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7330963粗くて角張った粉末供給物質から微細な球状粉末を製造するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】粗くて角張った粉末供給物質から微細な球状粉末を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20230815BHJP
   B01J 2/16 20060101ALI20230815BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20230815BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20230815BHJP
【FI】
B22F9/08 Z
B01J2/16
B01J19/08 K
B22F1/14
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020526405
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 CA2018000225
(87)【国際公開番号】W WO2019095039
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】62/585,882
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513235739
【氏名又は名称】パイロジェネシス・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・アレックス・ドルヴァル・ディオン
(72)【発明者】
【氏名】アリ・シャーヴェルディ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・プルー
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05707419(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107096925(CN,A)
【文献】特開昭63-307203(JP,A)
【文献】特開2002-220601(JP,A)
【文献】特開昭63-045309(JP,A)
【文献】特開2002-346377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 9/30
B01J 2/00- 2/30
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗いおよび/または角張った粉末原料の粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするためのプロセスであって、前記プロセスは、
熱源と、
加熱室と、
超音速ノズルと、
ガス流から粉末を収集するための気固分離システムとを備え、
還元ガスが、物質の酸化層を還元するために供給され、
酸化ガスが、物質に酸化の層を追加するために供給される、プロセス
【請求項2】
前記熱源がプラズマトーチを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記熱源が、1つまたは複数のDCまたはACのアークプラズマトーチ、またはそれらの組合せである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粉末原料が、任意の注入角で前記加熱室内に供給される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
処理された粉末が、気固分離段階において連続的または半連続的に収集される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
不活性ガスが、物質のさらなる酸化を回避するために供給される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項5または6に記載されたガスの任意の組合せが、処理された物質の表面または化学成分を修正するための使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記超音速ノズルが、その喉部において1のマッハ数に到達するように適合された、先細末広のラバールノズルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記超音速ノズルが、退出するジェットの温度を再上昇させ、冷却室に入る前に前記粒子を減速させるために、前記ノズルの終端において拡散器も有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記超音速ノズルが、ラバールノズルおよびエアロスパイクノズルのうちの1つである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
不純物および湿気の一方または両方が、高温における化学分解と蒸発とによって、粉末原料から除去されるように適合される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
粗いおよび/または角張った原料粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするためのプロセスであって、a)前記原料粒子を加熱することと、b)前記粒子に超音速ノズルを通過させることと、c)そのように製造された粉末を気固分離システムを用いてガス流から収集することとを含み、
還元ガスが、物質の酸化層を還元するために供給され、
酸化ガスが、物質に酸化の層を追加するために供給される、プロセス。
【請求項13】
ステップa)において、前記原料粒子はプラズマトーチを用いて加熱される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップa)において、前記原料粒子は、1つまたは複数のDCまたはACのアークプラズマトーチ、またはそれらの組合せを用いて加熱される、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
処理された粉末が、前記気固分離システムにおいて連続的または半連続的に収集される、請求項12から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記超音速ノズルが、その喉部において1のマッハ数に到達するように適合された、先細末広のラバールノズルを含み、前記喉部は、前記ラバールノズルの上流側の先細部分と下流側の末広部分との間に設けられる、請求項12から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記超音速ノズルが、退出するジェットの温度を再上昇させ、冷却室に入る前に前記粒子を減速させるために、前記ノズルの下流側終端において拡散器も有する、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記超音速ノズルが、ラバールノズルおよびエアロスパイクノズルのうちの1つである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップa)からの融解された供給粉末は、ステップb)において加速された際に薄い円盤の形状へと変形する、請求項12から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップa)からの融解された供給粉末は、ステップb)において、突然、微細粒子になるように構成される、請求項12から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップa)からの融解された供給粉末は、ステップb)において、前記超音速ノズルの喉部で、突然、微細粒子になるように構成される、請求項12から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
粗いおよび/または角張った原料粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするための装置であって、
熱源と、
前記原料粒子を融解するための加熱室と、
超音速ノズルと、
前記超音速ノズルを退出するガス流から粉末を収集するための気固分離システムとを備え、
還元ガスが、物質の酸化層を還元するために供給され、
酸化ガスが、物質に酸化の層を追加するために供給される、装置。
【請求項23】
前記熱源が、1つまたは複数のDCまたはACのアークプラズマトーチ、またはそれらの組合せである、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記加熱室に前記原料を供給するために粉末供給器が設けられる、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
前記超音速ノズルが、その喉部において1のマッハ数に到達するように適合された、先細末広のラバールノズルを含み、前記喉部は、前記ラバールノズルの上流側の先細部分と下流側の末広部分との間に設けられる、請求項22から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記超音速ノズルが、退出するジェットの温度を再上昇させ、前記超音速ノズルと前記気固分離システムとの間に設けられた冷却室に入る前に前記粒子を減速させるために、前記ノズルの下流側終端において拡散器も有する、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記超音速ノズルが、ラバールノズルおよびエアロスパイクノズルのうちの1つを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
冷却室が、前記超音速ノズルと前記気固分離システムとの間に設けられる、請求項22から27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記冷却室は、水冷による二重ジャケット反応器を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
移送管が、前記冷却室と前記気固分離システムとの間に設けられる、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記移送管は、粉末を前記気固分離システムへと空気圧で搬送するように構成される、請求項30に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2017年11月14日に出願した係属中の米国仮出願第62/585,882号の優先権を主張する。
【0002】
本主題は、入手可能で手ごろな価格の粗くて角張った供給原料物質から、金属射出成形および3D印刷などの付加製造における厳しい用途のために使用され得る球状粉末の製造に関する。より詳細には、本主題は、プラズマ処理を介して微細な球状粉末を製造することができるプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
微細で球状の粉末に対して市場において高い需要が存在する。そのような粉末を製造する方法は、ワイヤなどの高価な元の原料を使用する傾向があるか、または望ましい範囲(5~45ミクロン)内で極めて低い産出量を有する傾向があるかのいずれかである。
【0004】
球形粉末は、主にそれらのより高い密度、より良い流動性、およびより良い摩耗に対する抵抗力に起因して、それらの角張った対応物と比較して、多くの用途に対して優れた適合性を示す。
【0005】
106~150ミクロンにおける粗くて角張った粉末は、低コストで容易に製造することができ、市場ですぐに入手可能である。
【0006】
粉末を球状化することができるプロセスはすでに存在するが、現在のプロセスは、付加製造に使用される望ましい範囲(たとえば、5~20、15~45および20~53ミクロン)内に入るように、粒子の微粒子化と球状化の両方を行うことはできないものと思われている。「微粒子化」という用語によって、融解粒子を2つ以上の小滴に機械的に細分化することを伴う粒度低減が意図される。この用語は、形状因子だけの変化(たとえば、多孔質で角張った粒子からより高密度で球状の粒子への移行、本明細書では「球状化」と呼ばれる)、または蒸発ステップに続いて再凝固ステップを経由して粒子を合成することによるサイズ低減を除外する。
【0007】
ナノ粒子合成の場合など、粉末を蒸発させてそれを固体の微細粉末に再び凝結させることによって粒度を低減するプロセスが存在するが、このプロセスはかなりの欠点を有する。第1に、得られた粉末は、通常、ナノメートルの範囲にあり、その範囲は、付加製造における最先端技術にとって概して微細すぎる。第2に、粉末を蒸発させることは、より長い滞留時間およびより高い電力負荷を必要とし、そのことは、低い生産率および高いプロセスコストにつながる。最後に、蒸発方法は、蒸発させる前に分解しない純粋な化合物に対してのみ適用可能であり、それは、極めて制限的な検討事項である。これは、合金が、その経路(route)を使用して確実に製造することはできないことを意味する。なぜならば、混合物内に存在する各要素は蒸発して、互いに異なる割合で凝結するからである。それは、処理され得る化合物を限定することにもなる。なぜならば、いくつかの化合物は、沸点に達する前の温度によって分解するからである。
【0008】
角張った粉末を球状の粉末に処理するためのプロセスも存在する。球状化は、粒子または少なくともその表面を融解することによって行われ、エッジを滑らかにして、最も安定でコンパクトな、球体の形状因子に到達する。しかしながら、この方法は、粉末原料が高度に角張った多孔質でない場合、粉末の粒度を顕著に変えることはない。このプロセスは、粒子の細分化を伴わない。これは、最終製品として微細粉末を目指しているならば、球状化プロセスに進む粉末原料は、すでに所望の粒度分布を満足していなければならないことを意味する。このプロセスは、酸化物セラミックスなどの高度に化学的に安定な化合物に対して機能し得るが、金属などの他の物質に対して、これは、概して、所望の用途に対して許容量より高い酸素含有量を有する粉末をもたらすことになる。この理由は、角張った粉末は、通常、目標の粒度分布に到達するために機械的サイズ低減プロセスを経験し、それは、高レベルの摩擦を暗示し、それによってかなりの温度上昇を生じるからである。たとえ制御された雰囲気の下でも、金属粉末は、極めて微細な粒度に粉砕される場合、そのプロセス中にかなりの量の酸素を取り込む可能性がある。球状化プロセスも酸素の取り込みを生じ、それは、取り込まれた酸素の総量は、規格で指定される最大許容範囲を超えることがある。
【0009】
その上、前の球状化方法は、しばしば、誘導結合プラズマ源の使用を含み、それは、高度に特有でほとんど市販されていない、無線周波数誘導電源を必要とする。
【0010】
プラズマ微粒子化は、現在、市販されている最も球状で密な粉末を製造するプロセスであると思われていると指摘することも興味深い。この技術はまた、より微細な範囲内の狭い粒度を製造し、それは、付加製造の分野に対して非常に望ましい。この技術の主要な制約の1つは、それは、一般的に、供給原料としてワイヤのみを処理することができることである。このことは、チタンアルミナイド(TiAl)、炭化物およびセラミックスなど、いくつかの有益な需要のある物質が、それらの機械的性質からワイヤとして調達することが困難であるが、粉末の形なら容易に入手可能であることを考えると、かなりの制約となる。原料として粉末を使用するプラズマ微粒子化プロセスは、現在のところ、存在しないと思われる。
【0011】
ガス噴霧法は、一般的に、微粒子化のために融解したインゴットを使用する。しかしながら、この技術もまた、いくつかの制約を有する。第1に、それは、ガス封入による多孔質を含む粒子をもたらす。第2に、最も重要なことに、粒度分布は一般的に広い。ガス噴霧法は、現在、粗い粉末を再処理するために使用することができないことを指摘することは重要である。
【0012】
球状または非球状の粗い粉末(たとえば、106ミクロン以上)は、大部分の微粒子化技術の一般的な副産物であり、より微細なカット(cut)と比較して市場で極めて低い価値を有する。この粉末をより微細な粒子に再微粒子化することができるプロセスにおける原料として、この粉末源を使用し、それゆえその価値を高めることは、経済的に有益であり得る。その上、この粉末原料が、角張っていると判明するかまたは非常に多孔質である場合、同じプロセス内で追加される有益な球状化は、真にその価値をいっそう高めることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえ、機械的に製造された角張った粗い粉末原料から球状で高密度の微細粉末を製造するプロセスを提供することが望ましい。
【0014】
特別注文の高コストの高周波数誘導電源およびICPトーチではなく、広く入手可能で高信頼の業務用DCプラズマ切断電源およびDCプラズマトーチを使用する低コストプロセスを有することも望ましい。
【0015】
本明細書で説明する実施形態は、一態様では、粗いおよび/または角張った粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするためのプロセスであって、熱源と、加熱室と、超音速ノズルと、ガス流から粉末を収集するための気固分離システムとを備える、プロセスを提供する。
【0016】
同じく、本明細書で説明する実施形態は、別の態様では、粗いおよび/または角張った粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするための装置であって、熱源と、加熱室と、超音速ノズルと、ガス流から粉末を収集するための気固分離システムとを備える、装置を提供する。
【0017】
さらに、本明細書で説明する実施形態は、別の態様では、粗いおよび/または角張った原料粒子を球状化および/または微粒子化して球状で微細な粒子にするためのプロセスであって、a)原料粒子を加熱することと、b)粒子に超音速ノズルを通過させることと、c)そのように製造された粉末を、たとえば気固分離システムを用いてガス流から収集することとを含む、プロセスを提供する。
【0018】
本明細書で説明する実施形態をより良く理解するため、および実施形態がいかにして実行され得るかをより明確に示すために、次に、例示のためだけに、少なくとも1つの例示的な実施形態を示す添付の図面に対する参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例示的な実施形態による、粗くて角張った粉末供給物質から微細な球状粉末を製造するための装置の概略正面図である。
図2】例示的な実施形態による、図1の装置の融解ゾーンおよび微粒子化部分の概略的描写である。
図3】例示的な実施形態による、図1の装置の先細末広ノズル(たとえば、ラバール(De-Laval)ノズル)の一例を示す概略断面図である。
図4A】例示的な実施形態による、図1に示す装置を通る処理の前の粉末の走査電子顕微鏡法(SEM)写真である。
図4B】例示的な実施形態による、図1に示す装置を通る処理の後の粉末の走査電子顕微鏡法(SEM)写真である。
図5図4Bに示すものと同じ粉末サンプルであるが、より大きい拡大率(zoom)における別のSEM写真である。
図6A】例示的な実施形態による、図4Aに示すものと同じサンプルに対応する、処理前のサンプルに対するレーザー回折粒度分布(PSD)を示す図である。
図6B】例示的な実施形態による、図4Bに示すものと同じサンプルに対応する、処理後のサンプルに対するレーザー回折粒度分布(PSD)を示す図である。
図7A】例示的な実施形態による、ラバールノズルを有する加熱室の変形を示す図である。
図7B】例示的な実施形態による、ラバールノズルを有する加熱室の変形を示す図である。
図7C】例示的な実施形態による、ラバールノズルを有する加熱室の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本主題は、粗い角張った粉末を融解、微粒子化および球状化して微細で球状の粉末にすることができる高温プロセス(および装置)を対象とする。主題は、粉末原料を使用するプラズマ微粒子化プロセス、または粒子細分化特性を含む粉末球状化技術のいずれかとして説明され得る。
【0021】
この現在の主題は、微粒子化と球状化の両方を介して粒子のサイズ低減を成し遂げることができるが、蒸発を伴わない(または少なくともサイズ低減に対する有意な寄与者と見なされない)。
【0022】
ガス噴霧器ユーザは、ガス噴霧器技術によって製造された粗い粉末を、付加製造に好適な微細粉末に変換する粉末再微粒子化技術から利益を得る。
【0023】
本明細書では、粗い角張った粉末が、プラズマ反応器内に供給され、そこにおいて、粉末は、その融点に到達して少なくとも部分的に融解されるのに十分に長い期間の間、プラズマジェットと接触することになる。したがって、室の長さは、所望の供給速度と選択された物質との関数である。次いで、融解された液体の粒子は、ラバールノズル内に導入され、そこにおいて、プラズマまたは高温ガスは、極めて短い距離(1インチ程度の大きさ)にわたって超音速に加速される。融解された小滴とプラズマまたは高温ガスの流れとの間の巨大な速度差によって、小滴は、その細分化点に達するまでせん断される。この点において、小滴は2つ以上のより微細な粒子に崩壊する。小滴は、ラバールノズルから冷却室に押し出されるので、小滴は、球体である、表面エネルギーを最小化にする形状因子に達することができ、元の固体に凝固する。
【0024】
ラバールノズルの前の高温ゾーンは、粒子をその融点に至らせるのみでなく、それを融解するのに十分な高温と滞留時間とを与えるように設計される。
【0025】
ラバールノズルは、そのようなガス流およびトーチ電力のプロセスパラメータの特定のセットに対して、喉部においておよびノズルを退出するジェット内で温度と速度との正しい組合せに到達するように、注意深く設計されなければならない。ノズルは、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するために使用される。ノズルは、その加速度が粒子細分化を生ずるのに十分でありながら、温度を微粒子化される物質の融点以上に保つように設計されなければならない。
【0026】
ラバールノズルの出口は拡散器を含むことができ、拡散器は、それが、ガスおよび粒子を急激に減速させ、温度をラバールノズルの前にあった温度付近まで大幅に再上昇させるという点において、基本的に、ラバールノズルが行うことの反対を行う。拡散器は、粒子温度を上昇させる効果も有し、それは、小滴が上記で説明した加速の後にその融点以上を保つのを助けることができ、それゆえ、ノズルの出口における鍾乳石の形成を回避することができる。
【0027】
ラバールノズルおよびその拡散器の設計は、製造される粉末のサイズおよび分布、ならびに処理され得る最大粒子負荷に影響を及ぼす。
【0028】
ノズルの後、冷却ゾーン内の冷却の間、微粒子化された小滴は、それらの凝固温度に到達する前に、それらの理想的な形状(球体)に到達しなければならない。理想的な形状因子に達すると、粒子は、固体状態に凝固することができる。このステップは、たとえば、水冷ジャケットを有するより大きい直径の円筒で構成され得る冷却塔内で行われ得る。
【0029】
冷却塔は、粒子が、プロセスの後続のステップの間に他の固体物質との接触状態に入る前に形状が変わることから保護するために少なくとも十分な厚さの固化した殻(完全に固化していない場合)を有するように、十分に長い滞留時間を与えるべきである。冷却塔の寸法は、選択された原料、所望の供給速度、およびプラズマトーチの流速など、プロセスの要件によって決定される。そのような固体物質は、反応器および配管壁、または他の粒子であり得る。
【0030】
この段階では、粒子は、装置の底において収集され得るか、または、限定はしないが、サイクロン、フィルタもしくは沈降室などの従来の粉末収集デバイスまで空気圧で搬送されて収集され得る。望ましくは、粒子は、周囲の空気と接触する前に、酸化を低減するために十分な低温で収集されなければならない。
【0031】
粉末が収集されてガス流から分離されると、粉末が排気に送られないことを確実にするために、ガス流は、さらにフィルタ処理され得る。
【0032】
次に添付の図面を参照すると、図1は、本主題による、装置Aの概略的描写を示す。装置Aは、プラズマトーチ1と、ラバールノズルを有する加熱室2と、冷却室3と、移送管4とを含み、移送管の中を、粉末が沈降室5を経て最後に多孔質の金属フィルタ6まで空気圧で搬送される。これは、様々な可能な実施形態の一例にすぎない。
【0033】
図2は、本主題の中核要素2がどのように機能するかを概念的に示す。この部分は、図1のラバールノズルの概念的描写である。この例では、粉末供給原料は、7においてプラズマジェット8に直角に供給される(しかし、粉末は、並流して、逆流して、または傾斜して供給されてもよい)。粒子が加熱ゾーン9内を搬送されるにつれて、粒子は、その融点に到達して、融解し始める。融解されると、高温ガスまたはプラズマが加速されるにつれて、粒子は、薄い円盤の形状を取るように変形し始める。さらに下方で、粒子は、ラバールノズル10の喉部11に到達したときに、粒子は、突然、複数の微細粒子になる。退出する流れ12は、高温ガスと微細粒子の混合物であり、それは冷却室3に入る。
【0034】
図3は、ノズルに対する実行可能な設計の一例を示す。この例では、ノズル13は、上部から下部にかけて、流体が加速される先細部分14と、流体が音速に到達する(マッハ数=1)喉部15と、流体が音速を超える(マッハ数>1)末広部分16と、最後に、運動エネルギーが熱エネルギーに再変換されて出口の前の温度が上昇する(マッハ数<1)拡散器17とを含む。より簡単な例は、古典的な先細末広のラバールノズル、本主題に対する大部分の実験のために使用されたケースである。
【0035】
図4Aおよび図4Bは、それぞれ、図1に示す実施形態を通る処理の前と後の粉末の走査電子顕微鏡法(SEM)写真である。図4Aでは、粉末は、もっぱら、角張った多孔質の粉末からなることがわかる。図4Bでは、処理後、すべての粉末であるとは限らないが、かなりの量の粉末は球状である。両方の写真は同じ拡大率(×100)で撮られており、それゆえ、比較の目的で使用され得る。専門家にとって、粒子が、図4Aにおけるよりも図4Bにおいて概してより小さいことは、目視で容易に気づくことである。
【0036】
図5は、図4Bにおけるものと同じ粉末サンプルであるがより大きい拡大率(×500)における別のSEM写真を示す。この図から、この分野の専門家(someone knowledgeable)は、次のように評価するであろう。1)球状化された粉末は極めて高度の球形度を有する、2)付随物(satellite)(より大きい粒子上に溶着する超微細粒子)含有量は極めて低い、および3)球状化されなかった粉末は少なくとも幾分軟化したエッジを有し、そのような粉末は、それでも流動性に役立ち得る。
【0037】
図6Aおよび図6Bは、同じ順序で図4Aおよび図4Bに示す同じサンプルに対応する、ともに同じサンプルに対するそれぞれ処理前および処理後のレーザー回折粒度分布(PSD)を示す。図6A図6Bとの間で、より微細な側への有意な粒度シフトが注目に値する。中央粒度(D50)は、図6Aよりも図6Bにおいて12ミクロン低く、それは、粉末のほんの一部が融解されたことを考慮すると、極めて有意である。文献において発見され得るものと比較するとき、この粒子のシフトは、球状化のみに起因するとするにはあまりに有意であり、それは、真の粒子細分化が少なくとも部分的に発生していることを示している。
【0038】
図7A図7Bおよび図7Cは、図1の品目2に対応するラバールノズルを有する加熱室の、実験的に試行された、いくつかの変形を示す。図7Aでは、ラバールノズル2'を有する加熱室を示しており、それは、粉末が45度の角度の逆流で供給される、球の形状を有するグラファイト室を表す。図7Bでは、ラバールノズル2''を有する加熱室を示しており、室は細長く、粉末はプラズマジェットに直角に供給される。図7Cでは、ラバールノズル2'''を有する加熱室を示しており、それは、壁温度を高くし、それゆえ熱損失を低減するために、図7Bに示す構成に対する誘導コイル18を含む。すべての3つの構成はある程度まで機能したが、本明細書で提示する結果は、図7Aに示す構成を用いて生み出された。
【0039】
それゆえ、本主題は、プロセスとして、以下の要素、すなわち、プラズマ源などの熱源、加熱室、加速(たとえば、超音速)ノズル、冷却室、および粉末収集システムを含む。すべてのこれらの要素は、本明細書で以下に詳細に説明される。
【0040】
プラズマ源は、逆極性または正極性のいずれかのDCアークプラズマトーチであることに留意されたい。しかしながら、ACアークまたはRF誘導結合を含む、任意の他の熱プラズマ源が機能し得る。本明細書で報告される実験結果は、その高いエンタルピープラズマプルームによって選択された逆極性のプラズマトーチを使用して取得されたが、それは、他のプラズマトーチモデルで置き換えられ得る。正極性DCアークプラズマトーチもまた試行されて、同様の結果を与えた。プラズマトーチは、それらの高いプルーム温度および反応しないガスプルームによって、この用途に好適である。より低い融点物質に対して、および化学的汚染が問題とならない物質に対して、一般的なガスバーナなど、より手ごろな価格の加熱手段が使用され得る。
【0041】
加熱室に関して、それは、グラファイトまたは他の高温物質で作られ、図7Aに示すように、円筒または球のいずれかの形状を有する。グラファイトは、極めて高い温度に耐えることができる、手ごろな価格で一般的に入手可能な物質である。グラファイトは、従来の方法および機器を使用して容易に機械加工することができ、そのことが、グラファイトを高温処理に最適な物質にする。たとえば高品質物質の工業生産という状況において、より頑丈な恒久的設備に対して、炭化物および耐熱物質など、硬くて高融点の物質が、この用途により好適である。高温ゾーンおよびラバールノズルの壁は、常に、処理される物質の融点より高温でなければならないことに留意されたい。
【0042】
加熱室の底において、加速ノズルが設けられる。図示の実施形態では、このノズルは、古典的な先細末広のラバールノズル10または図3に示すより複雑なノズル設計13のいずれかである。しかしながら、超音速への加速は、エアロスパイク(aerospike)構成など、他のノズル設計を介して達成され得る。超音速ノズルは、流体の温度を処理される物質の融点より高く保ちながら、極めて短距離にわたって熱エネルギーを運動エネルギーに変換するように設計される。粒子に細分化をもたらすのは、粒子に高い速度差をもたらすプラズマガスの突然の加速である。ラバールノズルが熱を速度に変換するにつれて、プロセスはガスを冷却し、それによって、ノズルの出口において熱源を追加することが必要となる。細分化をもたらすために小滴とプラズマ流との間に必要な速度差は、ウェーバー数を使用して評価され得る。ウェーバー数が14より大きい場合、小滴はより微細な小滴に微粒子化される可能性が最も高い。粒子とプラズマとの間の速度差は、計算流体力学モデリング技法を使用して推定され得る。
【0043】
冷却室は、一般的に、水冷を有する単純な二重ジャケット反応器であるが、多くの他の構成が、まったく同様に機能する。冷却が、粒子が固体壁に衝突する前に粒子をそれらの凝固点以下に冷やすのに十分効果的である限り、冷却源は重要ではない。冷却室の必要長さは、粒子の過熱、その融解熱、ならびに粒子負荷の関数である。室の直径は、流れの速度ならびに熱交換の品質に影響を及ぼし、それは、それゆえ、冷却室の必要長さにも影響を及ぼす。
【0044】
粉末収集システムは、実際には、多くの方法で適用され得る。主な目的は、ガスが連続的に放出されながら、ガス流から粉末を分離して、粉末を連続的または半連続的に収集することである。実験的に試験された実施形態では、沈降室および多孔質金属フィルタが、粉末を収集してガス流を清浄にするために使用された。より一般的な方法および実績のある方法は、高効率サイクロンと、後続するHEPAフィルタまたは湿式スクラバとを設けることで構成される。粉末収集は必要であるが、それを達成するために手段は、現在の状況では重要ではない。たとえば、図1において、フィルタ処理要素として多孔質金属フィルタ6が設けられており、フィルタ処理要素は、フィルタ処理媒体が退出する流れの温度に耐えることができる限り、多孔質セラミックス、多孔質金属、または従来のHEPAフィルタで作ることができる。
【0045】
図1に示されていないが、粉末原料が、粉末供給器を使用して装置に供給される。粉末供給器は、一般的に、熱溶射産業で使用される市販の供給器である。いくつかのタイプが存在し、それらの各々は、それらの利点、欠点、および制約を有する。
【0046】
方法の可能な変形
【0047】
粒子は、逆流で、または任意の角度で供給され得る。逆流の粉末供給は、達成がより困難ではあるが、伝熱速度を高める利点を有し、したがって、粒子を融解するのに必要な滞留時間をかなり低減する。これは、必要な最小の高温ゾーン長さを低減する結果を有する。
【0048】
本主題は、粗くて角張った粉末を対象とするが、粗くて角張っていない(球状の)粉末を微細な球状粒子に細分化するためにも使用され得る。
【0049】
本例は、熱源としてプラズマを使用するが、熱源は、十分な熱出力が供給される限り、マイクロ波、誘導など、他のタイプの加熱で置き換えられ得る。
【0050】
本主題は、最初は、チタニウム合金粉末を用いて開発されたが、これは、加熱手段によって到達可能な融点を有する任意の物質に適用することができる。
【0051】
本主題は、ナノ粒子を製造するためにも使用され得る。そうするためには、さらに高い加速が必要である。これは、合金のナノ粒子はそのようにして製造され得るのに反して、蒸発法を用いてナノ粒子を製造することは不可能であるので、有利である。
【0052】
当初は意図されなかったが、本主題は、その有機不純物の粉末を清浄化するためにも使用され得る。なぜならば、プラズマの高温は、大部分の不要な有機化合物を分解させるからである。
【0053】
プラズマガス中に水素などの還元剤を追加することによって、最小の酸素取り込みで物質を処理するばかりでなく、潜在的に、処理された物質の酸素レベルを低減することも可能である。いくつかの物質、たとえば鉄などは、この効果から利益を得る可能性が他の物質より高い。
【0054】
目的の用途の一例
本例では、図1に示す実施形態が、4インチの長さを有する図7Aに示す加熱ゾーン構成を使用して試験された。使用された粉末供給器は、市販のMark XV粉末供給器であり、それは、粉末を装置内に供給するために、回転する供給スクリューと搬送ガスとを使用する。角張ったTi-6Al-4V合金の粉末が、0.65kg/hの速度で供給されたが、他の実験では、1kg/hの高さの供給速度が実行されて、比較的類似する結果を得た。
【0055】
プラズマ源は、より高い電圧に対して逆極性を有し、50kWで動作する、DCアークプラズマトーチであった。プラズマガスは、230slpmで供給されるアルゴンであった。
【0056】
粉末原料の外観が図4Aに示され、その粒度分布が図6Aに示されている。
【0057】
処理後の粉末の外観が図4Bおよび図5に示され、一方でその粒度分布が図6Bに示されている。
【0058】
他の例では、図1の全体的実施形態をすべて使用するが、種々の加熱ゾーン構成を用いて、酸素取り込みが研究された。Table 1(表1)は、3つの異なる試験に対する処理の前と後の粉末の酸素含有量を編集している。必ずしも適切ではないが、T-09は、図7Bに示す構成を使用して行われ、その他は、図7Cに示す構成を使用して行われたことに言及する必要がある。その結果から、酸素取り込みを300ppm以下で粉末を処理することが技術的に実行可能であると判断することができる。
【0059】
【表1】
【0060】
上記の説明は、実施形態の例を提供するが、説明する実施形態のいくつかの特徴および/または機能は、説明する実施形態の動作の趣旨および原理から逸脱することなく、修正形態が許容できることが諒解されよう。したがって、上記で説明されたものは、実施形態の例示であって非限定的であることが意図されており、他の変形形態および修正形態が、本明細書に添付される特許請求の範囲において定義される実施形態の範囲から逸脱することなく製造され得ることは、当業者には理解されよう。
【0061】
参考文献
[1] Peter G. Tsantrizos, Francois Allaire and Majid Entezarian, Method of Production of Metal and Ceramic Powders by Plasma Atomization”, United States Patent No. 5,707,419, January 13, 1998.
[2] Christopher Alex Dorval Dion, William Kreklewetz and Pierre Carabin, Plasma Apparatus for the Production of High Quality Spherical Powders at High Capacity”, International Patent Publication No. WO 2016/191854 A1, December 8, 2016.
[3] Method for Cost-Effective Production of Ultrafine Spherical Powders at Large Scale Using Plasma-Thrust Pulverization”, unpublished.
[4] Maher I. Boulos, Jerzy W. Jurewicz and Alexandre Auger, Process and Apparatus for Producing Powder Particles by Atomization of a Feed Material in the Form of an Elongated Member”, United States Patent No. 9,718,131 B2, August 1, 2017.
[5] Maher I. Boulos, Jerzy Jurewicz Jiayin Guo, Xiaobao Fan and Nicolas Dignard,“Plasma Synthesis of Nanopowders”, United States Patent Application Publication No. US 2007/0221635 A1, September 27, 2007.
[6] Maher I. Boulos, Christine Nessim, Christian Normand and Jerzy Jurewicz,“Process for the Synthesis, Separation and Purification of Powder Materials”, United States Patent No. 7,572,315 B2, August 11, 2009.
【符号の説明】
【0062】
1 プラズマトーチ
2 加熱室
2' 加熱室
2'' 加熱室
2''' 加熱室
3 冷却室
4 移送管
5 沈降室
6 金属フィルタ
7 供給箇所
8 プラズマジェット
9 加熱ゾーン
10 ラバールノズル
11 喉部
12 退出する流れ
13 ノズル
14 先細部分
15 喉部
16 末広部分
17 拡散器
18 誘導コイル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C