IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7330975塩素化炭化水素に基づく有機溶媒を使用したポリカーボネートの製造方法
<>
  • 特許-塩素化炭化水素に基づく有機溶媒を使用したポリカーボネートの製造方法 図1
  • 特許-塩素化炭化水素に基づく有機溶媒を使用したポリカーボネートの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】塩素化炭化水素に基づく有機溶媒を使用したポリカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/24 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
C08G64/24
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020533252
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084579
(87)【国際公開番号】W WO2019121248
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】17207886.7
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18208001.0
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】エリック、スライツ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ、シャオシン
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-100686(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0145885(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00-64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程を含んでなる、界面プロセスによるポリカーボネートの製造方法:
(a)ジフェノールまたは2つ以上の異なるジフェノールを水相へ溶解し、およびハロゲン化カルボニルを有機溶媒へ溶解する工程、
(b)水相に溶解したジフェノールまたは水相に溶解した2つ以上の異なるジフェノールを、前記有機溶媒に溶解したハロゲン化カルボニルと反応させ、前記有機溶媒に溶解したポリカーボネートを得る工程、
(c)前記有機溶媒に溶解した前記ポリカーボネートを工程(d)へ供給する工程、
(d)工程(b)で得られたポリカーボネートを前記有機溶媒から除去し、および前記有機溶媒を工程(a)へ再利用する工程、
ここで、前記有機溶媒が以下の成分を含み:
0~99.65重量%の塩化メチレン、
0~99.65重量%のクロロベンゼン、
0~99.65重量%のクロロホルム、
0.3~10重量%のクロロエタン、
0.05~7.0重量%のテトラクロロメタン、
0~2.0重量%の他の成分、
塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計が少なくとも81.00重量%であり、かつ最大99.65重量%であり、並びに クロロエタン、テトラクロロメタン、および他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼン、およびクロロホルムの含有量の合計が100重量%である。
【請求項2】
前記有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒中のテトラクロロメタンの含有量が、0.2~7.0重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%であり、およびテトラクロロメタンの含有量が0.2~7.0重量%である、ことを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)において、前記有機溶媒に溶解した得られたポリカーボネートを追加の溶媒に添加する場合、有機溶媒と得られたポリカーボネートとが互いに分離し、ここで、得られたポリカーボネートは前記有機溶媒よりも前記追加の溶媒においてより低い溶解度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)において、前記有機溶媒が、多段加熱および減圧により、場合によりベント式押出機および/または押出物蒸発器および/または発泡蒸発器と組み合わせて除去されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、前記有機溶媒が、搬送ガスを用いた噴霧乾燥により除去されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)での除去後、前記有機溶媒が、液体または気体成分をさらに除去することなく工程(a)に戻されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)での除去後、標準圧力(1013.25hPa)で135℃を超える沸点を有する成分のみが、標準圧力(1013.25hPa)で135℃以下の沸点を有する成分が除去されることなく前記有機溶媒から除去され、ここで、標準圧力(1013.25hPa)で135℃以下の沸点を有する成分は工程(a)に戻されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機溶媒が、この溶媒に関して閉鎖されている回路内で再利用され、前記方法の実行中に有機溶媒の量が増加せず、
ここで、有機溶媒の質量部当たり、500~7500の質量部のポリカーボネートが工程(a)~(d)に従って製造された期間の後にのみ、100%以下の前記有機溶媒が交換または精製されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒が、この溶媒に関して閉鎖されている回路内で再利用され、前記方法の実行中に有機溶媒の量が増加せず、
ここで、有機溶媒の質量部当たり、500~7500の質量部のポリカーボネートが工程(a)~(d)に従って製造された期間に渡って、20重量%以下の割合の前記有機溶媒を溶媒から除去し、かつ除去された有機溶媒の割合に相当し、かつ塩化メチレン、クロロベンゼン、およびクロロホルムから選択される1つ以上の成分を含んでなる溶媒混合物の量を同時に補充することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリカーボネートの製造に用いられる有機溶媒組成物であって、前記有機溶媒組成物が以下の成分を含む有機溶媒組成物
0~99.65重量%の塩化メチレン、
0~99.65重量%のクロロベンゼン、
0~99.65重量%のクロロホルム、
0.3~10重量%のクロロエタン、
0.05~7.0重量%のテトラクロロメタン、
0~2.0重量%の他の成分、
ここで、塩化メチレン、クロロベンゼン、およびクロロホルムの含有量の合計が、少なくとも81.00重量%であり、かつ最大99.65重量%であり、並びに
クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計が100重量%である。
【請求項13】
界面プロセスによりポリカーボネートを製造するための、以下の成分を含む有機溶媒の使用:
0~99.65重量%の塩化メチレン、
0~99.65重量%のクロロベンゼン、
0~99.65重量%のクロロホルム、
0.3~10重量%のクロロエタン、
0.05~7.0重量%のテトラクロロメタン、
0~2.0重量%の他の成分、
ここで、塩化メチレン、クロロベンゼン、およびクロロホルムの含有量の合計が、少なくとも81.00重量%であり、かつ最大99.65重量%であり、並びに クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計が100重量%である。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、界面プロセス(interfacial process)により、ジフェノールまたは2つ以上の異なるジフェノールおよびハロゲン化カルボニルからポリカーボネートを製造する方法に関する。本発明による方法の特徴は、有機溶媒を使用して、クロロ炭化水素または2つ以上のクロロ炭化水素の混合物に基づいて実施されることである。
【0002】
界面プロセスによるポリカーボネートの製造は、これまでに、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Polymer Reviews,9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク,ロンドン,シドニー 1964,33-70頁;D.C.Prevorsek,B.T.DebonaおよびY.Kesten,Corporate Research Center,Allied Chemical Corporation,モリスタウン,ニュージャージー 07960:“Synthesis of Poly(ester Carbonate) Copolymers”in Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,18巻,(1980)”;75-90頁,D.Freitag, U.Grigo,P.R.Muller,N.Nouvertne’,BAYER AG,“Polycarbonates”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,1 1巻,第2版,1988,651-692頁、および最終的にDres.U.Grigo,K.KircherおよびP.R-Muller,“Polycarbonate”in Becker/Braun,Kunststoff-Handbuch,3/1巻,polycarbonates,polyacetals,polyesters,cellulose esters,Carl Hanser Verlag Munich,Vienna 1992,118-145頁に開示されている。
【0003】
ポリカーボネートを製造するための界面プロセスはさらに、EP0517044A2またはEP520272A2にも開示されている。
【0004】
界面プロセスによってポリカーボネートを製造するために、最初にアルカリ水溶液または水性懸濁液に入れられたジフェノールの二ナトリウム塩、またはアルカリ性水溶液または懸濁液に最初に入れられた2つ以上の異なるジフェノールの混合物は、不活性有機溶媒またはハロゲン化カルボニル、特にホスゲンと反応させた溶媒混合物の存在下にあり、ここで、不活性有機溶媒/溶媒混合物は、水相に加えて第2の有機相を形成する。主に有機相に存在する初期オリゴカーボネートは、適切な触媒を用いて濃縮され、有機相に溶解した高分子量ポリカーボネートが得られ、ここで、分子量は、適切な連鎖停止剤(単官能フェノール)によって制御されてもよい。有機相は最終的に分離され、そしてポリカーボネートは様々なワークアップ工程によりそこから分離される。例えば、ビスフェノールAの反応は次のように表してもよい。
【化1】
【0005】
ここで、R1とR2は互いに独立して、成長するポリカーボネート鎖または連鎖停止剤を表す。
【0006】
二相界面プロセスによるハロゲン化カルボニル、特にホスゲンを使用して濃縮物の製造、例えば芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはそのオリゴマーの製造のための連続的な製造は、一般に、反応の加速および/または相分離の改善に製造のバランスに必要な量よりも多くのホスゲンを使用する必要があるという欠点がある。過剰なホスゲンは、合成の際に副生成物の形で分解される、例えば、追加の一般的な塩やアルカリ金属炭酸塩化合物である。芳香族ポリカーボネートを製造するための連続的な二相界面プロセスには、典型的には、追加されたジフェノキシドに基づいて約20mol%過剰となるホスゲンを用いる(D.Freitag,U.Grigo,P.R.Muller,N.Nouvertne’,BAYER AG,“Polycarbonates”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,1 1巻,第二版,1988,651-692頁参照)。
【0007】
本発明の文脈におけるポリカーボネートには、ホモポリカーボネートだけでなく、コポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートも含まれる。ポリカーボネートは、既知の方法で線状または分岐状であってもよい。本発明によれば、ポリカーボネートの混合物を使用することも可能である。
【0008】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性ポリカーボネートは、18000~36000g/mol、好ましくは23000~31000g/mol、特に24000~31000g/molの平均分子量Mwを有する(25℃でCHClの相対溶液粘度を測定し、100mlCHClあたり0.5gの濃度を測定することにより決定)。
【0009】
本発明に従って使用されるポリカーボネート中のカーボネート基の80mol%まで、好ましくは20~50mol%の部分は、芳香族ジカルボン酸エステル基で置き換えられていてもよい。分子鎖に組み込まれた炭酸の酸基および芳香族ジカルボン酸の酸基の両方を含む前記ポリカーボネートは、芳香族ポリエステルカーボネートと呼ばれる。本発明の文脈において、それらは、包括的用語「熱可塑性芳香族ポリカーボネート」に包含される。
【0010】
ポリカーボネートは、ジフェノール、炭酸誘導体、場合により連鎖停止剤、および場合により分岐剤から既知の方法で製造され、ポリエステルカーボネートの製造では、カーボネート構造単位が芳香族ポリカーボネート中の芳香族ジカルボン酸エステル構造単位によって置き換えられる程度により、炭酸誘導体の一部が芳香族ジカルボン酸またはジカルボン酸の誘導体に置き換えられる。
【0011】
ポリカーボネートの製造に適したジヒドロキシアリール化合物は、式(1)の化合物である:
【化2】
(式中、Zは6~30個の炭素原子を有し、1つ以上の芳香環を含んでいてもよく、置換されていてもよく、かつ架橋要素として脂肪族もしくは脂環式基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族基である)。
【0012】
式(2)のZが式(2)の基である場合が好ましい:
【化3】
(式中、
およびRは、互いに独立して、H、C~C18アルキル、C~C18アルコキシ、ClもしくはBr等のハロゲン、またはいずれの場合も任意に置換されたアリールまたはアラルキル、好ましくはHまたはC-C12アルキル、特に好ましくはHまたはC~Cアルキル、非常に特に好ましくはHまたはメチルであり、
Xは、単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~Cアルキレン、C~CアルキリデンまたはC~Cシクロアルキリデンを表し、これらはC~Cアルキルで置換されていてもよく、好ましくはメチルまたはエチルであり、またはC~C12アリーレンを表しており、これらは任意にさらなるヘテロ原子含有芳香環に縮合されていてもよい)。
【0013】
Xが単結合、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C~Cシクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SOまたは式(2a)の基を表す場合が好ましい。
【化4】
【0014】
ジフェノール(ジヒドロキシアリール化合物)の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0015】
本発明に従って使用されるポリカーボネートを製造するのに適したジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α、α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンならびにそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0016】
好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(またビスフェノールAとして公知または略してBPA)、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル))-2-プロピル]ベンゼンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(またビスフェノールTMCとして公知または略してBPTMC)である。
【0017】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0018】
これらの適切なジフェノールおよびさらなる適切なジフェノールは、例えば、US2999835A、US 3148172A、US2991273A、US3271367A、US4982014AおよびUS2999846A、ドイツ公開明細書DE1570703A1、DE 2063050A1、DE2036052A1、DE2211956A1およびDE 3832396A1、フランス特許明細書FR1561518A1、モノグラフ“H. Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク 1964,28頁,ff.;102頁,ff.”および“D.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker ニューヨーク 2000,pp.72ff.”に開示されている。
【0019】
ホモポリカーボネートの場合、1つのジフェノールのみが用いられ、コポリカーボネートの場合、2つ以上の異なるジフェノールが用いられる。用いられるジフェノールまたは用いられる2つ以上の異なるジフェノールは、合成に追加される他のすべての化学物質および補助剤と同様に、それら自体の合成、取り扱い、および保管に由来する不純物で汚染されている可能性がある。しかしながら、可能な限り最高の純度の原材料を使用することが望ましい。
【0020】
使用される分岐剤または分岐剤混合物は同じ方法で合成に添加される。典型的に使用される化合物は、トリスフェノール、クアテルフェノールまたはトリもしくはテトラカルボン酸塩の塩化アシルまたはポリフェノールもしくは塩化アシルの他の混合物である。
【0021】
分岐剤として使用可能な3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有するいくつかの化合物は、例えば、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプト-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0022】
他の三官能性化合物のいくつかは、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0023】
好ましい分岐剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールおよび1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0024】
場合により使用可能な分岐剤の量は、順に、各場合に用いられるジフェノールのmolに基づいて、0.05~2mol%であり、ここで、分岐剤は、最初にジフェノールで充填される。
【0025】
ポリカーボネートを製造するためのこれらの手段はすべて、当業者にはよく知られている。
【0026】
ポリエステルカーボネートの製造に適した芳香族ジカルボン酸は、例えば、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5’-ジカルボン酸である。
【0027】
芳香族ジカルボン酸の中で、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を使用することが特に好ましい。
【0028】
ジカルボン酸の誘導体は、ジカルボニルジハライドおよびジアルキルジカルボキシレート、特にジカルボニルジクロライドおよびジメチルジカルボキシレートである。
【0029】
カーボネート基の芳香族ジカルボン酸エステル基による置換は、本質的に化学量論的かつ定量的に進行し、したがって反応相手のモル比も最終的なポリエステルカーボネートに反映される。芳香族ジカルボン酸エステル基は、ランダムに、またはブロックごとに組み込むことができる。
【0030】
EP0304691A2から知られているポリカーボネートを製造するための連続界面プロセスにおいて、ジフェノールの水相および必要な特定量のアルカリ金属水酸化物を、スタティックミキサーを使用してチューブ内でホスゲン含有有機相と混合した。20~100mol%のホスゲン過剰は非常に高く、最初の反応工程の反応管内の滞留時間は10~75秒である。この製法は、分子量4000~12000g/molのプレポリマーのみを製造するために使用できる。それに続いて、所望の分子量に到達するために、少なくとも1つの触媒を使用してさらに濃縮しなければならない。適切な触媒は、第三級アミンおよびオニウム塩である。トリブチルアミン、トリエチルアミンおよびN-エチルピペリジンを用いることが好ましい。
【0031】
用いられるアミン触媒は、開鎖または環状であってよく、トリエチルアミンおよびN-エチルピペリジンが特に好ましい。触媒は、好ましくは、1~55重量%溶液として使用される。
【0032】
オニウム塩は、ここではNRX等の化合物を意味すると理解されるべきであり、Rはアルキルおよび/またはアリール基および/またはHであってもよく、およびXは陰イオン、例えば塩化物イオン、水酸化物イオンまたはフェノキシドイオンである。
【0033】
最大で微量(<2ppm)のアリールクロロカーボネートのみを含む、完全に反応した少なくとも二相性の反応混合物を、相分離のために沈殿させる。水性アルカリ相(反応廃水)を除去し、有機相を希塩酸および水で抽出する。組み合わされた水相は廃水ワークアップに送られ、そこで溶媒および触媒の部分がストリッピングまたは抽出によって除去され、再利用される。続いて、例えば塩酸を添加することにより、例えば6~8の特定のpHに調整した後、活性炭および水での処理により、残存する有機不純物、例えばモノフェノールおよび/または未変換ジフェノール(diphenolまたはdiphenols)を除去し、水相はクロルアルカリ電解に送られる。
【0034】
ワークアップの別の変形例では、反応廃水は洗浄相と組み合わされないが、ストリッピングまたは抽出後に溶媒および触媒残留物を除去した後、例えば塩酸を添加することによって、例えば6~8の特定のpHに調整し、活性炭での処理による残りの有機不純物、例えばモノフェノールおよび/または未変換ジフェノール(diphenolまたはdiphenols)の除去後、クロルアルカリ電解に送られる。
【0035】
ストリッピングまたは抽出により溶媒および触媒の部分を除去した後、洗浄相を場合により合成へ戻してもよい。
【0036】
ハロゲン化カルボニル、特にホスゲンは、液体または気体の形態で使用してもよく、または不活性溶媒に溶解してもよい。
【0037】
一酸化炭素と塩素からのホスゲンの製造は、例えばEP0881986A1、EP1640341A2、DE3327274A1、GB583477A、WO97/30932A1、WO96/16898A1またはUS6,713,035B1から公知である。
【0038】
従来技術に従ってポリカーボネートの製造に優先して使用可能な不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン、様々なジクロロエタンまたはクロロプロパン化合物、クロロベンゼンまたはクロロトルエンまたはこれらのクロロ炭化水素の2つ以上の混合物等のクロロ炭化水素に基づく溶媒である。トルエンもこれに関連して不活性溶媒として役立ちうる。ジクロロメタンまたはジクロロメタンとクロロベンゼンとの混合物に基づく不活性溶媒を用いることが好ましい。本発明の文脈において、前記不活性溶媒または不活性溶媒の混合物は、単数で「有機溶媒(organic solvent)」と総称され、複数で「有機溶媒(organic solvents)」と総称される。
【0039】
従来技術の製法の1つの欠点は、ポリカーボネートの製造が、品質要件を満たすポリカーボネートを得ることができるようにするために、不純物の含有量が非常に低い、すなわち高純度の有機溶媒の使用を必要とすることである。
【0040】
有機溶媒の純度に依存する品質要件は、例えば、黄色度指数(YI)等の光学特性、視覚的印象、遊離ジフェノールの残量、たとえばビスフェノールAを用いた場合のビスフェノールAの残量、およびエンドキャッピングの効率(フェノール性OH)である。遊離ジフェノールの残量(例えば、ビスフェノールAの場合は<10ppm)とフェノール性OH末端基の含有量(<200ppm)の両方をできるだけ低くするべきである。
【0041】
特に、先行技術における一般的な見方は、テトラクロロメタンの存在がポリカーボネートの光学特性を損なうということである。したがって、ポリカーボネートの製造において、テトラクロロメタンの含有量はできるだけ低く保たれるべきである。
【0042】
したがって、WO2015/119981A2は、ホスゲンの製造により、ホスゲンを用いてPCを製造する方法に導入される副生成物としてCClを製造する可能性があることを開示している。WO2015/119981A2はまた、ポリカーボネートを製造するために使用されるホスゲン中のテトラクロロメタンの含有量が10ppm以下であるべきであることを開示している。
【0043】
ポリカーボネートを製造するための有機溶媒中のクロロエタンの含有量も、得られたポリカーボネートの光学特性に重要であると考えられている。
【0044】
しかしながら、必要とされる高純度の有機溶媒を提供することは、費用がかかり、不便である。したがって、これらの有機溶媒は、特別な製法による使用または生産の前に複雑な精製を必要とし、またはより高品質の有機溶媒が用いられ、またはより頻繁な交換もしくは少なくとも汚染の際の精製が必要とされる。この精製は、例えば、高いエネルギー消費を伴う蒸留によって達成されてもよい。次に、不純物は、例えば焼却によって特別なプラントで処分するために送られなければならず、これは、特に環境汚染を回避する必要があるため、同様に費用がかかり、不便である。有機溶媒中の不純物が前記溶媒を交換しなければならないことを決定する場合、費用のかかるプラントのシャットダウンも頻繁に発生する。
【0045】
したがって、本発明は、有機溶媒に溶解したポリカーボネート、または有機溶媒に溶解した2つ以上のポリカーボネートを得るために水相に溶解したジフェノール、または水相に溶解した2つ以上の異なるジフェノールと有機溶媒に溶解したハロゲン化カルボニルとの反応において、ポリカーボネートの光学的およびレオロジー的性質を損ねることなく、塩素含有不純物の含有量が高い、特に四塩化炭素および/またはクロロエタンの含有量が高い有機溶媒を用いることを可能にするポリカーボネートの製造方法を提供することをその目的とする。特に、ポリカーボネートの黄色度指数、視覚的印象および相対溶液粘度は損なわれるべきではない。YI値は、好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.5以下、非常に特に好ましくは1.2以下でなければならない。本発明により製造されたポリカーボネートのサンプルの目視検査により試験された視覚的印象は、先行技術により製造されたポリカーボネートのサンプルのそれと同じくらい良好であるべきである。また、相対溶液粘度は標準範囲内であるべきである。
【0046】
本発明のさらなる目的は、有機溶媒の交換に必要なプラントのシャットダウンが従来技術と比較してより少ない頻度で行われていてもよく、または製造中に有機溶媒が高価なおよび不便な精製を必要としない、または製造中に、有機溶媒が部分的な除去および塩素含有不純物の含有量が低減された、特に四塩化炭素および/またはクロロエタンの含有量が低減された溶媒による置換を必要としない、ポリカーボネートの製造方法を提供することである。
【0047】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法によりその目的が達成されることが見出された。
【0048】
この目的は、特に、クロロ炭化水素または2つ以上のクロロ炭化水素に基づいて、およびテトラクロロメタンの含有量が0.05~7重量%であり、およびクロロエタンの含有量が0.3~10重量%である有機溶媒のポリカーボネートの製造における使用によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1
図2
【0050】
有機溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルムまたはこれらの塩素化炭化水素の混合物を含んでなる群から選択されるクロロ炭化水素に基づく溶媒である。
【0051】
本発明による有機溶媒は、二次成分とも呼ばれる1つ以上の他の成分も含む。二次成分は、完全性を主張するものではないが、例えば、水、トルエン、スチレン、メタノール、ベンゼン、o-キシレンまたはテトラクロロエテンである。
【0052】
詳細には、界面プロセスによってポリカーボネートを製造するための本発明による方法は、少なくとも以下の工程を含んでなり:
(a)ジフェノールまたは2つ以上の異なるジフェノールを水相へ溶解し、ハロゲン化カルボニルを有機溶媒へ溶解する工程、
(b)水相に溶解したジフェノールまたは水相に溶解した2つ以上の異なるジフェノールを、前記有機溶媒に溶解したハロゲン化カルボニルと反応させ、前記有機溶媒に溶解したポリカーボネートを得る工程、
(c)前記有機溶媒に溶解したこのポリカーボネートを工程(d)へ供給する工程、
(d)工程(b)で得られたポリカーボネートを前記有機溶媒から除去し、および前記有機溶媒を工程(a)へ再利用する工程、
ここで、前記有機溶媒は以下の成分を含み:
0~99.65重量%の塩化メチレン、
0~99.65重量%のクロロベンゼン、
0~99.65重量%のクロロホルム、
0.3~10重量%のクロロエタン、
0.05~7.0重量%のテトラクロロメタン、
0~2.0重量%の他の成分、
塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計が少なくとも81.00重量%であり、かつ最大99.65重量%であり、並びに
クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計が100重量%である。有機溶媒は、塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの成分から選択される少なくとも1つの成分を常に含む。
【0053】
工程(b)で得られたポリカーボネートは、さらなる処理工程の後に、顆粒として、または粉末として得られてもよい。
【0054】
したがって、有機溶媒中のクロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計は、少なくとも0.35重量%であり、かつ最大19.0重量%である。
【0055】
本発明によれば、クロロベンゼンとクロロホルムの含有量の合計に対する塩化メチレンの含有量が少なくとも98.0~99.999重量%、好ましくは99.0~99.995重量%であることが好ましい。
【0056】
あるいは、本発明によれば、クロロホルムの含有量に対する塩化メチレンおよびクロロベンゼンの含有量の合計が、少なくとも98.0~99.999重量%、好ましくは99.0~99.995重量%であることが好ましい。
【0057】
クロロベンゼンの含有量に対する塩化メチレンの含有量の比率は、40重量%の塩化メチレン:60重量%のクロロベンゼン~60重量%の塩化メチレン:40重量%のクロロベンゼンであり、好ましくは45重量%の塩化メチレン:55重量%のクロロベンゼン~55重量%の塩化メチレン:45重量%のクロロベンゼンであり、特に好ましくは、48重量%の塩化メチレン:52重量%のクロロベンゼン~52重量%の塩化メチレン:48重量%のクロロベンゼンであり、非常に特に好ましくは、49重量%の塩化メチレン:51重量%のクロロベンゼン~51重量%の塩化メチレン:49重量%のクロロベンゼンであり、特に、50重量%の塩化メチレン:50重量%のクロロベンゼンである。
【0058】
本発明によれば、有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%、好ましくは2.0~7.0重量%、特に好ましくは2.5~6.0重量%である場合も好ましい。
【0059】
本発明によれば、有機溶媒中のテトラクロロメタンの含有量が0.2~7.0重量%、好ましくは0.5~6.0重量%、特に好ましくは1.0~4.0重量%である場合がさらに好ましい。
【0060】
本発明によれば、有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%であり、およびテトラクロロメタンの含有量が0.2~7.0重量%である場合が特に好ましく、好ましくは、クロロエタンの含有量は、2.0~7.0重量%であり、およびテトラクロロメタンの含有量は、0.5~6.0重量%であり、特に好ましくは、クロロエタンの含有量は、2.5~6.0重量%であり、テトラクロロメタンの含有量は、1.0~4.0重量%である。
【0061】
上記のすべての場合において、クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計は、100重量%である。
【0062】
本発明による方法は、好ましくは、工程(d)における有機溶媒から得られたポリカーボネートの除去後、液体または気体成分をさらに除去することなく、有機溶媒が工程(a)に戻されるというさらなる特徴を有する。
【0063】
得られたポリカーボネートと有機溶媒とは、工程(d)における様々な方法によって互いに分離されていてもよい。
【0064】
したがって、有機溶媒に溶解している得られたポリカーボネートを追加の溶媒に添加する場合、得られたポリカーボネートと有機溶媒とが互いに分離されてもよく、ここで、得られたポリカーボネートは、有機溶媒よりもこの追加の溶媒への溶解性が低く、その結果、得られたポリカーボネートは溶液から沈殿し、および除去されてもよい。前記除去は、例えば、EP1339775A1、EP0488190A1、EP0095670A2、EP116836A2に開示されている。これにより、一般に、粉末の形態のポリカーボネートが得られる。
【0065】
得られたポリカーボネートおよび有機溶媒は、工程(d)で有機溶媒が多段加熱および減圧により、場合によりベント式押出機および/または押出物蒸発器(extrudate evaporators)および/または発泡体蒸発器(foam evaporators)と組み合わせて除去される際、別法として互いに分離されてもよい。前記除去は、例えば、EP1094873A1、EP1088019A2、EP2081975A1、EP1165302A1、EP03166771A1、EP1740638A1、EP1265944A1、EP1242156A1に開示されている。これにより、一般に、顆粒の形態のポリカーボネートが得られる。
【0066】
得られたポリカーボネートおよび有機溶媒は、工程(d)で有機溶媒が搬送ガス、特に蒸気または窒素を用いた噴霧乾燥により除去される場合、別法として互いに分離されてもよい。前記除去は、例えば、WO2002044245A1、EP0256003A1、EP0003996A1、EP0616002A1、EP0783011A2に開示されている。これにより、一般に、粉末の形態のポリカーボネートが得られる。
【0067】
本発明による方法は、好ましくは、工程(b)で得られたポリカーボネートを工程(d)において有機溶媒から除去した後、標準圧力(1013.25hPa)で135℃未満または等しい沸点を有する成分を除去することなく、標準圧力(1013.25hPa)で沸点が135℃を超える成分のみが、標準圧力(1013.25hPa)で135℃以下の沸点を有する成分が有機溶媒から除去されるというさらなる特徴を有し、工程(a)に戻され、標準圧力(1013.25hPa)で135℃を超える沸点を有する成分は焼却または他の処分のために送られる。
【0068】
本発明による方法は、有機溶媒が、この溶媒に関して閉鎖されている回路内で再利用されるというさらなる特徴を有する。したがって、溶媒の質量は、方法の実行中に増加せず、好ましくは一定に保たれる。
【0069】
本発明によれば、有機溶媒の質量部当たり、500~7500、好ましくは1000~5000、特に好ましくは1250~3000の質量部のポリカーボネートが工程(a)~(d)に従って製造された期間の後にのみ、100%以下、好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下、非常に特に好ましくは30%以下の有機溶媒が交換または精製されることが好ましい。
【0070】
これにより、有機溶媒を交換するための2つのプラント停止の間の時間を、従来技術と比較して2倍よりも大きくすることが可能になる。
【0071】
本発明によれば、有機溶媒の質量部当たり、500~7500、好ましくは1000~5000、特に好ましくは1250~3000の質量部のポリカーボネートが工程(a)~(d)に従って製造された期間に渡って、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、非常に特に好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下の割合の有機溶媒を前記溶媒から除去し、かつ除去された有機溶媒の割合に相当し、かつ塩化メチレン、クロロベンゼン、およびクロロホルムから選択される1つ以上の成分を含んでなる溶媒混合物の量を同時に補充する場合、代替としてまたは追加として好ましい。本発明によれば、再添加される溶媒混合物の塩化メチレンとクロロベンゼンとクロロホルムの混合比が、開始時期に存在していた有機溶媒の塩化メチレンとクロロベンゼンとクロロホルムの混合比に対応する場合が好ましい。
【0072】
このようにして、一方では、従来技術と比較して、2つのプラント停止の間の時間がさらに長くなり、他方で、交換される不純な有機溶媒の量が非常に低く保たれる。
【0073】
好ましい変形において、本発明による方法は、工程(b)で得られたポリカーボネートを工程(d)の有機溶媒から除去した後、有機溶媒をさらに精製することなく工程(a)に戻すことを特徴とする。特に、有機溶媒は、液体または気体成分、特にテトラクロロメタンまたはクロロエタンの除去のためのさらなる蒸留による精製、または液体または気体成分、特にテトラクロロメタンまたはクロロエタンの除去のための別の方法に供されない。しかしながら、ふるいまたはフィルターによる固体の有機溶媒の精製が可能である。
【0074】
あるいはまたは追加で、本発明による方法はさらに、工程(a)において、1つのジフェノールまたは2つ以上の異なるジフェノールのモル比の合計に対するハロゲン化カルボニルのモルの過剰量が、8~30%、好ましくは10~20%、特に好ましくは11~14%であることを特徴とする。
【0075】
あるいはまたは追加で、本発明による方法は、工程(a)において、水相中のジフェノールの含有量または2つ以上の異なるジフェノールの含有量の合計が、10~20重量%、好ましくは14~18重量%、特に好ましくは15~16重量%であることを特徴とする。
【0076】
あるいはまたは追加で、本発明による方法は、水相がアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物水溶液であることを特徴とする。
【0077】
あるいはまたは追加で、本発明による方法は、水相中の工程(a)におけるpHが10.0~13.0、好ましくは11.0~12.0、特に好ましくは11.3~11.8であることを特徴とする。
【0078】
あるいはまたは追加で、本発明による方法は、工程(c)において、有機溶媒中のポリカーボネートの含有量が10~30重量%、好ましくは12~25重量%、特に好ましくは14~20重量%であることを特徴とする。
【0079】
あるいはまたは追加で、本発明による方法は、ハロゲン化カルボニルが、カルボニルジハライド、ジホスゲン、トリホスゲン、好ましくはカルボニルジハライド、特に好ましくはホスゲンを含んでなる群から選択されることを特徴とする。
【0080】
本発明の方法により製造されたポリカーボネートは、射出成形によりこれらのポリカーボネートから製造された成形品の固有の色を示し、これは従来技術の方法により製造されたポリカーボネートで作られた射出成形品の固有の色と同じくらい良好である。透明な新たに射出成形された成形品のこの固有の色は、定義された厚さの、射出成形されたプレートにおいてASTM E313に従ったいわゆる「黄色度」(Y.I.)によって決定される非常に低い黄色によって特徴付けられる。ポリカーボネートのY.I.のすべての報告値はこの決定方法に関連する。本発明に従って製造されたポリカーボネートのYI値は、2.0以下、好ましくは1.5以下である。
【0081】
本発明の方法により製造されたポリカーボネートはまた、先行技術の方法により製造されたポリカーボネートと同じように良好および標準に適合する相対溶液粘度を有する。これらの標準的な相対溶液粘度は15~40、好ましくは20~35の範囲である。相対溶液粘度は、CHCl中25℃、CHCl 100mlあたりポリカーボネート0.5gの濃度で、Proline PV24タイプのLauda Ubbelohde粘度計を使用して測定することにより決定された。
【0082】
したがって、本発明は、本発明による方法によって製造されたポリカーボネートをさらに提供する。このポリカーボネートは、とりわけ、2.0以下、好ましくは1.5以下のYIを特徴とする。本発明によるポリカーボネートはまた、それが15~40、好ましくは20~35の相対溶液粘度を有することを特徴とする。
【0083】
本発明はさらに、本発明による方法を実施するのに適した有機溶媒にも関する。この有機溶媒は以下の成分を含む:
0~99.65重量%の塩化メチレン、
0~99.65重量%のクロロベンゼン、
0~99.65重量%のクロロホルム、
0.3~10重量%のクロロエタン、
0.05~7.0重量%のテトラクロロメタン、
0~2.0重量%の他の成分、
ここで、塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計は、少なくとも81.00重量%であり、かつ最大99.65重量%であり、並びに
クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計は100重量%である。この有機溶媒は、塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの成分から選択される少なくとも1つの成分を常に含む。
【0084】
したがって、有機溶媒中のクロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計は、少なくとも0.35重量%であり、かつ最大19.0重量%である。
【0085】
本発明によれば、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計に対する塩化メチレンの含有量は、少なくとも98.0~99.999重量%、好ましくは99.0~99.995重量%である。
【0086】
あるいは、本発明によれば、クロロホルム含有量に対する塩化メチレンおよびクロロベンゼンの含有量の合計が、少なくとも98.0~99.999重量%、好ましくは99.0~99.995重量%であることが好ましい。
【0087】
クロロベンゼンの含有量に対する塩化メチレンの含有量の比率は、40重量%の塩化メチレン:60重量%のクロロベンゼン~60重量%の塩化メチレン:40重量%のクロロベンゼンであり、好ましくは45重量%の塩化メチレン:55重量%のクロロベンゼン~55重量%の塩化メチレン:45重量%のクロロベンゼンであり、特に好ましくは、48重量%の塩化メチレン:52重量%のクロロベンゼン~52重量%の塩化メチレン:48重量%のクロロベンゼンであり、非常に特に好ましくは、49重量%の塩化メチレン:51重量%のクロロベンゼン~51重量%の塩化メチレン:49重量%のクロロベンゼンであり、特には、50重量%の塩化メチレン:50重量%のクロロベンゼンである。
【0088】
本発明によれば、有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%、好ましくは2.0~7.0重量%、特に好ましくは2.5~6.0重量%である場合も好ましい。
【0089】
本発明によれば、有機溶媒中のテトラクロロメタンの含有量が0.2~7.0重量%、好ましくは0.5~6.0重量%、特に好ましくは1.0~4.0重量%である場合がさらに好ましい。
【0090】
本発明によれば、有機溶媒中のクロロエタンの含有量が0.9~8.0重量%およびテトラクロロメタンの含有量が0.2~7.0重量%、好ましくは、クロロエタンの含有量が2.0重量%~7.0重量%およびテトラクロロメタンの含有量が0.5重量%~6.0重量%、特に好ましくは、クロロエタンの含有量が2.5重量%~6.0重量%およびテトラクロロメタンの含有量が1.0重量%~4.0重量%である場合が特に好ましい。
【0091】
上記のすべての場合において、クロロエタン、テトラクロロメタンおよび他の成分の含有量の合計を加えた塩化メチレン、クロロベンゼンおよびクロロホルムの含有量の合計は100重量%である。
【0092】
前記有機溶媒は、費用のかかる複雑な精製なしに入手可能であり、クロロエタンまたはテトラクロロメタンの含有量が低い有機溶媒よりも安価である。しかしながら、それは、良好な光学特性を有するポリカーボネート、特に2.0以下、好ましくは1.5以下のYIを有するポリカーボネートの製造のために、クロロエタンまたはテトラクロロメタンのより低い含有量を有する有機溶媒と同様に適切である。
【0093】
本発明はまた、界面プロセスによりポリカーボネートを製造するための本発明による有機溶媒の使用を提供する。
【実施例
【0094】
本発明は、以下の実施例を参照して説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
以下に記載される実験は、界面プロセスによりポリカーボネートを製造するための連続運転プラントで実施された。
【0096】
例1-2、ポリカーボネートの実験室での連続生産
【0097】
実験室試験は、ポンプと攪拌反応器を組み合わせて連続モードで実施された。すべての実験で、65.8g/hのガス状ホスゲンをTピースに772g/hの有機溶媒(組成は表1を参照)に-7℃で溶解した。反応の終わりに15重量%のポリカーボネート溶液が得られるように溶媒の量を計算した。連続的に供給されるホスゲン溶液を、30℃に予熱された912g/hの15重量%のアルカリ性BPA水溶液(BPA1モルあたり2モルのNaOH)と、別のTピースで接触させた。このBPA溶液を、ステンレス鋼フィルター(孔径60μm)を介してホスゲン溶液に分散させた。反応混合物は、反応ポンプの終わりにすべてのホスゲンが反応するまで、25℃に温度制御されたFink HMR040混合ポンプに通された。このポンプの下流に3.29g/hのp-tert-ブチルフェノールを上記の溶媒混合物中の3重量%溶液として連鎖停止剤として添加し、さらに25℃のHMR040ポンプで、得られた混合物を28.32g/hの32重量%の水酸化ナトリウム溶液と反応させた。
【0098】
その下流には、浸水モード(flooded mode)で稼働し、滞留時間が600秒のステンレス鋼製のバッフルおよびしたがって反応混合物の搬送と分散用の2つのギアポンプを有するTectrion GmbHの2つのガラス攪拌タンクがあった。第2の撹拌タンクには加えられたのは、0.679g/時の触媒(純粋なクロロベンゼンに溶解された10重量%のN-エチルピペリジン)であった。反応終了時におけるpHは約11.5であった。
【0099】
このようにして、有機溶液中の156g/hのポリカーボネートを反応からの水相と共に、この水相を除去するために相分離容器に連続的に通した。ポリカーボネート溶液を10重量%のHClで洗浄し、次に乾燥した。
【0100】
得られたポリカーボネートは、以下の特性を有していた:相対溶液粘度27/フェノール性OH末端基155[ppm]/DPC<2[ppm]/BPA2[ppm]/フェノール2[ppm]。システムの反応性は、遊離ビスフェノールAの残量およびエンドキャッピングの効率(フェノール性OH)によって決定された。これらの定性的パラメーターに対する溶媒組成の影響は検出されなかった。
【0101】
ポリカーボネートの製造に使用される有機溶媒の関数としてのポリカーボネートのYI値を表1において報告する。
【0102】
例3-9、ポリカーボネートの連続生産
【0103】
上述の条件に従って溶媒および製造体制の実行の影響を決定するために、さまざまな大規模産業プラントでさらなる実験が決定され、製法の安定性と製品品質の両方が決定された。
【0104】
例3~9の水相として用いられたのは、2.03のNaOH:BPAモル比を有するBPA水溶液であった。有機相に用いられた溶媒は、いずれの場合にも、表2に報告されているような混合物であり、これにホスゲンが添加された。反応相手はノズルを介して分散され、ノズルは水中油型分散液を生成するように事前設定された。反応温度は、タンク反応器の再循環ループ内の冷却器によって40℃に設定され、遅延反応器にNaOHを添加して、反応の最後でpHが11.5になるようにpHが調整された。最初の遅延反応器にp-tert-ブチルフェノールを添加して鎖長を調整し、残りの量の反応性塩素末端基を反応させるために、N-エチルピペリジンを2番目の遅延反応器に触媒として添加した。異なるサイズの産業プラントでの実験の比較のために、ビスフェノレート溶液10000kgあたりの添加量が報告されている。
【0105】
以下の溶液が用いられた:
ビスフェノラート水溶液(溶液の総重量に対して15.55重量%のBPA、2.03mol水酸化ナトリウム水溶液/1molBPA)、
32重量%のNaOH水溶液、
表2の混合溶媒中の15重量%のp-tert-ブチルフェノール溶液、
触媒溶液として、塩化メチレン中7.5重量%のN-エチルピペリジン。
【0106】
添加量は典型的に以下の通りであった:
10000kgのBPA溶液、
767kgのホスゲン、
7960kgの溶剤、
465kgのNaOH溶液、
286kgのp-tert-ブチルフェノール溶液、
182kgのN-エチルピペリジン溶液。
【0107】
本発明に従って製造されたポリカーボネートが非常に優れたYI値を有することは明らかである。例1および2からの実験室サンプルは視覚的に評価され、図1および2に報告されている。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
図1
図2