(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】食道癌を検出するための組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6827 20180101AFI20230815BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20230815BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230815BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6886 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021096963
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2020545787の分割
【原出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】201711248825.5
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810989986.8
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520191868
【氏名又は名称】バイオチェーン(ペキン)サイエンス アンド テクノロジー、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOCHAIN (BEIJING) SCIENCE & TECHNOLOGY, INC.
【住所又は居所原語表記】No.18,Hongda South Road,Economic and Technological Development Area, Beijing 100176,China
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】馬 竣
(72)【発明者】
【氏名】韓 暁亮
(72)【発明者】
【氏名】王 建銘
(72)【発明者】
【氏名】樊 代明
(72)【発明者】
【氏名】聶 勇戦
(72)【発明者】
【氏名】胡 思雋
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-503948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0300536(US,A1)
【文献】特表2016-536585(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104513851(CN,A)
【文献】臨床化学,2007年,第36巻第4号,p. 288-295
【文献】岩手医誌,2017年04月,69巻、1号,1-11頁
【文献】Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys.,2008年,Vol. 71, No. 1,pp. 152-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
G01N 33/574
G01N 33/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MT1A及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種である食道癌特異的な標的遺伝子のメチル化状態を検出する方法であって、
被験者の生体サンプル中の遊離DNAを抽出するステップと、
5位非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する試薬で前記抽出された遊離DNAを処理するステップと、
前記試薬で処理された遊離DNAを前記標的遺伝子のターゲット配列のプライマー及びDNAポリメラーゼと接触させ、非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーの存在下で、DNAポリメラーゼ連鎖反応を行って増幅産物を得るステップと、
プローブを用いて前記増幅産物を検出するステップと、
前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するステップとを含み、
前記MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示され、前記EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示され、
ヒトに対する医療行為を除く、
方法。
【請求項2】
被験者の生体サンプルは、被験者の末梢血から採取されて分離された、血漿又は血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試薬は亜硫酸水素塩試薬である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマーは、
前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の少なくとも9個の連続する塩基からなるヌクレオチド配列を含み、及び/又は
前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の少なくとも9個の連続する塩基からなるヌクレオチド配列を含み、
前記少なくとも9個の連続する塩基からなるヌクレオチド配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマーは、SEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列、若しくはSEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO:10の配列である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ブロッカーのヌクレオチド配列の5’末端は、プライマーの3’末端ヌクレオチド配列とはヌクレオチド5個以上の重複領域を有し、前記ブロッカーと、フォワード(F)又はリバース(R)プライマーとは、前記標的遺伝子のターゲット配列の同じ鎖に相補的であり、前記ブロッカーの融解温度は、フォワード(F)又はリバース(R)プライマーの融解温度よりも5℃以上高く、前記ブロッカーは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含み、前記試薬で処理された5位非メチル化シトシンから変換されたウラシルを含む標的遺伝子のターゲット配列に相補的である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロッカーは、SEQ ID NO: 8の配列又はSEQ ID NO: 12の配列である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブは、
前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含む、オリゴヌクレオチド、及び/又は
前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の連続する少なくとも15個のヌクレオチドからなる断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含む、オリゴヌクレオチド
である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記プローブはSEQ ID NO: 7の配列又はSEQ ID NO: 11の配列である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に属し、食道癌を検出するための組成物及び疾患検出におけるその使用に関し、具体的には、食道癌を検出するための組成物、及びその対応するキットと使用に関する。
【背景技術】
【0002】
食道癌は一般的な消化管腫瘍である。全国腫瘍予防治療弁公室のデータによると、2015年、中国の食道癌の発症率は10万人あたり478例であり、死亡率は1万人あたり375例であり、一般的な癌の中でそれぞれ4番目と3番目にランクされている。食道癌の死亡率は80%に近く、悪性度の高い癌である。毎年世界中で約30万人が食道癌で亡くなっており、その半数が中国で亡くなっている。
【0003】
食道癌の高い死亡率につながる重要な要因は、早期食道癌の診断率が低いことである。早期食道癌の治癒率は中期及び後期の治癒率よりもはるかに高いが、早期食道癌には明らかで特異的な症状がないため、ほとんどの被験者は診断時に中期及び後期に進展している。臨床研究では、癌の病巣形成の始まりから被験者に臨床症状が現れるまでには平均で数年かかることがわかり、これにより、早期食道癌の検出と早期食道癌の診断率の向上に有効なウィンドウズ期間が提供される。このウィンドウ期間を最大限に活用することで、食道癌の治療効果を向上させ、食道癌の死亡率を低下させることが期待できる。
【0004】
食道癌診断技術の現在の臨床応用は、主に次の理由により、早期食道癌の検出とスクリーニングでは限定されている。1)組織生検は侵襲性が高く、早期癌スクリーニングには適していないこと、2)画像検出技術(たとえば、食道造影検査及び内視鏡検査)機器のコスト、操作技術、及び侵襲性の制限のため、癌スクリーニング技術として広く普及させることが難しい。3)従来の血清腫瘍マーカー(たとえば、AFP、CEA、CA125やCA199など)は、食道癌の検出に対する感度が低く、早期癌スクリーニングの要件を完全に満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に鑑み、検出しにくく、感度が低く、コストが高いという従来の食道癌検出技術の問題に対して、本発明は、食道癌を検出するための組成物を提供する。本発明による組成物は、食道癌を高感度且つ特異的に検出することができ、本発明は、前記組成物を含むキット及び食道癌検出におけるその使用をさらに提供する。本発明によるキットは、食道癌検出感度が良好であり、食道癌を簡便、迅速かつ効果的に検出できる。
【0006】
本発明は、食道癌をインビトロで検出するための組成物、キット及びその使用、並びにこのキットによる検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明は以下の内容に関する。
1. 食道癌をインビトロで検出するための組成物であって、
MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種である標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸を含む組成物。
2. 前記MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される、項1に記載の組成物。
3. 前記EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示される、項
1に記載の組成物。
4. 前記標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、
前記標的遺伝子的ターゲット配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、
前記断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
5. 前記標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記標的遺伝子のターゲット配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含み、
前記断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
6. 標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する試薬をさらに含む、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
7. 前記標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、
非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーをさらに含む、項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
8. 前記少なくとも9個のヌクレオチドの断片は、SEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列、若しくはSEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO:10の配列であり、
前記少なくとも15個のヌクレオチドの断片は、SEQ ID NO: 7の配列又はSEQ ID NO: 11の配列であり、
ブロッカーは、SEQ ID NO: 8の配列又はSEQ ID NO: 12の配列である、項7に記載の組成物。
9. 食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドであって、
前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含むオリゴヌクレオチド。
10. 中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ
ID NO: 1又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片をさらに含む、項9に記載のオリゴヌクレオチド。
11. 非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーをさらに含む、項10に記載のオリゴヌクレオチド。
12. 食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドであって、
SEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列を含むオリゴヌクレオチド。
13. SEQ ID NO: 7の配列をさらに含む、項12に記載のオリゴヌクレオチド。
14. SEQ ID NO: 8の配列をさらに含む、項13に記載のオリゴヌクレオチド。
15. 食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドであって、
SEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO:10の配列を含むオリゴヌクレオチド。
16. SEQ ID NO: 11の配列をさらに含む、項15に記載のオリゴヌクレオチド。
17. SEQ ID NO: 12の配列をさらに含む、項16に記載のオリゴヌク
レオチド。
18. 食道癌をインビトロで検出するためのキットの調製におけるMT1A遺伝子の使用。
19. 食道癌をインビトロで検出するためのキットの調製におけるEPO遺伝子の使用。
20. 項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は項9~17のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含むキット。
21. 別の成分としてヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ及び前記DNAポリメラーゼの機能に必要なバッファから選ばれる少なくとも1種をさらに含む、項20に記載のキット。
22. プロトコルをさらに含む、項20又は21に記載のキット。
23. 食道癌をインビトロで検出するためのキットの調製における、項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は項9~項17のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
24. 前記食道癌をインビトロで検出するためのキットは、
1)標的遺伝子のターゲット配列又はその断片を含むDNAサンプルを検出対象生体サンプルから分離するステップと、
2)前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップと、
3)前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の検出結果に基づいて生体サンプルの状態を判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップと、を含む方法により食道癌を検出する、項18、19及び23のいずれか1項に記載の使用。
25. 前記方法は、
検出対象生体サンプルのゲノムDNAを抽出するステップと、
抽出したゲノムDNAを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換するステップと、
試薬で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーの存在下で、DNA重合反応を行うステップと、
プローブを用いて増幅産物を検出するステップと、
前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するステップと、を含む、項24に記載の使用。
26. 前記試薬は亜硫酸水素塩試薬である、項25に記載の使用。
27. 食道癌の検出方法であって、
標的遺伝子のターゲット配列又はその断片を含むDNAサンプルを検出対象生体サンプルから分離するステップと、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップと、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の検出結果に基づいて生体サンプルの状態を判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップと、を含む食道癌の検出方法。
28. 食道癌の検出方法であって、
検出対象生体サンプルのゲノムDNAを抽出するステップと、
抽出したゲノムDNAを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換するステップと、
試薬で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーの存在下で、DNA重合反応を行うステップと、
プローブを用いて増幅産物を検出するステップと、
前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するステップと、を含む食道癌の
検出方法。
29. 前記標的遺伝子はMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種である、項27又は28に記載の方法。
30. 前記MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される、項29に記載の方法。
31. 前記EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示される、項29に記載の方法。
32. 前記試薬は亜硫酸水素塩試薬である、項28に記載の方法。
33. 前記プライマーは、
前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片である、項28に記載の方法。
33. 前記ブロッカーは非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーである、項28に記載の方法。
34. 前記プローブは、
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片である、項28に記載の方法。
35. 前記プライマーはSEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列、若しくはSEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO:10の配列である、項33に記載の方法。
36. 前記ブロッカーはSEQ ID NO: 8の配列又はSEQ ID NO:
12の配列である、項33に記載の方法。
37. 前記プローブはSEQ ID NO: 7の配列又はSEQ ID NO: 11の配列である、項34に記載の方法。
38. 食道癌をインビトロで検出するための組成物であって、
MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種である標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するための核酸と、
SNCG、即ちγシヌクレイン(γ-synuclein)である標的タンパク質の濃度を検出するための抗体と、を含む組成物。
39. 前記MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される、項38に記載の組成物。
40. 前記EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示される、項38に記載の組成物。
41. 前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するための核酸は、
前記標的遺伝子のターゲット配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、
前記断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、項38~40のいずれか1項に記載の組成物。
42. 前記標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記標的遺伝子のターゲット配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片をさらに含み、
前記断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む、項38~41のいずれか1項に記載の組成物。
43. 標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する試薬をさらに含む、項38~42のいずれか1項に記載の組成物。
44. 前記標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、
非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーをさらに含む、項38~43のいずれか1項に記載の組成物。
45. 前記少なくとも9個のヌクレオチドの断片は、SEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列、若しくはSEQ ID NO: 9及びSEQ ID
NO:10の配列であり、
前記少なくとも15個のヌクレオチドの断片は、SEQ ID NO: 7の配列又はSEQ ID NO: 11の配列であり、
ブロッカーは、SEQ ID NO: 8の配列又はSEQ ID NO: 12の配列である、項44に記載の組成物。
46. 標的タンパク質の濃度を検出するための試薬をさらに含み、前記試薬は酵素結合免疫吸着アッセイ試薬であり、たとえば、前記試薬は、標的タンパク質の濃度を検出するための抗体でコーティングされた反応プレート、SNCGプロテアーゼコンジュゲート、基質液、洗浄液及び停止液を含む、項38~45のいずれか1項に記載の組成物。
47. 項38~46のいずれか1項に記載の組成物又は項9~17のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含むキット。
48. 別の成分としてヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ及び前記DNAポリメラーゼの機能に必要なバッファから選ばれる少なくとも1種、及び
標的タンパク質の濃度を検出するための抗体でコーティングされた反応プレート、SNCGプロテアーゼコンジュゲート、基質液、洗浄液及び停止液を含む、項47に記載のキット。
49. プロトコルをさらに含む、項47又は48前記的キット。
50. 食道癌をインビトロで検出するためのキットの調製における、項38~46のいずれか1項に記載の組成物又は項9~項17のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
51. 前記食道癌をインビトロで検出するためのキットは、
被験者の生体サンプル中の前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップ1)と、
被験者の生体サンプル中の前記標的タンパク質の濃度を決定するステップ2)と、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方の検出結果に基づいて被験者が食道癌に罹ったか否かを判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップ3)と、を含む方法により食道癌を検出する、項18、19及び50のいずれか1項に記載の使用。
52. 前記方法は、
被験者の末梢血を採取して、血漿又は血清を分離するステップと、
血漿又は血清中の遊離DNAを抽出するステップと、
抽出した遊離DNAを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換するステップと、
試薬で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーの存在下で、DNA重合反応を行うステップと、
プローブを用いて増幅産物を検出するステップと、
前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するステップと、
SNCG抗体を用いて、免疫反応により血漿又は血清中のSNCGの濃度を決定するステップと、を含む、項51に記載の使用。
53. 前記試薬は亜硫酸水素塩試薬である、項52に記載の使用。
54. 食道癌の検出方法であって、
被験者から生体サンプルを採取するステップと、
被験者の生体サンプル中の前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップと、
被験者の生体サンプル中の前記標的タンパク質の濃度を決定するステップと、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方の検出結果に基づいて被験者が食道癌に罹ったか否かを判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップと、を含む食道癌の検出方法。
55. 食道癌の検出方法であって、
被験者の末梢血を採取して、血漿又は血清を分離するステップと、
血漿又は血清中の遊離DNAを抽出するステップと、
5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換するステップと、
試薬で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーの存在下で、DNA重合反応を行うステップと、
プローブを用いて増幅産物を検出するステップと、
前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定するステップと、
SNCG抗体を用いて、免疫反応により血漿又は血清中のSNCGの濃度を決定するステップと、を含む食道癌の検出方法。
56. 前記標的遺伝子はMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種であり、
前記標的タンパク質はSNCGである、項54又は55に記載の方法。
57. 前記MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される、項56に記載の方法。
58. 前記EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示される、項56に記載の方法。
59. 前記試薬は亜硫酸水素塩試薬である、項55に記載の方法。
60.前記プライマーは、
前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片である、項55に記載の方法。
61. 前記ブロッカーは非メチル化状態のターゲット配列と優先的に結合するブロッカーである、項55に記載の方法。
62. 前記プローブは、
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は
中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片である、項55に記載の方法。
63. 前記プライマーはSEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列、若しくはSEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO:10の配列である、項60に記載の方法。
64. 前記ブロッカーはSEQ ID NO: 8の配列又はSEQ ID NO:
12の配列である、項61に記載の方法。
65. 前記プローブはSEQ ID NO: 7の配列又はSEQ ID NO: 11の配列である、項62に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、エピゲノミクス及びバイオインフォマティクス技術を使用して、食道癌組織及び傍癌性対照組織の全ゲノムのメチル化データを分析した結果、食道癌に関連する2つのメチル化遺伝子を見つけ、これら2つの食道癌メチル化遺伝子のメチル化異常が生じたターゲット配列を決定し、さらに、本発明者らは、これら2つの食道癌メチル化遺伝子のターゲット配列によりこれら2つの遺伝子のメチル化状態を高感度かつ特異的に検出できるため、それにより末梢血中の遊離DNAの検出に使用できることを見出した。食道癌患者及び正常対照個体の末梢血サンプルを検出した結果、本発明に記載の組成物及び検出方法が、2つの異なる細胞型の一般的な食道癌である扁平上皮癌及び腺癌を含む食道癌を高感度かつ特異的に検出できることを示している。したがって、本発明は、食道癌をインビトロで検出するための組成物及び検出方法を提供し、重要な臨床応用価値を有する。
【0009】
さらに、本発明者らは、多くの腫瘍タンパク質マーカーのうち、SNCGタンパク質と前記標的遺伝子のメチル化の両方を検出することにより食道癌の検出を著しく改善できることを見出した。したがって、本発明は、食道癌をインビトロで検出するための組成物及び検出方法を提供し、重要な臨床応用価値を有する。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の特定の説明及び特許請求の範囲によって詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記及び他の特徴は、図面及び詳細な説明を参照して以下でさらに説明される。なお、これらの図面は、本発明のいくつかの例示的な実施形態を示すだけであり、したがって、本発明の保護の範囲を限定するものと見なされるべきではない。特に明記しない限り、図面は必ずしも縮尺通りではなく、同様の符号は同様の構成要素を示す。
【
図1】本発明の標的遺伝子のスクリーニング結果を示すグラフである。
【
図2】本発明による組成物及び検出方法を使用して、白血球ゲノムDNA(標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陰性コントロール)及びDNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNA(標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陽性コントロール)の検出である。その結果、本発明による組成物及び検出方法では、白血球ゲノムDNAの検出結果が陰性であり、DNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNAの検出結果が陽性である。
【
図3】前記組成物及び検出方法を使用して、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出することにより、食道癌を非侵襲的にインビトロで検出した結果を示すグラフである。
【
図4】前記組成物及び検出方法を用いて、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態及び標的タンパク質の濃度を検出することにより、食道癌を非侵襲的にインビトロで検出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一態様では、本発明は、食道癌をインビトロで検出するための組成物を提供し、前記組成物は、MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のうちの1種又は2種である標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するための核酸と、SNCGである標的タンパク質の濃度を検出するための抗体と、を含む。
【0013】
本発明は、食道癌において異常なメチル化が生じた、MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲット配列を含む標的遺伝子のターゲット配列を提供し、MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1-2に示され、EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3-4に示される。
【0014】
MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される。
SEQ ID NO: 1
CACCCAGGGGAGCTCAGTGGACTGTGCGCCTTGCCTTTCTGCTGCGCAAAGCCCAGTCCAGGTCATCACCTCGGGCGGGGCGGACTCGGCTGGGCGGACTCAGCGGGGCGGGCGCAGGCGCAGGGCGGGTCCTTTGCGTCCGGCCCTCTTTCCCCTGACCATAAAAGCAGC
【0015】
SEQ ID NO:1の相補的配列はSEQ ID NO:2に示される。
SEQ ID NO: 2
GCTGCTTTTATGGTCAGGGGAAAGAGGGCCGGACGCAAAGGACCCGCCCTGCGCCTGCGCCCGCCCCGCTGAGTCCGCCCAGCCGAGTCCGCCCCGCCCGAGGTGATGACCTGGACTGGGCTTTGCGCAGCAGAAAGGCAAGGCGCACAGTCCACTGAGCTCCCCTGGGTG
【0016】
好ましくは、EPO遺伝子的ターゲット配列の配列はSEQ ID NO: 3に示される。
SEQ ID NO: 3
CGCGCACGCACACATGCAGATAACAGCCCCGACCCCCGGCCAGAGCCGCAGAGTCCCTGGGCCACCCCGGCCGCTCGCTGCGCTGCGCCGCACCGCGCTGTCCTCCCGGAGCCGGACCGGGGCCACCGCGCCCGCTCTGCTCCGACACCGCGCCCCCTGGACAGCCGCCCTCTCCTCCAGGCCCGTGGGGCTGGCCCTGCACCGCCGAGCTTCCCGGGATGAGGGCCCCCGGTGTGGTCACCCGGCGCGCCCCAGGTCG
【0017】
SEQ ID NO:3の相補的配列はSEQ ID NO:4に示される。
CGACCTGGGGCGCGCCGGGTGACCACACCGGGGGCCCTCATCCCGGGAAGCTCGGCGGTGCAGGGCCAGCCCCACGGGCCTGGAGGAGAGGGCGGCTGTCCAGGGGGCGCGGTGTCGGAGCAGAGCGGGCGCGGTGGCCCCGGTCCGGCTCCGGGAGGACAGCGCGGTGCGGCGCAGCGCAGCGAGCGGCCGGGGTGGCCCAGGGACTCTGCGGCTCTGGCCGGGGGTCGGGGCTGTTATCTGCATGTGTGCGTGCGCG
【0018】
好ましくは、標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、標的遺伝子のターゲット配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、前記断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。いくつかの好ましい実施形態では、亜硫酸水素塩(
バイサルファイト)を使用して検出対象サンプルのDNAを変換する場合、標的遺伝子の
メチル化状態を検出するための核酸は、標的遺伝子のターゲット配列を亜硫酸水素塩で変換した配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0019】
より好ましくは、標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記標的遺伝子のターゲット配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。いくつかの好ましい実施形態では、たとえば、亜硫酸水素塩を使用して検出対象サンプルのDNAを変換する場合、標
的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で、標的遺伝子のターゲット配列を亜硫酸水素塩で変換した配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0020】
好ましくは、前記組成物は、標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する試薬をさらに含む。より好ましくは、前記試薬は亜硫酸水素塩である。
【0021】
好ましくは、標的遺伝子のメチル化状態を検出するための核酸は、非メチル化状態のDNAと優先的に結合するブロッカーをさらに含む。
【0022】
好ましくは、前記組成物は、以下のプライマー、プローブ及び/又はブロッカーのうちの1種又は複数種を含む。
MT1Aプライマー F
SEQ ID NO: 5
CGGACGTAAAGGATTC
MT1Aプライマー R
SEQ ID NO: 6
GAAACGAACTCGACTAAACG
MT1Aプローブ
SEQ ID NO: 7
TGCGTTTGCGTTCGTTTCG
MT1Aブロッカー
SEQ ID NO: 8
CAAACTCAACTAAACAAACTCAACAAAACAAAC
EPOプライマー F
SEQ ID NO: 9
AGTCGTAGAGTTTTTGGGTT
EPOプライマー R
SEQ ID NO: 10
CAACGCGATACGACG
EPOプローブ
SEQ ID NO: 11
CGCAACGAACGACCGA
EPOブロッカー
SEQ ID NO: 12
GAGTTTTTGGGTTATTTTGGTTGTTTGTTG
【0023】
別の態様では、本発明は、食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドを提供し、このオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 1又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又はSEQ ID NO: 3又はその相補的配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含む。
【0024】
好ましくは、食道癌をインビトロで検出するためのこのオリゴヌクレオチドは、SEQ
ID NO: 1又はその相補的配列を亜硫酸水素塩で変換した配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片、及び/又は、SEQ ID NO: 3又はその相補的配列を亜硫酸水素塩で変換した配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片であって、少なく
とも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含む。
【0025】
本発明の食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドは、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 1又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で前記SEQ ID NO: 3又はその相補的配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片をさらに含む。
【0026】
好ましくは、食道癌をインビトロで検出するためのこのオリゴヌクレオチドは、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 1又はその相補的配列を亜硫酸水素塩で変換した配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片、及び/又は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で、SEQ ID NO: 3又はその相補的配列を亜硫酸水素塩で変換した配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片であって、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む断片を含む。
【0027】
本発明の食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドは、非メチル化状態のDNAと優先的に結合するブロッカーをさらに含む。
【0028】
一つの具体的な実施形態では、食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 5及びSEQ ID NO: 6の配列を含む。SEQ ID NO: 7の配列をさらに含む。SEQ ID NO: 8の配列をさらに含む。
【0029】
別の具体的な実施形態では、食道癌をインビトロで検出するためのオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 9及びSEQ ID NO: 10の配列を含む。SEQ ID NO:11の配列をさらに含む。SEQ ID NO: 12の配列をさらに含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、前記組成物を含むキットを提供する。このキットは、別の成分として、ヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ及び前記DNAポリメラーゼの機能に必要なバッファから選ばれた少なくとも1種をさらに含む。
【0031】
本発明の食道癌をインビトロで検出するための組成物は、標的タンパク質の濃度を検出するための抗体をさらに含み、前記標的タンパク質はγシヌクレイン(SNCG)である。
【0032】
本発明は、さらに、食道癌をインビトロで検出するためのキットの調製における、MT1A遺伝子、EPO遺伝子、SNCGタンパク質の使用に関する。
【0033】
なお、前記MT1Aは、メタロチオネイン1Aであり、英語名がmetallothionein 1Aであり、ヒト16番染色体のq13領域にあり、メタロチオネイン遺伝子ファミリーに属している。メタロチオネインは、システインを豊富に含み、芳香族基を含むアミノ酸を欠き、2価の重金属イオンを結合できる小分子タンパク質である。メタロチオネインは、ヒドロキシル基を含むフリーラジカルによる損傷から細胞を保護し、細胞内の金属イオンのバランスを維持し、重イオンの毒性を取り除く役割を果たしている酸化防止剤である。メタロチオネイン遺伝子機能の喪失は、癌や他の病理学的現象の発生につながる。
【0034】
前記EPO遺伝子はエリスロポエチン遺伝子であり、英語名がerythropoietinであり、ヒト7番染色体のq22.1領域にある。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞によって分泌されるグリコシル化サイトカイン(cytokine)である。エリスロポエチンは、対応する受容体に結合されると、赤血球の合成を促進することができる。
【0035】
前記SNCGタンパク質は、SNCG遺伝子の産物であるシヌクレイン-γである。SNCG遺伝子の英語名はsynuclein gammaであり、ヒト10番染色体のq23.2領域にある。この遺伝子はシヌクレイン遺伝子ファミリーのメンバーであり、そのタンパク質配列は次のとおりである。
【0036】
SNCG遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列:
MDVFKKGFSIAKEGVVGAVEKTKQGVTEAAEKTKEGVMYVGAKTKENVVQSVTSVAEKTKEQANAVSEAVVSSVNTVATKTVEEAENIAVTSGVVRKEDLRPSAPQQEGEASKEKEEVAEEAQSGGD
【0037】
さらなる態様では、本発明は、食道癌をインビトロで検出する方法を提供し、前記方法は、
検出対象生体サンプル中の標的遺伝子のターゲット配列又はその断片を分離するステップ1)と、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップ2)と、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の検出結果に基づいて生体サンプルの状態を判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップ3)と、を含む。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態によれば、前記方法は、以下のステップ1)~ステップ5)をさらに含む。
1)検出対象生体サンプルのゲノムDNAを抽出する。
2)ステップ1)で得たDNAサンプルを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換し、即ち、標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基はウラシル又はほかの塩基に変換され、変換された塩基は、ハイブリッド性能が5位非メチル化シトシン塩基と異なり、且つ検出可能である。
3)ステップ2)で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び前記標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列を増幅させて増幅産物を生成するか、又は増幅させない。前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じると、増幅産物が発生し、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じないと、増幅させない。
4)プローブを用いて増幅産物を検出する。
5)前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、食道癌のインビトロ検出方法を提供し、前記方法は、
被験者の生体サンプル中の前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を決定するステップ1)と、
被験者の生体サンプル中の前記標的タンパク質の濃度を決定するステップ2)と、
前記標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方の検出結果に基づいて被験者が食道癌に罹ったか否かを判断することにより、食道癌のインビトロ検出を完了するステップ3)と、を含む。
【0040】
生体サンプルは被験者の末梢血から分離した血漿又は血清である。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態によれば、前記方法は、以下のステップ1)~ステップ7)をさらに含む。
1)被験者の末梢血を採取して、血漿又は血清を分離する。
2)血漿又は血清中の遊離DNAを抽出する。
3)ステップ2)で得た遊離DNAを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換し、即ち、標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基はウラシル又はほかの塩基に変換され、変換された塩基は、ハイブリッド性能が5位非メチル化シトシン塩基と異なり、検出可能である。
4)ステップ3)で処理した遊離DNAをDNAポリメラーゼ及び前記標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列を増幅させて増幅産物を生成するか、又は増幅させない。前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じると、増幅産物が発生し、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じないと、増幅させない。
5)プローブを用いて増幅産物を検出する。
6)前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する。
7)SNCG抗体を用いて、免疫反応により血漿又は血清中のSNCGの濃度を決定する。
【0042】
好ましくは、典型的なプライマーは、前記標的遺伝子のターゲット配列の断片を含み、前記標的遺伝子のターゲット配列の断片は、それぞれ、SEQ ID NO: 1-2及びSEQ ID NO: 3-4から選ばれる配列に相当する、相補的である、又は中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含む。
【0043】
好ましくは、典型的なプローブは、前記標的遺伝子のターゲット配列の断片であり、前記標的遺伝子のターゲット配列の断片は、それぞれ、SEQ ID NO: 1-2及びSEQ ID NO: 3-4から選ばれる配列に相当する、相補的である、又は中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含む。
【0044】
好ましくは、典型的なブロッカーは、好ましくは、優先的に非メチル化状態のDNAに結合するブロッカーである。
【0045】
好ましくは、前記プライマー、プローブ及び/又はブロッカーのうちの1種又は複数種は、以下に示される。
MT1Aプライマー F
SEQ ID NO: 5
CGGACGTAAAGGATTC
MT1Aプライマー R
SEQ ID NO: 6
GAAACGAACTCGACTAAACG
MT1Aプローブ
SEQ ID NO: 7
TGCGTTTGCGTTCGTTTCG
MT1Aブロッカー
SEQ ID NO: 8
CAAACTCAACTAAACAAACTCAACAAAACAAAC
EPOプライマー F
SEQ ID NO: 9
AGTCGTAGAGTTTTTGGGTT
EPOプライマー R
SEQ ID NO: 10
CAACGCGATACGACG
EPOプローブ
SEQ ID NO: 11
CGCAACGAACGACCGA
EPOブロッカー
SEQ ID NO: 12
GAGTTTTTGGGTTATTTTGGTTGTTTGTTG
【0046】
さらに、前記接触又は増幅は、以下の方法の少なくとも1種を使用することを含む。前記増幅酵素として熱安定性DNAポリメラーゼを使用すること、5-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼを使用すること、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用すること、検出可能な標識付きの増幅産物である核酸分子を生成すること。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態によれば、前記標的遺伝子のターゲット配列中の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、PCR反応のサイクル閾値Ct値によって決定される。PCR反応を使用して生体サンプル中のDNAを分析する方法により、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の検出を簡単に行うことができ、PCR反応のサイクル閾値に基づいて、検出対象サンプルが陽性であるかを迅速かつ簡便に判断でき、このため、食道癌を非侵襲的かつ迅速にインビトロで検出する方法を提供している。
【0048】
前記生体サンプルは、細胞株、組織学的切片、組織生検/パラフィン包埋組織、体液、糞便、結腸流出物、尿、血漿、血清、全血、分離された血液細胞、及び血液から分離された細胞、又はこれらの組み合わせから選択される。前記生体サンプルは、末梢血、全血、血漿、又は血清から選択される。
【0049】
本発明は、前記組成物を含むキットをさらに提供する。典型的には、前記キットは、被験者の生体サンプルを収納するための容器を含む。さらに、前記キットには、検出結果の使用と解釈に関する説明も含まれている。
【0050】
本発明は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態及び標的タンパク質の濃度を検出することにより、食道癌を非侵襲的にインビトロで検出する方法を提供する。本発明者は、食道癌組織におけるMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と正常な食道組織における前記遺伝子のターゲット配列のメチル化状態との間に有意差があることを見出し、食道癌組織では、MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲット配列にメチル化が発生しているのに対して、正常な食道組織では、MT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲット配列にメチル化が発生していない。したがって、本出願は、サンプル中のMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出することにより食道癌をインビトロで検出する方法を提供し、本発明による方法は、食道癌を非侵襲的かつ迅速に検出できる。
【0051】
本発明者はさらに、標的遺伝子のターゲット配列のみのメチル化状態の検出と比較して、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方を検出すると、検出の特異性に明らかな影響を与えずに食道癌の検出率を大幅に向上させることを見出した。したがって、本出願は、サンプル中のMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のターゲ
ット配列のメチル化状態及びSNCGタンパク質の濃度を検出することにより、食道癌をインビトロで検出する方法を提供する。本発明による方法は、食道癌を非侵襲的かつ迅速に検出できる。
【0052】
特に定義されない限り、本明細書における技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。ここで説明したものと類似又は同一の方法と材料は、実験又は実際の応用で使用できるが、以下、材料と方法について説明する。矛盾する場合、本明細書に記載の定義を基準とし、また、材料、方法、及び例は、例示のみを目的としており、限定的なものではない。
【0053】
本発明は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態及び標的タンパク質の濃度を高感度かつ特異的に検出できる組成物、及び食道癌を非侵襲的にインビトロ検出するための方法とキットをさらに提供する。
【0054】
以下、本発明の組成物、キット、核酸配列及び検出方法の実施例を説明する。第1実施形態は、標的遺伝子及び標的遺伝子のターゲット配列を開示し、第2実施形態は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するための核酸を含む、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するための組成物を開示し、第3実施形態は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態及び標的タンパク質の濃度を検出することにより、食道癌を非侵襲的にインビトロで検出する方法を開示する。
【0055】
好ましくは、前記核酸検出配列は、前記標的遺伝子のターゲット配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含み、いくつかの好ましい実施形態では、たとえば、亜硫酸水素塩を使用して検出対象サンプルのDNAを変換する場合、前記核酸検出配列は、標的遺伝子のターゲット配列を亜硫酸水素塩で変換した配列中の少なくとも9個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0056】
より好ましくは、前記核酸検出配列は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で標的遺伝子のターゲット配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含み、いくつかの好ましい実施形態では、たとえば、亜硫酸水素塩を使用して、検出対象サンプルのDNAを変換する場合、前記核酸検出配列は、中程度にストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件下で標的遺伝子のターゲット配列を亜硫酸水素塩で変換した配列にハイブリダイズした少なくとも15個のヌクレオチドの断片を含み、前記ヌクレオチドの断片は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、遺伝子の5位非メチル化シトシン塩基をウラシルに変換する試薬をさらに含む。好ましくは、該試薬は亜硫酸水素塩である。DNAの亜硫酸水素塩による修飾は、CpGのメチル化状態を評価するための既知のツールである。真核細胞のDNAでは、5-メチルシトシンが最も一般的な共有塩基修飾である。5-メチルシトシンとシトシンは同じ塩基ペアリング挙動をするため、5-メチルシトシンはシーケンシングにより同定できない。さらに、PCR増幅中に、5-メチルシトシンに備えるエピジェネティックな情報は完全に失われる。DNA中の5-メチルシトシンの存在を分析するために最も一般的に使用される方法は、亜硫酸水素塩とシトシンの特異的反応に基づくことであり、その後のアルカリ加水分解の後、メチル化されていないシトシンはペアリング挙動としてチミンに対応するウラシルに変換されるが、これらの条件下では5-メチルシトシンは未修飾のままである。その結果、元のDNAがこのように変換されることによって、以前はハイブリダイゼーション挙動としてシトシンと区別できなかった5
-メチルシトシンが、従来の既知の分子生物学技術たとえば増幅及びハイブリダイゼーションによって、残りのシトシンとして検出できるようになる。これらの技術はすべて、さまざまな塩基ペアリング特性に基づいており、完全に利用できるようになる。したがって、典型的には、本出願は、標的遺伝子のターゲット配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を決定するための、亜硫酸水素塩技術と1つ又は複数のメチル化測定技術との組み合わせを提供する。さらに、本発明の方法は、血液又は糞便中の低濃度腫瘍細胞などの不均一な生体サンプルの分析に適している。したがって、そのようなサンプル中のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を分析する場合、当業者は定量的アッセイを使用して、特定のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態ではなくメチル化レベル(たとえば、パーセンテージ、部数、比率、割合及び程度)を決定することができる。それに対応して、メチル化状況又はメチル化状態という用語はまた、CpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を反映する値を指すこともある。
【0058】
いくつかの実施形態では、本出願の方法は、具体的には、ステップ1)~ステップ5)を含む。1)検出対象生体サンプルのゲノムDNAを抽出する。2)ステップ1)で得たDNAサンプルを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換し、即ち、標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基はウラシル又はほかの塩基に変換され、変換された塩基は、ハイブリッド性能が5位非メチル化シトシン塩基と異なり、且つ検出可能である。3)ステップ2)で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び前記標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列を増幅させて増幅産物を生成するか、又は増幅させない。前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じると、増幅産物が発生し、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じないと、増幅させない。4)プローブを用いて増幅産物を検出する。5)前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本出願の方法は、具体的には、ステップ1)~ステップ7)を含む。1)被験者の末梢血を採取する。2)血漿又は血清中の遊離DNAを抽出する。3)ステップ2)で得た遊離DNAを試薬で処理して、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル又はほかの塩基に変換し、即ち、標的遺伝子のターゲット配列の5位非メチル化シトシン塩基はウラシル又はほかの塩基に変換され、変換された塩基は、ハイブリッド性能が5位非メチル化シトシン塩基と異なり、検出可能である。4)ステップ3)で処理したDNAサンプルをDNAポリメラーゼ及び前記標的遺伝子のターゲット配列のプライマーと接触させ、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列を増幅させて増幅産物を生成するか、又は増幅させない。前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じると、増幅産物が発生し、前記処理した標的遺伝子のターゲット配列にはDNA重合反応が生じないと、増幅させない。5)プローブを用いて増幅産物を検出する。6)前記増幅産物が存在するか否かに基づいて、前記標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態を決定する。7)SNCG抗体を用いて、免疫反応(好ましくは、酵素結合免疫吸着アッセイ、ELISA)により血漿又は血清中の標的タンパク質の濃度を決定する。
【0060】
典型的には、前記接触又は増幅は、以下の方法の少なくとも1種を使用することを含む。前記増幅酵素として熱安定性DNAポリメラーゼを使用すること、5-3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼを使用すること、PCRを使用すること、検出可能な標識付きの増幅産物である核酸分子を生成すること。好ましくは、PCR方式によりメチル化状態を測定し、たとえば「蛍光に基づいたリアルタイムPCR技術」、メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長反応(Ms-SNuPE)、メチル化特異的PCR(MSP)やメチル化CpGアイランド増幅(MCA)などの測定方法は、標的遺伝子のター
ゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態の測定に用いられる。その中でも、「蛍光に基づいたリアルタイムPCR」アッセイは、蛍光に基づいたリアルタイムPCR(TaqMan)技術を用いたハイスループットの定量的メチル化の測定であり、PCRステップの後にさらなる操作を必要としない。簡単に言えば、「蛍光に基づいたリアルタイムPCR」方法は、ゲノムDNAの混合サンプルから始まり、この混合サンプルは標準的な操作に従って亜硫酸水素ナトリウムによる反応でメチル化依存性配列差のある混合プールに変換される。次に、蛍光に基づいたPCRを「バイアス」(biased)反応(既知のCpGジヌクレオチドと重複したPCRプライマーを使用)で行う。配列差は、増幅レベルと蛍光検出増幅レベルで発生し得る。「蛍光に基づいたリアルタイムPCR」アッセイは、ゲノムDNAサンプルのメチル化状態の定量的テストとして使用でき、ここで、プローブハイブリダイゼーションのレベルで配列の区別が行われる。この定量化方式では、特定のCpGジヌクレオチドと重複した蛍光プローブの存在下で、PCR反応によりメチル化に特異的な増幅が行われる。開始DNA量用のバイアスなし対照は、プライマーもプローブもいずれのCpGジヌクレオチドも覆わない反応によって提供される。「蛍光に基づいたリアルタイムPCR」方法は、「TaqMan」、「Lightcycler」などの任意の適切なプローブとともに使用できる。TaqManプローブは、蛍光レポーター(Reporter)とクエンチャー(Quencher)で二重標識されており、GC含有量が比較的高い領域に特異的に設計され、それによって、それは、PCRサイクルでフォワードプライマー又はリバースプライマーよりもおよそ10℃高くなる温度で溶ける。これにより、TaqManプローブは、PCRアニーリング/伸長ステップに完全にハイブリダイズしたままである。TaqポリメラーゼがPCRで新しい鎖を酵素的に合成するとき、最終的にアニールされたTaqManプローブに遭遇する。次に、Taqポリメラーゼの5から3’エンドヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブを消化することによってTaqManプローブを置換し、それにより、蛍光レポーター分子を放出して、リアルタイム蛍光検出システムを使用して現在クエンチされていない信号を定量的に検出する。「蛍光に基づいたリアルタイムPCR」分析用の典型的な試薬には、標的遺伝子のターゲット配列用のPCRプライマー、非特異的増幅ブロッカー、TaqMan又はLightcyclerプローブ、最適化されたPCRバッファー、デオキシヌクレオチド、及びTaqポリメラーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
その中で、SNCG抗体を用いて、免疫反応により血漿又は血清中のSNCGの濃度を決定することは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって血清中のSNCGタンパク質の発現レベルを検出することである。
【0062】
好ましくは、前記ELISAは「サンドイッチ法」であり、具体的には、該方法は、以下のステップを含む。
1)SNCGモノクローナル抗体(マウス)で96ウェルプレートをコーティングする。
2)10倍希釈された臨床血清サンプル又は血漿サンプルと階段希釈されたヒトSNCGタンパク質溶液を加える。
3)ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)標識マウス抗ヒトSNCGのポリクローナル抗体(IgG)を各ウェルに加える。
4)上記混合物を含む免疫反応プレートを、振盪条件下、室温でインキュベートし、洗浄液で反応ウェルを洗浄した後、発色基質を加える。
5)停止液を加えて発色反応を停止させた後、プレートリーダーを使用して各反応ウェルのスペクトルを検出する。
6)階段希釈されたヒトSNCGタンパク質溶液の検出値を使用して標準曲線を確立し、標準曲線に基づいて臨床血清サンプルを定量化する。
【0063】
本発明の具体的な実施形態では、特定の数の食道癌サンプル及び正常サンプルのSNCG遺伝子の血清又は血漿タンパク質レベルに基づいて、SNCG遺伝子の血清又は血漿タンパク質レベルに対する食道癌及び正常の臨界値が決定される。
【実施例】
【0064】
実施例1
食道癌組織233例と正常な食道組織171例の全ゲノムのメチル化チップ(Illumina社製のHumanMethylation450kチップ)のデータを分析したことにより、本発明者は、食道癌組織におけるMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のメチル化レベルが正常な食道組織(分析結果は
図1に示される)のそれよりも有意に高いことを見出した。さらに、本発明者は、全ゲノムメチル化チップ上のMT1A遺伝子及びEPO遺伝子のプローブ配列及び対応するメチル化率のデータを分析したことにより、食道癌組織及び正常な食道組織でメチル化の差異が最も明らかなこれらの2つの標的遺伝子の配列断片を見つけ、この配列断片を、これら2つの標的遺伝子のターゲット配列として決定した。
【0065】
MT1A遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 1に示される。
SEQ ID NO: 1
CACCCAGGGGAGCTCAGTGGACTGTGCGCCTTGCCTTTCTGCTGCGCAAAGCCCAGTCCAGGTCATCACCTCGGGCGGGGCGGACTCGGCTGGGCGGACTCAGCGGGGCGGGCGCAGGCGCAGGGCGGGTCCTTTGCGTCCGGCCCTCTTTCCCCTGACCATAAAAGCAGC
【0066】
MT1A遺伝子的ターゲット配列の相補的配列はSEQ ID NO:2に示される。
SEQ ID NO: 2
GCTGCTTTTATGGTCAGGGGAAAGAGGGCCGGACGCAAAGGACCCGCCCTGCGCCTGCGCCCGCCCCGCTGAGTCCGCCCAGCCGAGTCCGCCCCGCCCGAGGTGATGACCTGGACTGGGCTTTGCGCAGCAGAAAGGCAAGGCGCACAGTCCACTGAGCTCCCCTGGGTG
【0067】
EPO遺伝子のターゲット配列はSEQ ID NO: 3に示される。
SEQ ID NO: 3
CGCGCACGCACACATGCAGATAACAGCCCCGACCCCCGGCCAGAGCCGCAGAGTCCCTGGGCCACCCCGGCCGCTCGCTGCGCTGCGCCGCACCGCGCTGTCCTCCCGGAGCCGGACCGGGGCCACCGCGCCCGCTCTGCTCCGACACCGCGCCCCCTGGACAGCCGCCCTCTCCTCCAGGCCCGTGGGGCTGGCCCTGCACCGCCGAGCTTCCCGGGATGAGGGCCCCCGGTGTGGTCACCCGGCGCGCCCCAGGTCG
【0068】
EPO遺伝子的ターゲット配列の相補的配列はSEQ ID NO:4に示される。
SEQ ID NO:4
CGACCTGGGGCGCGCCGGGTGACCACACCGGGGGCCCTCATCCCGGGAAGCTCGGCGGTGCAGGGCCAGCCCCACGGGCCTGGAGGAGAGGGCGGCTGTCCAGGGGGCGCGGTGTCGGAGCAGAGCGGGCGCGGTGGCCCCGGTCCGGCTCCGGGAGGACAGCGCGGTGCGGCGCAGCGCAGCGAGCGGCCGGGGTGGCCCAGGGACTCTGCGGCTCTGGCCGGGGGTCGGGGCTGTTA
TCTGCATGTGTGCGTGCGCG
【0069】
実施例2
ステップ1:分析対象となる生体サンプルのDNAを得た。この供給源は、細胞株、組織学的切片、生検組織、パラフィン包埋組織、体液、糞便、尿、血漿、血清、全血、分離された血液細胞、血液から分離された細胞、及びこれらのすべての可能な組み合わせなど、任意の適切な由来であってもよい。次に、従来技術における任意の標準的な手段によってDNAをサンプルから単離した。簡単に言えば、DNAが細胞膜に封入されたとき、この生体サンプルは、破壊されて、酵素的、化学的、又は機械的手段によって分解される必要がある。その後、タンパク質及び他の汚染物質をたとえば、プロテインキナーゼKによる消化により除去した。次に、DNAを溶液から回収した。これは、塩析、有機抽出やDNAの固体支持体への結合など、さまざまな方法で実現できる。方法の選択は、時間、コスト、必要なDNAの量など、さまざまな要因の影響を受ける。前記サンプルDNAが細胞膜に封入されていない場合(たとえば、血液サンプルからの循環DNA)、従来技術におけるDNAを分離及び/又は精製するための標準的な方法を使用することができる。これらの方法には、塩酸グアニジン又は尿素などのカオトロピック塩などのタンパク質分解剤;又はドデシルスルホン酸ナトリウム(SDS)、臭化シアンなどの洗剤の使用が含まれる。他の方法には、エタノール沈殿又はプロパノール沈殿、遠心分離による真空濃縮などが含まれるが、これらに限定されない。当業者はまた、限外濾過装置、シリコン表面又は膜、磁性ビーズ、ポリスチレン粒子、ポリスチレン表面、正に帯電した表面及び正に帯電した膜、帯電膜、帯電表面、帯電変換フィルム、帯電変換面などのデバイスを使用することもできる。核酸が抽出されると、DNAは分析に使用される。
【0070】
本実施形態では、生体サンプルDNAは、白血球ゲノムDNA及びDNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNAである。白血球ゲノムDNAの標的遺伝子のターゲット配列は非メチル化状態であるため、白血球ゲノムDNAは標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陰性コントロールである。DNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNAの標的遺伝子のターゲット配列はメチル化状態であるため、DNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNAは、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陽性コントロールである。
【0071】
ステップ2:上記の2種のDNAサンプルを別々に処理して、5位非メチル化シトシン塩基を、ウラシル、チミン又はハイブリダイゼーション挙動がシトシンと異なる別の塩基に変換した。好ましくは、これは亜硫酸水素塩試薬を用いた処理によって達成される。「亜硫酸水素塩試薬」という用語は、亜硫酸水素塩、酸性亜硫酸塩、又はそれらの組み合わせを含む試薬を指し、たとえば、本明細書に開示されるように、メチル化及び非メチル化CpGジヌクレオチド配列を区別するために使用できる。好ましくは、この亜硫酸水素塩処理は、n-アルキルグリコール、特にジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)などを含むがこれらに限定されない変性溶媒の存在下で、又はジオキサン又はそジオキサン誘導体の存在下で行われる。好ましい実施形態では、前記変性溶媒は、1%~35%(v/v)の濃度で使用される。また好ましくは、この亜硫酸水素塩反応は、スカベンジャー、たとえば、これに限定されないが、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン2-カルボン酸のようなクロマン誘導体又はトリヒドロキシ安息香酸及びその誘導体例えば没食子酸などの存在下で行われる。該亜硫酸水素塩による変換は、好ましくは、30℃~70℃の反応温度で行われ、温度は、反応中に一時的に85℃を超えるまで上昇する。亜硫酸水素塩で処理されたDNAは、定量化される前に精製することが好ましい。これは、従来技術に公知の任意の方法によって行うことができ、たとえば限外濾過であるが、これに限定されない。
【0072】
ステップ3:本発明のプライマー及び増幅酵素を使用して、処理されたDNA断片を増
幅した。複数のDNA断片を同じ反応容器で同時に増幅できる。好ましくは、前記増幅産物の長さは、100~2,000塩基対である。検出する生体サンプルのゲノムDNAが
メチル化状態と非メチル化状態の混合物である場合、特にメチル化状態のDNAが非メチル化状態のDNAよりもはるかに少ない場合、たとえば、癌患者の末梢血中の遊離DNAでは、PCR増幅プライマーの増幅の特異性を向上させるために、本発明は、PCR反応系に標的遺伝子のターゲット配列に特異的なブロッカーを使用する。ブロッカーのヌクレオチド配列の5末端は、フォワード(F)又はリバース(R)プライマーの3’末端ヌクレオチド配列とは5ヌクレオチド以上の重複領域を有し、ブロッカーとフォワード(F)又はリバース(R)プライマーは、標的遺伝子のターゲットDNAの同じ鎖に相補的であり、ブロッカーの融解温度は、フォワード(F)又はリバース(R)プライマーよりも5℃以上高く、ブロッカーのこのヌクレオチド配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含み、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化していない標的遺伝子のターゲット配列DNAの配列に相補的である。したがって、検出する生体サンプルのゲノムDNAがメチル化状態と非メチル化状態の混合物である場合、特にメチル化状態のDNAが非メチル化状態のDNAよりもはるかに少ない場合、非メチル化状態のDNAは、亜硫酸水素塩により変換された後、ブロッカーと優先的に結合し、それによって、DNAテンプレートがPCRプライマーに結合するのを阻害するため、PCR増幅は起こらず、一方、メチル化状態のDNAはブロッカーと結合しないため、プライマーと結合し、PCR増幅が行われる。その後、増幅により得られた断片を直接的又は間接的に検出する。好ましいマーカーは、蛍光マーカー、放射性核種、又は付着可能な分子断片の形態である。
【0073】
標的遺伝子のターゲット配列SEQ ID NO: 1-2及びSEQ ID NO:
3-4によれば、本発明では、MT1A及びEPOという2つの標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出するためのプライマー、プローブ及びブロッカー配列(SEQ ID NO: 5-12)が設計された。
【0074】
好ましくは、前記プライマー、プローブ及び/又はブロッカーのうちの1種又は複数種は以下に示される。
MT1Aプライマー F
SEQ ID NO: 5
CGGACGTAAAGGATTC
MT1Aプライマー R
SEQ ID NO: 6
GAAACGAACTCGACTAAACG
MT1Aプローブ
SEQ ID NO: 7
TGCGTTTGCGTTCGTTTCG
MT1Aブロッカー
SEQ ID NO: 8
CAAACTCAACTAAACAAACTCAACAAAACAAAC
EPOプライマー F
SEQ ID NO: 9
AGTCGTAGAGTTTTTGGGTT
EPOプライマー R
SEQ ID NO: 10
CAACGCGATACGACG
EPOプローブ
SEQ ID NO: 11
CGCAACGAACGACCGA
EPOブロッカー
SEQ ID NO: 12
GAGTTTTTGGGTTATTTTGGTTGTTTGTTG
【0075】
本発明では、リアルタイムPCR検出は、従来技術の標準的な操作に従って、様々な市販のリアルタイムPCR機器で実行することができる。いくつかの具体的な実施形態によれば、リアルタイムPCR検出は、Life Technologies機器(7500Fast)で実行された。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩で変換されたDNAテンプレート25-40ng、300-600nM プライマーとブロッカー、150-300nM プローブ、1UTaqポリメラーゼ、50-400μM 各dNTP、1~10mM MgCl2及び2XPCRバッファーからなり、最終体積が2μl~100μlであった。85~99℃で3~60分持続することでプレサイクルでサンプルを増幅し、続いて50~72℃で1~30秒間のアニーリングを35~55サイクル行い、45~80℃でアニーリングして5~90秒間伸長し、85~99℃で5~90秒間変性させた。メチル化された標的遺伝子のターゲット配列についてのみ増幅を観察したことにより、5-メチルシトシンを含む標的遺伝子のターゲット配列のCpGアイランド領域に特異的なプローブで前記遺伝子断片を検出した。そして、いくつかの具体的な実施形態では、β-アクチン遺伝子(ACTB)をPCRの内部コントロールとして使用して、β-アクチン遺伝子配列に相補的なプライマーを使用してβ-アクチン遺伝子アンプリコンを作成し、特定のプローブを用いてβ-アクチン遺伝子アンプリコンを検出した。各サンプルごとに少なくとも1回のリアルタイムPCRを行い、いくつかの具体的な実施形態では、2回又は3回のリアルタイムPCR検出を行った。
【0076】
実験結果は、
図2に示すとおりであり、本発明による組成物及び検出方法を使用して白血球ゲノムDNA(標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陰性コントロール)を検出した場合、PCR増幅は発生しておらず、検出結果は陰性であり、つまり、検出されたDNAサンプルの標的遺伝子のターゲット配列はメチル化されておらず、本発明による組成物及び検出方法を使用して、DNAメチルトランスフェラーゼで処理した白血球ゲノムDNA(標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態の陽性コントロール)を検出した場合、PCR増幅は発生しており、検出結果は陽性である。つまり、検出されたDNAサンプルの標的遺伝子のターゲット配列はメチル化されたことを示した。このことから、本発明による組成物及び検出方法は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を特異的に検出することができると判定できた。
【0077】
実施例3
本出願の具体的な実施形態によれば、特定の数の食道癌サンプル及び正常サンプルの検出結果の平均Ct値に基づいて、食道癌を正常な標的遺伝子から効果的に区別できるCt値、すなわち臨界値を決定した。標的遺伝子のターゲット配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態は、ポリメラーゼ連鎖反応のサイクル閾値Ct値によって決定され、検出対象となるサンプルのCt値を予め設定された閾値と比較することにより、標的遺伝子に基づく解析結果が陰性(正常)か陽性(食道癌)かを決定する。
【0078】
本実施例は、以下のステップを含む。
まず、食道癌患者20例と健常者22例の血漿サンプルを採取した。すべてのサンプルはBioChain社から入手される。次に、検出対象サンプルの末梢血の遊離DNAを抽出し、前記DNAサンプルに対して前処理を行い、5位非メチル化シトシン塩基をウラシル、チミン又はハイブリダイゼーション挙動がシトシンと異なる別の塩基に変換した。本実施例では、当該前処理は亜硫酸水素塩試薬処理によって達成された。前記DNAの抽出及び処理は、従来技術の任意の標準的な手段によって実行することができ、具体的には、本実施例では、すべてのサンプルDNA抽出及び亜硫酸水素塩によるDNA修飾は、BioChain社製の血漿処理キットを用いて行われた。
【0079】
次に、処理した上記食道癌患者20例と健常者22例のDNAサンプルに上記標的遺伝子プライマー、プローブ及びブロッカーの組み合わせを加え、PCRにより標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出した。その中で、本実験例で採用されたPCRは、Life Technologies機器(7500)で実行された。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩で変換されたDNAテンプレート35ng、450nM プライマー及びブロッカー、225nM プローブ、1UTaq ポリメラーゼ、200μM 各dNTP、4.5mM MgCl2及び2XPCRバッファーからなり、最終体積が50μlであった。94℃で20分持続したことによりプレサイクルでサンプルを増幅し、続いて62℃で5秒のアニーリングを45サイクル行い、55.5℃で35秒アニーリングして伸長し、93℃で30秒変性させた。
【0080】
最後に、食道癌患者20例と健常人22例のDNAサンプルのそれぞれについて標的遺伝子のターゲット配列のリアルタイムPCRのCt値を測定した。検出結果を
図3に示す。1)特定の臨界値が選択され、好ましくは臨界値がCt=37であり、本発明による組成物及び検出方法を使用して、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態を検出することにより、食道癌患者を効果的に検出できる。本実施例では、Ct値が臨界値として37である場合、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化で食道癌を検出するときの感度は55%(MT1A)及び45%(EPO)である。2)標的遺伝子のターゲット配列のメチル化は良好な特異性を持っており、健常人を検出したところ、健常人を検出するときに、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化の特異性は95%(MT1A)及び95%(EPO)である。3)MT1A遺伝子とEPO遺伝子の両方のメチル化検出結果を組み合わせると、食道癌の検出感度は60%にまで上昇し、一方、特異性は変わらず、95%のままである。
【0081】
実施例4
次に、また食道癌被験者63例の血漿サンプルを得た。次に、血漿中の遊離DNAを抽出し、ゲノムDNAサンプルに対して前処理を行い、5’位非メチル化シトシン塩基をウラシル、チミン又はハイブリダイゼーション挙動がシトシンと異なる別の塩基に変換した。本実施例では、当該前処理は亜硫酸水素塩試薬処理によって達成される。前記DNAの抽出及び処理は、従来技術における任意の標準的な手段によって実行することができ、具体的には、本実施例では、すべてのサンプルのDNA抽出及び亜硫酸水素塩によるDNA修飾は、BioChain社製の血漿処理キットを用いて行われた。次に、処理した上記食道癌被験者63例のDNAサンプルに、上記MT1A及びEPO遺伝子プライマーとプローブの組み合わせ、及び内部参照遺伝子ACTB遺伝子プライマーとプローブの組み合わせを加え、PCRによりMT1A及びEPO遺伝子のメチル化状態を検出した。ここで、本実験例で採用されたPCR増幅条件は次のとおりであった。リアルタイムPCRはLife Technologies機器(7500)で実行された。PCR反応混合物は、亜硫酸水素塩で変換されたDNAテンプレート35ng、450nM プライマー、225nM プローブ、1UTaq ポリメラーゼ、200uμm 各dNTP、4.5mM MgCl2及び2XPCRバッファーからなり、最終体積は30μlであった。94℃で20分持続したことによりプレサイクルでサンプルを増幅し、続いて62℃で5秒間のアニーリングを45サイクル行い、55.5℃で35秒間アニーリングし、93℃で30秒間変性させた。
【0082】
また、これら食道癌被験者63例の血漿サンプルについてSNCG遺伝子の血清タンパク質レベルを検出した。SNCG遺伝子の血清タンパク質レベルは、素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって検出された。このELISA検出技術は、「サンドイッチ法」によってSNCG遺伝子の血清タンパク質レベルを検出するものである。まず、96ウェルプレートをSNCGモノクローナル抗体(マウス)(BioChain社製)(1μ
g/ウェル)でコーティングし、次に、10倍希釈した臨床血清サンプルと段階希釈した(2.5ng/mL~0.04ng/mL)ヒトSNCGタンパク質溶液(50μl/ウェル)を加え、その後、50μlの0.47μg/mLホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)標識マウス抗ヒトSNCGのポリクローナル抗体(IgG)(BioChain社製)を各チューブに加えた。上記の混合物を含む免疫反応プレートを、振とう条件下、室温で3時間インキュベートし、反応ウェルを洗浄液で洗浄した後、発色基質を加えた。2M硫酸を添加して発色反応を停止させた後、プレートリーダー(たとえば、Bio-RAD 550)を使用して、各ウェルを450nmのスペクトル帯域で検出した。最後に、段階希釈したヒトSNCGタンパク質溶液の検出値を使用して検量線を確立し、検量線に基づいて臨床曲線サンプルを定量化した。食道癌及び健常人のSNCG遺伝子血清レベルの臨界値は2.0ng/mLであった。
【0083】
最後に、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(Roche)社製の電気化学発光免疫検出システムを使用して、CEA、CA199、CA125、及びAFPを含む、食道癌被験者63例のサンプルにおける一般的な癌マーカーのレベルを測定した。
【0084】
検出結果(
図4)から明らかなように、食道癌被験者におけるMT1A及びEPO遺伝子のメチル化検出とSNCGタンパク質検出は、陽性率が、一般的に使用される癌マーカー(たとえば、CEA、CA199、CA125やAFP)よりも有意に高かった。また、MT1A及びEPO遺伝子のDNAメチル化とSNCGタンパク質の両方を検出することは、食道癌の検出において優れた相補性が得られ、両者を検出することで、食道癌の検出率が大幅に向上した。また、MT1A及びEPO遺伝子のDNAメチル化検出とSNCGタンパク質検出の相補性は独特であり、一般的な癌マーカー(たとえば、CEA、CA199、CA125やAFP)にはこの特性がなかった。
【0085】
上記実験結果は、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方を検出することにより、食道癌を高感度かつ特異的に検出できることを示している。本発明の標的遺伝子のターゲット配列のメチル化DNAを検出することにより、食道癌を非侵襲的にインビトロで検出することができ、食道癌の検出率を向上させることができる。
【0086】
前記のように、本出願は、上記組成物、核酸配列、キット及びそれらの用途、ならびに上記検出方法を利用して、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態及び標的タンパク質の濃度を検出することによって、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度を利用して食道癌のインビトロ検出を実現し、それにより、食道癌のインビトロ検出の感度と特異性を効果的に向上させる。リアルタイムPCRを使用して血漿サンプルの遊離DNAを分析し、また、ELISA法を使用して血漿中の標的タンパク質の濃度を分析することにより、標的遺伝子のターゲット配列のメチル化状態と標的タンパク質の濃度の両方を検出することを簡単に実現でき、リアルタイムPCRのCT値及びELISAによる検出濃度に基づいて、サンプルが陽性であるかどうかを迅速かつ簡単に判定でき、このため、食道癌を非侵襲的且つ迅速にインビトロで検出する方法を提供している。
【0087】
本発明の様々な態様及び実施例が本明細書に開示されているが、他の態様及び実施例は当業者にとって明らかなことである。本明細書に開示される様々な態様及び実施例は、説明するために過ぎず、限定するものではない。本発明の保護範囲及び要旨は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【配列表】