(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】超低粘度(<5CST)の完成流体の新規のフッ素化ポリアクリレート消泡剤
(51)【国際特許分類】
C10M 147/04 20060101AFI20230815BHJP
C10M 145/14 20060101ALI20230815BHJP
C10M 161/00 20060101ALI20230815BHJP
C10M 157/10 20060101ALI20230815BHJP
C10M 137/02 20060101ALN20230815BHJP
C10M 155/02 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20230815BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230815BHJP
C10N 30/18 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C10M147/04
C10M145/14
C10M161/00
C10M157/10
C10M137/02
C10M155/02
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:00 A
C10N40:12
C10N40:08
C10N30:18
(21)【出願番号】P 2020551420
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 US2019023387
(87)【国際公開番号】W WO2019183365
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ, スジス
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ, ケビン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シファール, エリザベス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ニッカーソン, デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】スミス, アロンゾ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502350(JP,A)
【文献】特表2019-529687(JP,A)
【文献】特表2001-520303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0254819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 147/04
C10M 145/14
C10M 101/02
C10M 107/02
C10M 155/02
C10M 137/02
C10N 40/02
C10N 40/04
C10N 40/25
C10N 40/00
C10N 40/12
C10N 40/08
C10N 30/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑組成物であって、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)
40重量%~
80重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1~C
4アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー、および
(ii)
20重量%~
60重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー
であって、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、フッ素化(メタ)アクリレートモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分と、
を含み、
前記消泡剤成分が、少なくとも1,000ダルトンのM
wを有する、潤滑組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、(メタ)アクリル酸のC
1~C
3アルキルエステルを有する
、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
潤滑組成物であって、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)
20重量%~
55重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1~C
3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー
、
(ii)
5重量%~
50重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー
であって、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、フッ素化(メタ)アクリレートモノマー、および
(iii)
10重量%~
60重量%の、(メタ)アクリル酸のC
4~C
12アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分
であって、
前記消泡剤成分が、少なくとも1,000ダルトンのM
wを有する、
消泡剤成分と、
c)リン含有耐摩耗剤、ケイ素含有消泡剤、またはこれらの組み合わせと、
を含む、潤滑組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの潤滑粘度の油が、グループI油、グループII油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である、請求項1~
3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの潤滑粘度の油が、グループI油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である、請求項1~
4のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、エチル(メタ)アクリレートまたはプロピル(メタ)アクリレートを含む、請求項1~
5のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項7】
リン含有耐摩耗剤、ケイ素含有消泡剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1
または2に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項
7に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、および/またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンを含む、請求項
7または
8に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
ジブチルホスファイトを含む、請求項
7~
9のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項11】
前記(メタ)アクリレートコモノマー(iii)が、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3
に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、エチル(メタ)アクリレートであり、前記アクリレートコモノマー(iii)が、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである、請求項3
に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーが、分岐状または直鎖状である、請求項1~1
2のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、アクリル酸エチルであり、前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートである、請求項1~1
3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記消泡剤成分が、
10,000Da~
350,000Da
のM
wを有する、請求項1~1
4のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項16】
前記消泡剤成分が、少なくとも1ppm
の量で前記潤滑組成物中に存在する、請求項1~1
5のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項17】
分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、洗剤、抗酸化剤、シール膨潤剤、耐摩耗剤、またはこれらの組み合わせである、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~
16のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項18】
前記潤滑組成物が、100℃で5cSt以下の動粘度(「KV」)を有する、請求項1~
17のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項19】
機械的デバイスを潤滑する方法であって、請求項1~
18のいずれかに記載の潤滑組成物を前記機械的デバイスに供給することを含む、方法。
【請求項20】
前記機械的デバイスが、ドライブラインデバイスを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記ドライブラインデバイスが、車軸、ギア、ギアボックス、またはトランスミッションを含む、請求項2
0に記載の方法。
【請求項22】
前記機械的デバイスが、内燃機関を含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項23】
前記機械的デバイスが、油圧システム、タービンシステム、循環油システム、冷却潤滑システム、または工業用ギアを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項24】
機械的デバイスにおける泡抑制の方法であって、前記機械的デバイスを請求項1~
18のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項25】
前記機械的デバイスが、少なくとも1つのケイ素含有ガスケットを含む、請求項
19~2
4のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
機械的デバイスにおける泡抑制を改善するための、請求項1~
18のいずれかに記載の潤滑組成物における前記消泡剤成分の使用。
【請求項27】
前記潤滑組成物の泡性能を向上させるための、請求項10~
18のいずれかに記載の潤滑組成物における前記消泡剤成分の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、潤滑剤組成物における消泡剤成分として有用な化合物に関する。特に、当該消泡剤成分を含む潤滑組成物および濃縮物、ならびにそれらの使用が、開示されている。
【背景技術】
【0002】
炭化水素油の泡の傾向を緩和するために、機械的デバイスにおいて使用される炭化水素油配合物に消泡剤を導入することが知られている。主成分としてポリジメチルシロキサンを含むシリコーンベースの消泡剤は、泡破壊剤または泡抑制剤として有用な最も広く使用されている消泡剤のクラスに属する。このようなシリコーンベースの消泡剤は、新たに配合された流体の泡を抑制するのに効果的であるが、亜リン酸系耐摩耗剤、酸化剤、または炭化水素油配合物に一般的に見出される他の触媒材料の存在下で、材料は、高温で容易に解重合し、泡を促進する。
【0003】
ケイ素汚染の別の原因は、現場形成(FIP)ガスケットからのものであり得る。シリコーンの現場形成液体ガスケットを使用する製造業者によって得られる利点には、大きなギャップをシールするのに理想的であり、非常に柔軟であり、金属表面の擦過、損傷、または凹みに対処することができ、在庫費用を削減することができ(様々な形状およびサイズの予備成形されたガスケットの大量の在庫を有する必要はない)、ならびに多様な金属への良好な接着性が含まれる。しかしながら、ドライブラインデバイスの動作中、低分子量のSiベースのオリゴマーが、ガスケット結合材料から放出され得る。これらの低分子量Siベースのオリゴマーは、泡を促進し得る。
【0004】
さらに、グループII基油、グループIII基油、グループIV基油、およびグループV基油などのより精製された基油を支持して、グループI基油の市場での使用が減少するにつれて、より効果的な消泡剤成分の必要性が生じる。
【0005】
新たにブレンドされた流体における同等の消泡性能およびそのような流体の加熱後の改善された熱安定性を有しながら、泡の低減をもたらすことができる消泡剤成分に対する必要性が存在する。
【0006】
本発明の目的は、上記の必要性のうちの1つ以上を満たすことである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示された技術は、a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、b)ポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡剤成分と、を含む、潤滑組成物を提供する。ポリ(アクリレート)コポリマー、b)は、(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C4アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、を含むことができる。消泡剤成分は、少なくとも1,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有し得る。別の実施形態において、消泡剤成分、b)は、(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、を含み得、少なくとも10,000ダルトンのMwを有し得る。
【0008】
別の実施形態において、潤滑組成物は、a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、b)ポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡剤成分と、を含むことができる。ポリ(アクリレート)コポリマー、b)は、(i)約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約2重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、(iii)約10重量%~約70重量%の、(メタ)アクリル酸のC4~C12アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマーと、を含むことができる。消泡剤成分は、少なくとも1,000ダルトンのMwを有し得る。別の実施形態において、消泡剤成分、b)は、(i) 約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約20重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、(iii)約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC4~C8アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマーと、を含み得、少なくとも10,000ダルトンのMwを有し得る。実施形態のうちのいずれにおいても、(メタ)アクリレートモノマー(i)は、エチル(メタ)アクリレートもしくはプロピル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0009】
少なくとも1つの潤滑粘度の油は、グループI油、グループII油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物であってよい。あるいは、少なくとも1つの潤滑粘度の油は、グループI油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である。
【0010】
潤滑組成物は、リン含有耐摩耗剤、ケイ素含有消泡剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。リン含有耐摩耗剤は、亜リン酸水素ジアルキルであってよい。ケイ素含有消泡剤は、ポリジアルキルシロキサンであってよい。したがって、一実施形態において、潤滑組成物は、亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。別の実施形態において、潤滑組成物は、亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、および/またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンを含むことができる。さらに別の実施形態において、亜リン酸水素ジアルキルは、ジブチルホスファイトである。
【0011】
ポリ(アクリレート)コポリマーは、分岐または直鎖であるフッ素化(メタ)アクリレートモノマーを含むことができる。好適なフッ素化(メタ)アクリレートモノマーには、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
いくつかの実施形態において、潤滑組成物は、アクリル酸エチルである(メタ)アクリレートモノマー(i)と、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートであるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、を含むポリ(アクリレート)コポリマーを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、消泡剤成分は、約10,000Da~約350,000Da、または約10,000~約200,000Da、または約10,000Da~約120,000DaのMwを有する。消泡剤成分は、少なくとも1ppm、10~800ppm、または30~400ppmの量で潤滑組成物中に存在し得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、潤滑組成物は、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、洗剤、抗酸化剤、シール膨潤剤、耐摩耗剤、またはこれらの組み合わせである、少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。さらに他の実施形態において、潤滑組成物は、100℃で5cSt以下の動粘度(「KV」)を有し得る。
【0015】
上記のようなポリ(アクリレート)コポリマーを含む潤滑組成物を使用して機械的デバイスを潤滑する方法も開示されている。機械的デバイスは、車軸、ギア、ギアボックス、またはトランスミッションを含むドライブラインデバイスであってよい。機械的デバイスはまた、内燃機関であってよい。さらに他の実施形態において、機械的デバイスは、油圧システム、タービンシステム、循環油システム、冷却潤滑システム、または工業用ギアであってよい。
【0016】
上記のようなポリ(アクリレート)コポリマーを含む潤滑組成物を使用して機械的デバイス内の泡を抑制または低減する方法も開示されている。いくつかの実施形態において、機械的デバイスは、少なくとも1つのケイ素含有ガスケットを有し得る。開示されたポリ(アクリレート)コポリマーはまた、潤滑組成物の熱および/または酸化安定性を増加させるために使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な好ましい特徴および実施形態が、非限定的な例示として以下に説明される。開示された技術は、a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、b)ポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡剤成分と、を含む、潤滑組成物を提供する。ポリ(アクリレート)コポリマー、b)は、(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C4アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、を含むことができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ポリ(アクリレート)コポリマー」または「ポリ(アクリレート)ポリマー」という用語は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを含むモノマーに由来するポリマーである。ポリ(アクリレート)ポリマーおよびコポリマーは、一般にポリアクリレートまたはアクリル系と称される。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」という用語および関連する用語は、アクリレート基およびメタクリレート基の両方を含み、すなわち、メチル基は任意である。例えば、「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。したがって、いくつかの実施形態において、(メタ)アクリレートまたはアクリレートは、少なくとも1つのアクリレート、アクリル酸、メタクリレート、メタクリル酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0019】
本明細書に開示されるポリ(アクリレート)ポリマー消泡剤成分は、当該技術分野で一般に知られている方法によって調製することができる。重合は、触媒としての遊離基遊離剤の存在下、および既知の重合調節剤の存在下または非存在下で、塊状、乳液、または溶液中で影響を受け得る。一実施形態において、モノマーは、溶媒の存在下で重合させることができる。溶媒は、脂肪族(ヘプタンなど)または芳香族(キシレンまたはトルエンなど)であってよい。別の実施形態において、モノマーは、炭化水素油中で重合させることができる。さらに他の実施形態において、モノマーは、軽質芳香族石油ナフサ、重質芳香族ナフサ、またはこれらの組み合わせで重合され得る。本明細書に開示されるポリ(アクリレート)コポリマーに含まれるかまたはそれを調製するために使用される特定のモノマー(複数可)に言及する場合、当業者は、モノマー(複数可)が少なくとも1つの単位としてポリ(アクリレート)コポリマーに組み込むことを認識するであろう。
【0020】
本明細書で使用される場合、Cx~Cyは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを説明するために使用される場合、(メタ)アクリレート部分の酸素に接続されたアルキル基の炭素原子の数を指し、(メタ)アクリレート部分自体の炭素原子の数を含まない。
【0021】
いくつかの実施形態において、ポリ(アクリレート)コポリマーは、式(I)の構造を有する単位を含み得、
【化1】
式中、R
1は、HまたはCH
3であり、R
2は、C
2~C
10直鎖、分岐、または環状のヒドロカルビル基であり、R
3は、C
2~C
4の直鎖または分岐ヒドロカルビル基であり、R
4は、H、OH、またはCH
3であり、n
1は、75~3000の範囲の整数であり、n
2は、0~3の範囲の整数である。
いくつかの実施形態において、R
2および/またはR
3は、分岐している。他の実施形態において、R
2は直鎖であり、R
3は分岐している。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、通常の意味で使用され、これは当業者に良く知られている。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主に炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下が含まれる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族、脂肪族、ならびに脂環式置換芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分を介して完結した環式置換基(例えば、2つの置換基が一緒に環を形成する)と、
置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、置換基の主に炭化水素の性質を変えない非炭化水素基を含有する置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)と、
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において、主として炭化水素特性を有するが、炭素原子から構成される環、そうでなければ鎖に炭素以外を含有する置換基と、が含まれる。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素が含まれる。一般に、ヒドロカルビル基の10個の炭素原子ごとに2個以下、または1個以下の非炭化水素置換基が存在し、通常、ヒドロカルビル基には非炭化水素置換基がないであろう。一実施形態において、ヒドロカルビル基にはハロ置換基がない。
【0023】
消泡剤成分は、少なくとも1,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有し得る。本明細書で使用される場合、重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準に基づいて、ゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)(Waters Aliance e2695)を使用して測定される。この機器には、屈折率検出器およびWaters Empower(商標)データ収集および分析ソフトウェアが装備されている。カラムは、ポリスチレン/ジビニルベンゼン(Agilent Technologiesから入手可能なPLgel(3「Mixed-C」および1つの100オングストローム、5ミクロンの粒子サイズ))である。移動相の場合、個々のサンプルは、テトラヒドロフランに溶解され、GPCポートに注入される前に、PTFEフィルターで濾過される。
Waters Alliance e2695の動作条件:
カラム温度:40℃
オートサンプラー制御:実行時間:45分
注入量:300マイクロリットル
流量:1.0ml/分
示差屈折計(RI)(2414):感度:16;スケール係数:20
【0024】
当業者は、数平均分子量(「Mn」)が上記のものと同様の技術を使用して測定され得ることを理解するであろう。
【0025】
別の実施形態において、消泡剤成分、b)は、(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、を含み得、少なくとも10,000ダルトンのMwを有し得る。
【0026】
フッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸と直鎖または分岐フッ素化アルカノールとのエステルを含むことができる。フッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基中に1つ以上のフッ素原子を有する3つ以上の隣接する炭素原子を有することができる。一実施形態において、フッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、およびトリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、または2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートのうちの1つ以上を含むことができる。
【0027】
他の実施形態において、(メタ)アクリレートモノマー(i)は、約40重量%~約80重量%の量で存在し得、フッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)は、約20重量%~約60重量%の量で存在し得る。これらの実施形態のうちのいずれにおいても、(メタ)アクリレートモノマー(i)は、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0028】
別の実施形態において、潤滑組成物は、a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、b)ポリ(アクリレート)コポリマーを含む消泡剤成分と、を含むことができる。ポリ(アクリレート)コポリマー、b)は、(i)約10重量%~約50または60重量%の、(メタ)アクリル酸のC1~C3アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマーと、(ii)約2または5または20重量%~約50または70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマーと、(iii)約10または20重量%~約60または70または75重量%の、(メタ)アクリル酸のC4~C12またはC4~C8アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマーと、を含むことができる。消泡剤成分は、少なくとも1,000ダルトンまたは少なくとも10,000ダルトンのMwを有し得る。これらの実施形態のいずれにおいても、(メタ)アクリレートモノマー(i)は、エチル(メタ)アクリレートもしくはプロピル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0029】
少なくとも1つの潤滑粘度の油は、グループI油、グループII油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物であってよい。あるいは、少なくとも1つの潤滑粘度の油は、グループI油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である。さらに他の実施形態において、潤滑組成物は、ASTM D445_100を使用して測定されるように、100℃で5cSt以下の動粘度(「KV」)を有し得る。他の実施形態において、潤滑組成物は、約3~5cSt以下、または3~5cSt、またはさらには4cStのKVを有し得る。
【0030】
潤滑組成物は、リン含有耐摩耗剤、ケイ素含有消泡剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0031】
ポリ(アクリレート)コポリマーは、分岐または直鎖であるフッ素化(メタ)アクリレートモノマーを含むことができる。好適なフッ素化(メタ)アクリレートモノマーには、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態において、潤滑組成物は、アクリル酸エチルである(メタ)アクリレートモノマー(i)と、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートであるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、を含むポリ(アクリレート)コポリマーを含むことができる。さらに他の実施形態において、潤滑組成物は、アクリル酸エチルである(メタ)アクリレートモノマー(i)と、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートであるフッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、2-エチルヘキシルアクリレートである(メタ)アクリレートコモノマー(iii)と、を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、消泡剤成分は、約10,000Da~約350,000Da、または約10,000~約200,000Da、または約10,000Da~約120,000DaのMwを有する。消泡剤成分は、少なくとも1ppm、10~800ppm、または30~400ppmの量で潤滑組成物中に存在し得る。
【0034】
リン含有耐摩耗剤
好適なリン含有耐摩耗剤は、過度に限定されず、少なくとも1つのリン酸、リン酸塩、リン酸エステル、または硫黄含有類似体を含むこれらの誘導体を含むことができる。リン酸、その塩、エステル、または誘導体には、リン酸、亜リン酸、リン酸エステルまたはその塩、亜リン酸塩、リン含有アミド、リン含有カルボン酸またはエステル、リン含有エーテル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0035】
一実施形態において、リン含有酸、エステル、または誘導体は、有機または無機リン酸、リン酸エステル、リン酸塩、またはこれらの誘導体であり得る。リン酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオリン酸(ジチオリン酸、ならびにモノチオリン酸、チオホスフィン酸、およびチオホスホン酸)が含まれる。リン化合物の1つのグループは、式
(式中、R
10、R
12、R
13は、アルキルまたはヒドロカルビル基であるか、またはR
12のうちの1つおよびR
12は、Hであってよい)で表されるアルキルリン酸モノアルキル第1級アミン塩である。材料は、ジアルキルおよびモノアルキルリン酸エステルの1:1の混合物であり得る。このタイプの化合物は、米国特許第5,354,484号に記載されている。
【0036】
存在し得る他のリン含有材料には、ジブチルホスファイトなどの亜リン酸ジアルキル(ホスホン酸水素ジアルキルと称されることもある)が含まれる。さらに他のリン材料には、ホスホロチオ酸のリン酸化ヒドロキシ置換トリエステルおよびそのアミン塩、ならびにリン酸の無硫黄ヒドロキシ置換ジーエステル、リン酸の無硫黄リン酸化ヒドロキシ置換ジーエステルまたはトリエステル、およびそのアミン塩が含まれる。これらの材料は、米国特許出願US2008-0182770にさらに記載されている。
【0037】
本発明の組成物は、式の金属塩などのリン酸の金属塩を含むことができ、
【化2】
式中、R
8およびR
9は、独立して、3~30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、五硫化リン(P
2S
3)およびアルコールまたはフェノールを反応させ、式
【化3】
に対応するO,O-ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸を形成することによって容易に得ることができる。
【0038】
原子価nを有する金属Mは、一般に、アルミニウム、鉛、スズ、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、または銅であり、特定の実施形態において、亜鉛である。したがって、塩基性金属化合物は、酸化亜鉛であり得、得られた金属化合物は、式
【化4】
で表される。
【0039】
R8およびR9基は、独立して、アセチレン性および通常はエチレン性不飽和を含み得ないヒドロカルビル基である。それらは、典型的には、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアルカリール基であり、3~20個の炭素原子、例えば、3~16個の炭素原子または最大13個の炭素原子、例えば、3~12個の炭素原子を有する。反応して、R8およびR9基を提供するアルコールは、1つ以上の第1級アルコール、1つ以上の第2級アルコール、第2級アルコールおよび第1級アルコールの混合物であり得る。イソプロパノールおよび4-メチル-2-ペンタノールなどの2つの第2級アルコールの混合物が、しばしば、望ましい。
【0040】
そのような材料は、しばしば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛または単にジチオリン酸亜鉛と称される。それらは、周知であり、潤滑剤配合の当業者に容易に入手可能である。
【0041】
一実施形態において、潤滑組成物は、亜リン酸水素ジアルキルであるリン含有耐摩耗剤を含むことができる。完全に配合された潤滑剤中のリン含有耐摩耗剤の量は、存在する場合、典型的には、0.01~6重量パーセント、0.01~5重量パーセント、または0.03~2重量パーセント、または0.05~0.5重量パーセントでさえある。濃縮物中のその濃度は、それに応じて、例えば、5~60重量パーセントに増加する。
【0042】
消泡剤
好適な消泡剤は、過度に限定されず、シリコーンまたは有機ポリマーを含むことができる。これらの消泡剤組成物の例は、Henry T.Kernerによる「Foam Control Agents」(Noyes Data Corporation、1976)、125~162頁に記載されている。一実施形態において、潤滑組成物は、ポリシロキサン、ポリジアルキルシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンなどのケイ素含有消泡剤を含む。一実施形態において、潤滑組成物は、ポリジアルキルシロキサンである消泡剤を含むことができる。さらなる消泡剤には、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルのコポリマー、および任意に酢酸ビニル、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤が含まれる。完全に配合された潤滑剤中のケイ素含有消泡剤の量は、存在する場合、典型的には、40ppm~300ppmの範囲に及ぶ(有効成分または無希釈剤ベースで)。
【0043】
したがって、いくつかの実施形態において、潤滑組成物は、亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。別の実施形態において、潤滑組成物は、亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、および/またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンを含むことができる。さらに別の実施形態において、亜リン酸水素ジアルキルは、ジブチルホスファイトである。いくつかの実施形態において、潤滑剤組成物は、0.05~0.5重量%のリン含有耐摩耗剤(亜リン酸水素ジアルキルなど)および40~300ppmのポリジアルキルシロキサンおよび/またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンを含む。
【0044】
潤滑粘度の油
本発明の技術は、一成分として、潤滑粘度の油を含む組成物を提供する。そのような油には、天然油および合成油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、および再精製油、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0045】
未精製油は、さらに精製処理することなく、天然または合成の原料から直接得られる。
【0046】
精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油と同様である。精製技術は、当該技術分野で知られており、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸透濾過などが含まれる。
【0047】
再精製油は、再生油または再処理油とも呼ばれ、精製油の取得に使用されるプロセスと同様のプロセスによって取得され、使用済み添加物および油分解生成物の除去を目的とした技術によって追加処理されることが多い。
【0048】
本発明の潤滑剤を製造するのに有用な天然油には、動物油、植物油(例えばヒマシ油)、液化石油油などの鉱物潤滑油、ならびにパラフィン系、ナフテン系または混合パラフィン系-ナフテン系の溶媒処理または酸処理された鉱物潤滑油、および石炭または頁岩またはこれらの混合物から誘導される油が含まれる。
【0049】
合成潤滑油は有用であり、ポリマー化およびインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー)、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、およびこれらの混合物と、アルキルベンゼン(例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン)と、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル)と、ジフェニルアルカンと、アルキル化ジフェニルアルカンと、アルキル化ジフェニルエーテルと、アルキル化ジフェニルスルフィドと、ならびにこれらの誘導体と、類似体および同族体、またはこれらの混合物などの炭化水素油が含まれる。
【0050】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル(Priolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えばリン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または高分子テトラヒドロフランが含まれる。合成油はまた、フィッシャー・トロプシュ反応によっても生成され得、典型的には、水素化異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。一実施形態において、油は、フィッシャー・トロプシュの気液(GTL)合成手順、ならびに他の気液(GTL)油によって調製されてもよい。
【0051】
GTL基油には、GTLプロセスのうちの1つ以上の可能なタイプ(典型的にはフィッシャー・トロプシュプロセス)によって得られる基油が含まれる。GTLプロセスは、天然ガス、主にメタンを採取し、これを合成ガス(synthesis gas)または合成ガス(syngas)に化学的に転換する。あるいは、固体石炭もまた、合成ガスに転換され得る。合成ガスは主に、一酸化炭素(CO)および水素(H2)を含有し、これらの大部分はその後、触媒フィッシャー・トロプシュプロセスによってパラフィンに化学的に転換される。これらのパラフィンは、ある範囲の分子量を有し、触媒の使用により、水素異性化されて、ある範囲の基油を生成し得る。GTLベースストックは、非常にパラフィン系の特徴を有し、典型的には、90%より高い飽和分である。これらのパラフィンのうちで、非環式パラフィン種が、環式パラフィン種よりも優勢である。例えば、GTLベースストックは、典型的には、60重量%より多く、または80重量%より多く、または90重量%より多くの非環式パラフィン種を含む。GTL基油の動粘度は、典型的には、100℃で2cSt~50cSt、または3cSt~50cSt、または3.5cSt~30cStである。この例で例示されるGTLは、100℃で約4.1cStの動粘度を有する。同様に、GTLベースストックは、典型的には、80以上、または100以上、または120以上の粘度指数(VI、ASTM D2270を参照のこと)を有することを特徴とする。この例で例示されるGTLは、129のVIを有する。典型的には、GTLベース流体は、事実上ゼロの硫黄含量および窒素含量、一般に、5ppm未満のこれらの元素の各々を有する。GTLベースストックは、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)によって分類されたグループIIIの油である。
【0052】
潤滑粘度の油はまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで指定されているように定義され得る。5つの基油グループは、次のとおりである。グループI(硫黄分>0.03重量%、および/または<90重量%飽和分、粘度指数80~120未満)、グループII(硫黄分<0.03重量%、および>90重量%飽和分、粘度指数80~120未満)、グループIII(硫黄分<0.03重量%、および>90重量%飽和分、粘度指数>120)、グループIV(すべてのポリアルファオレフィン(PAO))、ならびにグループV(グループI、II、III、またはIVに含まれていない他のすべて)。潤滑粘度の油は、APIグループII+基油であってもよく、この用語は、SAE刊行物“Design Practice:Passenger Car Automatic Transmissions”,fourth Edition,AE-29,2012,page12-9、およびUS8,216,448、第1欄57行目に記載されているように、110以上120未満の粘度指数を有するグループII基油を指す。
【0053】
潤滑粘度の油は、APIグループIV油、またはこれらの混合物、すなわちポリアルファオレフィンであってよい。ポリアルファオレフィン基油(PAO)およびそれらの製造は、一般に周知である。PAOに関して、PAO基油は、直鎖C2~C32、好ましくはC4~C16のアルファオレフィンから誘導され得る。PAOのために特に好ましい原料は、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、および1-テトラデセンである。ポリアルファオレフィンは、メタロセン触媒プロセスによって、または非メタロセンプロセスから調製することができる。
【0054】
潤滑粘度の油は、APIグループII、グループIII、グループIV、グループVの油またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0055】
一実施形態において、潤滑粘度の油は、APIグループII、グループII+、グループIII、グループIVの油またはこれらの混合物である。別の実施形態において、潤滑粘度の油は、多くの場合、APIグループII、グループII+、グループIIIの油またはこれらの混合物である。
【0056】
一実施形態において、潤滑粘度の油は、グループII、グループIII、グループIVまたはガスから液体(フィッシャー・トロプシュ)の油、またはこれらの混合物である。
【0057】
存在する潤滑粘度の油の量は、典型的には、100重量%から式(I)の化合物、および存在する場合、他の性能添加剤の量の合計を差し引いた後に残る残余である。
【0058】
存在する潤滑粘度の油の量は、典型的には、100重量%から本発明の化合物および他の性能添加剤の量の合計を差し引いた後に残る残余である。記載されている各化学成分または添加剤の量は、特に指示がない限り、市販の材料中に慣用的に、すなわち活性化学品基準で、存在し得る。しかしながら、特に指示がない限り、本明細書で言及する各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業グレードに存在すると通常理解される他のそのような材料を含むことができる商業グレードの材料であると解釈されるべきである。
【0059】
組成物は、濃縮物または完全に配合された潤滑剤の形態であってよい。組成物が完全に配合された潤滑剤の形態である場合、典型的には、組成物中に存在する任意の希釈油を含む潤滑粘度の油は、70~95重量%、または80または85~93重量%の量で存在する。
【0060】
本発明の潤滑組成物が濃縮物の形態である場合(その後、追加の油と組み合わせて、全体的または部分的に、完成した潤滑剤を形成することができる)、典型的には、組成物中に存在する任意の希釈油を含む潤滑粘度の油は、0.1重量%~40重量%または0.2重量%~35重量%または0.4重量%~30重量%または0.6重量%~25重量%または0.1重量%~15重量%または0.3重量%~6重量%の量で存在する。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、オイルフリーベースで組成物全体の少なくとも50ppm、または少なくとも100ppm、または50ppm~1000ppm、または約50~約500、または50ppm~450ppmまたは400ppmの量で消泡剤成分を含むことができる。これらの潤滑組成物の残りは、以下に記載される1つ以上のさらなる添加剤、および本明細書に記載される成分のうちの1つ以上から組成物にもたらされる任意の希釈油または類似の材料を含む多量の潤滑粘度の油であってよい。多量とは、組成物を基準にして50重量%を超えることを意味する。
【0062】
追加の添加剤
いくつかの実施形態において、潤滑組成物は、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、洗浄剤、抗酸化剤、シール膨潤剤、耐摩耗剤、またはこれらの組み合わせである少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0063】
分散剤
分散剤は、潤滑油の分野において周知であり、(潤滑組成物に混合する前に)灰形成金属を含まず、潤滑剤に添加した場合、通常はいかなる灰形成金属にも寄与しないため、「無灰」分散剤と称されることがあるものを主に含む。分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。
【0064】
分散剤の1つのクラスは、マンニッヒ塩基である。これらは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料であり、米国特許第3,634,515号においてより詳細に記載されている。別のクラスの分散剤は、高分子量エステルである。これらの材料は、ヒドロカルビルアシル化剤と、グリセロール、ペンタエリスリトール、またはソルビトールなどの多価脂肪族アルコールとの反応によって調製されたとみなされ得るのを除いて、マンニッヒ分散剤または下記のスクシンイミドに類似している。そのような材料は、米国特許第3,381,022号により詳細に記載されている。米国特許公開第2010/0286414号に記載されるように、芳香族コハク酸エステルも調製され得る。他の分散剤には、概して、ポリマーに分散特性を付与する極性官能基性を含む炭化水素系ポリマーであるポリマー分散性添加剤が含まれる。
【0065】
特定の実施形態において、分散剤は、米国特許第7,615,521号(例えば、第4欄、18~60行および調製例Aを参照)に記載されるように、少量の塩素または他のハロゲンの存在を含むプロセスによって調製される。そのような分散剤は、典型的には、ヒドロカルビル置換基の酸性またはアミド「ヘッド」基への結合において、いくつかの炭素環状構造を有する。他の実施形態において、分散剤は、米国特許第7,615,521号に記載されるように、いかなる塩素または他のハロゲンも使用せずに、「エン」反応を含む熱プロセスによって調製される。この方法で製造された分散剤は、しばしば高ビニリデン(すなわち、50%を超える末端ビニリデン)ポリイソブチレンから誘導される(第4欄、61行から第5欄、30行および調製例Bを参照)。そのような分散剤は、典型的には、結合点で上記の炭素環状構造を含まない。特定の実施形態において、分散剤は、米国特許第8,067,347号に記載されるように、エチレン性不飽和アシル化剤による高ビニリデンポリイソブチレンのフリーラジカル触媒重合によって調製される。
【0066】
分散剤は、ポリオレフィンとして、50、70、または75%を超える末端ビニリデン基(□および□異性体)を有する、高ビニリデンポリイソブチレンから誘導され得る。特定の実施形態において、スクシンイミド分散剤は、直接アルキル化経路によって調製され得る。他の実施形態において、スクシンイミド分散剤は、直接アルキル化および塩素経路分散剤の混合物を含むことができる。
【0067】
分散剤の好ましいクラスは、カルボン酸分散剤である。カルボン酸分散剤には、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と有機ヒドロキシ化合物、または特定の実施形態において、窒素原子に結合した少なくとも1つの水素を含むアミンとの反応生成物、または当該ヒドロキシ化合物とアミンの混合物である、コハク酸ベースの分散剤が含まれる。「コハク酸アシル化剤」という用語は、炭化水素置換コハク酸またはコハク酸生成化合物を指す。そのような材料には、典型的には、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)、およびハロゲン化物が含まれる。スクシンイミド分散剤は、米国特許第4,234,435号および第3,172,892号にさらに詳細に記載されている。
【0068】
コハク酸ベースの分散剤は、次のような一般的な構造を含む多様な化学構造を有し、
【化5】
式中、各R6は、独立して、
【数1】
500または700~10,000を有するポリオレフィン由来基などのヒドロカルビル基である。典型的には、ヒドロカルビル基は、アルキル基であり、多くの場合、分子量が500または700~5000、または別の実施形態において、1500または2000~5000を有するポリイソブチル基である。別の言い方をすれば、R6基は、40~500個の炭素原子、特定の実施形態において、脂肪族炭素原子などの少なくとも50個、例えば50~300個の炭素原子を含むことができる。各R6基は、1つ以上の反応基、例えば、コハク酸基を含むことができる。R7は、アルケニル基で、通常-C2H4-基である。そのような分子は、一般に、アルケニルアシル化剤とポリアミンの反応から誘導され、多様なアミドおよび第4級アンモニウム塩を含む、上に示した単純なイミド構造のほかに、2つの部分間の多種多様な結合が可能である。同様に、環状(非芳香族環)構造を含む結合を含む、R6基の様々な結合様式が企図される。
【0069】
コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得る。ポリアミンには、主に、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(-トリメチレン)トリアミンなどのエチレンポリアミン(すなわち、ポリ(エチレンアミン))などのアルキレンポリアミンが含まれる。上記に示したアルキレンアミンのうちの2つ以上を縮合することによって得られるようなより高い同族体も同様に有用である。テトラエチレンペンタミンは、特に有用である。
【0070】
ヒドロキシアルキル置換アルキレンアミン、すなわち窒素原子上に1つ以上のヒドロキシアルキル置換基を有するアルキレンアミンも同様に、上記に示したアルキレンアミンまたはヒドロキシアルキル置換アルキレンアミンをアミノラジカルまたはヒドロキシラジカルを介して縮合することによって得られたより高い同族体である場合に有用である。
【0071】
一実施形態において、分散剤は、単一の分散剤として存在し得る。一実施形態において、分散剤は、2つまたは3つの異なる分散剤の混合物として存在し得、少なくとも1つは、スクシンイミド分散剤であり得る。
【0072】
スクシンイミド分散剤は、芳香族アミン、芳香族ポリアミン、またはこれらの混合物から誘導され得る。芳香族アミンは、4-アミノジフェニルアミン(ADPA)(N-フェニルフェニレンジアミンとしても知られている)、ADPAの誘導体(米国特許公開第2011/0306528号および同第2010/0298185号に記載)、ニトロアニリン、アミノカルバゾール、アミノ-インダゾリノン、アミノピリミジン、4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリン、またはこれらの組み合わせであってよい。一実施形態において、分散剤は、芳香族アミンの誘導体であり、芳香族アミンは、少なくとも3つの不連続な芳香環を有する。
【0073】
スクシンイミド分散剤は、ポリエーテルアミンまたはポリエーテルポリアミンの誘導体であってよい。典型的なポリエーテルアミン化合物は、少なくとも1つのエーテル単位を含み、少なくとも1つのアミン部分で連鎖停止されるであろう。ポリエーテルポリアミンは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドなどのC2-C6エポキシドから誘導されたポリマーに基づくことができる。ポリエーテルポリアミンの例は、Jeffamine(登録商標)ブランドで販売されており、Hunstman Corporation(Houston,Texas)から市販されている。
【0074】
後処理された分散剤はまた、開示された技術の一部であってもよい。後処理された分散剤は、一般に、カルボン酸、アミン、またはマンニッヒ分散剤を、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシドなどの試薬、ホウ酸などのホウ素化合物(「ホウ酸化分散剤」を得る)、リン酸または無水物などのリン化合物、2,5-ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)と反応させることによって得られる。アミン分散剤は、比較的高分子量の脂肪族または脂環式ハロゲン化物と、ポリアルキレンポリアミンなどのアミンとの反応生成物である。これらの例は、米国特許第3,275,554号、同第3,438,757号、同第3,454,555号、および同第3,565,804号に記載されている。特定の実施形態において、個々の分散剤の1つ以上は、ホウ素またはDMTD、またはホウ素とDMTDの両方で後処理することができる。これらの種類の例示的な材料は、米国特許第3,200,107号、同第3,282,955号、同第3,367,943号、同第3,513,093号、同第3,639,242号、同第3,649,659号、同第3,442,808号、同第3,455,832号、同第3,579,450号、同第3,600,372号、同第3,702,757号、および同第3,708,422号に記載されている。
【0075】
完全に配合された潤滑剤中の分散剤の量は、存在する場合、典型的には0.05または0.5~10重量パーセント、または1~8重量パーセント、または3~7重量パーセント、または2~5重量パーセントである。濃縮物中のその濃度は、それに応じて、例えば、5~80重量パーセントに増加する。
【0076】
洗浄剤
洗浄剤は、一般に有機酸の塩であり、しばしば過塩基化される。有機酸の金属過塩基性塩は、当業者に広く知られており、一般に、存在する金属の量が化学量論量を超える金属塩を含む。そのような塩は、100%を超える転換率レベルを有するとされる(すなわち、それらは、その酸を「正規(normal)」または「中性(neutral)」の塩に転換させるのに必要な金属の理論量の100%超を含む)。それらは、一般に、過塩基性、超塩基性、または超強塩基性塩と称され、一般に、有機硫黄酸(organic sulfur acid)、有機リン酸、カルボン酸、フェノールまたはこれらのいずれかの2つ以上の混合物の塩である。当業者が認識するように、そのような過塩基性塩の混合物も使用することができる。
【0077】
過塩基性組成物は、スルホン酸、カルボン酸(置換サリチル酸を含む)、フェノール、ホスホン酸、サリゲニン、サリキサレート、およびこれらのうちの任意の2つ以上の混合物を含む、様々な周知の有機酸性材料に基づいて調製することができる。それらを過塩基化するためのこれらの材料および方法は、多数の米国特許により周知である。
【0078】
これらの過塩基性塩を作製するために使用される塩基反応性(basically reacting)金属化合物は、通常、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物であるが、他の塩基反応性金属化合物を使用することができる。Ca、Ba、Mg、NaおよびLiの化合物、例えば、低級アルカノールのそれらの水酸化物およびアルコキシドが、通常使用される。これらの金属のうちの2つ以上のイオンの混合物を含む過塩基性塩を、本発明において使用することができる。
【0079】
過塩基性材料は、一般に、酸性材料(典型的には、無機酸または低級カルボン酸、好ましくは二酸化炭素)を、酸性有機化合物、当該酸性有機材料のための少なくとも1つの不活性有機溶媒(鉱油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)を含む反応媒体、化学量論的に過剰な金属塩基、および促進剤を含む混合物と反応させることによって調製される。酸性有機化合物は、本発明の例では、上記のサリゲニン誘導体である。
【0080】
過塩基性材料を調製するのに使用される酸性材料は、ギ酸、酢酸、硝酸、または硫酸などの液体であり得る。酢酸は、特に有用である。HCl、SO2、SO3、CO2、またはH2S、例えばCO2またはこれらの混合物、例えばCO2と酢酸の混合物などの無機酸性材料も、使用することができる。
【0081】
酸性有機化合物の塩基性塩を作製するための技術を具体的に説明する特許には、一般に、米国特許第2,501,731号、同第2,616,905号、同第2,616,911号、同第2,616,925号、同第2,777,874号、同第3,256,186号、同第3,384,585号、同第3,365,396号、同第3,320,162号、同第3,318,809号、同第3,488,284号、および同第3,629,109号が含まれる。過塩基性サリゲニン誘導体は、PCT公開WO2004/048503に記載されており、過塩基性サリキサレートは、PCT公開WO03/018728に記載されている。
【0082】
過塩基性スルホネートは、典型的には、250~600、または300~500のTBNを有する。過塩基性洗浄剤は、当該技術分野において既知である。一実施形態において、スルホネート洗浄剤は、米国特許出願第2005065045号(およびUS7,407,919として付与されている)の段落[0026]~[0037]に記載されているような少なくとも8の金属比を有する主に直鎖アルキルベンゼンスルホネート洗浄剤であってよい。直鎖アルキルベンゼンは、直鎖のどこか、通常、2、3、または4位で結合しているベンゼン環またはこれらの混合物を有することができる。主に直鎖アルキルベンゼンスルホネート洗浄剤は、燃料経済性の改善を支援するのに特に有用であってよい。一実施形態において、スルホネート洗浄剤は、米国特許出願第2008/0119378号の段落[0046]~[0053]に開示されている1つ以上の油溶性アルキルトルエンスルホネート化合物の金属塩であってよい。
【0083】
一実施形態において、スルホネート洗浄剤は、分岐アルキルベンゼンスルホネート洗浄剤であってよい。分岐アルキルベンゼンスルホネートは、異性化アルファオレフィン、低分子量オレフィンのオリゴマー、またはこれらの組み合わせから調製され得る。好ましいオリゴマーには、プロピレンおよびブチレンの四量体、五量体、および六量体が含まれる。他の実施形態において、アルキルベンゼンスルホネート洗浄剤は、トルエンアルキレートから誘導されてもよく、すなわち、アルキルベンゼンスルホネートは、少なくとも2つのアルキル基を有し、そのうちの少なくとも1つはメチル基であり、その他は上記の直鎖または分岐アルキル基である。
【0084】
一実施形態において、潤滑組成物は、非硫黄含有フェネートもしくは硫黄含有フェネート、またはこれらの混合物をさらに含む。非硫黄含有フェネートおよび硫黄含有フェネートは、当該技術分野において既知である。非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネートは、中性または過塩基性であってよい。典型的には、過塩基性非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネートは、180~450 TBNの全塩基価、および2~15または3~10の金属比を有する。中性非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネートは、80~180未満のTBN、および1~2未満または0.05~2未満の金属比を有し得る。
【0085】
非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネートは、カルシウムまたはマグネシウム非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネート(一般に、カルシウム非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネート)の形態であってよい。非硫黄含有フェネートまたは硫黄含有フェネートが存在する場合、潤滑組成物の0.1~10重量%、または0.5~8重量%、または1~6重量%、または2.5~5.5重量%で存在し得る。
【0086】
一実施形態において、潤滑組成物は、過塩基性フェネートを含まなくてもよく、異なる実施形態において、潤滑組成物は、非過塩基性フェネートを含まなくてもよい。別の実施形態において、潤滑組成物は、フェネート洗浄剤を含まなくてもよい。
【0087】
フェネート洗浄剤は、典型的には、p-ヒドロカルビルフェノールから誘導される。このタイプのアルキルフェノールは、硫黄と結合して過塩基化、アルデヒドと結合して過塩基化、またはカルボキシル化されてサリチル酸洗浄剤を形成し得る。好適なアルキルフェノールには、プロピレンのオリゴマーでアルキル化されたもの、すなわちテトラプロペニルフェノール(すなわち、p-ドデシルフェノールまたはPDDP)およびペンタプロペニルフェノールが含まれる。他の好適なアルキルフェノールには、アルファ-オレフィンでアルキル化されたもの、異性化アルファ-オレフィン、およびポリイソブチレンのようなポリオレフィンが含まれる。一実施形態において、潤滑組成物は、0.2重量%未満、または0.1重量%未満、またはさらに0.05重量%未満のPDDPから誘導されたフェネート洗浄剤を含む。一実施形態において、潤滑剤組成物は、PDDPから誘導されないフェネート洗浄剤を含む。一実施形態において、潤滑組成物は、PDDPから調製されたフェネート洗浄剤を含み、フェネート洗浄剤は、1.0重量パーセント未満の未反応PDDP、もしくは0.5重量パーセント未満の未反応PDDPを含有し、または実質的にPDDPを含まない。
【0088】
一実施形態において、潤滑組成物は、中性または過塩基性であり得るサリチレート洗浄剤をさらに含む。サリチレートは、当該技術分野において既知である。サリチレート洗浄剤は、50~400、または150~350のTBNおよび0.5~10、または0.6~2の金属比を有し得る。好適なサリチレート洗浄剤には、アルキル化サリチル酸、またはアルキルサリチル酸が含まれた。アルキルサリチル酸は、サリチル酸のアルキル化によって、またはアルキルフェノールのカルボニル化によって調製することができる。アルキルサリチル酸がアルキルフェノールから調製される場合、アルキルフェノールは、上記のフェネートと同様の方法で選択される。一実施形態において、本発明のアルキルサリチレートには、プロピレンのオリゴマーでアルキル化されたもの、すなわち、テトラプロペニルフェノール(すなわち、p-ドデシルフェノールまたはPDDP)およびペンタプロペニルフェノールが含まれる。他の好適なアルキルフェノールには、アルファ-オレフィンでアルキル化されたもの、異性化アルファ-オレフィン、およびポリイソブチレンのようなポリオレフィンが含まれる。一実施形態において、潤滑組成物は、PDDPから調製されたサリチレート洗浄剤を含み、フェネート洗浄剤は、1.0重量パーセント未満の未反応PDDP、もしくは0.5重量パーセント未満の未反応PDDPを含有するか、または実質的にPDDPを含まない。
【0089】
存在する場合、サリチレートは、潤滑組成物の0.01~10重量%、または0.1~6重量%、または0.2~5重量%、0.5~4重量%、または1~3重量%で存在し得る。
【0090】
洗浄剤は、一般に、ホウ酸などのホウ素化剤で処理することによってホウ素化することもできる。典型的な条件には、100~150℃で洗浄剤をホウ酸一緒に加熱することを含む。ホウ酸の当量数は、その塩中の金属の当量数とほぼ等しい。米国特許第3,929,650号は、ホウ酸塩化錯体およびこれらの調製を開示している。
【0091】
完全に配合された潤滑剤中の洗剤成分の量は、存在する場合、典型的には、0.01~15重量パーセント、0.5~10重量パーセント、例えば1~7重量パーセント、または1.2~4重量パーセントである。濃縮物中のその濃度は、それに応じて、例えば、5~65重量パーセントに増加する。
【0092】
摩擦調整剤
本発明の技術で使用される組成物で使用され得る別の成分は、摩擦調整剤である。摩擦調整剤は、当業者には周知である。使用され得る摩擦調整剤のリストは、米国特許第4,792,410号、同第5,395,539号、同第5,484,543号、および同第6,660,695号に含まれている。米国特許第5,110,488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示している。使用され得る摩擦調整剤のリストには、脂肪ホスファイト;ホウ素化アルコキシ化脂肪アミン;脂肪酸アミド;脂肪酸の金属塩;脂肪エポキシド;硫化オレフィン;ホウ素化脂肪エポキシド;脂肪イミダゾリン;脂肪アミン;カルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物;グリセロールエステル;アルキルサリチレートの金属塩;ホウ素化グリセロールエステル;アルキルリン酸のアミン塩;アルコキシ化脂肪アミン;エトキシ化アルコール;オキサゾリン;イミダゾリン;ヒドロキシアルキルアミド;ポリヒドロキシ第3級アミン;およびその2種以上の混合物を含むことができる。
【0093】
これらのタイプの摩擦調整剤のそれぞれの代表的なものは知られており、市販されている。例えば、脂肪ホスファイトは、一般に、式(RO)2PHOまたは(RO)(HO)PHOであり得、Rは、油溶性を与えるのに十分な長さのアルキルまたはアルケニル基であってよい。好適なホスファイトは、市販されており、米国特許第4,752,416号に記載されるように合成することができる。
【0094】
使用され得るホウ酸化脂肪エポキシドは、カナダ特許第1,188,704号に開示されている。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、ホウ酸または三酸化ホウ素などのホウ素供給源を、少なくとも8個の炭素原子を含むことができる脂肪エポキシドと反応させることによって調製することができる。非ホウ素化脂肪エポキシドも、摩擦調整剤として有用であり得る。
【0095】
使用され得るホウ素化アミン(borated amine)は、米国特許第4,622,158号に開示されている。ホウ素化アミン摩擦調整剤(ホウ素化アルコキシル化脂肪アミンを含む)は、上記のようなホウ素化合物と、単純な脂肪アミンおよびヒドロキシ含有第3級アミンを含む対応するアミンと反応させることによって調製することができる。ホウ素化アミンを調製するのに有用なアミンには、商標「ETHOMEEN」によって周知であり、Akzo Nobelから入手できる市販のアルコキシ化脂肪アミン、例えば、ビス[2-ヒドロキシエチル]-ココアミン、ポリオキシエチレン[10]ココアミン、ビス[2-ヒドロキシエチル]ソイアミン、ビス[2-ヒドロキシエチル]-タローアミン、ポリオキシエチレン-[5]タローアミン、ビス[2-ヒドロキシエチル]オレイルアミン、ビス[2-ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン、およびポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミンを含むことができる。そのようなアミンは、米国特許第4,741,848号に記載されている。
【0096】
アルコキシル化脂肪アミンおよび脂肪アミン自体(オレイルアミンなど)は、摩擦調整剤として有用であり得る。これらのアミンは、市販されている。
【0097】
グリセロールのホウ素化および非ホウ素化脂肪酸エステルの両方を摩擦調整剤として使用することができる。グリセロールのホウ素化脂肪酸エステルは、グリセロールの脂肪酸エステルをホウ酸などのホウ素供給源でホウ酸化することによって調製することができる。グリセロールの脂肪酸エステル自体は、当該技術分野において周知の様々な方法によって調製することができる。グリセロールモノオレエートおよびグリセロールタローエートなどのこれらのエステルの多くは、商用規模で製造されている。市販のグリセロールモノオレエートは、45~55重量%のモノエステルと55~45重量%のジエステルの混合物を含むことができる。
【0098】
脂肪酸を、上記のグリセロールエステルを調製するのに使用することができ、それらはまた、これらの金属塩、アミド、およびイミダゾリンを調製するのに使用することができ、これらのいずれも摩擦調整剤として使用することができる。脂肪酸は、6~24個の炭素原子または8~18個の炭素原子を含むことができる。有用な酸は、オレイン酸であってよい。
【0099】
脂肪酸のアミドは、アンモニアまたは第1級もしくは第2級アミン、例えば、ジエチルアミンおよびジエタノールアミンと縮合することによって調製されたものであってよい。脂肪イミダゾリンは、酸とジアミンまたはポリアミン、例えばポリエチレンポリアミンとの環状縮合生成物を含むことができる。一実施形態において、摩擦調整剤は、C8~C24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、例えば、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物であってよい。カルボン酸とポリアルキレンアミンの縮合生成物は、イミダゾリンまたはアミドであってよい。
【0100】
脂肪酸はまた、その金属塩、例えば亜鉛塩として存在し得る。これらの亜鉛塩は、酸性、中性、または塩基性(過塩基性)であってよい。これらの塩は、亜鉛含有試薬とカルボン酸またはその塩との反応から調製することができる。これらの塩の有用な調製方法は、酸化亜鉛をカルボン酸と反応させることである。有用なカルボン酸は、上記に記載されたものである。好適なカルボン酸には、式RCOOH(式中、Rは脂肪族または脂環式炭化水素ラジカルである)のものが含まれる。これらの中には、Rが脂肪族基、例えば、ステアリル、オレイル、リノレイル、またはパルミチルであるものである。亜鉛が、中性塩を調製するのに必要な量よりも化学量論的に過剰に存在する亜鉛塩も適している。亜鉛が、亜鉛の化学量論量の1.1~1.8倍、例えば、化学量論量の1.3~1.6倍存在する塩を使用することができる。これらの亜鉛カルボキシレートは、当該技術分野において既知であり、米国特許第3,367,869号に記載されている。金属塩はまた、カルシウム塩も含むことができる。例には、過塩基性カルシウム塩を含むことができる。
【0101】
硫化オレフィンはまた、摩擦調整剤として使用される周知の市販の材料である。好適な硫化オレフィンは、米国特許第4,957,651号および同第4,959,168号の詳細な教示に従って調製されたものである。そこには、多価アルコールの少なくとも1つの脂肪酸エステル、少なくとも1つの脂肪酸、少なくとも1つのオレフィン、および一価アルコールの少なくとも1つの脂肪酸エステルからなる群から選択される、2つ以上の反応物の共硫化混合物が記載されている。オレフィン成分は、通常4~40個の炭素原子を含む脂肪族オレフィンであってよい。これらのオレフィンの混合物は、市販されている。本発明の方法で有用な硫化剤には、元素硫黄、硫化水素、ハロゲン化硫黄と硫化ナトリウム、および硫化水素と硫黄または二酸化硫黄の混合物が含まれる。
【0102】
アルキルサリチレートの金属塩には、カルシウムおよび長鎖(例えば、C12~C16)アルキル置換サリチル酸の他の塩が含まれる。
【0103】
アルキルリン酸のアミン塩には、商標名Primene(商標)で販売されている、リン酸のオレイルおよび他の長鎖エステルと、アミン、例えば第3級脂肪族第1級アミンの塩が含まれる。
【0104】
85パーセントのリン酸は、摩擦特性を増大させるために、完全に配合された組成物に添加するのに適切な材料であり、それを、組成物の重量に基づいて0.01~0.3重量パーセント、例えば0.03~0.2または0.1パーセントのレベルで含むことができる。
【0105】
摩擦調整剤の量は、存在する場合、潤滑組成物の0.01~10または5重量パーセント、潤滑組成物の0.1~2.5重量パーセント、例えば0.1~2.0、0.2~1.75、0.3~1.5、または0.4~1パーセントであり得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、摩擦調整剤の量は、0.2重量パーセント未満または0.1重量パーセント未満、例えば、0.01~0.1パーセント存在する。
【0106】
粘度調整剤
他の添加剤は、開示された技術の潤滑剤中に存在し得る。しばしば使用される1つの成分は、粘度調整剤である。粘度調整剤(VM)および分散剤粘度調整剤(DVM)は、周知である。VMおよびDVMの例は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、スチレン-マレイン酸エステルコポリマー、ならびにホモポリマー、コポリマー、およびグラフトコポリマーを含む類似したポリマー物質を含むことができる。DVMは、窒素含有メタクリレートポリマー、例えば、メチルメタクリレートおよびジメチルアミノプロピルアミンから誘導された窒素含有メタクリレートポリマーを含むことができる。
【0107】
市販のVM、DVM、およびこれらの化学タイプの例としては、以下のものを含むことができる:ポリイソブチレン(例えば、BP AmocoからのIndopol(商標)またはExxonMobilからのParapol(商標))、オレフィンコポリマー(例えば、LubrizolからのLubrizol(商標)7060、7065、および7067、ならびにMitsuiからのLucant(登録商標)HC-2000LおよびHC-600)、水素化スチレン-ジエンコポリマー(例えば、ShellからのShellvis(商標)40および50、ならびにLubrizolからのLZ(登録商標)7308および7318)、分散剤コポリマーであるスチレン/マレエートコポリマー(例えば、LubrizolからのLZ(登録商標)3702および3715)、ポリメタクリレートポリマー(その一部は分散剤特性を有する)(例えば、RohMaxからのViscoplex(商標)シリーズ、AftonからのHitec(商標)シリーズのもの、ならびにLubrizolからのLZ 7702(商標)、LZ 7727(商標)、LZ 7725(商標)、およびLZ 7720C(商標))、オレフィン-グラフト-ポリメタクリレートポリマー(例えば、RohMaxからのViscoplex(商標)2-500および2-600)、ならびに水素化ポリイソプレン星型ポリマー(例えば、ShellからのShellvis(商標)200および260)。LubrizolからのAsteric(商標)ポリマー(放射状または星型構造を有するメタクリレートポリマー)も含まれる。使用され得る粘度調整剤は、米国特許第5,157,088号、同第5,256,752号、および同第5,395,539号に記載されている。VMおよび/またはDVMは、機能性流体中で、最大で20重量%または60重量%または70重量%の濃度で使用することができる。0.1~12重量%、0.1~4重量%、0.2~3重量%、1~12重量%、または3~10重量%の濃度を使用することができる。
【0108】
抗酸化剤
他の材料を、任意に、それらが上述の必要な成分または仕様と適合しないことを条件として、本発明の技術の組成物に含めることができる。そのような材料には、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、第2級芳香族アミン抗酸化剤、例えばジノニルジフェニルアミンならびに他のアルキル置換基、例えばモノ-またはジ-オクチル(di-ocyl)を有するモノノニルジフェニルアミンおよびジフェニルアミンのようなそうした周知の変形体、硫化フェノール系抗酸化剤、油溶性銅化合物、リン含有抗酸化剤を含む抗酸化剤(すなわち、酸化抑制剤)、ならびに有機スルフィド、ジスルフィド、およびポリスルフィド、例えば2-ヒドロキシアルキル、アルキルチオエーテル、または1-t-ドデシルチオ-2-プロパノール、または硫化4-カルボブトキシシクロヘキセンまたは他の硫化オレフィンが含まれる。
【0109】
存在する場合、抗酸化剤の量は、潤滑組成物の0.01~5または3重量パーセント、または潤滑組成物の0.3~1.2重量パーセント、例えば0.5~1.2、0.6~1.0または0.7~0.9または0.15~4.5、または0.2~4重量パーセントであり得る。
【0110】
他の添加剤
本発明の組成物はまた、潤滑組成物に一般的に見出される従来の量の他の成分を含むか、または除外することができる。
【0111】
腐食防止剤または金属不活性化剤、例えばトリルトリアゾールおよびジメルカプトチアジアゾール、およびそのような材料の油溶性誘導体も含まれ得る。これらには、ベンゾトリアゾール(一般にトリルトリアゾール)、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2-アルキルジチオベンゾチアゾールの誘導体、1-アミノ-2-プロパノール、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および/または脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物が含まれる。
【0112】
他の任意の成分には、シールを柔軟に保持するように設計されたイソデシルスルホランまたはフタル酸エステルなどのシール膨潤添加剤が含まれる。
【0113】
他の材料は、耐摩耗剤、例えばアジピン酸トリデシル、および米国特許出願第2006-0183647号に記載されているような、ヒドロキシカルボン酸の様々な長鎖誘導体、例えばタルトレート、タルトラミド、タルトリミド、およびシトレートである。これらの任意の材料は、当業者に周知であり、一般に市販されている。さらに他の市販の耐摩耗剤には、公開された欧州特許出願761,805に詳細に記載されている、ジメルカプトチアジゾールおよびそれらの誘導体が含まれる。
【0114】
解乳化剤染料(demulsifier dyes)、流動化剤、臭気マスキング剤などの既知の材料も含むことができる。解乳化剤には、トリアルキルホスフェート、および本開示の技術の非ヒドロキシ末端のアシル化ポリエーテルとは異なるエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはその混合物の様々なポリマーおよびコポリマーが含まれる。
【0115】
極圧剤、塩素化脂肪族炭化水素;有機ホウ酸エステルおよび有機ホウ酸塩を含むホウ素含有化合物;ならびにモリブデン化合物も含むことができる。極圧(EP)剤には、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、およびリンEP剤が含まれる。そのようなEP剤の例には、塩素化ワックス;硫化オレフィン(例えば、硫化イソブチレン)、有機スルフィドおよびポリスルフィド、例えばジベンジルジスルフィド、ビス-(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペンおよび硫化ディールスアルダー付加物;ホスホ硫化炭化水素、例えば、硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルの反応生成物;リンエステル、例えば、ジハイドロカーボンおよびトリハイドロカーボンホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェノールホスファイト;金属チオカルバメート、例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびヘプチルフェノール二酸バリウム;アルキルおよびジアルキルリン酸または誘導体のアミン塩、例えば、P2O5とのさらなる反応が続く、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩;ならびにこれらの混合物(US3,197,405に記載されている)が含まれる。ポリスルフィドは、一般に、硫黄-硫黄結合を有することを特徴とする。典型的には、その結合は、約2~約8個の硫黄原子、または約2~約6個の硫黄原子、または2~約4個の硫黄原子を有する。一実施形態において、ポリスルフィドは、少なくとも約20重量%、または少なくとも約30重量%の、3個以上の硫黄原子を含むポリスルフィド分子を含む。一実施形態において、ポリスルフィド分子の少なくとも約50重量%は、トリスルフィドまたはテトラスルフィドの混合物である。他の実施形態において、ポリスルフィド分子の少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%は、トリスルフィドまたはテトラスルフィドの混合物である。一実施形態において、ポリスルフィド分子の最大約90重量%は、トリスルフィドまたはテトラスルフィドの混合物である。他の実施形態において、ポリスルフィド分子の最大約80重量%は、トリスルフィドまたはテトラスルフィドの混合物である。他の実施形態において、ポリスルフィドは、約0重量%~約20重量%または約0.1~約10重量%のペンタ-またはより高次のポリスルフィドを含む。一実施形態において、ポリスルフィドは、ポリスルフィド中に約30重量%未満または約40重量%未満のジスルフィドを含む。ポリスルフィドは、典型的には、約0.5~約5重量%または約1~約3重量%の硫黄を潤滑組成物に提供する。
【0116】
流動点降下剤は、本明細書に記載の潤滑油にしばしば含まれる特に有用なタイプの添加剤であり、通常、ポリメタクリレート、スチレンベースのポリマー、架橋アルキルフェノール、またはアルキルナフタレンなどの物質を含む。例えば、C.V.SmalheerおよびR.Kennedy Smith(Lesius-Hiles Company Publishers,Cleveland,Ohio,1967)による「潤滑油添加剤(Lubricant Additives)」の8頁を参照されたい。本開示の組成物において有用であり得る流動点降下剤には、ポリアルファオレフィン、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドも含まれる。
【0117】
さらなる抗酸化剤は、典型的には、芳香族アミンまたはヒンダードフェノールタイプのものも含むことができる。本発明と組み合わせて使用され得るこれらおよび他の添加剤は、米国特許第4,582,618号(第14欄、52行から第17欄、16行までを含む)により詳細に記載されている。
【0118】
工業用途
本発明の組成物はまた、潤滑組成物に一般的に見出される従来の量の他の成分を含むか、または除外することができる。
【0119】
式(I)の化合物は、潤滑組成物、例えば、内燃機関用のエンジン潤滑剤、駆動系装置用の潤滑組成物、例えば、ギア油、車軸ギア油、駆動シャフト油、トラクション油、マニュアルトランスミッション油、オートマチックトランスミッション油、オフハイウェイ油(トラクター油など)、または自動車用ギア油(AGO)において使用するのに適し得る。
【0120】
他の成分は、それに潤滑剤が使用されることになる最終用途に適した量で存在し得る。オートマチックトランスミッションなどの駆動系装置のための潤滑剤は、典型的には、それら自体の範囲の添加剤を有することになり、同様に、エンジン油(乗用車または大型車両用ディーゼルまたは船舶用ディーゼルまたは小型2サイクル)用の潤滑剤は、それぞれ、それらの特徴的な添加剤を有することになり、油圧系、工業用ギア、ガス圧縮機、または冷却システムでの使用のためなどの工業用途の潤滑剤についても同様であり、これらの添加剤は、そのような装置を潤滑する当業者に周知である。
【0121】
エンジン用潤滑組成物
一実施形態において、本発明の化合物は、内燃機関エンジン用の潤滑組成物、すなわち、クランク室潤滑剤中の消泡剤成分として使用される。
【0122】
内燃機関エンジンは、例えば、シリンダーボア、シリンダーブロック、またはピストンリング上に鋼表面を含むことができる。内燃機関エンジンは、オートバイ、乗用車、大型車両用ディーゼル内燃機関エンジン、または2-ストロークもしくは4-ストローク船舶用ディーゼルエンジンであってよい。
【0123】
潤滑組成物は、(i)最大で0.5重量%、0.5重量%未満または0.1~0.4重量%(それらを含む)の硫黄含量、(ii)最大で0.15重量%、1.5重量%未満、または0.01または0.03~0.08、0.10または0.12重量%(それらを含む)のリン含量、および(iii)潤滑組成物の0.5重量%~1.1または1.5重量%の硫酸化灰分含有量のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0124】
潤滑組成物は、例えば、上記したような潤滑粘度の油を含む。一実施形態において、潤滑粘度の油は、グループII、グループIII、グループIV、またはガスから液体(フィッシャー・トロプシュ)基油、またはこれらの混合物である。
【0125】
典型的なクランク室潤滑剤は、3.6~7.5mm2/s、または3.8~5.6mm2/s、または4.0~4.8mm2/sの動粘度を有する潤滑粘度の油、例えば、グループI、グループII、グループIII鉱油、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0126】
式(I)の化合物に加えて、エンジン潤滑組成物は、例えば、上記のものから選択される他の添加剤を、上記の量でさらに含むことができる。一実施形態において、本開示の技術は、過塩基性清浄剤(例えば、過塩基性スルホネートおよびフェネートを含む)、耐摩耗剤、抗酸化剤(例えば、フェノール系およびアミン系抗酸化剤を含む)、摩擦調整剤、腐食防止剤、分散剤(典型的には、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤)、分散粘度調整剤、粘度調整剤(典型的には、オレフィンコポリマー、例えばエチレン-プロピレンコポリマー)、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つをさらに含む潤滑組成物を提供する。一実施形態において、本開示の技術は、式(I)の化合物を含み、過塩基性洗浄剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、および腐食防止剤をさらに含む潤滑組成物を提供する。
【0127】
好適な過塩基性洗剤は、上記の「洗浄剤」の節に記載されている。本発明のエンジン油潤滑組成物は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート(salicyclate)、およびこれらの混合物、またはホウ素化同等物およびこれらのホウ素化同等物の混合物から選択される過塩基性洗浄剤を含むことができる。過塩基性洗浄剤は、0重量%~15重量%、または0.1重量%~10重量%、または0.2重量%~8重量%、または0.2重量%~3重量%で存在し得る。例えば、大型車両用ディーゼルエンジンでは、洗浄剤は、潤滑組成物の2重量%~3重量%で存在し得る。乗用車エンジン用には、洗浄剤は、潤滑組成物の0.2重量%~1重量%で存在し得る。一実施形態において、エンジン潤滑組成物は、少なくとも3、または少なくとも8、または少なくとも15の金属比を有する少なくとも1つの過塩基性洗浄剤をさらに含む。
【0128】
一実施形態において、エンジン潤滑組成物は、少なくとも1つの耐摩耗剤をさらに含む潤滑組成物であってよい。好適な耐摩耗剤は、上記の「耐摩耗剤」の節に記載されており、それらには、チタン化合物、酒石酸誘導体、例えば酒石酸エステル、アミド、またはタルトリミド、リンゴ酸誘導体、クエン酸誘導体、グリコール酸誘導体、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ジアルキルジチオリン酸亜鉛など)、ホスファイト(ジブチルホスファイトなど)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが含まれる。耐摩耗剤は、リン含有耐摩耗剤であってよい。典型的には、リン含有耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ホスファイト、ホスフェート、ホスホネート、およびアンモニウムホスフェート塩、またはこれらの混合物であってよい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、当該技術分野において既知である耐摩耗剤は、潤滑組成物の0重量%~6または3重量%、または0.1重量%~1.5重量%、または0.5重量%~0.9重量%で存在し得る。
【0129】
この組成物は、モリブデン化合物を含むことができる。モリブデン化合物は、耐摩耗剤または抗酸化剤であってよい。モリブデン化合物は、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデン化合物のアミン塩、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。モリブデン化合物は、0~1000ppm、または5~1000ppm、または10~750ppm、5ppm~300ppm、または20ppm~250ppmのモリブデンを潤滑組成物に提供し得る。
【0130】
好適な抗酸化剤は、「抗酸化剤」の下で上記に記載されている。抗酸化剤には、硫化オレフィン、ジアリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(モリブデンジチオカルバメートなど)、ヒドロキシルチオエーテル、またはこれらの混合物が含まれる。一実施形態において、潤滑剤組成物は、抗酸化剤またはその混合物を含む。抗酸化剤は、潤滑剤組成物の0重量%~10重量%、または0.1重量%~6重量%、または0.5重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%、または0.3重量%~1.5重量%で存在し得る。
【0131】
好適な摩擦調整剤は、「摩擦調整剤」の下で上記に説明されている。エンジン油潤滑剤(すなわち、クランク室潤滑剤)は、しばしば、2つの表面、一般に鋼の表面の間の動摩擦を低下させる摩擦調整添加剤を含み、これは、主に、燃料経済性を改善するために実施される。このタイプの添加剤は、しばしば、「脂肪」と称され、それらには、脂肪酸、エステル、アミド、イミド、アミン、およびこれらの組み合わせが含まれる。好適な摩擦低減添加剤の例には、グリセロールモノオレエート、オレイルアミド、エトキシ化タローアミン、オレイルタルトリミド、酒石酸の脂肪アルキルエステル、オレイルマレイミド(oleyl malimide)、リンゴ酸の脂肪アルキルエステル、およびこれらの組み合わせが含まれる。あるいは、モリブデン添加剤を、摩擦を低下させ、燃料経済性を改善するために使用することができる。モリブデン添加剤の例には、二核モリブデンジチオカルバメート錯体、例えば、Adeka corp.から入手できるSakuralube(商標)525;三核モリブデンジチオカルバメート錯体;モリブデンアミン、例えば、Adeka corp.から入手できるSakuralube(商標)710;単核モリブデンジチオカルバメート錯体;モリブデンエステル/アミド添加剤、例えば、Vanderbilt Chemicals,LLCから入手できるMolyvan(登録商標)855;モリブデート化分散剤;およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0132】
エンジン潤滑組成物に有用な腐食防止剤は、上記に記載されており、それらには、WO2006/047486の段落5~8に記載されているもの、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物が含まれる。一実施形態において、腐食防止剤は、Synalox(登録商標)腐食防止剤を含む。Synalox(登録商標)腐食防止剤は、プロピレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーであってよい。Synalox(登録商標)腐食防止剤は、The Dow Chemical Companyから発行されたForm No.118-01453-0702 AMSの製品パンフレットにより詳細に記載されている。製品パンフレットのタイトルは、「SYNALOX Lubricants,High-Performance Polyglycols for Demanding Applications」である。
【0133】
好適な分散剤は、「分散剤」の下で上記に記載されている。一実施形態において、この組成物は、スクシンイミド分散剤を含み、これは、ホウ素化または非ホウ素化スクシンイミド分散剤であってよい。
【0134】
好適な粘度調整剤および分散剤粘度調整剤は、「粘度調整剤」の下で上記に記載されている。一実施形態において、本開示の潤滑組成物は、分散剤粘度調整剤をさらに含む。分散粘度調整剤は、潤滑組成物の0重量%~10重量%、または0重量%~5重量%、または0重量%~4重量%、または0.05重量%~2重量%、または0.2重量%~1.2重量%で存在し得る。
【0135】
エンジン潤滑組成物はまた、泡抑制剤、流動点降下剤、解乳化剤、金属不活性化剤、またはシール膨潤剤またはこれらの混合物も含むことができる。好適な候補は、「他の添加剤」の下で上記に記載されている。
【0136】
一実施形態において、潤滑組成物は、組成物の0.01~1.5重量パーセントの量の本発明の化合物;0.5~6重量パーセントの量の少なくとも1つの無灰分散剤;組成物の0.5~3重量パーセントの量の少なくとも1つの金属含有過塩基性洗剤;組成物の0.01~2重量パーセントの量のリン含有化合物、硫黄およびリンを含まない有機耐摩耗剤、またはこれらの混合物である少なくとも1つの亜鉛を含まない耐摩耗剤;組成物の0.2~5重量パーセントの量の少なくとも1つの無灰抗酸化剤(ヒンダードフェノールおよび/またはジアリールアミンから選択される);組成物の0.0~6重量パーセントの量のポリマー粘度指数改良剤、ならびに任意に、腐食防止剤、泡防止剤、シール膨潤剤、および流動点降下剤から選択される1つ以上の追加の添加剤を含む。
【0137】
異なる実施形態におけるエンジン潤滑組成物は、以下の表に開示されるような組成物を有し得る。
【表1】
【0138】
ドライブラインデバイス用の潤滑組成物
別の実施形態において、本発明の化合物は、マニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション、車軸、ギア、または駆動シャフトなどのドライブラインデバイスを潤滑するのに適した潤滑組成物における消泡剤成分として使用される。ドライブラインデバイスは、農業用トラクターなどのオフハイウェイ車両上にあってよい。オフハイウェイ車両は、オンハイウェイ車両より過酷な条件下で稼働する。
【0139】
ドライブラインデバイス用の潤滑組成物は、潤滑組成物の0.05重量%超、または0.4重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%、0.8重量%~2.5重量%、1重量%~2重量%、0.075重量%~0.5重量%、または0.1重量%~0.25重量%の硫黄含量を有し得る。
【0140】
ドライブラインデバイス用の潤滑組成物は、100ppm~5000ppm、または200ppm~4750ppm、300ppm~4500ppm、または450ppm~4000ppmのリン含量を有し得る。リン含量は、400~2000ppm、または400~1500ppm、または500~1400ppm、または400~900ppm、または500~850ppmまたは525~800ppmであってよい。
【0141】
潤滑組成物は、例えば、上記したような潤滑粘度の油を含む。一実施形態において、潤滑粘度の油は、グループII、グループIII、グループIV、またはガスから液体(フィッシャー・トロプシュ)基油、またはこれらの混合物である。
【0142】
本明細書に記載される式(I)の化合物に加えて、ドライブライン潤滑組成物は、例えば、上記のものから選択されるさらなる添加剤を上記の指定された量で含むことができる。一実施形態において、本開示の技術は、耐摩耗剤、粘度調整剤(典型的には、直鎖状、くし形、または星形構造を有するポリメタクリレート)、過塩基性洗浄剤(例えば、過塩基性スルホネート、フェネート、およびサリチレートを含む)、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤(例えば、フェノール系およびアミン系抗酸化剤を含む)、分散粘度調整剤、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1つをさらに含む潤滑組成物を提供する。一実施形態において、本開示の技術は、式(I)の化合物、潤滑粘度の油を含み、耐摩耗剤、粘度調整剤、ならびに分散剤および過塩基性洗浄剤のうちの少なくとも1つをさらに含む潤滑組成物を提供する。この実施形態において、潤滑組成物は、摩擦調整剤をさらに含むことができる。
【0143】
好適な耐摩耗剤は、「耐摩耗剤」の下で上記に説明されており、それらには、リン酸エステル(phosphorus acid ester)のアミン塩またはこれらの混合物などの油溶性リンアミン塩耐摩耗剤が含まれる。リン酸エステルのアミン塩には、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスファイト;ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のヒドロキシ置換ジまたはトリエステルおよびそのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジまたはトリエステルおよびそのアミン塩;ならびにこれらの混合物が含まれる。リン酸エステルのアミン塩は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。一実施形態において、油溶性リンアミン塩は、部分アミン塩-部分金属塩化合物またはこれらの混合物を含む。一実施形態において、リン化合物は、分子内に硫黄原子をさらに含む。耐摩耗剤の例には、非イオン性リン化合物(典型的には、+3または+5の酸化状態を有するリン原子を有する化合物)が含まれ得る。一実施形態において、リン化合物のアミン塩は、無灰、すなわち、金属非含有(他の成分と混合される前に)であってよい。アミン塩としての使用に適し得るアミンには、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、およびこれらの混合物が含まれる。アミンには、少なくとも1つのヒドロカルビル基、または、特定の実施形態において、2つまたは3つのヒドロカルビル基を有するものが含まれる。ヒドロカルビル基は、2~30個の炭素原子、または他の実施形態において8~26個、または10~20個、または13~19個の炭素原子を含むことができる。
【0144】
好適な粘度調整剤および分散剤粘度調整剤は、「粘度調整剤」の下で上記に記載されている。粘度調整剤は、通常、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン-無水マレイン酸コポリマー、アルケニルアレーン共役ジエンコポリマー、およびポリオレフィンを含むポリマーである。分散剤および/または抗酸化特性も有する多機能性粘度改良剤は、既知であり、任意に使用し得る。粘度調整剤の量は、0.1~70重量%、または1~50重量%、または2~40重量%の範囲であり得る。自動車用ギア油では、例えば、粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤は、5~60重量%、または5~50重量%、または5~40重量%、または5~30重量%または5~20重量%の量で潤滑組成物中に存在し得る。典型的には、粘度調整剤は、ポリメタクリレートまたはこれらの混合物であってよい。
【0145】
ドライブラインデバイス潤滑組成物は、「洗浄剤」の下で上記に記載されるような洗浄剤を含んでもよい。ドライブラインデバイス潤滑組成物は、ホウ素化されていてもいなくてもよい過塩基性洗浄剤を含んでもよい。例えば、潤滑組成物は、ホウ素化過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホネート洗浄剤またはこれらの混合物を含んでもよい。好適な過塩基性洗浄剤は、上記の「洗浄剤」の節に記載されている。本発明の潤滑組成物は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート(salicyclate)、およびこれらの混合物、またはホウ素化同等物およびこれらのホウ素化同等物の混合物から選択される過塩基性洗浄剤を含むことができる。自動車用ギア油では、例えば、洗浄剤は、0.05~1重量%、または0.1~0.9重量%の量で潤滑組成物中に存在し得る。マニュアルトランスミッション流体では、例えば、洗浄剤は、少なくとも0.1%、例えば、0.14~4重量%、または0.2~3.5重量%、または0.5~3重量%、または1~2重量%、または0.5~4重量%、または0.6~3.5重量%、または1~3重量%、または少なくとも1重量%、例えば、1.5~2.8重量%の量で潤滑組成物中に存在し得る。一実施形態において、組成物は、カルシウムを含有する1つ以上の洗浄剤を含むことができる。この実施形態において、洗浄剤(複数可)によって潤滑剤に提供されるカルシウムの総量は、0.03~1重量%、または0.1~0.6重量%、または0.2~0.5重量%であってよい。
【0146】
好適な分散剤は、「分散剤」の下で上記に記載されている。分散剤は、スクシンイミド分散剤であってよい。分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドであってよい。長鎖アルケニルスクシンイミドは、ポリイソブチレンスクシンイミドを含むことができ、それが誘導されるポリイソブチレンは、350~5000、または500~3000、または750~1150の範囲の数平均分子量を有する。一実施形態において、ドライブラインデバイス用の分散剤は、後処理された分散剤であってよい。分散剤は、任意に、1つ以上のリン化合物、芳香族化合物のジカルボン酸、およびホウ素化剤の存在下で、ジメルカプトチアジアゾールで後処理され得る。自動車用ギア油またはマニュアルトランスミッション流体では、例えば、分散剤は、少なくとも0.1重量%、または少なくとも0.3重量%、または少なくとも0.5重量%および多くとも5重量%または4重量%または3重量%または2重量%の量で潤滑組成物中に存在し得る。
【0147】
好適な摩擦調整剤は、「摩擦調整剤」の下で上記に説明されている。好適な摩擦調整剤には、以下が含まれる:
【0148】
式R3C(X)NR1R2(式中、Xは、OまたはSであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、少なくとも6個(または8~24個もしくは10~18個)の炭素原子のヒドロカルビル基であり、R3は、1~6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、または、そのヒドロキシル基を介したヒドロキシアルキル基とアシル化剤の縮合によって形成される基である)で表されるアミドまたはチオアミド;
【0149】
式R4R5NR6(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、R6は、ポリヒドロキシ含有アルキル基またはポリヒドロキシ含有アルコキシアルキル基である)で表される第3級アミン;
【0150】
約12~約22個(または12~20個または12~18個または12~16個または12~14個または14~20個または14~18個または14~16個)の炭素原子炭素原子の少なくとも2つのヒドロカルビル基を含むN置換シュウ酸ビスアミドまたはアミドエステル;
【0151】
脂肪イミダゾリン、例えば酸とジアミンまたはポリアミン、例えばポリエチレンポリアミンの環状縮合生成物であり、一実施形態において、その摩擦調整剤は、C8~C24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンの縮合生成物、例えば、イソステアリン酸とテトラ-エチレンペンタミンの生成物であってよい(カルボン酸とポリアルキレンアミンの縮合生成物は、イミダゾリンまたはアミドであってよい);
【0152】
カルボン酸またはその反応性同等物と、トリス-ヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、および1-アミノプロピル-3-ジイソプロパノールアミンからなる群から選択されるアミノアルコールの反応生成物からなる摩擦調整剤であって、それぞれが少なくとも6個の炭素原子を含む少なくとも2つの分岐鎖アルキル基を含む摩擦調整剤;
【0153】
硫化植物油、例えば、硫化植物油、ラード油、またはC16~18オレフィン;
【0154】
三酸化ホウ素と、少なくとも8個の炭素原子または10~20個の炭素原子を有する、または14個の炭素原子の直鎖ヒドロカルビル基を含むエポキシドとの反応生成物からのボレートエステル(US4,584,115を参照されたい)、および、そのアルコールが、典型的には分岐状であり、C6~C10またはC8~C10またはC8のものであるアルコールとホウ酸との反応によって形成されるボレートエステル;
【0155】
エトキシル化アミン;
【0156】
摩擦安定剤としてのリン酸などのリン含有化合物およびジ(脂肪)アルキルホスファイト;ならびに
【0157】
脂肪酸の金属塩
【0158】
摩擦調整剤((a)ホウ素化リン脂質、および(b)リン酸エステルのアミン塩以外)には、脂肪ホスホネートエステル、グアニジン、アミノグアニジン、尿素またはチオ尿素と反応させた脂肪カルボン酸からの反応生成物およびそれらの塩、脂肪アミン、エステル、例えばホウ素化グリセロールエステル、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ素化脂肪エポキシド、アルコキシ化脂肪アミン、ホウ素化アルコキシ化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩または脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物も含まれる。自動車または車軸ギア油では、例えば、摩擦調整剤は、1~5重量%、または2~4重量%、または2~3.5重量%の量で潤滑組成物中に存在し得る。
【0159】
好適な抗酸化剤は、「抗酸化剤」の下で上記に記載されている。抗酸化剤には、硫化オレフィン、ジアリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(モリブデンジチオカルバメートなど)、ヒドロキシルチオエーテル、またはこれらの混合物が含まれる。
【0160】
ドライブライン潤滑組成物はまた、泡抑制剤、流動点降下剤、腐食防止剤、解乳化剤、金属不活性化剤、またはシール膨潤剤またはこれらの混合物も含むことができる。好適な候補は、「他の添加剤」の下で上記に記載されている。ドライブラインデバイスに有用な腐食防止剤には、1-アミノ-2-プロパノール、アミン、トリルトリアゾールを含むトリアゾール誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくは無水物および/または脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物が含まれる。
【0161】
異なる実施形態におけるドライブラインデバイスの潤滑組成物は、以下の表に開示されるような組成物を有し得る。
【表2】
【0162】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、0.1~10重量%の量の分散剤、0.025~3重量%の量の洗浄剤、または洗浄剤がカルシウムを含有する場合、組成物に130~600ppm寄与するような量の洗浄剤、0.01~0.3重量%の量のリン含有化合物、0.01~15重量%の量の耐摩耗剤、0~12重量%の量の粘度調整剤、0~10重量%の量の抗酸化剤、0.001~10重量%の量の腐食防止剤、および0.01~5重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0163】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、0.2~7重量%の量の分散剤、0.1~1重量%の量の洗浄剤、または洗浄剤がカルシウムを含有する場合、組成物に160~400ppm寄与するような量の洗浄剤、0.03~0.2重量%の量のリン含有化合物、0.05~10重量%の量の耐摩耗剤、0.1~10重量%の量の粘度調整剤、0.01~5重量%の量の抗酸化剤、0.005~5重量%の量の腐食防止剤、および0.01~4重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0164】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、0.3~6重量%の量の分散剤、0.1~8重量%の量の洗浄剤、または洗浄剤がカルシウムを含有する場合、組成物に0~250ppm寄与するような量の洗浄剤、0.03~0.1重量%の量のリン含有化合物、0.075~5重量%の量の耐摩耗剤、1~8重量%の量の粘度調整剤、0.05~3重量%の量の抗酸化剤、0.01~3重量%の量の腐食防止剤、および0.25~3.5重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0165】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、1~5重量%の量の分散剤、組成物に1~200ppm寄与するような量のカルシウムを含有する洗浄剤、0.1~3重量%の量の耐摩耗剤、3~8重量%の量の粘度調整剤、0.1~1.2重量%の量の抗酸化剤、0.02~2重量%の量の腐食防止剤、および0.1~3重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0166】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、組成物に10~150ppm寄与するような量のカルシウムを含有する洗浄剤、0.2~1重量%の量の抗酸化剤、および0.5~2.5重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0167】
一実施形態において、潤滑組成物は、本発明による消泡剤成分、組成物に20~100ppm寄与するような量のカルシウムを含有する洗浄剤、0.3~1重量%の量の抗酸化剤、および1~2.5重量%の量の摩擦調整剤を含むドライブライン潤滑剤である。
【0168】
ドライブライン潤滑剤の上記の実施形態において、潤滑組成物は、グループII、グループIII、グループIVまたはガスから液体(フィッシャー・トロプシュ)基油、またはこれらの混合物である。ガス液化(フィッシャー・トロプシュ)基油、またはこれらの混合物から選択される潤滑粘度の油を含むことができる。
【0169】
油圧、タービン、または循環油用潤滑組成物
【0170】
一実施形態において、油圧、タービン、または循環油潤滑剤組成物は、潤滑組成物中に、0.001重量%~0.012重量%、0.004重量%、またはさらには0.001重量%~0.003重量%の本発明の消泡剤成分を含む。
【0171】
潤滑剤組成物はまた、1つ以上の追加の添加剤も含むことができる。いくつかの実施形態において、追加の添加剤は、抗酸化剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、洗浄剤、乳化剤、極圧剤、流動点降下剤、粘度調整剤、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0172】
潤滑剤は、抗酸化剤またはその混合物をさらに含むことができる。抗酸化剤は、潤滑剤の0重量%~4.0重量%、または0.02重量%~3.0重量%、または0.03重量%~1.5重量%で存在し得る。
【0173】
ジアリールアミンまたはアルキル化ジアリールアミンは、フェニル-α-ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、もしくはアルキル化フェニルナフチルアミン、またはそれらの混合物であってよい。アルキル化ジフェニルアミンは、ジノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、ジデシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン、ベンジルジフェニルアミン、およびこれらの混合物を含むことができる。一実施形態において、ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、またはこれらの混合物を含むことができる。一実施形態において、アルキル化ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミンまたはジノニルジフェニルアミンを含むことができる。アルキル化ジアリールアミンは、オクチル、ジオクチル、ノニル、ジノニル、デシル、またはジデシルフェニルナフチルアミンを含むことができる。一実施形態において、ジフェニルアミンは、スチレンおよび2-メチル-2-プロペンでアルキル化されている。
【0174】
ヒンダードフェノール抗酸化剤は、多くの場合、立体障害基として第2級ブチルおよび/または第3級ブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(通常、直鎖または分岐鎖アルキル)および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてよい。好適なヒンダードフェノール抗酸化剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールもしくは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。一実施形態において、ヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであってよく、例えば、CibaからのIrganox(商標)L-135を含むことができる。好適なエステル含有ヒンダードフェノール抗酸化剤化学のより詳細な記載は、米国特許第6,559,105号に見出される。
【0175】
抗酸化剤として使用され得るモリブデンジチオカルバメートの例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan 822(登録商標)、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)855、ならびにAdeka Sakura-Lube(商標)S-100、S-165、S-600、および525またはこれらの混合物などの商標名で販売されている市販材料が含まれる。抗酸化剤または耐摩耗剤として使用され得るジチオカルバメートの例は、R.T.Vanderbilt Co.,LtdからのVanlube(登録商標)7723である。
【0176】
【0177】
(式中、R6は、8~20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の分岐または直鎖アルキル基であってもよく、R7、R8、R9、およびR10は、独立して、水素または1~3個の炭素原子を含有するアルキルである)で表される置換ヒドロカルビルモノスルフィドを含むことができる。いくつかの実施形態において、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、n-ドデシル-2-ヒドロキシエチルスルフィド、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノール、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノールである。
【0178】
潤滑剤組成物はまた、分散剤またはその混合物を含むことができる。好適な分散剤には、(i)ポリエーテルアミン、(ii)ボレート化スクシンイミド分散剤、(iii)非ホウ化スクシンイミド分散剤、(iv)ジアルキルアミン、アルデヒド、およびヒドロカルビル置換フェノールのマンニッヒ反応生成物、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、分散剤は、組成物全体の0重量%~1.5重量5、または0.01重量%~1重量%、または0.05重量%~0.5重量%で存在し得る。
【0179】
組成物中に含まれ得る分散剤には、油溶性ポリマー炭化水素主鎖を有するもの、および分散される粒子と関連可能な官能基を有するものが含まれる。高分子炭化水素骨格は、750~1500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し得る。例示的な官能基には、アミン、アルコール、アミド、およびしばしば架橋基を介してポリマー骨格に結合しているエステル極性部分が含まれる。分散剤の例としては、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載の無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859号、および同第5,627,259号に記載のコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤が挙げられる。
【0180】
泡防止剤としても知られる消泡剤は、当該技術分野において既知であり、有機シリコーンおよび非ケイ素泡防止剤を含む。有機シリコーンの例には、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが含まれる。非ケイ素泡防止剤の例には、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルのコポリマー、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよび酢酸ビニルのコポリマー、ポリエーテル、ポリアクリレート、およびこれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、消泡剤は、ポリアクリレートである。消泡剤は、組成物中に、0.001重量%~0.012重量%、または0.004重量%、さらには0.001重量%~0.003重量%で存在し得る。
【0181】
解乳化剤は、当該技術分野において既知であり、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンの誘導体、エチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドと順次反応したポリアミン、またはこれらの混合物が含まれる。解乳化剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、解乳化剤は、ポリエーテルである。解乳化剤は、組成物中に、0.002重量%~0.012重量%で存在し得る。
【0182】
流動点降下剤は、当該技術分野において既知であり、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、カルボン酸ビニルポリマー、およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0183】
潤滑剤組成物はまた、防錆剤も含むことができる。好適な防錆剤には、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩、脂肪カルボン酸もしくはそのエステル、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリン、アルコールもしくはエーテルと反応したアルキル化コハク酸誘導体、またはこれらの任意の組み合わせ、またはこれらの混合物が含まれる。
【0184】
アルキルリン酸の好適なヒドロカルビルアミン塩は、式
【化7】
(式中、R26およびR27は、独立して、水素、アルキル鎖、またはヒドロカルビルであり、典型的にはR26およびR27の少なくとも1つがヒドロカルビルである)で表され得る。R26およびR27は、4~30、または8~25、または10~20、または13~19個の炭素原子を含有する。R28、R29、およびR30は、独立して、水素、1~30、または4~24、または6~20、または10~16個の炭素原子を有するアルキル分岐または直鎖アルキル鎖である。R28、R29、およびR30は、独立して、水素、アルキル分岐もしくは直鎖アルキル鎖であるか、またはR28、R29、およびR30のうちの少なくとも1つもしくは2つは、水素である。
【0185】
R28、R29、およびR30に適したアルキル基の例としては、ブチル、secブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、secヘキシル、n-オクチル、2-エチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0186】
一実施形態において、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C14~C11第3級アルキル第1級アミンの混合物であるPrimene 81R(Rohm & Haasによって製造され、販売されている)とのC14~C18アルキル化リン酸の反応生成物である。
【0187】
ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩などの防錆剤を含むことができる。これらは、エチレンジアミン、モルホリン、もしくはPrimene 81R、またはこれらの混合物とのヘプチルまたはオクチルまたはノニルジチオリン酸の反応生成物であってよい。
【0188】
ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩を含むことができる。
【0189】
好適な脂肪カルボン酸またはそのエステルの例としては、グリセロールモノオレエートおよびオレイン酸が挙げられる。窒素含有カルボン酸の好適なエステルの例には、オレイルサルコシンが含まれる。
【0190】
防錆剤は、潤滑油組成物の0.02重量%~0.2重量%、0.03重量%~0.15重量%、0.04重量%~0.12重量%、または0.05重量%~0.1重量%の範囲で存在し得る。防錆剤は、単独でまたはこれらの混合物中で使用され得る。
【0191】
潤滑剤は、金属不活性化剤またはその混合物を含有し得る。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール(典型的にはトリルトリアゾール)の誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2-アルキルジチオベンゾチアゾール、1-アミノ-2-プロパノール、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および/または脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物から選択され得る。金属不活性化剤はまた、腐食防止剤とも記載され得る。
【0192】
金属不活性化剤は、潤滑油組成物の0.001重量%~0.1重量%、0.01重量%~0.04重量%、または0.015重量%~0.03重量%の範囲で存在し得る。金属不活性化剤はまた、組成物中に、0.002重量%または0.004重量%~0.02重量%で存在し得る。金属不活性化剤は、単独でまたはその混合物で使用され得る。
【0193】
一実施形態において、本発明は、金属含有洗浄剤をさらに含む潤滑剤組成物を提供する。いくつかの実施形態において、金属含有洗浄剤は、カルシウムまたはマグネシウム洗浄剤であってよい。金属含有洗浄剤はまた、総塩基価が30~500mgKOH/g当量の範囲である過塩基性洗浄剤であってよい。
【0194】
金属含有洗浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、およびこれらの混合物、またはこれらのホウ素化同等物から選択され得る。金属含有洗浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、およびこれらの混合物から選択され得る。洗浄剤は、ホウ酸などのホウ素化剤でホウ素化されていてもよく、例えば、ホウ素化過塩基性カルシウムまたはマグネシウムスルホネート洗浄剤、またはこれらの混合物であってよい。洗浄剤は、油圧組成物の0重量%~5重量%、または0.001重量%~1.5重量%、または0.005重量%~1重量%、または0.01重量%~0.5重量%で存在し得る。
【0195】
極圧剤は、硫黄および/またはリンを含有する化合物であってよい。極圧剤の例には、ポリスルフィド、硫化オレフィン、チアジアゾール、またはこれらの混合物が含まれる。
【0196】
チアジアゾールの例には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマーが含まれる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位の間に硫黄-硫黄結合を形成して、当該チアジアゾール単位の2つ以上のオリゴマーを形成することによって形成する。好適なチアジアゾール化合物の例には、ジメルカプトチアジアゾール、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-[1,2,4]-チアジアゾール、3,4-ジメルカプト-[1,2,5]-チアジアゾール、または4-5-ジメルカプト-[1,2,3]-チアジアゾールのうちの少なくとも1つが含まれる。典型的には、容易に入手可能な材料、例えば、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールが、一般的に利用されている。異なる実施形態において、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数は、1~30、2~25、4~20、6~16、または8~10を含む。2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールは、2,5-ジオクチルジチオ-1,3,4-チアジアゾールまたは2,5-ジノニルジチオ-1,3,4-チアジアゾールであってよい。
【0197】
ポリスルフィドには、油、脂肪酸またはエステル、オレフィンまたはポリオレフィンからの硫化有機ポリスルフィドが含まれる。
【0198】
硫化され得る油には、天然または合成油、例えば、鉱油、ラード油、脂肪族アルコールおよび脂肪酸または脂肪族カルボン酸(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)から誘導されたカルボン酸エステル、ならびに合成不飽和エステルまたはグリセリドなどが含まれる。
【0199】
脂肪酸には、8~30、または12~24個の炭素原子を含有するものが含まれる。脂肪酸の例には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トール油が含まれる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製された硫化脂肪酸エステルは、例えば、トール油、亜麻仁油、大豆油、菜種油、および魚油を含む動物性脂肪および植物性油から得られる。
【0200】
ポリスルフィドには、広範囲のアルケンから誘導されたオレフィンが含まれる。アルケンは、典型的には、1つ以上の二重結合を有する。一実施形態において、オレフィンは、3~30個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、オレフィンは、3~16個または3~9個の炭素原子を含有する。一実施形態において、硫化オレフィンには、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、またはこれらの混合物から誘導されたオレフィンが含まれる。
【0201】
一実施形態において、ポリスルフィドは、既知の技術による上記のオレフィンを重合することによって誘導されるポリオレフィンを含む。
【0202】
一実施形態において、ポリスルフィドには、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物が含まれる。
【0203】
洗浄剤は、油圧組成物の0重量%~3重量%、0.005重量%~2重量%、0.01重量%~1.0重量%で存在し得る。
【0204】
潤滑剤は、粘度調整剤またはその混合物をさらに含むことができる。
【0205】
本発明における使用に適した粘度調整剤(しばしば、粘度指数向上剤とも称される)には、スチレン-ブタジエンゴム、オレフィンコポリマー、水素化スチレン-イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、無水マレイン酸スチレンコポリマーのエステル、またはこれらの混合物を含むポリマー材料が含まれる。いくつかの実施形態において、粘度調整剤は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、オレフィンコポリマー、またはこれらの混合物である。粘度調整剤は、潤滑剤の0重量%~10重量%、0.5重量%~8重量%、1重量%~6重量%で存在し得る。
【0206】
一実施形態において、本明細書で開示される潤滑剤は、本発明の塩以外の少なくとも1つの追加の摩擦調整剤を含むことができる。追加の摩擦調整剤は、油圧組成物の0重量%~3重量%、または0.02重量%~2重量%、または0.05重量%~1重量%で存在し得る。
【0207】
本明細書で使用される場合、摩擦調整剤に関する、「脂肪アルキル」または「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直鎖炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的には、β位で分岐しているモノ分岐アルキル基であってよい。モノ分岐アルキル基の例には、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、または2-オクチルドデシルが含まれる。
【0208】
好適な摩擦調整剤の例としては、アミン、脂肪エステル、もしくは脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;カルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ素化リン脂質、ホウ素化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ素化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシ化脂肪アミン;ホウ素化アルコキシ化脂肪アミン;第3級ヒドロキシ脂肪アミンを含むヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシ化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンの縮合生成物;または脂肪カルボン酸と、グアニジン、アミノグアニジン、尿素またはチオ尿素とからの反応生成物およびそれらの塩が含まれる。
【0209】
一実施形態において、潤滑剤組成物は、追加の耐摩耗剤をさらに含む。典型的には、追加の耐摩耗剤は、リン耐摩耗剤(本発明の塩以外)、またはこれらの混合物であってよい。追加の耐摩耗剤は、潤滑剤の0重量%~5重量%、0.001重量%~2重量%、0.1重量%~1.0重量%で存在し得る。
【0210】
リン耐摩耗剤は、リンアミン塩またはこれらの混合物を含むことができる。リンアミン塩には、リン酸エステルのアミン塩またはこれらの混合物が含まれる。リン酸エステルのアミン塩には、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスファイト;ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のヒドロキシ置換ジまたはトリエステルおよびそのアミン塩;リン酸またはチオリン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジまたはトリエステルおよびそのアミン塩;ならびにこれらの混合物が含まれる。リン酸エステルのアミン塩は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0211】
一実施形態において、油溶性リンアミン塩は、部分アミン塩-部分金属塩化合物またはこれらの混合物を含む。一実施形態において、リン化合物は、分子中に硫黄原子をさらに含む。
【0212】
耐摩耗剤の例には、非イオン性リン化合物(典型的には、+3または+5の酸化状態を有するリン原子を有する化合物)が含まれ得る。一実施形態において、リン化合物のアミン塩は、無灰、すなわち、金属非含有(他の成分と混合される前に)であってよい。
【0213】
アミン塩としての使用に適し得るアミンには、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、およびこれらの混合物が含まれる。アミンには、少なくとも1つのヒドロカルビル基、または特定の実施形態において、2つまたは3つのヒドロカルビル基を有するものが含まれる。ヒドロカルビル基は、2~30個の炭素原子、または他の実施形態において、8~26個、または10~20個、または13~19個の炭素原子を含むことができる。
【0214】
第1級アミンの例には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、およびオレヤミンのような脂肪族アミンが含まれる。他の有用な脂肪アミンには、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen S、およびArmeen SDなどの「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals,Chicago,Illinoisから入手可能な製品)などの市販の脂肪アミンが含まれ、ここで、文字の指定は、ココ、オレイル、タロー、またはステアリル基などの脂肪族に関する。
【0215】
好適な第2級アミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、およびエチルアミルアミンが含まれる。第2級アミンは、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンなどの環状アミンであってよい。
【0216】
アミンはまた、第3級脂肪族第1級アミンであってよい。この場合、脂肪族基は、2~30個、または6~26個、または8~24個の炭素原子を含むアルキル基であってよい。第3級アルキルアミンには、モノアミン、例えば、tert-ブチルアミン、tert-ヘキシルアミン、1-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、tert-オクチルアミン、tert-デシルアミン、tert-ドデシルアミン、tert-テトラデシルアミン、tert-ヘキサデシルアミン、tert-オクタデシルアミン、tert-テトラコサニルアミン、およびtert-オクタコサニルアミンなどが含まれる。
【0217】
一実施形態において、リン酸アミン塩は、C11~C14の第3級アルキル第1級基を有するアミンまたはこれらの混合物を含む。一実施形態において、リン酸アミン塩は、C14~C18の第3級アルキル第1級アミンを有するアミンまたはこれらの混合物を含む。一実施形態において、リン酸アミン塩は、C18~C22の第3級アルキル第1級アミンを有するアミンまたはこれらの混合物を含む。アミンの混合物も使用され得る。一実施形態において、アミンの有用な混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(どちらもRohm & Haasによって製造され、販売されている)は、それぞれ、C11~C14の第3級アルキル第1級アミンおよびC18~C22の第3級アルキル第1級アミンの混合物である。
【0218】
一実施形態において、リン化合物の油溶性アミン塩には、アミンを、(i)リン酸のヒドロキシ置換ジーエステル、または(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジ-またはトリ-エステルのいずれかと反応させることを含むプロセスによって得られ得る/得ることができるリン含有化合物の硫黄非含有アミン塩が含まれる。このタイプの化合物のより詳細な説明は、米国特許第8,361,941号に開示されている。
【0219】
一実施形態において、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C14~C18のアルキル化リン酸と、C11~C14の第3級アルキル第1級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm & Haasによって製造され、販売されている)との反応生成物である。
【0220】
ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例には、イソプロピル、メチル-アミル(4-メチル-2-ペンチルまたはその混合物)、2-エチルヘキシル、ヘプチル、オクチルまたはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)、およびこれらの混合物との反応生成物(複数可)が含まれる。
【0221】
一実施形態において、ジチオリン酸は、エポキシドまたはグリコールと反応させることができる。この反応生成物は、リン酸、無水物、または低級エステルとさらに反応する。エポキシドには、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドが含まれる。有用なエポキシドの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、およびスチレンオキシドが含まれる。一実施形態において、エポキシドは、プロピレンオキシドであってよい。グリコールは、1~12個、または2~6個、または2~3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであってよい。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬、およびそれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載されている。次いで、得られた酸をアミンで塩にすることができる。好適なジチオリン酸の例は、五酸化リン(約64グラム)を、58℃で45分間にわたって、514グラムのヒドロキシプロピルO,O-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ホスホロジチオエート(25℃で、ジ(4-メチル-2-ペンチル)-ホスホロジチオ酸を1.3モルのプロピレンオキシドと反応させることによって調製される)に添加することによって調製される。混合物は、75℃で2.5時間加熱し、珪藻土と混合し、70℃で濾過することができる。濾液は、11.8重量%のリン、15.2重量%の硫黄、および87の酸価(ブロモフェノールブルー)を含む。
【0222】
一実施形態において、耐摩耗添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。他の実施形態において、本発明の組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に含まない、またはさらに全く含まない。
【0223】
一実施形態において、本発明は、米国特許第4,758,362号の第2欄、35行~第6欄、11行に定義されたジチオカルバメート耐摩耗剤を含む組成物を提供する。存在する場合、ジチオカルバメート耐摩耗剤は、全組成物中に、0.25重量%、0.3重量%、0.4重量%、またはさらに0.5重量%~最大で0.75重量%、0.7重量%、0.6重量%、またはさらに0.55重量%で存在し得る。
【0224】
油圧潤滑剤は、
【0225】
0.002重量%~0.040重量%の本発明の消泡剤成分と、
【0226】
0.0001重量%~0.15重量%の、2,5-ビス(tert-ドデシルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、トリルトリアゾール、またはこれらの混合物から選択される腐食防止剤と、
【0227】
潤滑粘度の油と、
【0228】
0.02重量%~3重量%の、アミン系またはフェノール系抗酸化剤、またはこれらの混合物から選択される抗酸化剤と、
【0229】
0.005重量%~1.5重量%のホウ素化スクシンイミドまたは非ホウ素化スクシンイミドと、
【0230】
0.001重量%~1.5重量%の中性のやや過塩基性のカルシウムナフタレンスルホネート(典型的には、中性またはやや過塩基性のカルシウムジノニルナフタレンスルホネート)と、
【0231】
0.001重量%~3重量%、または0.01重量%~1重量%の、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルリン酸亜鉛、リン酸もしくはエステルのアミン塩、またはこれらの混合物から選択される耐摩耗剤と、を含むことができる。
【0232】
油圧潤滑剤はまた、以下の表に定義された配合物を含むことができる。
【表3】
【0233】
冷媒潤滑剤
一実施形態において、本明細書に開示される潤滑剤は、冷凍潤滑剤またはガス圧縮機潤滑剤であってよい。作動流体は、潤滑粘度の油を形成させるための、(i)1つ以上のエステル基油、(ii)1つ以上の鉱油基油、(iii)1つ以上のポリアルファオレフィン(PAO)基油、(iii)1つ以上のアルキルベンゼン基油、(iv)1つ以上のポリアルキレングリコール(PAG)基油、(iv)1つ以上のアルキル化ナフタレン基油、(v)1つ以上のポリビニルエーテル基油またはこれらの任意の組み合わせ、および0.001重量%~15重量%の、N-ヒドロカルビル置換ガンマ-(γ-)またはデルタ-(δ)アミノ(チオ)エステルの(チオ)リン酸塩から構成される潤滑剤を含むことができる。潤滑剤は、冷凍またはガス圧縮のために使用される圧縮機中の作動流体であってよい。一実施形態において、作動流体は、低い地球温暖化係数(低GWP)の冷媒システムのためであってよい。作動流体は、潤滑粘度の油を形成させるための、単独かまたは組み合わせた、エステル基油、鉱油基油、ポリアルファオレフィン基油、ポリアルキレングリコール基油、またはポリビニルエーテル基油、および潤滑組成物中に、0.001重量%~0.012重量%、または0.004重量%、またはさらに0.001重量%~0.003重量%の本発明の消泡剤成分、および圧縮される冷媒またはガスから構成される潤滑剤を含むことができる。
【0234】
エステルベースの油は、C4~C13の1つ以上の分岐または直鎖状カルボン酸のエステルを含む。エステルは、一般に、記載の分岐カルボン酸と1つ以上のポリオールの反応によって形成される。
【0235】
いくつかの実施形態において、分岐カルボン酸は、少なくとも5個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、分岐カルボン酸は、4~9個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、エステルの調製において使用されるポリオールには、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、エステルの調製において使用されるポリオールは、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、エステルの調製において使用されるポリオールは、ネオペンチルグリコールが含まれる。いくつかの実施形態において、エステルの調製において使用されるポリオールは、ペンタエリスリトールが含まれる。いくつかの実施形態において、エステルの調製において使用されるポリオールは、ジペンタエリスリトールが含まれる。
【0236】
いくつかの実施形態において、エステルは、(i)2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、またはこれらの組み合わせを含む酸、および(ii)ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、またはこれらの任意の組み合わせを含むポリオールから誘導される。
【0237】
潤滑剤は、良好な混和性を有する許容可能な粘度の作動流体を提供する能力を有し得る。
【0238】
「許容可能な粘度」とは、エステルベースの潤滑剤および/または作動流体が4cSt超の粘度(ASTM D445によって40℃で測定される)を有することを意味する。いくつかの実施形態において、エステルベースの潤滑剤および/または作動流体は、40℃で5または32~最大で320、220、120、またはさらに68cStの粘度を有する。
【0239】
上記のように、「低GWP」とは、その作動流体が、1000以下か、または、1000未満、500未満、150未満、100未満またはさらに75未満の値のGWP値(気候変動に関する政府間パネルの2001年第3次評価報告書(Intergovernmental Panel on Climate Change’s 2001 Third Assessment Report)によって計算されるように)を有することを意味する。いくつかの実施形態において、このGWP値は、作動流体全体に関するものである。他の実施形態において、このGWP値は、作動流体中に存在する冷媒に関するものであり、得られる作動流体は、低GWP作動流体と称され得る。
【0240】
「良好な混和性」とは、少なくとも記載の作動流体が冷凍またはガス圧縮システムの作動中に見られる作動条件で、冷媒または圧縮ガスおよび潤滑剤が混和性であることを意味する。いくつかの実施形態において、良好な混和性は、作動流体(および/または冷媒および潤滑剤の組み合わせ)が、0℃、またはさらに-25℃もの低い温度、またはさらに、いくつかの実施形態において、-50℃またはさらに-60℃もの低い温度で、目に見える曇り(visual haziness)以外に、いかなる不十分な混和性の兆候も示さないことを意味し得る。
【0241】
いくつかの実施形態において、記載の作動流体は、1つ以上の追加の潤滑剤成分をさらに含むことができる。これらの追加の潤滑剤成分には、(i)1つ以上の直鎖状カルボン酸の1つ以上のエステル、(ii)1つ以上のポリアルファオレフィン(PAO)基油、(iii)1つ以上のアルキルベンゼン基油、(iv)1つ以上ポリアルキレングリコール(PAG)基油、(iv)1つ以上のアルキル化ナフタレン基油、または(v)これらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0242】
記載の作動流体において使用され得る追加の潤滑剤には、特定のシリコーン油および鉱油が含まれる。
【0243】
市販の鉱油には、Sonnebornから市販されているSonneborn(登録商標)LP 250、それぞれ、Sonnebornから市販されているSuniso(登録商標)3GS、1GS、4GS、および5GS、ならびにCalumetから市販されているCalumet R015およびRO30が含まれる。市販のアルキルベンゼン潤滑剤には、Shrieve Chemicalから市販されているZerol(登録商標)150およびZerol(登録商標)300が含まれる。市販のエステルには、Emery(登録商標)2917およびHatcol(登録商標)2370として入手できるネオペンチルグリコールジペラルゴネートが含まれる。他の有用なエステルには、リン酸エステル、二塩基酸エステル、およびフルオロエステルが含まれる。もちろん、異なるタイプの潤滑剤の異なる混合物が、使用され得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、記載の作動流体は、1つ以上の直鎖状カルボン酸の1つ以上のエステルをさらに含む。
【0245】
作動流体はまた、1つ以上の冷媒を含むことができる。そのような実施形態において有用な好適な非低GWP冷媒は、過度に限定されない。例には、R-22、R-134a、R-125、R-143a、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒のうちの少なくとも1つは、低GWP冷媒である。いくつかの実施形態において、作動流体中に存在する冷媒のすべては、低GWP冷媒である。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-32、R-290、R-1234yf、R-1234zeI、R-744、R-152a、R-600、R-600a、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-32、R-290、R-1234yf、R-1234zel、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、冷に媒は、R-32が含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-290が含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-1234yfが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-1234zeIが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-744が含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-152aが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-600が含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒には、R-600aが含まれる。
【0246】
いくつかの実施形態において、冷媒には、R-32、R-600a、R-290、DR-5、DR-7、DR-3、DR-2、R-1234yf、R-1234zeI、XP-10、HCFC-123、L-41A、L-41B、N-12A、N-12B、L-40、L-20、N-20、N-40A、N-40B、ARM-30A、ARM-21A、ARM-32A、ARM-41A、ARM-42A、ARM-70A、AC-5、AC-5X、HPR1D、LTR4X、LTR6A、D2Y-60、D4Y、D2Y-65、R-744、R-1270、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、冷媒は、R-32、R-600a、R-290、DR-5、DR-7、DR-3、DR-2、R-1234yf、R-1234zeI、XP-10、HCFC-123、L-41A、L-41B、N-12A、N-12B、L-40、L-20、N-20、N-40A、N-40B、ARM-30A、ARM-21A、ARM-32A、ARM-41A、ARM-42A、ARM-70A、AC-5、AC-5X、HPR1D、LTR4X、LTR6A、D2Y-60、D4Y、D2Y-65、R-1270、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0247】
記載の作動流体はまた、いくつかの実施形態において、低GWP冷媒でブレンドされた1つ以上の非低GWP冷媒も含み得、結果として低GWP作動流体をもたらすことに留意されたい。そのような実施形態において有用な好適な非低GWP冷媒は、過度に限定されない。例には、R-22、R-134a、R-125、R-143a、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0248】
少なくとも、それらが使用される冷媒システムの蒸発器でどのように見出されるかに関して、記載の作動流体は、5~50重量%の潤滑剤、および95~50重量%の冷媒であってよい。いくつかの実施形態において、作動流体は、10~40重量%の潤滑剤、またはさらに10~30または10~20重量%の潤滑剤である。
【0249】
少なくとも、それらが使用される冷媒システムのサンプ中でどのように見出されるかに関して、記載の作動流体は、1~50重量%またはさらに5~50重量%の冷媒、および99~50またはさらに95~50重量%の潤滑剤であってよい。いくつかの実施形態において、作動流体は、90~60またはさらに95~60重量%の潤滑剤、またはさらに90~70、またはさらに95~70、または90~80、またはさらに95~80重量%の潤滑剤である。
【0250】
記載の作動流体は、特定の機能を増進させるまたは組成物に特定の機能性を提供するために、または場合によっては、組成物のコストを低減させるために他の成分を含むことができる。
【0251】
記載の作動流体は、1つ以上の性能添加剤をさらに含むことができる。性能添加剤の好適な例には、抗酸化剤、金属不動態化剤、および/または不活性化剤、腐食抑制剤、本発明の消泡剤成分に加えた消泡剤、耐摩耗防止剤、腐食抑制剤、流動点降下剤、粘度改良剤、粘着付与剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、潤滑添加剤、泡抑制剤、乳化剤、解乳化剤、酸捕捉剤、またはこれらの混合物が含まれる。
【0252】
いくつかの実施形態において、潤滑剤組成物は、抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、潤滑剤組成物は、金属不動態化剤を含み、金属不動態化剤は、腐食防止剤および/または金属不活性化剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、潤滑剤組成物は、腐食防止剤を含む。さらに他の実施形態において、潤滑剤組成物は、金属不活性化剤および腐食防止剤の組み合わせを含む。なおさらなる実施形態において、潤滑剤組成物は、抗酸化剤、金属不活性化剤、および腐食防止剤の組み合わせを含む。これらの実施形態のいずれにおいても、潤滑剤組成物は、1つ以上の追加の性能添加剤を含む。
【0253】
抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、フェニル-a-ナフチルアミン(PANA)、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、高分子量フェノール系抗酸化剤、ヒンダードビスフェノール系抗酸化剤、ジ-アルファ-トコフェロール、ジ-第3級ブチルフェノールが含まれる。他の有用な抗酸化剤は、米国特許第6,534,454号に記載されている。
【0254】
いくつかの実施形態において、抗酸化剤には、
(i)BASFから市販されているヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号35074-77-2;
(ii)BASFから市販されているN-フェニルベンゼンアミン、2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物、CAS登録番号68411-46-1;
(iii)BASFから市販されているフェニル-a-および/またはフェニル-b-ナフチルアミン、例えばN-フェニル-ar-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-1-ナフタレンアミン;
(iv)テトラキス¥[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、CAS登録番号6683-19-8;
(v)21 C.F.R.§178.3570にチオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)としても記載されている、チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、CAS登録番号41484-35-9;
(vi)ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);
(vii)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA);
(viii)BASFから市販されているビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)アミン;および
(ix)BASFから市販されているベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,チオジ-2,1-エタンジイルエステル、のうちの1つ以上が含まれる。
【0255】
抗酸化剤は、組成物中に、0.01%~6.0%または0.02%~1%存在し得る。添加剤は、組成物中に、1%、0.5%またはそれ以下で存在し得る。これらの様々な範囲は、典型的には、組成物全体の中に存在する抗酸化剤のすべてに適用される。しかしながら、いくつかの実施形態において、これらの範囲は、個々の抗酸化剤にも適用され得る。
【0256】
金属不動態化剤は、金属不活性化剤と腐食防止剤の両方を含む。
【0257】
好適な金属不活性化剤には、トリアゾールまたは置換トリアゾールが含まれる。例えば、トリルトリアゾールまたはトルトリアゾールを使用することができる。金属不活性化剤の好適な例には、
(i)1つ以上のトル-トリアゾール、例えば、商標名Irgamet 39のもとでBASFにより市販されているN,N-ビス(2-エチルヘキシル)-ar-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メタンアミン、CAS登録番号94270-86-70;
(ii)動物および/または植物供給源から誘導される1つ以上の脂肪酸、および/またはそのような脂肪酸の水素化形態、例えばAkzo Novel Chemicals,Ltdから市販されているNeo-Fat(商標)、のうちの1つ以上が含まれる。
【0258】
好適な腐食防止剤には、
(i)N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシン、CAS登録番号110-25-8;
(ii)tert-アルキルおよび(C12~C14)第1級アミンと反応された、リン酸、モノ-およびジイソオクチルエステル、CAS登録番号68187-67-7;
(iii)ドデカン酸;
(iv)トリフェニルホスホロチオネート、CAS登録番号597-82-0;および
(v)リン酸、モノ-およびジヘキシルエステル、テトラメチルノニルアミン、およびC11~14アルキルアミンとの化合物、のうちの1つ以上が含まれる。
【0259】
一実施形態において、金属不動態化剤は、腐食添加剤および金属不活性化剤から構成される。1つの有用な添加剤は、サルコシンのN-アシル誘導体、例えばサルコシンのN-アシル誘導体である。一例は、N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシンである。この誘導体は、商標名SARKOSYL(商標)OのもとでBASFから入手できる。別の添加剤は、BASFから市販されているAmine O(商標)などのイミダゾリンである。
【0260】
金属不動態化剤は、組成物中に、0.01%~6.0%または0.02%~0.1%存在し得る。添加剤は、組成物中に、0.05%またはそれ以下で存在し得る。これらの様々な範囲は、典型的には、組成物全体の中に存在する金属不動態化剤のすべてに適用される。しかしながら、いくつかの実施形態において、これらの範囲は、個々の腐食防止剤および/または金属不活性化剤にも適用され得る。上記の範囲は、組成物全体の中に存在するすべての腐食防止剤、金属不活性化剤、および抗酸化剤をすべて合わせた量に適用され得る。
【0261】
冷媒潤滑剤組成物はまた、本発明の消泡剤成分に加えて、消泡剤も含むことができる。消泡剤は、有機シリコーンおよび非ケイ素泡抑制剤を含むことができる。有機シリコーンの例としては、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非ケイ素泡抑制剤の例には、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびその混合物ならびにアクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、および任意に酢酸ビニルのコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、消泡剤は、ポリアクリレートであってよい。消泡剤は、組成物中に、0.001重量%~0.012重量%、または0.004重量%、またはさらに0.001重量%~0.003重量%存在し得る。
【0262】
本明細書に記載される組成物はまた、1つ以上の追加の性能添加剤も含むことができる。好適な添加剤には、耐摩耗防止剤、錆/腐食防止剤および/または金属不活性化剤(上記のもの以外)、流動点降下剤、粘度向上剤、粘着付与剤、極圧(EP)添加剤、摩擦調整剤、泡抑制剤、乳化剤、および解乳化剤が含まれる。
【0263】
金属表面上での摩耗を防止するのを助けるために、本発明は、追加の耐摩耗防止剤/EP添加剤および摩擦調整剤を使用することができる。耐摩耗防止剤、EP添加剤、および摩擦調整剤は、様々な販売会社および製造業者の在庫にあってすぐ入手できる。これらの添加剤のいくつかは、1つを超える役割を果たすことができる。耐摩耗性、EP、低摩擦、および腐食抑制を提供することができる1つの製品は、BASFから市販されているIrgalube 349などのリンアミン塩である。別の耐摩耗性/EP阻害剤/摩擦調整剤は、商標名Irgalube TPPTのもとでBASFから市販されているトリフェニルホスホチオネート(TPPT)などのリン化合物である。別の耐摩耗性/EP阻害剤/摩擦調整剤は、商標名Kronitex TCPのもとでChemturaから市販されているリン酸トリクレジル(TCP)などのリン化合物である。別の耐摩耗性/EP阻害剤/摩擦調整剤は、商標名Syn-O-Ad 8478のもとでICL Industrial Productsから市販されているt-ブチルフェニルホスフェートなどのリン化合物である。耐摩耗防止剤、EP、および摩擦調整剤は、典型的には、組成物の0.1%~4%であり、別々にまたは組み合わせて使用することができる。
【0264】
いくつかの実施形態において、組成物は、エチレン酢酸ビニル、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマーのエステル、水素化スチレン-ジエンコポリマー、水素化放射状ポリイソプレン、アルキル化ポリスチレン、ヒュームドシリカ、および複合エステルを含む粘度調整剤;ならびに油中で可溶化された天然ゴムのような粘着付与剤を含む群からの添加剤をさらに含む。
【0265】
粘度調整剤、増粘剤、および/または粘着付与剤の添加は、接着性をもたらし、潤滑剤の粘度および粘度指数を改善する。一部の適用および環境条件は、設備を腐食および摩耗から防護する追加的な粘着性の表面膜を必要とし得る。この実施形態において、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、潤滑剤の1~20重量%である。しかしながら、粘度調整剤、増粘剤/粘着付与剤は、0.5~30重量%であってよい。材料の一例は、Functional Products,Inc.,Macedonia,Ohioから入手できる材料Functional V-584天然ゴム粘度調整剤/粘着付与剤である。別の例は、Inolex Chemical Co. Philadelphia,Paからの多機能性の製品、粘度調整剤、流動点降下剤、および摩擦調整剤でもある、複合エステルCG 5000である。
【0266】
他の油および/または成分を、0.1~75%、またはさらに0.1~50%、またはさらに0.1~30%の範囲で組成物に添加することもできる。これらの油には、白色石油、合成エステル(米国特許第6,534,454号に記載されているような)、極度に水素化処理された(severely hydro-treated)石油(工業界では「グループIIまたはIII石油」として既知である)、1つ以上の直鎖状カルボン酸のエステル、ポリアルファオレフィン(PAO)基油、アルキルベンゼン基油、ポリアルキレングリコール(PAG)基油、アルキル化ナフタレン基油、またはこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0267】
潤滑剤は、冷凍システムが圧縮機および作動流体を含み、その作動流体が潤滑剤および冷媒を含む冷凍システム中で使用することができる。上記の作動流体のいずれも、記載の冷凍システムにおいて使用することができる。
【0268】
潤滑剤はまた、冷凍システムを動作させる方法を提供することを可能にすることができ得る。記載の方法は、(I)冷凍システムに、潤滑剤および冷媒を含む作動流体を供給するステップを含む。上記の作動流体のいずれも、記載の冷凍システムのいずれかを動作させる記載の方法において使用することができる。
【0269】
したがって、本発明の方法、システム、および組成物は、一般に多様な熱伝達システム、および特に冷却システム、例えば空調(固定式空調システムおよび可動式空調システムの両方を含む)、冷却、熱ポンプ、またはガス圧縮システム、例えば工業用もしくは炭化水素ガス加工システムの関連で使用するのに適合させることができる。炭化水素ガス加工または工業用ガス加工システムで使用されるものなどの圧縮システム。本明細書で使用される場合、「冷却システム」という用語は、概して、冷却および/または加熱を提供するために冷媒を使用する任意のシステムまたは装置、またはそのようなシステムもしくは装置の任意の部分または一部を指す。そのような冷却システムには、例えば、空調装置、電気冷蔵庫、冷却装置、または熱ポンプが含まれる。
【0270】
冷却潤滑剤はまた、以下の表に定義された配合物を含むことができる。
【表4】
【0271】
工業用ギア
本発明の潤滑剤は、工業用潤滑剤添加剤パッケージとも称され得る工業用添加剤パッケージを含むことができる。言い換えれば、潤滑剤は、工業用潤滑剤、またはそれらを作製するための工業用潤滑剤または添加剤パッケージとして設計されている。潤滑剤は、自動車用ギア潤滑剤または他の潤滑剤組成物とは関係しない。
【0272】
工業用添加剤パッケージ中に存在し得る添加剤には、泡抑制剤、解乳化剤、流動点降下剤、抗酸化剤、分散剤、金属不活性化剤(銅不活性化剤など)、耐摩耗剤、極圧剤、粘度調整剤、またはその一部の混合物が含まれる。添加剤は、それぞれ、50ppm、75ppm、100ppm、またはさらに150ppm~最大で5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、またはさらに1.5重量%、または75ppm~0.5重量%、100ppm~0.4重量%、または150ppm~0.3重量%の範囲で存在することができ、重量%値は、潤滑剤組成物全体に対してである。他の実施形態において、工業用添加剤パッケージ全体は、潤滑剤組成物全体の1~20、または1~10重量%で存在し得る。しかしながら、代替的に、ベース流体の一部として考えられ得る粘度調整ポリマーを含む一部の添加剤は、ベース流体とは別個に考えた場合、最大で30重量%、40重量%またはさらに50重量%を含むより多い量で存在することができることに留意されたい。添加剤は、単独でまたはこれらの混合物として使用することができる。
【0273】
潤滑剤はまた、本発明の消泡剤成分に加えて、消泡剤も含むことができる。消泡剤は、有機シリコーンおよび非ケイ素泡抑制剤を含むことができる。有機シリコーンの例には、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが含まれる。非ケイ素泡抑制剤の例には、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびその混合物ならびにアクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、および任意に酢酸ビニルのコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、消泡剤は、ポリアクリレートであってよい。消泡剤は、組成物中に、0.001重量%~0.012重量%、または0.004重量%、またはさらに0.001重量%~0.003重量%存在し得る。
【0274】
潤滑剤は、解乳化剤も含むことができる。解乳化剤は、エチレンオキシドもしくは置換エチレンオキシドまたはこれらの混合物と順次反応したプロピレンオキシド、エチレンオキシド、ポリオキシアルキレンアルコール、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミン、またはポリアミンの誘導体を含むことができる。解乳化剤の例には、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマー、およびこれらの混合物が含まれる。解乳化剤は、ポリエーテルであってよい。解乳化剤は、組成物中に、0.002重量%~0.2重量%で存在し得る。
【0275】
潤滑剤は、流動点降下剤を含むことができる。流動点降下剤は、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合樹脂、アルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物を含むことができる。
【0276】
潤滑剤はまた、上記の添加剤の一部以外の防錆剤も含むことができる。
【0277】
潤滑剤はまた、防錆剤も含むことができる。好適な防錆剤には、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩、ヒドロカルビルアリールスルホン酸、脂肪カルボン酸またはそのエステルのヒドロカルビルアミン塩、窒素含有カルボン酸のエステル、スルホン酸アンモニウム、イミダゾリンまたはその任意の組み合わせ;またはこれらの混合物が含まれる。
【0278】
アルキルリン酸の好適なヒドロカルビルアミン塩は、式
【化8】
【0279】
(式中、R26およびR27は、独立して、水素、アルキル鎖、またはヒドロカルビルであり、典型的にはR26およびR27の少なくとも1つがヒドロカルビルである)で表され得る。R26およびR27は、4~30、または8~25、または10~20、または13~19個の炭素原子を含有する。R28、R29、およびR30は、独立して、水素、1~30、または4~24、または6~20、または10~16個の炭素原子を有するアルキル分岐または直鎖アルキル鎖である。R28、R29、およびR30は、独立して、水素、アルキル分岐もしくは直鎖アルキル鎖であるか、またはR28、R29、およびR30のうちの少なくとも1つもしくは2つは、水素である。
【0280】
R28、R29、およびR30に適したアルキル基の例としては、ブチル、secブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、secヘキシル、n-オクチル、2-エチル、ヘキシル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0281】
一実施形態において、アルキルリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、C11~C14第3級アルキル第1級アミンの混合物であってよいPrimene 81R(Rohm & Haasによって製造され、販売されている)とのC14~C18アルキル化リン酸の反応生成物であってよい。
【0282】
ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジアルキルジチオリン酸のヒドロカルビルアミン塩などの防錆剤を含むことができる。これらは、エチレンジアミン、モルホリン、もしくはPrimene 81R、またはこれらの混合物とのヘプチルまたはオクチルまたはノニルジチオリン酸の反応生成物であってよい。
【0283】
ヒドロカルビルアリールスルホン酸のヒドロカルビルアミン塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸のエチレンジアミン塩を含むことができる。
【0284】
適切な脂肪カルボン酸またはそのエステルの例としては、グリセロールモノオレエートおよびオレイン酸が挙げられる。窒素含有カルボン酸の好適なエステルの例には、オレイルサルコシンが含まれる。
【0285】
潤滑剤は、金属不活性化剤またはその混合物を含有し得る。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール(典型的にはトリルトリアゾール)の誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2-アルキルジチオベンゾチアゾール、1-アミノ-2-プロパノール、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および/または脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物から選択され得る。金属不活性化剤は、腐食防止剤とも記載され得る。金属不活性化剤は、潤滑油組成物の0.001重量%~0.5重量%、0.01重量%~0.04重量%、または0.015重量%~0.03重量%の範囲で存在し得る。金属不活性化剤はまた、組成物中に0.002重量%または0.004重量%~0.02重量%で存在してもよい。金属不活性化剤は、単独でまたはその混合物で使用され得る。
【0286】
潤滑剤はまた、抗酸化剤またはその混合物も含むことができる。(i)アルキル化ジフェニルアミン、および(ii)置換ヒドロカルビルモノスルフィドを含む抗酸化剤。いくつかの実施形態において、アルキル化ジフェニルアミンは、ビス-ノニル化ジフェニルアミンおよびビス-オクチル化ジフェニルアミンを含む。いくつかの実施形態において、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、n-ドデシル-2-ヒドロキシエチルスルフィド、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノール、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、置換ヒドロカルビルモノスルフィドは、1-(tert-ドデシルチオ)-2-プロパノールであってよい。抗酸化剤パッケージはまた、立体障害フェノールも含むことができる。立体障害フェノールに適したヒドロカルビル基の例には、2-エチルヘキシルまたはn-ブチルエステル、ドデシルまたはこれらの混合物が含まれる。メチレン架橋された立体障害フェノールの例には、4,4’-メチレン-ビス(6-tert-ブチルo-クレゾール)、4,4’-メチレン-ビス(2-tert-アミル-o-クレゾール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)またはこれらの混合物が含まれる。
【0287】
抗酸化剤は、組成物中に、0.01重量%~6.0重量%、または0.02重量%~1重量%存在し得る。添加剤は、組成物中に、1重量%、0.5重量%またはそれ以下で存在し得る。
【0288】
潤滑剤はまた、窒素含有分散剤、例えば、ヒドロカルビル置換窒素含有添加剤も含むことができる。好適なヒドロカルビル置換窒素含有添加剤には、無灰分散剤およびポリマー分散剤が含まれる。無灰分散剤は、供給されたとき、それらは金属を含有しておらず、したがって潤滑剤に添加された場合に通常硫酸塩灰分に寄与しないので、そのように称される。しかしながら、それらは、もちろん、金属含有種を含む潤滑剤に添加されると、それらは周囲金属と相互作用し得る。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基によって特徴付けられる。そのような材料の例には、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、およびそのホウ素化誘導体が含まれる。
【0289】
潤滑剤はまた、硫黄含有化合物も含むことができる。好適な硫黄含有化合物には、硫化オレフィンおよびポリスルフィドが含まれる。硫化オレフィンまたはポリスルフィドは、イソブチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、またはこれらのいくつかの組み合わせから誘導することができる。いくつかの例では、硫黄含有化合物は、上記の天然油または合成油のいずれか、またはさらにその一部の組み合わせから誘導される硫化オレフィンである。例えば、硫化オレフィンは、植物油から誘導され得る。硫化オレフィンは、潤滑剤組成物中に、0重量%~5.0重量%または0.01重量%~4.0重量%または0.1重量%~3.0重量%存在し得る。
【0290】
潤滑剤はまた、脂肪ホスファイトなどのリン含有化合物も含むことができる。リン含有化合物は、ヒドロカルビルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、リン含有化合物には、ヒドロカルビルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、リン含有化合物には、ヒドロカルビルホスファイトが含まれる。いくつかの実施形態において、ヒドロカルビルホスファイトは、アルキルホスファイトであってよい。アルキルは、炭素および水素原子だけを含むアルキル基を意味するが、しかし、飽和または不飽和のアルキル基またはその混合物が企図される。いくつかの実施形態において、リン含有化合物には、完全に飽和したアルキル基を有するアルキルホスファイトが含まれる。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、いくつかの不飽和、例えば、炭素原子間の1つの二重結合を有するアルキル基を有するアルキルホスファイトを含む。そのような不飽和アルキル基は、アルケニル基とも称され得るが、特に断りのない限り、本明細書で使用される「アルキル基」という用語に含まれる。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルキルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルキルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルキルホスファイトを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルケニルホスファイト、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルケニルホスファイト、そのエステル、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、アルケニルホスファイトを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、亜リン酸水素ジアルキルを含む。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、リン酸エステルおよび/またはそのアミン塩を本質的に含まないか、またはさらに全く含まない。いくつかの実施形態において、リン含有化合物は、脂肪ホスファイトとして記載され得る。好適なホスファイトには、4個以上、または8個以上、または12個以上の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するものが含まれる。ヒドロカルビル基の炭素原子数の典型的な範囲には、8~30、または10~24、または12~22、または14~20、または16~18が含まれる。ホスファイトは、モノヒドロカルビル置換ホスファイト、ジヒドロカルビル置換ホスファイト、またはトリヒドロカルビル置換ホスファイトであってよい。一実施形態において、ホスファイトは、硫黄を含み得ない、すなわち、ホスファイトは、チオホスファイトではない。4個以上の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するホスファイトは、式
【化9】
(式中、R
6、R
7、およびR
8のうちの少なくとも1つは、少なくとも4個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であってよく、その他は、水素またはヒドロカルビル基であってよい)で表され得る。一実施形態において、R
6、R
7、およびR
8はすべて、ヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、非環式、またはこれらの混合物であってよい。R
6、R
7、およびR
8の3つすべての基を有する式において、化合物は、トリヒドロカルビル置換ホスファイトであってよい、すなわち、R
6、R
7、およびR
8はすべて、ヒドロカルビル基であり、いくつかの実施形態において、アルキル基であってよい。
【0291】
アルキル基は、直鎖状または分岐状、典型的には直鎖状、および飽和または不飽和、典型的には飽和であってよい。R6、R7、およびR8についてのアルキル基の例には、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシル、またはこれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、脂肪ホスファイト成分潤滑剤組成物全体は、リン酸エステルおよび/またはそのアミン塩を本質的に含まないか、またはさらに全く含まない。いくつかの実施形態において、脂肪ホスファイトは、アルケニルホスファイトまたはそのエステル、例えばジメチル水素ホスファイトのエステルを含む。ジメチル水素ホスファイトは、エステル化されていてよく、いくつかの実施形態において、アルコール、例えばオレイルアルコールとの反応によってエステル交換されていてよい。
【0292】
潤滑剤はまた、1つ以上のリン酸アミン塩を含むことができるが、その添加剤パッケージ、または他の実施形態において、結果として得られる工業用潤滑剤組成物が、1.0重量%以下、またはさらに0.75重量%もしくは0.6重量%以下のそのような材料を含むような量である。他の実施形態において、工業用潤滑剤添加剤パッケージ、または結果として得られる工業用潤滑剤組成物は、リンアミン塩を本質的に含まないか、またはさらに全く含まない。
【0293】
潤滑剤はまた、1つ以上の耐摩耗添加剤および/または極圧剤、1つ以上の防錆剤および/または腐食防止剤、1つ以上の泡防止剤、1つ以上の解乳化剤、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0294】
いくつかの実施形態において、工業用潤滑剤添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用潤滑剤組成物は、リンアミン塩、分散剤、またはその両方を本質的に含まないか、またはさらに全く含まない。
【0295】
いくつかの実施形態において、工業用潤滑剤添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用潤滑剤組成物は、解乳化剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、腐食防止剤は、トリルトリアゾールを含む。さらに他の実施形態において、工業用添加剤パッケージ、または結果として生じる工業用潤滑剤組成物は、1つ以上の硫化オレフィンまたはポリスルフィド;1つ以上のリンアミン塩;1つ以上のチオリン酸エステル、1つ以上のチアジアゾール、トリルトリアゾール、ポリエーテル、および/またはアルケニルアミン;1つ以上のエステルコポリマー;1つ以上のカルボン酸エステル;1つ以上のスクシンイミド分散剤、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0296】
工業用潤滑剤添加剤パッケージは、工業用潤滑剤全体の中に、1重量%~5重量%、または他の実施形態において、1重量%、1.5重量%、またはさらに2重量%~最大で2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、7重量%、またはさらに10重量%存在し得る。工業用ギア濃縮潤滑剤に存在し得る工業用ギア添加剤パッケージの量は、上記の重量%に対応する量であり、これらの値は、油が存在しない場合と考えられる(つまり、それらは、存在する油の実際量と一緒に重量%値として処理され得る)。
【0297】
潤滑剤はまた、ヒドロキシカルボン酸の誘導体も含むことができる。好適な酸は、1~5個または2個のカルボキシ基または1~5個または2個のヒドロキシ基を含むことができる。いくつかの実施形態において、摩擦調整剤は、式
【化10】
(式中、aおよびbは、独立して、1~5または1~2の整数であってよく、Xは、脂肪族または脂環式基、または炭素鎖に酸素原子を含む脂肪族または脂環式基、または前述のタイプの置換基であってよく、当該基は、最大で6個の炭素原子を含み、a+b個の利用できる結合点を有し、各Yは、独立して、-O-、>NH、または>NR
3であってよいか、または2つのYは、一緒になって、2つのカルボニル基間に形成されるイミド構造R
4-N<の窒素を表し、各R
3およびR
4は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であってよく、但し、少なくとも1つのR
1およびR
3基は、ヒドロカルビル基であってよく、各R
2は、独立して、水素、ヒドロカルビル基、またはアシル基であってよく、但し、さらに、少なくとも1つの-OR
2基は、-C(O)-Y-R
1基の少なくとも1つに対してαまたはβであるX内の炭素原子上に位置し、但し、さらに、少なくとも1つのR
2は水素である)で表されるヒドロキシ-カルボン酸から誘導することができる。ヒドロキシ-カルボン酸は、縮合反応によってアルコールおよび/またはアミンと反応し、ヒドロキシ-カルボン酸の誘導体を形成し、これは、本明細書では、摩擦調整添加剤とも称され得る。
【0298】
一実施形態において、ヒドロキシ-カルボン酸の誘導体の調製において使用されるヒドロキシ-カルボン酸は、式
【化11】
(式中、各R
5は、独立して、Hまたはヒドロカルビル基であってよいか、またはR
5基は、一緒になって環を形成する)で表される。R
5がHである一実施形態において、縮合生成物は、任意に、アシル化またはホウ素化合物との反応によってさらに官能化されている。別の実施形態において、摩擦調整剤は、ホウ素化されていない。上記の実施形態のいずれにおいても、ヒドロキシ-カルボン酸は、酒石酸、クエン酸、またはこれらの組み合わせであってよく、また、そのような酸の反応性同等物(エステル、酸ハロゲン化物、または無水物を含む)であってよい。
【0299】
得られる摩擦調整剤は、酒石酸、クエン酸のイミド、ジーエステル、ジーアミド、またはエステルアミド誘導体、またはこれらの混合物を含むことができる。一実施形態において、ヒドロキシカルボン酸の誘導体には、酒石酸またはクエン酸のイミド、ジ-エステル、ジ-アミド、イミドアミド、イミドエステル、またはエステル-アミド誘導体が含まれる。一実施形態において、ヒドロキシカルボン酸の誘導体には、酒石酸のイミド、ジ-エステル、ジ-アミド、イミドアミド、イミドエステル、またはエステル-アミド誘導体が含まれる。一実施形態において、ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、酒石酸のエステル誘導体を含む。一実施形態において、ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、酒石酸のイミドおよび/またはアミド誘導体を含む。摩擦調整剤の調製において使用されるアミンは、式RR’NH(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、H、1または8~30または150個の炭素原子、すなわち、1~150または8~30または1~30または8~150個の原子の炭化水素ベースのラジカルを表す)を有することができる。2、3、4、6、10、または12個の炭素原子の下限、および120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子の上限を持つ炭素原子の範囲を有するアミンも、使用することができる。一実施形態において、基RおよびR’のそれぞれは、8または6~30または12個の炭素原子を有する。一実施形態において、RおよびR’の中の炭素原子の合計は、少なくとも8である。RおよびR’は、直鎖状または分岐状であってよい。摩擦調整剤を調製するのに有用なアルコールは、同様に1または8~30個または150個の炭素原子を含むことになる。2、3、4、6、10、または12個の炭素原子の下限、および120、80、48、24、20、18、または16個の炭素原子の上限の炭素原子の範囲を有するアルコールも、使用することができる。特定の実施形態において、アルコール誘導基中の炭素原子数は、8~24個、10~18個、12~16個、または13個の炭素原子であってよい。アルコールおよびアミンは、直鎖状または分岐状であってよく、分岐状である場合、分岐はその鎖中の任意の点で生じてよく、その分岐は任意の長さのものであってよい。いくつかの実施形態において、使用されるアルコールおよび/またはアミンは、分岐化合物を含み、さらに他の実施形態において、使用されるアルコールおよびアミンは、少なくとも50%、75%、またはさらに80%さえ分岐している。他の実施形態において、アルコールは、直鎖状である。いくつかの実施形態において、アルコールおよび/またはアミンは、少なくとも6個の炭素原子を有する。したがって、特定の実施形態は、単一の材料としてまたは混合物として、少なくとも6個の炭素原子の分岐アルコールおよび/またはアミン、例えば分岐C6~18またはC8~18アルコールまたは分岐C12~16アルコールから調製された生成物。特定の例には、2-エチルヘキサノールおよびイソトリデシルアルコールが含まれ、この後者は、様々な異性体の商用グレードの混合物を表すことができる。また、特定の実施形態は、単一の材料としてまたは混合物として、少なくとも6個の炭素原子の直鎖状アルコール、例えば直鎖状C6~18またはC8~18アルコールまたは直鎖状C12~16アルコールから調製された生成物。タルトレート、タルトリミド、またはタルトラミドを調製するのに使用される酒石酸は、市販のタイプ(Sargent Welchから入手可能)であり、多くの場合、供給源(天然)または合成方法(例えば、マレイン酸から)に応じて、d-酒石酸、l-酒石酸、d,l-酒石酸またはメソ-酒石酸などの1つ以上の異性体で存在する。これらの誘導体はまた、エステル、酸塩化物、または無水物のような、当業者に容易に明らかな二酸の官能性同等物から調製することができる。
【0300】
いくつかの実施形態において、添加剤パッケージは、1つ以上の腐食防止剤、1つ以上の分散剤、1つ以上の耐摩耗剤および/または極圧添加剤、1つ以上の極圧剤、本発明の消泡剤成分に加えた1つ以上の消泡剤、1つ以上の洗浄剤、および任意に、希釈剤としてのある量の基油または類似の溶媒を含む。
【0301】
追加の添加剤は、工業用ギア潤滑剤組成物全体の中に、0.1重量%~30重量%、または0.1重量%、1重量%または2重量%の最小レベル~30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、またはさらに2重量%の最大レベル、または0.1重量%~30重量%、0.1重量%~20重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、またはさらに約2重量%存在し得る。これらの範囲および限界は、組成物中に存在するそれぞれ個別の追加の添加剤、または存在する追加の添加剤のすべてに適用することができる。
【0302】
工業用ギア潤滑剤は、
【0303】
0.002重量%~0.040重量%の本発明の消泡剤成分と、
【0304】
0.0001重量%~0.15重量%の、2,5-ビス(tert-ドデシルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、トリルトリアゾール、またはこれらの混合物から選択される腐食防止剤と、
【0305】
潤滑粘度の油と、
【0306】
0.02重量%~3重量%の、アミン系またはフェノール系抗酸化剤、またはこれらの混合物から選択される抗酸化剤と、
【0307】
0.005重量%~1.5重量%のホウ素化スクシンイミドまたは非ホウ素化スクシンイミドと、
【0308】
0.001重量%~1.5重量%の中性またはやや過塩基性のカルシウムナフタレンスルホネート(典型的には、中性またはやや過塩基性のカルシウムジノニルナフタレンスルホネート)と、
【0309】
0.001重量%~5重量%、または0.01重量%~3重量%の、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルリン酸亜鉛、リン酸もしくはエステルのアミン塩、またはこれらの混合物から選択される耐摩耗剤と、を含むことができる。
【0310】
工業用ギア潤滑剤はまた、以下の表に定義された配合物も含むことができる。
【表5】
【0311】
金属作動流体
一実施形態において、潤滑剤組成物は、金属作動流体である。典型的な金属作動流体の用途は、金属除去、金属形成、金属処理、および金属保護を含むことができる。いくつかの実施形態において、金属作動油は、米国石油協会によって定義されたグループI、グループII、またはグループIIIのベースストックであってよい。いくつかの実施形態において、金属作動油は、グループIVまたはグループVのベースストックと混合されてもよい。一実施形態において、潤滑剤組成物は、記載の消泡剤成分を含むことができ、0.0025重量%~0.30重量%または0.001重量%~0.10重量%または0.0025重量%~0.10重量%の消泡剤成分を含むことができ、さらに1つ以上の追加の添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、機能性流体組成物は、油を含む。その油は、ほとんどの液体炭化水素、例えば、パラフィン系、オレフィン系、ナフテン系、芳香族、飽和または不飽和炭化水素を含むことができる。一般に、油は、水不混和性、乳化性の炭化水素であり、いくつかの実施形態において、油は、室温で液体である。天然および合成油およびこれらの混合物を含む、様々な供給源からの油を使用することができる。
【0312】
天然油には、動物油および植物油(例えば、大豆油、ラード油)、ならびにパラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン-ナフテン系のタイプの溶媒精製または酸精製された鉱油が含まれる。石炭またはシェールから誘導される油もまた有用である。合成油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合および共重合されたオレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン;アルキルベンゼン、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、またはジ-(2-エチルヘキシル)ベンゼンが含まれる。
【0313】
使用され得る合成油の別の好適な部類は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、ペンタエリスリトールなど)のエステルを含む。これらのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、または1モルのセバシン酸と、2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸とを反応させて形成される複合エステルが含まれる。
【0314】
合成油として有用なエステルは、C5~C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエステル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリペンタエリスリトールなどより作製されたものも含む。
【0315】
上記に開示したタイプの未精製、精製および再精製油(およびそれぞれ、互いとの混合物)を使用することができる。未精製油は、さらに精製処理することなく、天然または合成の原料から直接得られる。例えば、レトルト操作(retorting operation)から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理なしで使用されるエステル油は、未精製油であり得る。それらが、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、精製油は、未精製油に類似している。そうした多くの精製技術、例えば、溶媒抽出、蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどは当業者に公知である。再精製油は、すでに実際に使用されている精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと類似したプロセスによって得られる。そうした再精製油は、再生または再処理油としても公知であり、しばしば、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を指向した技術によって、さらに処理される。
【0316】
いくつかの実施形態において、油は、米国石油協会によって定義されたグループIIまたはグループIIIのベースストックである。
【0317】
任意の追加の材料を、本明細書に開示する組成物に組み込むことができる。典型的な最終組成物は、脂肪酸およびワックスなどの潤滑剤、耐摩耗剤、極圧剤、分散剤、腐食阻害剤、通常のおよび過塩基性の洗浄剤、解乳化剤、殺生剤、金属不活性化剤、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0318】
潤滑剤組成物は、1つ以上の追加の添加剤と組み合わせて使用することができ、任意に溶媒または希釈剤、例えば上記油の1つ以上も含むことができる添加剤として、上記の消泡剤成分を含むことができる。この組成物は、添加剤パッケージまたは界面活性剤パッケージと称することができる。
【0319】
ワックスの例には、石油、合成および天然ワックス、酸化ワックス、微結晶性ワックス、羊毛脂(ラノリン)および他のワックス様エステル、ならびにこれらの混合物が含まれる。石油ワックスは、いくつかの精製プロセスにより原油から単離されたパラフィン系化合物、例えばスラックワックスおよびパラフィンワックスである。合成ワックスは、エチレンまたはプロピレンなどの石油化学品から誘導されるワックスである。合成ワックスには、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン-プロピレンコポリマーが含まれる。天然ワックスは、植物および/または動物または昆虫により産生されるワックスである。これらのワックスには、蜜ろう、ソイワックス、およびカルナバワックスが含まれる。昆虫および動物ワックスには、蜜ろうまたは鯨ろうが含まれる。石油および酸化石油も、これらの組成物において使用することができる。石油および酸化石油は、それぞれ、石油およびそれらの酸化生成物から誘導される半固体炭化水素の精製混合物と定義することができる。微結晶性ワックスは、石油から精製されたより高融点のワックスと定義することができる。ワックス(複数可)は、金属作動組成物中に、0.1重量%~75重量%、例えば0.1重量%~50重量%存在し得る。
【0320】
本明細書で有用な脂肪酸には、8~35個の炭素原子、一実施形態において、16~24個の炭素原子のモノカルボン酸が含まれる。そのようなモノカルボン酸の例には、不飽和脂肪酸、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸(linoelaidic acid);α-リノレン酸;アラキドン酸;エイコサペンタエン酸;エルカ酸、ドコサヘキサエン酸;および飽和脂肪酸、例えば、カプリル酸;カプリン酸;ラウリン酸、ミリスチン酸;パルミチン酸;ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸;リグノセリン酸、セロチン酸、イソステアリン酸、ガドレイン酸、トール油脂肪酸、またはこれらの組み合わせが含まれる。これらの酸は、飽和、不飽和であるか、またはヒドロカルビル主鎖からの12-ヒドロキシステアリン酸におけるような、ヒドロキシ基などの他の官能基を有することができる。他のカルボン酸の例は、米国特許第7,435,707号に記載されている。その脂肪酸(複数可)は、金属作動組成物中に、0.1重量%~50重量%、または0.1重量%~25重量%、または0.1重量%~10重量%で存在し得る。
【0321】
過塩基性洗浄剤の例には、過塩基性金属スルホネート、過塩基性金属フェネート、過塩基性金属サリチレート、過塩基性金属サリギネート(saliginate)、過塩基性金属カルボキシレート、または過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤が含まれる。過塩基性洗浄剤は、Mg、Ba、Sr、Zn、Na、Ca、K、およびこれらの混合物などの金属を含む。過塩基性清浄剤は、その金属の化学量論に従って存在し得るのより過剰な金属含量、および金属と反応した特定の酸性有機化合物、例えばスルホン酸によって特徴付けられる金属塩または錯体である。
【0322】
「金属比」という用語は、2つの反応物の化学反応性および化学量論に従って、過塩基性化されることになる有機材料(例えば、スルホン酸またはカルボン酸)と洗浄剤を形成させるために使用される金属含有反応物(例えば、水酸化カルシウム、酸化バリウムなど)との間の反応をもたらすと予期され得る生成物中の金属の化学的同等物に対する、過塩基性材料(例えば、金属スルホネートまたはカルボキシレート)中の金属の全化学的同等物の比を指定するために使用される。したがって、通常のスルホン酸カルシウムでは、その金属比は1であるが、過塩基性スルホネートでは、金属比は4.5である。
【0323】
そのような洗浄剤の例は、例えば、米国特許第2,616,904号、同第2,695,910号、同第2,767,164号、同第2,767,209号、同第2,798,852号、同第2,959,551号、同第3,147,232号、同第3,274,135号、同第4,729,791号、同第5,484,542号、および同第8,022,021号に記載されている。過塩基性洗浄剤は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。過塩基性洗浄剤は、組成物の0.1重量%~20%、例えば、少なくとも1重量%または最大で10重量%の範囲で存在し得る。
【0324】
例示的な界面活性剤には、非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、例えばエトキシ化アルキルフェノールおよびエトキシ化脂肪族アルコール、脂肪、樹脂およびトール油酸のポリエチレングリコールエステル、ならびに脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、またはアニオン性界面活性剤、例えば直鎖状アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルホスホネート、エーテルスルフェート、スルホスクシネート、およびエーテルカルボキシレートが含まれる。界面活性剤(複数可)は、金属作動組成物中に、0.0001重量%~10重量%、または0.0001重量%~2.5重量%で存在し得る。
【0325】
潤滑剤はまた、上記の消泡剤成分に加えて、消泡剤も含むことができる。追加の消泡剤は、有機シリコーンおよび非ケイ素泡抑制剤を含むことができる。有機シリコーンの例としては、ジメチルシリコーンおよびポリシロキサンが挙げられる。非ケイ素泡抑制剤の例には、ポリエーテル、ポリアクリレートおよびその混合物ならびにアクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、および任意に酢酸ビニルのコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、消泡剤は、ポリアクリレートであってよい。消泡剤は、組成物中に、0.0025重量%~0.30重量%、または0.001重量%、またはさらに0.0025重量%~0.10重量%存在し得る。
【0326】
本明細書で有用な解乳化剤には、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンアルコールオキシド(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマー、ポリオキシアルキレンアルコール、エチレンオキシドまたは置換エチレンオキシド混合物と順次反応される、アルキルアミン、アミノアルコール、ジアミンまたはポリアミン、トリアルキルホスフェート、およびこれらの組み合わせが含まれる。解乳化剤は、腐食抑制組成物中に、0.0001重量%~10重量%、例えば、0.0001重量%~2.5重量%で存在し得る。
【0327】
使用され得る腐食抑制剤には、チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールが含まれる。その例には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルチオ-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプト-5-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(ヒドロカルビルチオ)-1,3,4-チアジアゾール、および2,5-ビス-(ヒドロカルビルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールが含まれる。腐食の他の好適な抑制剤には、エーテルアミン;ポリエトキシ化化合物、例えば、エトキシ化アミン、エトキシ化フェノール、およびエトキシ化アルコール;イミダゾリンが含まれる。他の好適な腐食抑制剤には、そのアルケニル基が10個以上のの炭素原子を含むアルケニルコハク酸、例えば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸;600~3000の分子量範囲内の長鎖アルファ,オメガ-ジカルボン酸など;および他の同様の材料が含まれる。そのような阻害剤の他の非限定的な例は、米国特許第3,873,465号、同第3,932,303号、同第4,066,398号、同第4,402,907号、同第4,971,724号、同第5,055,230号、同第5,275,744号、同第5,531,934号、同第5,611,991号、同第5,616,544号、同第5,744,069号、同第5,750,070号、同第5,779,938号、および同第5,785,896号、Corrosion Inhibitors,C.C.Nathan,ed.,NACE,1973、I.L.Rozenfeld,Corrosion Inhibitors,McGraw-Hill,1981、Metals Handbook,9th Ed.,Vol.13-Corrosion,pp.478497、Corrosion Inhibitors for Corrosion Control,B.G.Clubley,ed.,The Royal Society of Chemistry,1990、Corrosion Inhibitors,European Federation of Corrosion Publications Number 11,The Institute of Materials,1994、Corrosion,Vol.2-Corrosion Control,L.L.Sheir,R.A.Jarman、およびG. T. Burstein,eds.,Butterworth-Heinemann,1994,pp.17:10-17:39、Y.I.Kuznetsov,Organic Inhibitors of Corrosion of Metals,Plenum,1996、ならびにV.S.Sastri,Corrosion Inhibitors:Principles and Applications,Wiley,1998に見出され得る。他の腐食抑制剤(複数可)は、金属作動組成物中に、0.0001重量%~5重量%、例えば、0.0001重量%~3重量%で存在し得る。
【0328】
組成物中に含まれ得る分散剤には、油溶性ポリマー炭化水素主鎖を有するもの、および分散される粒子と関連可能な官能基を有するものが含まれる。高分子炭化水素骨格は、750~1500ダルトンの範囲の重量平均分子量を有してもよい。例示的な官能基には、アミン、アルコール、アミド、およびしばしば架橋基を介してポリマー骨格に付着しているエステル極性部分が含まれる。例示的な分散剤には、米国特許第3,697,574号および同第3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,234,435号および同第4,636,322号に記載の無灰スクシンイミド分散剤、米国特許第3,219,666号、同第3,565,804号、および同第5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、同第5,643,859、および同第5,627,259号に記載のコッホ分散剤、ならびに米国特許第5,851,965号、同第5,853,434号、および同第5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤が含まれる。分散剤(複数可)は、金属作動組成物中に、0.0001重量%~10重量%、例えば、0.0005重量%~2.5重量%で存在し得る。
【0329】
一実施形態において、本明細書で開示される金属作動組成物は、摩擦調整剤を含むことができる。摩擦調整剤は、金属作動組成物の0重量%~6重量%、または0.01重量%~4重量%、または0.05重量%~2重量%、または0.1重量%~2重量%で存在し得る。
【0330】
本明細書で使用する場合、摩擦調整剤に関する用語、「脂肪アルキル」または「脂肪」は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖、典型的には、直鎖炭素鎖を意味する。あるいは、脂肪アルキルは、典型的には、β位で分岐しているモノ分岐アルキル基であってよい。モノ分岐アルキル基の例には、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、または2-オクチルドデシルが含まれる。
【0331】
好適な摩擦調整剤の例としては、アミン、脂肪エステル、もしくは脂肪エポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;カルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンとの縮合生成物などの脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;脂肪ホスホネート;脂肪ホスファイト;ホウ素化リン脂質、ホウ素化脂肪エポキシド;グリセロールエステル;ホウ素化グリセロールエステル;脂肪アミン;アルコキシ化脂肪アミン;ホウ素化アルコキシ化脂肪アミン;第3級ヒドロキシ脂肪アミンを含むヒドロキシルおよびポリヒドロキシ脂肪アミン;ヒドロキシアルキルアミド;脂肪酸の金属塩;アルキルサリチレートの金属塩;脂肪オキサゾリン;脂肪エトキシ化アルコール;カルボン酸とポリアルキレンポリアミンの縮合生成物;または脂肪カルボン酸と、グアニジン、アミノグアニジン、尿素またはチオ尿素とからの反応生成物およびそれらの塩が含まれる。
【0332】
摩擦調整剤は、硫化脂肪化合物およびオレフィン、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオカルバメートなどの材料、または他の油溶性モリブデン錯体、例えばMolyvan(登録商標)855(R.T.Vanderbilt,Incから市販されている)またはSakuralube(登録商標)S-700もしくはSakuralube(登録商標)S-710(Adeka,Incから市販されている)も包含することができる。油溶性モリブデン錯体は、摩擦を低下させるのを支援するが、シール適合性を損なう可能性がある。
【0333】
一実施形態において、摩擦調整剤は、油溶性モリブデン錯体であってよい。油溶性モリブデン錯体は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンブルーオキシド錯体、または他の油溶性モリブデン錯体またはこれらの混合物を含むことができる。油溶性モリブデン錯体は、モリブデンのオキシドとヒドロキシドの混合物、いわゆる「ブルー」オキシドであってよい。モリブデンブルーオキシドは、5~6の平均酸化状態にあるモリブデンを有し、MoO2(OH)とMoO2.5(OH)0.5の混合物である。油溶性の例は、Luvodor(登録商標)MBまたはLuvador(登録商標)MBOの商標名で公知のモリブデンブルーオキシド錯体(Lehmann and Voss GmbHから市販されている)であり、油溶性モリブデン錯体は、金属作動組成物の0重量%~5重量%または0.1重量%~5重量%または1~3重量%存在し得る。
【0334】
一実施形態において、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態において、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステルであってもよく、別の実施形態において、長鎖脂肪酸エステルは、トリグリセリド、例えばひまわり油もしくは大豆油またはポリオールと脂肪族カルボン酸のモノエステルであってよい。
【0335】
極圧剤は、硫黄および/またはリンおよび/または塩素を含有する化合物であってよい。極圧剤の例には、ポリスルフィド、硫化オレフィン、チアジアゾール、塩素化パラフィン、過塩基性スルホネートまたはこれらの混合物が含まれる。
【0336】
チアジアゾールの例には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそのオリゴマーが含まれる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位の間に硫黄-硫黄結合を形成して、当該チアジアゾール単位の2つ以上のオリゴマーを形成することによって形成する。好適なチアジアゾール化合物の例には、ジメルカプトチアジアゾール、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-[1,2,4]-チアジアゾール、3,4-ジメルカプト-[1,2,5]-チアジアゾール、または4-5-ジメルカプト-[1,2,3]-チアジアゾールのうちの少なくとも1つが含まれる。典型的には、容易に入手可能な材料、例えば、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールが、一般的に利用されている。異なる実施形態において、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子数は、1~30、2~25、4~20、6~16、または8~10を含む。2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールは、2,5-ジオクチルジチオ-1,3,4-チアジアゾールまたは2,5-ジノニルジチオ-1,3,4-チアジアゾールであってよい。
【0337】
一実施形態において、ポリスルフィド分子の少なくとも50重量%は、トリ-またはテトラ-スルフィドの混合物である。他の実施形態において、ポリスルフィド分子の少なくとも55重量%、または少なくとも60重量%は、トリ-またはテトラ-スルフィドの混合物である。
【0338】
ポリスルフィドには、油、脂肪酸またはエステル、オレフィンまたはポリオレフィンからの硫化有機ポリスルフィドが含まれる。硫化され得る油には、天然または合成油、例えば、鉱油、ラード油、脂肪族アルコールおよび脂肪酸または脂肪族カルボン酸(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)から誘導されたカルボン酸エステル、ならびに合成不飽和エステルまたはグリセリドなどが含まれる。
【0339】
脂肪酸には、8~30個または12~24個の炭素原子を含有するものが含まれる。脂肪酸の例には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トール油が含まれる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製された硫化脂肪酸エステルは、例えば、トール油、亜麻仁油、大豆油、菜種油、および魚油を含む動物性脂肪および植物性油から得られる。
【0340】
ポリスルフィドには、広範囲のアルケンから誘導されたオレフィンが含まれる。アルケンは、典型的には、1つ以上の二重結合を有する。一実施形態において、オレフィンは、3~30個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、オレフィンは、3~16個または3~9個の炭素原子を含有する。一実施形態において、硫化オレフィンには、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、またはこれらの混合物から誘導されたオレフィンが含まれる。
【0341】
一実施形態において、ポリスルフィドは、公知の技術によって、上記のオレフィンを重合することによって誘導されるポリオレフィンを含む。一実施形態において、ポリスルフィドには、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールスアルダー付加物が含まれる。
【0342】
塩素化パラフィンには、長鎖塩素化パラフィン(long chain chlorinate paraffin)(C20+と中鎖塩素化パラフィン(C14~C17))の両方を含むことができる。例には、Dover ChemicalからのChoroflo、Paroil、Chlorowax製品が含まれる。
【0343】
過塩基性スルホネートは、上で論じられている。過塩基性スルホネートの例には、Lubrizol(登録商標)5283C、Lubrizol(登録商標)5318A、Lubrizol(登録商標)5347LC、およびLubrizol(登録商標)5358が含まれる。
【0344】
金属作動流体は、以下の表に定義される組成物を有することができる。
【表6】
【0345】
上記の物質のいくつかは、最終的な製剤で相互作用し得ることが既知であるため、最終的な製剤の成分は最初に添加されるものと異なり得る。例えば、金属イオンは他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動する可能性がある。それにより形成された、本明細書の組成物をその意図する用途において用いて形成された生成物を含む生成物は簡単に説明されない場合がある。それにもかかわらず、そのような変性物および反応生成物は全て、本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上記の成分を混合することにより調製される組成物を包含する。
【0346】
上記のようなポリ(アクリレート)コポリマーを含む潤滑組成物を使用して機械的デバイスを潤滑する方法も開示されている。機械的デバイスは、車軸、ギア、ギアボックス、またはトランスミッションを含むドライブラインデバイスであってよい。機械的デバイスはまた、内燃機関であってよい。さらに他の実施形態において、機械的デバイスは、油圧システム、タービンシステム、循環油システム、冷却潤滑システム、または工業用ギアであってよい。
【0347】
上記のようなポリ(アクリレート)コポリマーを含む潤滑組成物を使用して機械的デバイス内の泡を抑制または低減する方法も開示されている。いくつかの実施形態において、機械的デバイスは、少なくとも1つのケイ素含有ガスケットを有し得る。開示されたポリ(アクリレート)コポリマーはまた、潤滑組成物の熱および/または酸化安定性を増加させるために使用され得る。
【実施例】
【0348】
以下の実施例は、本開示技術の例示を提供する。これらの実施例は網羅的ではなく、本開示技術の範囲を限定することを意図するものではない。
【0349】
本発明のコポリマー消泡剤成分は、当該技術分野で一般に知られている方法によって調製することができる。重合は、触媒としての遊離基遊離剤の存在下、および公知の重合調節剤の存在下または非存在下で、および/または溶媒中で影響を受け得る。溶媒は、脂肪族(ヘプタンなど)または芳香族(キシレンまたはトルエンなど)であってよい。別の実施形態において、消泡剤は、炭化水素油中で重合させることができる。さらに他の実施形態において、消泡剤は、軽質芳香族石油ナフサ、重質芳香族ナフサ、またはこれらの組み合わせで重合され得る。一実施形態において、本発明の消泡剤は、トルエンの存在下で重合させることができる。
【0350】
比較組成物1(EHAT:EAT 85:15の重量比)-トルエンプロセスで、
比較組成物1は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(45.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(255.0g)、トルエン(300.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.33g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、200.0gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.5標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた1Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの400gの混合物を、90分間にわたって添加漏斗を介してフラスコに滴下し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、TBPE(0.08g)を、トルエン(5.0g)の反応容器に添加し、110℃で60分間保持する。同様に、トルエン(5.0g)中の1つ以上のTBPE(0.08g)アリコートを充填し、60分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を室温に冷却し、1Lの丸底フラスコに移す。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してトルエンを除去し、Mwが41090Daのビスカス(ポリ)アクリレートポリマー1を得る。ポリマーは、40%の有効成分になるように油とブレンドする。
【0351】
本発明の組成物2の調製(EAT:V13F、60:40の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物2は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(103.0g)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8トリデカフルオロオクチルアクリレート(V13F)(68.6g)、トルエン(171.6g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.19g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、114.4gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた1Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの228.8gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介して添加し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、TBPE(0.12g)を、反応容器に添加し、110℃で40分間保持する。同様に、5つ以上のTBPE(0.12g)アリコートを充填し、各添加後40分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を冷却して、Mwが68368Daのフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー2を含む溶液を得る。
【0352】
本発明の組成物3の調製(EHAT:EAT:V13F、20:40:40の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物3は、ガラス瓶の中で2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(40.0g)、アクリル酸エチル(EAT)(80.0g)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8トリデカフルオロオクチルアクリレート(V13F)(80.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.22g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、100.0gのトルエンと一緒に66.7gのモノマー混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた1Lの丸底フラスコに移す。この混合物を90℃に加熱し、残りの133.3gのモノマー混合物を蠕動ポンプを介して180分間にわたって添加し、添加の間90℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を90℃で180分間維持する。次いで、温度を110℃に調節し、TBPE(0.12g)を、反応容器に添加し、60分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.06g)アリコートを充填し、各添加後60分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、100.0gのトルエンを加え、30分間撹拌する。反応内容物を冷却して、Mwが123101Daのフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー3を含有する溶液を得る。
【0353】
本発明の組成物4の調製(EHAT:EAT:V13F、42.5:42.5:15の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物5は、ガラス瓶の中で2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(72.9g)、アクリル酸エチル(EAT)(72.9g)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8トリデカフルオロオクチルアクリレート(V13F)(25.8g)、トルエン(171.6g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.19g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、114.4gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた0.5Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの228.8gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介して添加し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で90分間維持する。次いで、TBPE(0.12g)を、反応容器に添加し、110℃で40分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.12g)アリコートを充填し、各添加後40分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を冷却して、Mwが67721Daのフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー4を含む溶液を得る。
【0354】
本発明の組成物5の調製(EHAT:EAT:V13F、75:23:02の重量比)-トルエンプロセスで(予言的な例)
本発明の組成物5は、ガラス瓶の中で2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(128.7g)、アクリル酸エチル(EAT)(39.5g)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8トリデカフルオロオクチルアクリレート(V13F)(3.4g)、トルエン(171.6g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.19g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、114.4gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた0.5Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの228.8gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介して添加し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で90分間維持する。次いで、TBPE(0.12g)を、反応容器に添加し、110℃で40分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.12g)アリコートを充填し、各添加後40分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を冷却して、フルオロ(ポリ)アクリレートポリマー5を含む溶液を得る。
【0355】
本発明の組成物6の調製(EHAT:EAT:V13F、37.5:37.5:25の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物6は、ガラス瓶の中で2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(64.4g)、アクリル酸エチル(EAT)(64.4g)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8トリデカフルオロオクチルアクリレート(V13F)(42.9g)、トルエン(171.6g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.19g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、114.4gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた0.5Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの228.8gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介して添加し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で90分間維持する。次いで、TBPE(0.12g)を、反応容器に添加し、110℃で40分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.12g)アリコートを充填し、各添加後40分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を冷却して、Mwが60120Daのフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー6を含む溶液を得る。
【0356】
本発明の組成物7の調製(EHAT:EAT:V8FM、71:23:7の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物7は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(41.8g)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(130.8g)、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルメタクリレート(V8FM)(12.5g)、トルエン(185.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.20g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、123.5gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、ストッパーおよび0.5Lの添加漏斗(「反応容器」)を備えた1Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの246.6gの混合物を、90分間にわたって添加漏斗を介してフラスコに滴下し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、トルエン(2.5g)中のTBPE(0.06g)を、反応容器に添加し、110℃で60分間保持する。同様に、1つ以上の、トルエン(2.5g)中のTBPE(0.06g)アリコートを充填し、各添加後120分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を室温に冷却し、1Lの丸底フラスコに移す。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してトルエンを除去し、Mwが44667Daのビスカスフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー7を得る。ポリマーは、40%の有効成分になるように油とブレンドする。
【0357】
本発明の組成物8の調製(EHAT:EAT:HFB、54:31:15の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物8は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(62.0g)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(108.0g)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート(HFB)(30.0g)、トルエン(200.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.22g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、133.3gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、ストッパーおよび0.5Lの添加漏斗(「反応容器」)を備えた0.5Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの266.7gの混合物を、90分間にわたって添加漏斗を介してフラスコに滴下し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、TBPE(0.04g)を、反応容器に添加し、110℃で60分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.04g)アリコートを充填し、各添加後60分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を室温に冷却し、1Lの丸底フラスコに移す。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してトルエンを除去し、Mwが64122Daのビスカスフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー8を得る。
【0358】
本発明の組成物9の調製(TMHAT:EAT:HFB、54:31:15の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物9は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(48.8g)、3,5,5-トリメチルヘキシルアクリレート(TMHAT)(85.0g)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート(HFB)(23.6g)、トルエン(157.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.17g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、104.7gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた0.5Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの209.3gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介してフラスコに添加し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、TBPE(0.04g)を、反応容器に添加し、110℃で60分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.04g)アリコートを充填し、各添加後60分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を室温に冷却し、1Lの丸底フラスコに移す。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してトルエンを除去し、Mwが63842Daのビスカスフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー9を得る。
【0359】
本発明の組成物10の調製(EHAT:EAT:HFB、71:23:7の重量比)-トルエンプロセスで、
本発明の組成物10は、ガラス瓶の中でアクリル酸エチル(EAT)(67.8g)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHAT)(211.8g)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート(HFB)(23.6g)、トルエン(300.0g)、およびtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPE)(0.33g)を完全に混合させることによって調製される。次いで、200.0gの混合物を、機械的撹拌機、水冷凝縮器および窒素注入口(1時間当たり0.2標準立方フィート(scfh)に設定)を有するClaisenアダプター、熱電対、およびストッパー(「反応容器」)を備えた2Lの丸底フラスコに移す。この反応混合物を、110℃に加熱する。次いで、残りの400gの混合物を、90分間にわたって蠕動ポンプを介してフラスコに滴下し、添加の間110℃に維持する。すべてのモノマー混合物を反応容器に移した後、反応温度を110℃で60分間維持する。次いで、TBPE(0.09g)を、反応容器に添加し、110℃で60分間保持する。同様に、3つ以上のTBPE(0.09g)アリコートを充填し、各添加後60分間反応させる。完全なモノマー消費が観察されたら、反応内容物を室温に冷却し、1Lの丸底フラスコに移す。次いで、ロータリーエバポレーターを使用してトルエンを除去し、Mwが46879Daのビスカスフルオロ(ポリ)アクリレートポリマー10を得る。ポリマーは、40%の有効成分になるように油とブレンドする。
【0360】
ケイ素含有消泡剤は、良好な初期発泡性能を得るために必要である。しかしながら、リン含有耐摩耗剤とSiベースの消泡剤を含む配合では、亜リン酸塩の加水分解により、消泡剤の分解を促進する酸性条件が生じ得る。この分解は、老化した泡の傾向を悪化させる。
【0361】
上記のポリ(アクリレート)ポリマーを、オートマチックトランスミッション流体(「ATF」)としての使用に適したベースライン潤滑剤に添加する。ATFは、4cStを標的化するように配合され、以下の表中の組成物を有する。
【表7】
【0362】
上記のポリ(アクリレート)ポリマーの各々の消泡性能は、インディアナスターラー酸化試験(ISOT)(流体が酸化され、鉄および銅クーポンの存在下で圧力を加えられる)の前(プレISOT)および後(ポストISOT)に、ASTM D892-13e1標準試験方法に従って、潤滑油の発泡特性について、表7に示すベースライン潤滑剤において評価される。
【0363】
ASTM D892-13e1の場合、I、II、IIIの3つの異なるシーケンス測定がある。シーケンスIの場合、流体を発泡試験に供し、94±5mL/分の一定流量で5分間、試料を通して空気を吹き込みながら、試験試料の一部を24±0.5℃の浴温で維持し、次いで10分間沈降させる。泡の体積を5分間および10分間で測定し、シーケンスI測定とする。
【0364】
次いで、試験試料の第2の部分を、シーケンスIに従うが、浴温は、93.5±0.5℃にして試験する。次いで、泡の体積を、再度測定する。これを、シーケンスII測定と称する。
【0365】
シーケンスIIから生じた泡がつぶれたら、シーケンスIIからの同じ試料を空気中に置き、43.5℃未満に冷却し、次いで、試験シリンダーを、24±0.5℃に保持された浴中に置き、試料を、シーケンスIと同じ空気流量、吹込および沈降期間に供する。これは、シーケンスIIIとして公知である。
【0366】
ISOT試験において、250mLの試験試料を、銅クーポンと鉄クーポンの存在下、150℃で192時間(または135℃で120時間)撹拌して、熱処理された流体を調製する。次いで、シーケンスI、II、およびIIIを、熱処理された流体を使用して繰り返す。
【0367】
ポリ(アクリレート)ポリマーを有するオートマチックトランスミッション流体のD892試験結果を、以下の表8に示す。
【表8】
【0368】
表8に見られるように、フルオロポリマーを含む本発明の実施例は、いかなるフルオロポリマーも含まない比較例よりも、発泡のプレISOTおよびポストISOT性能の両方において良好に機能する。
【0369】
上記で言及された文書の各々は、上記に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、優先権が主張されるあらゆる先行出願を含んで参照により本明細書に組み込まれる。いずれの文書の言及も、あらゆる権限において、そのような文書が先行技術としての資格を有すること、または当業者の一般知識を構成することの承認ではない。実施例を除き、または特に明示的に示されている場合を除き、物質の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定するこの説明の全ての数量は、「約」という単語により修正されるものとして理解されたい。本明細書に記載の量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と共に使用され得る。本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」という用語は、代替の実施形態として「~から本質的になる(consisting essentially of)」および「~からなる(consisting of)」も包含するものとする。「~から本質的になる」は、考慮下の組成物の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を許容する。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
潤滑組成物であって、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1
~C
4
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー、および
(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分と、
を含み、
前記消泡剤成分が、少なくとも1,000ダルトンのM
w
を有する、潤滑組成物。
(項2)
前記潤滑組成物が、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)約30重量%~約99重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1
~C
3
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー、および
(ii)約1重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分と、
を含み、
前記消泡剤成分が、少なくとも10,000ダルトンのM
w
を有する、上記項1に記載の潤滑組成物。
(項3)
潤滑組成物であって、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1
~C
3
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー、および
(ii)約2重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー、および
(iii)約10重量%~約70重量%の、(メタ)アクリル酸のC
4
~C
12
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分と、
を含み、
前記消泡剤成分が、少なくとも1,000ダルトンのM
w
を有する、潤滑組成物。
(項4)
前記潤滑組成物が、
a)少なくとも1つの潤滑粘度の油と、
b)
(i)約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC
1
~C
3
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートモノマー、および
(ii)約20重量%~約70重量%のフッ素化(メタ)アクリレートモノマー、および
(iii)約10重量%~約60重量%の、(メタ)アクリル酸のC
4
~C
8
アルキルエステルを有する(メタ)アクリレートコモノマー
を含む、ポリ(アクリレート)コポリマーを含む、消泡剤成分と、
を含み、
前記消泡剤成分が、少なくとも10,000ダルトンのM
w
を有する、上記項3に記載の潤滑組成物。
(項5)
前記少なくとも1つの潤滑粘度の油が、グループI油、グループII油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である、上記項1~4のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項6)
前記少なくとも1つの潤滑粘度の油が、グループI油、グループIII油、グループIV油、グループV油、またはこれらの混合物である、上記項1~5のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項7)
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、エチル(メタ)アクリレートまたはプロピル(メタ)アクリレートを含む、上記項1~6のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項8)
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、約40重量%~約80重量%の量で存在し、前記フッ素化(メタ)アクリレート(ii)モノマーが、約20重量%~約60重量%の量で存在する、上記項1~2または5~7のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項9)
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、約20重量%~約55重量%の量で存在し、前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)が、約5重量%~約50重量%の量で存在し、前記(メタ)アクリレートコモノマー(iii)が、約20重量%~約75重量%の量で存在する、上記項3~7のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項10)
リン含有耐摩耗剤、ケイ素含有消泡剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、上記項1~9のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項11)
亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、またはこれらの組み合わせを含む、上記項10に記載の潤滑組成物。
(項12)
亜リン酸水素ジアルキル、ポリジアルキルシロキサン、および/またはフッ素化ポリジアルキルシロキサンを含む、上記項10または11に記載の潤滑組成物。
(項13)
ジブチルホスファイトを含む、上記項10~12のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項14)
前記(メタ)アクリレートコモノマー(iii)が、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、上記項3~7または9~13のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項15)
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、エチル(メタ)アクリレートであり、前記アクリレートコモノマー(iii)が、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートである、上記項3~7または9~14のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項16)
前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーが、分岐状または直鎖状である、上記項1~15のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項17)
前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマーが、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、上記項1~16のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項18)
前記(メタ)アクリレートモノマー(i)が、アクリル酸エチルであり、前記フッ素化(メタ)アクリレートモノマー(ii)が、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートである、上記項1~17のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項19)
前記消泡剤成分が、約10,000Da~約350,000Da、または約10,000~約200,000Da、または約10,000Da~約120,000DaのM
w
を有する、上記項1~18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項20)
前記消泡剤成分が、少なくとも1ppm、10~800ppm、または30~400ppmの量で前記潤滑組成物中に存在する、上記項1~19のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項21)
分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、洗剤、抗酸化剤、シール膨潤剤、耐摩耗剤、またはこれらの組み合わせである、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、上記項1~20のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項22)
前記潤滑組成物が、100℃で5cSt以下の動粘度(「KV」)を有する、上記項1~21のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項23)
機械的デバイスを潤滑する方法であって、上記項1~22のいずれかに記載の潤滑組成物を前記機械的デバイスに供給することを含む、方法。
(項24)
前記機械的デバイスが、ドライブラインデバイスを含む、上記項21に記載の方法。
(項25)
前記ドライブラインデバイスが、車軸、ギア、ギアボックス、またはトランスミッションを含む、上記項24に記載の方法。
(項26)
前記機械的デバイスが、内燃機関を含む、上記項23に記載の方法。
(項27)
前記機械的デバイスが、油圧システム、タービンシステム、循環油システム、冷却潤滑システム、または工業用ギアを含む、上記項23に記載の方法。
(項28)
機械的デバイスにおける泡抑制の方法であって、前記機械的デバイスを上記項1~22のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させることを含む、方法。
(項29)
前記機械的デバイスが、少なくとも1つのケイ素含有ガスケットを含む、上記項23~28のいずれかに記載の方法。
(項30)
機械的デバイスにおける泡抑制を改善するための、上記項1~22のいずれかに記載の潤滑組成物における前記消泡剤成分の使用。
(項31)
前記潤滑組成物の泡性能を向上させるための、上記項10~22のいずれかに記載の潤滑組成物における前記消泡剤成分の使用。