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特許7331005サブ処理領域間の連関性値の処理のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】サブ処理領域間の連関性値の処理のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230815BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230815BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/16 120
A61B10/00 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020552302
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019024407
(87)【国際公開番号】W WO2019191311
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】62/649,469
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502375437
【氏名又は名称】アイカーン スクール オブ メディスン アット マウント シナイ
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】アイアコビエロ, ブライアン, エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャーニー, デニス
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522283(JP,A)
【文献】特開2015-170169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0301431(US,A1)
【文献】特開2017-023548(JP,A)
【文献】国際公開第2017/136285(WO,A1)
【文献】特表2014-535080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 5/16
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
データ処理システムであって、
ハードウェア記憶装置上に、1つ以上のデータ構造と、分類ルールを定義する実行可能な論理とを維持し、各データ構造は複数のキー付きデータセットを格納し、前記複数のキー付きデータセットそれぞれは、対応する被験者を表すそれぞれのキーを含み、
前記ハードウェア記憶装置上の前記1つ以上のデータ構造のうちの前記少なくとも1つから、被験者のキー付きデータセットを取得し、前記キー付きデータセットは、取得された前記キー付きデータセットに含まれるキーによって表される前記被験者に対して実施されたスキャン又はテストの少なくとも一方から導出された値を含み、前記値は、第1の時点での認知感情訓練セッションの実行に応答した前記被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域との連関性の大きさを特定し、
前記キー付きデータセットに対して前記実行可能な論理を実行し、前記分類ルールを前記値及び前記少なくとも1つのサブ処理領域の連関性閾値に適用してこれらを比較して、前記被験者の分類を判定
前記値が前記連関性閾値よりも大きい場合に、前記キー付きデータセットで表される前記キーと、前記被験者が第2の時点での前記被験者に対する前記認知感情訓練セッションに適格であることを示す第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連を、1つ以上のデータ構造を使用して格納
前記値が前記連関性閾値よりも小さい場合に、前記キー付きデータセットで表される前記キーと、前記被験者が前記第2の時点での前記被験者に対する前記認知感情訓練セッションに不適格であることを示す第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連を、前記1つ以上のデータ構造を使用して格納する、
ように構成された1つ以上のプロセッサを含むデータ処理システムを備える、
システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記DPFCと前記AMGとの間の実効的連関性及び前記DPFCと前記AMGとの間の実効的連関性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記dACCと前記AMGとの間の実効的連関性及び前記dACCと前記AMGとの間の実効的連関性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記DMN内の機能的連関性及び前記DMNに関連する機能的連関性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記SAL内の機能的連関性及び前記SALに関連する機能的連関性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記RCENとの間の統合性及び前記LCENと前記RCENとの間の統合性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記dDMNと前記vDMNとの間の統合性及び前記dDMNと前記vDMNとの間の統合性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記vDMNとの間の統合性及び前記LCENと前記vDMNとの間の統合性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記SALとの間の統合性及び前記LCENと前記SALとの間の統合性閾値を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記認知感情訓練セッションは、感情顔記憶課題(EFMT)、ウィスコンシンカード分類課題、情動ストループ課題、アイオワ・ギャンブリング課題、ドット・プローブ課題、顔知覚課題又は遅延割引課題のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
データ処理システムによって、ハードウェア記憶装置上に、1つ以上のデータ構造と、分類ルールを定義する実行可能な論理とを維持することであって、各データ構造は複数のキー付きデータセットを格納し、前記複数のキー付きデータセットのそれぞれは、対応する被験者を表すそれぞれのキーを含む、ことと、
前記データ処理システムによって、前記ハードウェア記憶装置上の前記1つ以上のデータ構造のうちの前記少なくとも1つから、被験者のキー付きデータセットを取得することであって、前記キー付きデータセットは、取得された前記キー付きデータセットに含まれるキーによって表される前記被験者に対して実施されたスキャン又はテストの少なくとも一方から導出された値を含み、前記値は、第1の時点での認知感情訓練セッションの実行に応答した前記被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域との連関性の大きさを特定する、ことと、
前記データ処理システムによって、前記キー付きデータセットに対して前記実行可能な論理を実行し、前記分類ルールを前記値及び前記少なくとも1つのサブ処理領域の連関性閾値に適用してこれらを比較して、前記被験者の分類を判定することと、
前記値が前記連関性閾値よりも大きい場合に、前記データ処理システムによって、前記キー付きデータセットで表される前記キーと、前記被験者が第2の時点での前記被験者に対する前記認知感情訓練セッションに適格であることを示す第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連を、1つ以上のデータ構造を使用して格納することと、
前記値が前記連関性閾値よりも小さい場合に、前記データ処理システムによって、前記キー付きデータセットで表される前記キーと、前記被験者が前記第2の時点での前記被験者に対する前記認知感情訓練セッションに不適格であることを示す第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連を、前記1つ以上のデータ構造を使用して格納することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記DPFCと前記AMGとの間の実効的連関性及び前記DPFCと前記AMGとの間の実効的連関性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記dACCと前記AMGとの間の実効的連関性及び前記dACCと前記AMGとの間の実効的連関性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記DMN内の機能的連関性及び前記DMNに関連する機能的連関性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記SAL内の機能的連関性及び前記SALに関連する機能的連関性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記RCENとの間の統合性及び前記LCENと前記RCENとの間の統合性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記dDMNと前記vDMNとの間の統合性及び前記dDMNと前記vDMNとの間の統合性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記vDMNとの間の統合性及び前記LCENと前記vDMNとの間の統合性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、前記値及び前記連関性閾値は、それぞれ、前記LCENと前記SALとの間の統合性及び前記LCENと前記SALとの間の統合性閾値を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記認知感情訓練セッションは、感情顔記憶課題(EFMT)、ウィスコンシンカード分類課題、情動ストループ課題、アイオワ・ギャンブリング課題、ドット・プローブ課題、顔知覚課題又は遅延割引課題のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月28日出願の米国特許仮出願第62/649,469号の利益及び優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
政府による助成
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号第5K23MH099223号に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本願技術の背景を、本願技術に対する先行技術を説明又は構成するためではなく、単に本願技術の理解の一助として以下に記載する。
【0004】
連関性値を、撮像などの1つ以上の方法を用いて求めることができる。連関性値は、状態を表し得る。いくつかの状態を、連関性値の変化に影響を与えることによって改善することができる。
【発明の概要】
【0005】
本願技術の概要
一局面では、本開示は、1つ以上のデータ構造と、1つ以上のデータ構造内に格納されたデータ値を処理するための実行可能な論理とを記憶しているハードウェア記憶装置を有するデータ処理システムを提供する。データ処理システムは、1つ以上のデータ構造を記憶しているハードウェア記憶装置であって、各データ構造はキー付きデータを格納し、キー付きデータの一項目は、被験者を表すキーを含み、ハードウェア記憶装置は、分類ルールを含む実行可能な論理を更に記憶している、ハードウェア記憶装置を含む。データ処理システムは、ハードウェア記憶装置から1つ以上のデータ構造のうちの少なくとも1つにアクセスし、1つ以上のデータ構造のうちのアクセスされた少なくとも1つから、特定の被験者のキー付きデータを取得するための1つ以上のデータ処理装置であって、取得されたキー付きデータは、取得されたキー付きデータに含まれるキーによって表される被験者に対して実施されたスキャン又はテストの少なくとも一方から導出された被験者連関性値を含み、被験者連関性値は、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表す、データ処理装置を更に含む。データ処理システムは、キー付きデータに対して実行可能な論理を実行し、分類ルールを被験者連関性値及び連関性閾値に適用して被験者の分類を判定するように構成された実行可能論理エンジンを更に含む。ハードウェア記憶装置による記憶は、被験者連関性値が連関性閾値よりも大きい場合に、キー付きデータで表されるキーと、第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連をデータ構造内に格納するように更に構成されている。ハードウェア記憶装置による記憶は、被験者連関性値が連関性閾値よりも小さい場合に、キー付きデータで表されるキーと、第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連をデータ構造内に格納するように更に構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex:DPFC)及び扁桃体(amygdala:AMG)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、DPFCとAMGとの間の実効的連関性及びDPFCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0007】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(anterior cingulate cortex:dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、dACCとAMGとの間の実効的連関性及びdACCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(default mode resting state network:DMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、DMN内の機能的連関性及びDMNに関連する機能的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0009】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(salience resting state network:SAL)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、SAL内の機能的連関性及びSALに関連する機能的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(left central executive network:LCEN)及び右中央実行ネットワーク(right central executive network:RCEN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとRCENとの間の統合性及びLCENとRCENとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dorsal default mode resting state network:dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(ventral default mode resting state network:vDMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、dDMNとvDMNとの間の統合性及びdDMNとvDMNとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0012】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとvDMNとの間の統合性及びLCENとvDMNとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとSALとの間の統合性及びLCENとSALとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0014】
一局面では、本開示は、被験者を連関性値に基づいて分類する方法を提供する。本方法は、1つ以上のプロセッサを含むデータ処理システムにより、被験者を特定する被験者識別情報と、被験者に対して実施されたスキャン又はテストの少なくとも一方から導出された被験者連関性値とを含むデータ構造にアクセスすることであって、被験者連関性値は、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表すことを含む。本方法は更に、データ処理システムにより、被験者連関性値を連関性閾値と比較し、被験者の分類を判定することを含む。本方法はまた、被験者連関性値が連関性閾値よりも大きいというデータ処理システムによる判定に応答して、データ処理システムにより、被験者識別情報と、第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連をデータ構造内に格納することを含む。本法はまた、被験者連関性値が連関性閾値よりも小さいというデータ処理システムによる判定に応答して、データ処理システムにより、被験者識別情報と、第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連をデータ構造内に格納することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、DPFCとAMGとの間の実効的連関性及びDPFCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、dACCとAMGとの間の実効的連関性及びdACCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0017】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、DMN内の機能的連関性及びDMNに関連する機能的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、SAL内の機能的連関性及びSALに関連する機能的連関性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとRCENとの間の統合性及びLCENとRCENとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、dDMNとvDMNとの間の統合性及びdDMNとvDMNとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとvDMNとの間の統合性及びLCENとvDMNとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0022】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、被験者連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、LCENとSALとの間の統合性及びLCENとSALとの間の統合性閾値を表し、第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。
【0023】
いくつかの実施形態では、被験者連関性値は第1の被験者連関性値であり、連関性閾値は第1の連関性閾値であり、本方法は更に、データ処理システムにより、被験者に対して実施された少なくとも1つのスキャン又はテストから導出された第2の被験者連関性値を含むデータ構造にアクセスすることであって、第2の被験者連関性値は、被験者の神経系の別の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表すことを含む。本方法はまた、データ処理システムにより、第2の被験者連関性値を比較することを含む。本方法は更に、第1の被験者連関性値が第1の連関性閾値よりも大きく、かつ第2の被験者連関性値が第2の連関性閾値よりも小さいというデータ処理システムによる判定に応答して、データ処理システムにより、被験者識別情報と、第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連をデータ構造内に格納することを含む。本方法はまた、第1の被験者連関性値が第1の連関性閾値よりも小さく、かつ第2の被験者連関性値が第2の連関性閾値よりも大きいというデータ処理システムによる判定に応答して、データ処理システムにより、被験者識別情報と、第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連をデータ構造内に格納することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、第1の被験者連関性値及び第1の連関性閾値は、DPFCとAMGとの間の実効的連関性及びDPFCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、別の少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、第2の被験者連関性値及び第2の連関性閾値は、それぞれ、dACCとAMGとの間の実効的連関性及びdACCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、第1の分類値は被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は被験者が適格であることを示す。
【0025】
更に別の一局面では、本開示は、連関性値に基づいて候補をランク付けする方法を提供する。本方法は、1つ以上のプロセッサを含むデータ処理システムにより、複数の被験者に対応する複数の被験者識別情報に関連する複数の被験者連関性値をデータ構造から求めることであって、複数の被験者連関性値の各被験者連関性値は、複数の被験者の被験者それぞれの神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表すことを含む。本方法は更に、データ処理システムにより、データ構造内の各被験者識別情報に被験者連関性値に基づいてランクを割り当てることを含む。本方法はまた、データ処理システムにより、複数の被験者からなるサブセットを選択することであって、サブセットの各被験者は、連関性閾値と被験者連関性値との差に基づいて選択されることを含む。本方法は更に、データ処理システムにより、複数の被験者からなる選択されたサブセットに対応する被験者識別情報の番号付きリストを生成することであって、被験者識別情報が、各被験者識別情報に割り当てられたランクに基づいて配列されていることを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのDPFCとAMGとの間の実効的連関性及びDPFCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのdACCとAMGとの間の実効的連関性及びdACCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのDMN内の機能的連関性及びDMN内の機能的連関性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのSAL内の機能的連関性及びSAL内の機能的連関性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0030】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのLCENとRCENとの間の統合性及びLCENとRCENとの間の統合性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのdDMNとvDMNとの間の統合性及びdDMNとvDMNとの間の統合性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのLCENとvDMNとの間の統合性及びLCENとvDMNとの間の統合性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、複数の被験者連関性値及び連関性閾値は、複数の被験者のそれぞれについてのLCENとSALとの間の統合性及びLCENとSALとの間の統合性閾値を表し、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。
【0034】
更に別の一局面では、本開示は、治療の有効性を連関性値に基づいて判定する方法を提供する。本方法は、1つ以上のプロセッサを含むデータ処理システムにより、被験者の第1の連関性値を求めることであって、第1の連関性値は、第1の時点における被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の第1の大きさを表すことを含む。本方法は更に、データ処理システムにより、被験者の第2の連関性値を求めることであって、第2の連関性値は、被験者が認知感情訓練を受けた後の第2の時点における被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関する連関の第2の大きさを表すことを含む。本方法はまた、データ処理システムにより、第1の連関性値と第2の連関性との間の差を求めることを含む。本方法は更に、差が閾値よりも大きいという判定に応答して、データ処理システムにより、被験者を特定する被験者識別情報を含むデータ構造内に、被験者識別情報と第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連を格納することを含む。本方法は更に、差が閾値よりも小さいという判定に応答して、データ処理システムにより、被験者識別情報を含むデータ構造内に、被験者識別情報と第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連を格納することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のDPFCとAMGとの間の実効的連関性を表す。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のDPFCとAMGとの間の実効的連関性を表す。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のDMN内の機能的連関性をそれぞれ表す。
【0038】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のSAL内の機能的連関性を表す。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のLCENとRCENとの間の統合性を表す。
【0040】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、背側デフォルトモード安静状態ネットワーク(dDMN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のdDMNとvDMNとの間の統合性を表す。
【0041】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び腹側デフォルトモード安静状態ネットワーク(vDMN)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のLCENとvDMNとの間の統合性値を表す。
【0042】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのサブ処理領域は、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含み、第1の連関性値及び第2の連関性値は、第1の時点及び第2の時点のそれぞれにおける被験者のLCENとSALとの間の統合性値を表す。
【0043】
更に別の一局面では、本開示は、情動障害に罹患している被験者において、有効時間量にわたってDPFCとAMGとの間の実効的連関性を増加させ、かつdACCとAMGとの間の実効的連関性を減少させる方法を提供する。
【0044】
更に別の一局面では、本開示は、情動障害に罹患している被験者において、有効時間量にわたってdDMN及びSALの少なくとも一方における機能的連関性を減少させる方法を提供する。
【0045】
更に別の一局面では、本開示は、情動障害に罹患している被験者において、有効時間量にわたってLCENとRCEN、dDMNとvDMN、LCENとvDMN又はLCENとSALのうちの少なくとも1つの対内の統合性を増加させる方法を提供する。
【0046】
本明細書に開示する方法の上述の実施形態のいずれにおいても、情動障害は、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害、社会恐怖症、強迫性障害、治療抵抗性うつ病又は境界性人格障害であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、非限定的な例示的EFMT試験を示す。参加者は、画面上に表示される顔の表情を1秒間観察し、表現された感情を答えた。次に、参加者は、観察した感情を、例えばN=2回前の顔などのN回前の顔で観察した感情と比較した。
図2図2A図2Bは、安静状態機能的連関性を示す。図2Aは、本願発明で調べた安静状態ネットワークの空間分布を図示したものである。図2Bは、治療後に観察されたネットワーク内及びネットワーク間の機能的連関性の効果量を図示したものである。効果量>0.3のネットワークのみが示されている。略語:dDMN:背側デフォルトモードネットワーク;vDMN:腹側デフォルトモードネットワーク;SAL:顕著性ネットワーク;LCEN:左中央実行ネットワーク;RCEN:右中央実行ネットワーク。
図3図3A図3Bは、EFMT課題中の実効的連関性を示す。図3Aは、EFMT前後のdACC、DPFC及びAMG間の実効的連関性の変化の概略図である。実線の矢印は連関性の増加を、破線の矢印は連関性の減少を示す。図3Bは、EFMT課題を完了する間の実効的連関性の変化をEFMT治療の前から後にわたって図示したものである。AMG:扁桃体、dACC:前帯状皮質、DPFC=背外側前頭前皮質。
図4図4は、ベースライン及び治療後の課題関連脳活動の相違を示す。座標をMNI空間内に示す:x=軸位;y=冠状;z=矢状;クラスタレベル推論を使用して、閾値p<0.001、補正なしで空間的に隣接しているボクセルを特定し、次に、ファミリーワイズエラー補正クラスタ度閾値p<0.05を適用して、統計的有意性を推論した。
図5図5は、調査におけるMDD参加者の個体群統計学的特性及び臨床学的特性を示す。
図6図6は、1つの色が1つのネットワークに対応する、健常な対照被験者の「コミュニティ分析」を示す。健常な対照被験者には、扁桃体、海馬、海馬傍回、側頭極及び小脳虫部を含む規範的な内側側頭葉ネットワーク(実線の楕円で囲まれた左側脳領域内の7個の黒点及び実線の楕円で囲まれた右側脳領域内の12個の黒点によって示される)が見られる。被験者のfMRI画像を前処理し、複数のボクセル又は領域へと分割してもよい。領域内の活動を、fMRI画像からの時系列データを使用して定量化し、機能的連関性マトリックスを算出し、これに領域グラフ理論のメトリックを適用して、連関していると思われるボクセル又は領域のコミュニティを生成してもよい。
図7図7A図7Bは、EFMT調査における7名のMDD参加者のコミュニティ分析を示す。治療前は、参加者らに内側側頭葉ネットワークが見られなかった(破線の円で囲まれた左脳領域内及び右側領域内に黒点がない)。治療後は、参加者らに部分的な内側側頭葉ネットワークが見られた(破線の円で囲まれた左脳領域内及び右側領域内に全18個中8個の黒点が戻った)。
図8図8は、例示的なデータ処理システムのブロック図である。
図9図9は、例示的なデータ構造を示す。
図10図10は、被験者が治療に適格であるか否かを判定するために利用可能な、図8に示すデータ処理システムの分類エンジンを表す例示的なプロセスのフロー図である。
図11図11は、被験者をそのそれぞれの測定された被験者連関性値に基づいてランク付けするために利用可能な、図8に示すデータ処理システムのランク付けエンジンを表す例示的なプロセスのフロー図である。
図12図12は、被験者に対する認知感情訓練の有効性を判定するために利用可能な、図8に示すデータ処理システムの有効性エンジンを表す例示的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
本願発明の方法のいくつかの局面、態様、実施形態、変形及び特徴が、以下に本願技術の十全な理解を目的として様々な程度の詳細さで記載されることが理解されよう。
【0049】
大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)、心的外傷後ストレス障害及び不安障害などのように、ネガティブな影響(例えば情動障害(Affective Disorder:AD))によって特徴づけられる精神障害に向けたより効果的な治療が急務である。そのようなADは、高頻度で起こり、就労を困難にし、コストが高くつく。実際に、世界中で3.5億の人々がうつ病に苦しんでいると推定され、これは15-44歳のアメリカ人を就業不能とする主要な要因である。
【0050】
大うつ病性障害(MDD)は、世界に共通する就業不能の主原因の一つであり、深刻な職務能力の低下及び生活の質の低下の双方を伴う(WHO、2001年)。MDDは、非常に多くみられる精神疾患であり、全人口の約17%が一生の間に罹患し、再発性及び慢性の経過を辿ることが多い(Kessler他、JAMA.289,3095-3105(2003))。利用可能な治療法は存在するが、MDD患者のうちで緩解に至るのは3分の1程度に過ぎないと推定されている(Trivedi他、Am J Psychiatry 163,28-40(2006);Rush他、Am J Psychiatry 163,1905-1917(2006))。したがって、各患者に対して適切な治療介入を行うための方法及びシステムが必要とされている。
【文献】Kessler他、JAMA.289,3095-3105(2003)
【文献】Trivedi他、Am J Psychiatry 163,28-40(2006)
【文献】Rush他、Am J Psychiatry 163,1905-1917(2006)
【0051】
本開示は、認知感情訓練が、MDD、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害、社会恐怖症、強迫性障害、治療抵抗性うつ病又は境界性人格障害などの情動障害に冒されている脳内ネットワークの短期的な可塑性の変化に関与することを示している。14名のMDD患者に対して、(例えば感情顔記憶課題(Emotional Faces Memory Task:EFMT)訓練などの)認知感情訓練を、単独療法として6週間にわたって実施した。患者らをベースラインで及び治療後にスキャンし、感情作業記憶処理の間の安静状態機能的連関性及び実効的連関性の変化を調べた。ベースラインと比較して、治療後の患者らの自己参照及び顕著性処理に関与する安静状態ネットワーク内の連関性は減少し、安静状態の機能的コネクトーム全体にわたる統合性は向上した。さらに、治療後は、脳の皮質制御領域と辺縁領域との間で、EFMTによって誘発された連関性の変調の増加が観察され、臨床的な改善が認められた。これらの結果は、認知感情訓練が安静状態ネットワークの機能的統合性及び脳の皮質制御領域から情動応答に関与する領域への実効的連関性を向上させることを示すと共に、これらの連関性パラメータの変化が症状の改善に関係することを示している。認知感情訓練はまた、他の障害に冒されている脳内ネットワークの短期的な可塑性も変化させる。例えば、障害が、全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)、社会恐怖症、境界性人格障害及び外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害を含んでもよい。
【0052】
本願開示のシステム及び方法は、患者の選択されたサブ処理領域間の実効的連関性及び/又は機能的連関性に基づいて情動障害を迅速かつ的確に検出するために有用である。さらに、本願技術のシステム及び方法は、情動障害を有する患者に対して臨床医が適切な治療介入(認知感情訓練など)を迅速に行うことを可能にする。本明細書に記載のシステム及び方法はまた、情動障害に罹患している患者の治療レジメンの維持又は変更(例えば、ある治療コースを変更する、置き換える、又は打ち切る、あるいは別の療法を取り入れるなど)に関する臨床的な意思決定の遅延の緩和を支援することにより、患者の安全を確保し、全体的な自殺リスクを低減させる。
【0053】
定義
特に他に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は通常、本願技術が属する分野において通常の技術を有する者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書及び添付の請求の範囲において使用される「a」、「an」及び「the」などの単数形は、その内容が他に明示しない限り、複数形も包含する。例えば、「細胞」という用語は、2つ以上の細胞の組み合わせなども含む。一般に、本明細書で使用される学術用語並びに、以下に記載する細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学、核酸化学及びハイブリダイゼーションにおける検査方法は、本願技術の分野において周知であり、広く採用されている。
【0054】
ここで使用される、数に関する「約」という用語は、別のものとして述べられているか又は文脈から別のものとして明らかでない限り、(そのような数が、あり得る値の0%よりも小さいか、又は100%よりも大きい場合を除いて)その数の1%、5%又は10%の双方向の(大きいか又は小さい)範囲内の数を含むものとして一般に理解される。
【0055】
ここで使用される、「脳活性」又は「脳活動」という用語は、被験者において内部刺激又は外部刺激に応答して観察される少なくとも1つの脳領域内の1つ以上のニューロンの電気的活動と、これに対応する代謝変化を指す。
【0056】
ここで使用される「認知感情訓練」は、特定の脳領域内での活性を誘発し、領域内/間の経時的な活性パターンを変調させる(脳の可塑性を制御する)ことで精神病症状を改善することを目指す目的での認知指向型の又は感情指向型の課題の実施を指す。
【0057】
ここで使用される「対照」は、比較を目的とした実験で使用される代替サンプルである。対照は、「陽性」又は「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が、特定の種類の疾患に対する治療介入の効果の相関性を調べることである場合、陽性対照(所望の治療効果を発揮することが知られている介入)と陰性対照(治療を受けない、又はプラセボを受ける被験者又はサンプル)が典型的に使用される。
【0058】
ここで使用される「実効的連関性」又は「EC」は、1つの神経系又は脳領域が別の神経系又は脳領域に対して及ぼす、又は発揮する影響を指す。ECは、脳領域/神経系間の影響について、(FCにおけるように)観察された相関性を報告するのではなく、先験的に定義されたモデルに依存し、これをテストする。1つの脳領域が別の脳領域に影響を与えるか否かを判定するために、2つの脳領域間の神経活動の相関性が、そのネットワーク又は系(作業記憶など)を活性化させることが知られているか、又はそのように考えられている特定の挙動又は認知課題の間に測定される。いくつかの実施形態では、実効的連関性をfMRIデータから測定してもよい。ECを測定及び解釈するための方法は、Friston,Human Brain Mapping 2:56-78(1994)に記載されている。実効的連関性を、短期神経ネットワークレベルの可塑性の指標とみなしてもよい(Stephan他、Biological Psychiatry 59,929-939(2006);Friston,Brain Connect.1(1):13-36(2011))。この短期可塑性は、脳が外部又は内部のきっかけに応答してその連関性及び機能性を変化させるか又は文脈付けすることを可能にする基本機構を表す(Salinas & Sejnowski,Neuroscientist 7,430-440(2001))。
【文献】Friston,Human Brain Mapping 2:56-78(1994)
【文献】Stephan他、Biological Psychiatry 59,929-939(2006)
【文献】Friston,Brain Connect.1(1):13-36(2011))
【文献】Salinas & Sejnowski,Neuroscientist 7,430-440(2001)
【0059】
ここで使用される「機能的連関性」又は「FC」は、空間的に離間した神経生理学的事象(別個の脳領域の活性)間の時間的相関を指す。FCは、観察された相関に関する記述である。機能的連関性を、血中酸素濃度依存(blood oxygen level dependent:BOLD)シグナルが特定の対象脳領域における神経活動の定量的指標として測定される機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を使用して測定されてもよい。任意の神経活動シグナル(EEGなどの電気生理学的シグナル)をFCの計算に使用することができる。FCを推定するために、別個の脳領域のシグナル間の相関性が計算される。FCの測定及び解釈のための方法は、Friston,Human Brain Mapping 2:56-78(1994)に記載されている。
【文献】Friston,Human Brain Mapping 2:56-78(1994)
【0060】
ここで使用される「統合性」は、単一のネットワーク又は脳領域内、あるいは複数のネットワーク又は脳領域間の機能的連関性又は実効的連関性の程度を指す。
【0061】
ここで使用される「ニューロン」は、シナプスを介して他の細胞と情報伝達を行う神経システムの電気的に興奮可能な細胞である。典型的なニューロンは、細胞体と、複数の短い枝状の突起(樹状突起)と、一本の長い突起(軸索)とを含む。
【0062】
ここで使用される「可塑性」という用語は、ニューロンのシナプスの経時的な増強又は減弱を指す。
【0063】
ここで使用される「シナプス」は、ニューロンの軸索の先端と、隣接するニューロン又は標的エフェクタ細胞(筋細胞など)との間の特別な領域であり、そこを介して刺激(即ち電気信号及び/又は化学信号)が伝達される。刺激は神経伝達物質によって伝達される場合もあるが、シナプス前細胞の細胞質とシナプス後細胞の細胞質とを接続しているギャップ結合を介して伝達される場合もある。
【0064】
ここで使用される「個体」、「患者」又は「被験者」という用語は、個々の有機体、脊椎動物、哺乳類又はヒトであり得る。いくつかの実施形態では、個体、患者又は被験者がヒトである。
【0065】
ここで使用される「有効時間量」は、被験者の神経系の少なくとも1つの低位処理領域における実効的連関性、機能的連関性又は統合性の所望のエンドポイントを達成可能な認知感情訓練セッションの頻度、長さ及び/又は内容(画像の数又は質など)のうちの1つ以上の組み合わせに基づく時間である。
【0066】
MDDにおける異常な脳活性
MDDを有する患者が感情的に顕著な刺激の存在下における認知制御(情報を保持し操作する能力)の持続的な欠乏を提示すること及び、そのような欠乏が病状の重篤さと関連していることが、数多くの研究によって示されている(Hamilton他、Am J Psychiatry.169(7):693-703(2012);Bora他、Psychol Med.43(10):2017-26(2013))。MDDにおける機能的磁気共鳴画像法(fMRI)研究は、認知制御を促進することが知られている背側皮質領域が活動過少である一方で、感情処理に関与する領域、特に扁桃体(AMG)は活動過多であることを示している(Deiner他、Neuroimage.61(3):677-85(2012);Fitzgerald他、Hum.rain Mapp.29,683-695(2008))。これらの異常は複数の課題で観察されているが、最も一般的には作業記憶(Wang他、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.56:101-8(2015))及び感情処理パラダイム(Stuhrmann他、Biol Mood Anxiety Disord.1:10(2011);Delvecchio他、Eur Neuropsychopharmacol.22(2):100-13(2012))を使用して研究されている。これらの局所的な脳活性異常は、皮質領域からAMGへの「トップダウン」制御入力の減少を特徴とする背側皮質領域とAMGとの機能的連関性にも当てはまる(Zhang他、Neurosci Bull.32(3):273-85(2016))。
【文献】Hamilton他、Am J Psychiatry.169(7):693-703(2012)
【文献】Bora他、Psychol Med.43(10):2017-26(2013)
【文献】Deiner他、Neuroimage.61(3):677-85(2012)
【文献】Fitzgerald他、Hum.rain Mapp.29,683-695(2008)
【文献】Wang他、Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry.56:101-8(2015))
【文献】Stuhrmann他、Biol Mood Anxiety Disord.1:10(2011)
【文献】Delvecchio他、Eur Neuropsychopharmacol.22(2):100-13(2012)
【文献】Zhang他、Neurosci Bull.32(3):273-85(2016))。
【0067】
MDDは、特に認知制御(中央実行ネットワーク;CEN)、顕著性(顕著性ネットワーク;SAL)及び自己参照処理(デフォルトモードネットワーク;DMN)に関するネットワークにおける安静状態機能的連関性の異常にも関連している(Kaiser他、JAMA Psychiatry 72:603-611(2015))。健常な個体と比較して、MDDを有する患者は、CEN領域内の連関性過少及び、背側DMNの一部を形成する大脳内側領域間の連関性過多を示す(Kaiser他、JAMA Psychiatry 72:603-611(2015))。内部ネットワーク結合のこれらの変性は、安静状態ネットワーク間の機能的な統合性の低下と関連して発生すると考えられる(Kaiser他、JAMA Psychiatry 72:603-611(2015))。総合すると、脳の機能的連関性のこれらの課題異常及び安静状態異常は、MDD個体群で共通に観察される感情調整不全のネットワークレベルでの相関を表す。
【文献】Kaiser他、JAMA Psychiatry 72:603-611(2015)
【0068】
認知感情療法
認知感情療法は、神経ネットワーク異常を標的として緩和することが理論上可能であることから、MDDへの治療介入として非常に有望である。認知感情療法の様々な形態の例は、感情顔記憶課題(EFMT)、ウィスコンシンカード分類課題、情動ストループ課題、アイオワ・ギャンブリング課題、ドット・プローブ課題、顔知覚課題及び遅延割引課題を非限定的に含む。
【0069】
EFMTは、認知制御ネットワークと感情処理ネットワークとの双方を標的とすることによって、MDDにおける感情情報処理のための認知制御を促進すること(及び、それによって感情制御を改善すること)を目的とした認知感情訓練として開発された。EFMT介入は、それぞれ背外側前頭前皮質(DPFC)及びAMGにおける活動を特異的に惹起することが示されている作業記憶(Nバック)課題と表情認識課題とを組み合わせたものである。EFMTは、コンピュータ画面上に一回に一つずつ表示される一連の顔上で観察される感情を参加者に記憶させ、次に、所与の顔上で観察される感情がN(回)前の顔で示されていた表情と一致するかどうかを答えさせる。課題の難易度レベル(N)は、標的の神経ネットワークが一貫して努力し取り組むことができるように、各参加者の出来栄えに応じて調節される。EFMT訓練レジメンは、作業記憶における感情的に顕著な刺激を操作し、従って、参加者は課題に参加して感情情報処理を行っている間、認知制御を発揮していると考えられる。健常なボランティアのサンプルでは、この課題の一バージョンがDPFC及びAMGの双方を同時に活性化させた。
【0070】
ウィスコンシンカード分類課題は、変化する環境下での被験者の抽象的な推論能力及び問題解決能力を調べるものである。ウィスコンシンカード分類課題は、前頭葉(前頭前皮質領域など)を活性化させるのに有用であり、Chen & Sun,C.W.,Sci Rep 7,338(2017);Teubner-Rhodes他、Neuropsychologia 102,95-108(2017)に記載されている。
【文献】Chen & Sun,C.W.,Sci Rep 7,338(2017);Teubner-Rhodes
【文献】Neuropsychologia 102,95-108(2017)
【0071】
情動ストループ課題は、参加者が感情的な妨害情報の存在下で提示された単語の色を言い当てるのにかかった時間の長さを調べることによって、矛盾する情報も提示されている場合の被験者の感情処理能力を測定する認知干渉課題である。情動ストループ課題は、中心前回及び前帯状部を活性化させるのに有用であり、Ben-Haim他、J Vis Exp.112(2016);Song他、Sci Rep 7,2088(2017)に記載されている。
【文献】Ben-Haim他、J Vis Exp.112(2016);Song他、Sci Rep 7,2088(2017)
【0072】
アイオワ・ギャンブリング課題(Iowa Gambling Task:IGT)は、選択挙動における動機付け処理、認知処理及び応答処理の複雑な相互作用に関与する意思決定課題であり、扁桃体及び前頭前野腹内側部(ventral-medial prefrontal cortex:vmPFC)を活性化させるのに有用である。IGTはまた、ドーパミン系活性の指標であると考えられ、Fukui他、Neuroimage 24,253-259(2005)及びOno他、Psychiatry Res 233, 1-8(2015)に記載されている。
【文献】Fukui他、Neuroimage 24,253-259(2005)
【文献】Ono他、Psychiatry Res 233, 1-8(2015)
【0073】
ドット・プローブ課題は、情動刺激に対する被験者の選択的な注意を測定するものであり、前帯状皮質(anterior cingulate cortex:ACC)及び扁桃体を活性化させるのに有用である。ドット・プローブ課題は、Gunther他、BMC Psychiatry 15,123(2015)に記載されている。
【文献】Gunther他、BMC Psychiatry 15,123(2015)
【0074】
顔認知課題は、被験者が顔の表情を理解及び解釈する能力を測定するものであり、紡錘状顔領域(fusiform face area:FFA)、扁桃体及び上側頭溝(superior temporal sulcus:fSTS)を活性化させる。Dal Monte他、Nat Commun 6,10161(2015);Hortensius他、Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 371(2016);Taubert他、Proc Natl Acad Sci U S A 115,8043-8048(2018)を参照されたい。
【文献】Dal Monte他、Nat Commun 6,10161(2015)
【文献】Hortensius他、Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 371(2016)
【文献】Taubert他、Proc Natl Acad Sci U S A 115,8043-8048(2018)
【0075】
遅延割引課題は、被験者が目標、特に目先の報酬と、より大きいが遅延を伴う報酬とを対比して設定し達成する能力を評価するものである。遅延割引課題は、眼窩前頭皮質(orbital frontal cortex:OFC)を活性化させ、Altamirano他、Alcohol Clin Exp Res 35,1905-1914(2011)に記載されている。
【文献】Altamirano他、Alcohol Clin Exp Res 35,1905-1914(2011)
【0076】
システム及び方法
図8は、例示的なデータ処理システム800のブロック図である。データ処理システム800を、上述の情動障害の治療及び治療に関するデータの分析に使用することができる。例えば、データ処理システムを、認知感情療法の実施及び療法に関連するデータの分析に使用してもよい。データ処理システム800が、1つ以上の処理ユニット802、ユーザインターフェース804、ネットワークインターフェース806、記憶装置808、メモリ810及びシステムバス830を含んでもよい。
【0077】
処理ユニット802は、メモリ810から取り出された命令に応答してこれを処理する任意の論理回路である。多くの実施形態では、処理ユニット802は、例えばカリフォルニア州マウンテンビューのIntel Corporation社製のマイクロプロセッサユニット;イリノイ州シャンバーグのMotorola Corporation社製のマイクロプロセッサユニット;カリフォルニア州サンタクララのNvidia社製のARMプロセッサ及びTEGRAシステムオンチップ(SoC)POWER7プロセッサ、ニューヨーク州ホワイトプレインズのInternational Business Machines社製のマイクロプロセッサユニット;又はカリフォルニア州サニーベールのAdvanced Micro Devices社製のマイクロプロセッサユニットなどのマイクロプロセッサユニットによって提供される。処理ユニット802は、これらのプロセッサのいずれかに基づいても、又は本明細書に記載するように動作可能ないかなるその他のプロセッサに基づいてもよい。処理ユニット802が、命令レベル並列、スレッドレベル並列、異なるキャッシュレベル及びマルチコアプロセッサを利用してもよい。マルチコアプロセッサは、単一の演算素子上に2つ以上の処理ユニットを含むことができる。マルチコアプロセッサの例として、AMD PHENOM IIX2、INTEL CORE i5及びINTEL CORE i7が挙げられる。
【0078】
ユーザインターフェース804は、1つ以上のユーザとの通信を可能にすることができるディスプレイ、入出力装置および周辺装置を含んでもよい。ユーザインターフェースは、ディスプレイ装置、タッチスクリーンディスプレイ、マウス、キーボード、ジェスチャセンシティブ装置などを含んでもよい。ネットワークインターフェース806が、インターネット、イーサネットネットワーク、あるいは任意の他のローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークなどの外部ネットワークとのインターフェースを可能にしてもよい。記憶装置808は、例えばディスクドライブ、フラッシュドライブ、ROM、EMPROM、EEPROMなどの不揮発性メモリを含んでもよい。システムバス830は、データ処理システム800の様々な構成要素間に通信を提供してもよい。
【0079】
メモリ810は、データと、1つ以上の関数を実行するために処理ユニット802により実行可能なデータ及び1つ以上のソフトウェアモジュールとを記憶してもよい。具体的には、メモリ810は、処理ユニット802によって実行されることの可能な、実行可能な論理エンジンを含んでもよい。例えば、メモリ810は、被験者データ構造812、ランク付けエンジン814、有効性エンジン816、認知感情エンジン818、分類エンジン820及び分析エンジン824を含んでもよい。メモリ810のこれらの構成要素について、以下に更に説明する。メモリ810は、ハードウェア記憶装置であってもよく、揮発性及び/又は不揮発性メモリを含んでもよい。一例として、メモリ810は、RAM、DRAM、SRAMなどの揮発性メモリと、記憶装置808に関して上述したものなどの不揮発性メモリとを含んでもよい。
【0080】
図9は、例示的なデータ構造900を示す。一例として、データ構造900は、図8に示すデータ処理システム800のメモリ810内に記憶されてもよい。データ処理システム800は、1つ以上の連関性値を1つ以上の被験者と関連付けて管理するようにデータ構造900を維持してもよい。データ構造は、データ値を格納するための複数のフィールドが各列に割り当てられた複数の列を含んでもよい。ただし、当然のことながら、いかなる種類の単一の又は複数のデータ構造も使用可能である。データ構造900は、被験者を特定する被験者識別情報を格納するキーフィールド902を記憶している。被験者識別情報は、被験者を一意に特定可能な英数字及び/又は二進数字を含んでもよい。データ構造900は、キーフィールド902内のキー又は被験者識別情報に対応するキー付きデータを含んでもよい。例えば、ある被験者識別情報に関連付けられたキー付きデータが、この被験者識別情報に対応する行にデータ値を含んでもよい。一例として、データ構造900は、1つ以上の被験者識別情報に関連付けられた第1の連関性値のセットを表すデータ値を格納するためのフィールド904を更に含んでもよい。第1の連関性値は、例えば、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関の大きさを表してもよい。いくつかの例では、第1の連関性値は、第1の時点で測定された大きさを表してもよい。
【0081】
データ構造900は、1つ以上の被験者識別情報に関連付けられたランクを表すデータ値を格納するためのフィールド906を含んでもよい。ランクが、第1の連関性値に基づいてもよく、他の被験者識別情報に関連付けられた第1の連関性値との関係における被験者識別情報の位置を表してもよい。例えば、ランクが、全ての被験者識別情報に関連する第1の連関性値の増加に基づく被験者識別情報の位置を表してもよい。データ構造900が、1つ以上の被験者識別情報に関連する分類を表すデータ値を格納するためのフィールド908を更に含んでもよい。分類が、第1の連関性値に更に基づいてもよい。分類が、例えば、「適格」などの第1の分類値と、「不適格」などの第2の分類値とを含んでもよい。分類が、例えば、被験者識別情報によって特定される被験者が、認知感情訓練に適格又は良好な候補であるか否かを示してもよい。
【0082】
データ構造900は、第1の連関性値と同様に、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表し得る第2の連関性値を表すデータ値を格納するためのフィールド910を更に含んでもよい。いくつかの例では、第2の連関性値は、例えば被験者が認知感情訓練を受けた後の第2の時点で測定された大きさを表してもよい。いくつかの例では、第2の連関性値は、第1の連関性値に関連するサブ処理領域と同じ少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表してもよい。例えば、第1の連関性値と第2の連関性値との双方が、被験者のDPFCとAMGとの間の連関性の大きさを表してもよい。
【0083】
データ構造900は、1つ以上の被験者識別情報に関連する有効性を表すデータ値を格納するための別の分類フィールド912を更に含んでもよい。有効性が、例えば被験者に対する認知感情訓練などの治療の有効性を、治療の実施のそれぞれ前及び後に測定された第1及び第2の連関性値に基づいて示してもよい。データ構造900が、更なる連関性値、分類及びランクを示してもよい。いくつかの例では、データ構造900が、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域の連関に関連する値を含んでもよい。例えば、データ構造が、被験者のdACCとAMGとの間の連関性を測定した第1の連関性値及び/又は第2の連関性値を含んでもよい。
【0084】
連関性値は、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域の実効的連関性、機能的連関性又は統合性に対応し得ることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、連関性値は、被験者に対してfMRIを実施するように構成された装置から求められてもよい。いくつかの実施形態では、連関性値は、fMRIによって提供された1つ以上の出力から推定されてもよい。連関性値は、少なくとも1つのサブ処理領域の実効的連関性、機能的連関性及び統合性を求めるように構成された任意の装置から推定又は特定され得ることが理解されるべきである。
【0085】
図10は、被験者の治療への適格性を判定するために利用可能な分類エンジン820を表す例示的なプロセス1000のフロー図である。具体的には、フロー図1000は、関連する被験者が、例えば認知感情訓練などの治療に適格であるか不適格であるかを示す分類値でデータ構造900を更新するために利用可能である。プロセス1000は、被験者に関連する被験者連関性値にアクセスする(1002)ことを含む。詳細には、プロセス1000は、被験者を特定する被験者識別情報と、被験者に対して実施されたスキャン又はテストの少なくとも一方から導出された被験者連関性値とを含むデータ構造にアクセスすることを含んでもよく、被験者連関性値は、被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表す。データ構造は、例えば図9に示すデータ構造900であってもよい。被験者連関性値は、例えばデータ構造900内の第1の連関性値又は第2の連関性値を表してもよい。神経系の少なくとも1つのサブ処理領域は、DPFC、AMG、dACC、DMN、SAL、LCEN、RCEN、dDMN及びvDMNのうちの少なくとも1つを非限定的に含み得る。一例として、データ処理システム800が、被験者識別情報「被験者1」によって特定される被験者に関連する、データ構造900内の第1の連関性値10にアクセスしてもよい。
【0086】
プロセス1000は、比較ルールを含む実行可能な論理を実行し、被験者連関性値を閾値と比較する(1004)。詳細には、プロセス1000は、データ処理システムによって、被験者連関性値を連関性閾値と比較して、被験者の分類を判定することを含んでもよい。一例として、データ処理システム800は、連関性閾値をメモリ810に記憶し、データ構造900に格納されている第1の連関性値10をこの閾値と比較してもよい。閾値は、被験者が置かれている測定環境及び設定に基づいてもよいベースライン数を表してもよく、また測定環境又は設定の変化に応じて変動してもよい。例えば、同じ被験者に対して異なる測定器具を使用することで、異なる連関性値が生じ得る。したがって、閾値を測定環境及び設定に基づいて選択してもよい。
【0087】
プロセス1000は、被験者連関性値が閾値よりも大きい場合に、第1の分類値をデータ構造内に格納する(1006)ことを含む。詳細には、データ処理システム800は、被験者連関性値が連関性閾値よりも大きいことに応答して、被験者識別情報と、第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連をデータ構造内に格納する。一例として、第1の分類は不適格であることを表してもよく、第1の分類値がエントリ「不適格」を含んでもよい。例えば、図9に示すデータ構造900を参照すると、データ処理システム800は、被験者2の第1の連関性値6を例示的な閾値5と比較し、被験者識別情報「被験者2」に関連するデータ構造900の分類列(フィールド908)にエントリ「不適格」を格納してもよい。
【0088】
プロセス1000は、被験者連関性値が閾値よりも小さい場合に、第2の分類値をデータ構造内に格納する(1006)ことを含む。詳細には、データ処理システムは、被験者連関性値が連関性閾値よりも小さいことに応答して、被験者識別情報と、第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連をデータ構造内に格納する。一例として、第2の分類は適格であることを表してもよく、第2の分類値がエントリ「適格」を含んでもよい。例えば、データ構造900において、データ処理システムは、被験者3の第1の連関性値15を例示的な閾値20と比較し、被験者識別情報「被験者3」に関連するデータ構造900の分類列(フィールド908)にエントリ「適格」を格納してもよい。
【0089】
プロセス1000はまた、繰り返し実行され、新たな連関性値が受け取られるのに伴ってデータ構造900を更新してもよい。したがって、プロセス1000は、連関性閾値に対する被験者の連関性値の変化に基づいて、フィールド908を適切な第1の分類値又は第2の分類値で更新してもよい。
【0090】
いくつかの例では、サブ処理領域は、背外側前頭前皮質(DPFC)及び扁桃体(AMG)を含んでもよく、連関性値及び連関性閾値は、DPFCとAMGとの間の実効的連関性及び、DPFCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表す。第1の分類値は、被験者が不適格であることを示してもよく、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。すなわち、実効的連関性値が閾値よりも小さい場合には、関連する被験者は認知感情訓練に適格であり、データ構造900はそのように更新されてもよい。
【0091】
いくつかの例では、サブ処理領域は、前帯状皮質(dACC)及び扁桃体(AMG)を含んでもよく、連関性値及び連関性閾値は、dACCとAMGとの間の実効的連関性及び、dACCとAMGとの間の実効的連関性閾値を表す。第1の分類値は、被験者が適格であることを示してもよく、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。すなわち、実効的連関性値が閾値よりも大きい場合には、関連する被験者は認知感情訓練に適格であり、データ構造900はそのように更新されてもよい。
【0092】
いくつかの例では、サブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)を含んでもよく、連関性値及び連関性閾値は、DMN内の機能的連関性及びDMNに関連する機能的連関性閾値を表す。第1の分類値は、被験者が適格であることを示してもよく、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。すなわち、機能的連関性値が閾値よりも大きい場合には、関連する被験者は認知感情訓練に適格であり、データ構造900はそのように更新されてもよい。
【0093】
いくつかの例では、サブ処理領域は、デフォルトモード安静状態ネットワーク(DMN)又は顕著性安静状態ネットワーク(SAL)を含んでもよく、連関性値及び連関性閾値は、DMN又はSAL内の機能的連関性及びDMN又はSALに関連する機能的連関性閾値を表す。第1の分類値は、被験者が適格であることを示してもよく、第2の分類値は、被験者が不適格であることを示す。すなわち、機能的連関性値が閾値よりも大きい場合には、関連する被験者は認知感情訓練に適格であり、データ構造900はそのように更新されてもよい。
【0094】
いくつかの例では、サブ処理領域は、LCENとRCEN、dDMNとvDMN、LCENとvDMN、及びLCENとSELのうちの1つを含んでもよい。連関性値及び連関性閾値は、それぞれ、サブ処理領域の選択された対内の統合性を表す。第1の分類値は、被験者が不適格であることを示し、第2の分類値は、被験者が適格であることを示す。すなわち、統合性値が閾値(例えば閾値0)よりも小さい場合には、関連する被験者は認知感情訓練に適格であり、データ構造900はそのように更新されてもよい。
【0095】
いくつかの例では、分類820エンジンは、サブ処理領域の2つ以上のセット間又はセット内の連関性値を考慮して、被験者の適格性を判定する。例えば、分類エンジン820は、DPFCとAMGとの間及びdACCとAMGとの間の実効的連関性の組み合わせを考慮して、適格性を判定する。DPFCとAMGとの間の実効的連関性が閾値よりも小さく、かつdACCとAMGとの間の実効的連関性が閾値よりも大きい場合には、分類エンジン820は、被験者が適格であると判定し、データ構造900をそのように更新してもよい。
【0096】
図11は、被験者らをその測定された各被験者連関性値に基づいてランク付けするために利用可能な、図8に示すデータ処理システムのランク付けエンジン814を表す例示的なプロセス1100のフロー図である。プロセス1100は、被験者に関連する被験者連関性値にアクセスする(1102)ことを含んでもよい。詳細には、プロセス1100は、複数の被験者に対応する複数の被験者識別情報に関連する複数の被験者連関性値をデータ構造から求めることを含んでもよく、複数の被験者連関性値の各被験者連関性値は、複数の被験者の各被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の大きさを表す。例えば、ランク付けエンジン814は、複数の被験者識別情報「被験者1」から「被験者n」までに関するデータ構造900内に列挙された複数の第1の連関性値にアクセスしてもよい。
【0097】
プロセス1100は、連関性値に基づいてランク付けを行う(1102)ことを含む。詳細には、プロセス1100は、データ構造内の各被験者識別情報に、被験者連関性値に基づいてランクを割り当てることを含んでもよい。例えば、図9のデータ構造900を参照すると、ランク付けエンジン814は、第1の連関性値の増加に基づいてランク列にランクを割り当ててもよく、最も低い連関性値には最も低いランクが割り当てられ、最も高い連関性値には最も高いランクが割り当てられる。場合によっては、ランク付けが逆順で割り当てられてもよい。
【0098】
プロセス1100は、被験者連関性値と閾値との差を求める(1106)ことを含んでもよい。詳細には、ランク付けエンジン814は、図9に示す第1の連関性値と閾値との差を求めてもよい。場合によっては、閾値は上述の分類エンジン820によって選択された閾値と同様であってもよい。プロセス1100は、差が0よりも大きいか否か、すなわち連関性値が閾値以上であるか否かを判定する(1108)ことを含む。
【0099】
プロセス1100は、複数の被験者からなるサブセットを選択する(1100)ことを含み、サブセットの各被験者は、連関性値と被験者連関性値との差に基づいて選択される。一例として、ランク付けエンジン814は、連関性値と閾値との間のm個の最も大きい差を有するm名の被験者を選択してもよい。被験者の選択後に、ランク付けエンジン814は、選択された被験者識別情報の番号付きリストを各ランクに基づいて生成する(1112)ことができる。
【0100】
プロセス1100もまた、繰り返し実行され、新たな連関性値が受け取られるのに伴ってデータ構造900を更新してもよい。したがって、プロセス1000は、受信された更なる被験者の第1の連関性値に基づき、又はデータ構造900内の既存の被験者識別情報に関連する新たな第1の連関性値に基づき、フィールド906を適切なランクで更新してもよい。
【0101】
いくつかの例では、少なくとも1つのサブ処理領域は、DPFCとAMG又はdACCとAMGを含んでもよく、被験者連関性値は、サブ処理領域間の実効的連関性を表してもよい。DPFCとAMGの場合は、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも小さい。dACCとAMGの場合は、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0102】
いくつかの例では、少なくとも1つのサブ処理領域は、dDMN又はSALであってもよく、被験者連関性値は、DMA又はSAL内の機能的連関性を表してもよい。いくつかのそのような例では、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0103】
いくつかの例では、サブ処理領域の対は、LCENとRCEN、dDMNとvDMN、LCENとvDMN、又はLCENとSALであってもよい。被験者連関性値は、これらのサブ処理領域の対内の機能的連関性を表してもよい。いくつかのそのような例では、複数の被験者からなる選択されたサブセットに関連する被験者連関性値は、連関性閾値よりも大きい。
【0104】
プロセス1100は、閾値よりも小さい連関性値を有する被験者を選択しないことも含み得る。いくつかの例では、このことは、認知感情訓練などの治療への応答性が低い候補を除外することを含む。したがって、それらの被験者を全被験者リストから削除することで、治療を実行する時間を改善してもよい。
【0105】
図12は、被験者に対する認知感情訓練の有効性を判定するために利用可能な、図8に示す有効性エンジンを表す例示的なプロセス1200のフロー図を示す。プロセス1200は、被験者に関連する第1の連関性値及び第2の連関性値を求める(1202)ことを含む。詳細には、有効性エンジン816は、被験者の第1の連関性値であって、第1の時点における被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の第1の大きさを表す第1の連関性値及び、被験者の第2の連関性値であって、被験者が認知感情訓練を受けた後の第2の時点における被験者の神経系の少なくとも1つのサブ処理領域に関連する連関性の第2の大きさを表す第2の連関性値を求める。例えば、図9を参照すると、有効性エンジン816は、データ構造900にアクセスして、例えば被験者識別情報「被験者1」に関連する、被験者の第1の連関性値及び第2の連関性値を求めてもよい。
【0106】
プロセス1200は、第1の連関性値と第2の連関性値との差を求める(1204)ことを含む。例えば、「被験者1」の有効性エンジン816は、第1の連関性値と第2の連関性値との差を10であるとして求めてもよい。
【0107】
プロセス1200は、差が閾値と比較してより小さいか、又はより大きいかを判定する(1206)ことを含む。詳細には、記憶されている値に有効性エンジン816がアクセスできるか、又は操作者が閾値を提供している。閾値は、治療の結果として被験者に有効な改善が見られることを示すために観察されることの必要な最も小さい連関性値の差を表してもよい。
【0108】
プロセス1200は、差が閾値よりも大きい場合には被験者を効果ありとして分類する(1208)こと及び、差が閾値よりも小さい場合には被験者を効果なしとして分類する(1210)ことを含む。詳細には、有効性エンジン816は、差が閾値よりも大きいとう判定に応答して、被験者識別情報と、第1の分類に対応する第1の分類値との間の関連をデータ構造内に格納する。一例として、第1の分類は効果があることであってもよく、第1の分類値は、エントリ「Y」であってもよい。更に、有効性エンジン816は、差が閾値よりも小さいという判定に応答して、被験者識別情報と、第2の分類に対応する第2の分類値との間の関連をデータ構造内に格納してもよい。例えば、第2の分類は効果がないことであってもよく、第2の分類値は、エントリ「N」であってもよい。当然のことながら、「Y」及び「N」以外のエントリも使用可能である。
【0109】
プロセス1200もまた、繰り返し実行され、新たな連関性値が受け取られるのに伴ってデータ構造900を更新してもよい。したがって、プロセス1000は、第1及び/又は第2の連関性値に基づき、あるいは新たな被験者識別情報に関連する新たなキー付きデータの新たな第1及び第2の連関性値に基づき、フィールド912を適切なエントリで更新してもよい。
【0110】
いくつかの例では、サブ処理領域は、DPFCとAMG又はdACCとAMGを含んでもよい。第1の連関性値及び第2の連関性値は、被験者のDPFCとAMGとの間、又はdACCとAMGとの間の実効的連関性を表す。いくつかの例では、サブ処理領域は、dDMN又はSALを含んでもよい。第1の連関性値及び第2の連関性値は、被験者のdDMN又はSAL内の機能的連関性を表す。いくつかの例では、サブ処理領域は、LCENとRCEN、dDMNとvDMN、LCENとvDMN又はLCENとSALの対を含んでもよい。第1の連関性値及び第2の連関性値は、被験者のサブ処理領域の特定の対内の統合性を表す。
【0111】
いくつかの例では、分析エンジン824は、治療の前、間又は後に収集されたデータの分析を実行してもよい。例えば、分析エンジン824は、ニューロイメージング前処理及び品質保証、安静状態ネットワーク連関性分析、タスクベースfMRI(連関性)分析、統計的分析、上述の治療後データの安静状態機能的連関性、実効的連関性及び統合性の変化の分析などのデータ分析を実行してもよい。いくつかの例では、分析エンジンは、ニューロイメージングデータの分析を実行して、実効的連関性値、機能的連関性値及び統合性値を求めてもよい。一例として、分析エンジン824は、Anand,A.,Li,Y., Wang,Y.,Wu,J.,Gao,S.,Bukhari,L.,Mathews,V.P.,Kalnin,A.,及びLowe,M.J.による「Activity and connectivity of brain mood regulating circuit in depression:a functional magnetic resonance study」、Biol Psychiatry 57,1079-1088(2005)並びに、Raichle,M.E.,MacLeod,A.M.,Snyder,A.Z.,Powers,W.J.,Gusnard,D.A.,及びShulman,G.L.による「A default mode of brain function」、Proc Natl Acad Sci U S A 98,676-682に記載の手順に基づくソフトウェアを含んでもよい。
【文献】Anand,A.,Li,Y., Wang,Y.,Wu,J.,Gao,S.,Bukhari,L.,Mathews,V.P.,Kalnin,A.,及びLowe,M.J.による「Activity and connectivity of brain mood regulating circuit in depression:a functional magnetic resonance study」、Biol Psychiatry 57,1079-1088(2005)
【文献】Raichle,M.E.,MacLeod,A.M.,Snyder,A.Z.,Powers,W.J.,Gusnard,D.A.,及びShulman,G.L.による「A default mode of brain function」、Proc Natl Acad Sci U S A 98,676-682
【0112】
いくつかの例では、認知感情訓練エンジン818は、例えば上述のEFMT、ウィスコンシンカード分類課題、情動ストループ課題、アイオワ・ギャンブリング課題、ドット・プローブ課題、顔知覚課題及び遅延割引課題などの1つ以上の認知感情療法を実行してもよい。
【0113】
システム
システムは、コンピューティングデバイスがユーザに対して感情識別課題及び作業記憶課題を実施することを可能にするように構成された任意のスクリプト、ファイル、プログラム、命令セット又はコンピュータ実行可能なコードを含むことができる。コンピューティングデバイスは、ディスプレイを含むか、又はディスプレイに接続されていてもよい。コンピューティングデバイスは、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、モバイルフォン、タブレット又はその他のコンピューティングデバイスであり得る。システムは、複数の顔画像を含むデータベースを含んでもよい。顔画像によって描出される顔が、例えば、幸福、悲しみ、恐怖、興奮などの異なる感情状態にあってもよい。顔画像のそれぞれを、その対応する感情状態によってデータベース内でラベル付けしてもよい。いくつかの例では、異なる感情状態の顔画像の部分を含む参照データベースを使用して、顔画像をオンデマンドで生成してもよい。例えば、幸福な状態の顔画像を、目、口などの単一の顔部分のみを含むサブ画像に分割してもよい。システムは、これらのサブ画像をオンデマンドで組み合わせて独自の顔画像としてもよい。システムはまた、データベース内に複数の訓練方針を含んでもよい。訓練方針は、各画像をユーザに対して提示する時間の長さ及び順序を管理してもよい。
【0114】
システムは、一連の画像をユーザに提示してもよい。システムを使用した課題の間、参加者は、ディスプレイ上に一回に一つずつ提示される一連の顔画像で参加者が観察する感情を見分ける。各画像を約1秒間、続いて固視十字を1秒間表示してもよい。画像がユーザに対して提示される際に、システムは、ユーザに対し、ユーザが観察した感情の順序を記憶するように指示してもよい。Nバック作業記憶パラダイムを使用して、参加者は、それぞれの顔が提示された後に、たった今観察したばかりの顔の表情がN回前の顔で示されていた表情と同じであるか否かを答えるように促されてもよい。いくつかの例では、各訓練セッションが15個のタスクブロックを含み、これらの間にNのレベルが参加者の成績に応じて変化する、すなわち、ブロック中に参加者の正確度が向上又は低下するのに伴って難易度レベルがブロック中に(それぞれ)増加又は減少することを、訓練方針が示してもよい。第1の訓練セッションは、難易度レベルN=1で開始し、次のセッションの開始時の難易度レベルは、直前のセッションの成績によって決まる。EFMTは、次第に難易度の上がる作業記憶パラダイムを利用するので、課題が参加者の能力レベルに合わせて調節され、各訓練セッションを通して一貫して努力することを可能にする。次第に難易度の上がるNバック作業記憶は、作業記憶能力を向上させることが示されている。
【実施例
【0115】

本願技術を以下の例を用いて更に説明するが、これらの例はいかなる点においても限定的であると見なされるべきではない。
【実施例1】
【0116】
例1:実験材料及び方法
被験者。現在大うつ病エピソード(major depressive episode:MDE)を発現している25名の服薬中でないMDDの参加者を募集し、親臨床試験プロトコル(NCT01934491)の一部として6週間の感情顔記憶課題(EFMT)又はシャム対照訓練(sham-control training:CT)を完了する前及び後にfMRIスキャンを行う調査プロトコルに参加させた。参加者は、オンラインで及びうつ病研究調査を目的とした地方新聞広告を通して募集された。全ての参加者は、18歳~55歳であり、熟練した臨床医によってDSM-IV―TR軸I障害の構造化臨床面接(Structured Clinical Interview for DSM-IV-TR Axis I Disorders:SCID)(First,M.B.他による「Structured clinical interview for DSM-IV axis disorders(SCID)」(New York State Psychiatric Institute,Biometrics Research,New York,NY(1995)参照)を使用して評価された。その他の軸I併存疾患の診断は、(過去6か月以内の精神障害、双極性障害及び物質乱用又は依存を除き)参加者のMDD診断が一次診断であると見なされる場合に限り許可された。ハミルトンうつ病評価尺度-17項目版(HAM-D)(Hamilton,J.P他、Am J Psychiatry 169:693-703(1960)参照)で測定されたMDDの重症度は、少なくとも「中等度」(Ham-D≧16)であることを要した。非常に重度のMDD(HAM-D≧27)を有する参加者については、調査から除外し、医療照会を行った。現在MDEの間に何らかの抗うつ薬を服用したことを報告した参加者及び、治療応答なしの履歴(標準的な抗うつ薬の適切な試験の不成功が2度以上)を有する参加者は、調査から除外された。調査前6週間以内又は調査中のいずれかの時点で認知行動療法を受けた場合も、プロトコルに基づき調査から除外された。EFMT訓練の実施に差し支えると思われる視覚障害又は運動障害を有する参加者も除外された。
【0117】
最初の予備スクリーニング面接で、適格の可能性のある参加者に調査手順についての説明を行い、参加者がインフォームドコンセント用紙に署名し、スクリーニング及びベースラインの手続を完了した。EFMTの有効性を調べる親臨床試験で適格とされ、正式登録された参加者に対し、次に、fMRIプロトコルへの登録を打診し、参加を選択した場合にはインフォームドコンセントを得た。各調査セッションの完了の都度、参加者に時間及び交通費の負担を補償した。
【0118】
手順。研究的介入(EFMT)を20回の調査訪問に分けて実施した。最初の訪問では、MDD診断の確定及び症状の重症度の判定のために、SCID及びHam-Dを被験者に対して実施した。これに続いて、処置前fMRIスキャンを含むベースライン評価を実施した。調査コーディネータが、グループ分けのための所定のランダム化シーケンスを使用して、参加者をランダムにEFMTグループ又はCTグループに振り分けた。参加者に、全18訓練セッションを6週間(それぞれ約20~35分間、1週間に3回)にわたって課した。いずれかの週で少なくとも2回の訓練セッションを完了できなかった参加者、又は調査の課程で3回を超える訓練セッションを欠席した参加者については、臨床試験プロトコルに基づいて訓練を打ち切りとした。週ごとに、参加者のグループ分けを知らされていない博士又は修士レベルの複数の臨床医により、重症度(Ham-D)評価を実施した。Ham-D評価者らは、評価実施の高度な訓練を受け、2つの別個の訓練面接でのクラス内相関係数(intra-class correlation coefficient:ICC)が>0.8であった。訓練セッションの完了後1週間以内に結果評価を実施し、この時にベースライン評価及びfMRIスキャン手順を繰り返した。
【0119】
認知訓練介入。EFMTは過去の刊行物で詳細に説明されている(Iacoviello, B.M.他、Eur Psychiatry 30:75-81(2015);Iacoviello,B.M.他、Depress Anxiety 31:699-706(2014)参照)。EFMTは、認知制御と感情処理ネットワークとの双方を標的とすることで、MDDにおける感情情報処理のための認知制御を促進するように設計され、感情識別課題と作業記憶課題とを組み合わせることで達成された。EFMT課題において、参加者らはコンピュータ画面上に一回に一つずつ提示される一連の顔画像で観察した感情を識別し、次に、観察した感情の順序を記憶するように指示された。図1に、EFMT課題における例示的な試験のシーケンスを示す。Nバック作業記憶パラダイムを使用して、参加者らは、それぞれの顔が提示された後に、たった今観察したばかりの顔の表情がN回前の顔で示されていた表情と同じであるか否かを答えるように促された。このように、EFMT課題は感情情報処理に対する認知制御の発揮に関与し、扁桃体(AMG)及び背外側前頭前皮質(DPFC)を同時に活性化させると推測された。CTの条件としては、感情的顔の代わりに中立的な形状を刺激として使用する以外は、EFMTと同じNバックパラダイムを作業記憶訓練で使用した。EFMTセッション又はCTセッションは、完了までに約15~25分を要し、6週間で18のEFMTセッション又はCTセッションを完了する(6週間にわたって週ごとに3セッション)という調査レジメンであった。
【0120】
ニューロイメージングデータ取得。イメージングデータを、32チャンネルの受信コイルを有する3T Skyraスキャナ(Siemens,Erlangen,Germany)を使用して、マウントサイナイ医科大学にて取得した。参加者らを調査登録時(ベースライン)及び6週間のEFMT訓練終了直後にスキャンした。解剖学的な安静状態及び課題ベースのfMRIデータを取得した。課題には、EFMTセッションの短縮バージョン及び変形バージョンが含まれた。10回の試験の12ブロックを、対象タイプ(0バック、1バック又は2バック)を知らせる2・5秒間の合図で開始した。0バック試験では、被験者らは対象画像(感情を表出している顔)を見て、それぞれの次の刺激が対象画像と全く同じ画像であるか否かを答えた。1バック試験及び2バック試験では、参加者らは、各顔が「1回前」又は「2回前」に提示されていたのと同じ感情を表出しているか否かを答えた。解剖学的な安静状態及び課題取得データは、全ての参加者について、ベースラインと治療後で同一であった。
【0121】
安静状態fMRIデータ及び課題fMRIデータを、以下のパラメータのT2シングルショットエコー・プラナーグラジエントエコー撮像シーケンスを使用して取得した:エコー時間/繰返し時間=35/1000ミリ秒(ms)、等方分解能:2.1mm、脳全体の隣接アキシャルスライス70枚、有効視野(FOV):206×181×147mm、マトリクスサイズ:96×84、フリップ角:60度、マルチバンド(MB)係数:7、blipped CAIPIRINHA(高速パラレルイメージング)位相エンコードシフト=FOV/3、ランプサンプリングでの帯域幅:~2kHz/ピクセル、エコー間隔:0.68ms、及びエコートレインレングス:57.1ms。安静状態での取得時間は10分間であり、WM課題の取得時間は7分34秒間であった。構造画像を、T1強調3D超高速スキャン(MPRAGE)シーケンス(FOV:256×256×179mm、マトリックスサイズ:320×320、等方分解能:0.8mm、TE/TR=2.07/2400ms、反転時間(TI)=1000ms、二項(1,-1)脂肪抑制でのフリップ角:8度、帯域幅:240Hz/ピクセル、エコー間隔:7.6ms、面内加速(GeneRalized Autocalibrating Partial Parallel Acquisition)係数:2、総取得時間:7分)を使用して取得した。
【0122】
ニューロイメージング前処理及び品質保証。ベースラインで及び治療後に取得した課題fMRIデータ及び安静状態fMRI(rs-fMRI)データを同一の方法で別々に前処理した。分析は全て、バージョン12の統計的パラメトリックマッピングソフトウェア(SPM12;www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm/software/spm12/)及びData Processing and Analysis for Brain Imaging Toolbox(Yan,C.G.他、Neuroinformatics 14:339-351(2016)参照)を使用して実施された。各fMRIデータセットを、剛体変換;機能的スキャンと解剖学的T1スキャンとの間の画像レジストレーション;モントリオール神経科学研究所の定位標準空間への機能的スキャンの空間正規化;最大半量のガウスカーネルで全幅6mmの関数マスク内での空間平滑化を使用して体動補正した。頭部の体動補正のために、安静状態データを以下のステップで更に前処理した:ウェーブレットスパイク除去(小さな振幅(<1mm)の頭部体動に関連する信号トランジェントの除去)(Patel,A.X.他、Neuroimage 95:287-304(2014)参照);トレンド除去;動作パラメータとこれらの派生物との重回帰(24パラメータモデル)(Friston,K.J.他、Magn.Reson.Med.35:346-355(1996)参照)並びに、白質(white matter:WM)、脳脊髄液(cerebro-spinal fluid:CSF)の時系列傾向及びこれらの線形傾向。WM信号及びCSF信号を、成分ベースの雑音除去方法(CompCor、5つの主要成分)(Behzadi,Y.他、Neuroimage 37:90-101(2007)参照)を使用して計算した。最後に、バンドパスフィルタリング([0.01-0.1]Hz)を行った。個々の課題fMRIデータセット及びrs-fMRIデータセットは、体積/体積頭部体動が3mm超又は1度超の場合には除外された。ベースラインスキャンとフォローアップスキャンとの間で、最大頭部体動又は平均頭部体動の著しい差異はなかった(全てp>0.2)。
【0123】
安静状態ネットワーク連関性分析。ベースラインで及び治療後に取得したrs-fMRIデータを、以下に説明する同一の方法で別々に分析した。方法は、MDDと最も関連性の高い安静状態ネットワークに重点を置いて実施された。詳細には、腹側デフォルトモードネットワーク(vDMN)及び背側デフォルトモードネットワーク(dDMN)、左中央実行ネットワーク(LCEN)及び右中央実行ネットワーク(RCEN)並びに顕著性ネットワーク(SAL)を調べた(図2A)。分析の再現性を担保するために、これらのネットワークを、スタンフォード大学のFunctional Imaging in Neuropsychiatry Disorders Lab(<http://findlab.stanford.edu/functional_ROIs.html>) (Shirer,W.R.他、Cerebral Cortex 22:158-165 (2012)参照)が無償で提供している検証済みのテンプレートを使用して定義した。各参加者において、機能的な結合及び分離をそれぞれ反映するネットワーク内及びネットワーク間の機能的連関性をネットワークごとに計算した。ネットワーク内の機能的連関性については、各ネットワーク領域内のボクセルの平均時系列を計算し、次に、ネットワーク領域のペア間のPearsonの相関係数を計算して平均を求めた。ネットワーク間の機能的連関性については、最初に各ネットワーク内の平均時系列を(ネットワークのボクセル部分の全ての時系列を平均化することで)計算し、次にネットワークの各ペア間の時系列のPearsonの相関係数を計算した。ネットワーク内及びネットワーク間の双方の測定結果に対して、フィッシャーのZ変換を更に行った。
【0124】
課題ベースのfMRI(連関性)分析。ベースラインで及び治療後に取得した課題fMRIデータを、以下に説明する同一の方法で別々に分析した。この分析は、動的因果モデリング(Dynamic Causal Modeling:DCM;Friston, K.J.他、Neuroimage 19:1273-1302(2003)参照)を使用して計算された実効的連関性に重点を置いて実施された。DCMでは、内的な連関性は課題に無関係な領域間の結合強度を表す一方で、変調効果は課題によって誘発された領域間の連関性の変化を表した(Id.)。次に、モデル化されたニューロン動態を、血液動態順モデル(Stephan,K.E.他、Neuroimage 38:387-401(2007)参照)を使用して、観察された血中酸素濃度依存(BOLD)信号と関連付けた。確立された手順(Dima,D.他、Human Brain Mapping 36:4158-4163(2015); Dima,D.他、Transl.Psychiatry 6:e706(2016); Moser,D.A.他、Mol.Psychiatry 23:1974-1980(2018)参照)の後に、5mm球状の関心体積(volume of interest:VOI)を、ベースラインにおける作業記憶負荷依存性の変調の極大集合のMNI座標を中心として両側に定義した(左下頭頂葉皮質(parietal cortex:PAR):-42,-48,44、右PAR:44,-38,42;dACC左前帯状皮質(dACC):-6 24 44、右dACC:6 22 44;左DPFC:-28 4 60、右DPFC:28 8 58;左AMG:-26 -4 -20、右AMG:26 -2 -20)。分析間の連続性を担保するために、同じVOIを治療後のDCMで使用した。領域の時系列を、参加者固有のVOI内の全ての(p<0.01で)活性化しているボクセルの第1の固有変量(eigenvariate)で要約した。上記に定義したVOIを使用して、全ての参加者の基本的な8領域DCMを特定した。半球内及び半球間双方のこれらの領域間相互の連関性を定義した。作業記憶負荷(駆動入力)の効果は、左右両側のPARに及んだ。この基本レイアウトを出発点として、作業記憶負荷が領域間結合の強度に及ぼす変調効果を考慮することにより、構造化されたモデル空間を導出した。連関性の整合及び強度を推定する際のモデルに関する不確実性にランダム効果ベイズモデル平均化(Random effects Bayesian Model Averaging:BMA)が適応することから、次にBMAを実行し、各参加者について全モデルの平均連関性推定値を求めた(Penny,W.D.他、PLoS Comput Biol 6:e1000709(2010);Stephan,K.E.他、Neuroimage 49:3099-3109(2010)参照)。 結果として得られたベースラインデータセット及び治療後データセットからの平均DCMからの事後平均を使用して、領域間連関性に作業記憶負荷が及ぼす変調効果の変化をテストした。完全を期すために、ベースライン及び治療後の脳活動の作業記憶負荷依存性変調の相違を、一般的な線形モデルを使用して調べ、結果を図4に示す。
【0125】
統計学的分析。Cohenのdに基づく反復測定の効果量を計算し、所与の機能的測定値の治療後の変化を、式(1):
【0126】
【数1】
を使用して推定した。
【0127】
式中、m1及びm2は、所与の測定のそれぞれベースライン及び治療後の平均値である;sは、所与の測定のベースライン及び治療後の平均標準偏差であり、γは所与の連関値測定のベースライン及び治療後の値である。Cohenのdの通常の解釈に基づき、効果量が0.3よりも大きい結果のみを有意である可能性がより高いものとして示す(Cohen,J.による「Statistical power and analysis for the behavioral sciences.」Hillsdale,N.J., Lawrence Erlbaum Associates,Inc.,(1988)参照)。Pearsonの相関係数を使用して、症状レベルの変化と脳画像測定結果の変化との関係を評価した。調査が診査としての性質を有することから、統計的推論の閾値は、p<0.05、補正なしであった。ベースラインスキャンと治療後スキャンとの間の異なる臨床測定結果を、対応のあるt検定に基づいて比較した。
【実施例2】
【0128】
例2:安静状態機能的連関性及び実効的連関性の治療後の観察
25名の参加者が本調査への参加への署名付きの同意を提供した。2名の参加者は、ベースラインfMRIスキャンを受けたが、ランダム化前に親臨床試験の継続を中止した。参加者のうち16名が親臨床試験のEFMT条件に、7名の参加者が対照(CT)条件に割り当てられた。5名の参加者は脱落し、臨床試験プロトコル又は結果fMRIスキャンを完了しなかった(2名はEFMT群の参加者、3名はCT群の参加者であった)。現在の調査サンプルには、EFMTレジメンを完了し、有効な事前/事後fMRIデータ及び行動データを入手可能な14名の参加者が含まれた。4名のシャム対照参加者も、有効な事前/事後画像データ及び行動データを有した。現在の報告は、有効な事前/事後画像データ及び行動データを有する14名の参加者を含んだ。図5に、本調査でEFMT治療を受けた14名のMDD参加者の個体群統計学的特性及び臨床学的特性を示す。
【0129】
現在の調査参加者が由来する親臨床試験において、EFMTは、CTと比較してMDD症状をベースラインから調査結果までの間に著しく改善させたことが観察された(Iacoviello,B.M.他、npj Digital Medicine 1:21(2018)参照)。現在のサンプルの14名の参加者らはまた、EFMT介入に対する臨床応答を平均して示した(Ham-Dがベースラインでの平均スコア19.14(SD=2.6)から調査アウトカムでの平均スコア11.43(SD=5.12)まで改善した;t(13)=6.88、p<.001)(図5)。
【0130】
安静状態機能的連関性の変化。図2Bに示すように、ネットワーク内連関性は、dDMN(d=-0.38)及びSAL(d=-0.36)で治療後の減少が観察された。一方、LCENとRCENとの間(d=0.30)、vDMNとdDMNとの間(d=0.32)及びLCENとvDMN(d=0.45)及びSAL(d=0.53)双方との間では連関性が増加した(図2B)。しかし、治療後の安静状態連関性の変化と症状の変化との間の相関性は概ね低く、統計的に有意とはならなかった。
【0131】
実効的連関性。治療後に、dACCからAMGへの実効的連関性は両側で低下し(左:d=-0.44;右:d=-0.32)、DPFCからAMGへのトップダウンの連関性は右側で増加した(d=0.33)(図3)。DPFC及びDACC双方からAMGへの実効的連関性の治療後の変化は、HAM-Dの合計スコアで測定したうつ症状の減退と相関しており、後者は補正なしの閾値で顕著であった(r=0.51、p=0.05)。
【0132】
図6に、42名の健常な対照被験者の安静時のコミュニティ分析を示す。これらのデータは、健常な被験者では、内側側頭葉ネットワーク(海馬-扁桃体-側頭極)が十分に統合されていることを示している。図7A図7Bは、EFMT調査からの7名のMMD参加者の治療前(左パネル)及び治療後(右パネル)の安静時のコミュニティ分析を示したものである。これらの結果は、EFMT治療前のMDD参加者は、破線の円で囲まれた左脳領域内及び右脳領域内に黒い点がないことから分かるように、内側側頭葉ネットワークの統合性が低かったが、EFMT治療がMDD参加者の内側側頭葉ネットワークを部分的に修復したことを示している。
【0133】
図6に、42名の健常な対照被験者の安静時のコミュニティ分析を示す。これらのデータは、健常な被験者では、内側側頭葉ネットワーク(海馬-扁桃体-側頭極)が十分に統合されていることを示している。図7は、EFMT調査からの7名のMMD参加者の治療前(左パネル)及び治療後(右パネル)の安静時のコミュニティ分析を示したものである。これらの結果は、EFMT治療前のMDD参加者は内側側頭葉ネットワークの統合性が低かったが、EFMT治療がMDD参加者の内側側頭葉ネットワークを部分的に修復したことを示している。
【0134】
これらの結果は、EFMT訓練がMDD患者の神経可塑性を変化させることを示している。右側DPFCに異常を有するMDDにおける前頭前野の機能障害の側性化の程度が主に感情処理の自発的な制御と関連していることを過去の研究が示唆している(Grimm他、Biol Psychiatry.63(4):369-76(2008))。本明細書に記載の結果は、作業記憶によって誘発された右側DPFCから右側AMGへの連関性の変調がEFMT後に増加し、これに伴って症状が改善したことを示している。
【0135】
更なる治療後の変化が、dACCとAMGとの間の機能的結合/実効的連関性の減弱化に関連している。過去の研究は、MDDでは、dACCはその連関性が複数の異なる課題に対して期待される変化を示さない(Shine他、Neuron 92:544-554(2016))ことから、ごく初期段階から非適応的な柔軟性の欠如を示すことを示唆している(Ho他、Neuropsychopharmacology.42(12):2434-2445(2017))。EFMT訓練後に、症状の改善を伴うdACCからAMGへの連関性の減弱が観察された。これらのデータは、MDD患者のEFMT訓練後のdACCの実効的連関性の減少はdACCの機能の改善を反映している可能性があることを示唆している。本調査で観察された症状の改善は、AMGとDPFCとの連関性の増加及びAMGとdACCの連関性の減少によって示されるように、辺縁領域の調節性制御の修復に関連していると考えられる。図3A図3Bを参照されたい。
【0136】
治療後のdDMA及びSALの機能的連関性の減少並びに、認知制御、自己参照及び顕著性処理に関与するネットワーク間の統合性の増加も観察された。前頭頭頂安静状態ネットワークの過少な連関性及び統合性の低下は、MDDとの相関性が高いことが判明している(Kaiser他、JAMA Psychiatry 72:603-611(2015))。したがって、EMFT後のネットワーク安静状態機能的連関性の変化の殆どが、認知制御のための重要なネットワークであると考えられるCENに関与していることに注目すべきである(Smith他、Proc Natl Acad Sci U S A.106(31):13040-5(2009))。CENは、左半球と右半球との間並びにDMN及びSALとの間でより統合性が高かった。認知制御、自己参照及び顕著性処理のためのネットワーク間の統合性のこのような増加は、MDDを有する患者において、感情刺激に対するより整合性の高い協調的な応答を促進する可能性がある。更に、治療後のdDMNの機能的連関性の減少のエビデンスも存在し、この現象は抗うつ薬による良好な治療後にも観察されている(Brakowski他、J Psychiatr Res.92:147-159(2017))。
【0137】
等価物
本願技術は、本願技術の個々の態様の一例として意図されている本願中に記載の特定の実施形態に限定されるものではない。当業者に明らかであるように、本願技術の数多くの修正及び変形を、その精神及び範囲から逸脱することなく行ってもよい。本願中に列挙したものに加えて、本願技術の範囲内の機能上等価な方法及び装置は、上述の記載から当業者に明らかであろう。そのような修正及び変形は、本願技術の範囲に含まれることが意図される。本願技術が特定の方法、試薬、化合物、組成物又は生体系に限定されず、これらは当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は特定の実施形態の説明のみを目的としており、限定的であることは意図されていないことも理解されたい。
【0138】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群形式で記載される場合、本開示の記載はマーカッシュ群の任意の個々の要素又はマーカッシュ群の要素の下位集合をも対象とすることが当業者に理解されるであろう。
【0139】
当業者に理解されるように、任意の及び全ての目的で、特に書面による明細書を提供することに関して、本明細書に開示する全ての範囲は、その任意の及び全ての部分的範囲並びに部分的範囲の組み合わせも包含する。列挙されている範囲はいずれも、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに分割されることが十分に記述されていること及び、該範囲をそのように分割できることが容易に理解されよう。非限定的な例として、本明細書に記載されているそれぞれの範囲を、下方の1/3の部分、中央の1/3の部分、及び上方の1/3の部分などに簡単に分割することができる。当業者には、「(最大)までの」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての用語には、記載されている数が含まれること、及び、それらの用語は、上記のような部分的範囲に後で分割することができる範囲を意味していることも理解されよう。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々の要素が含まれる。したがって、例えば、1~3個のセルを含む群は、1個、2個又は3個のセルを含む群を指す。同様に、1~5個のセルを含む群は、1個、2個、3個、4個又は5個のセルを含む群を指す。
【0140】
本明細書中で記載又は引用されている全ての特許、特許出願、特許仮出願及び刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない限りにおいて、その全ての図面及び表を含む内容全体が参照により組み込まれる。
図1
図2
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