中の全分析物の一部に結合するものであり、前記全分析物の一部はリガンド‐標的コンジュゲートに未結合のままである、
b)前
記未結合の分析物及び前記リガンド‐標的‐分析物複合体を、受容体‐標識コンジュゲートと接触させて、それぞれ分析物‐受容体‐標識複合体及びリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成するステップ、
c)
捕捉剤を含む、ラテラルフローアッセイストリップの表面上に
、前記分析物‐受容体‐標識複合体及びリガンド‐標的‐分析物-受容体-標識複合体を捕捉するステップ、ここ
で:
(i)
前記捕捉剤の一部はリガンド‐標的コンジュゲートと
予め複合体化され
ており、前記複合体化されたリガンド-標的が前記分析物‐受容体‐標識複合体に結合して前記表面に捕捉されたリガンド-標的-分析物‐受容体‐標識複合体を形成する
、及び
(ii)
前記捕捉剤の他の一部はリガンド‐標的コンジュゲートと複合体化されて
おらず、
その捕捉剤は前記リガンド-標的-分析物‐受容体‐標識複合体に結合して前記表面に捕捉されたリガンド-標的-分析物‐受容体‐標識複合体を形成す
る、
及び
d)前記表面上に捕捉された前記リガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を検出するステップ
を含む、上記
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項2】
前記分析物が抗体であり、前記標的が抗原である、請求項1に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項3】
前記分析物が抗HIV‐1及び抗HIV‐2から選択される抗HIV抗体であり、前記抗原がHIV‐1ペプチド、HIV‐2ペプチド、rAg、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項4】
前記リガンドが、ビオチンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項5】
前記液体生体サンプルが、口腔液、全血、及び血漿からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項6】
前記受容体が、プロテインAである、請求項1~5のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項7】
前記標識が、コロイド金である、請求項1~6のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項8】
前記捕捉剤が、ストレプトアビジンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項9】
前記リガンド‐標的コンジュゲートが、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、ビオチン化rAgペプチド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項10】
前記アッセイ法が、ラテラルフローアッセイストリップ上で実施され、さらに、前記ラテラルフローアッセイストリップを展開液と接触させるステップを含み、接触後に、前記展開液が前記ラテラルフローアッセイストリップをわたって移動する、請求項1~9のいずれか1項に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項11】
前記液体生体サンプルが、前記展開液に添加される、請求項10に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項12】
前記液体生体サンプルが、前記ラテラルフローアッセイストリップのサンプル受容領域に添加される、請求項10に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項13】
前記リガンド‐標的コンジュゲートが、前記展開液に添加される、請求項10に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項14】
前記リガンド‐標的コンジュゲートが、前記分析物に結合すべきサンプル受容領域の下流の前記ラテラルフローアッセイストリップの一部から溶出する、請求項10に記載の
ラテラルフローアッセイ法。
【請求項15】
液体生体サンプルから分析物を検出するためのラテラルフローアッセイストリップであって、
サンプル受容領域
リガンド‐標的コンジュゲートを含有する、前記サンプル受容領域の下流のブロッカー領域、
受容体‐標識コンジュゲートを含有する、前記ブロッカー領域の下流のコンジュゲート領域、及び
(i)リガンド‐標的コンジュゲートと複合体化された固定された捕捉剤;及び
(ii)リガンド‐標的コンジュゲートと複合体化されていない固定された捕捉剤
を含む前記コンジュゲート領域の下流のテストゾーン、
を含む、上記ラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項16】
前記分析物が、抗体であり、前記標的が、抗原である、請求項15に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項17】
前記分析物が抗HIV‐1及び抗HIV‐2から選択される抗HIV抗体であり、前記抗原が、HIV‐1ペプチド、HIV‐2ペプチド、rAg、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項18】
前記リガンドが、ビオチンである、請求項15~17のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項19】
前記液体生体サンプルが、口腔液、全血、及び血漿からなる群から選択される、請求項15~18のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項20】
前記受容体が、プロテインAである、請求項15~19のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項21】
前記標識が、コロイド金である、請求項15~20のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項22】
前記捕捉剤が、ストレプトアビジンである、請求項15~21のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項23】
前記ラテラルフローアッセイストリップが前記テストゾーンの下流にコントロールゾーンをさらに含み、前記コントロールゾーンが、抗ヒト抗体を含む、請求項15~22のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項24】
前記リガンド‐標的コンジュゲートが、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、ビオチン化rAgペプチド、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15~23のいずれか1項に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【請求項25】
キットであって、
a)請求項15に記載のラテラルフローアッセイストリップ、及び
b)展開液
を含む上記キット。
【請求項26】
前記分析物が、HIVに対する抗体、HPVに対する抗体、HCVに対する抗体、エボラに対する抗体、デング熱に対する抗体、ジカに対する抗体、ヘリコバクターピロリに対する抗体、肝炎に対する抗体、麻疹に対する抗体、肝炎抗原、テルポネムに対する抗体、宿主又は感染因子に対する抗体、限定されないが、カルジオリピン、レシチン、コレステロール、リポ多糖、及びシアル酸を含む病理の細胞マーカー、おたふく風邪に対する抗体、風疹に対する抗体、コチニン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、ベンゾジザズピン、テトラヒドロカンナビノール、ニコチン、エタノールテオフィリン、フェニトイン、アセトアミノフェン、リチウム、ジアゼパム、ノルトリプチリン、セコバルビタール、フェノバルビタール、テオフィリン、テストステロン、エストラジオール、17‐ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、毛嚢刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、トランスフォーミング増殖因子アルファ、上皮成長因子、インスリン様成長因子I及びII、成長ホルモン放出阻害因子、IGA、性ホルモン結合グロブリン、グルコース、コレステロール、カフェイン、コルチコステロイド結合グロブリン、PSA、DHEA結合糖タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の
ラテラルフローアッセイ方法。
【請求項27】
前記分析物が、HIVに対する抗体、HPVに対する抗体、HCVに対する抗体、エボラに対する抗体、デング熱に対する抗体、ジカに対する抗体、ヘリコバクターピロリに対する抗体、肝炎に対する抗体、麻疹に対する抗体、肝炎抗原、テルポネムに対する抗体、宿主又は感染因子に対する抗体、限定されないが、カルジオリピン、レシチン、コレステロール、リポ多糖、及びシアル酸を含む病理の細胞マーカー、おたふく風邪に対する抗体、風疹に対する抗体、コチニン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、ベンゾジザズピン、テトラヒドロカンナビノール、ニコチン、エタノールテオフィリン、フェニトイン、アセトアミノフェン、リチウム、ジアゼパム、ノルトリプチリン、セコバルビタール、フェノバルビタール、テオフィリン、テストステロン、エストラジオール、17‐ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、毛嚢刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、トランスフォーミング増殖因子アルファ、上皮成長因子、インスリン様成長因子I及びII、成長ホルモン放出阻害因子、IGA、性ホルモン結合グロブリン、グルコース、コレステロール、カフェイン、コルチコステロイド結合グロブリン、PSA、DHEA結合糖タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のラテラルフローアッセイストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月8日に出願された米国出願第62/542,612号の優先権を主張し、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、分析物検出の改善のためのアッセイ法、ラテラルフローアッセイストリップ、及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
イムノアッセイは、生成された抗体試薬の特異性及び選択性に基づいて生物学的に関心のある分子を定量するために使用される。ポイントオブケアテストでは多くの場合、イムノアッセイがラテラルフローアッセイ形式で使用される。例えば、米国特許第7,192,555号及び米国特許第6,303,081号を参照のこと。固相ラテラルフローデバイスは、分析物‐標的ペアの部材を結合する固体支持体ストリップを組み込む。ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、紙、及び他の多孔性ポリマーなどの多孔性材料は多くの場合、固体支持体ストリップとして用いられる。目的の分析物を含有し得るサンプルは、アッセイをわたって固体支持体に沿って流れる。分析物若しくはその誘導体が固定された標的に結合するようになること、及び分析物若しくはその誘導体の存在が検出されること、又は分析物若しくはその誘導体が反応して、続いて検出される生成物を形成し得ることを含む、いくつかの手順が利用されてもよい。
【0004】
テストラインでの配向した標的分子によるサンプル中の分析物の捕捉を使用する以前のラテラルフローアッセイストリップは、種々の分析物を検出するために使用されている。例えば、1つのHIV‐1/2ラテラルフローアッセイストリップでは、ストレプトアビジン(SA)をウシ血清アルブミン(BSA)などのアンカータンパク質とコンジュゲートして、ニトロセルロースのテストライン位置にコンジュゲートをストライピングすることにより、テストラインを調製した。例えば、米国特許第8,062,908号、米国特許第7,192,555号、米国特許第6,303,081号、米国特許第7,541,194号、及びOraQuick ADVANCE(登録商標)Rapid HIV‐1/2 Antibody Testの添付文書を参照のこと。SA‐BSAコンジュゲートは、テストライン上でのビオチン化ペプチドの高度に活性で安定した提示を可能にした。そのラテラルフローアッセイストリップでは、ストレプトアビジンのビオチン結合部位が予め搭載され、その結果、HIV‐1及びHIV‐2ペプチドは、既にSA上の部位に存在し、陽性患者サンプル中の抗HIV抗体がライン上に流れると、それらを捕捉した。標本がストリップを上に移動し、テストラインに接触すると、標本がテストラインでニトロセルロースメンブレンに固定された合成ペプチド抗原と反応する抗体を含む場合、目に見えるシグナルが現れ、これは、標本中のHIV‐1及び/又はHIV‐2に対する抗体の存在を定性的に示す。本特許を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
代表的なラテラルフローアッセイデバイスでは、テストゾーンにおける分析物の特異的な捕捉は、分析物を含有する液体テストサンプルがテストゾーンを通って移動して、固体/液体界面でその標的に結合する時のみに生じる。そのようなデバイスは、分析物が溶液中のその標的に結合する結合ステップを追加することで改善され得、これは、本発明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は一般に、分析物検出の改善のためのアッセイ法、ラテラルフローアッセイストリップ、及びデバイスに関する。本発明によるアッセイ法は、液体生体サンプルから目的の分析物を検出する。本発明によるアッセイ法は、
a)分析物を含有する疑いのある液体生体サンプルを、液相で少なくとも1つのリガンド‐標的コンジュゲートと接触させ、ここでリガンド‐標的コンジュゲートは、リガンド‐標的‐分析物複合体を形成するように分析物の少なくとも一部に結合するものであり、
b)生体サンプル中の分析物及びステップa)の複合体を、受容体‐標識コンジュゲートと接触させて、分析物‐受容体‐標識複合体、及びリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成し、
c)リガンドに結合可能な捕捉剤を含む表面上にステップb)の標識された複合体を捕捉して、表面上にリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成し、ここで捕捉剤のリガンド結合部位の一部は、リガンド‐標的コンジュゲートにより占有されており、
d)表面上に捕捉されたリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を検出する。従って、標的への分析物の結合は、標的が溶液相中にある状態及び標的が表面に固定された状態の両方で実施され、分析物検出の改善がもたらされる。
【0007】
本発明のアッセイ法は、ラテラルフローアッセイストリップを使用するラテラルフローアッセイであってよい。本発明によるラテラルフローアッセイストリップは、液体生体サンプルから目的の分析物を検出するように設計される。本発明によるラテラルフローストリップは、
サンプル受容領域
リガンド‐標的コンジュゲートを任意に含有する、サンプル受容領域の下流のブロッカー領域、
標識‐受容体コンジュゲートを含有する、ブロッカー領域の下流のコンジュゲート領域、
リガンド結合部位の一部がリガンド‐標的コンジュゲートで占有されている、リガンドに結合可能な固定された捕捉剤を含むコンジュゲート領域の下流のテストゾーン、
任意に、アッセイの完了を示す、テストゾーンの下流のラテラルフローアッセイストリップ上のコントロールゾーン;及び
任意に、ラテラルフローアッセイストリップと流れ連通し且つコントロールゾーンの下流に位置する吸収パッド
を含む。
【0008】
本発明によるラテラルフローデバイスは、本発明によるラテラルフローストリップ並びに任意のテストゾーン及び任意のコントロールゾーンを見る開口部を収容するアッセイ部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ラテラルフローアッセイの実行前に、抗体、説明のために、抗HIV抗体、の検出を改善するための本発明によるラテラルフローストリップ[102]を収容する代表的なデバイス[100]を示す。生体サンプルの抗HIV抗体は、フラットパッドサンプルコレクター[103]上に示される。ブロッカーパッド[104]は、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、及びビオチン化rAgペプチドと共に示される。コンジュゲートパッド[105]は、コロイド金にコンジュゲートされているプロテインAと共に示される。セルロースメンブレン[106]のテストライン[107]は、固定されたウシ血清アルブミン及びストレプトアビジンと共に示され、ストレプトアビジン上のビオチン結合部位の一部がビオチン化HIV‐1及びビオチン化HIV‐2ペプチドに結合している。コントロールライン[108]は、固定された抗ヒト抗体と共に示される。
【0010】
【
図2】サンプルがテストライン[107]に到達する時の、ラテラルフローアッセイ中の抗HIV抗体の検出を改善するための本発明によるラテラルフローストリップ[102]を収容する代表的なデバイス[100]を示す。抗HIV抗体を含有するサンプルがブロッカーパッド[104]に移動すると、抗HIV抗体の一部は、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、及びビオチン化rAgペプチドに結合する。サンプルがコンジュゲートパッド[105]に移動すると、ビオチン化に結合している抗HIV抗体はさらに、プロテインA‐コロイド金コンジュゲートに結合する。未結合抗HIV抗体はさらに、プロテインA‐コロイド金コンジュゲートに結合する。
【0011】
【
図3】サンプルがコントロールライン[108]を通って、吸収パッド[109]に流入する時のラテラルフローアッセイの実行後の抗HIV抗体の検出を改善するための本発明によるラテラルフローストリップ[102]を収容する代表的なデバイス[100]を示す。テストライン[107]では、ストレプトアビジンと複合体化されたビオチン化HIV‐1及びビオチン化HIV‐2ペプチドは、プロテインA‐コロイド金コンジュゲートと複合体化された抗HIV抗体を捕捉する。さらに、テストライン[107]では、ストレプトアビジンは、プロテインA‐コロイド金コンジュゲートと複合体化されたAnti‐HIV抗体と複合体化されたビオチン化ペプチドの複合体を捕捉する。コントロールライン[108]では、抗ヒト抗体が、生体サンプル中のヒト抗体を捕捉する。プロテインA‐コロイド金コンジュゲートと複合体化された抗HIV抗体は、コントロールライン[108]上の抗ヒト抗体に結合するので、目に見える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、分析物検出の改善のためのアッセイ法、ラテラルフローアッセイストリップ、及びデバイスに関する。溶液相中での標的への分析物の結合を、固相上での標的への分析物の結合と組み合わせることにより、分析物検出の改善が達成される。本発明による液体生体サンプル中の分析物を検出するためのアッセイ法は、
a)分析物を含有する疑いのある液体生体サンプルを、液相で少なくとも1つのリガンド‐標的コンジュゲートと接触させ、リガンド‐標的コンジュゲートが、リガンド‐標的‐分析物複合体を形成するように分析物の少なくとも一部に結合し、
b)生体サンプル中の分析物及びステップa)の複合体を、受容体‐標識コンジュゲートと接触させて、分析物‐受容体‐標識複合体、及びリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成し、
c)リガンドに結合可能な捕捉剤を含む表面上にステップb)の標識された複合体を捕捉して、表面上にリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成し、ここで捕捉剤のリガンド結合部位の一部がリガンド‐標的コンジュゲートにより占有されており、
d)表面上に捕捉されたリガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を検出する。
【0013】
本発明によるアッセイ法は、標的に分析物を結合させて、表面にそれをもたらすための2つの機序:i)表面に固定された標的へのサンプル中の分析物の結合;及び、ii)液相中のリガンド‐標的コンジュゲートへの分析物の結合、続いて、表面への分析物‐標的‐リガンド複合体の捕捉、を利用可能にする。後者では、リガンド及び表面の捕捉試薬間の親和性が高いことにより、分析物‐標的複合体が溶液から確実に抽出される。機構のこの組み合わせは、分析物を捕捉するために、表面上に固定された標的の高活性で安定した提示を提供し、さらに、液相に結合するための有利な溶液動力学を可能にする。溶液中の追加の結合ステップを含むことにより、アッセイの感度は、特に、複合体の形成が遅くなり形成時間が長くなる時に、改善される。
【0014】
本発明のアッセイ法では、アッセイは、ラテラルフローアッセイストリップ上で実施される。方法はさらに、ラテラルフローアッセイストリップを展開液と接触させることを含む。接触時に、展開液は、ラテラルフローアッセイストリップをわたって移動する。本発明の方法では、液体生体サンプルは、展開液に入れられ、得られた生体サンプルを含む展開液は、ラテラルフローアッセイストリップの下流の点に向かってアッセイストリップをわたって移動する。本発明の別の方法では、液体生体サンプルは、ラテラルフローアッセイストリップのサンプル受容領域上に配置され、展開液は、サンプル受容領域から下流の点に向かってアッセイストリップをわたって生体サンプルを流すことを促進するためにラテラルフローアッセイストリップに接触する。
【0015】
本発明のアッセイ法を使用して、分析のために取られた液体生体サンプルは、目的の抗体を含有し得る生体液などの任意の液体生体サンプルであってよい。生体液の例としては、尿、血液、血漿、血清、口腔液、汗、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水、母乳などが挙げられるが、これらに限定されない。口腔液は、口腔内に存在する液体である。口腔液は、唾液及び口腔粘膜漏出液の混合物である。唾液は、唾液腺により生成される。口腔粘膜漏出液は、毛細血管から頬粘膜を越えることにより口に入る。口腔液は、病原体及び抗体の両方を含有する。口腔液、全血、血漿、及び血清などの生体液サンプルは、本発明のイムノアッセイで使用可能なサンプルの好ましいタイプである。これらのそれぞれは、当該技術分野で既知の手段及び技術を使用して得られてもよい。
【0016】
HIVウイルス由来の感染症などのウイルス感染症は、臨床徴候及び症状及び/又は疫学的危険因子を有する患者に由来する全血(静脈又は指先穿刺)、血清及び血漿、口腔液(例えば、唾液及び口腔粘膜漏出液)、尿、精液、並びに母乳などの液体生体サンプルを含み得る複数のマトリックスで検出することができる。例えば、口腔液サンプルを測定することを目的とする方法では、対象にテストデバイスを手渡し、デバイスのフラットパッドで唾液を収集するために上下の歯茎を一度拭くように指示する。全血を測定することを目的とする本発明の方法では、医療従事者により適切な量の血液がデバイス上に入れられる。使用されるべき液体生体サンプルの量は、液体生体サンプル及びアッセイ形式に基づいて変動し得る。
【0017】
本発明のアッセイ法では、分析物は、抗体であってよい。HIVウイルスの感染などのウイルス感染は、患者における抗HIV抗体の産生をもたらす。好ましいアッセイ法では、抗体は、抗HIV抗体である。抗HIV抗体は、HIV‐1又はHIV‐2に対する抗体であってよい。本発明のアッセイ法は、HIVに関して記載されているが、本発明のアッセイ法は、任意の感染症の同定、決定、及び/又は処置に使用されてもよい。
【0018】
本発明のアッセイデバイス、ラテラルフローアッセイストリップ、及び方法は、生体液サンプル中の事実上いかなる分析物の検出(陽性又は陰性、及び/又は定量化)にも使用することができる。さらに、デバイス、ラテラルフローアッセイストリップ、及び方法は、1つ以上の分析物を同時に検出するために使用することができる。そのような分析物としては、HIVに対する抗体、HPVに対する抗体、HCVに対する抗体、エボラに対する抗体、デング熱に対する抗体、ジカに対する抗体、ヘリコバクターピロリに対する抗体、肝炎に対する抗体、麻疹に対する抗体、肝炎抗原、テルポネム(terponemes)に対する抗体、宿主又は感染因子に対する抗体、限定されないが、カルジオリピン、レシチン、コレステロール、リポ多糖、及びシアル酸を含む病理の細胞マーカー、おたふく風邪に対する抗体、風疹に対する抗体、コチニン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、ベンゾジザズピン(benzodizazpines)、テトラヒドロカンナビノール、ニコチン、エタノールテオフィリン、フェニトイン、アセトアミノフェン、リチウム、ジアゼパム、ノルトリプチリン、セコバルビタール、フェノバルビタール、テオフィリン、テストステロン、エストラジオール、17‐ヒドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、毛嚢刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、トランスフォーミング増殖因子アルファ、上皮成長因子、インスリン様成長因子I及びII、成長ホルモン放出阻害因子、IGA、性ホルモン結合グロブリン、グルコース、コレステロール、カフェイン、コルチコステロイド結合グロブリン、PSA、並びにDHEA結合糖タンパク質が挙げられ得るが、これらに限定されない。目的の分析物(複数可)に応じて、分析物に結合する標的及び受容体は、当該技術分野で既知の結合剤から選択されてもよい。
【0019】
当該技術分野で既知の抗体は、免疫グロブリン遺伝子若しくは免疫グロブリン遺伝子、又はそのフラグメントにより実質的にコードされるポリペプチド又はポリペプチドの複合体を指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類され、これは順番に、それぞれ免疫グロブリンのクラス(アイソタイプ)であるIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。重鎖の定常ドメインは、抗体のFc領域を構成する。抗体のFc部分は、抗体クラスを決定する。
【0020】
通常は、抗体は、別の分子の特定の空間的及び極性的構造に特異的に結合し、それと相補的であると規定される、N末端表面上又は空洞内の領域を有する免疫グロブリンである。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルとし得る。抗体は、完全な免疫グロブリン又はそのフラグメントを含んでもよい。そのフラグメントは、Fab、Fv、及びF(ab’)2、Fab’などを含んでもよい。抗体は、組み換え法により作製されたキメラ抗体又はそのフラグメントも含んでもよい。抗原は、目的の抗体に特異的に結合することが可能な任意の化合物である。目的の抗原及び抗体間の特異的結合は、2つの分子が関連し、その結果、互いの結合が他のアッセイ又はサンプル構成成分間で識別することができることを意味する。
【0021】
標的は、分析物に結合する構成成分を指す。本発明のアッセイ法では、分析物は、標的に特異的に結合する。本発明のアッセイ法では、標的は、抗原であってよい。例えば、分析物が抗体である時、標的は、その同族抗原であってよい。あるいは、分析物が抗原である時、標的は、抗原に特異的に結合する抗体であってよい。好ましくは、標的は、ペプチドである。本発明の好ましい方法では、標的は、HIV‐1ペプチド、HIV‐2ペプチド、rAg、及びそれらの混合物から選択される。抗HIV‐1抗体は、HIV‐1ペプチド及びrAgに特異的に結合する。抗HIV‐2抗体は、HIV‐2ペプチドに特異的に結合する。HIV‐1及びHIV‐2合成ペプチドは、エンベロープの領域(gp120、41)又はp24又はp17又はウイルス由来の他の既知のタンパク質に対応し得る。
【0022】
rAgという用語は、あらゆる抗原性HIV組み換えポリペプチドを指す。米国特許第5,156,949号、米国特許第5,217,861号、米国特許第6,428,952号、米国特許第5,830,641号、米国特許第5,886,319号、及び米国特許第6,544,728号は、例えば、HIVに対する抗体のイムノアッセイに有用な組み換え抗原について記載する。配列番号1に示されるヌクレオチド配列は、ORA‐1、HIV‐1(hSOD1‐HIV1gp120‐41)としても知られる組み換え抗原rAgをコードする。配列番号2は、rAgのアミノ酸配列である。HIVの成熟エンベロープタンパク質(Env)は、非共有結合したgp120‐gp41ヘテロ二量体のホモ三量体からなる。得られる複合体は、スパイクとしてウイルス表面から突き出す。表面タンパク質gp120は、ヒトCD4、CCR5、及びCXCR4と相互作用して、P4HB/PDI‐CD4‐CXCR4‐gp120複合体を形成する。rAgのこの組み換え設計は、HIV‐1ペプチド配列を詳述し、これを含む。rAg抗原は、抗HIV‐1抗体により認識される。
【0023】
本発明の方法において、標的は、リガンドにコンジュゲートされて、リガンド‐標的コンジュゲートを形成する。分析物とのリガンド‐標的コンジュゲートの結合により、リガンド‐標的‐分析物複合体の形成がもたらされる。本発明の方法のステップa)では、分析物の一部又は全ては、リガンド‐標的コンジュゲートに結合する。分析物の全てがリガンド‐標的コンジュゲートに結合しない場合、分析物の一部は、未結合のままである。
【0024】
リガンドは、表面に固定された捕捉試薬に、リガンドに会合する物質を導くのに役立つ。例えば、リガンド‐標的‐分析物複合体中のリガンドは、固定された捕捉試薬に、複合体を導くのに役立つ。本発明による方法では、リガンドは、ビオチンであり、リガンド‐標的コンジュゲートは、ビオチン化ペプチドである。ペプチドのビオチン化は、当該技術分野で既知の方法及び試薬を使用して実施することができる。例えば、NHS‐ビオチンは、ペプチドの1級アミン基を標識するために使用することができる。ビオチン化の程度は、4′‐ヒドロキシアゾベンゼン‐2‐カルボン酸試薬を使用して試験することができる。本発明の方法では、リガンド‐標的コンジュゲートは、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、ビオチン化rAg、及びそれらの混合物から選択される。本発明の好ましい方法では、リガンド‐標的‐分析物複合体は、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、又はビオチン化rAgに結合している抗HIV抗体の複合体である。ビオチンは、ストレプトアビジンとの強い非共有相互作用が可能である。本発明の方法では、ストレプトアビジンは、好ましい捕捉試薬である。
【0025】
液体生体サンプルをリガンド‐標的コンジュゲートと接触させるステップは、液相で生じる。好ましくは、リガンド‐標的コンジュゲートは、ラテラルフローアッセイストリップ上のブロッカーパッド上に存在し、液体がリガンド‐標的コンジュゲートと接触すると、ブロッカーパッドから溶出する。ラテラルフローアッセイストリップの調製中に、リガンド‐標的コンジュゲートは、ブロッカーパッド上に配置され、メンブレン上で乾燥させてもよい。液相中の分析物がブロッカーパッドをわたって移動すると、リガンド標的コンジュゲートは、ブロッカーパッドから液相に溶出し、分析物への結合に利用可能である。本発明の方法では、液相結合のために、リガンド‐標的コンジュゲートをブロッカーパッド上に配置する。本発明の別の方法では、リガンド‐標的コンジュゲートは、展開液に添加される。本発明のさらに別の方法では、リガンド‐標的コンジュゲートは、ブロッカーパッド上及び展開液中に配置される。
【0026】
標識は、それ自体が目に見えるか、又は、視覚的若しくは機器的手段により検出可能なシグナルを生成することが可能である任意の物質であってよい。特定の標識の選択は、本発明にとって重要ではないが、標識は、それ自体で検出可能なシグナルを生成可能か、又は機器的に検出可能か、又は1つ以上の追加のシグナル生成構成要素と共に検出可能(例えば、酵素/基質シグナル生成システム)であるべきである。
【0027】
当該技術分野で知られているように、標識のタイプの選択は、検出されるべき分析物及び所望の検出手段の考察を含む。検出可能な標識の検出は、選択された部分又は試薬に依存することになり、現況技術で既知の任意の方法、例えば、目視検査、紫外可視分光光度法、蛍光定量、放射能計数などのいずれか、により行うことができる。通常、視覚的に検出可能な標識が使用される。これにより、追加のシグナル生成構成要素を必要とせずに、サンプル内の分析物の存在又は量を、直接見える又は機器で読み取ることができる。当該技術分野で既知の且つ本発明の方法での使用に適する種々の標識は、自体で目に見える、又は化学的若しくは物理的手段のいずれかを介してシグナルを生成する標識を含む。そのような標識は、酵素及び基質、色素原、触媒、蛍光化合物、化学発光化合物、並びに放射性標識を含み得る。当該技術分野で既知の他の好適な標識としては、コロイド金などの金属コロイド粒子、セレン若しくはテルルなどのコロイド非金属粒子、染色プラスチック若しくは染色微生物などの染色若しくは着色粒子、有機ポリマーラテックス粒子及びリポソーム、着色ビーズ、ポリマーマイクロカプセル、嚢、赤血球、赤血球ゴースト、又は直接見える物質を含有する他の小胞などの微粒子標識が挙げられる。米国特許第4,313,734号は、抗体の標識としての金ゾルの使用について記載する。本発明による好ましいアッセイ法では、検出可能な標識は、金微粒子又は金ナノ粒子などの金属コロイド粒子であり、これらは、人間の目及び機器読み取りにより見ることができる。本発明のアッセイ法では、検出可能な標識として使用されるコロイド粒子は、20nm~80nmの粒子直径を有する。機器読み取りアッセイでは、粒子の濃度は、分光光度計を使用して特定の波長で光学密度(OD)を測定することにより測定される。次に、ODは、標識された抗原の総量の尺度として使用される。本発明によるアッセイ法では、標識された抗原の量は、好ましくは、完全な標識を可能にするために検出されるべき抗体を超えるべきである。
【0028】
受容体‐標識コンジュゲートは、検出可能な複合体を作成するために、分析物に結合するのに役立つ。分析物に応じて、受容体は、分析物に特異的又は非特異的に結合する任意の分子であってよい。本発明の好ましい方法では、受容体は、プロテインAである。プロテインAは、いくつかの免疫グロブリンのFc部分に結合し得る。本発明のアッセイ法では、受容体‐標識コンジュゲートは、プロテインA‐金コロイドコンジュゲートである。タンパク質は、当該技術分野で既知の技術によりコロイド金に結合され得る。プロテインA‐金コロイドコンジュゲート、例えば、Sigma Aldrich(登録商標)製のP‐6730が市販されている。受容体‐標識コンジュゲートの他の例としては、金コンジュゲート抗原(架橋アッセイ)及び2次抗ヒト重鎖又は軽鎖特異的金コンジュゲートが挙げられる。
【0029】
本発明のアッセイ法では、受容体はさらに、分析物に結合する。受容体は、分析物がさらに標的に結合しているかどうかに関わらず、分析物に結合する。従って、受容体‐標識コンジュゲートは、分析物‐受容体‐標識複合体を形成するために分析物に結合し、受容体‐標識コンジュゲートはさらに、リガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体を形成するためにリガンド‐標的‐分析物複合体に結合する。受容体標識を分析物又はリガンド‐標的‐分析物複合体のいずれかと反応させるステップは、液相で生じる。ラテラルフローアッセイストリップを使用する本発明の方法では、好ましくは、リガンド‐標的コンジュゲートがコンジュゲートパッド上に存在し、液体が受容体‐標識コンジュゲートに接触すると、コンジュゲートパッドから溶出する。ラテラルフローアッセイストリップの調製中に、受容体‐標識コンジュゲートは、コンジュゲートパッドに配置され、メンブレン上で乾燥させてもよい。液相の分析物がコンジュゲートパッドをわたって移動すると、受容体‐標識コンジュゲートは、コンジュゲートパッドから液相に溶出し、分析物及び分析物‐標的‐リガンド複合体への結合に利用可能である。本発明による好ましい方法では、リガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体は、プロテインAコンジュゲートコロイド金に結合している抗体に結合しているビオチン化ペプチドである。
【0030】
本発明のアッセイ法では、捕捉試薬は、リガンドに結合し、検出のための固体支持体上に分析物を含む標識された複合体をもたらすのに役立つ。好ましくは、捕捉試薬は、固体支持体上に固定される。捕捉試薬は、固定されても、溶液からの分離を可能にする他の構成要素に結合されてもよい。固定化及び結合、並びに捕捉試薬の配置は、アッセイ形式に依存する。例えば、本発明の一部のアッセイ法では、捕捉試薬は、ラテラルフローアッセイテストストリップ上の特定の領域、ゾーン、若しくはライン上に、メンブレンの特定の領域中に、クロマトグラフィーカラムの固体支持体上に、又はマイクロタイタープレート中のウェルに固定されてもよい。本発明による他のアッセイ法では、捕捉試薬はさらに、溶液中のサンプルの残りからの分離を可能にするために、ビーズ又は他の粒子上にコーティングされてもよい。本発明のアッセイ法では、捕捉試薬上のリガンド結合部位の一部は、標的リガンドコンジュゲートに結合している。本発明の好ましいアッセイ法では、捕捉試薬は、ラテラルフローアッセイストリップ上のテストラインに位置し、捕捉試薬の一部は、分析物の捕捉を可能にするために、標的‐リガンドに結合しており、残りのリガンド結合部位は、自由にリガンドを捕捉する。
【0031】
捕捉試薬及びリガンド間の親和性により、リガンド‐標的‐分析物‐受容体‐標識複合体が、表面上に固定された捕捉試薬により捕捉されることが可能になる。さらに、分析物及び標的間の親和性により、分析物‐受容体‐標識複合体が、表面上に固定された標的に結合することが可能になる。本発明の好ましいアッセイ法では、捕捉試薬は、ビオチン結合タンパク質、例えば、アビジン、ニュートラアビジン、ストレプトアビジン、及びそれらのタンパク質コンジュゲートである。好ましくは、捕捉試薬は、BSAにコンジュゲートされているストレプトアビジンであり、ニトロセルロース表面上に固定される。本発明の方法では、ビオチン化HIV‐1及びHIV‐2ペプチドは、表面上に固定されたストレプトアビジン‐BSAに結合していることにより表面に固定されており、ストレプトアビジンのビオチン結合部位の一部が占有されていない。
【0032】
本発明による好ましいアッセイ法は、液体生体サンプルから抗HIV‐1及び抗HIV‐2抗体を検出する。方法は、
a)抗HIV‐1及び抗HIV‐2抗体を含む疑いのある液体生体サンプルを、液相でビオチン化HIV‐1、HIV‐2、及び/又はrAgペプチドと接触させ、ここでサンプルの抗HIV‐1及び抗HIV‐2抗体の少なくとも一部が、抗体‐ビオチン化ペプチド複合体:抗HIV‐1‐ビオチン化HIV‐1ペプチド、抗HIV‐1‐ビオチン化rAgペプチド、及び/又はHIV‐2‐ビオチン化HIV‐2ペプチド複合体を形成するためにビオチン化ペプチドに結合するものであり
b)生体サンプル中の未結合の抗HIV‐1及び抗HIV‐2抗体並びにステップa)で形成された複合体を、プロテインA‐金コロイドコンジュゲートと接触させて、標識された抗体複合体及び標識された抗体‐ビオチン化ペプチド複合体を形成し、
c)ストレプトアビジン上のビオチン結合部位の一部がビオチン化HIV‐1及びHIV‐2ペプチドで占有されている、表面上に固定されたストレプトアビジンで、ステップb)の複合体を捕捉し、
d)表面上に捕捉されたステップc)の金コロイド‐プロテインA‐抗体‐ペプチド‐ビオチン複合体を検出する。
【0033】
本発明による好ましい方法は、ラテラルフローアッセイ法である。ラテラルフローアッセイは、ラテラルフローアッセイストリップ上で実施される。本発明のラテラルフローアッセイ法では、液体生体サンプルは、ラテラルフローアッセイストリップ上に適用され、生体サンプル中の分析物の存在は、ラテラルフローアッセイストリップ上のテストラインで検出される。
【0034】
ラテラルフローアッセイストリップは、ラテラルフロークロマトグラフィーに利用されるストリップを指す。ラテラルフロー(クロマトグラフィー)アッセイは通常、検出されるべき分析物を含有する疑いのある液体生体サンプルを、ラテラルフロー(イムノクロマトグラフィー)アッセイストリップのサンプル受容領域に適用することを含む。アッセイストリップは、マトリックス材料(例えば、紙、ニトロセルロースなど、例えば、米国特許第5,569,608号を参照のこと)を含み、これを通過して、テスト液及びそれに懸濁又は溶解した分析物が、サンプル受容領域から1つ以上の捕捉ゾーンに毛管作用により流れ得、目に見えるシグナル又はこれがないことにより、分析物の有無が明らかになる。展開液は、ラテラルフローアッセイストリップをわたるサンプルの流れを促進する。分析物の検出が、抗体又は抗体フラグメントを利用する場合、アッセイは、ラテラルフローイムノクロマトグラフィーアッセイと称され、ストリップは、ラテラルフローイムノクロマトグラフィーストリップと称され得る。
【0035】
本発明によるラテラルフローストリップは、テストラインで目的の分析物を捕捉する2つの機序:i)テストラインの位置での、配向したリガンド‐標的コンジュゲート、例えば、ビオチン化ペプチドによるサンプル中の分析物、例えば、抗体、の捕捉;及び、ii)移動溶液相中で分析物と複合体化されているリガンド‐標的コンジュゲート、例えば、ビオチン化ペプチドの捕捉、を利用可能にする。標的‐リガンドコンジュゲートは、展開液への添加又はパッド構成要素(例えば、ブロッカーパッド)からの溶出のいずれかにより、液相中の分析物に提供される。いずれの場合も、著しく(5分の1倍未満)少ない量のペプチドが、驚くほど類似した反応性サンプル応答をもたらすことが、以下に示される。本発明によるラテラルフローストリップでは、部分的に占有されたストレプトアビジン‐BSA(SA‐BSA)の混合物は、サンプルと共にテストライン位置に輸送されたビオチン化種に対する捕捉機能にテストラインを開放した状態にする。テストラインは、プロテインA‐金コンジュゲートと複合体化されている抗HIV抗体を捕捉するために、ビオチン化HIV‐1、HIV‐2ペプチド、組み換えHIV抗原(rAg)ペプチド、又はそれらの組み合わせも含有する。
【0036】
溶液中の分析物及び標的の結合は、液相結合を可能にし、それらは、標的がサンプルの分析物と共に効果的にインキュベートすることを可能にするテストの実行時間の恩恵を受けることができる。例えば、抗HIV抗体を含有する患者のサンプルが、パッド構成要素を水和及び溶出させる展開液によりデバイスに輸送されると、HIVエピトープを提示するビオチン化ペプチド及び組み換えタンパク質は、サンプル中の抗HIV抗体とより完全に複合体化するための溶液の動力学及びテストラインまでの流動時間を利用することができる。次に、高親和性のビオチン‐ストレプトアビジン結合により、これらの複合体が、テストラインでストレプトアビジン上の固定された遊離ビオチン結合部位により溶液から抽出されることが確実になる。
【0037】
本発明による液体生体サンプルから分析物を検出するためのラテラルフローアッセイストリップは、
サンプル受容領域
リガンド‐標的コンジュゲートを任意に含有する、サンプル受容領域の下流のブロッカー領域、
標識‐受容体コンジュゲートを含有する、ブロッカー領域の下流のコンジュゲート領域、
リガンド結合部位の一部がリガンド‐標的コンジュゲートで占有されている、リガンドに結合可能な固定された捕捉剤を含むコンジュゲート領域の下流のテストゾーン、
任意に、アッセイの完了を示す、テストゾーンの下流のラテラルフローアッセイストリップ上のコントロールゾーン;及び
任意に、ラテラルフローアッセイストリップと流れ連通し且つコントロールゾーンの下流に位置する吸収パッド
を含む。好ましくは、本発明のラテラルフローストリップは、サンプル受容領域、ブロッカー領域、コンジュゲート領域、テストライン、コントロールライン、及び吸収パッドを連続的に通る、液体サンプルの流動方向で設計される。吸収パッドは、ストリップのメンブレンを一方向に通って毛管作用及び流体流動を促進するのに役立ち、ストリップの一端から他端に向けてメンブレンに沿って分析物を含有する液体を引き出す。
【0038】
図1~3は、本発明によるラテラルフローデバイスを示す。ラテラルフローデバイス[100]は、ハウジング[101]を有する。デバイス[100]は、ハウジング[101]の外側に部分的に露出したフラットパッド[103]を有するラテラルフローアッセイストリップ[102]を含有し、これは、捕捉ゾーンとしてのテストライン[107]及び任意のコントロールゾーンとしてのコントロールライン[108]を有するセルロースメンブレン[106]上に配置されているブロッカーパッド[104]及びコンジュゲートパッド[105]と流れ連通している。セルロースメンブレン106は、任意の吸収パッド[109]と流れ連通している。流れの方向は、矢印で示される。対象からの一滴のサンプルは、フラットパッド[103]に適用される。サンプルは、デバイスハウジング[101]内のラテラルフローストリップ[102]をわたって吸い上げられ、フラットパッド[103]からコンジュゲートパッド[105]に向かってセルロースメンブレン[106]をわたって流れる。ここに示されるように、フラットパッド[103]は、液体の生物学的物質をブロッカーパッド[104]に運ぶ芯として機能する。
【0039】
本発明のラテラルフローストリップを使用して分析された液体生体サンプルは、目的の抗体を含有し得る、生体液などの任意の液体生体サンプルであってよい。生体液の例としては、尿、血液、血漿、血清、口腔液、汗、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水、母乳などが挙げられるが、これらに限定されない。口腔液は、口腔内に存在する液体である。口腔液は、唾液及び口腔粘膜漏出液の混合物である。唾液は、唾液腺により生成される。口腔粘膜漏出液は、毛細血管から頬粘膜を越えることにより口に入る。口腔液は、病原体及び抗体の両方を含有する。口腔液、全血、血漿、及び血清などの生体液サンプルは、本発明の免疫アッセイで使用可能な好ましいタイプのサンプルである。これらのそれぞれは、当該技術分野で既知の手段及び技術を使用して得られてもよい。使用されるべき液体生体サンプルの量は、当該技術分野で知られているように、液体生体サンプルに基づいて変動し得る。
【0040】
本発明のラテラルフローストリップは、抗体である分析物を検出するために使用されてもよい。好ましくは、抗体は、抗HIV抗体である。抗HIV抗体は、HIV‐1又はHIV‐2に対する抗体であってよい。本発明のラテラルフローストリップが、HIVに関して記載されているが、本発明のラテラルフローストリップは、任意の感染の同定、判定、及び/又は処置に使用されてもよい。
【0041】
ラテラルフローアッセイストリップの「サンプル受容領域」は、サンプルが最初に適用されるラテラルフローアッセイテストストリップの領域を指す。サンプルを受けることに加えて、サンプル受容領域の機能は、例えば、適用されたサンプルのpH制御/修正及び/若しくは比重制御/修正、アッセイの非特異的結合を妨げるか若しくは引き起こし得るサンプルの構成成分の除去若しくは改変、又はテスト領域にサンプルの流れを向け且つ制御することを含んでもよい。フィルタリング態様は、存在する場合、目的の分析物が、もしあったとしても干渉物質がほとんどない制御された方法で、ラテラルフローアッセイテストストリップを通って又はわたって移動することを可能にする。フィルタリング態様は、存在する場合、多くの場合、成功の可能性及び精度が高いテストを提供する。本発明のラテラルフローアッセイテストストリップでは、サンプル受容領域はさらに、特定の実施形態に応じて、液体生体サンプルに存在し得る非標的分析物との交差反応性を回避するのに、及び/又はサンプルを調節するのに有用な試薬を組み込んでもよく、これらの試薬は、とりわけ、抗RBC試薬、トリス系緩衝液、EDTAを含んでもよい。全血の使用が企図される場合、抗RBC試薬が頻繁に利用される。本発明のさらに別のアッセイストリップでは、サンプル受容領域は、補助的な特異的結合部材、流体サンプル前処理試薬、及びシグナル生成試薬などの他の試薬を組み込んでもよい。本発明によるラテラルフローアッセイデバイスでは、フラットパッド[103]は、サンプル受容領域として機能する。
【0042】
本発明による一部のラテラルフローアッセイストリップでは、サンプル受容領域は、サンプルパッドであってよく、適用される時に液体生体サンプルを受けて、液体サンプルを吸収すること、及び液体サンプルをブロッカーパッドに向かって通過させることが可能な任意の材料から作製されてもよい。サンプル受容領域のパッドは、細胞構成要素、ホルモン、微粒子、及び液体サンプルで生じ得る他の特定の物質のフィルターとして機能するように組み立てることができる。本発明のアッセイストリップで使用するのに適するサンプルパッド材料は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,078号に開示の適用パッド材料も含む。サンプル適用領域に適する材料としては、親水性ポリエチレン材料又はパッド、アクリル繊維、ガラス繊維、ろ紙又はパッド、乾燥紙、紙パルプ、布などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
サンプル受容領域は、サンプル適用部材(例えば、芯又はフラットパッド)から構成されてもよい。サンプル受容ゾーンは、サンプル適用パッド及びサンプル適用部材を含み得る。多くの場合、サンプル適用部材は、本明細書で企図される様々な流体サンプルのいずれかを容易に吸収する材料から構成され、物理的形態において堅牢性を維持する。多くの場合、サンプル適用部材は、白色結合ポリエステル繊維などの材料で構成される。サンプル適用部材はさらに、親水性仕上げ剤で処理されてもよい。さらに、サンプル適用部材は、ラテラルフローアッセイストリップのブロッキングパッドと流体流動接触して配置される。この流体流動接触は、重なり合う、隣接する、又は絡み合うタイプの接触を含み得る。多くの場合、サンプル適用部材は、存在する場合、同様の試薬を含有し、例示的なサンプル適用パッドに利用されるものと類似の材料から構成されてもよい。液体生体サンプルは、直接的に、フラットパッド[103]に適用されてもよい。例えば、フラットパッド[103]は、対象の口の中に挿入され、口腔液の収集パッドとして使用されてもよい。他の液体、例えば、血液又は血清は、直接的にフラットパッド[103]に入れられてもよい。液体生体サンプルはまた、バイアル中の展開液中に希釈されてもよく、フラットパッド[103]は、バイアルに入れられてもよい。
【0044】
本発明のアッセイストリップは、少なくとも1つの標的‐リガンドコンジュゲートを含有するブロッカー領域を含む。本発明のラテラルフローストリップでは、ブロッカー領域は、ブロッカーパッドである。
図1に示されるように、ブロッカーパッド[104]は、フラットパッド[103]の下流にある。当該技術分野で知られているように、ブロッカーパッドは、種々のサンプルマトリックスに存在する非特異的又は干渉物質に対するデバイス内の反応性を最小限に抑えるための試薬を含有する。ブロッカーパッドは、ラテラルフローアッセイテストストリップの下流の口腔液の流れを妨げない限り、多種多様な材料で構成することができる。そのような材料としては、紙、セルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、ガラス繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。クロマトグラフィーテストストリップから毛管マトリックスへの試薬又は口腔液の逆流を低減又は排除するための材料が選択されてもよい。標的を分析物と複合体化するためのpH及びイオン強度の調整に役立つ緩衝試薬及び塩は、ブロッカーパッドに存在し得る。ブロッカーパッドは、液体生体サンプルが流れると、サンプルpHを調整するために、且つラテラルフローアッセイとの適合性のために、緩衝液を含浸させることができる。ブロッカーパッドは、アッセイの分析物及び/又は試薬の非特異的結合を低減させ、それにより、偽陽性の出現を低減させる1つ以上のブロッキング試薬を含むこともできる。例示的なブロッキング試薬としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、メチル化BSA、カゼイン、脱脂粉乳、デオキシコラート、及びn‐ラウロイルサルコシンが挙げられるが、これらに限定されない。ブロッキング溶液は、テストストリップをわたる流れを増強し、アッセイ結果を改善し、且つサンプルの完全性を保護する界面活性剤、防腐剤、及び他の試薬も含有してもよい。通常は、ブロッカーパッドは、パッド上に適切なブロッキング溶液を適用すること、及びラテラルフローアッセイストリップ上にそれを配置する前に乾燥させることにより作製される。
【0045】
本発明のラテラルフローアッセイテストストリップのブロッカーパッドは任意に、安定状態のリガンド‐標的コンジュゲート試薬を維持するのに、且つ液体生体サンプル中に潜在的に存在する目的の分析物との迅速で効果的な可溶化、動員、及び特定の反応を促進するのに役立つ。
図1~3は、ブロッカーパッドが標的‐リガンドコンジュゲートも含有する本発明によるラテラルフローストリップを収容するデバイス[100]を示す。生体サンプルと一緒に展開液がラテラルフローストリップ[102]をわたって流れると、標的‐リガンドコンジュゲートは、ブロッカーパッド[104]から溶出し、生体サンプルに存在する分析物の少なくとも一部は、液相で標的‐リガンドコンジュゲートに結合する。本発明のラテラルフローストリップでは、標的は、抗原である。好ましくは、抗原は、HIV‐1ペプチド、HIV‐2ペプチド、rAg、及びそれらの混合物からなる群から選択され、リガンドは、ビオチンである。従って、ブロッカーパッド上の好ましい標的‐リガンドコンジュゲートは、ビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、ビオチン化rAg、又はそれらの混合物を含む。
【0046】
ラテラルフローアッセイテストストリップのコンジュゲート領域が安定状態の標識試薬及びコントロール試薬を維持するのに、且つ液体生体サンプル中に潜在的に存在する目的の分析物との迅速で効果的な可溶化、流動化、及び特定の反応を促進するのに役立つ。本発明によるラテラルフローアッセイテストストリップでは、コンジュゲート領域は、コンジュゲートパッドとし得る。コンジュゲートパッドは、ラテラルフローアッセイテストストリップに配置され、その結果、液体生体サンプルが、テストゾーン又はラインに向かって移動するために、コンジュゲートパッドの上又は中を通過しなければならない。あるいは、コンジュゲート領域は、ラテラルフローアッセイテストストリップに組み上げることができるか、又はラテラルフローアッセイテストストリップと同じ場所で一列に並んで配置することができる。ブロッカーパッドと同様に、コンジュゲートパッドは、アッセイと適合性があり且つ口腔液及び試薬の流れを実質的に妨げない任意の便利な材料(例えば、ニトロセルロース)から作ることができる。本発明で使用するのに適するコンジュゲートパッド材料は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,078号に開示されているクロマトグラフィー材料を含む。
【0047】
本発明によるラテラルフローアッセイテストストリップでは、コンジュゲートパッドは、テストゾーン又はラインでの抗原の検出を可能にするために、受容体‐標識コンジュゲート並びに放出及び安定化剤を担持する。分析物に応じて、受容体は、分析物に特異的又は非特異的に結合する任意の分子であってよい。本発明の好ましいラテラルフローアッセイストリップでは、受容体は、プロテインAであり、標識は、金コロイドである。生体サンプルと一緒に展開液がラテラルフローストリップをわたって流れると、受容体‐標識コンジュゲートは、コンジュゲートパッドから溶出し、受容体‐標識は、分析物又は分析物‐標的‐リガンド複合体に結合する。
【0048】
本発明によるアッセイストリップは、テスト液及びそれに懸濁又は溶解した分析物が毛細作用により流れ得るマトリックス材料(例えば、紙、ニトロセルロースなど、例えば、米国特許第5,569,608号を参照のこと)を含む。マトリックス材料は、合成的に修飾された天然、合成、又は天然に存在する材料、例えば、ポリサッカライド(例えば、紙などのセルロース材料並びに酢酸セルロース及びニトロセルロースなどのセルロース誘導体);ポリエーテルスルホン;ナイロン;シリカ;無機材料、例えば、塩化ビニル、塩化ビニル‐プロピレンコポリマー、及び塩化ビニル‐酢酸ビニルコポリマーなどの多孔質ポリマーマトリックスに均一に分散された不活性化アルミナ、珪藻土、硫酸マグネシウム、又は他の無機微粉砕材料;天然に存在する(例えば、綿)及び合成(例えば、レーヨン)の両方の布地;シリカゲル、アガロース、デキストラン、及びゼラチンなどの多孔性ゲル;ポリアクリルアミドなどのポリマーフィルムなどを含み得るが、これらに限定されない。本発明の好ましいアッセイストリップでは、マトリックス材料は、ニトロセルロースメンブレンである。異なるタイプの市販のニトロセルロースメンブレン(例えば、Millipore、HF90、GE FF120、Sartorius)は、異なる吸収能力及び毛細流動を有する。
【0049】
本発明のラテラルフローアッセイテストストリップでは、マトリックス材料は、ラミネートバッキングに接着されていてもよい。バッキングは、例えば、Mylar又はPVC又はポリスチレンなどのプラスチック材料であってよい。アッセイストリップの調製では、マトリックス材料は、当該技術分野で既知の技術を使用してプラスチックカード上に積層されてもよい。ラミネートバッキングを有するニトロセルロースメンブレンが市販されている。
【0050】
本発明によるラテラルフローアッセイテストストリップでは、コンジュゲート領域の下流のテストゾーン又はテストラインは、分析物の存在を示すのに役立つ。テストゾーン又はラインは、ラテラルフローアッセイストリップに固定された捕捉試薬及びリガンド‐標的コンジュゲート分子を含む。捕捉試薬は、リガンドに特異的に結合可能な任意の化合物であってよい。本発明による好ましいラテラルフローアッセイテストストリップでは、固定された捕捉試薬は、ストレプトアビジンである。テストラインは、固定された標的も含む。標的は、ビオチン化され、ストレプトアビジンに結合し、それにより、テストゾーンに固定されてもよい。従って、本発明のラテラルフローアッセイストリップでは、テストラインは、ストリップ上に固定されたストレプトアビジン分子を含み、ビオチン結合部位の一部が、ビオチン化標的により占有されている。本発明の好ましいラテラルフローストリップでは、テストゾーンは、サンプルの添加前に、利用可能なビオチン結合部位を有するストレプトアビジン、及びビオチン化HIV‐1ペプチド、ビオチン化HIV‐2ペプチド、ビオチン化rAg、又はその混合物に結合したストレプトアビジンを含む。ニトロセルロースへのストレプトアビジンなどのタンパク質の結合は、当該技術分野で既知である。本発明の好ましいラテラルフローアッセイストリップでは、ストレプトアビジン‐BSAは、ニトロセルロース上のテストラインに配置される。サンプルがテストラインに移動すると、ビオチン化標的、ビオチン化標的‐分析物複合体、及びビオチン化標的‐分析物‐受容体‐標識複合体は、テストゾーンのストレプトアビジンに結合し、分析物及び分析物‐受容体‐標識複合体は、テストライン上の固定された標的に結合するであろう。分析物の存在は、テストラインで標識を視覚化することにより検出される。
【0051】
コントロールゾーン又はコントロールラインはまた、テストゾーンの下流のラテラルフローアッセイテストストリップに配置されてもよい。コントロールラインは、テストゾーンで捕捉されていない標識抗原に結合する。陽性コントロールラインは、デバイスが適切に機能していることを示す。ヒト由来の液体生体サンプル中の抗体をテストする、本発明によるラテラルフローアッセイストリップでは、ニトロセルロースメンブレン上のコントロールラインが、抗ヒト抗体でストライピングされている。
【0052】
吸着パッドは、ラテラルフローアッセイテストデバイスのコントロールラインの下流に存在し得る。吸収パッドは、デバイスの液体の最終リザーバーとして機能するだけでなく、ラテラルフローアッセイテストストリップをわたって液体を引き込み得る。吸収パッドは、アッセイストリップ上の上流で液体の逆流を防ぐのに十分な吸上特性を有すべきである。吸収パッドは、当該技術分野で既知の材料で作製されてもよい。
【0053】
本発明によるアッセイテストストリップは、上記で考察されたように、当該技術分野で既知の技術を使用して調製され及び組み立てられてもよい。本発明によるアッセイテストストリップは、ハウジング内にあってよい。本発明によるアッセイデバイスは、1つ以上の捕捉ゾーン及びコントロールゾーンを見る開口部又は窓を有するハウジングを含む。
【0054】
本発明によるラテラルフローアッセイ法は、展開液を使用する。本発明の一実施形態は、本発明のラテラルフローアッセイストリップ及び展開液を含むキットである。展開液は、デバイス及びアッセイストリップへの生体サンプルの毛細流動を促進する。本発明のアッセイ法では、口腔液が収集されてもよく、生体サンプルとして役立つ。口腔液の収集では、デバイスのサンプル適用部材又は収集パッドは、最初に生体液体サンプルを受けるのに使用されるか、又は収集される。例えば、デバイスの収集パッドは、対象の口腔から口腔液サンプルを収集するために使用されてもよく、次に、展開液のバイアルに入れられる。収集パッドは、ラテラルフローアッセイテストのための口腔液サンプルを運ぶ展開液をそれと一緒に吸い上げる。例えば、全血、血清、又は血漿収集などの他の生体サンプルでは、サンプルは、展開液を含有するバイアルに、又は収集パッド上に直接添加され、その後、収集パッドは、ラテラルフローアッセイテストに流してサンプルを輸送する展開液バイアルに入れられる。本発明による特定のアッセイ法では、全血、例えば、いずれのタイプの事前希釈若しくは処理のない指先穿刺若しくは静脈穿刺又は注射から得られる一滴の全血液滴(5μL~50μL)は、サンプル適用領域に直接適用される。展開液は通常、当該技術分野で知られているような界面活性剤、塩、防腐剤、緩衝剤などの水溶液である。リン酸、Tris‐Clホウ酸塩、重炭酸塩などの緩衝系が使用されてもよい。Tween 20、Triton X‐100、又は他の非イオン性界面活性剤などの界面活性剤が使用されてもよい。アジ化ナトリウムなどの抗菌及び抗真菌物質を含む防腐剤が展開液に使用されてもよい。使用される展開液の量は、サンプルを輸送するのに十分でなければならないが、アッセイを浸水させるか、又は結果が判別できない程度に結果を薄めるほど多くはない。
【実施例】
【0055】
実施例1
【0056】
ラテラルフローアッセイデバイスを調製した。ストライピングされたニトロセルロース、ブロッカーパッド、コンジュゲートパッド、及び吸着パッドを、アッセイカードバッキング上に組み立てた。
【0057】
ストライピングされたニトロセルロース:FF120ニトロセルロースを、コントロールラインの抗ヒト抗体(F(ab’)2、ヤギ抗ヒトIgG)及びSA‐BSAの溶液でラインストライピングし、テストラインのビオチン化HIV‐1及びHIV‐2ペプチドで部分的に予め複合体化した。
【0058】
ブロッカーパッド:ビオチン化rAgを、ビオチン化HIV‐1及びHIV‐2と一緒にブロッカーパッド溶液に添加した。ブロッカーパッドを、一般的なブロッカーベースの緩衝液並びにビオチン化HIV‐1及びHIV‐2ペプチド並びにビオチン化rAgで処理した。
【0059】
クエン酸還元プロセス(Turkevich法)を使用して、コンジュゲートパッド:コロイド金を配合し、プロテインAで受動的にコーティングした。コンジュゲートパッド材料上に、配合された金コンジュゲート溶液を噴霧することにより、コンジュゲートパッドを作製した。このコンジュゲートパッドを適切に乾燥させた後、アッセイカード上のブロッカーパッドのすぐ上に配置した。
【0060】
アッセイカードの全ての主要構成要素(ブロッカーパッド、コンジュゲートパッド、ニトロセルロース、ラミネートバッキング、吸収パッド)が利用可能になると、ラミネートバッキングカード上のアッセイカードの中に材料を組み立てた。アッセイカードを、アッセイストリップに切断し、アッセイストリップを、デバイスハウジングベースにセットし、収集パッドを、デバイスハウジングベース中のアッセイストリップの上部に配置した。ベースのピンを上部のソケットに嵌合させるように、デバイスハウジングの上部をプレスして、アセンブリを完成させた。組み立てられたデバイスを、組み立て時に密閉した。
【0061】
生体サンプルの収集、展開緩衝液へのサンプルの挿入、それに続く、テストデバイスの挿入、及び約20~40分後のアッセイ結果の解釈により、アッセイ法を実施した。テストデバイスのフラットサンプル収集パッドを使用して、口腔液標本を収集し、続いて、テストデバイスを展開液のバイアルに挿入した。展開液は、デバイスの中及びラテラルフローアッセイテストストリップ上への標本の流れを促進した。
【0062】
実施例2
【0063】
セロコンバージョンパネル:表1は、OraQuick ADVANCE(登録商標)Rapid HIV‐1/2 Antibody Testの添付文書のセロコンバージョンパネルの性能の概要である。表2は、本発明によるラテラルフローアッセイデバイスでテストされたセロコンバージョンパネルの概要である。
【表1】
【表2】
【0064】
現在承認されているテストデバイスのための添付文書は、OraQuickがHIVに対する抗体を検出する時とEIA(ELISAイムノアッセイ)が抗体を検出する時の間の1.48日の遅延を示すが、本発明によるデバイスは、実験室ベースの抗体検査に本質的に同等の感度である0.24日の遅延を示す。HIVは、主に、性的接触、感染した血液、血液製剤、又はヒト組織との接触、及び母子を介して伝染する(Smith DK,Grohskopf LA,Black RJ,et al,MMWR Recomm.Rep.54:1‐20 2005;Kourtis AP,Lee FK,Abrams EJ,et al.,Lancet Infect Dis.6:726‐732 2006)。世界的に、ほとんどのHIV伝染は、無防備な性的接触の結果として生じる。感染パートナーとの1性交当たりのHIV伝染率は、比較的低いと推定されるが、リスクは、元の患者におけるウイルス負荷が高い(例えば、急性HIV感染中:Cohen MS,Pilcher CD,J.Infect.Dis.191:1391‐1393 2005)場合、実質的に増加させることができる。そのような個体の検出には、感度の増強が重要である。
【0065】
実施例3
【0066】
アッセイ法で使用される抗原の量を、それがストライピングされるか、パッドから溶出するか、又は展開液に添加されるかどうかに基づいて評価した。以下の各条件について、3μLのサンプル(PM2=HIV‐1血漿サンプル;PM6=HIV‐2血漿サンプル;PM10=HIV陰性血漿;9012‐8‐セロコンバージョン血漿サンプル)を液相(展開剤)に添加し、テストを開始するために、デバイスをこの混合物に入れた。
【0067】
表3に示されるような条件1では、ペプチドをニトロセルロース上にストライピングした。82.1ngのビオチン化HIV‐1及び33.2ngのビオチン化HIV‐2で、各ペプチドのデバイスごとのレベルを推定した。
【表3】
【0068】
表4に示される条件2では、ペプチドを展開液に添加した。テストライン上に予め結合しているビオチン化ペプチドはなかった。13.3ngのビオチン化HIV‐1及び5.3ngのビオチン化HIV‐2で、各ペプチドのデバイスごとのレベルを推定した。
【表4】
【0069】
表5に示される条件3では、ペプチドをブロッカーパッドに追加した。14.4ngのビオチン化HIV‐1及び5.8ngのビオチン化HIV‐2で、各ペプチドのデバイスごとのレベルを推定する。
【表5】
【0070】
条件2及び3では、ビオチン化ペプチドは、液相(展開液)に存在するか、又はパッド構成要素から溶出し、それぞれの場合では、著しく(5分の1未満)少ない量のペプチドが、ペプチドがテストライン上でストライピングされた時と比較して、驚くほど類似した反応性サンプル応答をもたらすことが示された(条件1)。ラテラルフロープラットフォームの液相動力学を利用すると、デバイスの反応性応答を確保するために必要な免疫反応性材料の量が劇的に低減した。
【0071】
実施例5
【0072】
組み換えタンパク質の使用によりエピトープの範囲を拡大するとさらに、溶液相対固相の提示の恩恵を受ける。P24及びHIV EIA陽性として特徴付けられており且つ急性感染を表すサンプルであるZeptomatrixセロコンバージョンサンプル(9012‐8)の使用により、これを実証した。
【0073】
条件4では、ニトロセルロースストリップ上で、rAgをストライピングした。189ngのビオチン化rAgで、組み換え抗原(rAg)のデバイスごとのレベルを推定した。
【表6】
【0074】
条件5では、rAgを展開緩衝液に添加した。いかなるビオチン化ペプチドと結合していないニトロセルロース上に、BBPをストライピングした。50ngのビオチン化HIV‐1 rAgで、rAgのデバイスごとのレベルを推定した。PM2及びセロコンバージョンサンプル9012‐8は、この条件下のデバイス上で反応性があった。比較して、ビオチン化ペプチドを展開液のみに添加した時(条件6)、9012‐8は、反応しなかった(表8)。
【表7】
【表8】
【0075】
実施例6
【0076】
ペプチドの一部がニトロセルロース上にストライピングされることには、驚くべき利点がある。HIV EIA陽性である一連のセロコンバージョンサンプル、サンプル9012‐7、9077‐14、965‐4、109‐7、及び204‐3が以下の表9に示され、ペプチドがブロッカーパッド上のみに存在するが、テストライン上に予め結合していない時、反応性がない。ニトロセルロース上のペプチドの割合が増加すると、これらのサンプルの反応性が増えるが、HIV陰性サンプルは陰性のままである。
【表9】
【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列番号1:<223>合成
配列番号2:<223>合成
【配列表】