(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】エンジンの電子制御スロットル装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/30 20060101AFI20230815BHJP
F02D 9/00 20060101ALI20230815BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01B7/30 M
F02D9/00 A
G01D5/20 K
(21)【出願番号】P 2020537977
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031215
(87)【国際公開番号】W WO2020039563
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】河本 義信
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】田邉 英治
【審判官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-343878(JP,A)
【文献】特開2017-142100(JP,A)
【文献】特開2000-159037(JP,A)
【文献】特開平9-105993(JP,A)
【文献】特開2009-23558(JP,A)
【文献】特開2012-161113(JP,A)
【文献】特表2007-532872(JP,A)
【文献】国際公開第2017/144638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転を駆動ギヤから中間ギヤを介して被動ギヤに伝達し、該被動ギヤに連結されたスロットル軸を介してケーシングのバルブボディに形成されたスロットルボア内のスロットル弁を開閉駆動する一方、前記スロットル軸と共に回転する励起導体と相対向するように励磁導体及び信号検出導体が設けられた基板を配設してなるスロットルセンサを備えたエンジンの電子制御スロットル装置において、
前記中間ギヤは、前記駆動ギヤと噛合する大径の入力ギヤ、及び前記被動ギヤと噛合する小径の出力ギヤからなり、前記スロットル軸線方向において、前記被動ギヤの励起導体が形成された面である導体形成面は、接触防止のための僅かな間隙を介して前記中間ギヤの前記入力ギヤに近接してなり、
前記励磁導体及び前記信号検出導体は、前記スロットル軸の回転に伴って前記励起導体が位置変位する角度領域と対応するように前記スロットル軸の軸線を中心とした扇形をなし、且つ前記中間ギヤに対して、前記駆動ギヤとは反対側に位置するように前記基板上に設けられ、
前記基板は、スロットル軸線方向において
、前記被動ギヤの前記導体形成面に対して所定の微小ギャップを形成し、前記中間ギヤ
の前記入力ギヤと互いに重なり合う位置関係で配設されると共に、前記
入力ギヤとの干渉を回避する第1の逃げ部が形成され、
前記第1の逃げ部は、前記励磁導体及び前記信号検出導体の形成領域を前記基板上に残した上で、前記
入力ギヤの外周と対応する円弧状をなしている
ことを特徴とするエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項2】
前記励磁導体及び前記信号検出導体は、前記スロットルボア内を流れる吸気の流通方向において前記スロットル軸の軸線を挟んだ両方向に60°ずつ、計120°の領域に扇状をなすように形成され、且つ全ての領域が前記スロットル軸の軸線よりも前記中間ギヤとは反対側に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項3】
前記基板は、前記スロットルボア内を流れる吸気の流通方向において前記スロットル軸の軸線の両側に余剰領域が形成され、前記余剰領域に前記スロットルセンサの制御回路の電子部品が実装されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項4】
前記バルブボディは、吸気流通方向に沿った筒状をなす前記スロットルボアの端部に接続部が設けられると共に、前記スロットルボアに隣接して前記モータが配設され、
前記ケーシングのギヤ収容室は、内部に前記駆動ギヤ、前記中間ギヤ及び前記被動ギヤが収容されると共に、吸気流通方向と直交するギヤ列方向に沿った一側方に延設されて、前記バルブボディの接続部との間にデッドスペースを形成し、
前記基板は、前記バルブボディの接続部側の箇所に前記第1の逃げ部から連続するように端子接続部が延設され、該端子接続部に、前記デッドスペースに臨むように電源供給端子及び信号出力端子が設けられてコネクタが構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至
3の何れか1項に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項5】
前記ケーシングのギヤ収容室は、内部に前記駆動ギヤ、前記中間ギヤ及び前記被動ギヤが収容されると共に、一側方に開放された開口部にカバーが配設されて四隅をボルトにより締結されて密閉され、
前記基板は、前記被動ギヤ側の2箇所の締結箇所を避けるように、それぞれ角部を切り欠く第2の逃げ部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【請求項6】
前記励起導体は、前記被動ギヤ上に直接的に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載のエンジンの電子制御スロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによりスロットル弁を開閉駆動する一方、スロットル開度をインダクティブ式のスロットルセンサにより検出する電子制御スロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクセルワイヤーを介してスロットル弁を機械的に開閉駆動するスロットル装置では、アクセル操作量とスロットル開度との関係が一義的に決定されるため、エンジン性能や排ガス特性の面で改良の余地があった。そこで、アクセル操作量等から算出した目標スロットル開度に基づき、モータによりスロットル弁を開閉駆動する電子制御スロットル装置が実用化されている。この種のスロットル装置を機能させるには、目標スロットル開度を実際のスロットル開度と比較する必要があるため、例えば特許文献1に記載のスロットル装置では、スロットル開度の検出のためにインダクティブ式のスロットルセンサが備えられている。
【0003】
図8は特許文献1のスロットル装置を示す断面図である。スロットル装置101のケーシング2のバルブボディ3には、筒状のスロットルボア3a内を横切るようにスロットル軸6が配設され、スロットル軸6に連結されたスロットル弁8の開度変更に応じてエンジンへの吸入空気が調整される。バルブボディ3には隣接してギヤ収容室4が形成されて図示しないカバーにより密閉され、ギヤ収容室4内にはスロットル軸6の一端が突出して被動ギヤ14が固定されている。
【0004】
バルブボディ3の一側にはモータ15が取り付けられ、モータ15の出力軸15aはギヤ収容室4内に突出して駆動ギヤ16が固定され、駆動ギヤ16は中間ギヤ17を介して被動ギヤ14と噛合している。従って、モータ15の回転が駆動ギヤ16、中間ギヤ17及び被動ギヤ14を介して減速されつつスロットル軸6に伝達され、モータ15の回転方向に対応してスロットル弁8が開閉駆動される。
【0005】
全体としてインダクティブ式のスロットルセンサ102は、励起導体が設けられたロータ103と、励磁導体及び信号検出導体が設けられた基板104とからなる。被動ギヤ14の側面から支持スタンド105を介してロータ103が支持され、ギヤ収容室4のカバーの内側面に基板104が取り付けられ、結果としてロータ103側の励起導体と基板104側の励磁導体及び信号検出導体とが相対向している。
【0006】
外部からの給電により基板104の励磁導体には交流電流が流され、それに応じてロータ103の励起導体に電流が励起される。励起された電流により信号検出導体には交流電流が励起され、この交流電流に基づき、ロータ103の回転角度ひいてはスロットル開度と相関するスロットル開度信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のスロットル装置は以上のように構成されているが、スロットルセンサ102の周辺に生じる無駄なスペースにより小型化し難いという問題があった。
【0009】
即ち、上記のような電流の励起作用を生起させるには、励起導体と励磁導体及び信号検出導体とを微小なギャップを介して相対向させる必要がある。しかし、カバーに設けられた基板104に対して被動ギヤ14の側面は、スロットル軸6の軸線L1に沿ったスロットル軸線方向に離間しているため、被動ギヤ14の側面に直接ロータ103を取り付けた場合には励起導体を正規位置に保持できない。そこで特許文献1の技術では、支持スタンド105によりロータ103を嵩上げして基板104に接近させているが、結果としてスロットル軸線方向において、支持スタンド105の高さH相当分だけスロットル装置101の外寸が増加してしまう。
【0010】
このような不具合の対策として、支持スタンド105の高さを縮小してロータ103を被動ギヤ14に接近させると共に、ロータ103とのギャップを保ちつつ基板104も被動ギヤ14に接近させることが考えられる。しかし、この場合には、スロットル軸線方向において基板104と中間ギヤ17とが互いに重なり合う位置関係となって干渉してしまうため、基板104を中間ギヤ17の軸線L2から離間する方向に位置変更する新たな対策が必要になる。そして、基板104と共にロータ103も位置変更する必要が生じるため、結果としてスロットル軸6及び同軸6上の全ての部材を中間ギヤ17の軸線L2から離間させることになり、各ギヤの列設方向に相当するギヤ列方向においてスロットル装置101の外寸が増加してしまう。
【0011】
以上のように特許文献1のスロットル装置101では小型化し難いため、スロットル装置の設置スペースに余裕がほとんどない二輪車に適用する場合は無論のこと、相対的に設置スペースに余裕がある4輪車用に適用する場合であっても、さらなる小型化が要望されていた。
【0012】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、スロットルセンサを構成する励起導体と励磁導体及び信号検出導体とを正規位置で相対向させて良好なスロットル開度の検出機能を確保した上で、スロットル軸線方向及びギヤ列方向の何れにおいても外寸を縮小して小型化を達成することができるエンジンの電子制御スロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの電子制御スロットル装置は、モータの回転を駆動ギヤから中間ギヤを介して被動ギヤに伝達し、被動ギヤに連結されたスロットル軸を介してケーシングのバルブボディに形成されたスロットルボア内のスロットル弁を開閉駆動する一方、スロットル軸と共に回転する励起導体と相対向するように励磁導体及び信号検出導体が設けられた基板を配設してなるスロットルセンサを備えたエンジンの電子制御スロットル装置において、中間ギヤは、駆動ギヤと噛合する大径の入力ギヤ、及び被動ギヤと噛合する小径の出力ギヤからなり、スロットル軸線方向において、被動ギヤの励起導体が形成された面である導体形成面は、接触防止のための僅かな間隙を介して中間ギヤの入力ギヤに近接してなり、励磁導体及び信号検出導体が、スロットル軸の回転に伴って励起導体が位置変位する角度領域と対応するようにスロットル軸の軸線を中心とした扇形をなし、且つ中間ギヤに対して、駆動ギヤとは反対側に位置するように基板上に設けられ、基板が、スロットル軸線方向において、被動ギヤの導体形成面に対して所定の微小ギャップを形成し、中間ギヤと互いに重なり合う位置関係で配設されると共に、中間ギヤとの干渉を回避する第1の逃げ部が形成され、第1の逃げ部が、励磁導体及び信号検出導体の形成領域を基板上に残した上で、中間ギヤの外周と対応する円弧状をなしていることを特徴とする(請求項1)。
その他の態様として、励磁導体及び信号検出導体が、スロットルボア内を流れる吸気の流通方向においてスロットル軸の軸線を挟んだ両方向に60°ずつ、計120°の領域に扇状をなすように形成され、且つ全ての領域がスロットル軸の軸線よりも中間ギヤとは反対側に位置していることを特徴とする(請求項2)。
その他の態様として、基板が、スロットルボア内を流れる吸気の流通方向においてスロットル軸の軸線の両側に余剰領域が形成され、余剰領域にスロットルセンサの制御回路の電子部品が実装されていることを特徴とする(請求項3)。
【0015】
その他の態様として、バルブボディが、吸気流通方向に沿った筒状をなすスロットルボアの端部に接続部が設けられると共に、スロットルボアに隣接してモータが配設され、ケーシングのギヤ収容室が、内部に駆動ギヤ、中間ギヤ及び被動ギヤが収容されると共に、吸気流通方向と直交するギヤ列方向に沿った一側方に延設されて、バルブボディの接続部との間にデッドスペースを形成し、基板が、バルブボディの接続部側の箇所に第1の逃げ部から連続するように端子接続部が延設され、端子接続部に、デッドスペースに臨むように電源供給端子及び信号出力端子が設けられてコネクタが構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0016】
その他の態様として、ケーシングのギヤ収容室が、内部に駆動ギヤ、中間ギヤ及び被動ギヤが収容されると共に、一側方に開放された開口部にカバーが配設されて四隅をボルトにより締結されて密閉され、基板が、被動ギヤ側の2箇所の締結箇所を避けるように、それぞれ角部を切り欠く第2の逃げ部が形成されていることが好ましい(請求項5)。
その他の態様として、励起導体が、被動ギヤ上に直接的に設けられていることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエンジンの電子制御スロットル装置によれば、スロットルセンサを構成する励起導体と励磁導体及び信号検出導体とを正規位置で相対向させて良好なスロットル開度の検出機能を確保した上で、スロットル軸線方向及びギヤ列方向の何れにおいても外寸を縮小して小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のエンジンの電子制御スロットル装置を示す斜視図である。
【
図2】カバー及び基板を取り外した電子制御スロットル装置を示す分解斜視図である。
【
図3】電子制御スロットル装置を示す
図2のIII-III線断面図である。
【
図4】電子制御スロットル装置を示す
図3のIV-IV線断面図である。
【
図6】スロットルセンサ周辺の詳細を示す
図3の部分拡大断面図である。
【
図7】基板上の励磁導体及び信号検出導体の形成領域を変更した別例を示す
図5に対応する図である。
【
図8】特許文献1の電子制御スロットル装置を示す
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を単一のスロットルボアを有する二輪車用エンジンの電子制御スロットル装置(以下、単にスロットル装置と称することもある)に具体化した一実施形態を説明する。
【0020】
図1は本実施形態のエンジンの電子制御スロットル装置を示す斜視図、
図2はカバー及び基板を取り外した電子制御スロットル装置を示す分解斜視図、
図3は電子制御スロットル装置を示す
図2のIII-III線断面図、
図4は電子制御スロットル装置を示す
図3のIV-IV線断面図である。
【0021】
図2に示すように、スロットル装置1のケーシング2は、筒状のスロットルボア3aが形成されたバルブボディ3と内部にギヤ列が収容されるギヤ収容室4とからなり、これらの部材3,4がアルミダイキャストにより一体成型されている。なお、ケーシング2の材質はこれに限ることなく任意に変更可能である。
【0022】
図3,4に示すように、バルブボディ3のスロットルボア3aの周囲にはボルト孔3cが貫設された4つのフランジ3bが形成され、各ボルト孔3cを介して図示しないボルトによりスロットル装置1がエンジンのマニホールドに組み付けられる。また、バルブボディ3の他端は筒状のホース接続部3dとして一側方(
図4の下方)に突出し、図示しないエアクリーナからのホースが接続される。このホース接続部3dが本発明の接続部として機能する。エンジンへの組付状態では、スロットルボア3aが吸気通路の一部としてエンジンへの吸入空気を案内する機能を奏し、以下、スロットルボア3aの長手方向を吸気流通方向と称する。
【0023】
バルブボディ3には、スロットルボア3a内を横切るようにスロットル軸6が配設され、スロットル軸6の両端はベアリング7により回転可能に支持されている。以下、スロットル軸6の軸線L1に沿った方向をスロットル軸線方向と称する。スロットルボア3a内においてスロットル軸6にはスロットル弁8がビス9により連結され、スロットル軸6の回転に伴ってスロットル弁8の開度が変更され、スロットルボア3a内を流通する吸入空気が調整される。
【0024】
図2,3に示すように、スロットル軸6の一端はバルブボディ3に隣接して形成されたギヤ収容室4内に突出し、ギヤ収容室4は一側方に向けて開放された略長方形状をなし、四隅に形成されたフランジ4aには雌ネジ4bが形成されている。ギヤ収容室4の開口部には略長方形状のカバー10が配設され、四隅に貫設されたボルト孔10aを介してボルト11がギヤ収容室4の雌ネジ4bにそれぞれ螺合している。これによりカバー10が締結されてギヤ収容室4を密閉しており、このボルト11が本発明の締結部材として機能する。
【0025】
ギヤ収容室4内にはスロットル軸6を取り巻くように捩りバネ13が配設され、スロットル軸6の端部には被動ギヤ14が固定されている。
図2に示すように被動ギヤ14は、スロットル弁8の開閉に要求される角度領域と対応する扇状をなし、その回動に伴ってギヤ収容室4内に設けられた図示しない全開ストッパ及び全閉ストッパにそれぞれ当接し、これによりスロットル弁8の開度が全開位置と全閉位置との間で規制される。
【0026】
図示はしないが、捩りバネ13の一端は被動ギヤ14に掛止され、捩りバネ13の他端はケーシング2に掛止され、これによりスロットル弁8が全開位置と全閉位置との間の所定開度に付勢されている。後述するモータ15の故障等によりスロットル弁8を駆動不能に陥った場合、捩りバネ13によりスロットル弁8が所定開度に保持され、リンプホームモードによる車両走行に必要な吸入空気量、ひいてはエンジン出力が確保される。
但し、捩りバネ13の付勢状態はこれに限らず、例えばスロットル弁8の全閉位置に付勢するようにしてもよい。
【0027】
図3に示すように、バルブボディ3の一側にはスロットルボア3aに隣接してモータ15が内装され、モータ15の出力軸15aはギヤ収容室4内に突出して駆動ギヤ16が固定されている。ギヤ収容室4内において駆動ギヤ16と被動ギヤ14との間には中間ギヤ17がギヤ軸18により回転可能に支持され、中間ギヤ17は大径の入力ギヤ17aと小径の出力ギヤ17bとを一体形成してなる。中間ギヤ17の入力ギヤ17aは駆動ギヤ16と噛合し、中間ギヤ17の出力ギヤ17bは被動ギヤ14と噛合している。
【0028】
従って、モータ15の回転が駆動ギヤ16、中間ギヤ17及び被動ギヤ14を介して減速されつつスロットル軸6に伝達され、モータ15の回転方向に対応してスロットル弁8が開閉駆動される。以下、各ギヤの列設方向をギヤ列方向と称し、結果としてギヤ列方向、吸気流通方向及びスロットル軸線方向は互いに直交する関係にある。
【0029】
以上のように構成されたスロットル装置1には、スロットル弁8の開度を検出するためにインダクティブ式のスロットルセンサ20が設けられている。スロットルセンサ20は、励起導体が設けられたロータと、励磁導体及び信号検出導体が設けられた基板とからなり、本実施形態では、上記した被動ギヤ14がロータとして機能する。
【0030】
図5は
図3のA矢視図、
図6はスロットルセンサ20周辺の詳細を示す
図3の部分拡大断面図であり、
図5では、基板22上の励磁導体23及び信号検出導体24を模式的に示している。
図5,6に示すように、被動ギヤ14は、円盤状の芯金14a及び所定形状の励起導体21を予め製作しておき、これらの部材14a,21を合成樹脂材料によりインサート成型してなる。励起導体21をカバー10側に向けた姿勢で、被動ギヤ14の芯金14aの軸孔14bにはスロットル軸6の一端が挿入されてカシメにより固定されて、これによりスロットル軸6と共に被動ギヤ14が回転するようになっている。
【0031】
一方、ギヤ収容室4内においてカバー10の内側面には基板22が固定され、基板22の被動ギヤ14側の面に励磁導体23及び信号検出導体24が設けられている。結果として、被動ギヤ14側の励起導体21と基板22側の励磁導体23及び信号検出導体24とが微小ギャップを介して相対向している。なお、22aは、カバー10に対して基板22を位置決めするための位置決め孔である。
【0032】
インダクティブ型のスロットルセンサの原理は、例えば特許文献1或いは特許第4809829号明細書等により周知であるため、概略のみを述べる。外部からの給電により基板22の励磁導体23には交流電流が流され、それに応じて被動ギヤ14の励起導体21に電流が励起される。励起された電流により基板22の信号検出導体24には交流電流が励起され、この交流電流に基づき後述する制御回路26により、被動ギヤ14の回転角度ひいてはスロットル開度と相関するスロットル開度信号が生成される。
【0033】
そして、以上と同じくスロットルセンサ102を備えた
図8に示す特許文献1のスロットル装置101では、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、基板104に対してロータ103を微小ギャップを介して相対向させるために、被動ギヤ14上から支持スタンド105によりロータ103を嵩上げして基板104に接近させている。このため、スロットル軸線方向でのスロットル装置101の外寸が増加するという問題があった。
また、その対策として、支持スタンド105の高さを縮小してロータ103と共に基板104も被動ギヤ14に接近させることが考えられる。しかし、スロットル軸線方向において基板104と中間ギヤ17とが互いに重なり合う位置関係で配設されるため、干渉回避のために基板104及びスロットル軸6を中間ギヤ17の軸線L2から離間させる必要が生じ、ギヤ列方向でのスロットル装置101の外寸が増加してしまう。
【0034】
以上の不具合を鑑みて本発明者は、スロットル開度の検出に必要な基板22上の励磁導体23及び信号検出導体24の形成領域に着目した。即ち、この種のインダクティブ式の回転角度センサは、検出対象となる回転体の回転領域、換言すると回転体の回転に伴って励起導体が位置変位する角度領域と対応して、基板上に励磁導体及び信号検出導体が形成されていれば、所期の電流の励起作用が生起されて回転角度を検出可能である。
例えば、回転体の回転角度の領域が270°の場合には、多少の余裕をもって基板上の300°程度の領域に励磁導体及び信号検出導体を形成すれば問題ないが、このような領域設定に関して従来は比較的無頓着であり、過剰に広い領域が設定される場合もあった。
【0035】
上記要件を本実施形態のスロットルセンサ20に当てはめると、バタフライ式のスロットル弁8の開閉角度の領域は最大で90°程度であり、それほど広くない。このため、スロットル軸6の回転に伴って励起導体21が位置変位する角度領域と対応し、且つ多少の余裕をもって、例えばスロットル軸を中心とした基板22上の120°の領域に励磁導体23及び信号検出導体24を形成すれば、検出機能に問題は生じない。
【0036】
そして
図5に破線で示すように、基板22上のスロットル軸6の軸線L1よりも反中間ギヤ17側の領域、即ち中間ギヤ17とは反対側の領域に、120°の扇形に励磁導体23及び信号検出導体24を形成したと仮定する。無論、この形成領域に対応して被動ギヤ14上の励起導体21が位置変更する領域も設定されている。このような場合、軸線L1よりも中間ギヤ17側の領域には励磁導体23及び信号検出導体24が存在しないため、この領域には必然的に基板22も必要なくなる。
【0037】
そこで、この領域を第1の逃げ部25として基板22を切り欠くように形成し、より中間ギヤ17の軸線L2に近接してスロットル軸6を配設する。これにより、所期の機能を奏する励磁導体23及び信号検出導体24の形成領域を基板22上に残した上で、たとえスロットル軸線方向で基板22と中間ギヤ17の入力ギヤ17aとが互いに重なり合う位置関係であったとしても双方の干渉を回避できる。
【0038】
以上の知見に基づき、スロットル軸線方向において基板22と中間ギヤ17の入力ギヤ17aとを互いに重なり合う位置関係で配設した上で、双方の干渉回避のために、励磁導体23及び信号検出導体24の形成領域及び基板22の形状に対策を講じたものが本発明である。以下、説明の便宜上、被動ギヤ14の励起導体21が形成された面、及び基板22の励磁導体23及び信号検出導体24が形成された面を、それぞれ導体形成面と称するものとし、
図5,6に基づき各部材の位置関係をさらに詳しく述べる。
【0039】
図6に示すように、中間ギヤ17の入力ギヤ17aに対して出力ギヤ17bはバルブボディ3側に隣接して設けられ、この出力ギヤ17bに被動ギヤ14が噛合している。被動ギヤ14の導体形成面は、接触防止のための僅かな間隙を介して中間ギヤ17の入力ギヤ17aに近接している。
また、基板22の板厚は入力ギヤ17aの歯幅よりも薄く、基板22は入力ギヤ17aの歯幅内に位置することによりスロットル軸線方向で入力ギヤ17aと互いに重なり合う位置関係になっている。この位置関係において、基板22側の励磁導体23及び信号検出導体24と被動ギヤ14側の励起導体21との間に、所定の微小ギャップが形成されている。
【0040】
即ち、スロットル軸線方向において、中間ギヤ17の入力ギヤ17aに対して僅かな間隙を形成するように被動ギヤ14の位置が定められ、その被動ギヤ14の導体形成面に対して所定の微小ギャップが形成されるように基板22の位置が定められている。結果としてスロットル軸線方向において、中間ギヤ17、被動ギヤ14及び基板22の各部材が無駄なスペースを形成することなく配設されると共に、スロットル軸線方向において基板22が入力ギヤ17aと互いに重なり合う位置関係で配設される。結果として、特許文献1の技術のように被動ギヤ14上からロータ103を支持スタンド105により嵩上げする必要がなくなるため、スロットル軸線方向でのスロットル装置1の外寸を縮小することができる。
【0041】
特に本実施形態では、被動ギヤ14上に直接的に励起導体21を設けている。仮に被動ギヤ14とは別部材のロータに励起導体21を設けた場合には、少なくともロータの厚み分はスロットル軸線方向でのスロットル装置1の外寸が増加してしまう。ロータを省略することにより、さらなるスロットル軸線方向でのスロットル装置1の外寸縮小を達成することができる。
【0042】
一方、基板22と中間ギヤ17の入力ギヤ17aとの互いの重なり合いによる干渉回避のために、
図5に基づき説明したように、基板22上の励磁導体23及び信号検出導体24は、励起導体21が位置変位する角度領域と対応して、スロットル軸6の軸線L1を中心とした120°の扇形をなすように形成されており、これらの形成領域をさらに詳しく述べる。
【0043】
本実施形態では、
図5中に破線で示すように励磁導体23及び信号検出導体24が、吸気流通方向においてスロットル軸6の軸線L1を挟んだ両方向に60°ずつ、計120°の領域に扇状をなすように形成されている。結果として励磁導体23及び信号検出導体24の全ての領域は、スロットル軸6の軸線L1よりも反中間ギヤ17側に位置し、換言すると中間ギヤ17に対して、駆動ギヤ16とは反対側に位置している。そして、励磁導体23及び信号検出導体24を基板22上に残した上で、中間ギヤ17の入力ギヤ17aの外周と対応する円弧状に基板22を切り欠くように、第1の逃げ部25が形成されている。
【0044】
例えば
図5中に2点鎖線で示すように、励磁導体23及び信号検出導体24の形成領域を360°に設定した場合には、基板22が中間ギヤ17と干渉する。このため、基板22と共にスロットル軸6を中間ギヤ17の軸線L2から離間する方向に、例えば距離L相当だけ位置変更する必要が生じ、ギヤ列方向でのスロットル装置1の外寸が増加してしまう。
【0045】
これに対して本実施形態によれば、基板22への第1の逃げ部25の形成により、スロットル軸6を距離L相当だけ中間ギヤ17の軸線L2に接近させることができ、ギヤ列方向でのスロットル装置1の外寸を縮小することができる。
無論、第1の逃げ部25の形状は必ずしも円弧状に形成する必要はなく、入力ギヤ17aの外周を避けた形状であれば任意に変更可能である。
【0046】
なお、基板22上には制御回路26等の電子部品も実装されており、例えば制御回路26により励磁導体23の通電や信号検出導体24の出力電流からのスロットル開度信号の生成が行われる。基板22全体の面積は一般的なものよりも縮小されるものの、例えば吸気流通方向においてスロットル軸6の軸線L1の両側には余剰領域が形成されているため、この余剰領域に制御回路26等の電子部品が何ら問題なく実装されている。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、スロットルセンサ20を構成する励起導体21と励磁導体23及び信号検出導体24とを正規位置で相対向させて良好なスロットル開度の検出機能を確保した上で、スロットル軸線方向及びギヤ列方向の何れにおいても外寸を縮小して小型化を達成することができる。
【0048】
一方、
図4,5に示すように、外部からスロットル装置1への電力供給、及び外部へのスロットル開度信号の出力のために、基板22上には計4本の電源供給端子28及び信号出力端子29が設けられ、ギヤ収容室4に装着されたカバー10と協調して、
図1,2に示すコネクタ30を構成している。スロットル装置1がエンジンに組み付けられると、コネクタ30には車体側からのコネクタが接続されるが、特に二輪車ではスペース的な要因からコネクタ30の接続作業を実施し難い。
【0049】
そこで本実施形態では、スロットル装置1の特有の外形に起因して形成されるデッドスペースを利用して、コネクタ30の接続作業を容易に実施できるように基板22上の端子位置が設定されており、その詳細を以下に述べる。
【0050】
図1,3に示すように、バルブボディ3にギヤ収容室4が結合されて全体的なスロットル装置1の外形が形作られ、バルブボディ3の一側にはスロットルボア3aに隣接してモータ15が内装されている。そして、このモータ15に対応してギヤ収容室4がギヤ列方向に沿った一側方(図中の下方)に延設され、結果として筒状のスロットルボア3aに対してモータ15が内装されたバルブボディ3の一側及びギヤ収容室4の一側が共にギヤ列方向に沿った一側方に膨出している。
【0051】
一方、バルブボディ3の他端には、エアクリーナとの接続のためのホース接続部3d(接続部)が設けられ、
図1,4に示すように、ホースを被嵌できるように吸気流通方向に沿った一側方に突出している。このため
図1,4中に破線で囲んで示すように、ギヤ収容室4及びモータ15の膨出箇所とホース接続部3dとの間には、何ら利用されないデッドスペースEが形成されている。
【0052】
そこで本実施形態では、
図6に示すように基板22のホース接続部3d側の箇所に、第1の逃げ部25から中間ギヤ17の外周に沿って円弧状に連続するように端子接続部31を延設し、この端子接続部31に電源供給端子28及び信号出力端子29を設けている。各端子28,29は吸気流通方向に沿って突出してデッドスペースEに臨んでおり、必然的にカバー10との協調により構成されるコネクタ30もデッドスペースに臨んで開口している。
【0053】
コネクタ30を接続する際の作業者は、車体側のコネクタを把持して相手側のコネクタ30に接近させながら接続するが、この過程で車体側のコネクタ及び作業者の指先はデッドスペースE内を移動する。よって、周囲の部材に妨げられることなく、容易且つ迅速にコネクタ30の接続作業を完了することができる。
【0054】
一方、
図5中に2点鎖線で示すように、仮に基板22の反中間ギヤ17側を四角状に形成した場合には、基板22の角部との干渉回避のために、ギヤ収容室4の四隅の内の被動ギヤ14側の2箇所の雌ネジ4bを位置変更する必要が生じる。必然的にフランジ4aを拡大する必要が生じ、スロットル装置1が吸気流通方向やギヤ列方向に大型化してしまう。
【0055】
これに対して本実施形態では、
図5中に実線で示すように、被動ギヤ14側の2箇所の雌ネジ4bを避けるように、それぞれ基板22の角部を略三角状に切り欠く第2の逃げ部32が形成されている。このため基板22の反中間ギヤ17側は、扇状をなす励磁導体23及び信号検出導体24と対応する半円状をなし、基板22との干渉回避のために2箇所の雌ネジ4bを位置変更する必要がなくなる。よってフランジ4aを拡大する必要もなくなり、この要因もスロットル装置1の小型化に大きく貢献する。
【0056】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、単一のスロットルボア3aを有する二輪車用エンジンの電子制御スロットル装置1に具体化したが、これに限るものではない。例えば4輪車用のスロットル装置に適用してもよいし、複数のスロットルボア3aを備えた多連式スロットル装置に適用してもよい。特に各スロットル弁8を個別にモータ15で開閉駆動する形式の多連式スロットル装置では、実施形態で述べた外寸の縮小分がスロットルボア3aの数だけ得られるため、小型化に関する効果がより顕著に得られる。
【0057】
また上記実施形態では、励磁導体23及び信号検出導体24をスロットル軸6の軸線L1を挟んだ両方向に60°ずつ、計120°の領域に形成したが、これに限るものではなく、例えば、形成領域の角度を120°から変更してもよい。
【0058】
また、例えば
図7に示すように、スロットル軸6の軸線L1を挟んだ何れか一方に120°の扇状をなすように励磁導体23及び信号検出導体24を形成してもよい。この場合には、励磁導体23及び信号検出導体24の一部の領域がスロットル軸6の軸線L1よりも中間ギヤ17側にはみ出すが、大半の領域はスロットル軸6の軸線L1よりも反中間ギヤ17側に位置している。
【0059】
このため実施形態と同じく、基板22に第1の逃げ部25を形成して同様の作用効果を達成でき、本発明は、このような励磁導体23及び信号検出導体24の形成領域も含むものとする。そして、この別例では、基板22上のスロットル軸6の軸線L1を挟んだ他方に大きな余剰領域が形成されるため、制御回路26等の電子部品をより容易に実装できるという別の効果が得られる。
【0060】
また上記実施形態では、被動ギヤ14上に励起導体21を設けてロータとして機能させたが、これに限るものではなく、被動ギヤ14とは別部材のロータに励起導体21を設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電子制御スロットル装置
2 ケーシング
3 バルブボディ
3a ロットルボア
3d ホース接続部(接続部)
4 ギヤ収容室
6 スロットル軸
8 スロットル弁
10 カバー
11 ボルト(締結部材)
14 被動ギヤ
15 モータ
16 駆動ギヤ
17 中間ギヤ
17a 入力ギヤ
17b 出力ギヤ
21 励起導体
23 励磁導体
24 信号検出導体
22 基板
25 第1の逃げ部
28 電源供給端子
29 信号出力端子
30 コネクタ
31 端子接続部
32 第2の逃げ部
E デッドスペース