(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】少なくとも2つの本体と、動力引出手段を有する航空機のタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/32 20060101AFI20230815BHJP
F02C 7/36 20060101ALI20230815BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20230815BHJP
F02C 7/06 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
F02C7/32
F02C7/36
F01D25/16 A
F01D25/16 B
F02C7/06 Z
(21)【出願番号】P 2020570560
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 FR2019051427
(87)【国際公開番号】W WO2019243712
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャリエ,ジル・アラン・マリー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨテル,ロイク・ポール・イブ
(72)【発明者】
【氏名】ミリヤー,バンサン・フランソワ・ジョルジュ
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0044987(US,A1)
【文献】特開2006-220153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288369(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0213629(US,A1)
【文献】特開平02-286802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/32
F02C 7/36
F01D 25/16
F01D 15/12
F01D 25/04
F01D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの低圧体(12a)および高圧体(12b)、ならびに少なくとも前記低圧体上で動力を引き出すための
第1の動力引出手段(54)を備え、前記
第1の動力引出手段は、前記
低圧体および前記高圧体の回転の長手方向軸線(A)に対して実質的に半径方向に延在する第1の動力引出シャフト(54a)を具備し、この第1の
動力引出シャフトは、前記低圧体によって駆動される第1のアイドラベベルホイール(54c)と噛み合った第1のベベルギア(54b)を保持する半径方向内側端部を具備し、タービンエンジンはさらに、前記
長手方向軸線の周りに延在し、ステータと一体の第1の環状軸受支持体(76)を備える航空機のタービンエンジン(10)であって、
前記第1の
環状軸受支持体は、
略円筒形の第1の部分(76b)を具備し、第1の部分は、前記アイドラ
ベベルホイール
における略円筒形の第2
の部分(54ca)と同軸に延
在し、こ
れらの第1の部分および第2の部分は、軸受(78、80)によって一方が他方の内側に案内され、前記アイドラ
ベベルホイールは、前記第1の
環状軸受支持体から独立している環状減衰部(86,86’)を通して前記低圧体によって駆動されることを特徴とする、航空機のタービンエンジン(10)。
【請求項2】
前記第1の部分および前記第2の部分(76b、54ca)は、互いから
前記長手方向軸線
の方向に離間された2つの隣接する軸受(78、80
)によって案内される、請求項1に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項3】
前記第1の
環状軸受支持体(76)は、前記
第1の動力引出シャフト(54a)を案内するためのハウジング(72)に固定または接続されている、請求項1または2に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項4】
前記第1の
環状軸受支持体(76)は、
前記長手方向軸線
の方
向の部分において略L字形を有し、その半径方向の内周が前記第1の部分(76b)を備え、かつ前記アイドラ
ベベルホイール(54c)によって少なくとも部分的に囲まれ
る、請求項1から3のいずれか一項に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項5】
前記アイドラ
ベベルホイール(54c)は、
前記長手方向軸線
の方
向の部分において略L字形を有し、その半径方向の内周が前記第2の部分(54ca)を備え、かつ前記
第1の環状軸受支持体(76)によって少なくとも部分的に囲まれ
る、請求項1から3のいずれか一項に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項6】
前記アイドラ
ベベルホイール(54c)は、前記
長手方向軸線(A)の周りでおよび/または半径方向にねじれて弾性変形する能力を有する
前記環
状減衰部(86、86’)を介して前記低圧体(12a)によって駆動される、請求項1から5のいずれか一項に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項7】
前記アイドラ
ベベルホイール(54c)は、貫通オリフィス(88)の環状の列を有する、および/または
、前記長手方向軸線の方向のC字形
の部分を有する環状部分(86b’)を有する前記環状減衰部(86、86’)を介して前記低圧体(12a)によって駆動され
、前記C字形の環状部分が、軸線に上流または軸線に下流に向けられた開口部を画定する、請求項1から6のいずれか一項に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項8】
前記第1のベベルギア(54b)および前記
アイドラベベルホイール(54c)は、高圧体(12b)を案内するための軸受(48a)を潤滑するための
潤滑エンクロージャ(E)に収容されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のタービンエンジン(10)。
【請求項9】
請求項8に記載のタービンエンジン(10)において、前記高圧体(12b)上で動力を引き出すための
第2の動力引出手段(50)をさらに備え、
第2の動力引出手段は、前記
長手方向軸線(A)に対して実質的に半径方向に延在し、前記高圧体によって駆動される第2のアイドラベベルホイール(50c)と噛み合う第2のベベルギア(50b)を保持する半径方向内側端部を具備する第2の動力引出シャフト(50a)を備え、前記第2の
ベベルギアおよび前記第2のアイドラ
ベベルホイールは、前記潤滑エンクロージャ(E)に収容されている、タービンエンジン。
【請求項10】
請求項9に記載のタービンエンジン(10)において、周囲に管状アーム(44)の環状の列が配置された環状シュラウド(62)を具備する中間ケーシング(40)を備え、この
環状シュラウドは、前記潤滑エンクロージャ(E)を、この
潤滑エンクロージャ
の周りに延在する環状ガス流ダクトから隔離して、前記第1の
環状軸受支持体(76)と高圧体(12b)を案内するための前記軸受(48a)との間で
前記長手方向軸
線の方向に延在し、前記第1の
動力引出シャフト
(54a)および前記第2の
動力引出シャフト(50a
、)は、この中間ケーシングの異なるアームを通って延在する、タービンエンジン。
【請求項11】
請求項10に記載のタービンエンジン(10)のモジュール式の組立方法であって、
(a)タービンエンジンの第1のモジュール(B)を組み立てるステップであって、この第1のモジュールは、高圧体(12b)の少なくとも一部、中間ケーシング(40)の少なくとも一部、メインシャフト(12aa)を含む低圧体(12a)の一部、および第2の動力引出手段(50)を備えるステップと、
(b
)タービンエンジン
の第2のモジュール(C)を取り付け、そして上流からの
前記長手方向軸線
の方向の並進によってそれを前記第1のモジュール(B)の一部に、およびその周りに組み立てるステップであって、前記第2のモジュールは、前記第1の
環状軸受支持体(76)と、前記第1の動力引出手段(54)とを備えるステップと、
(c
)タービンエンジン
の第3のモジュール(D)を取り付け、そして上流からの
前記長手方向軸線
の方向の並進によってそれを組み立てるステップであって、この第3のモジュールは、二次シャフト(104)を含む低圧体の一部ならびに前記
環状減衰部(86、86’)を備え、この第3のモジュールは、前記第1のモジュール(B)の部品と前記第2のモジュール(C)の部品との間で半径方向に係合する部品を備え、この
モジュール式の組立方法は、一方では、スプライン(106)を介して低圧体(12a)のメインシャフト(12aa)と二次シャフト(104)を係合することを可能にし、他方では、他のスプライン(90)を介して、前記二次シャフト(104)によって保持される
前記環状減衰部(86、86’)と前記アイドラ
ベベルホイール(54c)の係合、またはこのアイドラ
ベベルホイールと既に係合した中間部分(92)と係合することを可能にするステップと、
を備える、請求項10に記載のタービンエンジン(10)のモジュール式
の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの本体を有し、動力を引き出すための手段を有する航空機のタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、文献である、欧州特許出願公開第1701019号明細書、国際公開第99/47799号、米国特許出願公開第2012/213629号明細書、仏国特許出願公開第2645907号明細書、仏国特許出願公開第3026775号明細書および国際公開第2015/166187号を含む。
【0003】
航空業界は現在、商用航空にハイブリッドエンジンを使用することの関連性について多くの疑問を投げかけている。電気エネルギーの使用は、現在、航空機の機能を満たすためだけでなく、タービンエンジンの機能を電化するためにも検討されている。
【0004】
これは、化石燃料エネルギーと電気エネルギーを組み合わせて推進部(タービンエンジンのファン)を駆動し、特定のエンジンおよび/または航空機の機能に電力を供給するハイブリッドエンジンアーキテクチャ解決策の研究につながる。
【0005】
これらのアーキテクチャは、高いバイパス比と減速機機構に基づくことができるが、マルチボディ機構(2つまたは3つの本体)に基づく場合もある。これらのアーキテクチャでは、タービンエンジンは低圧体と、高圧体とを備え、各本体は、圧縮機のロータをタービンのロータに接続するシャフトを備えている。
【0006】
電気エネルギーを生成するために、これらの本体の1つから機械的動力を引き出し、この動力を発電機に戻すことが知られている。この発電機はスタータとしても機能するため、タービンエンジンの始動時には電気モータとして機能することもできる。
【0007】
タービンエンジン本体上で動力を引き出すための手段は、従来より、動力引出シャフトを備え、その一端は、本体によって駆動されるアイドラベベルホイールと噛み合ったベベルギアを保持する。
【0008】
現在知られている技術では、タービンエンジンの低圧体上での高い動力の引き出しを、特に高いバイパスおよび減速比と一体化することは非常に複雑である。動力引出手段に必要な寸法および空間は、高圧体上での引出手段と同様の一体化を想定するには大きすぎる。したがって、低圧体のシャフトにアイドラホイールを直接取り付けることは不可能である。
【0009】
1つの解決策は、低圧体のシャフトと動力引出シャフトとの間に歯車列を追加することであり得る。しかしながら、必要な部品の数が多いため、引出手段はより複雑でかさばるものになるであろう。
【0010】
ディメンショナルチェーンがいくつかの歯車で構成されることになり、そのうちの1つは低圧体のシャフトに直接固定されることになる。本体を案内するための軸受は、この歯車から軸方向に離れているため、ギア間の噛み合いの遊びに関して問題を招く可能性がある。
【0011】
さらに、高バイパス比のタービンエンジンは、特にエンジンの直径が小さいことを特徴としている(これは細腰タイプである)。したがって、エンジンの一次流れの流れダクトは内径が小さく、このことは、特に、本体と本体の周りに延在するこのダクトとの間の利用可能な環状空間を減少させる。動力引出手段、および特に上述した歯車列は、それらが半径方向に大きすぎてダクトと干渉するため、そこに取り付けることができなかった。
【0012】
最後に、動力引出手段は、これらの軸受の支持体を介して、振動および動的応力を軸受に伝達する傾向があることが観察された。このような振動は、軸受だけでなくタービンエンジンの動作および耐用年数にも悪影響を与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第1701019号明細書
【文献】国際公開第99/47799号
【文献】米国特許出願公開第2012/213629号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2645907号明細書
【文献】仏国特許出願公開第3026775号明細書
【文献】国際公開第2015/166187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の問題の少なくともいくつかに対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、航空機のタービンエンジンを提供し、このタービンエンジンは、少なくとも1つの低圧体および高圧体、ならびに少なくとも前記低圧体に動力を引き出すための手段を備え、前記引出手段は、前記本体の回転の長手方向軸に対して実質的に半径方向に延在する第1の動力引出シャフトを備え、この第1の引出シャフトは、前記低圧体によって駆動される第1のアイドラベベルホイールと噛み合った第1のベベルギアを保持する半径方向内側端部を備え、タービンエンジンはさらに、前記軸の周りに延在し、ステータと一体型の第1の環状軸受支持体を備えており、
前記第1の軸受支持体は、前記アイドラホイールの第2の実質的に円筒形の部分と同軸に延在する第1の実質的に円筒形の部分を備え、前記第1の部分および前記第2の部分は、軸受によって一方が他方の内側に案内され、前記アイドラホイールは、前記第1の軸受支持体から独立している環状減衰部を通して前記低圧体によって駆動されることを特徴とする。
【0016】
したがって、本発明は、低圧(またはLP)体上で動力を引き出すための解決策を提供する。
【0017】
アイドラホイールは、その弾性変形能力のために振動および/または動的応力を吸収することができる減衰部を介して、本体によって駆動されることが理解される。さらに、軸受支持体はこの減衰部から独立しているため、振動および/または動的応力を軸受支持体、および軸受支持体が関連付けられている軸受に伝達することはない。これにより、軸受の最適な機能が保証され、特に、動力引出シャフトなど、これらの軸受を中心とする部品の最適な案内が保証される。
【0018】
本発明によるタービンエンジンは、単独で、または互いに組み合わせて、以下の特徴の内の一つ以上を備えてよく、
-前記第1の部分および前記第2の部分は、玉軸受およびころ軸受など、互いに軸線方向に離間された2つの隣接する軸受によって案内され、
-前記第1の軸受支持体は、前記引出シャフトを案内するためのハウジングに固定または接続されており、
-前記第1の軸受支持体は、軸線方向の半分の部分において略L字形を有し、その半径方向の内周が前記第1の部分を具備し、かつ前記アイドラホイールによって少なくとも部分的に囲まれることが意図されており、
-前記アイドラホイールは、軸方向の半分の部分において略L字形を有し、その半径方向の内周が前記第2の部分を具備し、かつ前記軸受支持体によって少なくとも部分的に囲まれることが意図されており、
-前記アイドラホイールは、前記軸線周りでおよび/または半径方向にねじれて弾性変形する能力を有する環状減衰部を介して前記低圧体によって駆動され、
-前記アイドラホイールは、貫通オリフィスの環状の列を有する、および/または開口部が軸線方向に上流または軸線方向に下流に向けられたC字形の軸線方向の半分の部分を有する、環状部分を有する環状減衰部を介して前記低圧体によって駆動され、
-前記第1のベベルギアおよび前記第1のアイドラホイールは、高圧体を案内するための軸受を潤滑するためのエンクロージャに収容されており、
-タービンエンジンはまた、前記高圧体上で動力を引き出すための手段を備え、前記引出手段は、前記軸線に対して実質的に半径方向に延在し、前記高圧体によって駆動される第2のアイドラベベルホイールと噛み合う第2のベベルギアを保持する半径方向内側端部を備える第2の動力引出シャフトを備え、前記第2の歯車および前記第2のアイドラホイールは、前記潤滑エンクロージャに収容されており、
-タービンエンジンは、管状アームの環状の列が周りに配置された環状シュラウドを具備する中間ケーシングを備え、このシュラウドは、前記潤滑エンクロージャを、このエンクロージャの周りに延在する環状のガス流ダクトから隔離し、かつ高圧体を支持するために前記第1の軸受支持体と前記軸受との間に軸線方向に延在し、前記第1の引出シャフトおよび前記第2の引出シャフトは、この中間ケーシングの異なるアームを通して延在している。
【0019】
本発明はまた、上記のようなタービンエンジンのモジュール式組立方法にも関し、これは、
(a)タービンエンジンの第1のモジュールの組み立てステップであって、この第1のモジュールは、高圧体の少なくとも一部、中間ケーシングの少なくとも一部、メインシャフトを含む低圧体の一部、ならびに第2の動力引出手段を備えるステップと、
(b)上流からの軸線方向の並進による、前記第1のモジュールの一部上およびその周りへの第2のタービンエンジンモジュールの取り付けおよび組み立てステップであって、前記第2のモジュールは、前記第1の軸受支持体と、前記第1の動力引出手段を備えるステップと、
(c)上流からの軸線方向の並進による、第3のタービンエンジンモジュールの取り付けおよび組み立てステップであって、この第3のモジュールは、二次シャフトを含む低圧体の一部ならびに前記減衰部を備え、この第3のモジュールは、前記第1のモジュールの部品と前記第2のモジュールの部品との間で半径方向に係合する部品を備え、この組立は、一方では、スプラインを介して低圧体のメインシャフトおよび二次シャフトと係合することを可能にし、他方では、他のスプラインを介して、前記アイドラホイールを備える前記二次シャフトによって保持される減衰部、またはこのアイドラホイールと既に係合した中間部分と係合することを可能にするステップと、を備える。
【0020】
本発明は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてなされた以下の説明を読むときによりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴および利点が見えてくるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】高バイパス比の航空機のタービンエンジンおよび減速機の概略的な軸断面図である。
【
図2】タービンエンジンの低圧体および高圧体の動力引出手段の概略図である。
【
図3】本発明による航空機のタービンエンジンの一実施形態による、動力引出手段の軸線方向断面の部分的な概略半図である。
【
図4】
図3と同様の図であり、この
図3のタービンエンジンのモジュール式組み立てステップを表す図である。
【
図5】本発明による航空機のタービンエンジンの実施形態の一変形形態による動力引出手段の軸方向断面の部分的な概略半図である。
【
図6】
図5と同様の図であり、この
図5のタービンエンジンのモジュール式組み立てステップを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、
図1を参照すると、この図は、二重本体、二重フローの航空機のタービンエンジン10を概略的に表している。
【0023】
タービンエンジン10は、従来の方法で、その上流にファン14が配置されたガス発生器12を備える。ファン14は、ガス発生器12の主要部分の周り、およびそれに沿って延在するナセル18の一部であるファンケーシング16によって囲まれている。
【0024】
ここでのガス発生器12は、2つの本体、すなわち、低圧体12aまたはLPと、高圧体12bまたはHPとを備える。各本体は圧縮機と、タービンとを備える。
【0025】
「上流」および「下流」という用語は、タービンエンジン10内のガス流の主方向Fに従って考慮され、この方向Fは、タービンエンジンの長手方向軸線Aに平行である。
【0026】
上流から下流にかけて、ガス発生器12は、低圧圧縮機20、高圧圧縮機22、燃焼エンクロージャ24、高圧タービン26および低圧タービン28を備える。
【0027】
ファン14は、減速機33を介して低圧体12aのロータに接続されたファンシャフト32によって回転駆動される羽根30の環状の列を備える。ファンを通過するガス流(矢印F)は、環状ノズル34によってガス発生器12の上流で、ガス発生器12に供給する一次流れ36と呼ばれる半径方向内部の環状流と、ガス発生器12とナセル18との間を流れ、タービンエンジンの推力の大部分を提供する二次流れ38と呼ばれる半径方向外部の環状流とに分離される。
【0028】
中間ケーシング40が、低圧圧縮機20と高圧圧縮機22との間に配置され、ガス発生器12をファンケーシング16およびナセル18に構造的に接続する。中間ケーシング40は、低圧圧縮機20のダクトと高圧圧縮機22のダクトとの間で一次流れ36へと延在する半径方向内側アーム42の環状の列と、二次流れ38へと延在する半径方向外側アーム44の環状の列とを備える。アーム42、44は、一般に、数が制限され(10個未満)、管状であり、補助装置が交差している。
【0029】
低圧体12aのロータおよびファンシャフト32は、軸受46によって案内される。高圧体12bのロータは、軸受48によって案内される。軸受46、48は、玉軸受またはころ軸受であり、それぞれが、案内されるシャフトに取り付けられた内輪と、環状の軸受支持体によって保持される外輪と、リング間の転動体と備える。
【0030】
軸受支持体は軸線Aの周りに延在し、ステータに接続された、および例えばLPロータおよびHPロータの上流端を案内するための玉軸受46a、48aの場合は中間ケーシング40に接続された固定部品である。LPロータおよびHPロータのそれぞれは、メインシャフトおよび、場合によってはトラニオンなどの環状の付属品を備える。
【0031】
タービンエンジン10は、HP体12b上に動力引出手段50を備え、これは、軸線Aに対して実質的に半径方向の向きを有する動力引出シャフト50aを備える。シャフト50aは、HP体に隣接して配置され、かつHP体12bのシャフト12baの上流端と一体式のアイドラホイール50cと噛み合うベベルギア50bを保持する、その半径方向内側端部を有する。シャフト50aの半径方向外側端部は、一般にAGBと呼ばれる付属ギアボックス52の歯車に接続されている(
図1および
図2)。付属ギアボックス52は、一次流れダクト36と二次流れダクト38との間のガス発生器12の周りの環状空間に配置されている。シャフト50aは、中間ケーシング40のアーム42の1つを通して一次流れダクトを通過する。
【0032】
タービンエンジン10は、LP本体12a上に動力引出手段54をさらに備え、これは、軸w線Aに対して実質的に半径方向の向きを有する動力引出シャフト54aを備える。シャフト54aは、LP本体の近傍に配置され、かつLP本体のシャフト12aaの上流端と一体式のアイドラホイール54cと噛み合うベベルギア54bを保持する半径方向内側端部を有する。シャフト54aの半径方向外側端部は、一般にAGBと呼ばれる別の付属ギアボックス56の歯車に接続されている(
図1および
図2)。付属ギアボックス56は、上述の環状空間に配置され、シャフト54aは、中間ケーシング40の別のアーム42を通して一次流れの流れダクトを通過する。
【0033】
図3により最適に見られるように、HP体12bのシャフト12baを案内するための軸受48aは、この軸受を潤滑するための環状エンクロージャE内に配置されている。このエンクロージャEは、略三角形の形状を有する半分の軸線部分を有する。ここでは、それは、HP体12bのシャフト12baの上流端と、HP体12bのシャフト12baを軸線方向に通過する、LP本体12aのシャフト12aaの一部によって、その内周において区切られている。エンクロージャEは、上流側では環状カバー60によって、および下流側では中間ケーシング40の切頭円錐シュラウド62によってさらに区切られており、シュラウドの半径方向の外周面62aは一次流れ36の流れダクトを内部で区切っている。
【0034】
カバー60は、略切頭円錐形状を有し、その小さい方の直径の上流端は、LP本体12aのシャフト12aaの上述の部分を取り囲み、その大きい方の直径の下流端は、例えばボルト74によって、シュラウド62のより大きな直径の上流端に固定される。シュラウド62のより小さな直径の下流端は、軸受48aの外輪48aaを保持しており、その内輪48abは、HP体12bのシャフト12baの上流端に回転式に固定されている。
【0035】
したがって、エンクロージャEは、ロータ部分およびステータ部分によって区切られる。エンクロージャEは、ロータ部分とステータ部分との間の隙間のところで環状シールによって密閉されている。これは、カバー60と、64で参照されるラビリンスシールが配置されているLP本体12aに回転式に固定されているトラニオン61との間の場合である。これはまた、中間ケーシング40と、LP本体のシャフト12aaおよびHP体のシャフト12baとの間の場合にも当てはまり、ラビリンスシール66、67は、ケーシング40に固定されたシールリング68とこれらの本体12a、12bとの間に配置される。リング68は、その半径方向外側端部によってケーシング40に固定され、その半径方向内側端部は、研磨可能な要素を保持する円筒形部分を備え、その第1の上流側は、LP本体12aの環状の一部69に配置されたシール66から突出する環状繋索と協働し、その第2の下流側は、HP体12bのシャフト12baの上流端に配置されたシール67から突出する環状繋索と協働する。
【0036】
HP体12b上の動力引出h手段50に関して、アイドラホイール50c、歯車50b、およびシャフト50aの半径方向内側端部(ここには示されていない)は、エンクロージャEに収容されている。
【0037】
同様に、LP本体12a上の動力引出手段54については、アイドラホイール54c、歯車54b、およびシャフト54aの半径方向内側端部はエンクロージャEに収容されている。
【0038】
シャフト50a、54aは、タービンエンジンの軸線Aに垂直な平面に対して傾斜させることができ、示される例のように、同様の傾斜角を有することができる。
【0039】
上述したように、そして
図2に示されるように、シャフト50a、54aは、中間ケーシング40の同じアームを通過せず、したがって相互に角度を形成する。例えば、それらは、時計の文字盤と同様に、6時と8時の位置にあるアームにそれぞれ収容される。歯車50bは、本発明の理解を容易にするために
図3では点線で表されているが、図の断面には配置されていない。
【0040】
歯車50bとアイドラホイール50cとの間の噛み合いは、歯車54bとホイール54cとの噛み合いの円周C2の直径よりも直径が小さい円周C1上に実質的に配置される。
【0041】
リング68は、この穴の中で回転することができる歯車50bが斜めに置かれる貫通開口部70を備える。上に示したように、この開口部70は、本発明の理解を容易にするために示されているが、図の断面にはない。
【0042】
シャフト54aの半径方向内側端部は、カバー60および中間ケーシング40に取り付けられたハウジング72によって案内される。ハウジング72は、ここでは、それぞれころ軸受および玉軸受の2つの同軸の軸受を備え、またカバー60の半径方向外側の環状フランジ60aに取り付けるための半径方向外側の環状フランジ72aを備える。
【0043】
フランジ72a、60aは、ボルト74によって互いに、または中間ケーシング40にも固定され、環状の軸受支持体76の半径方向外側の環状フランジ76aが、これらのフランジ72a、60aの間に挿入される。
【0044】
支持体76は、アイドラホイール54cを案内するための軸受78、80を保持する。アイドラホイール54cは、軸受78、80の外輪78a、80aと一体である円筒形の壁54caを備え、これらの軸受は、ここでは互いに隣接し、軸線方向に離間されている。軸受78は、上流に配置されたころ軸受であり、下流にある他の軸受80は玉軸受である。軸受70、80の内輪78b、80bは、軸受支持体76の実質的に円筒形の壁76bと一体である。反対に、軸受78はころ軸受であり、下流に配置することができ、他の軸受80、ここでは上流の軸受は玉軸受である。
【0045】
したがって、軸受支持体76の壁76bが、ホイールの壁54caの内側に半径方向に延在することを理解することが可能である。壁76bは、上流から下流に向かって半径方向外向きに広がる切頭円錐壁76cによってフランジ76aに接続されている。
図3に示されるように、壁76cは、カバー60に沿って延在し、それと共に、油循環ライン82がその中に延在し得る環状空間を画定する。壁76bは、LP本体12aの周りに、かつそこから半径方向の距離のところに延在し、それと共に、ライン82に接続された油ノズル84の環状の列が収容される環状空間を画定する。ノズル84は、軸受78、80に油を噴霧するように構成されており、油は、壁76bの半径方向の内面に噴霧され、壁76bの孔76baを通して軸受78、80に向けられる。
【0046】
したがって、軸受支持体76はカバー60と一体であり、タービンエンジンのステータの一部であることが理解される。アイドラホイール54cは、環状の減衰部86によってLP本体12aに回転的に接続されている。
【0047】
示される例では、部分86はLP本体12aに取り付けられている。それは、トラニオン61と一部69との間に軸方向に圧締めされる略円筒形の上流部分86aを備える。さらに、それは、貫通穴88の環状の列と、外部スプライン90の環状の列とを備える、より大きな直径の下流部分86bを有する。穴88は、部品86に特定のねじり柔軟性を与えるように位置決めおよび寸法決めされ、その結果、この部分は、動作中の振動および/または動的応力を減衰させることができる。スプライン90は、環状接続部92の内周上の相補的なスプラインと協働し、その外周は、アイドラホイール54cに固定され、例えば、軸受80の外輪80aと、アイドラホイール54cの壁54caの内側に半径方向に取り付けられ、ねじ止めされているナット94との間にクランプされる。スペーサ96が、軸受78、80の外輪78a、80aの間に挿入されて、それらを離間させ、定位置に保つ。同様に、スペーサ98が軸受78、80の内輪78b、80bの間に挿入され、かつナット100が挿入され、軸受支持体76の円筒形の壁76bの外側に半径方向にねじ込まれる。
【0048】
さらに、スプラインセット102が設けられて、トラニオン61、減衰部86および部分69を、回転式に固定された方法でLP本体12aの残りの部分に接続する。トラニオン61、減衰部86および部分69は、LP本体のシャフト104上の外部スプラインと協働する内部スプラインを備え、この内部スプラインは、スプライン106の別のセットによって、LP本体12aのシャフト12aaと協働する。
【0049】
シャフト104は、タービンエンジンが減速機を具備しない場合、減速機33の入力シャフトまたはファンシャフト14であり得る。
【0050】
図4は、タービンエンジン10のモジュール式の組立を非常に概略的な方法で示している。ここでは、3つのモジュールが示されており、互いに軸線方向に並進移動して組み立てられ、軸線方向に互いに係合されている。
【0051】
モジュールは、事前に組み立てられてから、互いに固定されることが好ましい。図面の右側に示される第1のモジュールBは、高圧体12bの少なくとも一部、中間ケーシング40の少なくとも一部、そのメインシャフト12aaを含む低圧体12aの一部、ならびに第2の動力引出手段50を備える。
【0052】
中央にある第2のモジュールCは、カバー60、軸受支持体76、ハウジング72、動力引出手段54、および接続部92を備える。支持体76は、上記のようにアイドラホイール54cを案内するための軸受78、80を保持することに留意されたい。
【0053】
左側の第3のモジュールDは、シャフト104、トラニオン61、および部分86、69を備える。この第3のモジュールは、減衰部86のスプライン90と接続部92が互いに協働するまで、第2のモジュールCの内側に軸線方向に挿入される。
【0054】
次に、第2のモジュールCと第3のモジュールDを含む組立体は、シャフト104、12aaのスプライン106が一緒に協働するまで、上流から下流への軸線方向の並進によって第1のモジュールBに取り付けられる。
【0055】
図5および6は、
図3および
図4と同様であり、本発明の実施形態の一変形形態を示している。この変形形態は、第1の実施形態に関して上記で説明したものと本質的に同じ特性を具備する。
【0056】
本質的な違いは、アイドラホイール54cの円筒形部分54caが、ここでは、軸受支持体76の円筒形の壁76bの半径方向内側に(そしてもはや外側ではない)配置されていることである。
【0057】
したがって、ここでは、軸受78、80の外輪78a、80aが壁76bに取り付けられており、内輪78b、80bが壁54caに取り付けられていることが理解される。
【0058】
軸受支持体76は、ハウジング72の半径方向内側の環状フランジ72a’に取り付けられた、その半径方向外側フランジ76aを有する。軸受支持体76の壁76cは、歯車54bの通過および回転のための貫通開口部76dを備えるが、これは、ここでの壁76は、動力引出シャフト54aの半径方向内側端部から半径方向内側に延在しているためである。
【0059】
アイドラホイール54cの壁54caは、LP本体12aの周りに延在し、アイドラホイールは、減衰部86’である単一の環状部分を介してLP本体に回転式に固定されている。この部分86’は、ここでは、上流に位置するトラニオン61と下流のナット108との間に軸方向にクランプされている。組立体はシャフト104に取り付けられている。
【0060】
部分86’は、トラニオン61とナット108との間に延在し、内部スプライン86aa’によってシャフト104の相補的な外部スプラインに結合された半径方向内側の円筒形部分86a’と、半径方向外側の可撓性部分86b’とを備える。この部分86b’は、開口部が軸線方向に、ここでは上流に向けられたC字形の軸線方向の半分の部分を有する。この86b’部分は、その外周上に、アイドラホイールの壁54caの相補的な内側スプラインと協働する外側スプライン90を備える。
【0061】
軸受78、80の潤滑油は、ここではアイドラホイール54cの上流からではなく、下流から供給される。オイルノズル84’が、アイドラホイール54cの壁54caとリング68との間の環状空間に配置される。
【0062】
ラビリンスタイプのシール64、64’は、ここでは、カバー60とトラニオン61との間、および部分86’の下流端とシールリング68の上流端との間に配置される。別のラビリンスタイプのシール67が、シールリング68とHP本体12bのシャフト12baの上流端との間に配置される。
【0063】
図6は、タービンエンジン10のこの変形形態のモジュラー式の組立を非常に概略的な方法で示している。ここでは、3つのモジュールが示されており、互いに軸方向に並進移動して組み立てられ、軸方向に互いに係合されている。
【0064】
モジュールは、事前に組み立てられてから、一緒に固定されることが好ましい。図面の右側に示される第1のモジュールBは、高圧体12bの少なくとも一部、中間ケーシング40の少なくとも一部、そのメインシャフト12aaを含む低圧体12aの一部、ならびに第2の動力引出手段50を備える。
【0065】
中央にある第2のモジュールCは、カバー60、軸受支持体76、ハウジング72、および動力引出手段54を含む。
【0066】
左の第3のモジュールDは、シャフト104、トラニオン61、および部分86’を含む。この第3のモジュールは、減衰部86のスプライン90とアイドラホイール54cが互いに協働するまで、第2のモジュールCの内側に軸線方向に挿入される。
【0067】
次に、第2のモジュールCと第3のモジュールDを含む組立体は、シャフト104、12aaのスプライン106が一緒に協働するまで、上流から下流への軸方向の並進によって、第1のモジュールBの周りに少なくとも部分的に取り付けられる。
【0068】
本発明は、同じゾーン内、特に同じエンクロージャ内のLP本体およびHP本体での動力の引き出しを実施することを可能にする。これらの本体の各々の軸線方向の停止は、スラスト玉軸受によって実行される。これらの軸受の1つ、つまりHP本体の軸受(48aと参照される)はこのエンクロージャE内にあり、もう1つ、つまりLP本体の軸受はこのエンクロージャの上流に位置するため離間している(それは
図1では囲まれている)。この状況では、LP本体の玉軸受と、この本体上での動力の引き出しとの間に距離が生じることになる。この距離は、スプライン結合と、同じケーシング上の軸受支持体76とハウジング72とのフック作用によって補償される。
【0069】
本発明は、LP本体の変位および変位チェーンに依存しないコンパクトな動力引き出しの噛み合いを実現する。歯車54bの駆動は、中間部分86、86’によって実行され、中間部分86、86’は、噛み合いをエンジンの他の部分から隔離するように、可撓性部分から恩恵を受けている。エンクロージャEは、噛み合い、およびノズル84、84’によって潤滑が確保されている軸受に共通である。