(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】試料を走査するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
G02B21/06
(21)【出願番号】P 2020524556
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018080208
(87)【国際公開番号】W WO2019086680
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】102017125688.1
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラース フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ビアク
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226677(US,A1)
【文献】特開2007-156231(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014119027(DE,A1)
【文献】特開2017-173592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(100)を走査するための方法であって、
少なくとも2つの照明ドット(12)は、ドットパターン(10)の形成のために生成され、前記ドットパターン(10)は、調整可能な数の前記照明ドット(12)を有しており、
任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータは、前記ドットパターン(10)を定めるために事前設定されているかまたは調整され、
前記任意に選択可能なパラメータによって定められた前記ドットパターン(10)は、前記試料(100)の予め設定された少なくとも1つの領域(40)を走査するために、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)に割り当てられた走査線(14)を生成するための第1の方向と、前記生成された走査線(14)にそれぞれ後続する走査線(14)を生成するための第2の方向と、に沿って移動し、前記第2の方向の方向における前記ドットパターンの移動は、同じサイズの走査ステップ(16)で、または一定の速度で行われ、
前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)は、前記第2の方向に沿った線上に配置されて
おり、
前記第2の方向に沿った前記ドットパターン(10)の移動の際に、前記予め設定された領域(40)は、段階的にまたは連続的に走査され、前記段階的または連続的な走査の際に、前記ドットパターン(10)は、1つの走査ステップ(16)において前記第2の方向に沿って複数の走査線(14)だけ移動し、
2つの隣接する前記照明ドット(12)間の距離は、少なくとも2である、
方法。
【請求項2】
前記第1の方向に沿った前記ドットパターン(10)の移動の際に、前記予め設定された領域(40)は、連続的にまたは段階的に走査される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)は、等距離に配置されているか、または前記照明ドット(12)の少なくとも2つのグループ(20)を形成し、前記グループ(20)の各々の前記照明ドット(12)は、等距離に配置されている、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、前記走査線(14)において定められる前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)間の距離および/または前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)のグループ(20)の数が調整される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、前記走査線(14)において定められる前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)間の距離が調整され、前記ドットパターン(10)は、前記予め設定された領域(40)を走査するために、少なくとも2つの走査
パス(18)において前記第1および第2の方向に沿って移動する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記走査
パス(18)の各々において、前記予め設定された領域(40)の一部が走査され、前記予め設定された領域(40)の順次連続する前記走査
パス(18)で走査された部分は、それぞれ、前記第2の方向に沿って少なくとも1つの走査線(14)だけ相互にオフセットされている、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記走査
パス(18)の各々において、前記ドットパターン(10)が1つの走査ステップ(16)において、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)の数と、前記走査線(14)において定められる前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)間の距離と、の積に等しい、前記走査線(14)の数だけ前記第2の方向に沿って移動することにより、前記予め設定された領域(40)の段階的な走査が前記第2の方向に沿って行われる、
請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)のグループ(20)の数が調整され、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)の前記グループ(20)の調整された数は、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)の数の約数であり、前記グループ(20)の各々の照明ドット(12)は、同じ数を有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記照明ドット(12)間の距離は、
前記調整された数に等しい、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記照明ドット(12)間の距離は、
前記調整された数と1との合計に等しい、
請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
唯一の走査
パスにおいて、前記ドットパターン(10)が1つの走査ステップ(16)において、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)の数に等しい、走査線(14)の数だけ前記第2の方向に沿って移動することにより、前記予め設定された領域(40)の段階的な走査が前記第2の方向に沿って行われる、
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)は、音響光学偏向器(AOD)を用いて、またはビームスプリッタを用いて照明光束(74)から生成される、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記第2の方向に沿った前記ドットパターン(10)の移動の際に、前記予め設定された領域(40)は、段階的に走査され、後続の走査ステップ(16)では、前記ドットパターン(10)は、前記第2の方向に、および、前記第2の方向とは逆向きに移動する、
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
試料(100)を走査するための装置(60)であって、
前記装置(60)は、ドットパターン(10)を形成するための少なくとも2つの照明ドット(12)を生成する照明ユニット(70)を備え、前記ドットパターン(10)は、調整可能な数の照明ドット(12)を有し、
2つの隣接する前記照明ドット(12)間の距離は、少なくとも2であり、
前記装置(60)は、前記照明ユニット(70)を制御するための制御ユニット(52)を含み、前記制御ユニット(52)は、前記ドットパターン(10)を定めるための任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータが事前設定されているかまたは調整されるように前記照明ユニット(70)を制御し、
前記照明ユニット(70)は、前記任意に選択可能なパラメータによって定められた前記ドットパターン(10)を、前記試料(100)の予め設定された少なくとも1つの領域を走査するために、前記ドットパターン(10)の前記照明ドット(12)に割り当てられた走査線(14)を生成するための第1の方向と、生成された前記走査線(14)にそれぞれ後続する走査線(14)を生成するための第2の方向と、に沿って移動させ、
前記第2の方向に沿った前記ドットパターン(10)の移動の際に、前記予め設定された領域(40)は、段階的にまたは連続的に走査され、前記段階的または連続的な走査の際に、前記ドットパターン(10)は、1つの走査ステップ(16)において前記第2の方向に沿って複数の走査線(14)だけ移動する、
装置(60)。
【請求項15】
前記照明ユニット(70)は、少なくとも1つの音響光学偏向器(AOD)または少なくとも1つのビームスプリッタを含む、
請求項14記載の装置(60)。
【請求項16】
請求項14または15記載の装置(60)を備えた顕微鏡(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドットパターンを形成するために少なくとも2つの照明ドットが生成される、試料を走査するための方法に関する。このドットパターンは、設定可能な数の照明ドットを有する。本発明は、さらに試料を走査するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型顕微鏡では、走査速度を任意に上げることができないという既知の問題がある。これについての理由は、一方では、例えば検流計ミラー、音響光学偏向器(AOD)または電気光学偏向器などの、走査移動を生じさせる装置の制限された速度にある。他方では、信号対ノイズ比が走査速度の増加に伴いますます減少していく点にある。なぜなら、照明ドットの滞留時間は、試料上のそれぞれのドット上でますます短くなるからである。
【0003】
米国特許第6,677,596号明細書および公知文献「Bewersdorf, J.; Pick, R. & Hell, S. W. Multifocal multiphoton microscopy Opt Lett, 1998, 23, 655-657」からは、走査過程を並列化するために、走査に使用される照明光束が複数の照明光ドットに分割される、試料を走査するための方法が公知である。米国特許第7,724,426号明細書からは、走査に使用される照明光束が走査過程を並列化するためにAODによって複数の照明ドットに分割される、試料を走査するための方法が公知である。
【0004】
公知文献「Bergermann, F.; Alber, L; Sahl, S. J.; Engelhardt, J. & Hell, S. W. 2000-fold parallelized dual-color STED fluorescence nanoscopy Opt Express, 2014, 23, 211-223,」、米国特許第8,054,542号明細書、公知文献「Fittinghoff D. N.; Wiseman, P. W. & a. Squier, J. Widefield multiphoton and temporally decorrelated multifocal multiphoton microscopy Opt Express, 2000」および公知文献「Sacconi, L; Froner, f.; Antolini, R.; Taghizadeh, M. R.; Choudhury, A. & Pa-vone, F. S. Multiphoton multifocal microscopy exploiting a diffractive optical element OptLett, 2003」からは、複数の照明ドットに分割された照明光束を用いてドットパターンが生成される、試料の予め設定された領域を走査するための方法が公知である。このドットパターンは、試料の予め設定された領域の大半にわたる一方向に沿って延在する。照明ドットは、この方向に沿って等距離に配置されている。複数の走査ステップでは、予め設定された領域が完全に走査されるまで、前述した方向で順次連続する走査線が当該方向に走査される。この方法の欠点は、ドットパターンのサイズが、予め設定された領域のサイズに直結していることにある。この方法の別の欠点は、ドットパターンもしくは予め設定された領域のサイズに関する技術的な限界が存在することにある。なぜなら、ドットパターンを生成するための光学部品を不利に大きく設計しなければならないからである。さらに、AODを用いて照明光束を分割する場合、照明ドット間の距離が長くなると、特に強い空間的分散が引き起こされ、これは、特に、例えば短パルスレーザーなどの広帯域照明光源を使用する場合に不都合な影響を及ぼしかねない。
【0005】
公知文献「Hecht, D. L. Beiser, L. (Ed.) Multibeam Acoustooptic and Electrooptic Modulators Proc. SPIE 0396, Advances in Laser Scanning and Recording, 2, 1983 」および公知文献「Powell, K.; Urey, H. & Bayer, M. Lewandowski, R. J.; Haworth, L. A.; Girolamo, H. J. & Rash, C. E. (Eds.) Multi-beam Bidirectional Raster Scanning in Retinal Scanning Displays Helmetand Head-Mounted Displays VI, 2001, 4361」からは、複数の照明ドットに分割された照明光束を用いてドットパターンが生成される、試料の予め設定された領域を走査するための方法が公知である。このドットパターンは、1つの走査線の距離で順次連続して配置された複数の照明ドットからなる。このドットパターンを用いて、予め設定された領域が複数の走査ステップで完全に走査される。この方法の欠点は、特定の顕微鏡法、特に多光子顕微鏡法の場合に、照明ドット間の短い距離が軸方向の低い解像度につながることである。なぜなら照明ドットが焦点面の外側に広がり、そこで重なり合う可能性があるからである。換言すれば、軸方向の低い解像度は、3次元に局在化された照明ドットが焦点面の外側に広がって重なり合う可能性が生じ、それによって、伝搬方向(軸方向)に沿った局在化が減少することから生じる。
【0006】
公知文献「Bingen, P.; Reuss, M.; Engelhardt, J. & Hell, S. W. Parallelized STED fluorescence nanoscopy Opt Express, 2011, 19, 23716-23726」からは、複数の照明ドットに分割された照明光束を用いてドットパターンが生成される、試料の予め設定された領域を走査するための方法が公知である。ドットパターンの照明ドットは、一方向に等距離に配置されている。複数の走査ステップでは、予め設定された領域の区間の順次連続する走査線がこの方向に沿って走査される。これは、前述の方向に沿って配置された、予め設定された領域のさらなる区間について繰り返され、そのため、予め設定された領域は、それぞれ走査された区間から生じる。この方法の欠点は、走査の際に、異なるサイズのステップ幅を実現しなければならないことにあり、このことは、特に、限られた精度しか有していない機械的な走査装置を使用する場合に、不所望な画像アーティファクトを引き起こす可能性がある。
【0007】
独国特許出願公開第102012019121号明細書からは、複数の照明ドットを用いてドットパターンが生成される、試料の予め設定された領域を走査するためのさらなる方法が公知である。ドットパターンの照明ドットを用いることにより、複数の走査ステップでは、予め設定された領域の区間の順次連続する走査線が一方向に沿って走査される。区間の走査が行われた後では、ドットパターンは、予め設定された領域のさらなる区間を走査するために、前述の方向に沿って複数の走査線だけ移動する。それぞれ走査された区間からは、予め設定された領域が生じる。この方法の場合も、走査の際に異なるサイズのステップ幅を実現する必要があり、このことは不所望な画像アーティファクトを引き起こす可能性がある。
【0008】
公知文献「Martini, J. Multifocal Multiphoton Microscopy: New Detection Methods and Biological Applications Bielefeld University, 2006, Dissertation」からは、複数の照明ドットに分割された照明光束を用いてドットパターンが生成される、試料の予め設定された領域を走査するためのさらなる方法が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、試料を走査するための最適なドットパターンの柔軟な生成を可能にする、試料を走査するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法および請求項16の特徴を有する装置によって解決される。好適なさらなる発展形態は、従属請求項に示されている。
【0011】
本発明による、試料を走査するための方法では、少なくとも2つの照明ドットがドットパターンの形成のために生成される。このドットパターンは、調整可能な数の照明ドットを有する。任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータが、ドットパターンを定義するために事前設定されているかまたは調整される。任意に選択可能なパラメータによって定められたドットパターンは、試料の予め設定された少なくとも1つの領域を走査するために、ドットパターンの照明ドットに割り当てられた走査線を生成するための第1の方向と、生成された走査線にそれぞれ後続する走査線を生成するための第2の方向と、に沿って移動し、ここで、第2の方向の方向におけるドットパターンの移動は、同じサイズの走査ステップで、または一定の速度で行われる。ドットパターンの照明ドットは、第2の方向に沿った線上に配置されている。
【0012】
本発明による方法を用いて形成されるドットパターンは、一方では、調整可能な数の照明ドットによって定められている。他方では、このドットパターンは、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータによって定められる。これにより、試料の走査のために最適なドットパターンの柔軟な生成が可能になる。任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータは、方法の実施の際に、可変に、好適には操作者によって調整可能である。それに対して代替的に、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータは、事前設定されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、第2の方向でのドットパターンの移動は、同じサイズの走査ステップで、または一定の速度で行われる。ただし、それによって、ドットパターンが第2の方向とは逆向きに移動することもできることを基本的に排除するものではない。そのような第2の方向とは逆向きのドットパターンの移動は、例えば、以下の3つのケースが想定されている。第1のケースでは、複数の走査スィープの場合に、跳び越し状の走査ステップを第2の方向とは逆向きに行うことができる。第2のケースでは、従属請求項14および
図11による実施例に示されているように、走査過程が走査ステップを第2の方向とは逆向きに行う発展形態が考えられる。第3のケースでは、例えばギャップを埋めるために、画像領域の新たな走査が第2の方向とは逆向きに行われる、本発明による教示の走査過程も含まれる。
【0014】
好適な発展形態では、第1の方向に沿ったドットパターンの移動の際に、予め設定された領域は、連続的にまたは段階的に走査される。この連続的または段階的な走査により、第1の方向に沿って走査線が走査される。これらの走査線は、後の検出方法においてイメージラインの生成のための基礎として用いることができる。
【0015】
さらなる好適な発展形態では、第2の方向に沿ったドットパターンの移動の際に、予め設定された領域は、段階的にまたは連続的に走査される。この段階的または連続的な走査では、ドットパターンは、1つの走査ステップにおいて第2の方向に沿って少なくとも1つの走査線だけ移動する。第2の方向に沿った段階的な走査の場合、ドットパターンは、例えば第1の方向に沿った移動の際に走査線の終端に達した後または第1の方向に沿って走査線の少なくとも1つが完全に走査された後で、第2の方向に沿って1つ以上の走査線だけスキップする。第2の方向に沿った連続的な走査の場合、ドットパターンは、例えば第2の方向に沿って変わらない速度で移動する。特に、その場合、ドットパターンは、第1の方向での1つの周期の後で(すなわち第1の方向に沿った移動の際に走査線の終端に達した後で)、第2の方向に、走査ステップに対応する1つの区間を進む。好適には、走査線もしくは走査ステップに割り当てられる物理的距離は、第2の方向に沿って調整することができる。これにより、第2の方向に沿った本方法の解像度を簡単な方法で調整することができる。
【0016】
さらなる好適な発展形態では、ドットパターンの照明ドットは、等距離に配置されているか、または照明ドットの少なくとも2つのグループを形成し、ここで、グループの各々の照明ドットは等距離に配置されている。照明ドットの等距離の配置は、ドットパターンの特に簡単な形態を表し、それに対して、複数のグループへの照明ドットの配置によれば、比較的複雑なドットパターンを形成することができる。この比較的複雑なドットパターンは、隣接する照明ドットの距離が比較的短いドットパターンと、隣接する照明ドット間の距離が比較的長いドットパターンと、の間で妥協が可能になるように最適化されている。
【0017】
さらなる好適な発展形態では、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、走査線において定められるドットパターンの照明ドット間の距離および/またはドットパターンの照明ドットのグループの数が調整される。照明ドット間の調整された距離により、ドットパターンの長さが相応に定められる。ドットパターンの最大許容全長と照明ドットの数とが与えられた場合、これらの調整手段によって柔軟な方法が達成される。さらに、グループの数の調整により、隣接する照明ドットの距離が比較的短いドットパターンと、隣接する照明ドット間の距離が比較的長いドットパターンと、の間の妥協に関して最適なドットパターンが達成される。
【0018】
さらなる好適な発展形態では、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、走査線において定められるドットパターンの照明ドット間の距離が調整される。その際、ドットパターンは、予め設定された領域を走査するために、少なくとも2つの走査スィープにおいて第1および第2の方向に沿って移動する。予め設定された領域を複数の走査スィープで走査することにより、ドットパターンのサイズは、1度だけのスィープで走査する場合に可能になるサイズよりも大きく調整することが可能になる。
【0019】
さらなる好適な発展形態では、走査スィープの各々において、予め設定された領域の一部が走査される。予め設定された領域の順次連続する走査スィープで走査された部分は、それぞれ、第2の方向に沿って少なくとも1つの走査線だけ相互にオフセットされている。それにより、予め設定された領域は、跳び越し走査のように走査することができる。走査スィープの各々において、予め設定された領域は、実質的に完全に走査され、そのため、走査方式の高解像度化につながる多数の走査スィープを使用することと、走査方式の短時間化につながる少数の走査スィープを使用することとの間で妥協が見いだせる。好適には、予め設定された領域のそれぞれ走査された部分は、検出後に個別に引き続き処理することができる。
【0020】
さらなる好適な発展形態では、走査スィープの各々において、ドットパターンが1つの走査ステップにおいて、ドットパターンの照明ドットの数と、走査線において定められるドットパターンの照明ドット間の距離と、の積に等しい、走査線の数だけ第2の方向に沿って移動することにより、予め設定された領域の段階的な走査が第2の方向に沿って行われる。好適には、予め設定された領域の順次連続する走査スィープで走査された部分は、それぞれ、第2の方向に沿って1つの走査線だけ相互にオフセットされている。これにより、予め設定された領域は完全に走査される。完全な走査のために必要な走査スィープの数は、走査線において定められるドットパターンの照明ドット間の距離に等しい。
【0021】
さらなる好適な発展形態では、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータとして、ドットパターンの照明ドットのグループの数が調整される。この場合、ドットパターンの照明ドットのグループの調整された数は、ドットパターンの照明ドットの数の約数である。さらに、各グループの照明ドットは、同じ数を有する。これは、ドットパターンの照明ドットをグループに分割する簡単な手段を表す。
【0022】
さらなる好適な発展形態では、ドットパターンの照明ドットのグループの唯一つに割り当てられている、走査線において定められるドットパターンの照明ドット間の距離は、ドットパターンの照明ドットのグループの調整された数に等しい。グループに割り当てられた照明ドットは、好適には、等距離に配置されている。これにより、グループ内で照明ドットを配置する簡単な手段が与えられる。
【0023】
さらなる好適な発展形態では、ドットパターンの照明ドットの順次連続するグループに割り当てられている、ドットパターンの照明ドット間の距離は、ドットパターンの照明ドットのグループの調整された数と1との合計に等しい。それにより、様々なグループに割り当てられている2つの隣接する照明ドットの距離は、同じグループに割り当てられている2つの隣接する照明ドットの距離よりも長くなる。これは、様々なグループを配置する簡単な手段である。
【0024】
さらなる好適な発展形態では、唯一の走査スィープにおいて、ドットパターンが1つの走査ステップにおいて、ドットパターンの照明ドットの数に等しい、走査線の数だけ第2方向に沿って移動することにより、予め設定された領域の段階的な走査が第2方向に沿って行われる。これにより、一方では、比較的小さなドットパターンの使用と比較的大きなドットパターンの使用との間で妥協が実現される。他方では、走査が、第2の方向に沿って同じサイズの走査ステップで行われ、このことは、特に、機械的な走査装置の場合に容易に実現可能である。
【0025】
好適には、ドットパターンの照明ドットは、音響光学偏向器(AOD)を用いて、またはビームスプリッタを用いて照明光束から生成される。AODの使用は、照明ドット間の距離とひいてはドットパターンの幅全体の簡単でかつ柔軟な調整を可能にする。ビームスプリッタを用いることにより、複雑なドットパターンも生成できる。
【0026】
さらなる好適な発展形態では、第2の方向に沿ったドットパターンの移動の際に、予め設定された領域は、段階的に走査される。後続の走査ステップでは、ドットパターンは、第2の方向に、そして該第2の方向とは逆向きに移動する。これにより、試料の走査された領域は、順次連続する走査ステップにおいて、第2の方向に沿ったドットパターンの前後のスキップにより、一様にますます洗練されることが達成され得る。
【0027】
本発明はさらに、試料を走査するための装置に関する。この装置は、ドットパターンを形成するための少なくとも2つの照明ドットを生成する照明ユニットを含み、ここで、ドットパターンは、調整可能な数の照明ドットを有する。この装置は、さらに、照明ユニットを制御するための制御ユニットを含み、ここで、この制御ユニットは、ドットパターンを定めるための任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータが調整されるように照明ユニットを制御する。照明ユニットは、任意に選択可能なパラメータによって定められたドットパターンを、試料の予め設定された少なくとも1つの領域を走査するために、ドットパターンの照明ドットに割り当てられた走査線を生成するための第1の方向と、生成された走査線にそれぞれ後続する走査線を生成するための第2の方向と、に沿って移動させる。本発明による、試料を走査するための装置(走査装置)は、試料を適合化可能なドットパターンを用いて走査することを可能にする。これにより、この装置は、例えば様々な検出ユニットに柔軟に適合化可能である。
【0028】
好適には、照明ユニットは、少なくとも1つの音響光学偏向器(AOD)または少なくとも1つのビームスプリッタを含む。
【0029】
本発明はさらに、前述した方式による、試料を走査するための装置を備えた顕微鏡に関する。
【0030】
好適には、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータは、顕微鏡の動作中に操作者によって調整される。さらに、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータは、顕微鏡の起動前に事前設定することも可能である。
【0031】
操作者による任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータの調整の代わりに、パラメータは、例えば操作者によって選択的に調整可能なさらなるパラメータ(例えば画像反復率、照明光束の励起波長または浸透深度)から任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータを特定するアルゴリズムに基づいて調整することも可能である。
【0032】
ドットパターンの照明ドットの数は、事前設定されてもよいし、動作中に調整することもできる。
【0033】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明を実施例に基づき添付の図面に関連させてより詳細に説明する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図2】2つの隣接する照明ドット間の距離が2つの走査線上で調整された、2つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図3】2つの隣接する照明ドット間の距離が2つの走査線上で調整された、3つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図4】2つの隣接する照明ドット間の距離が3つの走査線上で調整された、2つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図5】2つの隣接する照明ドット間の距離が4つの走査線上で調整された、3つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図6】照明ドットのグループの数が2つに調整された、4つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図7】照明ドットのグループの数が2つに調整された、6つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図8】照明ドットのグループの数が3つに調整された、6つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図9】照明ドットのグループの数が3つに調整された、9つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図10】照明ドットのグループの数が4つに調整された、8つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図11】4つの照明ドットを用いて試料を走査するための方法の一実施例を示した図
【
図12】試料を走査するための方法および従来技術による方法の様々な実施例を相互に比較するグラフを示した図
【
図13】カメラ検出を伴う顕微鏡の一実施例を示した図
【
図14】共焦点顕微鏡として構成された顕微鏡のさらなる実施例を示した図
【
図15】従来技術による試料を走査するための方法を示した図
【
図16】従来技術による試料を走査するためのさらなる方法を示した図
【
図17】従来技術による試料を走査するためのさらなる方法を示した図
【
図18】3つの照明ドットを用いた従来技術による試料を走査するためのさらなる方法を示した図
【
図19】4つの照明ドットを用いた
図18による試料を走査するための既知の方法を示した図
【0035】
図1は、試料100を走査するための方法の一実施例を示す。ステップS10では、操作者により、任意に選択可能な少なくとも1つのパラメータが、ドットパターン10を定めるために調整される。ステップS12では、以下で一般に参照符号12で示される調整可能な数の照明ドットが生成される。ステップS14では、以下で一般に参照符号10で示されるドットパターンが、試料100の予め設定された少なくとも1つの領域40を走査するために移動する。この場合、ドットパターン10の移動は、ドットパターン10の照明ドット12に割り当てられた、以下で一般に参照符号14で示される走査線を生成するための第1の方向と、生成された走査線14にそれぞれ後続する走査線14を生成するための第2の方向と、に沿って行われる。
【0036】
図2から
図11は、ステップS14におけるドットパターン10の移動の際に、少なくとも予め設定された領域(「関心領域」;ROI)40が第1の方向に沿って連続的に走査され、第2の方向に沿って段階的に走査される、試料100を走査するための方法の実施例を示す。第2の方向に沿った予め設定された領域40の段階的な走査は、一般に参照符号16で示される走査ステップで行われる。
【0037】
図2から
図11では、0から始まる通し番号が付けられている時系列で順次連続する走査ステップ16において、第2の方向、すなわち
図2から
図11中の上方から下方への方向に沿って、0から始まる通し番号が付けられている、照明ドット(「Blp」)12の位置が示されている。この実施例によれば、それぞれ、
図2から
図11の右端に示されている走査領域41を通過する。ここでは、それぞれどの走査線14がどの照明ドット12によって走査されたかが示されている。
【0038】
図2から
図5は、任意に選択可能なパラメータとして、走査線におけるドットパターン10の2つの隣接する照明ドット12間の距離が調整される、試料100を走査するための方法の実施例を示す。
図2から
図5に示される実施例のモードは、Dmによって示され、ここで、符号mは、任意に選択可能なパラメータ、すなわち、ここでは、走査線におけるドットパターン10の2つの隣接する照明ドット12間の距離である。ドットパターン10の照明ドット12は、第2の方向に沿った線上に等距離に配置されている。
【0039】
ドットパターン10は、試料100の予め設定された領域40を走査するために、ここでは一般に参照符号18で示される、0から始まる通し番号が付けられている複数の走査スィープにおいて第1の方向および第2の方向に沿って移動する。走査スィープ18の各々において、予め設定された領域40の一部が走査される。予め設定された領域40の順次連続する走査スィープ18で走査される部分は、それぞれ、第2の方向に沿って1つの走査線14だけ相互にオフセットされている。全体として、走査線においてドットパターン10の2つの隣接する照明ドット12間の距離に等しい数の走査スィープ18が実施される。好適には、走査スィープ18の各々において、例えば検出によって得られた結果は、個別に使用することができる。
【0040】
第2の方向に沿った予め設定された領域40の部分の段階的な走査は、ドットパターン10を、各走査ステップにおいて、ドットパターン10の照明ドット12の数と、走査線14において定められるドットパターン10の照明ドット12間の距離と、の積に等しい数の走査線14だけ第2の方向に沿って移動させることによって行われる。
【0041】
図2は、2つの隣接する照明ドット12間の距離が2つの走査線14上で調整された、2つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。予め設定された領域40は、2つの走査スィープ18において完全に走査され、この場合、照明ドットの位置は、第2の走査スィープ18(番号1)の際に、第1の走査スィープ18(番号0)と比べて1つの走査線14だけオフセットされている。
【0042】
図3は、2つの隣接する照明ドット12間の距離が2つの走査線14上で調整された、3つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。ここでも、予め設定された領域40は、2つの走査スィープ18において完全に走査される。照明ドットの位置は、第2の走査スィープ18(番号1)の際に、第1の走査スィープ18(番号0)と比べて1つの走査線14だけオフセットされている。
【0043】
図4は、2つの隣接する照明ドット12間の距離が3つの走査線14上で調整された、2つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。予め設定された領域40を完全に走査するために、ここでは、3つの走査スィープ18が必要である。照明ドットの位置は、順次連続する走査スィープ18の際に1つの走査線14だけオフセットされている。
【0044】
図5は、2つの隣接する照明ドット12間の距離が4つの走査線14上で調整された、3つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。ここでは、予め設定された領域40は、4つの走査スィープ18において完全に走査され、照明ドットの位置は、順次連続する走査スィープ18の際に1つの走査線14だけオフセットされている。
【0045】
図6から
図10は、任意に選択可能なパラメータとして、ドットパターン10の照明ドット12の、一般に参照符号20が付されているグループの数が調整される、試料100を走査するための方法の実施例を示す。
図6から
図10に示される実施例のモードは、Cmによって示され、ここで、符号mは、任意に選択可能なパラメータ、すなわち、ここでは、ドットパターン10の照明ドット12のグループ20の数である。
【0046】
ドットパターン10の照明ドット12のグループ20の調整された数は、ドットパターン10の照明ドット12の数の約数である。それぞれ1つのグループ20に割り当てられる照明ドット12の数は同じである。グループ20の各々の照明ドット12は、第2の方向に沿った線上に等距離に配置されている。ドットパターン10の照明ドット12の唯一のグループ20に割り当てられている、ドットパターン10の隣接する照明ドット12の走査線14における距離は、ドットパターン10の照明ドット12のグループ20の調整された数に等しい。ドットパターン10の照明ドット12の順次連続するグループ20に割り当てられている、ドットパターン10の隣接する照明ドット12の走査線14における距離は、ドットパターン10の照明ドット12のグループ20の調整された数と1との合計に等しい。
【0047】
第2の方向に沿った段階的な走査は、ドットパターン10を、各走査ステップ16において、ドットパターン10の照明ドット12の数に等しい走査線14の数だけ第2の方向に沿って移動させることにより行われる。その際には、第2の方向に沿って、予め設定された領域40よりも大きい領域41が走査される。なぜなら、走査もしくは照明された領域の縁部42にはギャップが残るからである。
【0048】
図6は、照明ドット12のグループ20の数が2つに調整された、4つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。グループ20内では、2つの隣接する照明ドット12間の距離は、2つの走査線である。グループ間では、距離は、3つの走査線14である。ステップ幅は、各走査ステップ16において4つの走査線14である。
図6に示されるように、予め設定された領域40よりもやや大きい領域41が照明される。なぜなら、照明された領域41の縁部42にはギャップが残るからである。
【0049】
図7は、照明ドット12のグループ20の数が2つに調整された、6つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。グループ20内では、2つの隣接する照明ドット12間の距離は、前述の実施例のように2つの走査線14である。グループ間では、距離は、3つの走査線14である。ただし、ステップ幅は、ここでは、各走査ステップ16において6つの走査線14である。ここでも、照明された領域41の縁部42にはギャップが残る。
【0050】
図8は、照明ドット12のグループ20の数が3つに調整された、6つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。グループ20内では、2つの隣接する照明ドット12間の距離は、グループ20の数に応じて3つの走査線14である。グループ20間では、距離は、4つの走査線14である。ステップ幅は、各走査ステップ16において6つの走査線14である。ここでも、照明された領域41の縁部42にはギャップが残る。
【0051】
図9は、照明ドット12のグループ20の数が3つに調整された、9つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。前述の実施例のように、グループ20内の2つの隣接する照明ドット12間の距離は、3つの走査線14である。グループ20間では、距離は、4つの走査線14である。ただし、ステップ幅は、ここでは、各走査ステップ16において9つの走査線である。ここでも、照明された領域41の縁部42にはギャップが残る。
【0052】
図10は、照明ドット12のグループ20の数が4つに調整された、8つの照明ドット12を用いて試料100を走査するための方法の一実施例を示す。グループ20内の2つの隣接する照明ドット12間の距離は、4つの走査線14である。グループ20間では、距離は、5つの走査線である。ステップ幅は、各走査ステップ16において8つの走査線である。ここでも、照明された領域の縁部42にはギャップが残る。
【0053】
図11は、ドットパターン10が各走査ステップ16において移動する第2の方向に沿った走査線14の数が、順次連続する走査ステップ16において異なっている、試料100を走査するための方法の一実施例を示す。ここでは、ドットパターン10は、順次連続する走査ステップ16において逆向きの方向に移動し、そのため、このドットパターン10は、第2の方向に沿って前後にスキップする。これにより、試料100の走査された領域が、順次連続する走査ステップ16において、一様にますます洗練されることが達成され得る。このことは有利となる。なぜなら、それによって、試料100の予め設定された領域40がより多くの走査ステップ16を必要とする高解像度で走査されるかどうか、または試料100を走査するための方法の持続時間がより少ない走査ステップ16の実施で短縮化されるかどうかに関して適合化を行うことができるからである。
【0054】
図2から
図11に基づいて、試料100を走査するための方法の複数の実施例を説明してきたが、これらは、様々な境界条件のもとで特に有利となり得る。これらの実施例の各々は、照明ドット12の数の他に、少なくとも1つのさらなる任意に選択可能なパラメータ「m」を有する。ここでは、区別のために、
図2から
図5で説明する実施例については表記D2,D3,D4,Dmが使用され、あるいは
図6から
図10で説明する実施例については、表記C2,C3,C4,Cmが使用される。実施例による複数の可能な組み合わせ、特に、照明ドット12の数および任意に選択可能なパラメータ「m」により、高い柔軟性が生じ、そのため、異なる出発点(すなわち、予め設定された領域40、走査装置60の特性など)に関して最適なモードに調整することができる。
【0055】
図12は、試料100を走査するための方法の様々な実施例および従来技術による方法を相互に比較するグラフを示す。このグラフは、本方法の様々なモードD2,D3,D4およびC2,C3,C4、ならびに
図16もしくは
図18および
図19に関連してさらに以下でより詳細に説明する従来技術から公知の2つのモードAおよびBに関して、走査線14において測定されたドットパターン10の全幅を、照明ドット12の数nの関数として示す。
【0056】
図12では、モードDでもモードCでも、2つの隣接する照明ドット12間の距離の柔軟な選択が可能であることが明確に認識できる。光学系が、例えば、30の走査線(破線)のドットパターン10の最大幅を許容する場合、照明ドット12の数n=8……16について、1つのモードが調整できるため、所定の状況下で、2つの隣接する照明ドット12間の最大距離が生じる。
【0057】
さらに、
図12では、モードDがモードCよりもさらに柔軟であることが明確に認識できる。なぜなら、調整された数の照明ドット12ごとにすべてのモードD2,D3…が調整できるからである。ただし、モードDは、モードCに比べて、走査ステップ16のステップ幅が非常に大きくなり得るという欠点を有する。モードCでは、走査線14のこのステップ幅は、常に照明ドット12の数に等しく、それに対して、モードDでは、当該ステップ幅は、照明ドット12の数と、走査線14で示される隣接する照明ドット12の距離と、の積に等しくなる。その結果、モードDでの走査ステップ14のステップ幅は、任意に選択可能なパラメータが同じ値に調整されている場合、モードCの場合の少なくとも2倍に拡大する。さらに、モードDは、これらの走査から個々の画像を合成するために複数の走査スィープを必要とする。これにより、単位時間あたりに実施できる方法の最大レートが制限される。
【0058】
図13は、顕微鏡50の実施例を示す。この顕微鏡50は、制御ユニット52、本発明による方法が実施可能である走査装置60、ダイクロイックミラー54、検出ユニット80、およびレンズ光学系90を含む。この顕微鏡50において、試料100が導入可能である。
【0059】
走査装置60は、照明ドット12を生成するための照明ユニット70、予め設定された領域40を走査するための偏向素子、ここでは一般に符号64で示される例えば検流計ミラーなど、およびさらなる光学素子、ここでは一般に符号62で示される例えばレンズ、レンズ系、および絞りなどを有する。
【0060】
照明ユニット70は、照明光束74を生成する光源72、照明光束74を操作者によって調整可能な数の照明ドット12に分割するためのユニット76、例えばビームスプリッタまたはAOD、およびここでは一般に符号78で示される複数のさらなる光学素子、例えばレンズ、レンズ系、および絞りなどを含む。例えば、照明ユニット70は、照明光束74をさらに分割するための第2のユニットを含むことができる。これにより、より複雑な二次元ドットパターン10も生成することができる。光源72によって生成される照明光束74は、特に、蛍光を発するために試料100を励起する光の束(例えばレーザー光)であり得る。
【0061】
特に、照明光束74を分割するためのユニット76および照明ユニット70のさらなる光学素子78は、制御ユニット52によって、少なくとも1つの調整された任意のパラメータに従って照明ドット12からドットパターン10が生成されるように制御される。好適には、光源72も、制御ユニット52によって制御され、そのため、この制御ユニット52は、例えば帰線消去(「blanking」)可能である。
【0062】
検出ユニット80は、カメラセンサ82、バンドパスフィルタ84、および多光子ブロック86を含む。カメラセンサ82は、試料100から発する検出光を検出するように構成されている。好適には、カメラセンサ82のカメラ露光時間およびシャッター速度は、制御ユニット52によって調整される。バンドパスフィルタ84は、試料100から発せられる検出光から予め設定された波長範囲を除いてすべての波長をフィルタリングする。予め設定された波長範囲は、例えば、特定の染料の蛍光の波長範囲であり得る。これにより、カメラセンサ82を用いて、特定の染料が存在している、試料100の領域のみが結像され得る。多光子ブロック86は、好適には、ショートパスフィルタによって形成されている。この多光子ブロック86は、励起光がカメラセンサ82に到達するのを防いでいる。
【0063】
以下では、
図13による顕微鏡50のビームパスを手短に概説する。照明ユニット70によって生成されたドットパターン10は、走査装置60の偏向素子64によって第1の方向と第2の方向とに沿って移動する。ドットパターン10の移動は、
図13中に両矢印Pによって示されている。これにより、ドットパターン10がダイクロイックミラー54およびレンズ光学系90を通過した後、実質的に試料100の予め設定された領域40内に存在する異なるドットが照明される。試料100から発する検出光は、レンズ光学系90およびダイクロイックミラー54を通過した後、検出ユニット80に入射する。
【0064】
図14は、顕微鏡50のさらなる実施例を示す。
図14に示される顕微鏡50は、実質的に、
図13に示される顕微鏡50と、ピンホール検出ユニット80’によって異なっており、このピンホール検出ユニット80’は、カメラセンサ82を有する検出ユニット80に置き換わるものである。さらに、
図14による顕微鏡50は、偏向ミラー56を含んでおり、この偏向ミラー56は、走査装置60とレンズ光学系90との間に配置されている。
【0065】
ピンホール検出ユニット80’は、バンドパスフィルタ84、ドット検出器88、およびピンホール89のアレイ87を含む。ピンホール89のアレイ87は、ピンホール89が制御ユニット52によって制御されて開閉可能になるように構成されている。制御ユニット52は、このアレイ87を、特に、それぞれ調整されたドットパターン10に依存して制御する。その際、好適には、開放された各ピンホール89にドットパターン10の照明ドット12が割り当てられる。ピンホール89のアレイ87の代わりに、顕微鏡50は、同じ機能を果たすマイクロミラーアレイを備えたマイクロミラーアクチュエータを含むこともできる。
【0066】
以下では、
図14による顕微鏡50のビームパスを手短に概説する。照明ユニット70によって生成されたドットパターン10は、ダイクロイックミラー54および走査装置60のさらなる光学素子62を通過した後、偏向ミラー56に入射する。この偏向ミラー56は、ドットパターン10をレンズ光学系90へ偏向させる。このレンズ光学系90により、ドットパターン10を用いて、実質的に試料100の予め設定された領域40内に存在する異なるドットが照明される。試料100から発する検出光は、レンズ光学系90を通過した後、偏向ミラー56に入射する。偏向ミラー56は、この検出光を、走査装置60のさらなる光学素子62を通してダイクロイックミラー54へ偏向させる。このダイクロイックミラー54により、試料100から発する検出光は、ピンホール検出ユニット80’へ偏向される。
【0067】
検出光は、走査装置60の偏向素子64およびさらなる光学素子62をドットパターン10と逆向きの方向に通過する。試料100と偏向素子64との間で、検出光は、第1の方向と、ドットパターン10の移動に続く第2の方向と、に沿った移動を実行する。ドットパターン10の移動は、
図14中に両矢印Pで示されている。走査装置60の偏向素子64を通過する際に、検出光は、「デスキャン」される(「entschannt」とも称される)。特に、偏向素子64とドット検出器88との間を通過する検出ビームは、「デスキャンビーム」とも称される。なぜなら、走査移動もしくはスキャン移動は、検出光が戻る際に再び中止されるからである。これにより、照明ドット12の1つに割り当てられた検出光は常に前述の照明ドット12に割り当てられたピンホール89を通ってドット検出器88の1つに入射することが保証される。
【0068】
図15は、従来技術による、試料100を走査するための方法を示す。ドットパターン10’は、4つの照明ドット12’によって形成され、第2の方向に沿って試料100の予め設定された領域40の大半にわたって延在する。これらの照明ドット12’は、等距離に配置されている。複数の走査ステップ16では、予め設定された領域40が完全に走査されるまで、第2の方向の方向において順次連続する走査線14が走査される。
【0069】
図16は、従来技術による、試料100を走査するためのさらなる方法を示す。ドットパターン10’は、走査線14から距離を置いて順次連続して配置された3つの照明ドット12’によって形成されている。これにより、個々の照明ドット12’よりも広い照明スポットが効果的に生成される。このドットパターン10’を用いて、予め設定された領域40は、複数の走査ステップ16において完全に走査される。この場合、ステップ幅は3つの走査線14である。この方法は、
図12ではモードAとして示される。
【0070】
図17は、従来技術による、試料100を走査するためのさらなる方法を示す。ドットパターン10’は、一方向に等距離に配置された3つの照明ドット12’によって形成されている。複数の走査ステップ16において、予め設定された領域40の区間44の一方向に沿って順次連続する走査線14が走査される。このことは、前述の方向に沿って配置された、予め設定された領域40のさらなる区間44についても繰り返される。そのため、予め設定された領域40は、これらの所定の区間44から合成することができる。
【0071】
図18および
図19は、ドットパターン10’の2つの隣接する照明ドット12’間の走査線14における距離が、ドットパターン10’の照明ドット12’の数と1との合計に等しい、先行技術による、試料100を走査するためのさらなる方法を示す。複数の走査ステップ16では、順次連続する走査線14が走査される。各走査ステップ16では、ドットパターン10’の照明ドット12’の数に等しい数の走査線14がスキップされる。総じて走査された領域41’の縁部42にはギャップが残る。この方法は、
図12において、モードBとして示される。
図18に示される実施例では、ドットパターン10’は、3つの照明ドット12’によって形成されている。
図19に示される実施例では、ドットパターン10’は、4つの照明ドット12’によって形成されている。
【0072】
図18もしくは
図19に基づいて説明した方法では、ドットパターンの2つの隣接する照明ドットの距離が、照明ドットの数と結合されているという欠点がある。ドットパターンのサイズは、照明ドットの数とともに指数的に増大し、このことは、不都合に大きなドットパターンをすぐに引き起こす可能性がある。照明ドットの数が少ない場合には、2つの隣接する照明ドットの距離が時々不都合に短くなる。
【0073】
本発明の実施例は、
図15から
図19に基づいて示された従来技術の方法に比べ、本実施例が、試料の走査のための最適なドットパターンの柔軟な生成を可能にしている点で有利である。
【符号の説明】
【0074】
10,10’ ドットパターン
12,12’ 照明ドット
14 走査線
16 走査ステップ
18 走査スィープ
20 照明ドットのグループ
40 予め設定された領域
41,41’ 走査された領域
42,42’ 走査された領域の縁部
44 走査された領域の部分
50 顕微鏡
52 制御ユニット
54 ダイクロイックミラー
56 偏向ミラー
60 走査装置
62,78 光学素子
64 偏向素子
70 照明ユニット
72 光源
74 照明光束
76 照明光束を分割する装置
80 検出ユニット
80’ ピンホール検出ユニット
82 カメラセンサ
84 バンドパスフィルタ
86 多光子ブロック
87 ピンホールアレイ
88 ドット検出器
89 ピンホール
90 レンズ光学系
100 試料
P 両矢印